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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121497
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/329 20060101AFI20240830BHJP
   H01L 21/762 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/266 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L29/91 B
H01L21/76 D
H01L21/265 M
H01L29/91 D
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028637
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 彦哲
(72)【発明者】
【氏名】中西 翔
【テーマコード(参考)】
5F032
【Fターム(参考)】
5F032AA14
5F032DA53
(57)【要約】
【課題】VLD構造を有する半導体装置を的確に製造する。
【解決手段】耐酸化性のマスク層2から露出する半導体基板1を熱酸化してフィールド酸化膜4を形成する。マスク層2は、第1の幅を有する複数のマスク部2aと、第1の幅より小さい第2の幅を有する複数のマスク部2bとを有する。熱酸化工程では、マスク部2aの下に、フィールド酸化膜4と一体的に酸化膜5aが形成され、マスク部2bの下に、フィールド酸化膜4と一体的に、酸化膜5aよりも厚い酸化膜5bが形成される。マスク層2を除去した後、フィールド酸化膜4を不純物導入のマスクとして半導体基板1にイオン注入することにより、複数のp型半導体領域を形成する。複数のp型半導体領域は、酸化膜5aの下に形成された第1半導体領域と、酸化膜5bの下に形成された第2半導体領域とを含み、第2半導体領域の深さは、第1半導体領域の深さよりも浅い。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む半導体装置の製造方法:
(a)活性領域と、平面視において前記活性領域を囲む周辺領域とを有するシリコンからなる半導体基板を準備する工程;
(b)前記周辺領域における前記半導体基板の主面上に、耐酸化性マスク層を選択的に形成する工程;
(c)前記耐酸化性マスク層から露出する前記半導体基板を熱酸化することにより、前記周辺領域にフィールド酸化膜を形成する工程;
(d)前記(c)工程後、前記耐酸化性マスク層を除去する工程;
(e)前記(d)工程後、前記フィールド酸化膜を不純物導入のマスクとして、前記半導体基板の前記主面に第1導電型の不純物をイオン注入することにより、前記周辺領域に第1導電型の複数の半導体領域を形成する工程;
ここで、
前記(b)工程で形成された前記耐酸化性マスク層は、平面視において前記活性領域から前記周辺領域に向かう方向において、第1の幅を有する複数の第1部分と、前記第1の幅より小さい第2の幅を有する複数の第2部分とを有し、
前記(c)工程において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第1部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に第1酸化膜が形成され、かつ、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に、前記第1酸化膜よりも厚い第2酸化膜が形成され、
前記複数の半導体領域は、前記第1酸化膜の下に形成された第1半導体領域と、前記第2酸化膜の下に形成された第2半導体領域とを含み、
前記第2半導体領域の深さは、前記第1半導体領域の深さよりも浅い。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第1半導体領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の半導体装置の製造方法において、
平面視において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第1部分は、前記活性領域と前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分との間に配置されている、半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程において、前記第1半導体領域は、前記第1酸化膜を通過した前記第1導電型の不純物により形成され、かつ、前記第2半導体領域は、前記第2酸化膜を通過した前記第1導電型の不純物により形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
(f)前記(e)工程後、前記半導体基板を熱処理する工程、
を更に含む、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の半導体装置の製造方法において、
前記(f)工程の熱処理は、前記(e)工程で前記複数の半導体領域に導入された前記第1導電型の不純物を拡散させるための熱処理である、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程において、前記活性領域における前記半導体基板の主面全体上に前記耐酸化性マスク層が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記耐酸化性マスク層は窒化シリコンからなる、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(e)工程において、前記活性領域に前記第1導電型の第3半導体領域が形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3半導体領域は、ダイオードのアノード領域として機能する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の半導体装置の製造方法において、
前記(a)工程で準備される前記半導体基板は、前記第1導電型とは逆の第2導電型の半導体基板である、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、
(g)前記(e)工程後、前記半導体基板の前記主面とは反対側の裏面に前記第2導電型の不純物をイオン注入することにより、前記半導体基板に前記第2導電型の第4半導体領域を形成する工程、
を更に含む、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、
前記第3半導体領域と、前記第4半導体領域と、前記半導体基板における前記第3半導体領域と前記第4半導体領域との間の領域とにより、ダイオードが形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の半導体装置の製造方法において、
(f)前記(e)工程後で、前記(g)工程前に、前記半導体基板を熱処理する工程、
(h)前記(f)工程後で、前記(g)工程前に、前記第3半導体領域上に、前記第3半導体領域と電気的に接続される第1電極を形成する工程、
(i)前記(g)工程後、前記半導体基板の前記裏面上に、前記第4半導体領域と電気的に接続される第2電極を形成する工程、
を更に含む、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程で形成された前記耐酸化性マスク層は、平面視において前記活性領域から前記周辺領域に向かう方向において、前記第2の幅より小さい第3の幅を有する複数の第3部分を更に有し、
前記(c)工程において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第3部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に、前記第2酸化膜よりも厚い第3酸化膜が形成され、
前記複数の半導体領域は、前記第3酸化膜の下に形成された第5半導体領域を更に含み、
前記第5半導体領域の深さは、前記第2半導体領域の深さよりも浅い、半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2半導体領域の不純物濃度は、前記第1半導体領域の不純物濃度よりも低く、
前記第5半導体領域の不純物濃度は、前記第2半導体領域の不純物濃度よりも低い、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16記載の半導体装置の製造方法において、
平面視において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第1部分は、前記活性領域と前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分との間に配置され、
