(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012149
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】消臭機能を有する中低温アスファルト改質剤、それを用いて製造されたアスファルト混合物、およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
C08L 53/02 20060101AFI20240118BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20240118BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20240118BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20240118BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20240118BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20240118BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240118BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20240118BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20240118BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240118BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L95/00
C08L9/06
C08L91/00
C08L93/04
C08L101/14
C08K3/34
C08L47/00
C08L23/18
C08K3/013
E01C7/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023114045
(22)【出願日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0086434
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523264161
【氏名又は名称】ハンス ナテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ナム ヨプ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン ユル
【テーマコード(参考)】
2D051
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AG01
2D051AG18
4J002AC08W
4J002AE05X
4J002AE05Z
4J002AF02Y
4J002AG00W
4J002AG00Z
4J002BB17X
4J002BG01Z
4J002BL02X
4J002BP01W
4J002DE067
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002FB08Y
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生産温度を40~60℃以上低くし、エネルギー節減および二酸化炭素の排出抑制によりカーボンニュートラルを実現することができる、高強度特性のアスファルト混合物を提供する中低温アスファルト改質剤を提供する。
【解決手段】i)低温で0.1~1mmに冷凍粉砕されたスチレン系熱可塑性エラストマー粉末、ii)高沸点のプロセスオイル、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤、iv)高分子-シリカナノコンポジット、およびv)アスファルト臭気除去剤を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤、それを用いて製造されたアスファルト混合物、およびその施工方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末、ii)複合プロセスオイル、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤、iv)高分子-シリカナノコンポジット、およびv)アスファルト臭気除去剤を含む、中低温アスファルト改質剤。
【請求項2】
前記スチレン系熱可塑性エラストマー粉末は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(STE)から選択される1つまたは2つ以上である、請求項1に記載の中低温アスファルト改質剤。
【請求項3】
前記中低温アスファルト改質剤の総100重量%に対して、i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末30~60重量%、ii)複合プロセスオイル40~60重量%、iii)粘着付与剤として脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂5~20重量%、iv)高分子-シリカナノコンポジット0.2~5重量%、およびv)アスファルト臭気除去剤0.01~0.5重量%を含む、請求項1に記載の中低温アスファルト改質剤。
【請求項4】
前記高分子-シリカナノコンポジットは、ナノクレイ10~20重量%、ナノシリカヒューム75~88重量%、および高吸水性樹脂(SAP)2~5重量%を含む、請求項1または2に記載の中低温アスファルト改質剤。
【請求項5】
前記アスファルト臭気除去剤は、エッセンシャルオイル10~30重量%、イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイル20~40重量%、キャリアオイル20~40重量%、および複合プロセスオイル30~40重量%を含む、請求項1に記載の中低温アスファルト改質剤。
【請求項6】
前記複合プロセスオイルは、プロセスオイル100重量部に対して、ポリブテンまたはポリイソプレン液状ポリマー5~20重量部を混合して製造される、請求項1に記載の中低温アスファルト改質剤。
【請求項7】
i)骨材類80~96.9重量%、
ii)アスファルト3~10重量%、および
iii)請求項1に記載の中低温アスファルト改質剤0.1~10重量%を含む、アスファルト混合物。
【請求項8】
110℃±15℃の範囲で製造する際、請求項1または2に記載の中低温アスファルト改質剤を含まない通常のアスファルト混合物と比較して、二酸化炭素排出量を60%以上低減させる、請求項7に記載のアスファルト混合物。
【請求項9】
前記骨材類は、再生骨材を0.0001-100重量%含む、請求項7に記載のアスファルト混合物。
【請求項10】
a)請求項7に記載のアスファルト混合物を生産するステップと、
b)前記アスファルト混合物を運搬するステップと、
c)前記アスファルト混合物を舗設するステップと、
d)前記アスファルト舗装層を締固めるステップと、
を含む、アスファルト舗装の施工方法。
【請求項11】
前記アスファルト混合物の生産は、110±10℃で行われる、請求項10に記載のアスファルト舗装の施工方法。
【請求項12】
前記締固めるステップは、締固めるステップ別にそれぞれの温度で行われる、請求項10に記載のアスファルト舗装の施工方法。
【請求項13】
