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特開2024-121479ジピリミジルピリジン誘導体、電子輸送材料、電子注入材料およびそれを用いた有機EL素子
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  • 特開-ジピリミジルピリジン誘導体、電子輸送材料、電子注入材料およびそれを用いた有機EL素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121479
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ジピリミジルピリジン誘導体、電子輸送材料、電子注入材料およびそれを用いた有機EL素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20240830BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240830BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240830BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
H10K50/16
H10K50/17
H10K85/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028614
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2023年第70回応用物理学会 春季学術講演会講演予稿集,第11-107頁
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、国際科学技術共同研究推進事業「小型全有機近赤外発光・分光センサシステムの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 健志
(72)【発明者】
【氏名】陳 宇輝
(72)【発明者】
【氏名】笹部 久宏
(72)【発明者】
【氏名】城戸 淳二
【テーマコード(参考)】
3K107
4C063
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC12
3K107CC14
3K107CC24
3K107DD75
3K107DD78
4C063AA03
4C063AA05
4C063BB01
4C063CC29
4C063DD12
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い三重項エネルギー及び熱安定性を有し、銀を併用することで電子注入性が向上するジピリミジルピリジン誘導体、電子輸送材料、電子注入材料及びそれを用いた有機EL素子を提供する。
【解決手段】例えば、下記構造式で表されるジピリミジルピリジン誘導体である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジピリミジルピリジン誘導体。
【化1】
(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、
Aは下記一般式(2)に示す置換基であり、
【化2】
(一般式(2)中、Xは-N-または-CH-である。)
Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、または、下記一般式(3)に示す置換基である。
【化3】

(一般式(3)中、Lは置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、R3~R7は、それぞれ独立に、水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。))
【請求項2】
下記一般式(4)で表されるジピリミジルピリジン誘導体。
【化4】
(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、
Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、または、下記一般式(5)に示す置換基である。
【化5】
(一般式(5)中、R3~R7は、それぞれ独立に、水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。))
【請求項3】
請求項1または2に記載のジピリミジルピリジン誘導体よりなる電子輸送材料。
【請求項4】
請求項1または2に記載のジピリミジルピリジン誘導体よりなる電子注入材料。
【請求項5】
請求項1または2に記載のジピリミジルピリジン誘導体を用いた有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い三重項エネルギーを有し、熱安定性を向上させた有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELでは、高効率と長寿命の両立が課題である。それを実現するには、有機EL素子における駆動電圧の低減が重要であることから、金属電極から有機半導体薄膜へのキャリア注入障壁を低減させるキャリア注入材料を使用する必要がある。キャリア注入材料として、例えば、電子注入材料にリチウム、マグネシウム、セシウムなど、大気中の水分や酸素との反応性が高いアルカリ金属やアルカリ土類金属、あるいはそれらを含む化合物が従来から知られるが、より高性能な有機EL素子を得るにはそれらの反応性やマイグレーションの抑制、透明性の確保などが課題とされている。
【0003】
