(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121515
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/03 20230101AFI20240830BHJP
【FI】
G06Q40/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028660
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】302064762
【氏名又は名称】株式会社日本総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】堀内 直人
【テーマコード(参考)】
5L040
5L055
【Fターム(参考)】
5L040BB15
5L055BB15
(57)【要約】
【課題】メタバース内の資産に基づく融資を好適に行うことができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、メタバースのアバターのアセットに基づく融資を行うための融資処理を実行し、融資に伴い前記アセットに対する制限処理を実行する処理をコンピュータに実行させる。好適には、前記メタバースの運営者宛に、前記アセットの譲渡を制限する要求を出力する。更に好適には、融資に対するデフォルト発生時に、前記運営者宛に、前記アセットの金融機関側への譲渡要求を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタバースのアバターのアセットに基づく融資を行うための融資処理を実行し、
融資に伴い前記アセットに対する制限処理を実行する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記メタバースの運営者宛に、前記アセットの譲渡を制限する要求を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
融資に対するデフォルト発生時に、前記運営者宛に、前記アセットの金融機関側への譲渡要求を出力する
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記アセットが譲渡された場合に、所定の有価価値を金融機関側に支払うスマートコントラクトを設定する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項5】
融資に対するデフォルト発生時に、前記メタバースの運営者宛に、前記アバターに対応する前記メタバースのアカウントの所有権を金融機関側へ移転する要求を出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項6】
メタバースのアバターのアセットに基づく融資を行うための融資処理を実行し、
融資に伴い前記アセットに対する制限処理を実行する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項7】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部が、
メタバースのアバターのアセットに基づく融資を行うための融資処理を実行し、
融資に伴い前記アセットに対する制限処理を実行する
情報処理装置。
【請求項8】
メタバースのアバターのアセットに基づく融資額の試算申込を金融機関側へ出力し、
試算結果に基づく融資条件を表示し、
前記融資条件に基づく融資の申込を金融機関側へ出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メタバースと呼ばれる仮想空間が注目を集めている。メタバース上では、ゲームや対話といった交流のみならず、デジタルコンテンツの売買などの経済活動が発展している。
【0003】
しかし、メタバースのコンテンツに資産価値が発生しているものの、その用途は純粋な売買に限定されており、コンテンツの価値を利用した金融商品を取り扱ってはいない。
【0004】
例えば特許文献1では、現実社会におけるユーザの行動から当該ユーザの与信を評価すると共に、仮想空間における当該ユーザに対応するアバターの行動からユーザの与信を評価し、両者の評価からユーザの与信情報を決定する仮想空間提供システム等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一つの側面では、メタバース内の資産に基づく融資を好適に行うことができるプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの側面では、プログラムは、メタバースのアバターのアセットに基づく融資を行うための融資処理を実行し、融資に伴い前記アセットに対する制限処理を実行する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面では、メタバース内の資産に基づく融資を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】与信管理システムの構成例を示す説明図である。