前記締固めるステップは、100±10℃で1次締固めを行うステップと、90±10℃で2次締固めを行うステップと、80±10℃で3次締固めを行うステップと、を含む、請求項12に記載のアスファルト舗装の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、従来の160℃以上または180℃以上の温度で製造可能なアスファルト混合物の製造温度を140℃以下、好適には120℃以下、より好適には100℃またはその以下の中低温の温度においても製造可能であり、製造されたアスファルト混合物に高強度と消臭性を提供する、消臭機能を有し、かつ、高強度特性を付与する中低温アスファルト改質剤を提供する。
また、前記アスファルト改質剤を用いて製造されたアスファルト混合物およびその施工方法を提供する。
【0002】
具体的に、従来のアスファルト混合物の生産温度を40~60℃以上低くすることで、低温においてもアスファルト混合物の生産が可能であり、これにより、60%以上のエネルギーおよび二酸化炭素排出量が低減される高強度の中低温アスファルト改質剤、それを用いて製造されたアスファルト混合物、およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルト舗装は、コンクリート舗装に比べて、道路騒音が少なく、施工および養生が速いため、道路舗装に多く用いられている。アスファルト舗装は、ストレートアスファルトに骨材、充填材などを混合したアスファルト混合物をプラントで生産した後、現場に運搬し、舗設装置および締固め装置を用いて施工する。
【0004】
アスファルト混合物を製造するプラントでは、一般的に160~180℃の高温で前記アスファルト混合物を生産するため、エネルギー消費が多く、特に二酸化炭素排出量が多い。韓国は、気候危機に対応し、安全かつ持続可能な社会を作るために、2050年まで温室ガスの低減を目指して2021年にカーボンニュートラルを宣言し、産業分野全般でこれに参加している現実を考慮すると、アスファルト混合物の製造時に発生する二酸化炭素を低減させる必要がある。
【0005】
近年、アスファルト混合物の生産時に生産温度を20~30℃低くすることで、約20%以上のエネルギーおよび二酸化炭素排出を低減できる中温アスファルトの研究が行われているが、アスファルト混合物の生産温度が20~30℃程度だけ低くなっても、骨材が乾燥されず、アスファルト混合物中に水分が残ることになる。骨材の水分が乾燥されない場合、アスファルト混合物の主材料であるアスファルトバインダー(ストレートアスファルト)は、水分に対する抵抗性が弱く、骨材との結合力および付着性が大幅に低下し、舗装施工後の亀裂、ポットホール、および塑性変形など、舗装の供用性の低下の主な原因となる。
【0006】
これを解決するために、韓国特許第1594070号は、界面活性剤、蒸留水、および植物性のヤシ油を含む中温アスファルト添加剤およびアスファルト混合物の製造方法を提供しているが、オイルの使用によりアスファルト中にオイルの針入度を増加させるため、夏季の高温で亀裂および変形に対する脆弱性を有し、ワックスの場合、低温で脆性特性が増加し、低温でのアスファルト亀裂による舗装破損を増加させる問題を含んでいる。また、カーボンニュートラルを実現するための60%以上の二酸化炭素排出およびエネルギー節減が求められる現実を考慮すると、それに対する改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、アスファルト混合物を生産するプラントにおけるアスファルト混合物の生産温度を40~60℃以上低くし、エネルギー節減および二酸化炭素の排出抑制によりカーボンニュートラルを実現することができる高強度特性のアスファルト混合物を提供する中低温アスファルト改質剤を提供することを目的とする。
【0008】
好適には、本開示は、アスファルト混合物を生産するプラントにおけるアスファルト混合物の生産温度を120℃以下で生産することができるようにし、また、生産されたアスファルト混合物が優れたマーシャル安定度、優れた動的安定度を有するとともに、消臭可能であり、二酸化炭素排出を低減させ、エネルギー節減が可能であり、また、高い強度特性を有する高強度の中低温アスファルト改質剤を提供することを目的とする。
【0009】
また、本開示は、アスファルト生産時の臭気の主原因となる硫化水素を99%以上除去可能であり、メルカプタン(mercaptans)系およびアルデヒド系の有害ガスを分解および吸着し、アスファルトプラントおよび施工現場での作業者および周辺環境を改善することができる高強度の中低温アスファルト改質剤を提供することを目的とする。
【0010】
また、本開示は、アスファルト混合物の生産温度を低くする固有機能とともに、夏季の高温での塑性変形抵抗性、冬季の低温での疲労亀裂抵抗性、水分抵抗性、アスファルト酸化抵抗性などの舗装の供用性を高めることができる高強度の中低温アスファルト改質剤およびそれを含むアスファルト混合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態は、i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末、ii)複合プロセスオイル、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤、iv)高分子-シリカナノコンポジット、およびv)アスファルト臭気除去剤を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤を提供する。
【0012】
本開示の一実施形態において、好適には、i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末30~60重量部、ii)複合プロセスオイル40~60重量部、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤5~20重量部、iv)高分子-シリカナノコンポジット0.2~5重量部、およびv)アスファルト臭気除去剤0.01~0.5重量部を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤を提供する。
【0013】
本開示の一実施形態において、前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(STE)などから選択される1つまたは2つ以上であってもよい。
【0014】
本開示の一実施形態において、前記スチレン系熱可塑性エラストマー粉末は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)粉末であってもよい。
【0015】
本開示の一実施形態において、前記複合プロセスオイルは、パラフィンオイルなどのプロセスオイル100重量部に対して、ポリブテンまたはポリイソプレン液状ポリマー5~20重量部を混合して製造されてもよい。このような製品の例としては、パラフィンオイル100重量部に対して液状ポリイソプレン15重量部を混合したGTR社製のR10などの製品が挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
本開示の一実施形態において、前記高分子-シリカナノコンポジットは、ナノシリカと高分子樹脂を混合して製造した複合体であってもよい。前記高分子-ナノシリカの一例として、ベントナイトのようなナノクレイ10~20重量%、ナノシリカヒューム75~88重量%、およびナノ高吸水性樹脂(例えば、ポリアクリル酸で架橋された製品として、LG Chem SAPなどが挙げられる)2~5重量%を含むものである場合、本発明の目的をよりよく達成することができるため好ましいが、これに限定されない。
【0017】
