(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121469
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】木材保護塗料
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240830BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240830BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028600
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勝野 聖世
(72)【発明者】
【氏名】広田 正之
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DG001
4J038KA06
4J038KA08
4J038KA12
4J038NA01
4J038NA05
4J038PA07
4J038PC06
(57)【要約】
【課題】木材の表面におけるカビ及び変色の発生を抑制できるとともに、塗膜の透明性が高い木材保護塗料を提供すること。
【解決手段】木材保護塗料は、下塗り塗料と、上塗り塗料とを含む。前記下塗り塗料は防カビ剤を含む。前記上塗り塗料における防カビ剤の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し0.5質量部以下である。前記下塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記下塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下である。前記上塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下塗り塗料と、上塗り塗料とを含み、
前記下塗り塗料は防カビ剤を含み、
前記上塗り塗料における防カビ剤の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し0.5質量部以下であり、
前記下塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記下塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下であり、
前記上塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下である、
木材保護塗料。
【請求項2】
請求項1に記載の木材保護塗料であって、
前記上塗り塗料における防カビ剤の含有量は、前記下塗り塗料における防カビ剤の含有量より少ない、
木材保護塗料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の木材保護塗料であって、
前記下塗り塗料及び前記上塗り塗料のうちの少なくとも一方は、紫外線吸収剤及び光安定化剤のうちの少なくとも一方を含む、
木材保護塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は木材保護塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
木材を保護するために木材保護塗料が用いられる。特許文献1に木材保護塗料が開示されている。特許文献1に開示の木材保護塗料は、経時的に生じる変色を抑制することを課題とする。特許文献1に開示の木材保護塗料は、その課題を解決するために、防カビ剤と、顔料とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の木材保護塗料は顔料を含む。そのため、この木材保護塗料を塗布して形成した塗膜は、透明性が低かった。
本開示の1つの局面では、木材の表面におけるカビ及び変色の発生を抑制できるとともに、塗膜の透明性が高い木材保護塗料を提供することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の1つの局面は、下塗り塗料と、上塗り塗料とを含む木材保護塗料である。前記下塗り塗料は防カビ剤を含む。前記上塗り塗料における防カビ剤の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し0.5質量部以下である。前記下塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記下塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下である。前記上塗り塗料における着色顔料の含有量は、前記上塗り塗料の塗膜形成成分100質量部に対し1質量部以下である。
【0006】
本開示の1つの局面である木材保護塗料は、木材の表面におけるカビ及び変色の発生を抑制できるとともに、塗膜の透明性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の例示的な実施形態について説明する。
1.木材保護塗料の構成
木材保護塗料は、下塗り塗料と、上塗り塗料とを含む。下塗り塗料は、木材に対し、上塗り塗料よりも先に塗布される。上塗り塗料は、木材に対し、下塗り塗料よりも後に塗布される。木材保護塗料を使用した場合、下塗り塗料を塗布して形成した塗膜(以下では下塗り塗膜とする)よりも上層に、上塗り塗料を塗布して形成した塗膜(以下では上塗り塗膜とする)が存在する。上層とは、木材の表面から離れた方向にある層である。例えば、下塗り塗膜と、上塗り塗膜とは積層される。
【0008】
(1)下塗り塗料
(1-1)下塗り塗料の形態