【
図2】金融機関サーバの構成例を示すブロック図である。
【
図3】ユーザDB、案件DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
【
図4】ユーザ端末の構成例を示すブロック図である。
【
図7】ユーザ端末の表示画面例を示す説明図である。
【
図8】ユーザ端末の表示画面例を示す説明図である。
【
図9】ユーザ端末の表示画面例を示す説明図である。
【
図10】融資申込時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】デフォルト発生時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態2の概要を説明する説明図である。
【
図13】実施の形態2の概要を説明する説明図である。
【
図14】実施の形態2に係る融資申込時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、与信管理システムの構成例を示す説明図である。本実施の形態では、メタバースにおけるアバターのアセット(資産)に基づき与信判定を行う与信管理システムについて説明する。与信管理システムは、金融機関サーバ1、ユーザ端末2、2…、及び運営サーバ3、3…を含む。各装置は、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。
【0011】
なお、本明細書において「アセット」とは、メタバースにおいてアバターが所持する資産を指し、例えばメタバース内のコンテンツ、メタバース上の通貨やポイント、アバター自身、メタバース上の土地や建物などの不動産、金融商品、階級特権、及びこれらのNFT(Non-Fungible Token)などを指す。
【0012】
金融機関サーバ1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能なサーバコンピュータであり、ユーザに対して融資を行う金融機関のサーバコンピュータである。なお、金融機関サーバ1に相当するコンピュータは、パーソナルコンピュータ等であってもよい。後述するように、金融機関サーバ1は、メタバースにおけるアバターのアセットを担保とした融資処理を実行する。
【0013】
ユーザ端末2は、各ユーザが所持する情報処理端末であり、例えばスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等である。ユーザ端末2は、運営サーバ3が提供するメタバース空間にアクセスし、金融機関サーバ1に対して、メタバース内のアセットに基づく融資の申込を行う。
【0014】
運営サーバ3は、メタバースのプラットフォームを提供する運営者のサーバコンピュータである。本実施の形態では複数の運営サーバ3、3、3…と連携しており、各運営サーバ3で提供するメタバースのアセットに基づいて融資を受けることができる。
【0015】
図2は、金融機関サーバ1の構成例を示すブロック図である。金融機関サーバ1は、制御部11、主記憶部12、通信部13、及び補助記憶部14を備える。
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、補助記憶部14に記憶されたプログラムP1を読み出して実行することにより、種々の情報処理、制御処理等を行う。主記憶部12は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の一時記憶領域であり、制御部11が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部13は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。
【0016】
補助記憶部14は、大容量メモリ、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部11が処理を実行するために必要なプログラムP1(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。また、補助記憶部14は、ユーザDB141、案件DB142を記憶している。ユーザDB141は、各ユーザの情報を格納するデータベースである。案件DB142は、ユーザから申し込まれた各融資案件の情報を格納するデータベースである。
【0017】
