(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121465
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】算出プログラムおよび算出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/36 20200101AFI20240830BHJP
G06F 30/373 20200101ALI20240830BHJP
【FI】
G06F30/36
G06F30/373
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028592
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA23
5B146DC04
(57)【要約】
【課題】リアクタンス回路を容易に設計することが可能な算出プログラムを提供する。
【解決手段】算出プログラムは、コンピュータを、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得するS10取得部と、前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出するS12算出部と、として機能させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得する取得部と、
前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出する算出部と、
として機能させる算出プログラム。
【請求項2】
前記第1行列において、Γij=Γjiである請求項1に記載の算出プログラム。
【請求項3】
前記算出部は、前記条件を目的関数とし、前記第1行列を最適化することにより前記第1行列を算出する請求項1または請求項2に記載の算出プログラム。
【請求項4】
前記算出部は、前記算出された第1行列に基づき、前記リアクタンス回路の回路パラメータを算出する請求項1または請求項2に記載の算出プログラム。
【請求項5】
前記回路パラメータは、第1端がポートPiに接続され第2端が共通ノードに接続されたサブリアクタンス回路の各々において、前記第1端と前記第2端との間において交互に直列接続とシャント接続された1または複数のリアクタンス素子の個数と前記1または複数のリアクタンス素子のリアクタンス値を含む請求項4に記載の算出プログラム。
【請求項6】
前記リアクタンス回路は、増幅回路に用いる整合回路である請求項1または請求項2に記載の算出プログラム。
【請求項7】
前記算出部は、前記増幅回路の動作帯域内の周波数である基本波における前記第1行列と、前記周波数の高調波における、対角要素以外が0であり、アドミタンス行列、インピーダンス行列または散乱行列を含む第2行列と、を算出する請求項6に記載の算出プログラム。
【請求項8】
前記第1行列は、アドミタンス行列である請求項1または請求項2に記載の算出プログラム。
【請求項9】
iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得するステップと、
前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出するステップと、
を含む算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、算出プログラムおよび算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路等の整合回路には、インダクタおよびキャパシタ等のリアクタンス素子を用いたリアクタンス回路が用いられている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクタンス回路の設計は、リアクタンス回路を含む電子回路の特性が所望の値となるように、リアクタンス素子の接続関係および素子値を変え、最適化する。しかしながら、リアクタンス素子の接続関係および素子値は無限にあるため、アルゴリズムが複雑化する。また、局所解となり最適化することができない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みなされたものであり、リアクタンス回路を容易に設計することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態は、コンピュータを、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得する取得部と、前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出する算出部と、として機能させる算出プログラムである。
【0007】
本開示は、このような特徴的な算出プログラムおよび算出方法として実現することができるだけでなく、かかる特徴的なステップを処理する算出装置として実現することができる。また、算出装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、算出装置を含む算出システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、リアクタンス回路を容易に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1において回路パラメータを算出するリアクタンス回路のブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1におけるコンピュータのブロック図である。