平面視において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分は、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第1部分と前記耐酸化性マスク層の前記複数の第3部分との間に配置されている、半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項17記載の半導体装置の製造方法において、
前記(b)工程で形成された前記耐酸化性マスク層は、平面視において前記活性領域から前記周辺領域に向かう方向において、前記第3の幅より小さい第4の幅を有する複数の第4部分を更に有し、
前記(c)工程において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第4部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に、前記第3酸化膜よりも厚い第4酸化膜が形成され、
前記複数の半導体領域は、前記第4酸化膜の下に形成された第6半導体領域を更に含み、
前記第6半導体領域の深さは、前記第5半導体領域の深さよりも浅く、
前記第6半導体領域の不純物濃度は、前記第5半導体領域の不純物濃度よりも低く、
平面視において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第3部分は、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分と前記耐酸化性マスク層の前記複数の第4部分との間に配置されている、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、例えば、ダイオードを有する半導体装置の製造方法に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
高耐圧の半導体装置には、耐圧を向上させるための終端構造が設けられている。耐圧を向上させる終端構造として、リサーフ(Reduced Surface Field:RESURF)構造やVLD(Variation of Lateral Doping)構造がある。
【0003】
特開平7-193018号公報(特許文献1)には、VLD構造の製造方法に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-193018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リサーフ構造に比べてVLD構造は、電界集中を、より緩和することができ、半導体装置の耐圧を、より高くすることができる。
【0006】
VLD構造を有する半導体装置を的確に製造できるようにすることが望まれる。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施の形態によれば、半導体装置の製造方法は、(a)活性領域と周辺領域とを有する半導体基板を準備する工程、(b)前記周辺領域における前記半導体基板の主面上に、耐酸化性マスク層を選択的に形成する工程、(c)前記耐酸化性マスク層から露出する前記半導体基板を熱酸化することにより、前記周辺領域にフィールド酸化膜を形成する工程、を含む。半導体装置の製造方法は、更に、(d)前記耐酸化性マスク層を除去する工程、(e)前記(d)工程後、前記フィールド酸化膜を不純物導入のマスクとして、前記半導体基板の前記主面に第1導電型の不純物をイオン注入することにより、前記周辺領域に第1導電型の複数の半導体領域を形成する工程、を含む。前記耐酸化性マスク層は、第1の幅を有する複数の第1部分と、前記第1の幅より小さい第2の幅を有する複数の第2部分とを有する。前記(c)工程において、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第1部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に第1酸化膜が形成され、かつ、前記耐酸化性マスク層の前記複数の第2部分の下に、前記フィールド酸化膜と一体的に、前記第1酸化膜よりも厚い第2酸化膜が形成される。前記複数の半導体領域は、前記第1酸化膜の下に形成された第1半導体領域と、前記第2酸化膜の下に形成された第2半導体領域とを含み、前記第2半導体領域の深さは、前記第1半導体領域の深さよりも浅い。
【発明の効果】
【0009】
一実施の形態によれば、VLD構造を有する半導体装置を的確に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態の半導体装置の上面図である。
図2】一実施の形態の半導体装置の下面図である。
図3】一実施の形態の半導体装置の平面透視図である。
図4】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図5】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図6】一実施の形態の半導体装置の要部断面図である。
図7】一実施の形態の半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図8図7に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図9図8と同じ半導体装置の製造工程中の要部平面図である。
図10図8に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図11図10に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図12図11に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図13図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図14図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図15図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図16図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図である。
図17図12に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図18図17に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図19図18に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図20図19に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図21図20に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
図22図21に続く半導体装置の製造工程中の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0012】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0013】
また、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見易くするためにハッチングを付す場合もある。
【0014】
<半導体装置の構造について>
本実施の形態の半導体装置CPの構造について、図1図6を参照して説明する。図1は、本実施の形態の半導体装置CPの上面図であり、図2は、本実施の形態の半導体装置CPの下面図(裏面図)である。理解を簡単にするために、図1においては、アノード電極AEを実線で示し、活性領域ARを点線で示し、絶縁膜9(図6参照)の開口部OPの位置を一点鎖線で示してある。図3は、本実施の形態の半導体装置CPの平面透視図である。図4図6は、本実施の形態の半導体装置CPの要部断面図である。なお、図4および図5は、半導体チップCPを構成する半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに略平行な断面が示され、図6は、半導体チップCPを構成する半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに略垂直な断面が示されている。図4および図5に示されるのは、図1および図3に示される領域RG1の断面図であり、図6に示されるのは、図4および図5に示されるA-A線の位置での断面図に対応している。なお、図4図5とは高さ(深さ)位置が相違しており、図4は、図6に示される高さ位置H1での断面図に対応し、図5は、図6に示される高さ位置H2での断面図に対応している。図1図5などに示されるX方向およびY方向は、半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに略平行な方向であり、また、X方向とY方向とは、互いに直交する方向である。
【0015】