近年、キャリア注入材料として、リチウムやアルミニウムに比べて大気中で安定的に利用でき、かつマイグレーションし難い銀を用いて超薄膜もしくはナノワイヤにした透明金属電極の開発が進んでいる。電子輸送材料と銀とを混合あるいは積層させた有機EL素子で、アルカリ金属を用いた場合と同様の優れた電子注入性が実現されることが注目されている。例えば、非特許文献1では、フェナントロリン誘導体の一種であるBPhenと、Agとを混合した電子輸送層において、BPhenがAg+と相互作用して、強い配位結合を有する[Ag(BPhen)]+と[Ag(BPhen)2+とからなる安定な錯体を形成し、このような安定な錯体からn-ドーパントとなる電子を容易に放出することが報告されている。非特許文献2では、ITO/ZnO電極の仕事関数が4.10eVであるところ、Phen誘導体と電極との配位反応により、電極の安定化と、仕事関数を3.29~2.43eVに小さくすることができ、このような電極を備える有機EL素子は、LiFよりも高い電子注入効率を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Zhengyang Bin et al., Nature Communications, 10, 866(2019)
【非特許文献2】Hirohiko Fukagawa et al., Nature Communications, 11, 3700(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フェナントロリン誘導体と銀との組み合わせによりキャリア注入能の向上が認められる一方で、フェナントロリン誘導体は三重項エネルギー(ET1)が低く、熱安定性も低い。このため、フェナントロリン誘導体よりも高い三重項エネルギーを有し、かつ熱安定性にも優れた材料と、銀とからなるキャリア注入性を有する非フェナントロリン類の化合物で新規な電子輸送材料の開発が課題となっている。
【0006】
本発明の課題は、高い三重項エネルギーおよび熱安定性を持ち、かつ、銀を併用することで電子注入性が向上するジピリミジルピリジン誘導体、それよりなる電子輸送材料、電子注入材料、ならびにそれを用いた有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]下記一般式(1)で表されるジピリミジルピリジン誘導体。
【化1】
【0008】
(一般式(1)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、
【0009】
Aは下記一般式(2)に示す置換基であり、
【化2】
(一般式(2)中、Xは-N-または-CH-である。)
【0010】
Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、または、下記一般式(3)に示す置換基である。
【化3】
【0011】
(一般式(3)中、Lは置換もしくは無置換の炭素数5~60のアリーレン基、または置換もしくは無置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、R3~R7は、それぞれ独立に、水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。))
【0012】
[2]下記一般式(4)で表されるジピリミジルピリジン誘導体。
【化4】
【0013】
(一般式(4)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換もしくは無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、
Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、または、下記一般式(5)に示す置換基である。
【化5】
【0014】
(一般式(5)中、R3~R7は水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、または、直鎖もしくは分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。))
【0015】
[3][1]または[2]に記載のジピリミジルピリジン誘導体よりなる電子輸送材料。
[4][1]または[2]に記載のジピリミジルピリジン誘導体よりなる電子注入材料。
[5][1]または[2]に記載のジピリミジルピリジン誘導体を用いた有機EL素子。
【発明の効果】
【0016】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、共役長の短いフェニル部位に起因する高い三重項エネルギーおよび熱安定性を有し、さらに電子注入性を持つ銀を添加することでキャリア注入性も向上する。
本発明によれば、銀を用いることで、Liqと同程度に駆動電圧を低減でき、消費電力を低減した高効率な有機EL素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、B26DPmPy4Phの単結晶X線構造解析の結果を表し、図1(b)は、26DPmPy4bPhの単結晶X線構造解析の結果を表す。
図2図2は、本発明の有機EL素子の一実施形態を表す。
図3図3は、本発明の有機EL素子の各層の材料のエネルギーダイアグラムである。
図4図4は、電子輸送層に26DPmPy4bPh、B26DPmPy4Ph、または22TPy-p-bPhを使用し、電子注入層にAgまたはLiqを使用した場合の有機EL素子のELスペクトルをそれぞれ表す。
【0018】
図5図5は、電子輸送層に26DPmPy4bPh、B26DPmPy4Ph、または22TPy-p-bPhを使用し、電子注入層にAgまたはLiqを使用した場合の本発明の有機EL素子の一実施形態の電流密度-電圧-輝度特性を表す。
図6図6は、電子輸送層に26DPmPy4bPh、B26DPmPy4Ph、または22TPy-p-bPhを使用し、電子注入層にAgまたはLiqを使用した場合の本発明の有機EL素子の一実施形態の外部量子効率-輝度特性を表す。
図7図7は、電子輸送層に26DPmPy4bPh、B26DPmPy4Ph、または22TPy-p-bPhを用いた素子の紫外光電子分光(UPS)スペクトルと、各材料の真空準位のシフト(ΔeV)を表す。