【
図3】
図3は、実施例1における算出装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施例1における回路パラメータを抽出する算出方法を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施例1におけるアドミタンス行列を最適化する方法を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、リアクタンス回路の回路例Aを示す回路図である。
【
図7】
図7は、リアクタンス回路の回路例Bを示す回路図である。
【
図8】
図8は、回路例Bにおけるサブリアクタンス回路の回路図である。
【
図9】
図9は、実施例1における回路パラメータを最適化する方法を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例2におけるドハティ増幅回路を示す回路図である。
【
図11】
図11は、実施例2にいて回路パラメータを算出する整合回路のブロック図である。
【
図12】
図12は、実施例2におけるドハティ増幅器の入力電力Pinに対する出力電力Poutおよびドレイン効率Effを示す模式図である。
【
図13】
図13は、
図4のステップS14において出力されるアドミタンス行列の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の一実施形態は、コンピュータを、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得する取得部と、前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出する算出部と、として機能させる算出プログラムである。これにより、リアクタンス回路を容易に設計できる。
(2)上記(1)において、前記第1行列において、Γij=Γjiであってもよい。これにより、算出する第1行列のパラメータの個数を減らすことができる。
(3)上記(1)または(2)において、前記算出部は、前記条件を目的関数とし、前記第1行列を最適化することにより前記第1行列を算出してもよい。これにより、第1行列を最適化できる。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記算出部は、前記算出された第1行列に基づき、前記リアクタンス回路の回路パラメータを算出してもよい。これにより、回路パラメータの算出のアルゴリズムが複雑化することを抑制できる。
(5)上記(4)において、前記回路パラメータは、第1端がポートPiに接続され第2端が共通ノードに接続されたサブリアクタンス回路の各々において、前記第1端と前記第2端との間において交互に直列接続とシャント接続された1または複数のリアクタンス素子の個数と前記1または複数のリアクタンス素子のリアクタンス値を含んでもよい。これにより、回路パラメータの個数を削減できる。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記リアクタンス回路は、増幅回路に用いる整合回路であってもよい。これにより、整合回路を精度よく設計できる。
(7)上記(6)において、前記算出部は、前記増幅回路の動作帯域内の周波数である基本波における前記第1行列と、前記周波数の高調波における、対角要素以外が0であり、アドミタンス行列、インピーダンス行列または散乱行列を含む第2行列と、を算出してもよい。これにより、高調波を考慮した回路パラメータを算出できる。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記第1行列は、アドミタンス行列であってもよい。これにより、ポートをグランドに対しオープンとして扱える。
(9)本開示の一実施形態は、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得するステップと、前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出するステップと、を含む算出方法である。これにより、リアクタンス回路を容易に設計できる。
(10)本開示の一実施形態は、メモリと、iは1からNの整数であり、Nは2以上の整数であり、高周波信号が入力または出力するN個のポートPiを有するリアクタンス回路の第1行列を算出するための条件を取得し、前記条件に基づき、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がΓij=|Γij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む前記第1行列を算出するプロセッサと、を備える算出装置である。これにより、リアクタンス回路を容易に設計できる。
【0011】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態にかかる算出プログラムおよび算出方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0012】
