(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121526
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20240830BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240830BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/42
H01M50/457
H01M50/489
H01M50/423
H01M50/434
H01M50/426
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028672
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小金丸 愛
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE29
5H021EE32
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH06
(57)【要約】
【課題】低温低圧のウェットヒートプレスによる電極との接着に優れる非水系二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】非水系二次電池用セパレータは、無機粒子及び結着樹脂を含有する多孔質層と、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有し、これら両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%である接着層と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子及び結着樹脂を含有する多孔質層と、
フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有し、これら両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%である接着層と、
を備える、非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
さらに多孔質基材を備え、
前記多孔質基材の片面又は両面に前記多孔質層を備え、
前記多孔質基材と前記多孔質層との積層体の片面又は両面に前記接着層を備える、
請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記接着層が樹脂粒子を含み、
前記樹脂粒子がフェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の少なくとも一方を含む、
請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記接着層に含まれる樹脂粒子全体の平均一次粒径が0.1μm~1.0μmである、請求項3に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記接着層に含まれる前記フェニル基含有アクリル系樹脂と前記ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の質量比が60:40~95:5である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記フェニル基含有アクリル系樹脂がスチレン系単位及びアクリル系単位を有し、
前記スチレン系単位と前記アクリル系単位のモル比が30:70~50:50である、
請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項7】
前記接着層に含まれる樹脂全体のガラス転移温度が58℃~100℃である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項8】
前記非水系二次電池用セパレータの片面あたり、前記接着層の目付が0.05g/m2~1.0g/m2である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項9】
前記多孔質層に含まれる無機粒子全体の平均一次粒径が0.01μm~1.0μmである、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項10】
前記結着樹脂が、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びスチレン-ブタジエン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項11】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、
リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る、
非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、リチウムイオン二次電池を構成する部材同士を接着するための接着剤であって、コアシェル構造を有する粒子状重合体を含む接着剤が開示されている。
【0003】
特許文献2及び特許文献3には、多孔質基材と多孔質層との積層体の片面又は両面に設けられた接着層であって、接着性樹脂粒子が積層体に付着してなる接着層を備えた非水系二次電池用セパレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/005145号
【特許文献2】国際公開第2019/130994号
【特許文献3】国際公開第2020/246497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池の短絡を防ぐ観点から、セパレータには電極に対する接着性が要求される。
電極にセパレータをより強く接着させるために、電池を製造する際、電解液を含浸させたセパレータを電極に重ねて熱プレスすることが行われている(「ウェットヒートプレス」という。)。
電池が大型化されるとウェットヒートプレスの熱プレス機器が大掛かりになることから、比較的低温低圧のウェットヒートプレスであっても電極との接着に優れるセパレータの開発が望まれている。
【0006】
本開示は、上記状況のもとになされた。
本開示は、低温低圧のウェットヒートプレスによる電極との接着に優れる非水系二次電池用セパレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
無機粒子及び結着樹脂を含有する多孔質層と、
フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有し、これら両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%である接着層と、
を備える、非水系二次電池用セパレータ。
<2>
さらに多孔質基材を備え、
前記多孔質基材の片面又は両面に前記多孔質層を備え、
前記多孔質基材と前記多孔質層との積層体の片面又は両面に前記接着層を備える、
<1>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<3>
前記接着層が樹脂粒子を含み、
前記樹脂粒子がフェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の少なくとも一方を含む、
<1>又は<2>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<4>
前記接着層に含まれる樹脂粒子全体の平均一次粒径が0.1μm~1.0μmである、<3>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<5>
前記接着層に含まれる前記フェニル基含有アクリル系樹脂と前記ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の質量比が60:40~95:5である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<6>
前記フェニル基含有アクリル系樹脂がスチレン系単位及びアクリル系単位を有し、
