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特開2024-121463盗難抑制装置、盗難抑制方法及び盗難抑制プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121463
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】盗難抑制装置、盗難抑制方法及び盗難抑制プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/102 20130101AFI20240830BHJP
   B60R 25/04 20130101ALI20240830BHJP
   B60R 25/34 20130101ALI20240830BHJP
   B60R 25/31 20130101ALI20240830BHJP
   B60R 25/33 20130101ALI20240830BHJP
【FI】
B60R25/102
B60R25/04
B60R25/34
B60R25/31
B60R25/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028587
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】濱本 正志
(57)【要約】
【課題】正規ユーザが車両を始動させた後に車両が盗まれることを抑制可能な盗難抑制装置を提供する。
【解決手段】盗難抑制装置は、車両10に搭載された少なくとも一つの車載デバイス11,12,13,20,30,40から通信機24を介して車外装置60へ車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用され、監視部210,410,60と、実行部230,410,60と、を備える。監視部は、少なくとも一つの車載デバイス及び通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視して、車外装置へ証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、車両の盗難が発生していることを判定する。実行部は、監視部により、盗難発生と判定された場合に、盗難抑制処理を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される盗難抑制装置(20,40,60)であって、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視して、前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成された監視部(210,410,60)と、
前記監視部により前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行するように構成された実行部(230,410,60)と、を備える、
盗難抑制装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、前記車両のエンジン(14)又は走行用モータ(14)を制御するように構成された第1制御装置(40)、前記車両(10)のドアの開閉を検出するように構成されたドアセンサ(13)、前記車両の室内を撮影するように構成されたカメラ(11)、GPS信号を受信するように構成されたGPS受信機(12)、前記第1制御装置と定期的に通信するように構成された第2制御装置(20)、及び前記ドアセンサを制御するように構成された第3制御装置のうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の盗難抑制装置。
【請求項3】
前記監視部(210,410,60)は、前記車両の正規ユーザが前記車両のドアを開けた後の時点、及び/又は前記車両のエンジンを始動した後の時点を含む少なくとも一つの判定タイミングを設定し、設定した前記少なくとも一つの判定タイミングにおいて、前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
請求項1に記載の盗難抑制装置。
【請求項4】
前記監視部(210,410,60)は、前記ドアが開けられてから第1時間が経過するまでの間に、前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)のうちのいずれかの故障を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
請求項3に記載の盗難抑制装置。
【請求項5】
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、複数の車載デバイスを含み、
前記監視部(210,410,60)は、第2時間内に、前記複数の車載デバイスのうちの2つ以上の故障を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
請求項3に記載の盗難抑制装置。
【請求項6】
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、前記車両のエンジン(14)又は走行用モータ(14)を制御するように構成された第1制御装置(40)と、前記第1制御装置と定期的に通信するように構成された第2制御装置(20)とを含み、
前記監視部(410)は、前記ドアが開いてから第3時間が経過するまでの間に、前記第2制御装置から前記第1制御装置への通信途絶を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
請求項3に記載の盗難抑制装置。
【請求項7】
前記盗難抑制処理は、前記車両の運転継続を困難にさせる、
請求項3に記載の盗難抑制装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、複数の車載デバイスを含み、
前記監視部(210,410,60)により、前記複数の車載デバイスのうちのいずれかが前記証拠データを提供不能であると判定された場合に、前記複数の車載デバイスのうちの残りの車載デバイスから前記通信機(24)を介して前記車外装置(60)へ前記証拠データを提供させるように構成された送信制御部(220)を更に備える、
請求項3に記載の盗難抑制装置。
【請求項9】
前記車両(10)の正規ユーザによる前記車両の始動を含む前記正規ユーザの前記車両へのアクセスの履歴を記憶するように構成された記憶部(22)を更に備え、