図8図8は、電子輸送層に26DPmPy4bPh、B26DPmPy4Ph、または22TPy-p-bPhを用いた素子のX線光電子分光(XPS)スペクトルと、各ピークの結合エネルギー値(eV)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、下記一般式(1)で表される。
【化6】
【0020】
一般式(1)中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、および、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、Aは下記一般式(2)に示す置換基であり、Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、および、下記一般式(3)に示す置換基である。なお、一般式(2)および(3)中、*は結合手の位置を表す。
【0021】
【化7】
【化8】
【0022】
炭素数6~30のアリール基には、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、ベンゾピレニル基、クリセニル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、コランニュレニル基およびコロネニル基などが挙げられる。
【0023】
炭素数5~60のヘテロアリール基には、例えば、ピリジン-イル、ピラジン-イル、ピリミジン-イル、キノリン-イル、イソキノリン-イル、アクリジン-イル、フェナントロリン-イル、フラン-イル、ピロール-イル、チオフェン-イル、カルバゾール-イル、オキサゾール-イル、オキサジアゾール-イル、チアジアゾール-イル、トリアゾール-イル、ベンゾオキサゾール-イル、ベンゾオキサジアゾール-イル、ベンゾチアジアゾール-イル、ベンゾトリアゾール-イル、ベンゾチオフェン-イル等が挙げられる。
【0024】
炭素数1~6のアルキル基には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、3-ペンチル基、t-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、および2,3-ジメチルブチル基などが挙げられる。
【0025】
炭素数1~6のアルコキシ基には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、ネオペントキシ基、イソペントキシ基、s-ペントキシ基、3-ペントキシ基、t-ペントキシ基、n-ヘキソキシ基、2-メチルペントキシ基、3-メチルペントキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、および2,3-ジメチルブトキシ基などが挙げられる。
【0026】
直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基には、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、s-ブチルアミノ基、t-ブチルアミノ基、n-ペンチルアミノ基、ネオペンチルアミノ基、イソペンチルアミノ基、s-ペンチルアミノ基、3-ペンチルアミノ基、t-ペンチルアミノ基、n-ヘキシルアミノ基、2-メチルペンチルアミノ基、3-メチルペンチルアミノ基、2,2-ジメチルブチルアミノ基、および2,3-ジメチルブチルアミノ基などが挙げられる。
【0027】
直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基には、メチルプロピルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、エチルメチルアミノ基、イソプロピルメチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基、エチルイソプロピルアミノ基、およびイソプロピルプロピルアミノ基などが挙げられる。
【0028】
なお、「置換または無置換」とは、本発明の効果を損なわない範囲において、前記したアリール基、アルキル基、アルコキシ基、モノアルキルアミノ基およびジ‐アルキルアミノ基の一部に、例えば、ハロゲン、水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、シアノ基、およびアミノ基などを有してもよいことを意味する。
【0029】
Aは下記一般式(2)に示す置換基である。
【化9】
【0030】
一般式(2)中、4つあるXはそれぞれ独立に-N-または-CH-である。具体的には、4つのXがすべて同一であるベンゼン環やテトラジン環であってもよいし、-N-および-CH-が混合したピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環およびピリダジン環であってもよい。
【0031】
Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、および、下記一般式(3)に示す置換基である。
【0032】
【化10】
【0033】
一般式(3)中、Lは置換または無置換の炭素数5~60のアリーレン基、および置換または無置換の炭素数1~6のアルキレン基である。
1およびR2はそれぞれ独立に水素、シアノ基、置換もしくは無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、および、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。
【0034】
3~R7は水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、および、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。
【0035】
なお、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基は、前記したとおりである。
【0036】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、下記一般式(4)で表される。