本開示の一実施形態において、前記アスファルト臭気除去剤は、有害ガスの分解および吸収性能を有するエッセンシャルオイル10~30重量%、イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイル20~40重量%、キャリアオイル20~40重量%、および複合プロセスオイル30~40重量%を含んでもよい。前記臭気除去剤の例としては、(株)ハンス道路産業(Hansoo Road Ind)のアスメルカット(Asmell cut)のような製品が挙げられる。
【0018】
本開示の一実施形態は、骨材類80~96.9重量%、アスファルト3~10重量%、および前記高強度の中低温アスファルト改質剤0.1~10重量%を含む、アスファルト混合物を提供する。
【0019】
本発明の一実施形態において、前記中低温アスファルト改質剤は、110℃±15℃の範囲でアスファルト混合物を製造する際、前記高強度の中低温アスファルト改質剤を含まないアスファルト混合物の製造時と比較して、二酸化炭素排出量を60%以上低減させる、アスファルト混合物を提供する。
【0020】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-1粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩90-100%、10mmの篩76-90%、5mmの篩44-74%、2.5mmの篩28-58%、0.6mmの篩11-32%、0.3mmの篩5-21%、0.15mmの篩3-15%、0.08mmの篩2-10%であってもよい。
【0021】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-2粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩95-100%、10mmの篩84-92%、5mmの篩55-70%、2.5mmの篩35-50%、0.6mmの篩18-30%、0.3mmの篩10-21%、0.15mmの篩6-16%、0.08mmの篩4-8%であってもよい。
【0022】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-3粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩90-100%、13mmの篩72-90%、10mmの篩56-80%、5mmの篩35-65%、2.5mmの篩23-49%、0.6mmの篩10-28%、0.3mmの篩5-19%、0.15mmの篩3-13%、0.08mmの篩2-8%であってもよい。
【0023】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-4粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩95-100%、13mmの篩75-90%、10mmの篩67-84%、5mmの篩45-65%、2.5mmの篩35-50%、0.6mmの篩18-30%、0.3mmの篩10-21%、0.15mmの篩6-16%、0.08mmの篩4-8%であってもよい。
【0024】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-5粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩90-100%、13mmの篩69-84%、10mmの篩56-74%、5mmの篩35-55%、2.5mmの篩23-38%、0.6mmの篩10-23%、0.3mmの篩5-16%、0.15mmの篩3-12%、0.08mmの篩2-10%であってもよい。
【0025】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、WC-6粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩90-100%、10mmの篩73-90%、5mmの篩40-60%、2.5mmの篩25-40%、0.6mmの篩11-22%、0.3mmの篩7-16%、0.15mmの篩4-12%、0.08mmの篩3-9%であってもよい。
【0026】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩90-100%、13mmの篩45-85%、10mmの篩27-73%、5mmの篩5-40%、2.5mmの篩5-32%、0.6mmの篩5-32%、0.3mmの篩5-32%、0.15mmの篩5-32%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0027】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩85-100%、10mmの篩57-92%、5mmの篩5-43%、2.5mmの篩5-32%、0.6mmの篩5-32%、0.3mmの篩5-32%、0.15mmの篩5-32%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0028】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、8mmの篩76-100%、5mmの篩21-76%、2.5mmの篩5-42%、0.6mmの篩2-21%、0.3mmの篩1-20%、0.15mmの篩1-19%、0.08mmの篩1-16%であってもよい。
【0029】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、5mmの篩70-100%、2.5mmの篩10-63%、0.3mmの篩6-31%、0.08mmの篩1-17%であってもよい。
【0030】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、13mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩80-100%、10mmの篩40-95%、5mmの篩20-70%、2.5mmの篩10-60%、1.2mmの篩5-35%、0.3mmの篩3-32%、0.08mmの篩1-25%であってもよい。
【0031】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、10mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、10mmの篩85-100%、5mmの篩25-70%、2.5mmの篩10-50%、1.2mmの篩5-25%、0.3mmの篩2-20%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0032】
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、5mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、5mmの篩85-100%、2.5mmの篩65-85%、1.2mmの篩5-25%、0.3mmの篩15-35%、0.08mmの篩4-13%であってもよい。
本開示の一実施形態において、前記骨材類は、再生骨材を0.0001-100%含んでもよい。
【0033】
本開示の一実施形態は、a)前記アスファルト混合物を生産するステップと、b)前記アスファルト混合物を運搬するステップと、c)前記アスファルト混合物を舗設するステップと、d)前記アスファルト舗装層を締固めるステップと、を含む、アスファルト舗装の施工方法を提供する。
【0034】
前記締固めるステップは、下記の締固めを含んでもよい。
前記締固めるステップは、舗装層を100±10℃で1次締固めを行い、90±10℃で2次締固めを行い、80±10℃で3次締固めを行うステップを含むアスファルト舗装の施工方法であってもよい。