下塗り塗料は、1つの液から成る形態(以下では1液形態とする)であってもよいし、A液とB液との2液から成る形態(以下では2液形態とする)であってもよい。A液とB液とは、保管時や運搬時には分離されている。A液とB液とは、使用前に混合される。例えば、100質量部のA液と、20質量部以上100質量部以下のB液とを混合することができる。また、例えば、100質量部のA液と、50質量部のB液とを混合することができる。
【0009】
(1-2)塗膜形成成分
下塗り塗料は、例えば、塗膜形成成分を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液の少なくとも一方が塗膜形成成分を含む。塗膜形成成分は下塗り塗膜の主成分となる成分である。
【0010】
塗膜形成成分として、例えば、合成樹脂等が挙げられる。合成樹脂として、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等が挙げられる。塗膜形成成分は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0011】
塗膜形成成分として、例えば、ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体との組み合わせが挙げられる。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、下塗り塗料のA液は、ポリカーボネートジオールを含み、下塗り塗料のB液は、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体を含む。
【0012】
下塗り塗料のA液は、ポリカーボネートジオールと、他の合成樹脂とを含んでいてもよい。下塗り塗料のB液は、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体と、他の合成樹脂とを含んでいてもよい。
【0013】
(1-3)ポリカーボネートジオール
ポリカーボネートジオールは、ジオールと、カーボネート化剤との反応によって得られる化合物である。ジオールは、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。カーボネート化剤は、1種類であってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0014】
ジオールとして、例えば、脂肪族のジオールが好ましく、非晶性脂肪族のジオールが特に好ましい。ジオールとして、例えば、直鎖ジオール、分岐ジオール、環状ジオール等が挙げられる。
直鎖ジオールとして、例えば、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-ドデカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール等が挙げられる。
【0015】
分岐ジオールとして、例えば、2-メチル-1、8-オクタンジオール、2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1、5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0016】
環状ジオールとして、例えば、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-プロパン、1,4-シクロヘキサンジオール等が挙げられる。ジオールとして、1,5-ペンタンジオールと、1,6-ヘキサンジオールとを共重合させて用いることが特に好ましい。
【0017】
カーボネート化剤として、例えば、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、アルキレンカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネートとして、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。
【0018】
ジアリールカーボネートとして、例えば、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。アルキレンカーボネートとして、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2-プロピレンカーボネート、1,2-ブチレンカーボネート、1,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネートジオールの市販品として、例えば、バーノック(DIC製)、デュラノール(旭化成製)、ニッポラン(東ソー製)等が挙げられる。
【0019】
(1-4)ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体とは、複数のヘキサメチレンジイソシアネートが化学結合した化合物である。ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体として、例えば、アダクト型、イソシアヌレート型、ビュレット型、2官能型等が挙げられる。ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体として、イソシアヌレート型、ビュレット型が好ましく、イソシアヌレート型が一層好ましい。
【0020】
ヘキサメチレンジイソシアネート誘導体の市販品として、例えば、コロネート(東ソー製)、スミジュール、ディスモジュール(住化バイエルウレタン製)、デュラネート(旭化成製)等が挙げられる。
【0021】
下塗り混合液が、ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体とを、合計で100質量部含むとする。この場合、下塗り混合液は、例えば、ポリカーボネートジオールを50質量部以上90質量部以下含み、好ましくは、73質量部含む。