以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。算出装置は、コンピュータを備えて構成され、算出装置の各機能は、コンピュータの記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムがコンピュータのCPU(Central Processing Unit)によって実行されることで発揮される。コンピュータプログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)またはDVD(Digital Versatile Disc)などの記憶媒体に記憶させることができる。
【0013】
[リアクタンス回路の設計について]
リアクタンス回路は、無損失回路であり、リアクタンス素子のみにより形成された回路である。リアクタンス素子は、インダクタ、キャパシタおよび伝送線路などのインピーダンスに抵抗成分をほとんど有さない素子である。リアクタンス回路の回路設計は、リアクタンス回路内の1または複数のリアクタンス素子の接続関係および各リアクタンス素子の素子値等の回路パラメータを最適化し、リアクタンス回路またはリアクタンス回路を含む電子回路の特性が目標特性となるように行う。例えばマイクロ波(300MHzから30GHz)またはミリ波(30GHzから300GHz)の回路設計には散乱行列(Sパラメータ)が用いられることが多い。
【0014】
しかし、Sパラメータは、各ポートに入力される高周波信号の電力と各ポートから出力される高周波信号の電力とから表現される。このため、抵抗成分とリアクタンス成分(またはコンダクタンス成分とサセプタンス成分)を用い表現することができず、リアクタンス回路を適切に表現できないことがある。そこで、以下の実施例では、コンダクタンス成分とサセプタンス成分とを用い表現できるアドミタンス行列(Yパラメータ)を用いる。Yパラメータ以外に、抵抗成分とリアクタンス成分とを用い表現されるインピーダンス行列(Zパラメータ)を用いてもよい。
【0015】
[実施例1]
以下、実施例1におけるリアクタンス回路のアドミタンス行列および回路パラメータを抽出する算出方法について説明する。
[リアクタンス回路の説明]
図1は、実施例1において回路パラメータを算出するリアクタンス回路のブロック図である。
図1に示すように、リアクタンス回路10は、高周波信号が入力または出力する複数のポートP1、P2、PiからPN-1、PNを備えている。ここで、Nは、リアクタンス回路10のポートP1からPNの個数に相当する整数であり、2以上である。iは1からNの整数である。以下、
図1のリアクタンス回路10のアドミタンス行列および回路パラメータを最適化する算出方法について説明する。
【0016】
[コンピュータのブロック図]
図2は、実施例1におけるコンピュータのブロック図である。コンピュータ30は、ソフトウエアと協働し、リアクタンス回路10のアドミタンス行列および回路パラメータを算出する算出装置として機能する。コンピュータ30は、算出プログラムを実行し、算出方法を実行する。
【0017】
コンピュータ30は、プロセッサ32、メモリ34、入出力装置36および内部バス38を備えている。プロセッサ32は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、分布定数回路の等価回路モデルを用いて、算出プログラムおよび算出方法を実行する。メモリ34は、例えば揮発性メモリまたは不揮発性メモリであり、プロセッサ32が算出プログラムおよび算出方法を実行するときに用いるデータ等を記憶する。メモリ34は、プロセッサ32が実行する算出プログラムを記憶してもよい。入出力装置36は、プロセッサ32が取得するデータを外部装置から入力し、プロセッサ32が出力するデータを外部装置に出力する。外部装置は、別のコンピュータ、または同じコンピュータ内の別プログラムなどである。内部バス38は、プロセッサ32、メモリ34および入出力装置36を接続し、データ等を伝送する。算出プログラムは、記憶媒体35に記憶される。記憶媒体35は、例えば一時的でない有形の媒体であり、CD-ROMまたはDVD等である。
【0018】
[機能ブロック図]
図3は、実施例1における算出装置の機能ブロック図である。
図3に示すように、算出装置20は、取得部22、算出部24および出力部26を備えている。プロセッサ32はソフトウエアと協働し、取得部22、算出部24および出力部26として機能する。取得部22は、外部装置から入出力装置36を介し、算出の条件などを取得する。算出部24は、取得部22が取得した条件に基づき、リアクタンス回路10のアドミタンス行列または回路パラメータを算出する。出力部26は、算出部24が算出した結果を、入出力装置36を介し外部装置に出力する。
【0019】
[フローチャート]
図4は、実施例1における回路パラメータを抽出する算出方法を示すフローチャートである。