【0035】
好適には、本開示の一実施形態は、a)前記アスファルト混合物を110±10℃で生産するステップと、b)前記アスファルト混合物を110±10℃で運搬するステップと、c)110±10℃のアスファルト混合物を舗設してアスファルト舗装層を形成するステップと、d)前記アスファルト舗装層を100±10℃で1次締固めを行うステップと、e)前記アスファルト舗装層を90±10℃で2次締固めを行うステップと、f)前記アスファルト舗装層を80±10℃で3次締固めを行うステップと、を含む、アスファルト舗装の施工方法を提供する。
【発明の効果】
【0036】
本開示の中低温アスファルト改質剤を用いてアスファルト混合物の生産温度を40~60℃以上低くし、120℃以下でアスファルト混合物を生産することで、エネルギー節減および二酸化炭素の排出抑制によるカーボンニュートラルを実現することができる。この場合、60%以上の燃料節減効果および二酸化炭素の排出低減効果を示す。
【0037】
本開示の中低温アスファルト改質剤の使用時、アスファルト混合物の生産過程で発生する硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒドなど、アスファルト臭気の原因および有害物質を分解、吸収、イオン交換、および化学反応を行うことで、アスファルト臭気を99%以上除去する効果を示す。
【0038】
本開示の高強度の中低温アスファルト改質剤は、供用性等級64-22のアスファルトバインダーをPG76-22以上の供用性等級に向上させ、低温生産時に問題となるアスファルトの水分抵抗性を改善し、アスファルト表面での骨材の脱離および摩耗を低減させることができる。また、高強度の中低温アスファルト改質剤は、低温での亀裂抵抗性および高温での変形抵抗性を改善し、アスファルト舗装の供用性を高める効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願において、「アスファルト混合物」という用語は、道路に舗設されて締固められる前の骨材とアスファルトが混合されている状態を意味し、本願において、「アスファルト混合物」および「アスファルトコンクリート混合物」という用語は、本願において考慮および説明される組成物および方法の範囲を意味するために相互交換的に用いられる。
【0040】
本願において、「アスファルトバインダー」という用語は、ストレートアスファルトなどのアスファルト成分自体を意味し、「改質アスファルトバインダー」という用語は、前記アスファルトバインダーと本発明のアスファルト改質剤を混合したものであり、骨材を含むアスファルト混合物とは区別される用語として用いられる。
【0041】
本願において、「中低温アスファルト改質剤」または「高強度の中低温アスファルト改質剤」という用語は、アスファルト混合物に添加される添加剤として、アスファルト混合物の製造温度を140℃以下、好適には120℃以下、より好適には100℃以下の中低温においてもアスファルト混合物の製造が可能なアスファルト改質剤を意味し、舗装されたアスファルトの亀裂抵抗性および高温での変形抵抗性などの機械的および力学的性質を改善することができる。
【0042】
以下、具体的な実施例を挙げて本開示の構成をより詳細に説明する。
ただし、本開示の範囲が実施例の記載のみに限定されないことは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明らかである。
【0043】
本開示の中低温アスファルト改質剤は、硫化水素などのアスファルト臭気の主原因となる物質を分解および吸着することで消臭機能を有するとともに、中低温で高強度アスファルト混合物の生産を可能にすることができる。
【0044】
本開示の一実施形態は、i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末、ii)複合プロセスオイル、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤、iv)高分子-シリカナノコンポジット、およびv)アスファルト臭気除去剤を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤を提供する。
【0045】
本開示の一実施形態において、好適には、i)スチレン系熱可塑性エラストマー粉末30~60重量部、ii)複合プロセスオイル40~60重量部、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤5~20重量部、iv)高分子-シリカナノコンポジット0.2~5重量部、およびv)アスファルト臭気除去剤0.01~0.5重量部を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤を提供する。
【0046】
より具体的には、i)低温で0.1~1mmに冷凍粉砕されたスチレン系熱可塑性エラストマー粉末30~60重量部、ii)複合プロセスオイル40~60重量部、iii)脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤5~20重量部、iv)高分子-シリカナノコンポジット0.2~5重量部、およびv)アスファルト臭気除去剤0.01~0.5重量部を含む、高強度の中低温アスファルト改質剤を提供する。
【0047】
本開示において、前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(STE)から選択される1種または2種以上が混合されたものであってもよい。
【0048】
本開示の一実施形態において、前記スチレン系熱可塑性エラストマー粉末は、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)粉末であってもよい。
以下、前記高強度の中低温アスファルト改質剤の成分について具体的に説明する。
【0049】
<スチレン系熱可塑性エラストマー粉末>
本開示において、スチレン系熱可塑性エラストマー粉末は、比表面積および吸収率を増加させるためのものであって、粉末状を有する。前記粉末の製造方法は、特に限定されないが、例えば、低温で冷凍粉砕して0.1~1mmサイズを有する粉末状に製造することができる。冷凍粉砕は、物質を一定以下の低温に冷却させると、弾性および粘着性を失い、ガラスのように硬くなる低温脆性特性を用いた材料の粉末化方法である。一実施形態として、スチレン系熱可塑性エラストマーを-5℃~-20℃に冷却させた後、粉砕および破砕することで、均一な粒子サイズに粉末化することができる。
【0050】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、およびスチレン系熱可塑性エラストマー(STE)から選択されてもよいが、好ましくは、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)であってもよく、1種または2種以上を混合した粉末であってもよい。本開示において、好適には、前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしてポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)を用いることが、アスファルトバインダーの変形抵抗性および低温での脆性の性質を向上させることができるためより好ましいが、これに限定されるない。
【0051】
本開示の前記粉末サイズを0.01~1mmに調節する場合、前記アスファルト混合物の生産温度を40~60℃低くした120℃以下で製造する場合、高い粉末度および比表面積を有することで、複合プロセスオイルに対する高い吸収率を有する。したがって、前記高強度の中低温アスファルト改質剤中に含まれた複合プロセスオイルの40%以上をスチレン系熱可塑性エラストマー中に沈積させることができる。