【0022】
下塗り混合液に含まれる、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のNCOのモル数をMNCOとする。また、下塗り混合液に含まれる、ポリカーボネートジオールのOH基のモル数をMOHとする。MNCOをMOHで除した値をMNCO/MOHとする。MNCO/MOHは、0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがさらに好ましい。
【0023】
(1-5)防カビ剤
下塗り塗料は防カビ剤を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、A液及びB液の少なくとも一方が防カビ剤を含む。
【0024】
防カビ剤として、例えば、有機ヨード系化合物、ピレスロイド系化合物等が挙げられる。有機ヨード系化合物として、例えば、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(慣用名:IPBC)、パラクロロフェニル-3-ヨードプロパギルホルマール(商品名:IF-1000、長瀬産業(株)製)、3-ブロモ-2,3-ジヨード-2-プロペニルエチルカーボナート(商品名:サンプラス、(株)三共製)等が挙げられる。有機ヨード系化合物として、例えば、特開2005-145909号公報に開示されているものが挙げられる。
【0025】
ピレスロイド系化合物として、例えば、ジヨードメチル-p-トリルスルホン(CASNo.20018-09-1、製品名:ヨートルDP95)、4-メトキシフェニル-3-ヨードプロパルギルホルマール、トリヨードアリルアルコール、シフルトリン、パーメスリン、トラロメスリン、フェンバレレート、エトフェンプロックス、Hoe-498、ビフェントリン等が挙げられる。
【0026】
ピレスロイド系化合物として、例えば、特開2005-145909号公報に開示されているものが挙げられる。トリヨードアリルアルコールとして、例えば、特開2012-121834号公報に開示されているものが挙げられる。防カビ剤として、ビフェントリンと有機ヨード系化合物とを併用することが好ましい。
【0027】
下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下の防カビ剤を含むことが好ましく、0.3質量部以上3質量部以下の防カビ剤を含むことがさらに好ましく、0.7質量部の防カビ剤を含むことが特に好ましい。
なお、下塗り塗料の形態が2液形態である場合、下塗り塗料における各成分の含有量とは、下塗り混合液における含有量を意味する。
【0028】
(1-6)着色顔料
下塗り塗料において、塗膜形成成分100質量部に対し、着色顔料の質量は、1質量部以下であり、0.7質量部以下であることが好ましく、着色顔料を含有しないことが特に好ましい。着色顔料として、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、キナクリドン、フタロシアニン銅等が挙げられる。
【0029】
(1-7)紫外線吸収剤
下塗り塗料は、例えば、紫外線吸収剤を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が紫外線吸収剤を含む。
【0030】
下塗り塗料が紫外線吸収剤を含む場合、木材の木目や色調等の外観の変化を小さくすることができる。下塗り塗料は、紫外線吸収剤と、後述する光安定化剤との両方を含むことが好ましい。この場合、木材の木目や色調等の外観の変化を一層小さくすることができる。
【0031】
紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、酸化鉄、酸化チタン等が挙げられる。
【0032】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、2-(2H-ベンソトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノール等が挙げられる。
【0033】
トリアジン系紫外線吸収剤として、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイロキシ)エトキシ]フェノール、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0034】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、例えば、[2-ヒドロキシ-4-(オクチロキシ)フェニル](フェニル)メタノン等が挙げられる。紫外線吸収剤として、トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
【0035】
紫外線吸収剤として、2-(4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル,トオキシラン[(C10-C16主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、ベンゼンプロパン酸・3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ・C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステル、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシロキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジンがさらに好ましい。
【0036】
