IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 文化シヤッター株式会社の特許一覧 ▶ 不二サッシ株式会社の特許一覧

特開2024-121473止水装置及びこの止水装置の設置方法
<>
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図1
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図2
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図3
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図4
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図5
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図6
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図7
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図8
  • 特開-止水装置及びこの止水装置の設置方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121473
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】止水装置及びこの止水装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20240830BHJP
   E06B 7/22 20060101ALI20240830BHJP
   E04H 9/14 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
E06B7/22 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028606
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005005
【氏名又は名称】不二サッシ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 誠
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智哉
【テーマコード(参考)】
2E036
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EA03
2E036EA09
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】 第一の止水板と第二の止水板をしっかりと連結する。
【解決手段】 幅方向に並ぶ第一の止水板10と第二の止水板20により水の流れを阻むようにした止水装置であって、第一の止水板10と第二の止水板20の間には、これら第一の止水板10と第二の止水板20が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する連結手段Aが設けられている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向に並ぶ第一の止水板と第二の止水板により水の流れを阻むようにした止水装置であって、
第一の止水板と第二の止水板の間には、これら第一の止水板と第二の止水板が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する連結手段が設けられていることを特徴とする止水装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板から他方の止水板側へ突出してその突端側を止水板厚さ方向へ曲げた鉤状係合部と、前記他方の止水板から前記一方の止水板側へ突出してその突端側を前記鉤状係合部に係合するように曲げた鉤状被係合部とを具備することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項3】
前記連結手段は、止水板厚さ方向の一方側に前記鉤状係合部及び前記鉤状被係合部を有し、
止水板厚さ方向の他方側には、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板から他方の止水板側へ突出した突部と、前記他方の止水板側で前記突部に係合する係合部とを有することを特徴とする請求項2記載の止水装置。
【請求項4】
前記鉤状係合部と前記鉤状被係合部が、上下方向へわたって係合するようにしたことを特徴とする請求項2記載の止水装置。