【化11】
【0037】
一般式(4)中、R1およびR2はそれぞれ独立に水素原子、シアノ基、置換または無置換の炭素数6~30のアリール基、置換または無置換の炭素数5~60のヘテロアリール基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、および、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基であり、Bは水素原子、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基、および、下記一般式(5)に示す置換基である。
【0038】
【化12】
【0039】
一般式(5)中、R3~R7は水素、フェニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルキル基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のアルコキシ基、直鎖または分岐状の炭素数1~6のモノアルキルアミノ基、および、直鎖または分岐状の炭素数1~6のジアルキルアミノ基である。
【0040】
これらのうち、本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、以下の構造式で表される化合物(26DPmPy4bPhおよびB26DPmPy4Ph)が特に好ましい。
【化13】
【0041】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、例えば、以下に示す方法により合成することができる。26DPmPy4bPhの合成方法を一例に示す。
【化14】
【0042】
2-アセチルピリミジンに4-ブロモベンズアルデヒドを添加し、アンモニア水、水酸化カリウム水溶液、およびエタノール中で攪拌して、収率62%で生成物を得る。次いで、得られた化合物にフェニルボロン酸を添加して、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)、(2’,6’-ジメトキシビフェニル)-ジシクロヘキシルホスフィン(SPhos)、リン酸カリウム水溶液、および1,4-ジオキサンを添加して、加熱還流する。精製後、収率53%で目的物である26DPmPy4bPhを得る。
ただし、本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、前記した方法に限られず、種々の公知の方法で合成することができる。
【0043】
前記ジピリミジルピリジン誘導体、とりわけ26DPmPy4bPhおよびB26DPmPy4Phでは、ピリジン環およびこれを介して隣り合う2個のピリミジン環が、その3個の窒素原子の非共有電子対によって高い電子密度を有している。さらに26DPmPy4bPhおよびB26DPmPy4Phとも、短いπ電子共役系であり、電子供与性のビフェニル基を有している。前記ビフェニル基が三重項エネルギーの向上に寄与する。つまり、26DPmPy4bPhおよびB26DPmPy4Phは高い電子供与能を有することから、前記ジピリミジルピリジン誘導体は、有機EL素子において、電子輸送層または電子注入層の材料として用いることで、n-ドーパントとして作用する。或いは、前記ジピリミジルピリジン誘導体は発光層中に分散させて用いて同等の効果を奏する。なお、前記ビフェニル基は熱安定性の向上にも寄与する。
本発明の好ましい実施形態では、前記ジピリミジルピリジン誘導体は銀と混合させて、またはジピリミジルピリジン誘導体膜に銀層を積層させて用いられる。前記ジピリミジルピリジン誘導体に銀を添加すると、ジピリミジルピリジン誘導体において、電子密度の高い構造部分にある窒素原子の非共有電子対とAg+とが相互作用して、安定な配位結合を形成する。銀と併用することで、ジピリミジルピリジン誘導体を単独で用いた時よりも良好な電子供与性を発現し、有機EL素子のキャリア注入材料として好適である。
【0044】
[有機EL素子]
本発明の有機EL素子は、前記ジピリミジルピリジン誘導体よりなる電子輸送材料または電子注入材料を用いたものである。
前記有機EL素子の構成は、電極間に有機層を一層あるいは二層以上積層した構造である。有機層とは、電極以外の層、すなわち、ホール注入層2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5、および電子注入層6などを指す。有機EL素子の構成には、例えば、陽極1/発光層4/陰極7、陽極1/ホール注輸送層3/発光層4/電子輸送層5/陰極7、および陽極1/ホール注輸送層3/発光層4/電子輸送層5/電子注入層6/陰極7などがある。
【0045】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、電子輸送層5において、電子輸送材料として用いてもよいし、電子注入層6において、電子注入材料として用いてもよい。あるいは、発光層4において、発光材料と共に分散して用いてもよい。
【0046】
基板には、透明かつ平滑であって、少なくとも70%以上の全光線透過率を有するものが用いられ、具体的には、フレキシブルな透明基板である、数μm厚のガラス基板や特殊な透明プラスチック等が用いられる。
【0047】
基板上に形成される、陽極1、ホール注入層2、ホール輸送層3、発光層4、電子輸送層5、電子注入層6、陰極7といった薄膜は、真空蒸着法または塗布法で積層される。真空蒸着法を用いる場合、通常10-3Pa以下に減圧した雰囲気で、蒸着物を加熱して行う。各層の形成方法は、枚葉方式の他に、例えば、ロール・ツー・ロール法であってもよい。各層の膜厚は、層の種類や使用する材料によって異なるが、通常、陽極1、陰極7は100nm程度、発光層4を含む他の有機層は50nm未満である。
【0048】
陽極1には、仕事関数が大きく、また全光線透過率は通常80%以上であるものが用いられる。具体的には、陽極から発光した光を透過させるため、酸化インジウムスズ(ITO)やZnO等の透明導電性セラミックス、PEDOT/PSSやポリアニリン等の透明導電性高分子、その他の透明導電性材料が用いられる。