前記実行部(230,410,60)は、前記履歴に前記車両の始動が含まれており、且つ、前記車両の始動の後において、前記監視部により前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、前記盗難抑制処理を実行するように構成されている、
請求項1に記載の盗難抑制装置。
【請求項10】
前記車両(10)の正規ユーザによる前記車両の始動を含む前記正規ユーザの前記車両へのアクセスの履歴を記憶するように構成された記憶部(22)と、
前記車両の移動を検出するように構成された移動検出部(210,410,60)と、を更に備え、
前記実行部(230,410,60)は、前記移動検出部により前記車両の移動が検出され、且つ、前記履歴に前記車両の移動の検出前における前記車両の始動が含まれていない場合に、前記盗難抑制処理を実行するように構成されている、
請求項1に記載の盗難抑制装置。
【請求項11】
前記実行部(60)は、前記車外装置(60)に備えられており、
前記盗難抑制処理は、
前記正規ユーザへ通知することと、
前記正規ユーザへ通知してから第4時間が経過する前の間に、前記正規ユーザから盗難が発生していないことを確認できない場合に、前記車両から周囲へ警告を発報すること、及び/又は、所定機関へ通報すること、を含む、
請求項9又は10に記載の盗難抑制装置。
【請求項12】
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)が実行する盗難抑制方法であって、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視し、
前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定し、
前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行する、
盗難抑制方法。
【請求項13】
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)に、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視することと、
前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定することと、
前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行することと、を実行させる、
盗難抑制プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の盗難を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両盗難通報装置は、キーロック解除センサと、窓ガラス破壊センサと、エンジンОNセンサと、を備え、キーロックの強制解除又は窓ガラス破壊を検知した場合に、車両の所有者の携帯電話機へ通知し、さらに、エンジンОNを検知した場合に、警備会社へ通報する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-99713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両盗難通報装置は、正規ユーザが車両のキーを解除して車両を始動させた後に車両が盗まれた場合には、盗難に対応することができない。
本開示の1つの局面は、正規ユーザが車両を始動させた後に車両が盗まれることを抑制可能な盗難抑制装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面の盗難抑制装置は、車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用され、監視部(210,410,60)と、実行部(230,410,60)と、を備える。監視部は、少なくとも一つの車載デバイス及び通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視して、車外装置へ証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、車両の盗難が発生していることを判定する。実行部は、監視部により、盗難発生と判定された場合に、盗難抑制処理を実行する。
【0006】
本開示の1つの局面の盗難抑制装置によれば、正規ユーザが車両を始動させた後に車両が盗まれた場合でも、証拠データが車外装置へ提供されるため、盗難の証拠が残る。また、車載デバイスや通信機の状態が監視されているため、窃盗犯が証拠データを残さないように車載デバイスや通信機を破壊した場合には、盗難抑制処理が実行される。したがって、上記盗難抑制装置は、正規ユーザが車両を始動させる前だけでなく、正規ユーザが車両を始動させた後であっても、車両が盗まれることを抑制できる。
【0007】
本開示の別の1つの局面の盗難抑制方法は、車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)により実行され、少なくとも一つの車載デバイス及び通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視し、車外装置へ証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、車両の盗難が発生していることを判定し、車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行する。
【0008】
処理装置が上記盗難抑制方法を実行することにより、上記盗難抑制装置と同様の効果を奏する。
【0009】
本開示の別の1つの局面の盗難抑制プログラムは、車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)に、少なくとも一つの車載デバイス及び通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視することと、車外装置へ証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、車両の盗難が発生していることを判定することと、車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行することと、を実行させる。
【0010】