【請求項5】
前記連結手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板を脱着可能に連結することを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項6】
前記連結手段により連結された前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し離隔方向の力を加える離隔手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載の止水装置。
【請求項7】
前記離隔手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板に一体的に設けられたカム斜面と、他方の止水板に一体的に設けられて前記カム斜面に接する摺接部とを備え、前記カム斜面と前記摺接部との摺接により前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し離隔方向の力を加えることを特徴とする請求項6記載の止水装置。
【請求項8】
前記カム斜面は、上方へゆくにしたがって前記離隔方向へ傾斜する斜面であり、
前記摺接部は、前記カム斜面に対し上方側から押し付けられることを特徴とする請求項7記載の止水装置。
【請求項9】
前記摺接部は、前記カム斜面と略平行な傾斜面であることを特徴とする請求項7記載の止水装置。
【請求項10】
前記第一の止水板と前記第二の止水板の間に弾性を有するパッキンが挟み込まれていることを特徴とする請求項1~9何れか1項記載の止水装置。
【請求項11】
前記パッキンは、前記第一の止水板に設けられた第一のパッキンと、前記第二の止水板に設けられて前記第一のパッキンに接する第二のパッキンとから構成されることを特徴とする請求項10記載の止水装置。
【請求項12】
請求項3記載の止水装置の設置方法であって、
前記鉤状係合部を前記鉤状被係合部に嵌め合わせた後に、前記突部を前記係合部に接触又は近接するようにしたことを特徴とする止水装置の設置方法。
【請求項13】
請求項7記載の止水装置の設置方法であって、
前記第一の止水板と前記第二の止水板を前記連結手段により連結する工程と、連結された前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し前記離隔手段による離隔方向の力を加える工程とを含むことを特徴とする止水装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、増水時に建物や地下道の開口部を止水板により閉鎖して水の侵入を阻む止水装置、及びこの止水装置の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
台風や集中豪雨などによる増水が建物や地下道の開口部に侵入すると、浸水による甚大な被害を及ぼすおそれがある。そこで、このような事態に備えて、予め建物や地下道などの開口部の近傍に止水板を格納しておき、増水が発生したときには、この止水板を、前記開口部を構成する両側の支柱に固定し、水の侵入を阻むようにした止水装置が従来知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-14865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の止水装置において、開口部の幅が比較的大きい場合等には、複数の止水板を幅方向に並べて用いる場合がある。このような場合、隣接する二つの止水板のうち、その一方が他方に対し止水板厚さ方向や止水板幅方向へずれて、これら二つの止水板間の止水性を損ねてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明の一つは、以下の構成を具備するものである。
幅方向に並ぶ第一の止水板と第二の止水板により水の流れを阻むようにした止水装置であって、第一の止水板と第二の止水板の間には、これら第一の止水板と第二の止水板が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する連結手段が設けられていることを特徴とする止水装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、第一の止水板と第二の止水板をしっかりと連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る止水装置の一例を屋外側から視た図である。
図2図1における(II)-(II)線に沿う断面図である。
図3】第一の止水板と第二の止水板を連結している様子を(a)~(c)に順次に示す横断面図である。
図4図3(a)~(c)について、連結部分を拡大して示す図である。