2-(4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル,トオキシラン[(C10-C16主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物、及びベンゼンプロパン酸・3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ・C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルは、無色透明である。そのため、下塗り塗料がこれらの紫外線吸収剤を含む場合、下塗り塗料を木材に塗付した際の外観変化を抑制できる。
【0037】
下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下の紫外線吸収剤を含むことが好ましく、2質量部以上8質量部以下の紫外線吸収剤を含むことがさらに好ましく、3質量部の紫外線吸収剤を含むことが特に好ましい。
【0038】
(1-8)光安定化剤
下塗り塗料は、例えば、光安定化剤を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が光安定化剤を含む。
【0039】
下塗り塗料が光安定化剤を含む場合、木材の木目や色調等の外観の変化を小さくすることができる。下塗り塗料は、紫外線吸収剤と、光安定化剤との両方を含むことが好ましい。この場合、木材の木目や色調等の外観の変化を一層小さくすることができる。
【0040】
光安定化剤として、例えば、ヒンダードアミン系光安定化剤等が挙げられる。ヒンダードアミン系光安定化剤として、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブタン-1,2,3,4-テトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カルボネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等が挙げられる。
【0041】
光安定化剤として、ヒンダードアミン系光安定化剤の中でも、セバケートヒンダードアミン系光安定化剤が好ましい。セバケートヒンダードアミン系光安定化剤として、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート等が挙げられる。
【0042】
下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、1質量部以上10質量部以下の光安定化剤を含むことが好ましく、1質量部以上8質量部以下の光安定化剤を含むことがさらに好ましく、1質量部の光安定化剤を含むことが特に好ましい。
【0043】
(1-9)添加剤
下塗り塗料は、例えば、添加剤を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が添加剤を含む。添加剤は、例えば、通常の塗料に用いられる添加剤である。添加剤として、例えば、増粘剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、レベリング剤、消泡剤等が挙げられる。
【0044】
下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、0.3質量部のレベリング剤を含むことが好ましい。下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、0.3質量部の消泡剤を含むことが好ましい。下塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、4質量部の酢酸エチルを含むことが好ましい。
【0045】
(1-10)溶媒
下塗り塗料は、例えば、溶媒を含む。下塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が溶媒を含む。
【0046】
A液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。B液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。下塗り混合液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。
【0047】
溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒として、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びその誘導体の一方又は両方と化学反応しない有機溶媒が好ましい。有機溶媒として、例えば、炭化水素、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。炭化水素として、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、石油スピリット、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0048】
(1-11)下塗り塗膜の膜厚
下塗り塗膜の膜厚は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0049】
(2)上塗り塗料
(2-1)上塗り塗料の形態
上塗り塗料は、1液形態であってもよいし、2液形態であってもよい。上塗り塗料のA液とB液とは、保管時や運搬時には分離されている。A液とB液とは、使用前に混合される。例えば、100質量部のA液と、40質量部以上100質量部以下のB液とを混合することができる。また、例えば、100質量部のA液と、50質量部のB液とを混合することができる。
【0050】
(2-2)塗膜形成成分