処理装置が上記盗難抑制プログラムを実行することにより、上記盗難抑制装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る盗難抑制システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る盗難抑制システムの機能構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る盗難抑制ECUが実行する監視処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係るエンジンECUが実行する走行制限処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係るクラウドが実行する通知処理を示すフローチャートでる。
図6】第2実施形態に係る盗難抑制ECUが実行する監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
<1-1.構成>
図1及び2を参照して、本実施形態に係る盗難抑制システム100の構成について説明する。盗難抑制システム100は、車両10と、クラウド60と、携帯端末80と、を備える。車両10は、車両10の盗難に関する複数種類の証拠データをクラウド60へ提供する。複数種類の証拠データは、例えば、窃盗犯を撮影した撮影画像、車両10の不正なロック解除の検知データ、車両10の不正な始動の検知データなどである。車両10は、複数種類の証拠データのうちのいずれかが提供不能である場合に、すなわち、車両10が盗まれ、窃盗犯により証拠データを取得する機器が破壊された可能性が高い場合に、車両10の走行継続を困難にさせる。
【0013】
クラウド60は、車両10から提供された証拠データを保存する。また、クラウド60は、車両10から提供された証拠データに基づいて、車両10の盗難発生を検知した場合に、携帯端末80へ通知する。
【0014】
車両10は、複数の車載デバイスを備える。複数の車載デバイスは、複数の検知機器と、複数の電子制御装置(以下、ECU)と、第1通信機24と、を含む。車両10は、複数の検知機器として、カメラ11と、GPS受信機12と、ドアセンサ13と、を備える。
【0015】
また、車両10は、複数のECUとして、盗難抑制ECU20と、ボデーECU30と、エンジンECU40と、を備える。複数のECUは、互いに、CAN(登録商標)等の通信線で接続されている。さらに、車両10は、走行駆動源として、エンジン14を備える。車両10は、エンジン14の代わりに、あるいは、エンジン14に加えて、走行駆動源として走行用モータを備えていてもよい。エンジン14は、信号線でエンジンECU40に接続されている。
【0016】
カメラ11は、車両10の車室内、特に運転席を撮影する。カメラ11は、例えば、車両10のバックミラーに設置されている。GPS受信機12は、GPS衛星からGPS信号を受信して、車両10の現在位置を算出する。カメラ11及びGPS受信機12は、信号線で盗難抑制ECU20に接続されている。
【0017】
ドアセンサ13は、車両10のドア、特に運転席のドアに設置されており、ドアの開閉を検出する。ドアセンサ13は、信号線でボデーECU30に接続されている。第1通信機24は、無線通信により広域通信ネットワークを介して、クラウド60及び携帯端末80と、データの送受信を行う。第1通信機24は、盗難抑制ECU20に配置されている。
【0018】
ボデーECU30は、CPU31、ROM32、及びRAM33を備える。ボデーECU30は、CPU31が、ROM32に記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。本実施形態では、ボデーECU30は、ドア監視部310の機能を備える。
【0019】
ドア監視部310は、ドアセンサ13の動作を制御し、ドアセンサ13からドア信号を受信する。ドア信号は、ドアが閉まっている状態か開いている状態かを示す。また、ドア監視部310は、ドアセンサ13の状態を監視して、ドアセンサ13の故障を検知する。具体的には、ドア監視部310は、ドアセンサ13とボデーECU30との間の通信が正常に行われているか監視し、通信線の断線を検出したことに基づいて、ドアセンサ13の故障を検出する。ドア監視部310は、ドアの開閉状態を盗難抑制ECU20及びエンジンECU40へ送信する。また、ドア監視部310は、ドアセンサ13の故障を検出した場合に、盗難抑制ECU20へドアセンサ13の故障発生の情報を送信する。また、ドア監視部310は、車両10のロックが車両10の正規キーで解除されたことを検知し、盗難抑制ECU20へロック解除を通知する。
【0020】
また、ボデーECU30は、盗難抑制ECU20及び/又はクラウド60から警告の発報の要求を受けた場合に、車両10のハザードを点滅させたり、ホーンを鳴らしたりする。これにより、車両10の周囲にいる人が、車両10が非常事態になっていることを認識する。ひいては、車両10が窃盗犯に持ち去さられることが抑制される。
【0021】
エンジンECU40は、CPU41、ROM42、及びRAM43を備える。エンジンECU40は、CPU41が、ROM42に記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。本実施形態では、エンジンECU40は、駆動制御部410の機能を備える。エンジンECU40は、盗難抑制ECU20と定期通信を行う。
【0022】
駆動制御部410は、エンジン14の駆動を制御する。また、駆動制御部410は、盗難抑制ECU20から走行制限要求を受けた場合、及び、盗難抑制ECU20からエンジンECU40への通信が途絶した場合に、車両10の走行が停止又は低速になるように、エンジン14の駆動を制御する。また、駆動制御部410は、車両10の正規ユーザによるエンジン14の始動を検知した場合に、盗難抑制ECU20へ正規ユーザによるエンジン14の始動を通知する。正規ユーザは、正規キーを使用しているユーザ、予め登録されているユーザなど、車両10を使用することを所有者に認められているユーザである。
【0023】
なお、車両10が、エンジン14の代わりに、走行駆動源として走行用モータを備えている場合には、車両10は、エンジンECU40の代わりに、走行用モータの駆動を制御し、盗難抑制ECU20と定期通信を行うモータECUを備える。モータECUは、盗難抑制ECU20から走行制限要求を受けた場合、及び、盗難抑制ECU20からモータECUへの通信が途絶した場合に、車両10の走行が停止又は低速になるように、モータの駆動を制御する。
【0024】
