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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121458
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】アースオーガ掘削機
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20240830BHJP
   E02F 5/02 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E21B7/00 E
E02F5/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028578
(22)【出願日】2023-02-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-13
(71)【出願人】
【識別番号】512165525
【氏名又は名称】大興物産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】509199018
【氏名又は名称】成幸利根株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】森 隆洋
(72)【発明者】
【氏名】森 忍
(72)【発明者】
【氏名】平泉 辰哉
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129BB06
2D129CA02
2D129DA18
2D129DC02
2D129DC13
2D129DC34
2D129DC52
(57)【要約】
【課題】縦孔の施工精度を向上させるアースオーガ掘削機を提供する。
【解決手段】アースオーガ掘削機1は、本体部3と、本体部3の前部に取付けられたオーガモーター部5と、オーガモーター部5を本体部3に対して昇降させる昇降機構30と、を備え、オーガモーター部5に取付けられたオーガスクリュー49により地面Gに縦孔Jを削孔する。昇降機構30は、本体部3に設けられオーガモーター部5の昇降を案内するガイドレール31と、オーガモーター部5の後部に位置するブラケット43の吊り位置で当該オーガモーター部5を吊上げ又は吊下ろして昇降させる昇降シリンダ35と、本体部3に設けられたローラーガイドレール51と、オーガモーター部5に設けられ上記吊り位置よりも上方の位置でローラーガイドレール51に後方から当接し、当該ローラーガイドレール51上を上下方向に転動可能な上部ローラー61と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部の前部に取付けられたオーガモーター部と、前記オーガモーター部を前記本体部に対して昇降させる昇降機構と、を備え、前記オーガモーター部に取付けられ当該オーガモーター部から下方に延びるオーガスクリューにより地面に縦孔を削孔するアースオーガ掘削機であって、
前記昇降機構は、
前記本体部に設けられ前記オーガモーター部の昇降を案内するガイドレールと、
前記オーガモーター部の後部に位置する吊り位置で当該オーガモーター部を吊上げ又は吊下ろして昇降させる吊り駆動部と、
前記本体部に設けられ前記ガイドレールに平行に延びるローラーガイド部と、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも上方の位置で前記ローラーガイド部に後方から当接し、当該ローラーガイド部上を上下方向に転動可能な上部ローラーと、を有する、アースオーガ掘削機。
【請求項2】
前記昇降機構は、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも下方の位置で前記ガイドレールに前方から当接し、当該ガイドレール上を上下方向に転動可能な下部ローラーを更に有する、請求項1に記載のアースオーガ掘削機。
【請求項3】
前記昇降機構は、
前記オーガモーター部に対する前記上部ローラーの取付け位置を前後方向に調整可能な取付け調整機構を更に有する、請求項1に記載のアースオーガ掘削機。
【請求項4】
本体部と、前記本体部の前部に取付けられたオーガモーター部と、前記オーガモーター部を前記本体部に対して昇降させる昇降機構と、を備え、前記オーガモーター部に取付けられ当該オーガモーター部から下方に延びるオーガスクリューにより地面に縦孔を削孔するアースオーガ掘削機であって、
前記昇降機構は、
前記本体部に設けられ前記オーガモーター部の昇降を案内するガイドレールと、