本実施の形態の半導体装置(半導体チップ)CPは、ダイオードを備える半導体装置であり、半導体装置CPを構成する半導体基板1にダイオードが形成されている。
【0016】
半導体装置CPは、半導体基板1と、半導体基板1の主面1a上に形成された絶縁膜(層間絶縁膜、保護膜)9およびアノード電極AEと、半導体基板1の裏面1b上に形成されたカソード電極CEとを有している。半導体装置CPを構成する半導体基板1は、シリコン(より具体的には単結晶シリコン)からなり、主面1aと、主面1aとは反対側の裏面1bとを有している。アノード電極AEおよびカソード電極CEは、それぞれ金属材料からなる。
【0017】
半導体装置CPおよびそれを構成する半導体基板1は、矩形状の平面形状を有している。具体的には、半導体装置CPおよびそれを構成する半導体基板1は、Y方向に略平行な側面SD1,SD3と、X方向に略平行な側面SD2,SD4とを有しており、側面SD1と側面SD3は互いに反対側に位置し、側面SD2と側面SD4は互いに反対側に位置している。
【0018】
半導体基板1は、n型の半導体基板であるが、半導体基板1には、ダイオードのアノード用のp型半導体領域(p型アノード領域、p型ボディ領域)6が形成されている。p型半導体領域6は、半導体基板1主面の1a側に形成されており、半導体基板1の主面1aから所定の深さにわたって形成されている。p型半導体領域6は、ほぼ均一(一定)の厚さを有している。p型半導体領域6は、平面視において、半導体基板1の中央領域に形成されており、半導体基板1の側面SD1,SD2,SD3,SD4から離間している。
【0019】
なお、本願において、平面視とは、半導体装置CPの主面または裏面、あるいは、半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに平行な平面で見た場合に対応している。また、半導体基板1の厚さ方向と深さ方向と高さ方向とは、互いに同じである。また、半導体基板1の厚さ方向は、半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに略垂直な方向である。また、水平方向とは、半導体基板1の主面1aまたは裏面1bに平行な方向である。
【0020】
半導体基板1の主面1a上には、絶縁膜9およびアノード電極AEが形成されており、アノード電極AEは、p型半導体領域6と電気的に接続されている。具体的には、絶縁膜9には、p型半導体領域6を露出する開口部OPが形成されており、アノード電極AEは、開口部OPから露出するp型半導体領域6上に形成されている。このため、アノード電極AEは、開口部OPから露出するp型半導体領域6と接して、そのp型半導体領域6と電気的に接続されている。アノード電極AEの一部(外周部)は、絶縁膜9上に位置している。
【0021】
開口部OPは、平面視において、アノード電極AEに内包され、かつ、p型半導体領域6に内包されている。平面視において、アノード電極AEは、p型半導体領域6と同程度か、あるいは、p型半導体領域6よりもやや大きな平面形状を有している。
【0022】
半導体基板1の裏面1b側には、ダイオードのカソード用のn型半導体領域(n型カソード領域)10が形成されている。n型半導体領域10は、半導体基板1の裏面1bから所定の深さにわたって形成されている。n型半導体領域10は、半導体基板1の裏面1b全体にわたって形成されており、ほぼ均一(一定)の厚さを有している。カソード電極CEは、半導体基板1の裏面1b全体上に形成されており、n型半導体領域10と接して、そのn型半導体領域10と電気的に接続されている。
【0023】
半導体基板1において、p型半導体領域6とn型半導体領域10との間には、半導体基板1のn型基板領域1cが介在している。p型半導体領域6とn型基板領域1cとの間に、PN接合が形成される。n型半導体領域10の不純物濃度(n型不純物濃度)は、n型基板領域1cの不純物濃度(n型不純物濃度)よりも高い。このため、n型基板領域1cは、低不純物濃度のn型領域であり、n型半導体領域10は、高不純物濃度のn型領域である。
【0024】
p型半導体領域6と、n型半導体領域10と、p型半導体領域6とn型半導体領域10との間のn型基板領域1cとにより、ダイオードが形成される。p型半導体領域6は、ダイオードのアノード領域として機能する。n型基板領域1cとn型半導体領域10は、ダイオードのカソード領域として機能する。このため、アノード電極AEとカソード電極CEとの間で、p型半導体領域6とn型基板領域1cとn型半導体領域10とを通じて電流を流すことができる。すなわち、アノード電極AEとカソード電極CEとの間で、半導体基板1の厚さ方向に電流が流れる。
【0025】
半導体基板1において、能動素子(ここではダイオード)として機能する領域を、活性領域ARと称する。半導体基板1において、活性領域ARは、p型半導体領域6とp型半導体領域6の下方の領域(n型基板領域1cおよびn型半導体領域10のうちのp型半導体領域6の下方に位置する部分)とで構成される。すなわち、半導体基板1のうち、平面視においてp型半導体領域6と重なる領域が、活性領域ARに対応している。このため、平面視において、活性領域ARはp型半導体領域6と一致している。
【0026】
p型半導体領域6の平面形状(従って活性領域ARの平面形状)は、例えば略矩形であるが、その矩形の角部に丸みを持たせることもできる。すなわち、p型半導体領域6の平面形状として、円弧状の四隅を有する矩形状の平面形状を適用することができる。
【0027】
半導体基板1のうち、平面視において活性領域ARを囲む領域を、周辺領域PRと称する。すなわち、半導体基板1において、活性領域ARと半導体基板1の側面SD1,SD2,SD3,SD4との間の領域が、周辺領域PRに対応している。平面視において、周辺領域PRは活性領域ARを囲むように配置されている。
【0028】
半導体基板1の周面領域PRには、電界緩和用のp型半導体領域(電界緩和層)8が形成されている。p型半導体領域8は、半導体基板1主面の1a側に形成されており、半導体基板1の主面1aから所定の深さにわたって形成されている。p型半導体領域8は、p型半導体領域6と隣接しており、平面視においてp型半導体領域6を囲むように形成されている。平面視において、p型半導体領域8は、半導体基板1の側面SD1,SD2,SD3,SD4から離間している。
【0029】
p型半導体領域8は、p型半導体領域8aとp型半導体領域8bとp型半導体領域8cとp型半導体領域8dとにより構成されている。
【0030】
なお、半導体基板1のうち、平面視においてp型半導体領域8aと重なる領域を領域DK1と称し、平面視においてp型半導体領域8bと重なる領域を領域DK2と称し、平面視においてp型半導体領域8cと重なる領域を領域DK3と称し、平面視においてp型半導体領域8dと重なる領域を領域DK4と称する。また、半導体基板1のうち、平面視においてp型半導体領域8と重なる領域を領域DKと称するが、領域DKは、領域DK1と領域DK2と領域DK3と領域DK4とを合わせた領域に対応している。
【0031】
p型半導体領域8aは、p型半導体領域6の外周に位置してp型半導体領域6と隣接しており、平面視においてp型半導体領域6を囲むように形成されている。p型半導体領域8bは、p型半導体領域8aの外周に位置してp型半導体領域8aと隣接しており、平面視においてp型半導体領域8aを囲むように形成されている。p型半導体領域8cは、p型半導体領域8bの外周に位置してp型半導体領域8bと隣接しており、平面視においてp型半導体領域8bを囲むように形成されている。p型半導体領域8dは、p型半導体領域8cの外周に位置してp型半導体領域8cと隣接しており、平面視においてp型半導体領域8cを囲むように形成されている。平面視において、p型半導体領域8aは、p型半導体領域6とp型半導体領域8bとの間に位置し、また、p型半導体領域8bは、p型半導体領域8aとp型半導体領域8cとの間に位置し、また、p型半導体領域8cは、p型半導体領域8bとp型半導体領域8dとの間に位置している。
【0032】
つまり、p型半導体領域8a,8b,8c,8d(領域DK1,DK2,DK3,DK4)は、それぞれ枠状の平面形状を有している。そして、p型半導体領域8a(領域DK1)の内周がp型半導体領域6(活性領域AR)の外周と隣接している。また、p型半導体領域8b(領域DK2)の内周がp型半導体領域8a(領域DK1)の外周と隣接している。また、p型半導体領域8c(領域DK3)の内周がp型半導体領域8b(領域DK2)の外周と隣接している。また、p型半導体領域8d(領域DK4)の内周がp型半導体領域8c(領域DK3)の外周と隣接している。
【0033】