盗難抑制ECU20は、CPU21、ROM22、RAM23、及び第1通信機24を備える。盗難抑制ECU20は、CPU21が、ROM22に記憶されているプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。本実施形態では、盗難抑制ECU20は、機器監視部210、通信制御部220、及び走行制御部230の機能を備える。
【0025】
機器監視部210は、カメラ監視部211及びGPS監視部212の機能を備える。カメラ監視部211は、カメラ11の動作を制御し、カメラ11により撮影された撮影画像を取得する。また、カメラ監視部211は、カメラ11の状態を監視して、カメラ11の故障を検知する。具体的には、カメラ監視部211は、カメラ11と盗難抑制ECU20との間の通信が正常に行われているか監視し、通信線の断線を検出したこと、又は、所定期間に亘ってカメラ11から撮影画像を受信しないことに基づいて、カメラ11の故障を検出する。
【0026】
GPS監視部212は、GPS受信機12の動作を制御し、GPS受信機12から車両10の現在位置を取得する。また、GPS監視部212は、GPS受信機12の状態を監視して、GPS受信機12の故障を検知する。具体的には、GPS監視部212は、GPS受信機12と盗難抑制ECU20との間の通信が正常に行われているか監視し、通信線の断線を検出したこと、又は、所定期間に亘ってGPS受信機12から現在位置を受信しないことに基づいて、GPS受信機12の故障を検出する。
【0027】
カメラ11、GPS受信機12、及びドアセンサ13のいずれかが故障している場合、クラウド60へ証拠データを提供不能な状態が発生している。機器監視部210は、証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、車両10の盗難が発生していることを判定する。また、機器監視部210は、ボデーECU30からロック解除の通知を受けると、正規ユーザのアクセス履歴として、ロック解除をROM22に記憶する。また、機器監視部210は、エンジンECU40からエンジン14の始動の通知を受けると、正規ユーザのアクセス履歴として、エンジン14の始動をROM22に記憶する。
【0028】
通信制御部220は、第1通信機24を介して、所定周期で、車両10の現在位置及びユーザ履歴をクラウド60へ送信する。また、通信制御部220は、カメラ11、GPS受信機12、及びドアセンサ13のいずれかが証拠データを提供不能である場合に、残りの検知機器により取得された証拠データを、第1通信機24を介して、クラウド60へ送信する。したがって、車両10の窃盗犯にドアセンサ13が破壊された場合でも、カメラ11の撮影画像がクラウド60に保存される。
【0029】
走行制御部230は、機器監視部210により車両10の盗難が発生していると判定された場合に、盗難抑制処理を実行する。盗難抑制処理は、車両10の走行継続を困難にさせる処理である。具体的には、走行制御部230は、エンジンECU40へ走行制限を要求する。走行制御部230は、走行制限の要求に代えて、あるは、走行制限の要求に加えて、ボデーECU30へハザードやクラクションによる車両10からの警告の発報を要求してもよい。
【0030】
クラウド(又は、サーバ装置)60は、CPU61、不揮発性ストレージ62、RAM63、及び第2通信機64などのコンピューティングリソースによって実現される。クラウド60を実現するために、CPU61が不揮発性ストレージ62に記憶されているプログラムを実行する。
【0031】
クラウド60は、車両10の現在位置及びユーザ履歴に基づいて、車両10の盗難が発生しているか判定する。クラウド60は、車両10の盗難が発生していると判定した場合に、携帯端末80へ異常発生を通知する。携帯端末80は、車両10の所有者又は正規ユーザが所持する、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス等の端末である。クラウド60は、携帯端末80から、車両10の盗難が発生していないとの返答を受けなかった場合には、車両10の盗難発生を警備会社等の所定機関へ通報する。
【0032】
<1-2.処理>
<1-2-1.盗難抑制ECUの処理>
次に、図3のフローチャートを参照して、盗難抑制ECU20が実行する監視処理について説明する。盗難抑制ECU20は、本処理を常に所定周期で繰り返し実行している。すなわち、盗難抑制ECU20は、車両10の駐車中も本処理を実行している。盗難抑制ECU20が本処理を実行するタイミングは、正規ユーザがドアを開けた後の時点、又は正規ユーザがエンジン14を始動した後の時点を含む。
【0033】
S10では、盗難抑制ECU20は、検知機器類の故障の発生及び車両10のドアの開閉をモニタする。本実施形態では、検知機器類は、カメラ11、GPS受信機12、及びドアセンサ13を含む。
【0034】
S20では、盗難抑制ECU20は、検知機器類のいずれかが故障したか否か判定する。盗難抑制ECU20は、検知機器類のいずれも故障していないと判定した場合には、S10の処理へ戻り、検知機器類のいずれかが故障していると判定した場合には、S30の処理へ進む。
【0035】
S30では、盗難抑制ECU20は、故障していない正常な検知機器類から、第1通信機24を介してクラウド60へ情報を送信する。
S40では、盗難抑制ECU20は、(i)車両10のドアが開閉した時点から第1時間経過するまでの間に、検知機器類のいずれかが故障したか、又は、(ii)第2時間内に検知機器類のうちの2つ以上が故障したか、判定する。第1時間及び第2時間は、数分から数十分程度の短い時間であり、例えば、1~10分である。第2時間は、第1時間と同じでもよいし異なっていてもよい。盗難抑制ECU20は、上記(i)及び上記(ii)の両方について否定判定をした場合は、S10の処理へ戻る。盗難抑制ECU20は、上記(i)及び上記(ii)の少なくとも一方について肯定判定した場合は、S50の処理へ進む。
【0036】
S50では、盗難抑制ECU20は、車両10の走行継続を困難にするため、エンジンECU40へ走行制限を要求する。車両10のドアが開閉してから短時間に、検知機器類のいずれかが故障した場合には、窃盗犯が車両10に乗り込み、検知機器のいずれかを破壊した可能性が高い。したがって、盗難抑制ECU20は、S40において上記(i)について肯定判定した場合には、車両10の盗難が発生したと判定して、エンジンECU40へ走行制限を要求する。
【0037】