前記スチレン系単位と前記アクリル系単位のモル比が30:70~50:50である、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<7>
前記接着層に含まれる樹脂全体のガラス転移温度が58℃~100℃である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<8>
前記非水系二次電池用セパレータの片面あたり、前記接着層の目付が0.05g/m2~1.0g/m2である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<9>
前記多孔質層に含まれる無機粒子全体の平均一次粒径が0.01μm~1.0μmである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<10>
前記結着樹脂が、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びスチレン-ブタジエン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータ。
<11>
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された<1>~<10>のいずれか1つに記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、
リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る、
非水系二次電池。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低温低圧のウェットヒートプレスによる電極との接着に優れる非水系二次電池用セパレータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図2】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図3】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図4】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図5】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図6】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【
図7】本開示のセパレータの一例の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0011】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0013】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0014】
本開示において、MD(Machine Direction)とは、長尺状に製造されるセパレータにおいて長尺方向を意味し、TD(Transverse Direction)とは、セパレータの面方向においてMDに直交する方向を意味する。本開示において、TDを「幅方向」ともいう。
【0015】
本開示において、セパレータを構成する各層の積層関係について「上」及び「下」で表現する場合、多孔質基材に対してより近い層について「下」といい、多孔質基材に対してより遠い層について「上」という。
【0016】
本開示において、多孔質層の空孔を除いた体積を「固形分体積」という。
【0017】
本開示において、セパレータに電解液を含浸させて熱プレス処理を行うことを「ウェットヒートプレス」といい、セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス処理を行うことを「ドライヒートプレス」という。
【0018】
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル」及び「メタクリル」のいずれでもよいことを意味する。
【0019】
本開示において、重合体又は樹脂の「単量体単位」とは、重合体又は樹脂の構成単位であって、単量体が重合してなる構成単位を意味する。
本開示において、アクリル系単量体が重合してなる構成単位を「アクリル系単位」といい、スチレン系単量体が重合してなる構成単位を「スチレン系単位」といい、ブタジエンが重合してなる構成単位を「ブタジエン単位」といい、アクリロニトリルが重合してなる構成単位を「アクリロニトリル単位」という。
【0020】
<非水系二次電池用セパレータ>
本開示の非水系二次電池用セパレータ(本開示において単に「セパレータ」ともいう。)は、無機粒子及び結着樹脂を含有する多孔質層と、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有し、これら両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%である接着層と、を備える。
【0021】
フェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂は、2種類の樹脂が別個の分子として接着層に含まれていてもよく、2種類の樹脂がつながった状態で接着層に含まれていてもよい。
【0022】
本開示のセパレータは、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有し、これら両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%である接着層を備えることにより、低温低圧のウェットヒートプレスによる電極との接着に優れる。その機序は、下記のように推測される。
【0023】
フェニル基含有アクリル系樹脂は、熱印加によって電極と接着しやすい樹脂である。他方、ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂は、電解液との親和性に優れる樹脂である。そして、両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%であることによって、両樹脂が分離せず混じり合うことができる推測とされる。両樹脂が混じり合って接着層に含まれることで、低温低圧のウェットヒートプレスであっても接着層が電極によく接着すると推測される。
【0024】
フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%未満であると、電解液に対する接着層の親和性が低い。接着層に電解液を十分に含浸させる観点から、ブタジエン単位の量は3モル%以上であり、3.2モル%以上が好ましく、3.5モル%以上がより好ましい。
フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が50モル%超であると、フェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂が混じり合いにくい。両樹脂をよく混合させる観点から、ブタジエン単位の量は50モル%以下であり、40モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましい。
【0025】
フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂に含まれる単量体単位の種類及びモル比は、核磁気共鳴法 (Nuclear magnetic resonance、NMR) によって特定する。具体的には、下記の測定を行う。
【0026】
セパレータから剥がした接着層又は接着層の形成に用いる樹脂材料を試料にする。接着層の形成に用いる樹脂材料が樹脂粒子分散液である場合は、樹脂粒子分散液を風乾して試料とする。
試料を重クロロホルムで膨潤させた後、NMR装置(日本電子社製JNM-ECA600)及び半固体用プローブ(日本電子社製FGMASプローブ)を用いて室温で、600MHzにて1H-NMRスペクトル(MAS回転数6kHz、観測幅15ppm、ポイント数32k、パルス繰り返し待ち時間4秒)を測定し、150MHzにて13C-NMRスペクトルを測定する。13C-NMRスペクトルは定量モード(逆ゲート付きデカップリング法、MAS回転数6kHz、観測幅250ppm、ポイント数32k、パルス繰り返し待ち時間12秒)で約33000回積算する。