【0052】
一般的に、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)の溶融温度は、約170~180℃の範囲と高いが、本開示において、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)が複合プロセスオイルを40%以上の高含量で沈積すると、アスファルトプラントにおいてさらに低温で溶融が可能となり、窮極的に40~60℃以上低い低温でアスファルト混合物の生産が可能であることも分かった。
【0053】
本開示において、スチレン系熱可塑性エラストマー粉末は、高強度の中低温アスファルト改質剤100重量%に対して30~60重量%で含まれてもよく、好ましくは、低温で0.1~1mmに冷凍粉砕されたポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)粉末が30~60重量%で含まれてもよい。前記ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)粉末を30重量%未満で用いる場合には、高強度の中低温アスファルト改質バインダーの等級をPG 76-22以上確保し難く、60重量%超過で用いる場合には、100℃以下の温度でアスファルト混合物を生産することができないため、上記範囲が好ましい。
【0054】
<複合プロセスオイル>
本開示において、スチレン系熱可塑性エラストマー粉末の溶解のために、複合プロセスオイルが用いられる。
【0055】
従来のアスファルト改質剤では、アスファルト混合物の粘度を低くするために、ワックスまたは植物性オイルを添加して用いていた。しかし、前記ワックスは、低温で脆性(brittleness)の性質が強いため、冬季の低温でアスファルトの亀裂が増加するという問題があり、植物性オイルの場合、アスファルトバインダーの軟化性および酸化が増加するため、夏季の高温でアスファルト舗装の変形を大幅に増加させるという問題があることが分かった。
そこで、本開示では、ワックスおよび植物性オイルの使用を排除し、複合プロセスオイルを採択してアスファルト改質剤の成分として用いる。
【0056】
本開示において、複合プロセスオイルは、高強度の低温アスファルト改質剤100重量%に対して40~60重量%で用いられてもよい。前記複合プロセスオイルの含量が40重量%未満である場合には、アスファルト混合物の生産温度を100℃以下に低くすることができず、60重量%を超えて用いる場合には、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)の含量が過度に低くなり、高強度の低温アスファルトの供用性等級(PG)を76-22以上にすることができないため好ましくない。
【0057】
本開示において、アスファルト改質剤の成分として前記複合プロセスオイルを用いる場合、スチレン系熱可塑性エラストマー粉末の100℃以下での溶融度が高くなり、アスファルトバインダーの高軟化および酸化を防止することができるため好ましい。
【0058】
前記複合プロセスオイルの一例としては、プロセスオイル100重量部に対して、ポリブテンまたはポリイソプレン液状ポリマー5~20重量部を混合して製造してもよいが、本発明の目的を達成する限りは限定されない。前記プロセスオイルとしては、ナフテン系、パラフィン系、および芳香族系オイルなどが用いられてもよい。また、商業化された前記複合プロセスオイルの例としては、GRT社製のR10などの製品が挙げられる。
【0059】
本開示の一実施形態において、ポリブテンおよびポリイソプレンは、プロセスオイルにより、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)とともに、アスファルト混合物中のアスファルトバインダーと架橋(crosslink)を形成することができる。前記架橋したアスファルトバインダーは、高温での過度な軟化および酸化を防止するだけでなく、低温でのアスファルトの脆性を抑制し、骨材との付着力を向上させ、アスファルト舗装の供用性を改善することができる。前記架橋は、アスファルト混合物の製造時の加熱により、各成分の二重結合が熱により架橋するものであってもよい。
【0060】
<脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤>
本開示は、アスファルトバインダーと骨材との付着力を増加させ、アスファルトバインダーの接着力の改善のために、脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤を用いる。
【0061】
アスファルト混合物の生産温度を40~60℃以上低くする場合、一般的なアスファルトに比べて骨材が完全に乾燥されないため、骨材中に存在する水分によりアスファルトバインダーと骨材との付着力が大幅に低下し得る。
【0062】
また、一般的なアスファルト改質剤の製造時に主に用いられるロジン、水系化ロジン誘導体、不均化ロジン誘導体、二重化ロジン誘導体、酸添加ロジン誘導体、エステル化ロジン誘導体、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素化テルペン樹脂、脂肪族(C5)、芳香族(C9)、C5/C9共重合系、脂環族系、フェノール、キシレン、クマロン-インデン樹脂、およびケトン樹脂などの粘着付与剤は、150℃以上の高温で接着性を発揮することが分かった。したがって、前記粘着付与剤は、約100℃でアスファルトを生産する本発明の低温アスファルト混合物において、接着付与剤の成分として用いることが適していないことが分かった。前記粘着付与剤としては、商業化される製品が多いが、例えば、Kolon P-120HSなどの製品が挙げられる。
【0063】
したがって、本開示では、高強度の中低温アスファルト混合物の生産時、水分を含む骨材との高い付着力を有するとともに、約100℃以下の低温においてもアスファルトバインダーと骨材に対して高い付着力を有する脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤を用いる場合、アスファルトバインダーと骨材の接着性を増加させ、低温でアスファルト混合物を生産する場合にも、優れた機械的物性や強い脆性の抵抗性を付与することができる。
【0064】
本開示において、前記脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂は、ロジンとポリオール(または、グリセリン)のエステル化反応によるロジンポリオール(または、グリセリン)エステルの合成ステップ、前記ロジンポリオールエステルと単量体物質との反応による脂肪族で改質されたロジン樹脂の合成ステップ、および脂肪族で改質されたロジン樹脂を真空ストリッピングにより未反応単量体を除去するステップにより製造することができる。
【0065】
前記ポリオールとロジンのエステル化反応のためのポリオールとしては、トリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール、ソルビトール、トリメタノールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールのうち1種以上が用いられてもよいが、これに限定されない。
【0066】
また、ロジンポリオールエステルと単量体物質との反応による脂肪族で改質されたロジン樹脂の合成のための単量体物質としては、C6~C22のα-オレフィン、ビニル末端基を有する単量体、C6~C22のα-β不飽和エステルおよび酸、C4~C22の脂肪族鎖または環状のアクリル酸エステルのうち1種以上が用いられてもよいが、これに限定されない。
【0067】