p型半導体領域8aの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域6の不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、かつ、p型半導体領域8aの深さD11は、p型半導体領域6の深さD15よりも浅い(D15>D11)。また、p型半導体領域8bの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域8aの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、かつ、p型半導体領域8bの深さD12は、p型半導体領域8aの深さD11よりも浅い(D11>D12)。また、p型半導体領域8cの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域8bの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、かつ、p型半導体領域8cの深さD13は、p型半導体領域8bの深さD12よりも浅い(D12>D13)。また、p型半導体領域8dの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域8cの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、かつ、p型半導体領域8dの深さD14は、p型半導体領域8cの深さD13よりも浅い(D13>D14)。言い換えると、p型半導体領域8aの底面の深さ位置は、p型半導体領域6の底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域8bの底面の深さ位置は、p型半導体領域8aの底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域8cの底面の深さ位置は、p型半導体領域8bの底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域8dの底面の深さ位置は、p型半導体領域8cの底面の深さ位置よりも浅い。p型半導体領域6の深さD15は、例えば、4~10μm程度とすることができる。なお、半導体基板1における深さ位置について言及するときは、半導体基板1の裏面1bに近い側を深い側とし、半導体基板1の裏面1bから遠い側を浅い側とする。
【0034】
つまり、p型半導体領域6に隣接する位置から、半導体基板1の側面SD1,SD2,SD3,SD4に向かう側に、p型半導体領域8aとp型半導体領域8bとp型半導体領域8cとp型半導体領域8dとが順に配置されており、この順で、p型不純物濃度が低くなり、かつ、深さが浅くなっている。その結果、電界緩和用のp型半導体領域8のp型不純物濃度は、p型半導体領域6に隣接する位置から、p型半導体領域6から遠ざかるに従って(すなわち側面SD1,SD2,SD3,SD4に向かうに従って)、徐々に低くなっている。また、電界緩和用のp型半導体領域8の深さは、p型半導体領域6に隣接する位置から、p型半導体領域6から遠ざかるに従って(すなわち側面SD1,SD2,SD3,SD4に向かうに従って)、徐々に浅くなっている。すなわち、p型半導体領域8は、VLD構造を有している。このため、本実施の形態とは異なりp型半導体領域8がVLD構造を有していない場合(p型半導体領域8がリサーフ構造を有している場合)に比べて、本実施の形態の半導体装置CPは、半導体基板1の周辺領域PRにおける電界集中を、より緩和することができ、半導体装置CPの耐圧を、より高くすることができる。
【0035】
なお、本実施の形態とは異なり、p型半導体領域8がリサーフ構造を有している場合は、p型半導体領域8a,8b,8c,8dのそれぞれのp型不純物濃度は、互いに同じとなり、かつ、p型半導体領域8a,8b,8c,8dのそれぞれの深さは、互いに同じとなる。
【0036】
また、半導体基板1の主面1aには、フィールド酸化膜(LOCOS膜)4が形成されている。フィールド酸化膜4は、酸化シリコンからなり、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されている。半導体基板1の主面1aにおいて、フィールド酸化膜4は、主として周面領域PRに形成されている。絶縁膜9は、半導体基板1の主面1a上に、フィールド酸化膜4を覆うように形成されている。半導体基板1の周面領域PRに形成されたフィールド酸化膜4は、後述するように、VLD構造のp型半導体領域8を的確に形成するために用いられている。
【0037】
領域DK1において、p型半導体領域8aは、隣り合うフィールド酸化膜4の間と、フィールド酸化膜4の下とに、連続的に形成されている。領域DK2において、p型半導体領域8bは、隣り合うフィールド酸化膜4の間と、フィールド酸化膜4の下とに、連続的に形成されている。領域DK3において、p型半導体領域8cは、隣り合うフィールド酸化膜4の間と、フィールド酸化膜4の下とに、連続的に形成されている。領域DK4において、p型半導体領域8dは、隣り合うフィールド酸化膜4の間と、フィールド酸化膜4の下とに、連続的に形成されている。
【0038】
領域DK1において、隣り合うフィールド酸化膜4の間のp型半導体領域8aの表面には、フィールド酸化膜4と一体的に形成された酸化膜5aが形成されている。領域DK2において、隣り合うフィールド酸化膜4の間のp型半導体領域8bの表面には、フィールド酸化膜4と一体的に形成された酸化膜5bが形成されている。領域DK3において、隣り合うフィールド酸化膜4の間のp型半導体領域8cの表面には、フィールド酸化膜4と一体的に形成された酸化膜5cが形成されている。領域DK4において、隣り合うフィールド酸化膜4の間のp型半導体領域8dの表面には、フィールド酸化膜4と一体的に形成された酸化膜5dが形成されている。酸化膜5a,5b,5c,5dは、それぞれ酸化シリコンからなる。
【0039】
<半導体装置の製造方法>
本実施の形態の半導体装置CPの製造方法について、図7図22を参照して説明する。図7図8図10図12および図17図22は、本実施の形態の半導体装置CPの製造工程中の要部断面図であり、上記図6に相当する断面が示されている。図9は、本実施の形態の半導体装置CPの製造工程中の要部平面図であり、上記図1および図3に示される領域RG1に相当する領域の平面図が示されている。このため、図9が示される平面領域は、上記図4および図5に示される平面領域とほぼ一致しているが、上記図4および図5は半導体基板1の主面1aに平行な断面図であり、図9は、半導体基板1の主面1aを上方から見たときの平面図である。図8は、図9に示されるB-B線の位置での断面図に対応している。図13図16は、図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図13には領域DK1の一部が拡大して示され、図14には領域DK2の一部が拡大して示され、図15には領域DK3の一部が拡大して示され、図16には領域DK4の一部が拡大して示されている。
【0040】
まず、図7に示されるように、半導体基板1を準備する。この段階では、半導体基板SBは、平面視で略円形状の半導体ウエハである。半導体基板SBは、主面1aと、それとは反対側の裏面1bとを有している。半導体基板1は、シリコン(より具体的には単結晶シリコン)からなる。半導体基板1として、n型不純物が導入されたn型の半導体基板を用いることができる。半導体基板1のn型不純物濃度は、後で形成されるn型半導体領域10のn型不純物濃度よりも低い。
【0041】
この段階では、半導体基板1に上記p型半導体領域6,8a,8b,8c,8dおよびn型半導体領域10はまだ形成されていない。このため、半導体基板1全体が、上記n型基板領域1cと同程度のn型不純物濃度領域となっている。従って、活性領域ARは、半導体基板1におけるp型半導体領域6形成予定領域に対応している。また、領域DK1は、半導体基板1におけるp型半導体領域8a形成予定領域に対応し、領域DK2は、半導体基板1におけるp型半導体領域8b形成予定領域に対応している。また、領域DK3は、半導体基板1におけるp型半導体領域8c形成予定領域に対応し、領域DK4は、半導体基板1におけるp型半導体領域8d形成予定領域に対応している。上述のように、平面視において、領域DK1は活性領域ARを囲み、領域DK2は活性領域DK1を囲み、領域DK3は活性領域DK2を囲み、領域DK4は活性領域DK3を囲んでいる。
【0042】
次に、図7に示されるように、半導体基板SBの主面1a上に、窒化シリコン膜2を形成する。窒化シリコン膜2は、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法などを用いて形成することができる。この段階では、窒化シリコン膜2は、半導体基板SBの主面1a全体上に形成される。
【0043】
次に、図8および図9に示されるように、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、窒化シリコン膜2をパターニングする。これにより、パターニングされた窒化シリコン膜2からなるマスク層(耐酸化性マスク層)が形成される。以下では、パターニングされた窒化シリコン膜2からなるマスク層を、マスク層2と称する。図8に示されるように、マスク層2は、半導体基板SBの主面1a上に形成される。マスク層2は、活性領域ARでは、半導体基板1の主面1a全体上に形成されるが、周辺領域PRでは、半導体基板1の主面1a全体上ではなく、半導体基板1の主面1a上に選択的に形成される。
【0044】