図4に示すように、取得部22は、条件を取得する(ステップS10)。条件は、例えばリアクタンス回路10のポート数およびアドミタンス行列および回路パラメータを算出する条件である。その後、算出部24は、取得した条件に基づき、アドミタンス行列を算出する(ステップS12)。その後、出力部26は、算出されたアドミタンス行列を外部装置またはメモリ34に出力する(ステップS14)。回路パラメータを算出しない場合には、ステップS14の後、算出方法を終了してもよい。その後、算出部24は、取得した条件および算出されたアドミタンス行列に基づき、回路パラメータを算出する(ステップS16)。その後、出力部26は、算出された回路パラメータを外部装置またはメモリ34に出力する(ステップS18)。以上により、リアクタンス回路のアドミタンス行列および回路パラメータの算出方法が終了する。
【0020】
[アドミタンス行列の最適化の方法]
リアクタンス回路10のアドミタンス行列について説明する。数1は、リアクタンス回路10のアドミタンス行列である。
【数1】
【0021】
アドミタンス行列では、ポートPiからポートPjへのアドミタンスを要素Yijとする。リアクタンス回路10では、各要素Yijのコンダクタンス成分は0でありサセプタンス成分のみである。このため、Yijは数2により表される。
【数2】
|Yij|はYijの絶対値であり0以上の実数である。exp(φ)内の位相φは、要素Yijにおける電圧と電流の位相差に対応する。要素Yijのコンダクタンス成分が0である。このため、位相φは+π/2または-π/2(すなわち+90°または-90°)となる。
【0022】
さらに、リアクタンス回路では、入力ポートと出力ポートが対称なため、数3となる。
【数3】
【0023】
このため、リアクタンス回路10は、数1の破線内のYijを用い表現できる。数1の破線内のYijの絶対値|Yij|の個数はN(N+1)/2個である。N(N+1)/2個のYijについて、数2の位相φが+π/2または-π/2となる組み合わせとして1個のパラメータθを用いる。パラメータθは、2N(N+1)/2個の離散的な値である。このように、リアクタンス回路10を表現するパラメータの個数は、N(N+1)/2+1個である。
【0024】
図5は、実施例1におけるアドミタンス行列を最適化する方法を示すフローチャートであり、
図4のステップS12に対応する。
図5に示すように、算出部24は、初期のアドミタンス行列を取得する(ステップS20)。初期のアドミタンス行列は、例えば
図4のステップS10において取得されてもよいし、予めメモリ34に格納されていてもよい。
【0025】
その後、算出部24は、初期のアドミタンス行列に基づき、リアクタンス回路10またはリアクタンス回路10を含む電子回路の回路特性(例えば高周波特性)を算出する(ステップS22)。算出する高周波特性(例えば増幅回路の利得または効率)は、例えば
図4のステップS10において取得されてもよいし、予めメモリ34に格納されていてもよい。その後、算出部24は、算出した高周波特性が最適か否か判定する(ステップS24)。例えば、
図4のステップS10においてアドミタンス行列の最適化の条件を取得している。最適化の条件が、例えば高周波特性の目標となる特性の範囲の場合、算出された高周波特性が目標の範囲内のとき、算出部24はYesと判定し、算出された高周波特性が目標特性の範囲外の場合、算出部24はNoと判定する。また、
図4のステップS10において取得した最適化の条件がある高周波特性が最大(または最小)となることである場合、算出された高周波特性が最大(または最小)の範囲の場合、算出部24は、Yesと判定し、算出された特性が最大(または最小)の範囲でない場合、算出部24は、Noと判定する。
【0026】
ステップS24においてNoの場合、算出部24は、アドミタンス行列を変更し(ステップS26)、ステップS22に戻る。ステップS22、S24およびS26を繰り返すことで、ステップS22において算出された高周波特性が目標特性となると、ステップS24において、算出部24はYesと判定する。その後終了する。ステップS22、S24およびS26は、ベイズ最適化法等の公知の最適化手法を用いてもよいし、機械学習を用いてもよい。アドミタンス行列の最適化の条件(例えば目標となる特性の範囲または特性を最大または最小)が最適化の目的関数となる。
【0027】
[回路パラメータの最適化の方法]
リアクタンス回路10の回路パラメータについて説明する。
図6は、リアクタンス回路10の回路例Aを示す回路図である。
図6に示すように、回路例Aでは、ポートP1、P2、P3からPNの各間にキャパシタC1からC4とインダクタL1からL4が接続されている。このように、リアクタンス回路10は、複数のポートP1からPNの間に複数のキャパシタおよび複数のインダクタが接続されている。回路例Aでは、回路パラメータは、
図7の接続関係と各リアクタンス素子のリアクタンス値(キャパシタンスおよびインダクタンス)である。
【0028】
図7は、リアクタンス回路10の回路例Bを示す回路図である。
図7に示すように、回路例Bでは、リアクタンス回路10は、サブリアクタンス回路R1、R2、からRi、からRN-1、RNを備えている。サブリアクタンス回路R1からRNの第1端は、それぞれポートP1からPNに接続され、サブリアクタンス回路R1からRNの第2端は、共通にノードP0に接続されている。
【0029】
図8は、回路例Bにおけるサブリアクタンス回路の回路図である。