【0027】
上記測定において、アクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位がフェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂のどちらに含まれているかは問わない。例えば、ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂がスチレン系単位を有する場合、当該スチレン系単位も定量する。
上記測定において、アクリロニトリル単位をアクリル系単位に含めない。すなわち、アクリロニトリル単位をアクリル系単位として重複して定量しない。
上記測定において、スチレン系単位が検出されないこともありうる。例えば、フェニル基含有アクリル系樹脂が(メタ)アクリル酸フェニル単位を有しスチレン系単位を有しない樹脂であり、且つ、ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂がスチレン系単位を有しない樹脂である場合、スチレン系単位は検出されない。
【0028】
本開示のセパレータは、多孔質層及び接着層のみを備える形態でもよく、さらに多孔質基材を備える形態でもよい。セパレータの機械的強度を上げる観点、セパレータにシャットダウン機能を付与する観点などから、本開示のセパレータは多孔質基材を備えることが好ましい。多孔質基材は、無機粒子を含有しないシートであり、無機粒子を含有しない点で多孔質層と区別される。
【0029】
本開示のセパレータが多孔質基材を備える場合、当該セパレータは、多孔質基材の片面又は両面に多孔質層を備え、多孔質基材と多孔質層との積層体の片面又は両面に接着層を備える。
【0030】
本開示のセパレータにおいて接着層は、イオン透過性の観点から、樹脂粒子を含む接着層であることが好ましい。樹脂粒子は、樹脂粒子の接着性によって多孔質層又は多孔質基材に付着していてもよく、結着樹脂と共に接着層に含まれていてもよい。すなわち接着層は、樹脂粒子が多孔質層又は多孔質基材に付着してなる接着層でもよく、樹脂粒子及び結着樹脂を含む接着層でもよい。
【0031】
接着層が樹脂粒子を含む場合、樹脂粒子はフェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。すなわち、樹脂粒子は、フェニル基含有アクリル系樹脂粒子;ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂粒子;フェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂とを含有する樹脂粒子;これら樹脂粒子の2種又は3種の組み合わせ;のいずれでもよい。
【0032】
本開示のセパレータの層構成を、図面を参照して説明する。
【0033】
図1~
図7はそれぞれ、本開示のセパレータの実施形態例の模式的断面図である。
図1~
図7は、主に層の積層順を説明するための模式的断面図であって、各層の構造は捨象又は単純化している。
図1~
図7において、同様の機能を有する層には同じ符号を付して説明する。
【0034】
図1に示すセパレータ101は、多孔質層30の片面に接着層50が配置されたセパレータである。
【0035】
図2に示すセパレータ102は、多孔質層30の両面に接着層50が配置されたセパレータである。一方の接着層50と他方の接着層50とは、成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。
【0036】
図3に示すセパレータ103は、多孔質基材20の片面に多孔質層30が配置され、多孔質基材20と1つの多孔質層30との積層体40の片面に接着層50が配置されたセパレータである。セパレータ103において、接着層50は、多孔質層30の面上に配置されている。
【0037】
図4に示すセパレータ104は、多孔質基材20の片面に多孔質層30が配置され、多孔質基材20と1つの多孔質層30との積層体40の片面に接着層50が配置されたセパレータである。セパレータ104において、接着層50は、多孔質基材20の面上に配置されている。
【0038】
図5に示すセパレータ105は、多孔質基材20の片面に多孔質層30が配置され、多孔質基材20と1つの多孔質層30との積層体40の両面に接着層50が配置されたセパレータである。一方の接着層50と他方の接着層50とは、成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。
【0039】
図6に示すセパレータ106は、多孔質基材20の両面に多孔質層30が配置され、多孔質基材20と2つの多孔質層30との積層体40の片面に接着層50が配置されたセパレータである。一方の多孔質層30と他方の多孔質層30とは、成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。
【0040】
図7に示すセパレータ107は、多孔質基材20の両面に多孔質層30が配置され、多孔質基材20と2つの多孔質層30との積層体40の両面に接着層50が配置されたセパレータである。一方の多孔質層30と他方の多孔質層30とは、成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。一方の接着層50と他方の接着層50とは、成分及び/又は組成において同じでもよく異なっていてもよい。
【0041】
セパレータが対向する両電極に接着する観点からは、セパレータの2つの表面とも接着層50であることが好ましい。本観点からは、セパレータ102、セパレータ105及びセパレータ107が好ましい。
【0042】
セパレータ103~107において、多孔質層30は、多孔質基材20の面上に配置された層である。多孔質層30は、多孔質基材20の片面のみにあってもよく、多孔質基材20の両面にあってもよい。多孔質層30が多孔質基材20の両面にあると、セパレータの耐熱性がより優れ、電池の安全性をより高めることができる。また、セパレータにカールが発生しにくく、電池製造時のハンドリング性に優れる。多孔質層30が多孔質基材20の片面のみにあると、セパレータのイオン透過性がより優れる。また、セパレータ全体の厚さを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
【0043】
接着層50は、多孔質基材20又は多孔質層30の面上に配置された層であり、セパレータの最外層として存在する。
【0044】
接着層50は、イオン透過性の観点から、樹脂粒子52を含む層であることが好ましい。接着層50は、電極への接着性により優れる観点から、樹脂粒子52が多孔質基材20又は多孔質層30の面上に互いに隣接して多数並んだ構造を有していることが好ましく、電池のエネルギー密度を高める観点から、樹脂粒子52が厚さ方向に1層の構造を有していることが好ましい。ただし、接着層50の構造は上記構造に限定されず、樹脂粒子52が多孔質基材20又は多孔質層30の面上に多数点在した構造を有していてもよいし、樹脂粒子52が厚さ方向に複数層重なった構造を有していてもよい。
【0045】
電極と接着した状態のセパレータにおいて、接着層50に含まれる樹脂粒子52は、セパレータを電極と接着させるための熱印加によって一部又は全部が溶融して隣接する樹脂粒子52どうしがつながり、一部又は全部が粒子形状を保持していない場合がある。
【0046】
以下、本開示のセパレータが有する多孔質基材、多孔質層及び接着層の詳細を説明する。
【0047】
[多孔質基材]
本開示において多孔質基材とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シート;これら微多孔膜又は多孔性シートに他の多孔性の層を1層以上積層した複合多孔質シート;などが挙げられる。本開示においては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。微多孔膜とは、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった膜を意味する。
【0048】
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましい。
【0049】
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。シャットダウン機能とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられ、中でもポリオレフィンが好ましい。