前記オーガモーター部の後部に位置する吊り位置で当該オーガモーター部を吊上げ又は吊下ろして昇降させる吊り駆動部と、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも下方の位置で前記ガイドレールに前方から当接し、当該ガイドレール上を上下方向に転動可能な下部ローラーと、を有する、アースオーガ掘削機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースオーガ掘削機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のアースオーガ掘削機として、下記特許文献1に記載のものが知られている。このアースオーガ掘削機は、走行可能な台車上に設けられたリーダーと、リーダーに対し昇降可能に支持されたオーガモーター部と、を備えている。オーガモーター部には鉛直下方に延びるオーガスクリューが取付けられ、オーガスクリューにより地面に縦孔が削孔される。このアースオーガ掘削機においては、オーガモーター部の昇降を案内するガイドがリーダーの前部に設けられ、このガイドに対してオーガモーター部の後部が上下スライド可能に支持されている。オーガモーター部の後部中央の位置にチェーンの一端が接続されており、当該チェーンの他端はリーダー側に固定されている。このチェーンが掛けられたチェーンスプロケットが昇降シリンダにより上下移動されることで、オーガモーター部は、その後部中央を吊り位置としてチェーンにより吊上げ又は吊下ろしされ、ガイドに沿って上下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4090369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、このアースオーガ掘削機における昇降時のオーガモーター部は、後部を吊り位置としてチェーンにより吊られた状態となる。このような吊り構造によれば、オーガモーター部及びオーガスクリューには、自重により、吊り位置を中心として前方に回転しようとするモーメントが発生する。このモーメントは、オーガスクリューを傾斜させるように作用し、その結果、縦孔の施工精度の向上の妨げになる。この問題に鑑み、本発明は、縦孔の施工精度を向上させるアースオーガ掘削機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0006】
〔1〕本体部と、前記本体部の前部に取付けられたオーガモーター部と、前記オーガモーター部を前記本体部に対して昇降させる昇降機構と、を備え、前記オーガモーター部に取付けられ当該オーガモーター部から下方に延びるオーガスクリューにより地面に縦孔を削孔するアースオーガ掘削機であって、
前記昇降機構は、
前記本体部に設けられ前記オーガモーター部の昇降を案内するガイドレールと、
前記オーガモーター部の後部に位置する吊り位置で当該オーガモーター部を吊上げ又は吊下ろして昇降させる吊り駆動部と、
前記本体部に設けられ前記ガイドレールに平行に延びるローラーガイド部と、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも上方の位置で前記ローラーガイド部に後方から当接し、当該ローラーガイド部上を上下方向に転動可能な上部ローラーと、を有する、アースオーガ掘削機。
【0007】
〔2〕前記昇降機構は、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも下方の位置で前記ガイドレールに前方から当接し、当該ガイドレール上を上下方向に転動可能な下部ローラーを更に有する、〔1〕に記載のアースオーガ掘削機。
【0008】
〔3〕前記昇降機構は、
前記オーガモーター部に対する前記上部ローラーの取付け位置を前後方向に調整可能な取付け調整機構を更に有する、〔1〕又は〔2〕に記載のアースオーガ掘削機。
【0009】
〔4〕本体部と、前記本体部の前部に取付けられたオーガモーター部と、前記オーガモーター部を前記本体部に対して昇降させる昇降機構と、を備え、前記オーガモーター部に取付けられ当該オーガモーター部から下方に延びるオーガスクリューにより地面に縦孔を削孔するアースオーガ掘削機であって、
前記昇降機構は、
前記本体部に設けられ前記オーガモーター部の昇降を案内するガイドレールと、
前記オーガモーター部の後部に位置する吊り位置で当該オーガモーター部を吊上げ又は吊下ろして昇降させる吊り駆動部と、
前記オーガモーター部に設けられ前記吊り位置よりも下方の位置で前記ガイドレールに前方から当接し、当該ガイドレール上を上下方向に転動可能な下部ローラーと、を有する、アースオーガ掘削機。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、縦孔の施工精度を向上させるアースオーガ掘削機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るアースオーガ掘削機の側面図である。
図2】アースオーガ掘削機のリーダー及びオーガモーター部を前方から見た状態を模式的に示す斜視図である。
図3】アースオーガ掘削機のリーダー及びオーガモーター部を模式的に示す平面図である。
図4】アースオーガ掘削機のオーガモーター部近傍を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係るアースオーガ掘削機の実施形態について詳細に説明する。図1は、実施形態に係るアースオーガ掘削機1の側面図である。以下においては、図1における左方を「前方」とし右方を「後方」として、「前部/後部」、「前方/後方」などの語を用いる。また、図1における紙面に直交する方向を「左右方向」と言う場合がある。
【0013】
アースオーガ掘削機1は、地中に杭を埋設するための縦孔Jを地面Gに掘削する機械である。アースオーガ掘削機1は、特に、橋梁下などの低空頭の施工現場で使用される。アースオーガ掘削機1は、本体部3と、本体部3に支持されるオーガモーター部5と、を備えている。本体部3は、台車部7と、台車部7の前部に取付けられたリーダー9と、を有している。オーガモーター部5はリーダー9の前部に取付けられている。