図8に示すように、ポートPi(iは1からNの整数)とノードP0との間にリアクタンス素子ω1、ω3からωMがシャント接続されている。ポートPiとノードP0との間にリアクタンス素子ω2、ω4からωM-1が直列接続されている。シャント接続されたリアクタンス素子ω1、ω3からωMと直列接続されたリアクタンス素子ω2、ω4からωM-1とは1個ごとに交互に設けられている。回路例Bでは、回路パラメータは、各サブリアクタンス回路R1からRNにおけるリアクタンス素子ω1からωMの個数Mと各リアクタンス素子ω1からωMのリアクタンス値である。リアクタンス素子ω1からωMのリアクタンス値が0または正のとき、リアクタンス素子ω1からωMはインダクタであり、リアクタンス値はインダクタンスである。リアクタンス素子ω1からωMのリアクタンス値が負のとき、リアクタンス素子ω1からωMはキャパシタであり、リアクタンス値はキャパシタンスである。
【0030】
図8では、最もポートPiに近いリアクタンス素子ω1はシャント接続であるが、リアクタンス素子ω1は直列接続でもよい。
図8では、最もノードP0に近いリアクタンス素子ωMはシャント接続であるが、リアクタンス素子ωMは直列接続でもよい。
【0031】
図9は、実施例1における回路パラメータを最適化する方法を示すフローチャートであり、
図4のステップS16に対応する。
図9に示すように、算出部24は、
図4のステップS12において算出されたアドミタンス行列を取得する(ステップS30)。その後、算出部24は、初期の回路パラメータを取得する(ステップS32)。初期の回路パラメータは、例えば
図4のステップS10において取得されてもよいし、予めメモリ34に格納されていてもよい。回路パラメータは、例えば
図7および
図8における各サブリアクタンス回路R1からRNにおけるリアクタンス素子ω1からωMの個数Mと各リアクタンス素子ω1からωMのリアクタンス値である。ステップS30とS32の順番は逆でもよい。
【0032】
その後、算出部24は、初期の回路パラメータを用い、リアクタンス回路10のアドミタンス行列を算出する(ステップS34)。その後、算出部24は、ステップS34において算出されたアドミタンス行列が最適か否か判定する(ステップS36)。例えば、算出部24は、ステップS30において取得したアドミタンス行列とステップS34において算出されたアドミタンス行列との差が最小と判定されたとき、Yesと判定し、差が最小でないと判定されたとき、Noと判定する。
【0033】
ステップS36においてNoの場合、算出部24は、回路パラメータを変更し(ステップS38)、ステップS34に戻る。ステップS34、S36およびS38を繰り返すことで、ステップS34において算出されたアドミタンス行列がステップS30において取得されたアドミタンス行列にほぼ一致すると、ステップS36において、算出部24はYesと判定する。その後終了する。ステップS34、S36およびS38は、ベイズ最適化法等の最適化手法を用いてもよいし、機械学習を用いてもよい。ステップS34において算出されたアドミタンス行列とステップS30において取得されたアドミタンス行列との差が最適化の目的関数となる。
【0034】
例えば、ステップS30において取得したアドミタンス行列の要素をYAijとし、ステップS34において算出されたアドミタンス行列の要素をYBijとすると、目的関数Fは数4となる。
【数4】
ここで、Im(YBij)はYBijの虚数成分であり、Im(YAij)はYAijの虚数成分である。Σは、数1の破線内の要素の和である。目的関数Fが最小となるように回路パラメータを最適化する。
【0035】
図9のステップS30およびS34において、行列としてアドミタンス行列を例に説明した。アドミタンス行列は、インピーダンス行列または散乱行列に一意に変換できる。そこで、
図4のステップS12において算出したアドミタンス行列をインピーダンス行列または散乱行列に変換する。ステップS30では、ステップS12において算出されたアドミタンス行列から変換されたインピーダンス行列または散乱行列を取得する。ステップS34では、回路パラメータからインピーダンス行列または散乱行列を算出してもよい。
【0036】
[比較例1]
比較例1として、
図4において、ステップS12およびS14を行わず、リアクタンス回路10またはリアクタンス回路10を含む電子回路の高周波特性が、目標特性の範囲内となるようにリアクタンス回路10の回路パラメータを最適化することが考えられる。しかし、
図6の回路例A、並びに
図7および
図8の回路例Bの回路パラメータは無数に存在するため、最適化のアルゴリズムが複雑になる。また、局所的な解が得られ、最適解が得られない場合がある。
【0037】
[比較例2]
比較例2として、
図4においてステップS12およびS14において、アドミタンス行列でなく、散乱行列を用いることが考えられる。しかし、散乱行列は、抵抗成分とリアクタンス成分(またはコンダクタンス成分とサセプタンス成分)を表現できない。このため、最適化された散乱行列を用い、回路パラメータを最適化しようとすると、リアクタンス回路10の素子としてゲインを含む能動素子および/またはロスを含む抵抗素子を用いないと実現できない場合が生じる。
【0038】
実施例1によれば、
図4のステップS10のように、取得部22は、リアクタンス回路10のアドミタンス行列(第1行列)を算出するための条件を取得する。ステップS12のように、算出部24は、取得部22が取得した条件に基づき、iは1からNの整数であり、jは1からNの整数であり、θijは-π/2または+π/2であり、要素がYij=|Yij|×exp(θij)により表されるアドミタンス行列を含む第1行列を算出する。これにより、リアクタンス回路10を、能動素子および抵抗素子のようにゲインおよびロスを含む素子を用いず、リアクタンス素子のみを用いてリアクタンス回路10を設計できる。