上塗り塗料は、例えば、塗膜形成成分を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液の少なくとも一方が塗膜形成成分を含む。塗膜形成成分は上塗り塗膜の主成分となる成分である。
【0051】
上塗り塗料の塗膜形成成分として、下塗り塗料の塗膜形成成分と同様のものが挙げられる。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、上塗り塗料のA液は、ポリカーボネートジオールを含み、上塗り塗料のB液は、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体を含む。
【0052】
上塗り塗料のA液は、ポリカーボネートジオールと、他の合成樹脂とを含んでいてもよい。上塗り塗料のB液は、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体と、他の合成樹脂とを含んでいてもよい。
【0053】
(2-3)ポリカーボネートジオール
上塗り塗料のポリカーボネートジオールとして、下塗り塗料のポリカーボネートジオールと同様のものが挙げられる。
【0054】
(2-4)ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体
上塗り塗料のヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体として、下塗り塗料のヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体と同様のものが挙げられる。
【0055】
上塗り混合液が、ポリカーボネートジオールと、ヘキサメチレンジイソシアネート又はその誘導体とを、合計で100質量部含むとする。この場合、上塗り混合液は、例えば、ポリカーボネートジオールを50質量部以上90質量部以下含み、好ましくは、73質量部含む。
【0056】
上塗り混合液に含まれる、ヘキサメチレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート誘導体のNCOのモル数をMNCOとする。また、上塗り混合液に含まれる、ポリカーボネートジオールのOH基のモル数をMOHとする。MNCOをMOHで除した値をMNCO/MOHとする。MNCO/MOHは、0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがさらに好ましい。
【0057】
(2-5)防カビ剤
上塗り塗料において、塗膜形成成分100質量部に対し、防カビ剤の含有量は、0.5質量部以下であり、0.3質量部以下であることが好ましく、防カビ剤を含有しないことが特に好ましい。
【0058】
なお、上塗り塗料の形態が2液形態である場合、上塗り塗料が含む各成分の含有量とは、上塗り混合液が含むその成分の含有量を意味する。上塗り塗料が防カビ剤を含む場合、その防カビ剤として、下塗り塗料の防カビ剤と同様のものが挙げられる。
【0059】
(2-6)着色顔料
上塗り塗料において、塗膜形成成分100質量部に対し、着色顔料の質量は、1質量部以下であり、0.5質量部以下であることが好ましく、着色顔料を含有しないことが特に好ましい。着色顔料として、例えば、酸化鉄、カーボンブラック、酸化チタン、キナクリドン、フタロシアニン銅等が挙げられる。
【0060】
(2-7)紫外線吸収剤
上塗り塗料は、例えば、紫外線吸収剤を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が紫外線吸収剤を含む。
【0061】
上塗り塗料が紫外線吸収剤を含む場合、木材の木目や色調等の外観の変化を小さくすることができる。上塗り塗料は、紫外線吸収剤と、光安定化剤との両方を含むことが好ましい。この場合、木材の木目や色調等の外観の変化を一層小さくすることができる。上塗り塗料の紫外線吸収剤として、下塗り塗料の紫外線吸収剤と同様のものが挙げられる。
【0062】
上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、3質量部以上20質量部以下の紫外線吸収剤を含むことが好ましく、5質量部以上10質量部以下の紫外線吸収剤を含むことがさらに好ましく、5質量部の紫外線吸収剤を含むことが特に好ましい。
【0063】
上塗り塗料における紫外線吸収剤の含有量は、下塗り塗料における紫外線吸収剤の含有量より多いことが好ましい。紫外線吸収剤の含有量とは、塗膜形成成分100質量部に対する紫外線吸収剤の質量である。
【0064】
(2-8)光安定化剤
上塗り塗料は、例えば、光安定化剤を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が光安定化剤を含む。
【0065】
上塗り塗料が光安定化剤を含む場合、木材の木目や色調等の外観の変化を小さくすることができる。上塗り塗料は、紫外線吸収剤と、光安定化剤との両方を含むことが好ましい。この場合、木材の木目や色調等の外観の変化を一層小さくすることができる。上塗り塗料の光安定化剤として、下塗り塗料の光安定化剤と同様のものが挙げられる。
【0066】
上塗り塗料は、塗膜形成成分質量100質量部に対し、3質量部以上20質量部以下の光安定化剤を含むことが好ましく、4質量部以上10質量部以下の光安定化剤を含むことがさらに好ましく、4質量部の光安定化剤を含むことが特に好ましい。
【0067】
上塗り塗料における光安定化剤の含有量は、下塗り塗料における光安定化剤の含有量より多いことが好ましい。光安定化剤の含有量とは、塗膜形成成分100質量部に対する光安定化剤の質量である。
【0068】
(2-9)添加剤
上塗り塗料は、例えば、添加剤を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が添加剤を含む。上塗り塗料の添加剤として、下塗り塗料の添加剤と同様のものが挙げられる。