【0014】
縦孔Jの施工現場の地面G上には、アースオーガ掘削機1の左右方向に延在するレール11が敷設されている。台車部7はレール11上に設置される車輪13と、車輪13を駆動する走行モータ(図示せず)を備えており、レール11上を左右方向に走行可能である。更に、台車部7は、リーダー9を鉛直姿勢に調整するための姿勢調整部15を備えている。姿勢調整部15には、リーダー9の前後位置を調整するスライド用シリンダ17と、リーダー9の左右方向の傾きを調整する傾斜用シリンダ19と、リーダー9の前後方向の傾きを調整するステーシリンダ21と、が含まれる。また、台車部7は、上記各シリンダ17,19,21や後述の昇降シリンダ35等を駆動するための油圧ユニット23やカウンターウエイト27を備えている。
【0015】
図2は、リーダー9及びオーガモーター部5を前方から見た状態を模式的に示す斜視図である。図3は、リーダー9及びオーガモーター部5を模式的に示す平面図である。図1図3に示されるように、リーダー9は、左右一対のマスト29で構成され、台車部7の前部に取付けられ、姿勢調整部15により鉛直方向に延在する姿勢に調整される。
【0016】
アースオーガ掘削機1は、オーガモーター部5をリーダー9に対して昇降させる昇降機構30を備えている。昇降機構30は、リーダー9に設けられるガイドレール31,31と、オーガモーター部5の昇降の駆動源である昇降シリンダ35(吊り駆動部)と、を備えている。
【0017】
ガイドレール31は、リーダー9の前面に設けられ、円形断面をなし鉛直方向に延在している。ガイドレール31は、各マスト29,29の前面に1本ずつ設けられている。オーガモーター部5の後面には、ガイドレール31を摺動可能に保持するガイドギブ33が設けられている。なお、図3においてはガイドギブ33の図示が省略されている。ガイドギブ33は、1本のガイドレール31に対して当該ガイドレール31の延在方向に並ぶ複数個ずつが存在している。例えば、図1の例の場合、1本のガイドレール31に対して鉛直方向に並ぶ3つのガイドギブ33が存在し、従って、オーガモーター部5の後面には合計6つのガイドギブ33が存在してる。このようなガイドギブ33が、ガイドレール31,31を保持することで、オーガモーター部5は、ガイドレール31,31を介して、リーダー9の前部に対し上下スライド可能に取付けられている。
【0018】
昇降シリンダ35は、リーダー9のマスト29,29同士の間に設置されている。昇降シリンダ35は、上下方向に伸縮するロッド37を備えており、ロッド37の上端にはチェーンスプロケット39が回転可能に取付けられている。このチェーンスプロケット39にはローラーリンクチェーン41が掛けられており、当該ローラーリンクチェーン41の一端部は、マスト29,29の下端近傍においてリーダー9に固定されている。一方、オーガモーター部5の後面の中央部にはブラケット43が設けられており、このブラケット43に対してローラーリンクチェーン41の他端部が接続されている。
【0019】
上記のような昇降機構30によれば、昇降シリンダ35がロッド37を伸長させることで、ローラーリンクチェーン41がブラケット43を吊り位置としてオーガモーター部5を吊上げる。また、昇降シリンダ35がロッド37を短縮させることで、ローラーリンクチェーン41がブラケット43を吊り位置としてオーガモーター部5を吊下ろす。このような吊上げ/吊下ろしにより、オーガモーター部5は、ガイドレール31,31に案内されて鉛直方向に昇降する。
【0020】
オーガモーター部5には、モーター及び変速機を含むスクリュー駆動装置45が内蔵されている。オーガモーター部5は、下方に突出する駆動出力軸47を備え、当該駆動出力軸47は、スクリュー駆動装置45からの駆動力を受けて、鉛直軸周りに回転する。駆動出力軸47には、鉛直下方に延びるオーガスクリュー49が取付けられる。アースオーガ掘削機1では、オーガスクリュー49がスクリュー駆動装置45によって回転しオーガモーター部5に伴って上下動することで、本体部3の前方の地面Gに縦孔Jが掘削される。オーガモーター部5には、駆動出力軸47が左右方向に並んで複数設けられてもよく、複数のオーガスクリュー49を用いて複数本の縦孔Jの掘削が同時に行われてもよい。
【0021】
このアースオーガ掘削機1による縦孔Jの施工精度(鉛直精度)を向上するために、昇降機構30は、リーダー9に設けられた一対のローラーガイドレール51,51(ローラーガイド部)と、オーガモーター部5に設けられた一対の上部案内部53,53と、を備えている。
【0022】
ローラーガイドレール51は、リーダー9の左右側面(各マスト29の外側の側面)に一つずつ設けられ、ガイドレール31と平行に鉛直に延びている。上部案内部53は、オーガモーター部5の左右側面に一つずつ設けられ、後方に向けて水平に延びている。上部案内部53は、前後方向に延びるスライド板57と、スライド板57をオーガモーター部5に止め付ける固定部59と、スライド板57の後端部に設けられた上部ローラー61と、を備えている。
【0023】