【0039】
なお、実施例1では、第1行列としてアドミタンス行列を含む例を説明したが、第1行列はZパラメータであるインピーダンス行列を含んでもよい。インピーダンス行列の要素はZijで表される。そこで、第1行列の要素をΓij=|Γij|×exp(θij)を用い表す。アドミタンス行列のときΓij=Yijであり、インピーダンス行列のときΓij=Zijである。
【0040】
また、リアクタンス回路10では、ポートPiとポートPjとが対称なため、Γij=Γjiである。これにより、算出するパラメータの数を削減できる。
【0041】
図5のように、算出部24は、最適化の条件を目的関数とし、第1行列を最適化することにより第1行列を算出する。これにより、第1行列を最適化できる。
【0042】
図4のステップS16において、算出部24は、算出された第1行列に基づき、リアクタンス回路10の回路パラメータを算出する。これにより、回路パラメータの算出のアルゴリズムが複雑化することを抑制できる。また、回路パラメータの局所解となることを抑制できる。
【0043】
図7および
図8の回路例Bのように、リアクタンス回路10は、第1端がポートPiに接続され第2端が共通ノードに接続されたN個のサブリアクタンス回路Riを有する。このとき、各々のサブリアクタンス回路Riは、第1端と第2端との間において交互に直列接続とシャント接続された1または複数のリアクタンス素子ω1からωMを備えている。回路パラメータを、各々のサブリアクタンス回路Riにおけるリアクタンス素子ω1からωMの個数とリアクタンス素子ω1からωMのリアクタンス値とする。これにより、回路パラメータの個数を削減できる。サブリアクタンス回路R1からRNにおけるリアクタンス素子が1個の場合には、1個のリアクタンス素子は、第1端と第2端との間において直列接続またはシャント接続されている。
【0044】
[実施例2]
実施例2は、実施例1の算出方法を用いて増幅回路の整合回路の回路パラメータを算出する例である。
図10は、実施例2におけるドハティ増幅回路を示す回路図である。
【0045】
[ドハティ増幅器の説明]
図10に示すように、ドハティ増幅器100では、入力端子Tinと出力端子Toutとの間にメインアンプ40とピークアンプ42とが並列に接続されている。入力端子Tinに入力信号として高周波信号が入力する。ドハティ増幅器が移動体通信の基地局に用いられる場合、高周波信号の周波数は例えば0.5GHz以上かつ10GHz以下である。分配器48は入力端子Tinに入力した入力信号を複数の信号に分配する。分配器48は例えばウイルキソン型分配器である。
【0046】
分配された信号は、整合回路46を通過しメインアンプ40およびピークアンプ42に入力する。整合回路46は分配器48から整合回路46をみたインピーダンスを整合回路46からメインアンプ40およびピークアンプ42をみたインピーダンスに整合させる。また、整合回路46は、メインアンプ40およびピークアンプ42のゲートにゲートバイアス電圧Vg1およびVg2をそれぞれ供給する。メインアンプ40およびピークアンプ42は、信号を増幅し増幅された信号を出力する。整合回路44は、メインアンプ40およびピークアンプ42から整合回路44をみたインピーダンスを整合回路44から出力端子Toutを見たインピーダンスに整合させる。整合回路44は、メインアンプ40およびピークアンプ42のドレインにドレインバイアス電圧Vd1およびVd2をそれぞれ供給する。
【0047】
メインアンプ40およびピークアンプ42は、例えばFET(Field Effect Transistor)であり、ソースは接地され、ゲートに高周波信号が入力し、ドレインから信号が出力される。FETは、例えばGaN HEMT(Gallium Nitride High Electron Mobility Transistor)またはLDMOS(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor)である。メインアンプ40およびピークアンプ42にはそれぞれ多段のFETが設けられていてもよい。メインアンプ40とピークアンプ42の大きさ(例えばFETのゲート幅)は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0048】
メインアンプ40は、AB級またはB級動作し、ピークアンプ42はC級動作する。入力信号の入力電力が小さいときにはメインアンプ40が主に入力信号を増幅する。入力電力が大きくなると、メインアンプ40に加え、ピークアンプ42が入力信号のピークを増幅する。これにより、メインアンプ40とピークアンプ42とが入力信号を増幅する。
【0049】
整合回路44は、ピークアンプ42が動作するときおよびしないときのいずれにおいてもメインアンプ40が飽和電力において最適動作する(例えば効率が最大になる)ように設計されている。入力電力が大きくピークアンプ42が動作するとき、整合回路44は、ピークアンプ42が飽和電力において最適動作する(例えば効率が最大になる)ように設計されている。入力電力が小さくピークアンプ42が動作しないとき、整合回路44は、出力端子Toutから整合回路44を見たインピーダンスをほぼオープンにする。