【0069】
上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、0.4質量部のレベリング剤を含むことが好ましい。上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、0.4質量部の消泡剤を含むことが好ましい。上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、4質量部の湿潤分散剤を含むことが好ましい。
【0070】
上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、53質量部の酢酸エチルを含むことが好ましい。例えば、53質量部の酢酸エチルのうち、39質量部は、A液に由来し、14質量部はB液に由来する。上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、32質量部の酢酸ブチルを含むことが好ましい。
【0071】
(2-10)溶媒
上塗り塗料は、例えば、溶媒を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、A液及びB液のうちの少なくとも一方が溶媒を含む。
【0072】
A液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。B液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。上塗り混合液における溶媒の含有量は、例えば、0質量%以上25質量%以下である。上塗り塗料の溶媒として、下塗り塗料の溶媒と同様のものが挙げられる。
【0073】
(2-11)上塗り塗膜の膜厚
上塗り塗膜の膜厚は、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0074】
(2-12)艶消し剤
上塗り塗料は、例えば、艶消し剤を含む。上塗り塗料の形態が2液形態である場合、例えば、上塗り塗料のA液及びB液のうちの少なくとも一方が艶消し剤を含む。
【0075】
艶消し剤として、例えば、シリカ系艶消し剤、合成樹脂系艶消し剤等が挙げられる。シリカ系艶消し剤として、例えば、微粉末シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。合成樹脂系艶消し剤として、例えば、ウレタンビーズ、アクリルビーズ等が挙げられる。
【0076】
艶消し剤の平均粒子径は0.1μm以上10μm以下であることが好ましい。艶消し剤の平均粒子径が0.1μm以上10μm以下である場合、上塗り塗膜の光沢を一層抑制できる。
上塗り塗料は、塗膜形成成分100質量部に対し、10質量部以上30質量部以下の艶消し剤を含むことが好ましい。この場合、上塗り塗膜の光透過性が低下し難い。
【0077】
(2-13)下塗り塗膜及び上塗り塗膜の透明性
下塗り塗膜の上層に上塗り塗膜を形成する。下塗り塗膜及び上塗り塗膜の光透過率は19%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。光透過率は、光の波長が650~750nmの場合の測定値である。光の波長が650~750nmにおける光透過率は、透明性を表す指標である。
【0078】
光透過率が19%以上である場合、外側から、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を通して、木材の木目を視認することが容易である。光透過率が40%以上である場合、外側から、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を通して、木材の木目を視認することがさらに容易である。
【0079】
2.木材保護塗料の使用方法
木材保護塗料は、木材に対し使用できる。木材は、例えば、住宅、建築物等に使用される木材である。木材保護塗料は、例えば、以下のように使用できる。木材の表面に下塗り塗料を塗布し、下塗り塗膜を形成する。下塗り塗料が2液形態である場合は、下塗り塗料のA液とB液とを混合して下塗り混合液を調製し、下塗り混合液を木材の表面に塗布する。
【0080】
次に、下塗り塗膜の上に上塗り塗料を塗布し、上塗り塗膜を形成する。下塗り塗膜と上塗り塗膜とは積層される。上塗り塗料が2液形態である場合は、上塗り塗料のA液とB液とを混合して上塗り混合液を調製し、上塗り混合液を下塗り塗膜の上に塗布する。
【0081】
3.木材保護塗料が奏する効果
(3-1)木材保護塗料を使用すれば、木材の表面にカビが発生することを抑制できる。
(3-2)下塗り塗膜及び上塗り塗膜は透明性が高い。そのため、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を通して、木材の木目を視認することが容易である。
【0082】
(3-3)木材保護塗料を使用すれば、木材を長期間屋外環境に暴露しても、木材の表面に変色が生じ難い。
4.実施例
(4-1)木材保護塗料の製造
表1に記載の各成分を、表1に記載の配合量で混合することで、実施例1~9の木材保護塗料を製造した。また、表2に記載の各成分を、表2に記載の配合量で混合することで、比較例1~6の木材保護塗料を製造した。表1及び表2における配合量は、不揮発分の質量部を表す。表1及び表2において配合量の数値が記載されていない欄は、配合量が0であることを表す。
【0083】
各実施例及び比較例1~4の木材保護塗料は、それぞれ、下塗り塗料及び上塗り塗料を含んでいた。比較例5~6の木材保護塗料は、下塗り塗料のみから成っていた。また、各実施例及び比較例1~4の下塗り塗料及び上塗り塗料の形態は、それぞれ、2液形態であった。比較例5~6の下塗り塗料の形態は、2液形態であった。