図8および図9に示されるように、マスク層2は、領域DK1の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2aと、領域DK2の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2bと、領域DK3の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2cと、領域DK4の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2dと、活性領域ARの半導体基板1上に形成された複数のマスク部2eとを有している。
【0045】
すなわち、マスク層2のうち、領域DK1の半導体基板1上に形成された部分がマスク部2aに対応し、領域DK2の半導体基板1上に形成された部分がマスク部2bに対応し、領域DK3の半導体基板1上に形成された部分がマスク部2cに対応し、領域DK4の半導体基板1上に形成された部分がマスク部2dに対応している。また、マスク層2のうち、活性領域ARの半導体基板1に形成された部分がマスク部2eに対応している。マスク部2eは、活性領域AR全体に形成されている。マスク部2a,2b,2c,2d,2eは、互いに離間している。
【0046】
領域DK1の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2aは、互いに離間し、かつ、領域DK1に沿うように延在(並走)している。領域DK2の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2bは、互いに離間し、かつ、領域DK2に沿うように延在(並走)している。領域DK3の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2cは、互いに離間し、かつ、領域DK3に沿うように延在(並走)している。領域DK4の半導体基板1上に形成された複数のマスク部2dは、互いに離間し、かつ、領域DK4に沿うように延在(並走)している。このため、平面視において、活性領域AR全体にマスク部2eが形成され、各マスク部2a,2b,2c,2dは、マスク部2e(活性領域AR)を囲むように延在している。すなわち、平面視において、マスク部2e(活性領域AR)の周りを、複数のマスク部2aが並走しながら周回し、その周りを、複数のマスク部2bが並走しながら周回し、その周りを、複数のマスク部2cが並走しながら周回し、その周りを、複数のマスク部2dが並走しながら周回している。
【0047】
平面視において、複数のマスク部2aは、活性領域ARと複数のマスク部2bとの間に配置され、複数のマスク部2bは、複数のマスク部2aと複数のマスク部2cとの間に配置され、複数のマスク部2cは、複数のマスク部2bと複数のマスク部2dとの間に配置されている。
【0048】
複数のマスク部2aのそれぞれの幅W1は、互いに同じであり、複数のマスク部2bのそれぞれの幅W2は、互いに同じであり、複数のマスク部2cのそれぞれの幅W3は、互いに同じであり、複数のマスク部2dのそれぞれの幅W4は、互いに同じである。マスク部2aの幅W1は、マスク部2bの幅W2よりも大きく、マスク部2bの幅W2は、マスク部2cの幅W3よりも大きく、マスク部2cの幅W3は、マスク部2dの幅W4よりも大きい(すなわちW1>W2>W3>W4)。
【0049】
なお、幅W1は、半導体基板1の半導体基板SBの主面1aに平行で、かつ、マスク部2aの延在方向に垂直な方向の幅(寸法)である。また、幅W2は、半導体基板1の半導体基板SBの主面1aに平行で、かつ、マスク部2bの延在方向に垂直な方向の幅(寸法)である。また、幅W3は、半導体基板1の半導体基板SBの主面1aに平行で、かつ、マスク部2cの延在方向に垂直な方向の幅(寸法)である。また、幅W4は、半導体基板1の半導体基板SBの主面1aに平行で、かつ、マスク部2dの延在方向に垂直な方向の幅(寸法)である。別の見方をすると、マスク部2a,2b,2c,2dの幅W1,W2,W3,W4は、平面視において活性領域ARから周辺領域PRに向かう方向(すなわち活性領域ARから離れる方向)における幅(寸法)である。
【0050】
また、隣り合うマスク部2a同士の間隔S1と、隣り合うマスク部2b同士の間隔S2と、隣り合うマスク部2c同士の間隔S3と、隣り合うマスク部2d同士の間隔S4は、互いに同じであることが好ましい(すなわちS1=S2=S3=S4)。すなわち、複数のマスク部2aは、一定の間隔(S1)で並走し、複数のマスク部2bは、一定の間隔(S2)で並走し、複数のマスク部2cは、一定の間隔(S3)で並走し、複数のマスク部2dは、一定の間隔(S4)で並走し、マスク部2a同士の間隔S1とマスク部2b同士の間隔S2とマスク部2c同士の間隔S3とマスク部2d同士の間隔S4は、互いに同じであることが好ましい。また、隣り合うマスク部2eとマスク部2aの間隔と、隣り合うマスク部2aとマスク部2bの間隔と、隣り合うマスク部2bとマスク部2cの間隔と、隣り合うマスク部2cとマスク部2dの間隔は、間隔S1,S2,S3,S4のそれぞれと同じであることが好ましい。従って、複数のマスク部2a,2b,2c,2dは、活性領域ARを囲むように、等間隔で延在(並走)していることが好ましい。
【0051】
次に、図10に示されるように、マスク層2(すなわちマスク部2a,2b,2c,2d,2e)をエッチングマスクとして用いて、半導体基板1をエッチングすることにより、半導体基板1に溝3を形成する。このエッチング工程は、異方性のドライエッチングが好ましい。
【0052】
半導体基板1のうち、マスク層2で覆われている部分はエッチングされず、マスク層2で覆われずに露出されている部分が選択的にエッチングされるため、溝3は、マスク部2a,2b,2c,2d,2eの側面に整合して形成される。すなわち、平面視において、隣り合うマスク部2eとマスク部2aの間と、隣り合うマスク部2a同士の間と、隣り合うマスク部2aとマスク部2bの間と、隣り合うマスク部2b同士の間とに、溝3が形成される。また、平面視において、隣り合うマスク部2bとマスク部2cの間と、隣り合うマスク部2c同士の間と、隣り合うマスク部2cとマスク部2dの間と、隣り合うマスク部2d同士の間と、最外周のマスク部2dの外側とに、溝3が形成される。
【0053】
次に、図11に示されるように、熱酸化工程を行うことにより、マスク層2(すなわちマスク部2a,2b,2c,2d,2e)から露出する半導体基板1(の表面)を熱酸化して、酸化シリコンからなるフィールド酸化膜4を形成する。すなわち、LOCOS法を用いてフィールド酸化膜4を形成する。この熱酸化工程の際には、マスク層2(すなわちマスク部2a,2b,2c,2d,2e)は、耐熱酸化層として機能し、マスク層2の下の半導体基板1が熱酸化されるのを抑制する。このため、半導体基板1の主面1aのうち、マスク層2で覆われている領域には、フィールド酸化膜4は形成されず、マスク層2で覆われていない領域に、フィールド酸化膜4が形成される。このため、平面視において、隣り合うマスク部2eとマスク部2aの間と、隣り合うマスク部2a同士の間と、隣り合うマスク部2aとマスク部2bの間と、隣り合うマスク部2b同士の間とに、フィールド酸化膜4が形成される。また、平面視において、隣り合うマスク部2bとマスク部2cの間と、隣り合うマスク部2c同士の間と、隣り合うマスク部2cとマスク部2dの間と、隣り合うマスク部2d同士の間と、最外周のマスク部2dの外側とに、フィールド酸化膜4が形成される。活性領域ARはマスク部2eで覆われているため、フィールド酸化膜4は周辺領域PRに形成される。フィールド酸化膜4の厚さは、例えば1~2μm程度とすることができる。
【0054】
半導体基板1に溝3を形成した後に、熱酸化によりフィールド酸化膜4を形成した場合には、溝3の底面と側面で露出する半導体基板1が酸化することにより、フィールド酸化膜4が形成される。この場合、フィールド酸化膜4は、溝3内を埋めるように形成されるが、フィールド酸化膜4の底面の深さ位置は、溝3の底面の深さ位置よりも、深くなる。
【0055】
他の形態として、半導体基板1に溝3を形成する工程(図10の工程)を省略することもできる。溝3を形成しなかった場合は、マスク層2で覆われずに露出する半導体基板1の上面が熱酸化されることで、フィールド酸化膜4が形成される。平面視におけるフィールド酸化膜4の形成位置は、溝3を形成した場合と形成しなかった場合とで、ほぼ同様である。
【0056】
また、フィールド酸化膜4を形成するための熱酸化工程では、各マスク部2a,2b,2c,2dの下(すなわちマスク部2a,2b,2c,2dと半導体基板1との間)に、薄い酸化膜5が形成され得る。なぜなら、熱酸化工程で、マスク部2a,2b,2c,2dと半導体基板1との間に酸素が拡散して、マスク部2a,2b,2c,2dの下の半導体基板1の表面が多少酸化され得るからである。フィールド酸化膜4を形成するための熱酸化工程において、マスク部2aの下に形成された酸化膜5を、酸化膜5aと称し、マスク部2bの下に形成された酸化膜5を、酸化膜5bと称し、マスク部2cの下に形成された酸化膜5を、酸化膜5cと称し、マスク部2dの下に形成された酸化膜5を、酸化膜5dと称することとする。
【0057】