【0050】
[アドミタンス行列の算出]
整合回路44のアドミタンス行列を算出する例について説明する。
図11は、実施例2において回路パラメータを算出する整合回路のブロック図である。
図11に示すように、整合回路44はポートP1からP3を備えている。ポートP1は、
図10においてメインアンプ40の出力ノードが接続されるポートである。ポートP2は、
図10においてピークアンプ42の出力ノードが接続されるポートである。ポートP3は、
図10において出力端子Toutが接続されるポートである。
【0051】
増幅回路では、動作帯域内の周波数である基本波における高周波特性以外に、高調波の周波数における高周波特性が問題となることがある。そこで、基本波の周波数におけるアドミタンス行列と、高調波の周波数におけるアドミタンス行列を用いる例を説明する。なお、高調波のアドミタンス行列を用いず、基本波のアドミタンス行列のみを用いてもよい。
【0052】
整合回路44のアドミタンス行列は数5となる。
【数5】
【0053】
基本波の周波数では、各要素Yijは数2で表され、数3のように対称である。よって、数5の波線内の各要素Yijがパラメータとなる。算出するパラメータは、Y11、Y12、Y13、Y22、Y23およびY33の6個と、パラメータθと、の7個である。なお。パラメータθは、6個の要素Yijの位相φが+π/2または-π/2となる組み合わせのパラメータである。
【0054】
高調波では整合回路44から反射される高調波が問題となる。そこで、高調波の周波数では、ポートP1からP3における反射のみを考えればよい。よって、高調波の周波数のアドミタンス行列は数6となる。
【数6】
【0055】
高調波では、コンダクタンス成分があってもよいため、対角要素Y11、Y22およびY33の位相φは±π/2以外でもよい。よって、アドミタンス行列の要素は数7を用い表される。
【数7】
【0056】
図11の整合回路44では、高調波のパラメータは、|Y11|、|Y22|、|Y33|、φ11、φ22およびφ33の6個の実数となる。第2高調波と第3高調波のアドミタンス行列を用いる場合には、高調波に関するパラメータは、6個×2=12個となる。
【0057】
図4のステップS12おいて、算出する行列のパラメータは、基本波に関する7個、第2高調波に関する6個、および第3高調波に関する6個となる。
【0058】
図4のステップS10において、入力される条件の例について説明する。
図12は、実施例2におけるドハティ増幅器の入力電力Pinに対する出力電力Poutおよびドレイン効率Effを示す模式図である。入力電力Pinは入力端子Tinに入力する基本波の電力である。出力電力Poutは出力端子Toutから出力する基本波の電力である。ドレイン効率Effは、ドレインバイアス電圧による直流電力をPdcとしたとき、Eff=Pout/Pdcである。
【0059】
図12のように、入力電力Pinが増加すると出力電力Poutが増加する。入力電力PinがP0からP10の間では、主にメインアンプ40が入力信号を増幅する。入力電力PinがP10からP20の間では、メインアンプ40とピークアンプ42が入力信号を増幅する。入力電力PinがP20のとき、出力電力Poutは飽和する。ドレイン効率Effは、P10とP20の付近でピークとなる。
【0060】
図5のステップS22では、ドハティ増幅器100の回路特性(例えば高周波特性)として、出力電力Poutとドレイン効率Effを算出する。入力電力Pinは、iを1から20の整数としたとき、20個のPiとする。入力電力PinがP1とP20との間の20個の出力電力Poutと、入力電力PinがP10とP20との間の11個のドレイン効率Effを算出する。最大電力Pmaxを、入力電力PinがP1からP20における最大の出力電力Poutとする。最小効率Eminを、入力電力PinがP10からP20のときの最小のドレイン効率Effとする。目的関数F=C1×Pmax+C2×Eminとする。C1およびC2はあらかじめ定めた係数である。ステップS22、S24およびS26では、目的関数Fが最小となるように、基本波に関する7個のパラメータ、第2高調波に関する6個のパラメータ、および第3高調波に関する6個のパラメータを最適化する。なお、目的関数は適宜設定できる。
【0061】
一例として、基本波の周波数が3.7GHz、第2高調波の周波数が7.4GHz、第3高調波の周波数が11.1GHzとしたときに、最適化されたアドミタンス行列の例を示す。
【0062】
図13は、
図4のステップS14において出力されるアドミタンス行列の例を示す図である。周波数に対するアドミタンス行列の要素を示している。各要素における/の前は|Yij|を示し、/の後は位相φを°で表している。
図13のように、基本波の3.7GHzでは、Yij=Yjiである。また、各要素の位相φは-90°または+90°である。高調波の7.4GHzおよび11.1GHzでは、対角要素Y11、Y22およびY33以外の要素は0である。Y11およびY22の位相φは±90°以外である。
【0063】
[回路パラメータの算出]
整合回路44では、ポートP1からP3のため、
図7の回路例Bでは、サブリアクタンス回路はR1、R2およびR3の3個である。
図8のリアクタンス素子の個数Mを固定すれば、