また、短時間に複数の検知機器が故障した場合には、窃盗犯が複数の検知機器を破壊した可能性が高い。したがって、盗難抑制ECU20は、S40において上記(ii)について肯定判定した場合には、車両10の盗難が発生したと判定して、エンジンECU40へ走行制限を要求する。
【0038】
<1-2-2.エンジンECUの処理>
次に、図4のフローチャートを参照して、エンジンECU40が実行する走行制限処理について説明する。エンジンECU40は、本処理を常に所定周期で繰り返し実行している。すなわち、エンジンECU40は、車両10の駐車中も本処理を実行している。エンジンECU40が本処理を実行するタイミングは、正規ユーザがドアを開けた後の時点、又は正規ユーザがエンジン14を始動した後の時点を含む。
【0039】
S100では、エンジンECU40は、盗難抑制ECU20との通信をモニタする。詳しくは、エンジンECU40は、盗難抑制ECU20から予め設定されている周期で定期的にデータが送られているかモニタする。
【0040】
S110では、エンジンECU40は、車両10のドアの開閉をモニタする。
S120では、エンジンECU40は、ドアが開閉した時点から第3時間経過するまでの間に、盗難抑制ECU20からの通信が途絶したか判定する。第3時間は、数分から数十分程度の短い時間であり、例えば、1~10分である。第3時間は、第1時間又は第2時間と同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
車両10のドアが開閉してから短時間に、盗難抑制ECU20からエンジンECU40への通信が途絶した場合には、窃盗犯が盗難抑制ECU20を破壊したり取り外したりしたりした可能性が高い。盗難抑制ECU20は、車両10の盗難を検知するためのECUであるため、窃盗犯が車両10を盗むときに盗難抑制ECU20を破壊したり取り外したりする可能性がある。一方、エンジンECU40は、車両10の走行駆動源を制御するECUであるため、窃盗犯がエンジンECU40を破壊したり取り外したりする可能性は低い。そこで、エンジンECU40が盗難抑制ECU20との通信をモニタして、車両10の盗難を検知する。エンジンECU40は、通信が途絶したと判定した場合には、S140の処理へ進み、通信が途絶していないと判定した場合は、S130の処理へ進む。
【0042】
S130では、エンジンECU40は、盗難抑制ECU20から走行制限を要求されているか判定する。エンジンECU40は、盗難抑制ECU20から走行制限を要求されていると判定した場合は、S140の処理へ進み、盗難抑制ECU20から走行制限を要求されていないと判定した場合は、S100の処理へ戻る。
【0043】
S140では、エンジンECU40は、(iii)盗難抑制ECU20からの通信が途絶したこと、又は、(iv)盗難抑制ECU20から走行制限を要求されたことに基づいて、車両10の盗難が発生したと判定して、エンジン14を停止させる、又は、エンジン14の出力を低下させる。
【0044】
<1-2-3.クラウドの処理>
次に、図5のフローチャートを参照して、クラウド60が実行する通知処理について説明する。クラウド60が本処理を実行するタイミングは、正規ユーザがドアを開けた後の時点、又は正規ユーザがエンジン14を始動した後の時点を含む。
【0045】
S200では、クラウド60は、盗難抑制ECU20から送信された車両10の現在位置に基づいて、車両10の位置をモニタする。
S210では、クラウド60は、盗難抑制ECU20から送信されたアクセス履歴に基づいて、正規ユーザが車両10のロック開錠又はエンジン14の始動を行ったか判定する。クラウド60は、正規ユーザが車両10のロック開錠及びエンジン14の始動のどちらも行っていないと判定した場合は、S220の処理へ進む。クラウド60は、正規ユーザが車両10のロック開錠又はエンジン14の始動を行ったと判定した場合は、S230の処理へ進む。
【0046】
S220では、クラウド60は、車両10の位置が変化したか判定する。クラウド60は、車両10の位置が変わらないと判定した場合は、S230の処理へ進み、車両10の位置が変化したと判定した場合は、S250の処理へ進む。
【0047】
S230では、クラウド60は、盗難抑制ECU20との通信をモニタする。詳しくは、クラウド60は、盗難抑制ECU20から予め設定されている周期で定期的にデータが送られているかモニタする。
【0048】
S240では、クラウド60は、盗難抑制ECU20からの通信が途絶したか判定する。正規ユーザが車両10のロックを開錠又は車両10を始動させた後に、車両10が盗まれて、第1通信機24が破壊されたり盗難抑制ECU20が破壊又は取り外されたりした場合に、盗難抑制ECU20からの通信が途絶する。クラウド60は、盗難抑制ECU20からの通信が途絶していないと判定した場合は、S200の処理へ戻り、本処理を繰り返し実行する。クラウド60は、盗難抑制ECU20からの通信が途絶したと判定した場合は、S250の処理へ進む。
【0049】
S250では、クラウド60は、車両10の盗難が発生したと判定して、携帯端末80へ異常を通知する。すなわち、クラウド60は、(v)正規ユーザがロック開錠又はエンジン14を始動させていないにもかかわらず、車両10が移動した場合、及び、(vi)盗難抑制ECU20からクラウド60への通信が途絶した場合に、車両10の盗難が発生したと判定する。
【0050】
S260では、クラウド60は、携帯端末80から応答を受信する。車両10の所有者又は正規ユーザは、携帯端末80で通知を受けると、車両10の異常に心当たりがないか確認し、クラウド60へ返答する。車両10の所有者又は正規ユーザは、車両10の異常に心当たりがある場合には、クラウド60へ盗難が発生していないという旨を返答し、車両10の異常に心当たりがない場合には、クラウド60へ盗難が発生している可能性が高い旨を返答する。車両10の異常の心当たりとしては、例えば、車両10を整備に出しており、盗難抑制ECU20からクラウド60への通信が途絶する状況や、友人に車両10を貸している状況が挙げられる。
【0051】
クラウド60は、携帯端末80へ通知を送信してから第4時間が経過するまでの間に、携帯端末80からの返答に基づいて、車両10の盗難が発生していないとの確認ができない場合は、所定機関へ通報する。第4時間は、数分~数十分程度の時間である。所定機関は、予め契約している警備会社や、警察などである。クラウド60は、所定機関への通報の代わりに、あるいは、所定機関への通報に加えて、エンジンECU40へ走行制限を要求してもよいし、ボデーECU30へハザードやホーンによる車両10の周囲へ警告を発報することを要求してもよい。なお、別の実施形態では、クラウド60は、S250の処理を飛ばして、携帯端末80へ異常を通知せずに、所定機関へ直接通報してもよい。あるいは、クラウド60は、携帯端末80が通知を受けることを登録している場合には、携帯端末80へ異常を通知し、携帯端末80が通知を受けることを登録していない場合には、携帯端末80へ異常を通知しないようにしてもよい。