図5】本発明に係る止水装置の他例を屋外側から視た図である。
図6】同他例を屋内側から視た要部拡大図である。
図7】(a)はカム部材を屋外側から視た正面図とその平面図、(b)は被係合部材を屋外側から視た正面図とその平面図である。
図8】同他例において第一の止水板と第二の止水板を連結している様子を(a)~(c)に順次に示す横断面図である。
図9図9(a)~(c)について、連結部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明に係る実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の説明において、上流側とは、想定される水の流れ方向の上流側を意味し、図示例によれば、止水装置の設置対象となる構築物の屋外側が上流側であり、同構築物の屋内側が下流側である。なお、他例としては、上流側を屋内側とし、下流側を屋外側とすることも可能である。
また、以下の説明において、「止水板幅方向」とは、止水板の横幅方向(図4によれば左右方向)を意味し、「止水板厚さ方向」とは、止水板幅方向に交差する方向であって上下方向ではない、止水板の厚み方向(図4によれば上下方向)を意味する。
また、「離隔方向」とは、第一の止水板10と第二の止水板20を、止水板幅方向に沿って引き離す方向を意味する。
【0009】
<第一の実施形態>
図1は、本発明に係る止水装置の一例を上流側から視た図である。
この止水装置1は、横幅方向に間隔を置いて立設される左右の支柱X,X間に、横幅方向に並ぶ第一の止水板10と第二の止水板20を設置して、支柱X,X間を通過しようとする水の流れを阻む。
【0010】
第一の止水板10と第二の止水板20の間には、これら第一の止水板10と第二の止水板20が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する連結手段Aが設けられている(図3及び図4参照)。
【0011】
支柱Xは、止水装置1の設置対象である構築物の開口部における左右両側の部分を構成している。前記開口部の具体例としては、自動ドアの扉体によって開閉される開口部や、地下道の出入口等が挙げられる。
各支柱Xは、硬質金属材料によって下方側不動面G(例えば、床面や沓摺等)から上方へ延びる柱状に形成される。
【0012】
各支柱Xの開口部側の面には、上側被係止部x1及び下側被係止部x2(図2参照)が設けられている。一方の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2には、第一の止水板10の上側係止部16と下側係止部17が係止される。他方の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2には、第二の止水板20の上側係止部26と下側係止部27が係止される。
【0013】
上側被係止部x1と下側被係止部x2の各々は、硬質金属材料からなる円柱ピン状に構成される。これら上側被係止部x1と下側被係止部x2は、それぞれ、支柱Xの上部側と下部側において、左右の支柱X,X間の内側(別表現をすれば開口部中央側)へ突出する。
【0014】
第一の止水板10及び第二の止水板20は、支柱X,X間の開口部の左半部と右半部をそれぞれ覆うように設けられる。
【0015】
第一の止水板10は、間隔を置いて左右に略平行に直立する縦枠11,12と、これら縦枠11,12間を上端側で連結する上枠13と、縦枠11,12間を下端側で連結する下枠14と、これら縦枠11,12、上枠13及び下枠14の内側に水密に嵌め合わせられた本体板15とによって、正面視略矩形状に構成される(図1参照)。
この第一の止水板10の左端側(詳細には縦枠11)は、左側の支柱Xに対し、上側係止部16及び下側係止部17によって脱着可能に係止される。
また、第一の止水板10の左右端側および下端側には、弾性を有するパッキン18a~18eが設けられる。
【0016】
第二の止水板20は、間隔を置いて左右に略平行に直立する縦枠22,21と、これら縦枠22,21間を上端側で連結する上枠23と、縦枠22,21間を下端側で連結する下枠24と、これら縦枠22,21、上枠23及び下枠24の内側に水密に嵌め合わせられた本体板25とによって、第一の止水板10と左右対称の正面視略矩形状に構成される(図1参照)。
この第二の止水板20の右端側(詳細には縦枠21)は、右側の支柱Xに対し、上側係止部26及び下側係止部27によって脱着可能に係止される。
また、第二の止水板20の左右端側および下端側には、弾性を有するパッキン28a~28eが設けられる。
【0017】
縦枠11,12,22,21、上枠13,23及び下枠14,24の各々は、耐腐食性を有する硬質金属材料(例えば、アルミニウム合金や、ステンレス等)によって、四角筒状や四角柱状等の長尺状に形成される。