【0050】
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(本開示において「ポリオレフィン微多孔膜」という。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、この中から十分な力学特性及びイオン透過性を有するものを選択することが好ましい。
【0051】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含む微多孔膜が好ましく、ポリエチレンの含有量としては、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して95質量%以上が好ましい。
【0052】
ポリオレフィン微多孔膜は、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜が好ましい。
【0053】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能と、高温に曝されたときに容易に破膜しない耐熱性とを備える観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜が好ましい。ポリエチレン及びポリプロピレンを含むポリオレフィン微多孔膜としては、ポリエチレンとポリプロピレンが1つの層において混在している微多孔膜が挙げられる。該微多孔膜においては、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点から、95質量%以上のポリエチレンと5質量%以下のポリプロピレンとを含むことが好ましい。また、シャットダウン機能と耐熱性の両立という観点からは、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む構造のポリオレフィン微多孔膜も好ましい。
【0054】
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンとしては、重量平均分子量(Mw)が10万~500万のポリオレフィンが好ましい。ポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性が良好であるし、微多孔膜の成形がしやすい。
【0055】
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィン樹脂をT-ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法:流動パラフィンなどの可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィン樹脂をT-ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し熱処理をして微多孔膜とする方法;などが挙げられる。
【0056】
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる、不織布、紙等の多孔性シートが挙げられる。
【0057】
本開示において耐熱性樹脂とは、融点が200℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上の樹脂を指す。つまり、本開示における耐熱性樹脂とは、200℃未満の温度領域で溶融及び分解を起こさない樹脂である。
【0058】
複合多孔質シートとしては、微多孔膜や繊維状物からなる多孔性シートに、機能層を積層したシートが挙げられる。このような複合多孔質シートは、機能層によってさらなる機能付加が可能となる観点から好ましい。機能層としては、例えば耐熱性を付与するという観点からは、耐熱性樹脂からなる多孔性の層が挙げられる。耐熱性樹脂としては、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテルイミドから選ばれる1種又は2種以上の耐熱性樹脂が挙げられる。複合化の手法としては、微多孔膜や多孔性シートに機能層を塗工する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを接着剤で接合する方法、微多孔膜や多孔性シートと機能層とを熱圧着する方法等が挙げられる。
【0059】
多孔質基材の表面には、多孔質層を形成するための塗工液との濡れ性を向上させる目的で、多孔質基材の性質を損なわない範囲で、各種の表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0060】
-多孔質基材の特性-
多孔質基材の厚さは、電池のエネルギー密度を高める観点から、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、7μm以上が更に好ましい。
【0061】
多孔質基材の厚さは、接触式の厚み計にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求める。
【0062】
多孔質基材の透気度は、電池の短絡を抑制する観点から、30秒/100mL以上が好ましく、50秒/100mL以上がより好ましく、70秒/100mL以上が更に好ましい。
多孔質基材の透気度は、イオン透過性の観点と、高温にさらされたときに多孔質基材と多孔質層又は接着層との境界において多孔質構造が閉塞することを抑制する観点とから、200秒/100mL以下が好ましく、180秒/100mL以下がより好ましく、160秒/100mL以下が更に好ましい。
【0063】
多孔質基材の透気度(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に従い、デジタル型王研式透気度試験機を用いて測定する。
【0064】
[多孔質層]
多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層である。
【0065】
本開示のセパレータが多孔質基材を備える場合、多孔質層は、多孔質基材の片面のみにあってもよく、多孔質基材の両面にあってもよい。多孔質層が多孔質基材の両面にあると、セパレータにカールが発生しにくく、電池製造時のハンドリング性に優れる。多孔質層が多孔質基材の片面のみにあると、セパレータのイオン透過性がより優れる。また、セパレータ全体の厚さを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
【0066】
本開示のセパレータが備える多孔質層は、少なくとも無機粒子と結着樹脂とを含有する。
【0067】
-無機粒子-
無機粒子としては、例えば、金属水酸化物粒子、金属酸化物粒子、金属硫酸塩粒子、金属炭酸塩粒子、金属窒化物粒子、粘土鉱物粒子が挙げられる。
【0068】
金属水酸化物粒子を構成する金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等が挙げられ、水酸化マグネシウムが好ましい。
金属酸化物粒子を構成する金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、べーマイト(アルミナ1水和物)、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、酸化バリウム等が挙げられ、アルミナが好ましい。
金属硫酸塩粒子を構成する金属硫酸塩としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、硫酸バリウムが好ましい。
金属炭酸塩粒子を構成する金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等が挙げられる。
金属窒化物粒子を構成する金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
粘土鉱物粒子としては、ケイ酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
【0069】
無機粒子は、シランカップリング剤等により表面修飾された無機粒子でもよい。
【0070】
無機粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0071】