本開示では、脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤は、中低温アスファルト改質剤100重量%に対して5~20重量%で用いられてもよいが、本発明の目的を達成する限り、これに限定されない。本開示において、脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤を5重量%未満で用いる場合には、2%以上の水分含量を含む骨材との付着力が低下し、20重量%超過で用いる場合には、高強度の中低温アスファルト混合物の溶融点が高くなり、140℃以上の生産温度が求められるため好ましくない。
【0068】
<高分子-シリカナノコンポジット>
本開示において、高強度の低温アスファルトの水分抵抗性および酸化抵抗性を改善するために、高分子-シリカナノコンポジットが含まれる。
【0069】
前記高分子-シリカナノコンポジットは、イオン交換容積が50~200meq/g、活性比表面積が500~1,000m2/gである1~100μmサイズのナノクレイ10~20重量%と、イオン交換容積が10~50meq/g、活性比表面積が20~5000m2/gである1~100μmサイズのナノシリカヒューム75~88重量%と、前記高吸水性樹脂(SAP)2~5重量%と、を含んでもよい。
【0070】
前記ナノクレイは、縦横比が大きい板状構造を有するため、高分子とナノコンポジットを形成する場合、クレイと高分子との接触面積が広くなり、充填効果が従来の複合体に比べて大幅に増加する。また、高強度の低温アスファルト改質剤の製造時に挿入型構造(Intercalated structure)の高分子-シリカナノコンポジットを形成し、高分子鎖がクレイ層間の空間に挿入され、層間の間隔が増加した構造を形成する。
【0071】
また、アスファルトバインダーのアスファルテン(asphaltene)とマルテン(maltene)との間にナノクレイがランダムに配列されることで、アスファルトバインダーの引張強度、引張モジュラスが増加し、アスファルトバインダー中で結合鎖(chemical bonding)を形成するため、ナノクレイは、延性挙動で低温での亀裂抵抗性が改善されることができる。また、前記ナノクレイは、独立してシリケート層を形成し、酸素の浸透防止およびアスファルトバインダー中の揮発性成分の蒸発抑制により、アスファルトの酸化防止効果に優れる。特に活性非表面積が大きいため、高強度の中低温アスファルト混合物の生産時に骨材に含まれた水分を吸収することで、アスファルトバインダーの水分抵抗性を改善する効果に優れる。
【0072】
前記ナノシリカヒュームは、ナノクレイとは異なり、球状の表面構造として、分散性に優れ、活性比表面積が大きいため、アスファルトバインダーの粘度増加による骨材被覆厚さを増加させることができる。また、ナノシリカヒュームは、アスファルトバインダー中にランダムに分布し、アスファルトバインダーの靱性特性の改善およびアスファルトの酸化防止に著しい効果を有する。
【0073】
前記高吸水性樹脂(SAP)は、ポリアクリル酸を苛性ソーダで部分中和して生産される架橋した高分子電解質であり、乾燥した状態で周辺の水を約500倍以上吸収することができる。前記高吸水性樹脂は、アスファルト混合物の生産温度を40~60℃低くする高強度の中低温アスファルトの乾燥されていない骨材に含まれた水分を瞬間的に吸収することで、アスファルトと骨材の付着力を改善させるのに効果的である。特にナノクレイ、ナノシリカヒューム、および高吸水性樹脂を含む高分子-シリカナノコンポジットは、乾燥されていない骨材の水分を同時に吸収してアスファルトの水分接触を遮断することで、アスファルトの水分抵抗性を改善することができる。また、高吸水性樹脂に吸収された水分は、静電気的相互作用およびクーロン相互作用でナノクレイおよびナノシリカヒュームと結合して可塑性固体を形成し、アスファルトの靱性特性を改善する。
【0074】
本発明の高分子-シリカナノコンポジットは、高強度の中低温アスファルト改質剤100重量%に対して0.2~5重量%で用いられる。高分子-シリカナノコンポジットを0.2重量%未満で用いる場合には、40%以上の複合プロセスオイルを沈積したアスファルトの酸化を抑制することができず、5重量%超過で用いる場合には、過度な粘度増加により低温で締固め度が低下し得るため、上記範囲が好ましい。
【0075】
<アスファルト臭気除去剤>
本発明は、アスファルト臭気除去剤を含み、アスファルト混合物の生産および現場で施工時に発生し得る硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、およびブチルアルデヒドなどの有害物質を除去する。
【0076】
本発明のアスファルト臭気除去剤は、有害ガスの分解および吸収性能を有するエッセンシャルオイル10~30重量%、イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイル20~40重量%、キャリアオイル20~40重量%、および複合プロセスオイル30~40重量%を含んでもよい。
【0077】
本開示の前記アスファルト臭気除去剤は、アスファルト混合物の生産時の臭気発生の主原因である硫化水素、メチルメルカプタン、アセトアルデヒド、およびブチルアルデヒドなどの有害物質を除去するために用いられてもよい。
【0078】
前記有害ガスの分解および吸収性能を有するエッセンシャルオイルとしては、チョウセンゴヨウ(Korean pine)エッセンシャルオイル、赤松エッセンシャルオイル、松葉エッセンシャルオイル、ヒノキエッセンシャルオイル、杉エッセンシャルオイル、ユーカリエッセンシャルオイルのうち1種以上が用いられてもよいが、これに限定されない。前記有害ガスの分解および吸収性能を有するエッセンシャルオイルは、臭気原因物質を分解させ、分子層で構成された微細空隙の表面にファンデルワールス力を用いた物理的充填作用で気体分子を吸収し、空気中に流出するのを防止する。
【0079】
前記有害ガスの分解および吸収性能を有するエッセンシャルオイルのみでアスファルト固有の臭気を100%除去することは難しいため、本開示では、イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイルをさらに含む。
【0080】
前記イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイルとしては、ジャスミンエッセンシャルオイル、ゼラニウムエッセンシャルオイル、タイムエッセンシャルオイル、ライムエッセンシャルオイル、ラベンダーエッセンシャルオイル、ティーツリーエッセンシャルオイル、レモンエッセンシャルオイル、ローズエッセンシャルオイル、ローズマリーエッセンシャルオイルのうち1種以上が用いられてもよいが、これに限定されない。
【0081】
前記イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイルは、オイルに存在するイオンと有害物質との間の可逆的なイオン交換により臭気原因物質を除去または変形させ、臭気除去物質との化学的な相変化を促進し、臭気原因物質の流出を防止する。
【0082】
前記イオン交換および反応性を有するエッセンシャルオイルのうち、植物性エッセンシャルオイルとして高濃縮オイルを用いる場合、少量用いても臭気分解および吸収性に優れるが、逆にオイル自体の香りが強く、他の性質の臭気原因物質になり得るため、それを希釈して用いることが重要である。
【0083】
本開示において、アスファルト臭気除去剤の希釈および分散性のために、キャリアオイルを含む。前記キャリアオイルとしては、ホホバ、オリーブ、アルガン、ブドウ種子、ローズヒップ、ココナツ、アーモンド、アボカド、カレンデュラ、キャノーラ油のうちの1種以上が用いられるが、これに限定されない。
【0084】