左右の縦枠11,12(又は22,21)と、上枠13(又は23)と、下枠14(又は24)は、適宜な接続手段(例えば、ネジ止めや、リベット止め、溶接、嵌合)等によって正面視矩形枠状に接続される。
【0018】
本体板15,25は、硬質合成樹脂材料(例えば、ポリカーボネート)や金属材料等により矩形板状に形成され、その上下左右の端部を、対向する縦枠11,12,22,21、上枠13,23又は下枠14,24に対し水密に接続している。
【0019】
上側係止部16(又は26)は、第一の止水板10(又は第二の止水板20)の横幅方向の一端側において、縦枠11(又は21)の下流側の面から突出して、支柱Xの上側被係止部x1に対し、上方斜め上流側から近づいて凹状に嵌り合って(図2参照)、離脱しないようにロックされる。このロック状態は、図示しない係脱機構に対する手動操作により解除可能である。
【0020】
下側係止部17(又は27)は、上側係止部16(又は26)の下方側において、縦枠11(又は21)から下流側へ突出して、支柱Xの下側被係止部x2に対し、上方斜め上流側から凹状に嵌り合う。
【0021】
第一の止水板10の縦枠12と、第二の止水板20の縦枠22は、連結手段Aにより脱着可能に接続される。
連結手段Aは、左右方向に隣接する縦枠12と縦枠22を、止水板厚さ方向の一方側(図示例によれば下流側)で横断面L字状に嵌め合わせるととともに、他方側(図示例によれば上流側)で横断面段状もしくは横断面凹凸状に嵌め合わせて、第一の止水板10と第二の止水板20が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結している。
【0022】
図示例について、より詳細に説明すれば、この連結手段Aは、第一の止水板10から第二の止水板20側へ突出してその突端側を止水板厚さ方向へ曲げた鉤状係合部12aと、第二の止水板20から第一の止水板10側へ突出してその突端側を鉤状係合部12aに曲げた鉤状被係合部22aとを具備する(図4参照)。
【0023】
鉤状係合部12aは、突端側を上流側へ曲げたL字状の横断面を上下方向にわたる長尺状に連続している(図6参照)。
鉤状被係合部22aは、突端側を下流側へ曲げたL字状の横断面を上下方向にわたる長尺状に連続している。この鉤状被係合部22aの突端側の曲げ部分は、鉤状係合部12aにおける曲げ部分よりも基端側の懐部分に嵌り合う。
これらの構成によれば、鉤状係合部12aに相対し、鉤状被係合部22aが止水板幅方向へ移動不能であって且つ下流側へも移動不能になる。
【0024】
さらに、連結手段Aは、止水板厚さ方向の他方側に、第二の止水板20から第一の止水板10側へ突出した突部22bと、突部22bに係合して突部22bの上流側への移動を規制する係合部12bとを有する。
【0025】
突部22bは、鉤状被係合部22aに対し止水板厚さ方向の間隔を置いて位置し、第一の止水板10側へ突出する凸状の横断面を上下方向にわたる長尺状に連続している。
【0026】
係合部12bは、突部22bの突端に近接又は接触する面と、突部22bの上流側の面に近接又は接触する面とを有する略L字状の横断面(図4参照)を、上下方向にわたって長尺状に連続している。
これらの構成によれば、係合部12bに嵌り合った状態(図4(c)参照)の突部22bは、係合部12bに相対し第一の止水板10側(図4によれば左側)へ移動不能であって、且つ係合部12bに相対し上流側(図4によれば下側)へも移動不能になる。なお、この係合状態は、第一の止水板10と第二の止水板20の間を上流側へ突出させるようにして折り曲げる動作(図4によれば(c)(b)(a)の順の動作)によって解除可能である。
【0027】
パッキン18a~18e,28a~28eは、エラストマー樹脂やゴム等の弾性樹脂材料により形成され、第一の止水板10と第二の止水板20について、周囲の部材との間を水密に塞ぐ(図1参照)。
【0028】
パッキン18a(又は28a)は、上下方向へ連続する長尺状に形成され、縦枠11(又は21)の屋内側面に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。このパッキン18a(又は28a)は、縦枠11(又は21)と支柱Xの間に挟まれて弾性的に収縮し、これらの間の水密性を確保する(図2及び図3参照)。
【0029】
パッキン18b(第一のパッキン)は、上下方向へ連続する長尺状に形成される。
このパッキン18bは、鉤状係合部12aと係合部12bの間の凹状部分に設けられ(図4参照)、縦枠12における縦枠22との対向面に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。
【0030】
パッキン28b(第二のパッキン)は、上下方向へ連続する長尺状に形成される。