酸化膜5aは、領域DK1の半導体基板1の表面に、領域DK1に形成されたフィールド酸化膜4と一体的に形成される。酸化膜5bは、領域DK2の半導体基板1の表面に、領域DK2に形成されたフィールド酸化膜4と一体的に形成される。酸化膜5cは、領域DK3の半導体基板1の表面に、領域DK3に形成されたフィールド酸化膜4と一体的に形成される。酸化膜5dは、領域DK4の半導体基板1の表面に、領域DK4に形成されたフィールド酸化膜4と一体的に形成される。酸化膜5(5a,5b,5c,5d)は、フィールド酸化膜4よりも薄い。
【0058】
次に、図12に示されるように、マスク層2(マスク部2a,2b,2c,2d,2e)をエッチングにより除去する。この際、マスク層2に比べて、フィールド酸化膜4と酸化膜5と半導体基板1とがエッチングされにくい条件で、マスク層2をエッチングすることが好ましい。これにより、フィールド酸化膜4と酸化膜5と半導体基板1がエッチングされるのを抑制または防止しながら、マスク層2をエッチングして除去することができる。また、マスク層2を除去した後、必要に応じて、フィールド酸化膜4の上部をCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械的研磨)法を用いて研磨することもできる。
【0059】
図13図16は、図12の一部を拡大して示す部分拡大断面図であり、図13には領域DK1の一部が拡大して示され、図14には領域DK2の一部が拡大して示され、図15には領域DK3の一部が拡大して示され、図16には領域DK4の一部が拡大して示されている。
【0060】
図13に示されるように、領域DK1において、酸化膜5aは、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に、フィールド酸化膜4と一体的に形成されている。また、図14に示されるように、領域DK2において、酸化膜5bは、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に、フィールド酸化膜4と一体的に形成されている。また、図15に示されるように、領域DK3において、酸化膜5cは、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に、フィールド酸化膜4と一体的に形成されている。また、図16に示されるように、領域DK4において、酸化膜5dは、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に、フィールド酸化膜4と一体的に形成されている。酸化膜5bの厚さT2は、酸化膜5aの厚さT1よりも厚く、酸化膜5cの厚さT3は、酸化膜5bの厚さT2よりも厚く、酸化膜5dの厚さT4は、酸化膜5cの厚さT3よりも厚い(すなわちT1<T2<T3<T4)。その理由は、以下のようなものである。
【0061】
上述のように、マスク部2aの幅W1は、マスク部2bの幅W2よりも大きく、マスク部2bの幅W2は、マスク部2cの幅W3よりも大きく、マスク部2cの幅W3は、マスク部2dの幅W4よりも大きい(すなわちW1>W2>W3>W4)。そして、フィールド酸化膜4は、マスク層2から露出する半導体基板1に形成される。このため、領域DK2における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L12(図14参照)は、領域DK1における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L11(図13参照)よりも小さくなる。また、領域DK3における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L13(図15参照)は、領域DK2における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L12(図14参照)よりも小さくなる。また、領域DK4における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L14(図16参照)は、領域DK3における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L13(図15参照)よりも小さくなる。すなわち、L11>L12>L13>14が成り立つ。
【0062】
フィールド酸化膜4を形成するための熱酸化工程において、マスク部2a,2b,2c,2dの下の半導体基板1の表面が酸化されて薄い酸化膜5が形成され得るが、マスク部の幅が大きくなるほど、そのマスク部の下に形成される酸化膜5の厚さは薄くなる傾向にある。なぜなら、フィールド酸化膜4を形成するための熱酸化工程では、マスク部と半導体基板1との間に酸素が拡散して酸化膜5が形成されるが、マスク部の幅が大きくなるほど、そのマスク部の下に酸化膜5が形成されるために必要となる酸素の拡散距離が大きくなり、酸化膜5を形成するために必要な酸素量が確保されにくくなるからである。
【0063】
このため、幅W1を有するマスク部2aの下に形成される酸化膜5aの厚さT1よりも、幅W1よりも小さな幅W2を有するマスク部2bの下に形成される酸化膜5bの厚さT2の方が、大きくなる。また、幅W2を有するマスク部2bの下に形成される酸化膜5bの厚さT2よりも、幅W2よりも小さな幅W3を有するマスク部2cの下に形成される酸化膜5cの厚さT3の方が、大きくなる。また、幅W3を有するマスク部2cの下に形成される酸化膜5cの厚さT3よりも、幅W3よりも小さな幅W4を有するマスク部2dの下に形成される酸化膜5dの厚さT4の方が、大きくなる。
【0064】
また、活性領域ARに形成されたマスク部2eの幅は、マスク部2aの幅W1よりも十分に大きい。このため、マスク部2eの側面の近傍の領域を除いて、マスク部2eの下には、酸化膜5は形成されない。
【0065】
なお、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に形成された酸化膜5aの厚さT1は、そのフィールド酸化膜4の間の中央における酸化膜5aの厚さに対応している。また、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に形成された酸化膜5bの厚さT2は、そのフィールド酸化膜4の間の中央における酸化膜5bの厚さに対応している。また、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に形成された酸化膜5cの厚さT3は、そのフィールド酸化膜4の間の中央における酸化膜5cの厚さに対応している。また、フィールド酸化膜4の間の半導体基板1の表面に形成された酸化膜5dの厚さT4は、そのフィールド酸化膜4の間の中央における酸化膜5dの厚さに対応している。
【0066】
酸化膜5a,5b,5c,5dの各々は、フィールド酸化膜4を形成する熱酸化時の所謂バーズビーク現象を利用して形成されるので、フィールド酸化膜4の間の中央が最も薄く形成され、図示は省略するがフィールド酸化膜4のエッジ近傍では、フィールド酸化膜4の間の中央よりも若干厚く形成される。
【0067】
酸化膜5a,5b,5c,5dの厚さの一例をあげると、以下の通りである。マスク部2aの幅W1を例えば10~15μm程度、マスク部2bの幅W2を例えば3μm程度、マスク部2cの幅W3を例えば2.5μm程度、マスク部2dの幅W4を例えば2.3μm程度に設定することができる。この場合、熱酸化の条件にもよるが、例えば、酸化膜5aの厚さT1は20nm以下程度、酸化膜5bの厚さT2は130nm程度、酸化膜5cの厚さT3は240nm程度、酸化膜5dの厚さT4は280nm程度とすることができる。上記間隔S1,S2,S3,S4は、例えば、それぞれ1μm程度とすることができる。なお、これに限定されず、熱酸化の条件やイオン注入の条件なども勘案して、所望の厚さを有する酸化膜5a,5b,5c,5dを形成できるように、マスク部2a,2b,2c,2dの幅W1,W2,W3,W4や間隔S1,S2,S3,S4を設定することができる。
【0068】
また、領域DK1のマスク部2aの下には酸化膜5aがほとんど形成されない場合(すなわちT1=0nmの場合)も許容できる。なぜなら、領域DK1のマスク部2aの下に酸化膜5aが形成されない場合でも、領域DK1に形成される後述のp型半導体領域7aは、領域DK2に形成される後述のp型半導体領域7bよりも、深さが深く、かつ高不純物濃度となり得るからである。
【0069】
次に、図17に示されるように、フィールド酸化膜4を不純物導入のマスク(イオン注入阻止マスク)として用いて、半導体基板1の主面1aにp型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1にp型半導体領域6および複数のp型半導体領域7(7a,7b,7c,7d)を形成する。この工程を、以下では「p型不純物のイオン注入工程」と称する。p型半導体領域6は、活性領域ARの半導体基板1に形成され、複数のp型半導体領域7(7a,7b,7c,7d)は、周辺領域PRの半導体基板1に形成される。
【0070】
p型半導体領域6は、活性領域ARの半導体基板1の主面1a側に、半導体基板1の主面1aから所定の深さにわたって形成される。活性領域ARにはフィールド酸化膜4は形成されていないため、平面視において、p型半導体領域6は、活性領域ARのほぼ全体にわたって形成される。