【0049】
ホール注入層2は、陽極1とホール輸送層3との間のバッファとしての層である。
ホール注入層2を構成するホール注入材料には、例えば、(ポリ(アリーレンエーテルケトン)含有トリフェニルアミン(KLHIP:PPBI)、ヘキサアザトリフェニレンカルボニトリル(HATCN)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルホネート(PEDOT:PSS)などが挙げられる。ホール注入層2は、有機EL素子の駆動電圧を下げる効果を発揮する。
【0050】
ホール輸送層3は、陽極1と発光層4との間、ホール注入層2がある場合は、ホール注入層2と発光層4との間に設けられる。ホール輸送材料には、イオン化ポテンシャルが小さいもの、すなわち、HOMOから電子が励起されやすく、ホールが生成されやすいものが用いられる。その他、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン-アルト-N-(4-ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)、4,4’-シクロヘキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン](TAPC)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ジ(m-トリル)ベンジジン(TPD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(NPD)、4,4’,4’’-トリ-9-カルバゾリルトリフェニルアミン(TCTA)および4,4’,4’’-トリス[フェニル(m-トリル)アミノ]トリフェニルアミン)などを併用してもよい。
【0051】
発光層4は、発光材料を単独で発光層4に用いたものでもよいし、発光層4がドーパントとホストを含み、ドーパントとして発光材料を用いたものでもよい。発光層には、発光材料やドーパントに加えて、本発明のジピリミジルピリジン誘導体を分散させてもよい。
【0052】
発光材料には、任意の公知の蛍光材料やリン光材料が用いられる。蛍光材料の具体例を挙げると、青色発光蛍光体にはナフタレン、ペリレンおよびピレンが挙げられ、緑色発光蛍光体には、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体およびトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム)(Alq3)などのアルミニウム錯体が挙げられ、黄色発光蛍光体には、ルブレンおよびペリミドン誘導体が挙げられ、赤色発光蛍光体には、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(p-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン)(DCM)、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体が挙げられる。燐光材料の具体例には、トリス(2-フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)およびトリス(2-フェニルピリジン)ルテニウムなどが挙げられる。本発明のジピリミジルピリジン誘導体をこれらの発光材料に分散して用いてもよい。
【0053】
ホスト化合物には、例えば、シクロメタフェニレン(CMP)、CzPO、ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド(DPEPO)、3,6-ビス(ジフェニルホルホリル)-9-フェニルカルバゾール(PO9)、4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(CBP)、3,3’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル(mCBP)、2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾチオフェン(PPT)、アダマンタン・アントラセン(Ad-Ant)、ルブレン、および2,2’-ビ(9,10-ジフェニルアントラセン)(TPBA)等が挙げられる。
【0054】
電子輸送層5は、陰極7と発光層4の間に設けられる。電子輸送材料には、電子親和力が大きいもの、すなわち、LUMOのエネルギーが小さく、励起電子が存在しやすくする材料が挙げられる。具体的には、本発明のジピリミジルピリジン誘導体が用いられる。前記ジピリミジルピリジン誘導体は一種を単独で用いてもよいし、ジピリミジルピリジン誘導体に銀を混合して用いてもよい。
【0055】
電子輸送材料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記ジピリミジルピリジン誘導体、またはジピリミジルピリジン誘導体および銀の混合物に、例えば、1,4-ビス(1,10-フェナントロリン-2-イル)ベンゼン(DPB)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル)-2-メチルピリミジン(B3PymPm)、4,6-ビス(3,5-ジ(ピリジン-4-イル)フェニル)-2-フェニルピリミジン(B4PyPPm)、2-(4-ビフェニリル)-5-(p-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(tBu-PBD)、1,3-ビス[5-(4-t-ブチルフェニル)-2-[1,3,4]オキサジアゾリル]ベンゼン(OXD-7)、バソクプロイン(BCP)、1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール-2-イル)ベンゼン(TPBi)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(TAZ)等を併用することができる。