このパッキン28bは、鉤状被係合部22aと突部22bの間の凹状部分に設けられ(図4参照)、縦枠22における縦枠12との対向面に、接着や嵌合等の固定手段により固定されている。
【0031】
そして、パッキン18b,28bは、開口部中央側で左右の縦枠12,22間に挟まれて、押圧し合い弾性的に収縮し、縦枠12,22間の水密性を確保する(図4(c)参照)。
【0032】
パッキン18c(又は28c)は、止水板横幅方向へ連続する長尺状に形成され、下枠14(又は24)の下端面に、接着や嵌合等の適宜な固定手段により固定されている。このパッキン18c(又は28c)は、下枠14(又は24)と下方側不動面Gとの間に挟まれて弾性的に収縮し、下枠14(又は24)と下方側不動面Gの間の水密性を確保する。
【0033】
パッキン18d(又は28d)は、縦枠11(又は21)の下端部に設けられた直方体ブロック状の弾性部材(例えば、ゴムやエラストマー樹脂等)であり、縦枠11(又は21)と下方側不動面Gの間に挟まれて弾性的に収縮し、これらの間の水密性を確保する。
さらに、このパッキン18d(又は28d)は、パッキン18a(又は28a)の下端側に接するとともに、パッキン18c(又は28c)にも接しており、パッキン18a(又は28a)とパッキン18c(28c)の間に隙間が生じないようにしている。
【0034】
また、パッキン18e(又は28e)は、縦枠12(又は22)の下端部に設けられた直方体ブロック状の弾性部材(例えば、ゴムやエラストマー樹脂等)であり、縦枠12(又は22)と下方側不動面Gの間に挟まれて弾性変形し、これらの間の水密性を確保する。
さらに、このパッキン18e(又は28e)は、パッキン18b(又は28b)の下端側に接するとともに、パッキン18c(又は28c)にも接しており、パッキン18b(又は28b)とパッキン18c(28c)の間に隙間が生じないようにしている。
【0035】
<第一の実施形態の作用効果>
次に、止水装置1の設置方法、及び作用効果等について説明する。
止水装置1の設置方法では、第一の止水板10と第二の止水板20を連結手段Aにより連結する際、鉤状係合部12aを鉤状被係合部22aに嵌め合わせた後に、突部22bを係合部12bに接触又は近接する。
【0036】
詳細に説明すれば、先ず、第一の止水板10と第二の止水板20は、互いに連結される前に、それぞれ、左右の支柱X,Xに係止される(図3(a)参照)。
そして、第一の止水板10の上側係止部16と下側係止部17が、図2に示すように、上方斜め上流側から左側の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2に係止される。
同様に、第二の止水板20の上側係止部26と下側係止部27も、上方斜め上流側から右側の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2に係止される。
【0037】
この状態では、図3(a)に示すように、第一の止水板10と第二の止水板20は、これらの中央側部分(縦枠12,22)を上流側へ突出させるようにして傾斜している。
【0038】
次に、図3(b)及び図4(b)に示すように、縦枠12,22を下流側へ押すようにして、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aを係合する。
【0039】
次に、縦枠12,22を更に下流側へ押すようにして、係合部12bと突部22bを係合させるとともに、パッキン18bとパッキン28bを圧接して、第一の止水板10と第二の止水板20を、平面視略直線状に並べる(図3(c)及び図4(c)参照)。
【0040】
よって、上述した止水装置1の設置方法によれば、第一の止水板10と第二の止水板20の両端側を支柱X,Xに係止した後は、いずれかの止水板を持ち上げる作業を必要とせず、これら第一の止水板10及び第二の止水板20の中央側部分を止水板厚さ方向へ押し動かすという簡単な作業によって、これら第一の止水板10と第二の止水板20をスムーズに連結することができる。
【0041】
そして、連結状態の第一の止水板10と第二の止水板20は、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aが嵌り合い、係合部12bと突部22bも嵌り合って、縦枠12に相対する縦枠22の止水板幅方向及び止水板厚さ方向の移動が規制されるとともに、縦枠12と縦枠22の間がパッキン18b,28bによって止水板幅方向外側へ弾発される。
このため、第一の止水板10と第二の止水板20をがたつきの少ない状態でしっかりと連結することができ、ひいては、第一の止水板10と第二の止水板20の間の水密性を向上することができる。
【0042】
<第二の実施形態>
次に、本発明に係る第二の実施形態である止水装置2について説明する(図5図9参照)。この止水装置2は、上記止水装置1の一部を変更したものであるため、主にその変更部分について詳述し、同様の構成については止水装置1と同一の符号を付けて重複する説明を省略する。