無機粒子としては、電解液に対する安定性及び電気化学的な安定性の観点から、金属水酸化物粒子、金属酸化物粒子及び金属硫酸塩粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0072】
無機粒子の粒子形状に限定はなく、球形、楕円形、板状、針状、不定形のいずれでもよい。多孔質層に含まれる無機粒子は、電池の短絡抑制の観点から、板状の粒子又は凝集していない一次粒子であることが好ましい。
【0073】
多孔質層に含まれる無機粒子全体の平均一次粒径は、多孔質層のイオン透過性の観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが更に好ましい。
多孔質層に含まれる無機粒子全体の平均一次粒径は、多孔質層と多孔質基材又は接着層との層間剥離を抑制し、電極に対するセパレータの接着を維持する観点から、1.0μm以下であることが好ましく、0.9μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることが更に好ましい。
【0074】
無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。SEM観察に供する試料は、多孔質層を形成する材料である無機粒子、又は、多孔質層から取り出した無機粒子である。多孔質層から無機粒子を取り出す方法に制限はない。当該方法は、例えば、セパレータから剥がした多孔質層を、結着樹脂を溶解する有機溶剤に浸漬して有機溶剤で結着樹脂を溶解させ無機粒子を取り出す方法;セパレータから剥がした多孔質層を800℃程度に加熱して結着樹脂を消失させ無機粒子を取り出す方法;などである。
【0075】
無機粒子の含有量は、多孔質層の耐熱性及びイオン透過性、多孔質層の多孔質基材への接着性などをバランスよく実現する観点から、多孔質層の全質量に対して、60質量%~99質量%が好ましく、65質量%~98質量%がより好ましく、68質量%~96質量%が更に好ましい。
【0076】
多孔質層が多孔質基材の両面にある場合、一方の多孔質層に含まれる無機粒子の種類又は量と、他方の多孔質層に含まれる無機粒子の種類又は量とは、同じでもよく異なっていてもよい。
【0077】
-有機粒子-
多孔質層は、有機粒子を含有していてもよい。有機粒子としては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋ポリシリコーン、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体架橋物、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物等の架橋高分子からなる粒子;ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアセタール等の耐熱性高分子からなる粒子;などが挙げられる。
有機粒子を構成する樹脂は、上記の例示材料の、混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)又は架橋体であってもよい。
【0078】
有機粒子は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
-結着樹脂-
多孔質層に含まれる結着樹脂は、多孔質層に含まれる無機粒子どうしを結着させる作用のほか、多孔質層を多孔質基材に接着させる作用、多孔質層を電極に接着させる作用、多孔質層の耐熱性を向上させる作用などを有する。
【0080】
多孔質層が多孔質基材の両面にある場合、一方の多孔質層に含まれる結着樹脂の種類又は量と、他方の多孔質層に含まれる結着樹脂の種類又は量とは、同じでもよく異なっていてもよい。
【0081】
結着樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)、ポリスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0082】
結着樹脂としては、多孔質層と接着層の層間剥離を抑制する観点から、接着層との親和性に優れる樹脂が好ましく、具体的には、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂及びスチレン-ブタジエン系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0083】
結着樹脂としては、多孔質層の耐熱性の観点から、ポリアミド系樹脂が好ましい。ポリアミド系樹脂としては、例えば、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリ-N-ビニルアセトアミド、ポリアクリルアミド、共重合ポリエーテルポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミドが挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
ポリアミド系樹脂の中でも、耐久性の観点から、全芳香族ポリアミドが好ましい。全芳香族ポリアミドとは、主鎖がベンゼン環とアミド結合のみから構成されているポリアミドを意味する。ただし、全芳香族ポリアミドには、少量の脂肪族単量体が共重合されていてもよい。全芳香族ポリアミドは、アラミドとも呼ばれる。
【0085】
全芳香族ポリアミドは、メタ型でもパラ型でもよい。全芳香族ポリアミドの中でも、多孔質層を形成しやすい観点および電極反応において耐酸化還元性に優れる観点から、メタ型全芳香族ポリアミド(別名メタ型アラミド)が好ましい。全芳香族ポリアミドは、具体的には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド又はポリパラフェニレンテレフタルアミドが好ましく、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがより好ましい。
【0086】
多孔質層が全芳香族ポリアミドを含む場合、全芳香族ポリアミドの含有量は、多孔質層に含まれる全樹脂の合計量に対して、85質量%~100質量%が好ましく、90質量%~100質量%がより好ましく、95質量%~99質量%が更に好ましい。
【0087】
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル系単量体の単独重合体又は共重合体;アクリル系単量体とスチレン系単量体の共重合体;が挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0088】
アクリル系樹脂のアクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部位のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましい。アクリル系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0089】
アクリル系樹脂のスチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン;2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル置換スチレン;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン;4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0090】
フッ素系樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が挙げられる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、例えば、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン);フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、トリクロロエチレン等の含ハロゲン単量体との共重合体;フッ化ビニリデンと、含ハロゲン単量体以外のその他の単量体との共重合体;フッ化ビニリデンと、含ハロゲン単量体と、含ハロゲン単量体以外のその他の単量体との共重合体;これらの混合物;が挙げられる。これら樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