【0056】
電子注入層6は陰極7に接し、電子輸送層5と同様に、電子を輸送する役割を有する層である。電子注入材料には、具体的には、前記ジピリミジルピリジン誘導体が用いられる。ジピリミジルピリジン誘導体は一種を単独で用いてもよいし、ジピリミジルピリジン誘導体に銀を混合して用いてもよい。電子注入材料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、前記ジピリミジルピリジン誘導体、またはジピリミジルピリジン誘導体および銀の混合物に、例えば、フッ化リチウム(LiF)、8-ヒドロキシキノリノラト-リチウム(Liq)およびリチウム2-(2’,2’’-ビピリジン-6’-イル)フェノラート(Libpp)等が挙げられる。
【0057】
陰極7には、仕事関数が低く(4eV以下)、かつ、化学的に安定なものが用いられる。具体的には、Al、MgAg合金、又は、AlLiやAlCa等のAlとアルカリ金属との合金等の陰極材料が用いられる。
【0058】
その他、必要に応じて、正孔阻止層、電子阻止層および励起子阻止層などを設けてもよい。
【実施例0059】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例により制限されるものではない。
合成物の同定に用いた機器および測定条件は以下のとおりである。
(1)1H核磁気共鳴法(NMR)
日本電子(株)製、400MHz、JNM-EX270FT-NMR
(2)13C核磁気共鳴法(NMR)
日本電子(株)製、100MHz、JNM-EX270FT-NMR
(3)質量分析法(MS)
日本電子(株)製、JMS-K9[卓上 GCQMS]
電界脱離法(FD)を用いた質量分析によって、分子量を求めた。
【0060】
[合成例1]2-アセチルピリミジンの合成
【化15】
500ml 三口フラスコに2-シアノピリミジン9.85g(93.7mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)150.0mlを順次に加え、1時間窒素ガスで bubbling をした後に、0℃(氷浴)に保ちながら、メチルマグネシウムブロミド(1M in THF)52.3ml(52.3mmol)を15分の間にゆっくり滴下させ、18時間氷浴で0℃に冷やしながら攪拌させた。その後、塩化アンモニウム飽和水溶液30mlと希塩酸(4M)70mlを入れて室温で1時間攪拌させた。炭酸ナトリウムでpHを7まで調整して、ジクロロメタンで分液して、下層の赤黄色有機溶液を回収して、硫酸マグネシウムで乾燥した後に、溶媒であるジクロロメタンをエバポレーターで留去した。得られた赤色粘体を、酢酸エチル150mlを加え超音波により溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 600cc、展開溶媒: 酢酸エチル:ヘキサン=1:1、2:1、1:0 v:v)により精製し溶媒を留去し、2-アセチルピリミジンを3.62g(収率56.7%)得た。
【0061】
[実施例1]26DPmPy4bPhの合成
【化16】
合成例1で得られた2-アセチルピリミジン2.89g(23.7mmol)を300ml 三角フラスコに入れ、4-ブロモベンズアルデヒド2.01g(11.6mol)、エタノール100ml、水酸化カリウム1.24g(21.9mmol)、およびアンモニア水(濃度25%)100mlを添加して、24時間常温で攪拌した。ブフナーロートで、ろ過を行い、ろ物をエタノールで超音波分散洗浄を行った。ろ物を減圧乾燥し、得られた白色固体に、クロロホルム:メタノール=100:1 150mlを加え超音波により溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 500cc、展開溶媒:クロロホルム:メタノール=100:0、100:1、100:5 v:v)により精製し溶媒を留去し、黄白色固体(2.79g、収率62.3%)を得た。
得られた化合物2.74g、(7.08mmol)を300ml三つ口フラスコに入れ、フェニルボロン酸1.30g(10.6mol)、1,4-ジオキサン120ml、リン酸化カリウム12.49g(58.8mmol)と水45.0mlからの混合溶液を順次に加え、1時間窒素ガスで bubbling をした後に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3)0.170g(0.19mmol)、(2’,6’-ジメトキシビフェニル)-ジシクロヘキシルホスフィン(SPhos)0.156g(0.38mmol)を添加し、窒素雰囲気下、104 ℃ で24時間加熱還流させた。その後放冷し、反応液を桐山ロート(5C)でろ過し、蒸留水でかけ洗いを行った。ろ物をメタノールで超音波分散洗浄し、ろ過を行い、ろ物を減圧乾燥した。得られた白色固体を、クロロホルム:メタノール=100:1 100mlを加え超音波により溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 600cc、展開溶媒:クロロホルム:メタノール=100:0、100:1、100:3、100:10 v:v)により精製し溶媒を留去し、収率53.4%で目的物である26DPmPy4bPh(1.45g)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl-d):(δ 9.00 - 8.95 (m, 4H), 8.91 (d, J = 1.0 Hz, 2H), 7.98 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.76 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.69 - 7.64 (m, 2H), 7.48 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 7.41 - 7.32 (m, 3H) ppm.)