【0071】
p型不純物のイオン注入工程においては、フィールド酸化膜4は、マスク(イオン注入阻止マスク)として機能し、フィールド酸化膜4の下の半導体基板1へp型不純物が注入されることが抑制または防止される。一方、酸化膜5(5a,5b,5c,5d)の厚さは、フィールド酸化膜4の厚さよりも小さい。このため、p型不純物のイオン注入工程においては、p型不純物は、酸化膜5を通過し、酸化膜5の下の半導体基板1に注入される。その結果、酸化膜5の下の半導体基板1にp型半導体領域7が形成される。
【0072】
ここで、酸化膜5aの下に形成されたp型半導体領域7をp型半導体領域7aと称する。また、酸化膜5bの下に形成されたp型半導体領域7をp型半導体領域7bと称する。また、酸化膜5cの下に形成されたp型半導体領域7をp型半導体領域7cと称する。また、酸化膜5dの下に形成されたp型半導体領域7をp型半導体領域7dと称する。
【0073】
p型半導体領域7aは、酸化膜5aを通過して半導体基板1内に注入されたp型不純物により形成されるため、領域DK1の半導体基板1に形成される。p型半導体領域7aの底面の深さ位置は、フィールド酸化膜4の底面の深さ位置よりも深いが、フィールド酸化膜4の下にはp型半導体領域7aはほとんど形成されない。また、p型半導体領域7bは、酸化膜5bを通過して半導体基板1内に注入されたp型不純物により形成されるため、領域DK2の半導体基板1に形成される。p型半導体領域7bの底面の深さ位置は、フィールド酸化膜4の底面の深さ位置よりも深いが、フィールド酸化膜4の下にはp型半導体領域7bはほとんど形成されない。また、p型半導体領域7cは、酸化膜5cを通過して半導体基板1内に注入されたp型不純物により形成されるため、領域DK3の半導体基板1に形成される。p型半導体領域7cの底面の深さ位置は、フィールド酸化膜4の底面の深さ位置よりも深いが、フィールド酸化膜4の下にはp型半導体領域7cはほとんど形成されない。また、p型半導体領域7dは、酸化膜5dを通過して半導体基板1内に注入されたp型不純物により形成されるため、領域DK4の半導体基板1に形成される。p型半導体領域7dの底面の深さ位置は、フィールド酸化膜4の底面の深さ位置よりも深いが、フィールド酸化膜4の下にはp型半導体領域7dはほとんど形成されない。
【0074】
p型半導体領域7bの深さD2は、p型半導体領域7aの深さD1よりも浅く(D1>D2)、p型半導体領域7cの深さD3は、p型半導体領域7bの深さD2よりも浅く(D2>D3)、p型半導体領域7dの深さD4は、p型半導体領域7cの深さD3よりも浅い(D3>D4)。また、p型半導体領域7aの深さD1は、p型半導体領域6の深さD5よりも浅い(D5>D1)。言い換えると、p型半導体領域7aの底面の深さ位置は、p型半導体領域6の底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域7bの底面の深さ位置は、p型半導体領域7aの底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域7cの底面の深さ位置は、p型半導体領域7bの底面の深さ位置よりも浅く、p型半導体領域7dの底面の深さ位置は、p型半導体領域7cの底面の深さ位置よりも浅い。
【0075】
また、p型半導体領域7bの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域7aの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、p型半導体領域7cの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域7bの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低く、p型半導体領域7dの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域7cの不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低い。また、p型半導体領域7aの不純物濃度(p型不純物濃度)は、p型半導体領域6の不純物濃度(p型不純物濃度)よりも低い。
【0076】
つまり、p型半導体領域7a,7b,7c,7dは、この順で深さが浅くなり、かつ、p型不純物濃度が低くなる。その理由は、以下のようなものである。
【0077】
すなわち、p型不純物のイオン注入工程では、酸化膜5を通過したp型不純物イオンが半導体基板1内に導入されることにより、p型半導体領域7が形成されるが、酸化膜5は不純物イオンの進行を抑制(阻害)するように作用する。このため、酸化膜5の厚さが厚くなるほど、酸化膜5を通過して半導体基板1内を進行するp型不純物イオンの進行可能距離が短くなり、また、酸化膜5を通過して半導体基板1内に導入されるp型不純物イオンの量が低下する。その結果、酸化膜5の厚さが厚くなるほど、酸化膜5の下に形成されるp型半導体領域7の深さが浅くなり、また、酸化膜5の厚さが厚くなるほど、酸化膜5の下に形成されるp型半導体領域7のp型不純物濃度が低くなる。上述のように、酸化膜5a,5b,5c,5dは、この順で厚さが厚くなっているため、これを反映して、p型半導体領域7a,7b,7c,7dは、この順で深さが浅くなり、かつ、p型不純物濃度が低くなる。
【0078】
次に、p型半導体領域6,7(7a,7b,7c,7d)に導入されたp型不純物を拡散させるための熱処理(アニール処理)を行う。図18には、この熱処理を行った後の状態が示されている。以下では、この熱処理を、熱拡散工程と称する。
【0079】
熱拡散工程により、p型半導体領域6内のp型不純物は半導体基板1の厚さ方向および水平方向に拡散することができるため、熱拡散工程の前(図17)に比べて、熱拡散工程の後(図18)では、p型半導体領域6の深さが深くなる。
【0080】
また、熱拡散工程により、p型半導体領域7(7a,7b,7c,7d)のp型不純物は半導体基板1の厚さ方向および水平方向に拡散することができる。このため、熱拡散工程の前(図17)に比べて、熱拡散工程の後(図18)では、p型半導体領域7(7a,7b,7c,7d)の深さが深くなり、かつ、p型半導体領域7(7a,7b,7c,7d)は半導体基板1の水平方向にも広がることになる。その結果、領域DK1の半導体基板1にp型半導体領域8aが形成され、領域DK2の半導体基板1にp型半導体領域8bが形成され、領域DK3の半導体基板1にp型半導体領域8cが形成され、領域DK4の半導体基板1にp型半導体領域8dが形成される。熱拡散工程は、例えば、1100~1200℃程度の温度で1~10時間程度の熱処理を行うことができるが、熱処理条件は必要に応じて変更可能である。
【0081】
p型半導体領域8aは、熱拡散工程で拡散した複数のp型半導体領域7aが繋がる(重なり合う)ことにより形成される。また、p型半導体領域8bは、熱拡散工程で拡散した複数のp型半導体領域7bが繋がる(重なり合う)ことにより形成される。また、p型半導体領域8cは、熱拡散工程で拡散した複数のp型半導体領域7cが繋がる(重なり合う)ことにより形成される。また、p型半導体領域8dは、熱拡散工程で拡散した複数のp型半導体領域7dが繋がる(重なり合う)ことにより形成される。
【0082】
上述のように、p型半導体領域7a,7b,7c,7dは、この順で深さが浅くなり、かつ、p型不純物濃度が低くなる。これを反映して、p型半導体領域8a,8b,8c,8dは、この順で深さが浅くなり、かつ、p型不純物濃度が低くなる。また、p型半導体領域8aは、p型半導体領域6よりも深さが浅くなり、かつ、p型不純物濃度が低くなる。
【0083】
つまり、p型半導体領域8aの深さD11は、p型半導体領域6の深さD15よりも浅く、p型半導体領域8bの深さD12は、p型半導体領域8aの深さD11よりも浅く、p型半導体領域8cの深さD13は、p型半導体領域8bの深さD12よりも浅く、p型半導体領域8dの深さD14は、p型半導体領域8cの深さD13よりも浅い(D15>D11>D12>D13>D14)。また、p型半導体領域8aのp型不純物濃度は、p型半導体領域6のp型不純物濃度よりも低く、p型半導体領域8bのp型不純物濃度は、p型半導体領域8aのp型不純物濃度よりも低く、p型半導体領域8cのp型不純物濃度は、p型半導体領域8bのp型不純物濃度よりも低く、p型半導体領域8dのp型不純物濃度は、p型半導体領域8cのp型不純物濃度よりも低い。
【0084】
その結果、p型半導体領域8a,8b,8c,8dにより形成される電界緩和用のp型半導体領域8の深さは、p型半導体領域6に隣接する位置から、p型半導体領域6から遠ざかる(水平方向に遠ざかる)に従って徐々に浅くなる。また、p型半導体領域8a,8b,8c,8dにより形成される電界緩和用のp型半導体領域8のp型不純物濃度は、p型半導体領域6に隣接する位置から、p型半導体領域6から遠ざかる(水平方向に遠ざかる)に従って徐々に低くなる。これにより、VLD構造を有するp型半導体領域8が形成される。
【0085】