図4のステップS16において算出される回路パラメータの個数は3×M個となる。
図9のステップS34において、3×M個の回路パラメータを用いて、基本波および高調波のアドミタンス行列を算出する。ステップS34、S36およびS38において、ステップS34において算出された基本波および高調波のアドミタンス行列と、
図13のアドミタンス行列(
図9のステップS30において取得したアドミタンス行列)の差が最小となるように、3×M個の回路パラメータを最適化する。これにより、整合回路44の回路パラメータが算出される。
【0064】
高調波の行列としてアドミタンス行列を例に説明した。高調波では、位相φが±π/2でなくてもよい。このため、高調波の行列は散乱行列でもよい。数8は、高調波に用いる散乱行列の例である。
【数8】
【0065】
数8のように、対角要素S11、S22およびS33以外は0となる対角要素は数9を用い表される。
【数9】
【0066】
各ポートP1からP3において、ほとんどの高調波の信号が反射されるため、|Sii|は0.95以上である。よって、例えばアンプに接続されるポートP1およびP2において|S11|=|S22|=0.95と仮定し、その他のポートP3において|S33|=1.00と仮定してもよい。この場合、高調波のパラメータは、φ11、φ22およびφ33の3個となる。第2高調波と第3高調波の散乱行列を用いる場合には、高調波に関するパラメータは、3個×2=6個となる。よって、
図4のステップS12において算出されるパラメータの個数は、基本波の7個、第2高調波の3個、第3高調波の3個の計13個となる。
【0067】
図9のステップS30およびS34の行列は、散乱行列を用いてもよい。アドミタンス行列から散乱行列の変換は一意に可能である。例えば
図13のアドミタンス行列を散乱行列に変換した例を示す。
【0068】
図14は、
図13のアドミタンス行列を散乱行列に変換した例を示す図である。周波数に対する散乱行列の要素を示している。各要素における/の前は|Sij|を示し、/の後は位相φを°で表している。散乱行列の位相φは電圧と電流の位相差でなく、信号の位相差である。
【0069】
図14のように、基本波の3.7GHzでは、Sij=Sjiである。各要素の位相φは-90°または+90°とは限らない。高調波の7.4GHzおよび11.1GHzでは、対角要素S11、S22およびS33以外の要素は0である。|S11|および|S22|は0.95であり、|S33|は1.00である。
【0070】
実施例2のように、回路パラメータを算出するリアクタンス回路10は、ドハティ増幅器100(増幅回路)に用いる整合回路44である。これにより、整合回路44を精度よく設計できる。回路パラメータを算出するリアクタンス回路10は整合回路46でもよい。ドハティ増幅器以外の増幅回路における整合回路の回路パラメータを算出してもよい。
【0071】
また、増幅回路においては、高調波が高周波特性に影響する。そこで、算出部24は、
図4ステップS12において、基本波における第1行列と、高調波における第2行列と、を算出する。ここで、第1行列はアドミタンス行列またはインピーダンス行列を含む。第2行列は、対角要素以外が0であり、アドミタンス行列、インピーダンス行列または散乱行列を含む。これにより、高調波を考慮した回路パラメータを算出できる。実施例1のように、基本波における第1行列を用い、高調波における第2行列を用いず整合回路44の回路パラメータを算出してもよい。
【0072】
基本波の第1行列はアドミタンス行列を用いてもよいし、インピーダンス行列を用いてもよい。アドミタンスはオープンにおいて0となり、インピーダンスはショートにおいて0となる。整合回路44ではポートをグランドにショートさせることはあまりない。このため、ポートをグランドに対しオープンとして扱えるアドミタンス行列を第1行列に用いることができる。
【0073】
高調波では抵抗成分またはコンダクタンス成分があってもよいため、第2行列は、アドミタンス行列、インピーダンス行列または散乱行列でもよい。高調波の|Sii|は0.95以上のため、第2行列に散乱行列を用いると、|Sii|を一定の値とでき、算出される回路パラメータの個数を削減できる。
【0074】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。
【0075】
上記プロセッサは、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specication Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。例えば物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。
【0076】
上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0077】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0078】
10 リアクタンス回路
20 算出装置
22 取得部
24 算出部
26 出力部
30 コンピュータ
32 プロセッサ
34 メモリ
36 入出力装置
38 内部バス
40 メインアンプ
42 ピークアンプ
44,46整合回路
48 分配器
100 ドハティ増幅器