本開示において、アスファルト臭気除去剤は、高強度の中低温アスファルト改質剤の総100重量%に対して0.01~5重量%で含まれてもよい。前記アスファルト臭気除去剤を0.01重量%未満で用いる場合には、アスファルト混合物の生産時にアスファルト臭気を100%除去することができず、5重量%超過で用いる場合には、エッセンシャルオイルによる2次的な臭気を引き起こし得る。
【0085】
本開示の他の実施形態は、骨材類80~96.9重量%、アスファルト3~10重量%、および上述した中低温アスファルト改質剤0.1~10重量%を含む、アスファルト混合物を提供する。
【0086】
前記アスファルト混合物は、110℃±15℃の範囲で製造する際、一般的なアスファルトコンクリート混合の二酸化炭素排出量を60%以上低減させる。前記アスファルト混合物中のアスファルトの含量が3重量%未満である場合には、骨材被覆厚さの減少により十分な強度を発現することができず、10重量%超過である場合には、アスファルトバインダーのドレーンによりアスファルト混合物の物理的性能が低下し得る。
【0087】
前記骨材類の含量が80重量%未満である場合には、過剰のアスファルトの含量で夏季の高温で舗装体の延性化により、ポットホールおよび変形などが発生し得る。また、骨材類の含量が96.9重量%超過である場合には、アスファルトの含量不足によるバインダーの結合力の低下により亀裂、骨材脱離などが発生する。
【0088】
本開示に係る高強度の中低温アスファルト改質剤の含量が0.1重量%未満である場合には、アスファルト混合物の生産温度を40~60℃低くすることができず、10重量%超過である場合には、アスファルトバインダーの粘度が過度に低くなり、アスファルト混合物を生産することができない。
【0089】
本開示の前記骨材類は、WC-1粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩90-100%、10mmの篩76-90%、5mmの篩44-74%、2.5mmの篩28-58%、0.6mmの篩11-32%、0.3mmの篩5-21%、0.15mmの篩3-15%、0.08mmの篩2-10%であってもよい。
【0090】
本開示の前記骨材類は、WC-2粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩95-100%、10mmの篩84-92%、5mmの篩55-70%、2.5mmの篩35-50%、0.6mmの篩18-30%、0.3mmの篩10-21%、0.15mmの篩6-16%、0.08mmの篩4-8%であってもよい。
【0091】
本開示の前記骨材類は、WC-3粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩90-100%、13mmの篩72-90%、10mmの篩56-80%、5mmの篩35-65%、2.5mmの篩23-49%、0.6mmの篩10-28%、0.3mmの篩5-19%、0.15mmの篩3-13%、0.08mmの篩2-8%であってもよい。
【0092】
本開示の前記骨材類は、WC-4粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩95-100%、13mmの篩75-90%、10mmの篩67-84%、5mmの篩45-65%、2.5mmの篩35-50%、0.6mmの篩18-30%、0.3mmの篩10-21%、0.15mmの篩6-16%、0.08mmの篩4-8%であってもよい。
【0093】
本開示の前記骨材類は、WC-5粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、基準である20mmの篩90-100%、13mmの篩69-84%、10mmの篩56-74%、5mmの篩35-55%、2.5mmの篩23-38%、0.6mmの篩10-23%、0.3mmの篩5-16%、0.15mmの篩3-12%、0.08mmの篩2-10%であってもよい。
【0094】
本開示の前記骨材類は、WC-6粒度の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩90-100%、10mmの篩73-90%、5mmの篩40-60%、2.5mmの篩25-40%、0.6mmの篩11-22%、0.3mmの篩7-16%、0.15mmの篩4-12%、0.08mmの篩3-9%であってもよい。
【0095】
本開示の前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、20mmの篩90-100%、13mmの篩45-85%、10mmの篩27-73%、5mmの篩5-40%、2.5mmの篩5-32%、0.6mmの篩5-32%、0.3mmの篩5-32%、0.15mmの篩5-32%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0096】
本開示の前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩85-100%、10mmの篩57-92%、5mmの篩5-43%、2.5mmの篩5-32%、0.6mmの篩5-32%、0.3mmの篩5-32%、0.15mmの篩5-32%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0097】
本開示の前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、8mmの篩76-100%、5mmの篩21-76%、2.5mmの篩5-42%、0.6mmの篩2-21%、0.3mmの篩1-20%、0.15mmの篩1-19%、0.08mmの篩1-16%であってもよい。
【0098】
前記骨材類は、低騒音排水性舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、5mmの篩70-100%、2.5mmの篩10-63%、0.3mmの篩6-31%、0.08mmの篩1-17%であってもよい。
【0099】
本開示の前記骨材類は、13mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、13mmの篩80-100%、10mmの篩40-95%、5mmの篩20-70%、2.5mmの篩10-60%、1.2mmの篩5-35%、0.3mmの篩3-32%、0.08mmの篩1-25%であってもよい。
【0100】
本開示の前記骨材類は、10mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、10mmの篩85-100%、5mmの篩25-70%、2.5mmの篩10-50%、1.2mmの篩5-25%、0.3mmの篩2-20%、0.08mmの篩1-15%であってもよい。
【0101】
本開示の前記骨材類は、5mmの低騒音密粒度舗装の篩通過重量パーセントに基づくと、5mmの篩85-100%、2.5mmの篩65-85%、1.2mmの篩5-25%、0.3mmの篩15-35%、0.08mmの篩4-13%であってもよい。
【0102】
また、本開示の一実施形態において、前記骨材類は、再生骨材(Recycled concrete aggregate)を0.0001-100重量%含んでもよく、この際、前記再生骨材とは、老朽化したアスファルトコンクリート舗装の切削または補修現場で発生する廃アスファルトコンクリートを破砕し、用途に合わせてサイズを分類した再生骨材であってもよい。
本開示において、充填材とは、石灰分、消石灰、回収ダストなどの充填剤を意味し得る。
【0103】
本開示は、上述したアスファルト混合物を用いたアスファルト舗装の施工方法を提供する。アスファルト舗装は、ストレートアスファルトに骨材、充填材などを混合したアスファルトコンクリート混合物をプラントで生産した後、現場に運搬し、舗設装置および締固め装置を用いて施工する。