【0084】
【0085】
【0086】
表1及び表2における「ポリカーボネートジオール1」は1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールとを共重合させたものである。また、「ポリカーボネートジオール2」は1,4-ブタンジオールと1,6-へキサンジオールとを共重合させたものである。
【0087】
表1及び表2における紫外線吸収剤は、2-(4,6-ビス(2,4ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル,トオキシラン「(C10-C16主としてC12-C13アルキルオキシ)メチル」オキシランとの反応生成物及びベンゼンプロパン酸・3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ・C7-9側鎖及び直鎖アルキルエステルである。
【0088】
表1及び表2における光安定化剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートである。
表1及び表2における防カビ剤は、ビフェントリン1質量部とトリヨードアリルアルコール10質量部とを混合したものである。
【0089】
(4-2)試験板の作成
各実施例及び各比較例の木材保護塗料のそれぞれについて、以下の方法で試験板を作成した。スギ製材から成る基板を用意した。基板の形態は、長方形の板状であった。基板の厚さは10mmであった。基板の幅は70mmであった。基板の長さは145mmであった。
【0090】
下塗り塗料のA液とB液とを混合し、下塗り混合液を調製した。下塗り混合液は、各成分を表1に記載の質量比で含んでいた。例えば、実施例1の下塗り混合液は、100質量部のポリカーボネートジオール1と、50質量部のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ビウレット型)とを含んでいた。
【0091】
下塗り混合液を、希釈用シンナーで希釈した。希釈用シンナーは酢酸エチルであった。次に、希釈後の下塗り混合液を基材の表面に塗布し、下塗り塗膜を形成した。下塗り混合液の塗布は2回行った。2回の塗布後、下塗り塗膜の塗布量は、表1及び表2における「下塗り塗膜の塗布量」の行に記載された数値であった。塗布量とは、単位面積当たりの、塗料の不揮発分の質量である。
【0092】
比較例5~6については、ここまでの工程で試験板が完成した。各実施例及び比較例1~4については、さらに以下の工程を行った。
次に、上塗り塗料のA液とB液とを混合し、上塗り混合液を調製した。上塗り混合液は、各成分を表1に記載の質量比で含んでいた。例えば、実施例1の上塗り混合液は、100質量部のポリカーボネートジオール1と、50質量部のヘキサメチレンジイソシアネート誘導体(ビウレット型)とを含んでいた。
【0093】
次に、上塗り混合液を希釈用シンナーで希釈した。希釈用シンナーは酢酸ブチルであった。次に、希釈後の上塗り混合液を、下塗り塗膜の上に塗布し、上塗り塗膜を形成した。上塗り混合液の塗布は1回行った。上塗り塗膜の塗布量は、表1及び表2における「上塗り塗膜の塗布量」の行に記載された数値であった。下塗り塗膜と上塗り塗膜とは積層された。上塗り塗膜は、下塗り塗膜の上層であった。
【0094】
(4-3)木材保護塗料の評価
各実施例及び各比較例の木材保護塗料のそれぞれについて、以下の方法で評価を行った。試験板を屋外に設置し、屋外環境に暴露した。試験板を設置した場所は岐阜県岐阜市であった。屋外環境に暴露した期間は1年間であった。屋外環境に暴露したとき、下塗り塗膜及び上塗り塗膜を形成した表面が上側となり、南を向き、水平面に対する角度が45度となるように、試験板を設置した。
【0095】
屋外環境に1年間暴露した後、試験板の表面を目視で観察し、以下の基準で木目の視認性を評価した。木目の視認性は、塗膜の透明性に関する評価である。
【0096】
○:着色がなく、木目がはっきりと視認できる。
△:木目を視認できるが、木目がぼやけている。
×:木目を視認できない。
また、屋外環境に1年間暴露した後、試験板の表面を目視で観察し、以下の基準でカビの発生の程度を評価した。
【0097】
○:カビが発生していない。
△:試験板の表面のうち、1/4未満の部分にカビが発生している。
×:試験板の表面のうち、1/4以上の部分にカビが発生している。
【0098】
屋外環境に1年間暴露した後、試験板の表面の色を色差計で測定した。また、屋外環境に暴露する前にも、予め、試験板の表面の色を色差計で測定しておいた。次に、屋外環境に暴露する前の表面の色と、1年間暴露した後の表面の色との色差Δ*Eを算出した。Δ*Eに基づき、以下の基準により、木材の耐候性(すなわち変色の程度)を評価した。
【0099】
◎:Δ*Eが10未満である。
○:Δ*Eが10以上15未満である。
△:Δ*Eが15以上20未満である。
×:Δ*Eが20以上である。
【0100】
各評価の結果を表1及び表2に示す。各実施例の木材保護塗料は、いずれの評価においても優れていた。比較例1、3、6の木材保護塗料は、カビの発生、及び、耐候性の評価結果が劣っていた。比較例2の木材保護塗料は、耐候性の評価結果が劣っていた。比較例4、5の木材保護塗料は、木目の視認性の評価結果が劣っていた。
【0101】
5.他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0102】
(5-1)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0103】
(5-2)上述した木材保護塗料の他、当該木材保護塗料を構成要素とする製品、木材保護塗料の製造方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。