固定部59の上端及び下端はオーガモーター部5の側面に溶接等で固定されており、固定部59の中央部とオーガモーター部5の側面との間には隙間があいている。この隙間に対してスライド板57がスライド可能に挿入される。そして、固定部59に装着されたボルト59aが締め付けられて、スライド板57は固定部59に対して固定される。すなわち、ボルト59aの先端がスライド板57に押し付けられることで、スライド板57は固定部59に対しスライドが不可能な強さで固定される。この構造によれば、固定部59に固定されるスライド板57の固定位置を前後方向に調整することができる。また、このようなスライド板57及び固定部59は、オーガモーター部5に対する上部ローラー61の取付け位置を前後方向に調整可能な取付け調整機構を構成する。
【0024】
上部ローラー61は、スライド板57の後端部に軸支され当該スライド板57とリーダー9の側面との間に配置されている。上部ローラー61は、左右方向に延びる回転軸線周りに回転可能であり、ローラーガイドレール51の後面に対して後方から当接しており、当該ローラーガイドレール51の後面上を上下方向に転動可能である。上部ローラー61とローラーガイドレール51とが当接する位置は、前述の吊り位置であるブラケット43の位置よりも上方に位置する。このようなローラーガイドレール51,51及び上部ローラー61,61は、オーガモーター部5がリーダー9に対して昇降するときに当該昇降を案内する。なお、ローラーガイドレール51の断面は先端側を後方に屈曲させたL字断面の形状をなしており、この先端側の部分とリーダー9の側面との間に上部ローラー61の外周部が嵌り込んでいる。従って、上部ローラー61がローラーガイドレール51から脱輪することが抑制される。
【0025】
更に、昇降機構30は、オーガモーター部5の下部に設けられた一対の下部ローラー55,55を備えている。下部ローラー55は、オーガモーター部5の下面の後部から下方に突出しており、オーガモーター部5に対して軸支され、左右方向に延びる回転軸線周りに回転可能である。また、下部ローラー55は、オーガモーター部5の背面よりも後方に張出しており、ガイドレール31に前方から当接している。下部ローラー55はガイドレール31上を上下方向に転動可能である。また、ガイドレール31が円形断面をなすのに対して下部ローラー55は鼓型をなしているので、下部ローラー55がガイドレール31から脱輪することが抑制される。
【0026】
以上のような昇降機構30を備えたアースオーガ掘削機1による作用効果について説明する。
【0027】
アースオーガ掘削機1では、オーガモーター部5の後面に設けられたブラケット43を吊り位置として、当該オーガモーター部5がローラーリンクチェーン41で吊り支持される。ここで仮に、オーガモーター部5の重心に近い位置を吊り位置にしようとすれば、オーガモーター部5の上面で前後方向中心部に吊り位置を設ける必要がある。この場合、オーガモーター部5の上面には滑車等が設けられ、更に当該滑車を引上げるためのワイヤー等がオーガモーター部5の上方に存在することになる。
【0028】
そうすると、低空頭の施工現場においては、オーガモーター部5の上方に存在する各部品が邪魔になり、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49の上下可動幅が確保し難い。従って、この場合のアースオーガ掘削機は低空頭の施工現場には不向きなものとなる。これに対して、アースオーガ掘削機1では、オーガモーター部5の後面が吊り位置とされるので、オーガモーター部5の上方に配置すべき部品等が抑えられる。従って、アースオーガ掘削機1は、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49の上下可動幅が確保し易く、低空頭の施工現場に対して好適に使用可能である。
【0029】
但し、オーガモーター部5の後部を吊り位置とする構造によれば、この吊り位置は、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49の重心よりも後方にズレている。従って、図4に示されるように、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49には、自重により、ブラケット43を中心として前方に(図において反時計回りに)回転しようとするモーメントMが発生する。縦孔Jの施工時には、姿勢調整部15によりリーダー9が正確に鉛直姿勢に調整されるが、上記のモーメントMに起因して、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49が、リーダー9に対し、モーメントMの方向に僅かに傾斜する虞がある。そうすると、鉛直であるべきオーガスクリュー49の回転軸線49Aが、図中の符号50で示すように後方に傾く虞があり、その結果、縦孔Jの施工精度(鉛直精度)が低下する虞がある。
【0030】
なお、オーガモーター部5にはガイドレール31を保持するガイドギブ33(図1)が存在しているが、ガイドギブ33はガイドレール31上を上下に摺動する必要がある。よって、ガイドギブ33とガイドレール31との間には多少の遊びが存在し、上記のような回転軸線49Aの傾斜を完全に抑えられるものではない。また、ガイドギブ33とガイドレール31との遊びを無くすことは、ガイドギブ33とガイドレール31との摩耗の原因になるので好ましくなく、また、この摩耗に起因してオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の傾斜が再び発生することになる。
【0031】