【0043】
止水装置2において、第一の止水板10と第二の止水板20の間には、上記構成の連結手段Aと、連結手段Aにより連結された第一の止水板10及び第二の止水板20に対し、止水板幅方向に沿う離隔方向の力を加える離隔手段Bとが設けられる(図8及び図9参照)。
【0044】
離隔手段Bは、カム斜面31と、カム斜面31に接する摺接部41とを備え、カム斜面31と摺接部41との摺接により、第一の止水板10と第二の止水板20に、止水板幅方向に沿う離隔方向の力を加える(図6参照)。
【0045】
図示例について詳細に説明すれば、縦枠12の下流側面と、縦枠22の下流側面には、それぞれ、カム斜面31を有するカム部材30と、摺接部41を有する摺接部材40とが固定される。
【0046】
カム部材30は、図7(a)の正面図に示すように、縦長ブロック状に形成される。
カム斜面31は、カム部材30における第二の止水板20側の面に設けられ、上方へゆくにしたがって第二の止水板20から離隔する方向(図示例によれば上斜め左方向)へ傾斜する。
【0047】
また、カム部材30の上流側面には、逃がし部32が設けられる。
この逃がし部32は、第二の止水板20側へ向かうとともに上流側へ傾斜する傾斜面であり、第一の止水板10と第二の止水板20を連結手段Aによって連結する際に、カム部材30が縦枠22に緩衝するのを阻む(図9参照)。
なお、この逃がし部32は、同様に機能すれば、傾斜面以外の態様(例えば、段部等)とすることが可能である。
【0048】
摺接部材40は、図7(b)の正面図に示す縦長ブロック状に形成される。この摺接部材40における第一の止水板10側の面には、カム斜面31に対し上方側から押し付けられ摺接する摺接部41が形成される(図6参照)。
この摺接部41は、カム斜面31と略平行するように、下方へゆくにしたがって第一の止水板10から離隔する方向へ傾斜する
【0049】
また、摺接部材40の上流側面には、逃がし部42が設けられる(図7(b)参照)。
この逃がし部42は、第一の止水板10側へ向かって上流側へ傾斜する傾斜面であり、第一の止水板10と第二の止水板20を連結手段Aによって連結する際に、摺接部材40が縦枠12に緩衝するのを阻む(図9参照)。
なお、この逃がし部42は、同様に機能すれば、傾斜面以外の態様(例えば、段部等)とすることが可能である。
【0050】
<第二の実施形態の作用効果>
次に、止水装置2の設置方法、及び作用効果等について説明する。
止水装置2の設置方法では、第一の止水板10と第二の止水板20を連結手段Aにより連結するとともに、連結された第一の止水板10と第二の止水板20に対し離隔手段Bにより離隔方向の力を加える。
【0051】
詳細に説明すれば、先ず、第一の止水板10と第二の止水板20は、互いに連結される前に、それぞれ、左右の支柱X,Xに係止される(図8(a)参照)。
そして、第一の止水板10の上側係止部16と下側係止部17が、上方斜め上流側から左側の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2に係止される(図2参照)。
同様に、第二の止水板20の上側係止部26と下側係止部27も、上方斜め上流側から右側の支柱Xの上側被係止部x1と下側被係止部x2に係止される。
【0052】
この状態では、図8(a)に示すように、第一の止水板10と第二の止水板20は、これらの中央側部分(縦枠12,22)を上流側へ突出させるようにして傾斜している。また、カム部材30のカム斜面31に対し、摺接部材40の摺接部41は、上方側に位置する。
【0053】
次に、図8(b)及び図9(b)に示すように、縦枠12,22を下流側へ押すようにして、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aを係合する。
【0054】
次に、縦枠12,22を更に下流側へ押すようにして、係合部12bと突部22bを係合させるとともに、パッキン18bとパッキン28bを圧接して、第一の止水板10と第二の止水板20を、平面視略直線状に並べる(図8(c)及び図9(c)参照)。
【0055】
前記のように、第一の止水板10と第二の止水板20が角度を有する状態から平面視直線状に並んだ状態に変化する過程において、カム斜面31に対し、摺接部41が重なり合い摺動する。すなわち、摺接部41には、第二の止水板20の重量による下方向きの力が加わり、この下方向きの力がカム斜面31によって離隔方向(図6によれば左方向)の力に変換される。
このため、連結手段Aと離隔手段Bの連結部分(特に、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aの係合部分)は、離隔手段Bの作用によって、止水板幅方向に沿う離隔方向へ引っ張られることになる。