なお、補助記憶部14は金融機関サーバ1に接続された外部記憶装置であってもよい。また、金融機関サーバ1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであっても良く、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0018】
また、本実施の形態において金融機関サーバ1は上記の構成に限られず、例えば操作入力を受け付ける入力部、画像を表示する表示部等を含んでもよい。また、金融機関サーバ1は、CD(Compact Disk)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等の可搬型記憶媒体1aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体1aからプログラムP1を読み取って実行するようにしても良い。
【0019】
図3は、ユーザDB141、案件DB142のレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
ユーザDB141は、ユーザID列、氏名列、メールアドレス列、アカウント列を含む。ユーザID列は、各ユーザを識別するためのユーザIDを記憶している。氏名列、メールアドレス列、及びアカウント列はそれぞれ、ユーザIDと対応付けて、ユーザの氏名、メールアドレス、及び現実世界と仮想空間(メタバース)上でのユーザのアカウント情報を記憶している。
【0020】
案件DB142は、案件番号列、ユーザ列、アセット列を含む。案件番号列は、各融資案件の案件番号を記憶している。ユーザ列、及びアセット列はそれぞれ、案件番号と対応付けて、融資を受けるユーザのユーザID、及び担保となるアセットの情報を記憶している。
【0021】
図4は、ユーザ端末2の構成例を示すブロック図である。ユーザ端末2は、制御部21、主記憶部22、通信部23、表示部24、入力部25、及び補助記憶部26を備える。
制御部21は、一又は複数のCPU等のプロセッサを有し、補助記憶部26に記憶されたプログラムP2を読み出して実行することにより、種々の情報処理を行う。主記憶部22は、RAM等の一時記憶領域であり、制御部21が演算処理を実行するために必要なデータを一時的に記憶する。通信部23は、通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、外部と情報の送受信を行う。表示部24は、液晶ディスプレイ等の表示画面であり、画像を表示する。入力部25は、タッチパネル等の操作インターフェイスであり、ユーザから操作入力を受け付ける。補助記憶部26は、ハードディスク等の不揮発性記憶領域であり、制御部21が処理を実行するために必要なプログラムP2(プログラム製品)、その他のデータを記憶している。
【0022】
なお、ユーザ端末2は、CD-ROM等の可搬型記憶媒体2aを読み取る読取部を備え、可搬型記憶媒体2aからプログラムP2を読み取って実行するようにしても良い。
【0023】
図5及び
図6は、実施の形態1の概要を示す説明図である。
図7~
図9は、ユーザ端末2の表示画面例を示す説明図である。
図5では、融資申込時における処理フローを概念的に図示している。
図6では、デフォルト発生時における処理フローを概念的に図示している。
図7~
図9では、融資を申し込むために必要な情報を入力する入力画面例を図示している。
図5~
図9に基づき、本実施の形態の概要を説明する。
【0024】
既に述べたように、本実施の形態においてユーザは、メタバースにおけるアバターのアセット(及び現実世界の資産)を担保として融資を受けることができる。
【0025】
例えばユーザはまず、
図7に示す画面を介して、自身とメタバースのアカウントとを紐づける。
図7は、ユーザ情報の登録画面である。ユーザ端末2は当該画面を介して、氏名、メールアドレス等の基本情報のほかに、現実世界でのユーザの識別符号(
図7ではマイナンバー)と、メタバースでのアカウント名との入力を受け付ける。なお、
図7に示すように、ユーザ端末2は、複数のメタバース空間のアカウント名の入力を受け付けてもよい。これにより、ユーザに対して一又は複数のメタバースのアカウントが紐づけられる。
【0026】
図5に移って説明を続ける。次にユーザは、融資の申込を行う。具体的には、ユーザ端末2は金融機関サーバ1に対して、担保とするアセットを指定した融資額の試算申込を送信する。これに対し、金融機関サーバ1は与信判定(融資額の試算)を行い、判定結果をユーザ端末2に回答する。
【0027】
なお、本実施の形態では金融機関サーバ1が自動的に与信判定を行うものとして説明するが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば与信判定は人手で行い、金融機関サーバ1はその与信判定結果をユーザ端末2に出力するのみであってもよい。すなわち、金融機関サーバ1は、アセットに基づく与信判定結果を出力可能であればよく、与信判定自体は人手で行われてもよい。