スチレン-ブタジエン系樹脂は、スチレン系単量体とブタジエンとの共重合体である。スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン;2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル置換スチレン;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン;4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
スチレン-ブタジエン系樹脂には、少量のアクリル系単量体が共重合されていてもよい。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部位のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましい。アクリル系単量体の具体例として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。アクリル系単量体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
結着樹脂の含有量は、多孔質層の耐熱性及びイオン透過性、多孔質層の多孔質基材への接着性などをバランスよく実現する観点から、多孔質層の全質量に対して、1質量%~40質量%が好ましく、2質量%~35質量%がより好ましく、4質量%~32質量%が更に好ましい。
【0094】
-その他の成分-
多孔質層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、多孔質層を形成するための塗工液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、多孔質層を形成するための塗工液に、例えば、多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0095】
-多孔質層の特性-
多孔質層の1層あたりの厚さは、耐熱性の観点から、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、1.5μm以上が更に好ましく、イオン透過性及び電池のエネルギー密度の観点から、5.0μm以下が好ましく、4.0μm以下がより好ましく、3.5μm以下が更に好ましい。
【0096】
多孔質層の厚さは、多孔質層が多孔質基材の両面にある場合、両面の合計として、1.0μm以上が好ましく、2.0μm以上がより好ましく、2.5μm以上が更に好ましく、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、6.0μm以下が更に好ましい。
【0097】
多孔質層の厚さは、セパレータから接着層を除去した平膜の厚さから、多孔質基材の厚さを減算した値である。セパレータから接着層を剥離した平膜の厚さは、接触式の厚み計にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求める。
【0098】
[接着層]
接着層は、多孔質層又は多孔質基材の面上に配置された層であり、セパレータの最外層として存在する。接着層は、多数の隙間又は微細孔を有し、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層である。
【0099】
接着層は、イオン透過性の観点から、樹脂粒子を含む接着層であることが好ましい。樹脂粒子を含む接着層は、樹脂粒子どうしの間に隙間が存在することによってイオン透過性に優れる。樹脂粒子は、電解液中で形態を保ち、また、電気化学的に安定であることが好ましい。
【0100】
樹脂粒子は、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の少なくとも一方を含むことが好ましい。すなわち、樹脂粒子は、フェニル基含有アクリル系樹脂粒子;ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂粒子;フェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂とを含有する樹脂粒子;これら樹脂粒子の2種又は3種の組み合わせ;のいずれでもよい。
【0101】
接着層が樹脂粒子を含む場合、接着層はさらに、粒状ではない樹脂を含んでいてもよい。当該樹脂は、例えば、樹脂粒子どうしの間の結着樹脂、樹脂粒子と多孔質層又は多孔質基材との間の結着樹脂として機能する。当該樹脂としては、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の少なくとも一方であることが好ましい。
【0102】
接着層が樹脂粒子を含む場合、接着層に含まれる樹脂粒子全体の平均一次粒径は、接着層のイオン透過性の観点から、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.3μm以上が更に好ましい。
接着層に含まれる樹脂粒子全体の平均一次粒径は、樹脂粒子が脱落しにくい観点から、1.0μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましく、0.8μm以下が更に好ましい。
【0103】
樹脂粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ樹脂粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。SEM観察に供する試料は、接着層を形成する材料である樹脂粒子、又は、接着層から取り出した樹脂粒子である。
【0104】
接着層は、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂を含有する。接着層に含まれるフェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂とは、2種類の樹脂が別個の分子でもよく、2種類の樹脂がつながった分子でもよく、これらの混合物でもよい。
【0105】
接着層に含まれるフェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂は、両樹脂に含まれるアクリル系単位、スチレン系単位、ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位の総量に占めるブタジエン単位の量が3モル%~50モル%であり、3.2モル%~40モル%であることが好ましく、3.5モル%~30モル%であることがより好ましい。
【0106】
接着層に含まれるフェニル基含有アクリル系樹脂とブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の質量比(フェニル基含有アクリル系樹脂:ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂)は、接着層がウェットヒートプレスによって電極と接着しやすい観点から、60:40~95:5が好ましく、55:45~92:8がより好ましく、51:49~90:10が更に好ましい。
【0107】
-フェニル基含有アクリル系樹脂-
フェニル基含有アクリル系樹脂にフェニル基を与える重合成分は制限されない。フェニル基を与える重合成分として、例えば、(メタ)アクリル酸フェニル、スチレン系単量体が挙げられる。
【0108】
フェニル基含有アクリル系樹脂は、当該樹脂がウェットヒートプレスによって電極と接着しやすい観点から、スチレン系単位を有することが好ましい。つまり、フェニル基含有アクリル系樹脂は、少なくともアクリル系単量体とスチレン系単量体とを重合成分に含むことが好ましい。
【0109】
フェニル基含有アクリル系樹脂がアクリル系単量体とスチレン系単量体とを重合成分に含む場合、これら両単量体の、ランダム共重合体でもよく、交互共重合体でもよく、ブロック共重合体でもよく、グラフト共重合体でもよい。例えば、フェニル基含有アクリル系樹脂がアクリル系単量体とスチレン系単量体とのブロック共重合体又はグラフト共重合体であり、フェニル基含有アクリル系樹脂粒子のコアにアクリル系単位が配置され、シェルにスチレン系単位が配置されていてもよい。
【0110】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェニル等が挙げられる。