これに対して、アースオーガ掘削機1の昇降機構30では、鉛直なローラーガイドレール51,51がリーダー9に設けられ、オーガモーター部5には上部ローラー61,61が設けられている。この上部ローラー61は、ローラーガイドレール51に後方から当接し当該ローラーガイドレール51上を上下方向に転動可能である。そして、上部ローラー61とローラーガイドレール51とが当接する位置は、吊り位置であるブラケット43の位置よりも上方である。
【0032】
この構造によれば、上記モーメントMに抵抗して上部ローラー61がローラーガイドレール51からの反力F1を受け、当該反力F1によりオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の傾斜が抑えられる。また、上部ローラー61は、反力F1と同じ力でローラーガイドレール51に対して後方から押し付けられるので、ローラーガイドレール51との間には遊びが存在しない。従って、ガイドギブ33とは異なり、遊びに起因するオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の傾斜も発生しない。その結果、縦孔Jの施工精度が向上する。
【0033】
また、アースオーガ掘削機1の昇降機構30では、オーガモーター部5の下部に下部ローラー55,55が設けられている。この下部ローラー55は、ガイドレール31に前方から当接し当該ガイドレール31上を上下方向に転動可能である。そして、下部ローラー55とガイドレール31とが当接する位置は、吊り位置であるブラケット43の位置よりも下方である。
【0034】
この構造によれば、上記モーメントMに抵抗して下部ローラー55がガイドレール31からの反力F2を受け、当該反力F2によりオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の傾斜が抑えられる。また、下部ローラー55は、反力F2と同じ力でガイドレール31に対して前方から押し付けられるので、ガイドレール31との間には遊びが存在しない。従って、ガイドギブ33とは異なり、遊びに起因するオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の傾斜も発生しない。その結果、縦孔Jの施工精度が向上する。
【0035】
アースオーガ掘削機1においては、昇降機構30が上部ローラー61,61と下部ローラー55,55とを両方とも備えている。従って、上記のような上部ローラー61,61による効果と、下部ローラー55,55による効果と、が相俟って、縦孔Jの施工精度が更に向上する。
【0036】
また、昇降機構30のスライド板57及び固定部59は、オーガモーター部5に対する上部ローラー61の取付け位置を前後方向に調整可能な取付け調整機構を構成する。この構造によれば、オーガモーター部5に対する上部ローラー61の位置を前後方向に調整することで、リーダー9に対するオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の鉛直度を調整することができる。そして、ガイドギブ33とガイドレール31との間の遊びとは無関係に、上部ローラー61と下部ローラー55とによってオーガモーター部5及びオーガスクリュー49の姿勢を決めることができ、鉛直姿勢に調整することができる。また、このような調整を、縦孔Jの施工現場で実行することができる。
【0037】
なお、上部ローラー61を、ローラーガイドレール51ではなくガイドレール31に対して後方から当接するようにすることも考えられる。しかしながら、ガイドレール31の直ぐ後方にはリーダー9が存在しており、上部ローラー61を設置するスペースが確保し難い。これに対し、アースオーガ掘削機1では、ガイドレール31とは別にリーダー9の左右側面にローラーガイドレール51が設けられているので、ローラーガイドレール51の後方から当接する上部ローラー61を配置し易く、また、上部ローラー61の径を大きくすることもできる。例えば、上部ローラー61は下部ローラー55よりも大径であってもよい。なお、下部ローラー55は、オーガモーター部5の下面から下方に突出しているので、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49を下降させる際に、地面G上の縦孔J近傍に設置された他の設備等に干渉し易い。従って、下部ローラー55を大きくすることは、オーガモーター部5及びオーガスクリュー49の上下可動幅を小さくする可能性があり、好ましくない。
【0038】
本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、実施例の変形例を構成することも可能である。各実施形態等の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。例えば、実施形態のアースオーガ掘削機1には、上部ローラー61,61と下部ローラー55,55とが両方とも設けられているが、上部ローラー61,61又は下部ローラー55,55の何れかが省略されてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1…アースオーガ掘削機、3…本体部、5…オーガモーター部、30…昇降機構、31…ガイドレール、35…昇降シリンダ(吊り駆動部)、43…ブラケット(吊り位置)、49…オーガスクリュー、51…ローラーガイドレール、55…下部ローラー、57…スライド板(取付け調整機構)、59…固定部(取付け調整機構)、61…上部ローラー、G…地面、J…縦孔。
図1
図2
図3
図4