【0028】
図8は、担保とするアセットを指定する際の入力画面例である。ユーザ端末2は、当該画面を介して、担保とするメタバース内のアセットを入力する。具体的には
図8で図示するように、個々のアセット(アバター、土地など)を担保として登録するほか、メタバースのアカウント自体を担保として登録可能となっている。また、本実施の形態ではメタバース内のアセットだけでなく現実世界の資産(
図8では土地)も担保とすることができる。
【0029】
金融機関サーバ1は、指定されたアセットに基づき与信判定(融資額の算出)を行う。ここで、アセットに基づく与信判定について説明する。本実施の形態において金融機関サーバ1は、2つの基準で与信判定を行う。
【0030】
第1の基準は、メタバースのプラットフォームの価値である。上述の如く、本実施の形態では複数の運営サーバ3、3、3…が存在し、各運営サーバ3がメタバースのプラットフォームを提供する。金融機関サーバ1は、担保となるアセットに対応するメタバースのプラットフォームの価値に基づき、与信判定を行う。具体的には、金融機関サーバ1は、プラットフォームを運営する運営者の信用力(運営会社の企業評価)、及びプラットフォームの経済規模(ユーザ数、商取引数、商取引の平均金額など)に基づいて与信判定を行う。
【0031】
第2の基準は、アセット自体の価値である。具体的には、金融機関サーバ1は、アセット自体の需要のほかに、プラットフォーム間におけるアセットの移動可否に応じて、与信判定を行う。アセットが他のプラットフォームに移動可能である場合、金融機関サーバ1は、移動先のプラットフォームの価値(運営者の信用力、経済規模等)に基づき、与信判定を行う。
【0032】
なお、アセット自体の需要とは、例えば評価者によるアセットの個別評価、オークション形式での融資希望者の募集、NFTの過去移動量、同種のアセットの取引金額及び取引量などに応じて定められる。
【0033】
金融機関サーバ1は、上記の2つの基準で与信判定を行う。ここで、与信判定を行う上で一定の制約条件を設けると好適である。
【0034】
具体的には、金融機関サーバ1は、与信対象とするアセットを、NFT付きのアセットに限定して与信判定を行う。すなわち、金融機関サーバ1は、アセットに対応するNFTをユーザのアバターが所有しているか否かを判定し、NFTを所有していると判定した場合、与信判定を行う。このように、NFT付きのアセットでなければ与信対象とせず、融資を行わない。NFTが付与されたアセットはその移動経路を追跡しやすいため、対象アセットをNFT付きのアセットに限定することで、例えばマネーロンダリング等への対策を好適に行うことができる。
【0035】
上記のようにして金融機関サーバ1は与信判定を行い、融資可能額を試算する。例えば金融機関サーバ1は、上述の基準に従って与信スコア(格付け)を特定し、その与信スコアの高低に応じて融資可能額を決定して、ユーザ端末2にその試算結果を出力する。試算結果の提示を受けたユーザ端末2は、改めて融資申込を金融機関サーバ1に送信する。
【0036】
図9に、融資申込時の画面例を図示する。例えばユーザ端末2は、上記の試算結果に基づき定められる融資条件(借入希望額、借入利率など)をデフォルトで当該画面に表示する。ユーザ端末2は当該画面において、借入希望口座、借入希望通貨、借入希望額などを変更する設定入力を受け付ける。その後、
図9の画面で「次へ」が選択されると、融資申込が金融機関サーバ1に送信される。
【0037】
図5に戻って説明を続ける。融資申込を受け付けた場合、金融機関サーバ1は、担保であるアセットが無断で譲渡等される事態を防ぐため、アセットに対する制限処理を実行する。具体的には、金融機関サーバ1は、アセットの譲渡を制限する要求をメタバースの運営者(運営サーバ3)宛に出力する。
【0038】
アセット譲渡の制限要求を取得した場合、運営サーバ3は、アセットの譲渡を制限(凍結)する。運営サーバ3は、譲渡制限の履行結果を金融機関サーバ1に回答する。当該回答を取得した場合、金融機関サーバ1は、ユーザに対する融資処理を実行する。
【0039】
なお、本実施の形態では運営者宛にアセットの譲渡を制限するよう要求することでアセットの無断譲渡等を防止することとしたが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0040】
例えば金融機関サーバ1は、アセットが譲渡された場合に所定の有価価値を金融機関側に支払うスマートコントラクトをユーザとの間で設定することにより、アセットの無断譲渡等を防止することとしてもよい。所定の有価価値とは、例えばビットコイン(登録商標)等の仮想通貨である。金融機関サーバ1は、当該スマートコントラクトを融資申込時に設定(生成)し、ブロックチェーンネットワークにブロードキャストする。下記のように融資に対するデフォルトが発生した場合、当該スマートコントラクトが履行され、金融機関側に有価価値が支払われる。この場合、金融機関サーバ1は当該スマートコントラクトの履行結果をユーザ宛に通知する。このように、契約によって不正行為の抑制を図ってもよい。