【0056】
よって、止水装置2の構成及び設置方法によれば、連結手段Aによる連結部分に、公差上の隙間等に起因するがたつきを生じる場合でも、このがたつきを離隔手段Bにより解消することができ、ひいては、第一の止水板10と第二の止水板20の間の水密性を向上することができる。
さらには、前記がたつきに起因して、第一の止水板10と第二の止水板20の間が浮き上がるようにして上方へ折れ曲がり、パッキン18e,28eと下方側不動面Gの間に隙間が生じるのを阻むことができ、ひいては、この隙間による漏水を防ぐことができる。
【0057】
<その他の変形例>
上記実施の形態によれば、縦枠12に鉤状係合部12aを設けるとともに縦枠22に鉤状被係合部22aを設けたが、他例としては、縦枠12に鉤状被係合部22aと同様の鉤状被係合部を設けるとともに縦枠22に鉤状係合部12aと同様の鉤状係合部を設けてもよい。
また、上記実施の形態によれば、縦枠12に係合部12bを設けるとともに縦枠22に突部22bを設けたが、他例としては、縦枠12に突部22bと同様の突部を設けるとともに縦枠22に係合部12bと同様の係合部を設けてもよい。
【0058】
上記実施の形態において、連結手段Aは、第一の止水板と第二の止水板を互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する構成であれば、図示例以外の係止構造に置換することが可能である。
【0059】
上記実施の形態によれば、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aをそれぞれ上下方向へ連続する長尺状に形成したが、図示例以外の他例としては、鉤状係合部12aと鉤状被係合部22aを上下方向に間隔を置いて複数設けることをも可能である。
【0060】
上記実施の形態によれば。係合部12bと突部22bをそれぞれ上下方向へ連続する長尺状に形成したが、図示例以外の他例としては、係合部12bと突部22bを上下方向に間隔を置いて複数設けることをも可能である。
【0061】
上記実施形態によれば、第一の止水板10にカム斜面31を有するカム部材30を固定し、第二の止水板20に摺接部41を有する摺接部材40を固定したが、他例としては、第一の止水板10にカム斜面31を直接設けた態様や、第二の止水板20に摺接部41を直接設けた態様等とすることも可能である。
この場合、例えば、第一の止水板10を構成する縦枠12の一部にカム斜面31を形成し、第二の止水板20を構成する縦枠22の一部に摺接部41を形成すればよい。
【0062】
上記実施形態によれば、特に好ましい一例として、摺接部41をカム斜面31と略平行な面にしたが、摺接部41は、カム斜面31に摺接する部位であればよく、曲面や突起等とすることも可能である。
【0063】
図示例によれば、第一の止水板10にカム斜面31を設けるとともに、第二の止水板20に摺接部41を設けたが、他例としては、第一の止水板10に摺接部41と同様の摺接部を設けるとともに、第二の止水板20にカム斜面31と同様のカム斜面を設けてもよい。
【0064】
上記実施の形態によれば、離隔手段Bをカム斜面31と摺接部41によって構成したが、この離隔手段Bは、第一の止水板10と第二の止水板20に対し離隔方向の力を加えるものであればよく、例えば、第一の止水板10と第二の止水板20の間にスプリング等の付勢部材を設け、この付勢部材により第一の止水板10と第二の止水板20の間に離隔方向の力を加えるようにしてもよい。
【0065】
上記実施の形態によれば、特に組立性や止水性等が良好な一例として、第一の止水板10と第二の止水板20の間に二つのパッキン18b,28bを挟み込んだが、図示例以外の他例としては、第一の止水板10と第二の止水板20の間に単一のパッキンを挟み込んだ態様とすることも可能である。この他例の場合、単一のパッキンは、止水板幅方向の厚みを二つのパッキン18b,28bを合わせた厚みと略同等にする。
【0066】
上記第二の実施形態である止水装置2において、連結手段Aは、第一の止水板10と第二の止水板20を離隔しないように連結するものであれば、図示例以外の係止構造に置換することが可能である。
【0067】
また、本発明は上述した具体的構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
<総括>
以上のとおり、上記実施形態では以下の発明を開示している。
(1)
幅方向に並ぶ第一の止水板と第二の止水板により水の流れを阻むようにした止水装置であって、第一の止水板と第二の止水板の間には、これら第一の止水板と第二の止水板が互いに厚さ方向及び幅方向へ移動しないように連結する連結手段が設けられていることを特徴とする止水装置(図1図6図8及び図9参照)。
(2)