【0104】
本開示の一実施形態は、a)前記アスファルト混合物を生産するステップと、b)前記アスファルト混合物を運搬するステップと、c)前記アスファルト混合物を舗設するステップと、d)前記アスファルト舗装層を締固めるステップと、を含む、アスファルト舗装の施工方法を提供する。
【0105】
前記締固めステップは、舗装層を100±10℃で1次締固めを行い、90±10℃で2次締固めを行い、80±10℃で3次締固めを行うステップを含むアスファルト舗装の施工方法であってもよい。
【0106】
具体的に、本開示のアスファルト舗装の施工方法は、a)前記アスファルト混合物を110±10℃で生産するステップと、b)前記アスファルト混合物を110±10℃で運搬するステップと、c)110±10℃のアスファルト混合物を舗設してアスファルト舗装層を形成するステップと、d)前記アスファルト舗装層を100±10℃で1次締固め(マカダムローラ)を行うステップと、e)前記アスファルト舗装層を90±10℃で2次締固め(タイヤローラ)を行うステップと、f)前記アスファルト舗装層を80±10℃で3次締固め(タンデムローラ)を行うステップと、を含む。
【0107】
製造例1:本発明に係るアスファルト改質剤および改質アスファルトバインダーの製造
<実施例1>低温で0.1~1mmサイズに粉砕されたポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体(SBS)粉末45重量%、パラフィンオイル75重量部と液状ポリブタジエン25重量部を混合した複合プロセスオイル(GTR R10)45重量%、脂肪族炭化水素により改質されたロジン樹脂粘着付与剤(Kolon P-120HS)5重量%、高分子-シリカナノコンポジット(ベントナイト15重量%、ナノシリカヒューム((株)CHEMICON Sioxid)83wt%、およびSAP(LG chem)2wt%)4.97重量%、およびアスファルト臭気除去剤(Hansoo Road Ind., Asmell Cut)((株)Hansoo Natechのアスメルカット)0.03重量%を含むように混合し、中低温アスファルト改質剤を製造した。上記で製造されたアスファルト改質剤14重量部とストレートアスファルト(PG 64-22)86重量部を混合し、改質アスファルトバインダーを製造した。
【0108】
前記改質アスファルトバインダーを用いて改質されたアスファルトバインダーの針入度、伸度、軟化点、および弾性回復率を試験した結果を表1に示した。
【0109】
<比較例1>
アスファルト改質剤として、EOC -200WMA製品2重量部とストレートアスファルト(PG 64-22)98重量部を混合して改質アスファルトバインダーを製造したことを除いては、実施例1と同様に物性を評価した。その結果を表1に示した。
【0110】
<比較例2>
アスファルト改質剤を用いず、ストレートアスファルト(PG 64-22)100重量部のアスファルトバインダーを用いてアスファルトバインダーの針入度、伸度、軟化点、および弾性回復率を試験した結果を表1に示した。
【0111】
【0112】
実施例1において、針入度および軟化点の試験結果、国土交通部の改質アスファルトの品質基準を大幅に上回ることが明らかになった。
特に、実施例1は、従来のアスファルトの最も大きい問題であったアスファルトバインダーの低い軟化点を80℃以上に向上させ、低温での伸び率特性が78cm以上であって、低温亀裂抵抗性の改善に効果的であることが明らかになった。比較例1は、添加剤を用いていない比較例2と効果の面で大きな差はなかった。
【0113】
アスファルトバインダーの弾性回復率は、繰り返し荷重を受ける道路舗装材の最も重要な特性であり、国内および米国の場合、その数値が少なくとも60%以上であることを推奨している。実施例1の場合は、85%以上の弾性回復率を有することが確認され、比較例1および比較例2の場合は、約40%の弾性回復率と低い数値をに示した。
【0114】
<実施例2>アスファルト混合物の製造
前記実施例1の中低温アスファルト改質剤とストレートアスファルト(Exxon Mobile PG 64-22)、骨材(表2の規格の骨材)、充填材として消石灰を下記表3に記載された重量組成比で混合し、160℃、140℃、120℃、100℃で混合してアスファルト混合物を製造した。前記混合物を用いて力学的物性を測定して表4に示し、二酸化炭素削減量を表5に示し、消臭性を表6に示した。
【0115】
【0116】
<比較例3>
アスファルト改質剤として、中温添加剤を下記表3のような組成比で混合したことを除いては、実施例1と同様に製造した。その力学的物性を表4に示し、二酸化炭素削減量を表5に示し、消臭性を表6に示した。
【0117】
<比較例4>
実施例1と同様であるが、改質剤を用いていないことを除いては、実施例1と同様に行った。その結果を表4に示し、二酸化炭素削減量を表5に示し、消臭性を表6に示した。
【0118】
【0119】
【0120】
実施例2のマーシャル安定度および動的安定度は、アスファルト混合物の生産温度に関係なく、それぞれ10,000Nおよび4,000回/mm以上を示した。これは国土交通部の改質アスファルトの品質基準を満たすものである。
特に、実施例2は、アスファルト混合物の生産温度が100℃と低い場合にも、混合物の生産および品質基準の確保が可能であった。
【0121】
比較例3の場合、アスファルト混合物の生産温度140℃では、国内アスファルト舗装の品質基準を満たしたが、120℃以下では、品質が大幅に低下した。比較例4の場合、アスファルト混合物の生産温度140℃以下では、品質が大幅に低下し、国内基準を満たすことができなかった。
【0122】
上記のような結果は、空隙率および間接引張強度の試験結果においても同様の傾向をに示した。
表5は、アスファルト混合物の生産温度に応じたエネルギー消費および二酸化炭素排出量に対する試験結果を示す。
【0123】
【0124】
前記エネルギー使用量は、実施例2、比較例3、および比較例4においてアスファルト混合物の生産温度が低くなることで、二酸化炭素排出量およびエネルギー消費が大幅に低減されることが分かる。
【0125】
アスファルト混合物の生産温度が40~60℃低くなることで、二酸化炭素排出量およびエネルギー消費量が40~60%低減された。特に、アスファルト混合物の生産温度を120℃以下にする場合、二酸化炭素などを含む有害ガスが大幅に低減され、アスファルト混合物の生産温度を120℃以下にすることで、エネルギー節減効果が期待される。
【0126】
表6は、実施例2、比較例3、および比較例4のアスファルト混合物の生産温度に応じたアスファルト混合物の有害物質の発生試験結果を示す。有害物質の含量は、各温度に応じたアスファルト混合物の生産直後、悪臭工程試験法に準じてガスクロマトグラフィー法により測定された。
【0127】
【0128】
実施例2の悪臭工程試験の結果、アスファルト混合物の生産温度に関係なく硫化水素が検出されず、高強度の中低温改質剤のアスファルト臭気の除去効果に優れることを確認することができる。これに対し、比較例3および比較例4は、アスファルト混合物の生産温度に関係なく、全ての温度で硫化水素が検出された。
【0129】
また、実施例2の場合、アスファルト混合物の生産温度140℃以下では、アセトアルデヒドおよびブチルアルデヒドなどの有害ガスが検出されなかったが、比較例3および比較例4は、アスファルト混合物の生産温度が低いほど検出される量が低減されたが、低減幅が大きくない。
【0130】
本発明に係るアスファルト改質剤は、アスファルト混合物の生産時に発生する臭気原因物質を99%以上除去することができ、これにより、アスファルトプラントおよびアスファルト舗装現場の周辺と作業者の環境改善によりアスファルト臭気に対する苦情の発生を低減させることが期待される。