【0041】
金融機関サーバ1は、ユーザによる融資条件の設定内容に応じて、現実空間におけるユーザ本人か、又はメタバース内におけるアバターに融資処理を実行する。具体的には
図9に図示するように、本実施の形態では借入希望通貨として法定通貨(日本円)又は仮想通貨(ビットコイン)を選択可能となっている。法定通貨が選択された場合、金融機関サーバ1は、借入希望口座に借入希望額を入金することで、現実世界におけるユーザに対する融資処理を実行する。一方で、仮想通貨が選択された場合、金融機関サーバ1は、借入希望額分の仮想通貨を付与することで、メタバース内のアバターに対する融資処理を実行する。このように、本実施の形態ではユーザの選択に応じて、メタバース内で直接融資を行う。
【0042】
融資を受けたユーザは、当然のことながら返済を行う。ここで、金融機関は、金銭(法定通貨、仮想通貨等)で返済を受けてもよいが、金銭以外の方法で返済を受けてもよい。
【0043】
例えば金融機関は、メタバース内でのアバターの信用力を用いて、サービス提供により実質的な返済を受けてもよい。サービス提供とは、例えばアバターによる広報活動である。ユーザが融資に対して返済を行う代わりに、アバターがメタバース内で広報活動を行う。例えば金融機関サーバ1は、融資申込時に、アバターの信用力を用いたサービス提供を返済方法の一つの選択肢として提案する。ユーザ端末2が当該サービス提供を返済方法として選択した場合、金融機関サーバ1は、申込されたサービスの資産価値を試算し、受付可否を決定する。金融機関サーバ1が当該サービス提供を返済方法として受け付けた場合、ユーザはサービス提供を実施し、その活動結果に基づいて融資額との精算を行う。
【0044】
このように、金銭以外の方法で返済を受けるようにしてもよい。
【0045】
図6に移って説明を続ける。ユーザにおいてデフォルトが発生し、返済が困難になった場合、本システムは以下の処理を実行する。
【0046】
デフォルトが発生した場合、例えばユーザ端末2は、デフォルトが発生した旨の報告を金融機関サーバ1に送信する。なお、デフォルト発生はユーザからの報告に依らず、別手段(例えば返済期日になっても返済がない旨を検知すること)で知得してもよい。
【0047】
当該報告を取得した場合、金融機関サーバ1は、担保であるアセットを金融機関側に譲渡するようメタバースの運営者(運営サーバ3)に要求する。当該要求に対し、例えば運営サーバ3はユーザに対して事実を確認するなどして、事実検証を行う。事実と認められた場合、運営サーバ3はアセットを金融機関側に譲渡する。アセットが譲渡された場合、金融機関サーバ1は、アセットの差押通知をユーザ端末2に送信する。
【0048】
なお、上記では個々のアセットを差し押さえる(譲渡する)場合について説明したが、本実施の形態はこれに限定されるものではない。例えば金融機関サーバ1は、返済不可能の場合には、メタバースのアカウント自体を差し押さえるようにしてもよい。具体的には、金融機関サーバ1は、メタバースの運営者(運営サーバ3)宛に、アバターに対応するメタバースのアカウントの所有権を金融機関側へ移転するよう要求する。運営サーバ3は事実検証を行い、事実と認められた場合、アカウントの所有権を金融機関側に移転する。これにより、債権回収をより効率的に行うことができる。
【0049】
以上より、本実施の形態によれば、メタバース内のアセットを元に与信を行い、融資を受けることができる。
【0050】
図10は、融資申込時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10に基づき、融資申込時に金融機関サーバ1が実行する処理内容について説明する。
金融機関サーバ1の制御部11は、融資に関する試算申込であって、担保とするアセットを指定した融資額の試算申込をユーザ端末2から受け付ける(ステップS11)。制御部11は、担保として指定されたアセットに対応するNFTをユーザのアバターが所有しているか否かを判定する(ステップS12)。所有していないと判定した場合(S12:NO)、制御部11は、融資不可能である旨の回答をユーザ端末2に出力し(ステップS13)、一連の処理を終了する。
【0051】
NFTを所有していると判定した場合(S12:YES)、制御部11は、担保に指定されたアセットに基づき、与信判定(融資額の試算)を行う(ステップS14)。制御部11は、与信判定結果(試算結果)をユーザ端末2に出力する(ステップS15)。
【0052】