また、マスク部2a,2b,2c,2dの幅W1,W2,W3,W4がこの順で小さくなることを反映して、領域DK1,DK2,DK3,DK4における隣り合うフィールド酸化膜4の間隔L11,L12,L13,L14は、この順で小さくなる。その結果、p型半導体領域7a,7b,7c,7dの幅も、この順で小さくなる。このことも、p型半導体領域8a,8b,8c,8dのp型不純物濃度がこの順で低くなることに寄与することができる。
【0086】
次に、図19に示されるように、半導体基板1の主面1a上に、フィールド酸化膜4および酸化膜5(5a,5b,5c,5d)を覆うように、絶縁膜9を形成する。絶縁膜9は、酸化シリコン膜(例えばBPSG膜)の単体膜や、あるいは、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜との積層膜などからなり、CVD法などを用いて形成することができる。絶縁膜9の厚さは、例えば1~2μm程度とすることができる。
【0087】
次に、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、絶縁膜9に開口部OPを形成する。開口部OPは、平面視においてp型半導体領域6に内包されるように形成され、開口部OPの底部では半導体基板1(p型半導体領域6)が露出される。
【0088】
次に、図20に示されるように、アノード電極AEを形成する。アノード電極AEは、開口部OPから露出するp型半導体領域6上に形成され、p型半導体領域6と接して、そのp型半導体領域6と電気的に接続される。アノード電極AEの一部(外周部)は、絶縁膜9上に位置している。
【0089】
アノード電極AEの形成法は、任意の手法を用いることができる。例えば、スパッタリング法などを用いて形成した金属膜をフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いてパターニングする手法により、アノード電極AEを形成することもできる。あるいは、アノード電極AE形成予定領域に開口部を有するフォトレジストパターンを形成してから、その開口部内にめっき膜を形成する手法により、アノード電極AEを形成することもできる。アノード電極AEの厚さは、例えば2~10μm程度とすることができる。
【0090】
また、必要に応じて、絶縁膜9上に、アノード電極AEを覆うようにポリイミド樹脂などからなる保護膜(図示せず)を形成してから、その保護膜にアノード電極AEの一部を露出する開口部を形成することもできる。
【0091】
次に、必要に応じて半導体基板1の裏面1b側を研削して半導体基板1を薄くする。
【0092】
次に、図21に示されるように、半導体基板1の裏面1bにn型不純物をイオン注入することにより、半導体基板1にn型半導体領域10を形成する。
【0093】
次に、図22に示されるように、半導体基板1の裏面1b上に、n型半導体領域10と電気的に接続されるカソード電極CEを、スパッタリング法などを用いて形成する。
【0094】
その後、半導体基板1をダイシングにより切断して個片化する。これにより、半導体チップとしての半導体装置CPが製造される。
【0095】
<主要な特徴と効果について>
高耐圧の半導体装置には、耐圧を向上させるための終端構造が設けられている。耐圧を向上させる終端構造として、リサーフ構造やVLD構造があるが、リサーフ構造に比べてVLD構造は、電界集中を、より緩和することができ、半導体装置の耐圧を、より高くすることができる。
【0096】
本実施の形態では、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dを形成し、その酸化膜5a,5b,5c,5dを通過した不純物イオンによりp型半導体領域7a,7b,7c,7dを形成することにより、深さと不純物濃度が互いに異なるp型半導体領域7a,7b,7c,7dを形成することができる。
【0097】
本実施の形態では、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dは、LOCOS法を用いてフィールド酸化膜4を形成する際に、フィールド酸化膜4と一体的に形成される。本実施の形態の主要な特徴のうちの一つは、フィールド酸化膜4を形成するために用いる耐酸化性のマスク層2について工夫することで、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dを形成していることである。
【0098】
すなわち、マスク層2を構成するマスク部2a,2b,2c,2dについて、この順でマスク部2a,2b,2c,2dの幅W1,W2,W3,W4で小さくすることにより、マスク部2a,2b,2c,2dの下に形成される酸化膜5a,5b,5c,5dの厚さを、この順で厚くしている。これにより、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dを容易かつ的確に形成することができ、また、その酸化膜5a,5b,5c,5dを用いて、深さと不純物濃度が互いに異なるp型半導体領域7a,7b,7c,7dを容易かつ的確に形成することができる。従って、VLD構造の電界緩和層(p型半導体領域8)を容易かつ的確に形成することができる。
【0099】
本実施の形態とは異なり、半導体基板1の主面1aに酸化シリコン膜を形成してから、その酸化シリコン膜を複数回エッチングすることにより、厚さが互いに異なる複数の酸化シリコン膜領域を形成することが考えられる。しかしながら、その場合は、酸化シリコン膜上にフォトレジストパターンを形成する工程と、そのフォトレジストパターンから露出する酸化シリコン膜をエッチングする工程と、そのフォトレジストパターンを除去する工程とを、複数サイクル繰り返すことが必要となる。しかしながら、この場合は、製造工程数が増加し、また、製造コストの増加を招いてしまう。また、露光用フォトマスクの必要数が増加することも、製造コストの増加を招く。
【0100】
それに対して、本実施の形態では、フィールド酸化膜4を形成する段階で、フィールド酸化膜4と一体的に、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dを形成することができる。このため、半導体装置の製造工程数を抑制でき、また、半導体装置の製造コストを抑制することができる。また、本実施の形態では、耐酸化性のマスク層2を形成する(すなわち窒化シリコン膜をパターニングする)際に露光用フォトマスクを使用するが、マスク層2を形成した後は、露光用フォトマスクを使用しなくとも(すなわちフォトレジストパターンを形成しなくとも)、厚さが互いに異なる酸化膜5a,5b,5c,5dを形成することができる。この点でも、半導体装置の製造コストを抑制することができる。
【0101】
また、本実施の形態では、1回のイオン注入工程でp型半導体領域7a,7b,7c,7dを形成することができるため、p型半導体領域7aとp型半導体領域7bとp型半導体領域7cとp型半導体領域7dとを別々のイオン注入工程で形成する場合に比べて、半導体装置の製造工程数を抑制でき、また、半導体装置の製造コストを抑制することができる。
【0102】
また、本実施の形態では、領域DK1のp型半導体領域8a(7a)と領域DK2のp型半導体領域8b(7b)と領域DK3のp型半導体領域8c(7c)と領域DK4のp型半導体領域8d(7d)とにより、VLD構造の電界緩和層(p型半導体領域8)を形成している。他の形態として、領域DK1,DK2,DK3,DK4のうち、1つまたは2つを省略することもできる。例えば、領域DK3を省略した場合は、活性領域ARの外周に領域DK1が隣接し、領域DK1の外周に領域DK2が隣接し、域DK2の外周に領域DK4が隣接し、上記マスク部2c、酸化膜5c、p型半導体領域7cおよびp型半導体領域8cは形成されない。
【0103】
また、マスク層2は、複数のマスク部2dの外周側に、更にマスク部2dの幅W4よりも小さな幅を有する複数のマスク部を有することもできる。その場合は、幅W4よりも小さな幅を有するマスク部の下に、酸化膜5dよりも厚い酸化膜5が形成され、p型不純物のイオン注入工程において、酸化膜5dよりも厚い酸化膜5の下に、p型半導体領域7dよりも浅くかつ低不純物濃度のp型半導体領域7を形成することができる。
【0104】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0105】
AE アノード電極
AR 活性領域
CE カソード電極
CP 半導体装置
KD,KD1,KD2,KD3,KD4 領域
OP 開口部
PR 周辺領域
RG1 領域
SD1,SD2,SD3,SD4 側面
1 半導体基板
1a 主面
1b 裏面
1c n型基板領域
2 窒化シリコン膜、マスク層
2a,2b,2c,2d,2e マスク部
3 溝
4 フィールド酸化膜
5,5a,5b,5c,5d 酸化膜
6,7,7a,7b,7c,7d,8,8a,8b,8c,8d p型半導体領域
9 絶縁膜
10 n型半導体領域
図1
図2
図3
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図5
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図10
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図22