【0112】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部位のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましい。
【0113】
アクリル系単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。これらアクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン;2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル置換スチレン;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン;4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
スチレン系単量体としては、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0116】
フェニル基含有アクリル系樹脂は、当該樹脂がウェットヒートプレスによって電極と接着しやすい観点から、スチレン系単位及びアクリル系単位を有し、両単位のモル比(スチレン系単位:アクリル系単位)が、30:70~50:50であることが好ましく、35:65~45:55であることがより好ましく、37:63~43:57であることが更に好ましい。当該モル比は、核磁気共鳴法 (Nuclear magnetic resonance、NMR) によって求める。NMRの詳細は先述のとおりである。
【0117】
フェニル基含有アクリル系樹脂は、アクリル系単量体及びスチレン系単量体以外の単量体を重合成分に含んでいてもよい。当該単量体としては、例えば、酸基含有単量体が挙げられる。酸基含有単量体として、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシ基を有する単量体;ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のリン酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する単量体;などが挙げられる。酸基含有単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
フェニル基含有アクリル系樹脂は、架橋性単量体を重合成分に含んでいてもよい。架橋性単量体として、2個以上の重合性基を有する多官能単量体が挙げられる。多官能単量体として、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。多官能単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0119】
-ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂-
ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂は、ブタジエン単位とアクリロニトリル単位のみで構成される樹脂でもよく、ブタジエン単位とアクリロニトリル単位とそれ以外の単量体単位とで構成される樹脂でもよい。つまり、ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂は、ブタジエンとアクリロニトリルの二元共重合体でもよく、ブタジエンとアクリロニトリルとそれ以外の単量体の共重合体でもよい。それ以外の単量体としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体が挙げられる。
【0120】
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン;2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等のアルキル置換スチレン;2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン;4-フルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン;などが挙げられる。スチレン系単量体としては、スチレン及びα-メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。スチレン系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられる。アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルのエステル部位のアルキル基は、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素数1~8のアルキル基であることがより好ましい。アクリル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
ブタジエン-アクリロニトリル系樹脂に含まれるブタジエン単位とアクリロニトリル単位のモル比(ブタジエン単位:アクリロニトリル単位)は、フェニル基含有アクリル系樹脂との親和性に優れる観点から、60:40~1:99が好ましく、50:50~10:90がより好ましい。当該モル比は、核磁気共鳴法 (Nuclear magnetic resonance、NMR) によって求める。NMRの詳細は先述のとおりである。
【0123】
-その他の樹脂-
接着層は、フェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系ゴム、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)、又はこれらの2種以上の混合物が挙げられる。これらの樹脂は、樹脂粒子の形態で含まれていてもよく、樹脂粒子の結着樹脂として含まれていてもよい。
【0124】
接着層の全樹脂に占めるその他の樹脂の質量割合は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましく、実質的に含まれていないことが特に好ましい。
接着層の全樹脂に占めるフェニル基含有アクリル系樹脂及びブタジエン-アクリロニトリル系樹脂の合計の質量割合は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0125】
接着層に含まれる樹脂全体のガラス転移温度は、詳細な機序は不明であるが電極への接着性に優れる観点から、58℃以上であることが好ましく、58.5℃以上であることがより好ましく、59℃以上であることが更に好ましい。
接着層に含まれる樹脂全体のガラス転移温度の上限は、制限されるものではないが、100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、94℃以下であることが更に好ましい。
【0126】
樹脂のガラス転移温度は、FOX式を指針にして、重合成分である単量体の種類及び共重合比を調整することにより制御できる。
【0127】
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry、DSC)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。DSC曲線において、低温側のベースラインと階段状変化部分の曲線の接線との交点を交点(1)とし、高温側のベースラインと階段状変化部分の曲線の接線との交点を交点(2)としたときの、交点(1)と交点(2)の中央の温度をガラス転移温度とする。
【0128】
-その他の成分-
接着層は、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などの添加剤を含んでいてもよい。分散剤は、例えば、接着層を形成するための樹脂粒子分散液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、pH調整剤は、例えば、接着層を形成するための樹脂粒子分散液に、多孔質層又は多孔質基材とのなじみをよくする目的、樹脂粒子分散液へのエア噛み込みを抑制する目的、又はpH調整の目的で添加される。
【0129】
-接着層の特性-
接着層の目付(単位面積当たりの質量)は、電極への接着性の観点から、セパレータの片面あたり、0.05g/m2以上が好ましく、0.07g/m2以上がより好ましく、0.1g/m2以上が更に好ましい。