【0052】
<1-3.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)正規ユーザが車両10を始動させた後に車両10が盗まれた場合でも、証拠データがクラウド60へ提供されるため、盗難の証拠が残る。また、カメラ11、GPS受信機12、ドアセンサ13、盗難抑制ECU20、エンジンECU40、ボデーECU30や第1通信機24の状態が監視されているため、窃盗犯が証拠データを残さないようにカメラ11や、GPS受信機12、ドアセンサ13、盗難抑制ECU20、エンジンECU40、ボデーECU30、第1通信機24を破壊した場合には、盗難抑制処理が実行される。したがって、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の少なくとも一つは、正規ユーザが車両10を始動させる前だけでなく、正規ユーザが車両10を始動させた後であっても、車両10が盗まれることを抑制できる。
【0053】
(2)車両10がカメラ11を備えていることにより、窃盗犯の姿を撮影して証拠データを残すことができる。車両10がドアセンサ13を備えていることにより、ドアが開閉されたことを検出できる。車両10がGPS受信機12を備えていることにより、車両10が移動させられたことを検出できる。エンジンECU40は、走行駆動源を制御するため、車両10が盗まれても破壊されたり取り外されたりすることはないが、盗難抑制ECU20は、車両10が盗まれた場合に破壊されたり取り外されたりする可能性がある。エンジンECU40が、エンジンECU40と盗難抑制ECU20との通信を監視することにより、盗難抑制ECU20が破壊されたり取り外されたりした場合に、車両10の盗難の発生を検知することができる。
【0054】
(3)正規ユーザが車両10のドアを開けた後又はエンジン14を始動させた後に、証拠データが提供不能であるか判定される。したがって、正規ユーザが車両10のドアを開けた後又はエンジン14を始動させた後に、車両10が盗まれた場合、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の少なくとも一つは、証拠データを残したり、盗難抑制処理を実行したりすることができる。
【0055】
(4)ドアが開けられてから短時間でいずれかの検知機器が故障した場合は、窃盗犯が検知機器を破壊した可能性が高いため、車両10の盗難が発生したと判定される。これにより、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の少なくとも一つは、車両10が盗まれた可能性が高い場合に、証拠データを残したり、盗難抑制処理を実行したりすることができる。
【0056】
(5)短時間に複数の検知機器が故障した場合には、窃盗犯が複数の検知機器を破壊した可能性が高いため、車両10の盗難が発生したと判定される。これにより、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の少なくとも一つは、車両10が盗まれた可能性が高い場合に、証拠データを残したり、盗難抑制処理を実行したりすることができる。
【0057】
(6)ドアが開けられてから短時間で、盗難抑制ECU20からエンジンECU40への通信が途絶した場合は、窃盗犯が信号線を切断したり、盗難抑制ECU20を取り外したりした可能性が高いため、車両10の盗難が発生したと判定される。これにより、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の少なくとも一つは、車両10が盗まれた可能性が高い場合に、証拠データを残したり、盗難抑制処理を実行したりすることができる。
【0058】
(7)盗難抑制処理として、ボデーECU30が車両10のハザードを点滅させたり、ホーンを鳴らしたりすることにより、車両10の周囲に盗難の発生を知らせることができる。ひいては、窃盗犯に車両10の運転継続を断念させることにより、車両10が持ち去られることを抑制することができる。
【0059】
(8)盗難抑制処理として、エンジンECU40がエンジン14を停止させたり、エンジン14の出力を低下させたりすることによって、走行が制限され、窃盗犯に車両10が持ち去られることを抑制することができる。
【0060】
(9)カメラ11、GPS受信機12及びドアセンサ13のいずれかが故障しても、故障していない他の検知機器から、第1通信機24を介してクラウド60へデータが送信される。これにより、車両10の盗難の証拠データを残すことができる。
【0061】
(10)クラウド60は、携帯端末80を介して所有者又は正規ユーザへ異常の発生を通知しても、所有者又は正規ユーザから車両10の盗難が発生していない旨の返答を得られない場合には、ボデーECU30へ警告の発報を要求したり、エンジンECU40へ走行制限を要求したりする。さらに、クラウド60は、警備会社等の所定機関へ盗難発生を通報する。これにより、車両10の盗難を抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
第2実施形態では、盗難抑制ECU20が実行する監視処理が、第1実施形態と相違する。
【0063】
<2-2.処理>
次に、図6のフローチャートを参照して、第2実施形態の盗難抑制ECU20が、第1実施形態の図3のフローチャートに代えて実行する監視処理について説明する。
【0064】
S300では、盗難抑制ECU20は、検知機器類の故障をモニタするとともに、車両10のドアの開閉及び車両10の位置をモニタする。
続いて、S310及びS320では、盗難抑制ECU20は、S20及びS30と同様の処理を実行する。
【0065】
続いて、S330では、盗難抑制ECU20は、正規ユーザによる車両10へのアクセス(例えば、車両10のロック開錠、車両10の始動など)があるか判定する。盗難抑制ECU20は、正規ユーザによる車両10へのアクセスがないと判定した場合には、S300の処理へ戻り、正規ユーザによる車両10へのアクセスがあると判定した場合には、S340の処理へ進む。
【0066】