制御部11は、判定結果に基づく融資条件での融資の申込を受け付ける(ステップS16)。融資の申込を受け付けた場合、制御部11は、メタバースの運営者(運営サーバ3)宛に、担保に指定されたアセットの譲渡を制限する要求を出力する(ステップS17)。制御部11は、当該要求に対する運営者側での履行結果を運営サーバ3から取得する(ステップS18)。制御部11は、アセットの譲渡を制限した旨の履行結果を取得した場合、当該アセットを担保とした融資を行うための融資処理を実行し(ステップS19)、一連の処理を終了する。
【0053】
図11は、デフォルト発生時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図11に基づき、デフォルト発生時に金融機関サーバ1が実行する処理内容について説明する。
金融機関サーバ1の制御部11は、デフォルトが発生した旨の報告をユーザ端末2等から取得する(ステップS31)。デフォルト発生の報告を取得した場合、制御部11は、担保としたアセットの譲渡要求をメタバースの運営者(運営サーバ3)宛に出力する(ステップS32)。制御部11は、当該譲渡要求に対する運営者側での履行結果を運営サーバ3から取得する(ステップS33)。制御部11は、アセットを譲渡した旨の履行結果を取得した場合、当該履行結果をユーザ端末2に通知し(ステップS34)、一連の処理を終了する。
【0054】
以上より、本実施の形態1によれば、メタバース内の資産に基づく融資を好適に行うことができる。
【0055】
(実施の形態2)
本実施の形態では、メタバースの空間内から融資の申込を行う形態について述べる。なお、実施の形態1と重複する内容については同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
【0057】
本実施の形態においてユーザ端末2は、
図12に示すように、メタバース空間を表示する場合、各アセットと対応付けて、各アセットの情報をウィンドウに表示する。例えばユーザ端末2は、アセット毎にアセットの説明を表示すると共に、「譲渡」(アセットの売却)、「質入れ」(アセットに基づく融資の申込)などのように、取引メニューを表示する。
【0058】
図12の画面において融資対象とするアセットが選択された場合、ユーザ端末2は、外部のAPI(Application Programming Interface)を呼び出し、当該APIを通じて融資条件に関する申込の入力を受け付ける。その様子を、
図13に図示する。例えばユーザ端末2は、「質入れ」が選択された場合、更に別ウィンドウを追加表示する。当該ウィンドウは、融資条件を設定するための表示欄であり、外部のAPIを呼び出すことで表示される。ユーザ端末2は、当該ウィンドウを介して融資条件(借入希望通貨、借入希望額等)の設定入力を受け付ける。そしてユーザ端末2は、入力された融資条件を金融機関サーバ1に送信し、融資の申込を行う。
【0059】
図14は、実施の形態2に係る融資申込時の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図14に基づき、本実施の形態に係る処理内容について説明する。
ユーザ端末2は、メタバース空間を表示しているものとして説明する。この場合に、金融機関サーバ1の制御部11は、メタバースの空間内において融資対象とするアセットの選択を受け付ける(ステップS201)。アセットの選択を受け付けた場合、制御部11は、所定のAPIを呼び出す(ステップS202)。制御部11は、当該APIを実行することで以下の処理を実行する。
【0060】
制御部11は、選択されたアセットに対応するNFTをユーザのアバターが所有しているか否かを判定する(ステップS303)。NFTを所有していないと判定した場合(S303:NO)、制御部11は、融資不可である旨をユーザ端末2に出力する(ステップS304)。
【0061】
NFTを所有していると判定した場合(S303:YES)、制御部11は、選択されたアセットに基づく与信判定を行う(ステップS305)。制御部11は、与信判定結果をユーザ端末2に出力する(ステップS306)。この場合、ユーザ端末2は融資条件表示用の別ウィンドウを表示し、当該ウィンドウに与信判定結果を表示する。制御部11は、当該ウィンドウを介して融資条件に関する申込の入力を受け付ける(ステップS307)。制御部11は、処理をステップS17に移行する。
【0062】
以上より、本実施の形態2によれば、メタバース空間内で融資の申込を行うこともできる。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0064】
各実施の形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 金融機関サーバ
11 制御部
12 主記憶部
13 通信部
14 補助記憶部
P1 プログラム
141 ユーザDB
142 案件DB
2 ユーザ端末
21 制御部
22 主記憶部
23 通信部
24 表示部
25 入力部
26 補助記憶部
P2 プログラム
3 運営サーバ