前記連結手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板から他方の止水板側へ突出してその突端側を止水板厚さ方向へ曲げた鉤状係合部と、前記他方の止水板から前記一方の止水板側へ突出してその突端側を前記鉤状係合部に係合するように曲げた鉤状被係合部とを具備することを特徴とする(1)に記載の止水装置。(図3図4図8及び図9参照)。
(3)
前記連結手段は、止水板厚さ方向の一方側に前記鉤状係合部及び前記鉤状被係合部を有し、止水板厚さ方向の他方側には、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板から他方の止水板側へ突出した突部と、前記他方の止水板側で前記突部に係合する係合部とを有することを特徴とする(2)に記載の止水装置。(図3図4図8及び図9参照)。
(4)
前記鉤状係合部と前記鉤状被係合部が、上下方向へわたって係合するようにしたことを特徴とする(2)または(3)に記載の止水装置(図1及び図5参照)。
(5)
前記連結手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板を脱着可能に連結することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の止水装置(図3図4図8及び図9参照)。
(6)
前記連結手段により連結された前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し離隔方向の力を加える離隔手段が設けられていることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに)止水装置(図5図9参照)。
(7)
前記離隔手段は、前記第一の止水板と前記第二の止水板のうち、その一方の止水板に一体的に設けられたカム斜面と、他方の止水板に一体的に設けられて前記カム斜面に接する摺接部とを備え、前記カム斜面と前記摺接部との摺接により前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し離隔方向の力を加えることを特徴とする(6)に記載の止水装置(図5及び図6参照)。
(8)
前記カム斜面は、上方へゆくにしたがって前記離隔方向へ傾斜する斜面であり、
前記摺接部は、前記カム斜面に対し上方側から押し付けられることを特徴とする(7)に記載の止水装置(図6参照)。
(9)
前記摺接部は、前記カム斜面と略平行な傾斜面であることを特徴とする(7)または(8)に記載の止水装置(図6参照)。
(10)
前記第一の止水板と前記第二の止水板の間に弾性を有するパッキンが挟み込まれていることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の止水装置(図4及び図9参照)。
(11)
前記パッキンは、前記第一の止水板に設けられた第一のパッキンと、前記第二の止水板に設けられて前記第一のパッキンに接する第二のパッキンとから構成されることを特徴とする(10)に記載の止水装置(図1図3図4図5図8及び図9参照)。
(12)
(3)に記載の止水装置の設置方法であって、
前記鉤状係合部を前記鉤状被係合部に嵌め合わせた後に、前記突部を前記係合部に接触又は近接するようにしたことを特徴とする止水装置の設置方法(図4参照)。
(13)
(7)に記載の止水装置の設置方法であって、
前記第一の止水板と前記第二の止水板を前記連結手段により連結する工程と、連結された前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し前記離隔手段による離隔方向の力を加える工程とを含むことを特徴とする止水装置の設置方法(図9参照)。
【0069】
また、上記実施形態では、次の構成要件のみを必須とした発明も開示している。
幅方向に並ぶ第一の止水板と第二の止水板により水の流れを阻むようにした止水装置であって、前記第一の止水板と前記第二の止水板には、これら二つの止水板を離隔しないように連結する連結手段と、前記連結手段により連結された前記第一の止水板と前記第二の止水板に対し離隔方向の力を加える離隔手段とが設けられていることを特徴とする止水装置(図5図9参照)。
この発明によれば、二つの止水板の連結部分ががたつくのを防ぐことができ、ひいては止水性能を向上することがきる。
【符号の説明】
【0070】
10:第一の止水板
12:縦枠
12a:鉤状係合部
12b:係合部
18a~18e,28a~28e:パッキン
20:第二の止水板
22:縦枠
22a:鉤状被係合部
22b:突部
30:カム部材
31:カム斜面
32:逃がし部
40:摺接部材
41:摺接部
42:逃がし部
A:連結手段
B:離隔手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9