EIMS:m/z=387[M
単結晶X線構造解析による26DPmPy4bPhの立体構造を図1(a)に示す。
【0062】
[実施例2]B26DPmPy4Phの合成
【化17】
合成例1で得られた2-アセチルピリミジン5.01g(41.1mmol)を500ml 三角フラスコに入れ、3-ブロモベンズアルデヒド2.40ml(20.5mol)、エタノール100ml、水酸化ナトリウム2.40g(42.9mmol)、およびアンモニア水(濃度25%)130mlを添加して、24時間常温で攪拌した。ブフナーロートで、ろ過を行い、ろ物をエタノールで超音波分散洗浄を行った。ろ物を減圧乾燥し、得られた白色固体に、クロロホルム:メタノール=100:1 130mlを加え超音波により溶解させ、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル 600cc、展開溶媒:クロロホルム:メタノール=100:0、100:1、100:10 v:v)により精製し溶媒を留去し、白色固体(2.11g、収率47.2%)を得た。
得られた化合物1.55g、(3.97mmol)を100ml三つ口フラスコに入れ、ビス(ピナコラト)ジボロン0.48g(1.89mol)、1,4-ジオキサン25ml、炭酸カリウム1.57g(11.3mmol)を順次に加え、1時間窒素ガスで bubbling をした後に、[(2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)-2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホネート(tBuXPhos-Pd-G3)0.152g(0.19mmol)、(2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル(XPhos)0.181g(0.38mmol)を添加し、窒素雰囲気下、104℃で48時間加熱還流させた。その後放冷し、反応液を桐山ロート5Cでろ過し、蒸留水でかけ洗いを行った。ろ物をメタノールで超音波分散洗浄し、ろ過を行い、ろ物を減圧乾燥した。得られた白色固体を、トルエン:メタノール=1:1 200mlで再結晶で精製した上で溶媒を留去し、収率67.1%で目的物であるB26DPmPy4Ph(0.79g)を得た。
1H-NMR(600MHz,CDCl-d2):(δ 8.96 - 8.90 (m, 12H), 8.14 (s, 2H), 7.89 (d, J = 7.1 Hz, 2H), 7.81 (d, J = 7.7 Hz, 2H), 7.66 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 7.34 (t, J = 4.8 Hz, 4H).)
EIMS:m/z=620[M
単結晶X線構造解析によるB26DPmPy4Phの立体構造を図1(a)に示す。
【0063】
[比較例1]22TPy-p-bPh
下記構造式で表される化合物を用いた。
【化18】
1H-NMR(400MHz,CDCl-d):(δ 8.79 (t, J = 1.3 Hz, 2H), 8.73 (ddt, J = 4.8, 1.9, 1.0 Hz, 2H), 8.68 (dp, J = 8.0, 1.3 Hz, 2H), 8.04 - 7.95 (m, 2H), 7.92 - 7.83 (m, 2H), 7.79 - 7.70 (m, 2H), 7.67 (dq, J = 8.3, 1.3 Hz, 2H), 7.47 (ddd, J = 8.3, 7.2, 1.7 Hz, 2H), 7.41 - 7.31 (m, 3H) ppm.)