S340では、盗難抑制ECU20は、アクセス履歴として、正規ユーザの車両10へのアクセスをROM22に記録する。
続いて、S350では、盗難抑制ECU20は、アクセス履歴に基づいて、正規ユーザにより車両10(具体的には、エンジン14)が始動された後か判定する。盗難抑制ECU20は、正規ユーザにより車両10が始動されていないと判定した場合は、S370の処理へ進み、正規ユーザにより車両10が始動された後であると判定した場合は、S360の処理へ進む。
【0067】
S360では、盗難抑制ECU20は、S40と同様の処理を実行し、上記(i)及び上記(ii)の両方について否定判定をした場合は、S300の処理へ戻る。盗難抑制ECU20は、上記(i)及び上記(ii)の少なくとも一方について肯定判定した場合は、S380の処理へ進む。
【0068】
S370では、盗難抑制ECU20は、車両10の位置が変化したか判定し、車両10の位置が変化していないと判定した場合は、S300の処理へ戻り、車両10の位置が変化したと判定した場合は、S380の処理へ進む。
【0069】
S380では、盗難抑制ECU20は、車両10の盗難が発生したと判定して、エンジンECU40へ走行制限を要求する。
【0070】
<2-3.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果(1)~(10)の効果を奏し、さらに、以下の効果を奏する。
【0071】
(11)正規ユーザにより車両10が始動された後に、証拠データを提供不能であると判定された場合、窃盗犯が検知機器類を破壊した可能性が高いため、盗難抑制処理が実行される。したがって、正規ユーザが車両10を始動させた後に、車両10が盗まれることを抑制できる。
【0072】
(12)正規ユーザにより車両10が始動されていないにもかかわらず、車両10の移動が検出された場合、窃盗犯が車両10を始動させて移動させている可能性が高いため、盗難抑制処理が実行される。したがって、正規ユーザが車両10始動させていない場合に、車両10が盗まれることを抑制できる。
【0073】
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0074】
(a)上記実施形態では、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60の各々が、本開示の盗難抑制装置の一例に相当するが、本開示はこれに限定されない。本開示の盗難抑制装置が備える複数の機能は、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60のいずれか1つの装置のみに配置されていてもよいし、いずれか2つの装置に配置されていてもよい。すなわち、盗難抑制ECU20、エンジンECU40及びクラウド60のいずれか1つの装置が盗難抑制装置に相当してもよいし、いずれか2つの各々が盗難抑制装置に相当してもよい。
【0075】
(b)上記実施形態では、図3及び6に示すフローチャートを盗難抑制ECU20が実行したが、本開示はこれに限定されない。エンジンECU40又はクラウド60が、盗難抑制ECU20から検知機器類の故障情報を受けて、図3及び図6に示すフローチャート実行してもよい。上記実施形態では、図4に示すフローチャートをエンジンECU40が実行したが、本開示はこれに限定されない。クラウド60が、盗難抑制ECU20からドアの開閉情報を受けて、図4に示すフローチャートを実行してもよい。
【0076】
(c)車両10が備える車載デバイスは、カメラ11、GPS受信機12、ドアセンサ13、盗難抑制ECU20、エンジンECU40、ボデーECU30や第1通信機24の状態が監視されているため、窃盗犯が証拠データを残さないようにカメラ11や、GPS受信機12、ドアセンサ13、盗難抑制ECU20、エンジンECU40、ボデーECU30、第1通信機24のうちの少なくとも一つが削除されてもよいし、これら以外のデバイスが含まれていてもよい。
【0077】
(d)車両10が備える検知機器類は、カメラ11、GPS受信機12及びドアセンサ13のうちの少なくとも一つが削除されてもよいし、これら以外の検知機器が含まれていてもよい。
【0078】
(e)本開示に記載の盗難抑制ECU20、ボデーECU30、エンジンECU40、クラウド60及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のボデーECU30、エンジンECU40、クラウド60及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のボデーECU30、エンジンECU40、クラウド60及びその手法は、一つ又は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。ボデーECU30、エンジンECU40、クラウド60に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0079】
(f)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0080】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される盗難抑制装置(20,40,60)であって、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視して、前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成された監視部(210,410,60)と、
前記監視部により前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行するように構成された実行部(230,410,60)と、を備える、
盗難抑制装置。
[項目2]
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、前記車両のエンジン(14)又は走行用モータ(14)を制御するように構成された第1制御装置(40)、前記車両(10)のドアの開閉を検出するように構成されたドアセンサ(13)、前記車両の室内を撮影するように構成されたカメラ(11)、GPS信号を受信するように構成されたGPS受信機(12)、前記第1制御装置と定期的に通信するように構成された第2制御装置(20)、及び前記ドアセンサを制御するように構成された第3制御装置のうちの少なくとも一つを含む、
項目1に記載の盗難抑制装置。
[項目3]