EIMS:m/z=385[M
【0064】
[物性評価]
(熱特性)
示差走査熱量測定(DSC)および示差熱分析(TGA)((株)パーキンエルマージャパン製)により、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、および5%重量減衰温度(Td)を測定した。
【0065】
実施例1の26DPmPy4bPh、実施例2のB26DPmPy4Ph、比較例1の22TPy-p-bPhの重量平均分子量(Mw)、ガラス転移温度(Tg)、融点(Tm)、および5%重量減衰温度(Td5)を以下に示す。なお、N/AはNot Availableを表す。
【表1】
【0066】
(光学特性)
光学特性評価に用いた機器および測定条件は以下のとおりである。
(1)紫外・可視(UV-vis)分光光度計
(株)島津製作所製 UV-3150
測定条件;スキャンスピード 中速、測定範囲 200~800nm サンプリングピッチ 0.5nm、スリット幅 0.5nm
(2)フォトルミネッセンス(PL)測定装置
(株)堀場製作所製Fluoro MAX-2
常温および低温において、PLスペクトル、及び、ストリークカメラ(浜松ホトニクス(株)製C4334)を用いた時間分解PLスペクトル(過渡PLスペクトル)を測定した。
(3)光電子収量分光(PYS)装置
住友重機械工業(株)製イオン化ポテンシャル測定装置
イオン化ポテンシャル測定装置を用いて、真空中でイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。
なお、電子親和力(E)は、UV-vis吸収スペクトルの吸収端よりエネルギーギャップ(E)を見積もることによって算出した。
【0067】
実施例1の26DPmPy4bPh、実施例2のB26DPmPy4Ph、比較例1の22TPy-p-bPhのイオン化ポテンシャル(Ip)、エネルギーギャップ(E)、電子親和力(E)、および三重項エネルギー(ET)を以下に示す。
【0068】
【表2】
【0069】
[素子性能評価]
有機EL素子の評価に用いた機器は以下のとおりである。
(1)エレクトロルミネッセンス(EL)測定装置
(株)浜松ホトニクス製 PHOTONIC MULTI-CHANNEL ANALYZER PMA-1
(2)紫外光電子分光(UPS)装置
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Theta Probe
励起エネルギーが21.22eVのヨウ化ヘリウムをモノクロマイズした放射線を用い、-8.0Vのバイアス電圧をかけて測定を行った。
(3)X線光電子分光(XPS)装置
サーモフィッシャーサイエンティフィック(株)製 Theta Probe
【0070】
[試験例1]
実施例1の26DPmPy4bPh、実施例2のB26DPmPy4Ph、比較例1の22TPy-p-bPhを電子輸送材料とし、TAPCをホール輸送材料とし、発光層にCBPをホスト材料として用い、Ir(ppy)3を緑色リン光ドーパントとして用いて素子を作製した。
素子構造は以下に示すとおりである。なお、電子注入層にはLiqまたはAgを使用した。括弧内は膜厚(nm)を表し、ETLは電子輸送層を表す。
ITO/トリフェニルアミン含有ポリマー:PPBI(20nm)/TAPC(30nm)/CBP:8wt% Ir(ppy)3(10nm)/ETL(50nm)/Liq(1nm) or Ag(0.5nm)/Al(100nm)
前記素子の各層のエネルギーダイアグラムを図3に示す。前記の素子について、ELスペクトルを測定した結果を図4に示す。電子注入層にAgを使用した場合でも、実施例1および2とも、比較例1と同等以上のEL発光強度を示した。
図5に電流密度-電圧特性および輝度-電圧特性、図6に外部量子効率-輝度特性の関係を示す。結果を表3に示す。
銀を用いた素子では、Liqと同程度に駆動電圧を低減でき、低消費電力化を実現できることが分かる。
【0071】
【表3】
[試験例2]
銀添加によるキャリア注入性への影響を確認するため、ITO電極、アルミニウム(100nm)、銀(0.5nm)、および22TPy-p-bPh、26DPmPy4bPhまたはB26DPmPy4Phからなる電子輸送層(15nm)を形成した。
UPSスペクトルとその測定結果から求めた各材料の真空準位のシフト(ΔeV)を図7に示す。
【0072】
[試験例3]
銀添加によるキャリア注入性への影響を確認するため、ITO電極、銀(30nm)、および実施例1の26DPmPy4bPh、または実施例2のB26DPmPy4Phからなる電子輸送層(15nm)を形成した。
XPSスペクトルとその測定結果から求めた各ピークの結合エネルギー値(eV)を図8に示す。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のジピリミジルピリジン誘導体は、低消費電力、薄型化、およびフレキシブル化が求められる次世代有機EL素子に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 陽極
2 正孔注入層
3 正孔輸送層
4 発光層
5 電子輸送層
6 電子注入層
7 陰極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8