前記監視部(210,410,60)は、前記車両の正規ユーザが前記車両のドアを開けた後の時点、及び/又は前記車両のエンジンを始動した後の時点を含む少なくとも一つの判定タイミングを設定し、設定した前記少なくとも一つの判定タイミングにおいて、前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
項目1又は2に記載の盗難抑制装置。
[項目4]
前記監視部(210,410,60)は、前記車両のドアが開けられてから第1時間が経過するまでの間に、前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)のうちのいずれかの故障を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
項目1~3のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目5]
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、複数の車載デバイスを含み、
前記監視部(210,410,60)は、第2時間内に、前記複数の車載デバイスのうちの2つ以上の故障を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
項目1~4のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目6]
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、前記車両のエンジン(14)又は走行用モータ(14)を制御するように構成された第1制御装置(40)と、前記第1制御装置と定期的に通信するように構成された第2制御装置(20)とを含み、
前記監視部(410)は、前記車両のドアが開いてから第3時間が経過するまでの間に、前記第2制御装置から前記第1制御装置への通信途絶を検知した場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定するように構成されている、
項目1~5のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目7]
前記盗難抑制処理は、前記車両の運転継続を困難にさせる、
項目1~6のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目8]
前記少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)は、複数の車載デバイスを含み、
前記監視部(210,410,60)により、前記複数の車載デバイスのうちのいずれかが前記証拠データを提供不能であると判定された場合に、前記複数の車載デバイスのうちの残りの車載デバイスから前記通信機(24)を介して前記車外装置(60)へ前記証拠データを提供させるように構成された送信制御部(220)を更に備える、
項目1~7のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目9]
前記車両(10)の正規ユーザによる前記車両の始動を含む前記正規ユーザの前記車両へのアクセスの履歴を記憶するように構成された記憶部(22)を更に備え、
前記実行部(230,410,60)は、前記履歴に前記車両の始動が含まれており、且つ、前記車両の始動の後において、前記監視部により前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、前記盗難抑制処理を実行するように構成されている、
項目1~8のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目10]
前記車両(10)の正規ユーザによる前記車両の始動を含む前記正規ユーザの前記車両へのアクセスの履歴を記憶するように構成された記憶部(22)と、
前記車両の移動を検出するように構成された移動検出部(210,410,60)と、を更に備え、
前記実行部(230,410,60)は、前記移動検出部により前記車両の移動が検出され、且つ、前記履歴に前記車両の移動の検出前における前記車両の始動が含まれていない場合に、前記盗難抑制処理を実行するように構成されている、
項目1~9のいずれか1項目に記載の盗難抑制装置。
[項目11]
前記実行部(60)は、前記車外装置(60)に備えられており、
前記盗難抑制処理は、
前記正規ユーザへ通知することと、
前記正規ユーザへ通知してから第4時間が経過する前の間に、前記正規ユーザから盗難が発生していないことを確認できない場合に、前記車両から周囲へ警告を発報すること、及び/又は、所定機関へ通報すること、を含む、
項目9又は10に記載の盗難抑制装置。
[項目12]
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)が実行する盗難抑制方法であって、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視し、
前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定し、
前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行する、
盗難抑制方法。
[項目13]
車両(10)に搭載された少なくとも一つの車載デバイス(11,12,13,20,30,40)から通信機(24)を介して車外装置(60)へ前記車両の盗難に関する証拠データを提供するシステムに適用される処理装置(20,40,60)に、
前記少なくとも一つの車載デバイス及び前記通信機のうちの少なくとも一つの状態を監視することと、
前記車外装置へ前記証拠データを提供不能な状態が発生している場合に、前記車両の盗難が発生していることを判定することと、
前記車両の盗難が発生していることが判定された場合に、盗難抑制処理を実行することと、を実行させる、
盗難抑制プログラム。
【符号の説明】
【0081】
10…車両、11…カメラ、12…GPS受信機、13…ドアセンサ、14…エンジン、20…盗難抑制ECU、24…第1通信機、30…ボデーECU、40…エンジンECU、60…クラウド、64…第2通信機、80…携帯端末、100…盗難抑制システム、210…機器監視部、211…カメラ監視部、212…GPS監視部、220…通信制御部、230…走行制御部、310…ドア監視部、410…駆動制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6