接着層の目付は、イオン透過性の観点から、セパレータの片面あたり、1.0g/m2以下が好ましく、0.8g/m2以下がより好ましく、0.6g/m2以下が更に好ましい。
【0130】
接着層の目付は、接着層がセパレータの両面にある場合、両面の合計として、0.1g/m2~2.0g/m2が好ましく、0.14g/m2~1.6g/m2がより好ましく、0.2g/m2~1.2g/m2が更に好ましい。
【0131】
接着層の目付は、セパレータを20cm×20cmに切り出し、接着層に該当する層部分の質量を測定し、質量を面積で除算し、両面合計を求める。接着層がセパレータの両面に等量形成されている場合、両面合計の1/2を片面あたりの目付(g/m2)とする。
【0132】
[セパレータの特性]
セパレータの厚さは、セパレータの機械的強度の観点から、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、9μm以上が更に好ましく、電池のエネルギー密度の観点から、22μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、18μm以下が更に好ましい。
【0133】
セパレータの厚さは、接触式の厚み計にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求める。
【0134】
セパレータの透気度は、電池の短絡を抑制する観点から、60秒/100mL以上が好ましく、70秒/100mL以上がより好ましく、80秒/100mL以上が更に好ましい。
セパレータの透気度は、イオン透過性の観点から、260秒/100mL以下が好ましく、250秒/100mL以下がより好ましく、240秒/100mL以下が更に好ましい。
【0135】
セパレータの透気度(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に従い、デジタル型王研式透気度試験機を用いて測定する。
【0136】
[セパレータの製造方法]
本開示のセパレータは、例えば、下記の製造方法A又は製造方法Bによって製造される。製造方法A及び製造方法Bは、多孔質基材を備えるセパレータの製造方法である。製造方法A及び製造方法Bにおける多孔質基材を剥離シートに置き換え、剥離シートを適切な時期に剥離すれば、多孔質層と接着層のみを備えるセパレータが製造可能である。
【0137】
製造方法A及び製造方法Bにおいて、多孔質層は湿式塗工法により多孔質基材上に形成する。本開示において、湿式塗工法とは、塗工層を凝固液中で固化させる方法であり、乾式塗工法とは、塗工層を乾燥させて塗工層を固化させる方法である。
【0138】
製造方法A(非連続的な製造方法):ロールから繰り出された多孔質基材上に多孔質層を形成して、多孔質基材と多孔質層との積層体を得たのち、一旦、積層体を別のロールに巻き取る。次いで、ロールから繰り出された積層体上に接着層を形成してセパレータを得て、出来上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0139】
製造方法B(連続的な製造方法):ロールから繰り出された多孔質基材上に、多孔質層と接着層とを連続的に又は同時に形成し、出来上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0140】
製造方法Bは、下記の形態B-1~B-4のいずれでもよい。
【0141】
形態B-1:多孔質基材上に多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ水洗及び乾燥を行い、次いで、樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0142】
形態B-2:多孔質基材上に多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ水洗を行い、次いで、樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0143】
形態B-3:多孔質基材上に多孔質層形成用塗工液及び樹脂粒子分散液を同時に二層塗工し、凝固液に浸漬して前者の塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、水洗及び乾燥を行う。
【0144】
形態B-4:多孔質基材上に多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、樹脂粒子を含む水浴を搬送することによって水洗及び樹脂粒子の付着を行い、水浴から引き揚げ乾燥を行う。
【0145】
以下に、形態B-1の製造方法Bを例に挙げて、製造方法に含まれる工程の詳細を説明する。
【0146】
形態B-1の製造方法Bは、多孔質基材の少なくとも一方の面に多孔質層を湿式塗工法によって形成して、多孔質基材と多孔質層との積層体を得て、次いで、積層体の少なくとも一方の面に接着層を乾式塗工法によって形成する。形態B-1の製造方法Bは、下記の工程(1)~(7)を含み、工程(1)~(7)を順次行う。
【0147】
工程(1):多孔質層形成用塗工液の作製
多孔質層形成用塗工液(以下、製造方法の説明において「塗工液」という。)は、多孔質層の結着樹脂及び無機粒子を溶媒に溶解又は分散させて作製する。塗工液には、必要に応じて、結着樹脂及び無機粒子以外のその他の成分を溶解又は分散させる。
【0148】
塗工液の調製に用いる溶媒は、多孔質層の結着樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
【0149】
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔質構造を有する多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0150】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔質構造を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を5質量%~40質量%含む混合溶媒が好ましい。
【0151】
塗工液の樹脂濃度は、良好な多孔質構造を形成する観点から、1質量%~20質量%であることが好ましい。塗工液の無機粒子濃度は、良好な多孔質構造を形成する観点から、0.5質量%~50質量%であることが好ましい。
【0152】
工程(2):樹脂粒子分散液の作製
樹脂粒子分散液は、樹脂粒子を適切な分散媒(例えば、水)に分散させて作製する。樹脂粒子分散液には、分散媒への樹脂粒子の分散性を高めるために界面活性剤を添加してもよい。樹脂粒子分散液は、市販品又は市販品の希釈液でもよい。
【0153】
樹脂粒子分散液における樹脂粒子の濃度は、塗工適性の観点から、1質量%~60質量%であることが好ましい。
【0154】
工程(3):塗工液の塗工
塗工液を多孔質基材の少なくとも一方の面に塗工し、多孔質基材上に塗工層を形成する。多孔質基材への塗工液の塗工方法としては、ナイフコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に多孔質基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
【0155】
工程(4):塗工層の固化
塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつ結着樹脂を固化させ、結着樹脂及び無機粒子を含有する多孔質層を形成する。これにより、多孔質基材と多孔質層とからなる積層体を得る。
【0156】
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせることが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は40質量%~90質量%であることが、多孔質構造の形成および生産性の観点から好ましい。凝固液の温度は、例えば20℃~50℃である。
【0157】
工程(5):塗工層の水洗及び乾燥
積層体を凝固液から引き揚げ、水洗する。水洗することによって、積層体から凝固液を除去する。さらに、乾燥することによって、積層体から水を除去する。水洗は、例えば、水洗浴中に積層体を搬送することによって行う。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること、積層体をヒートロールに接触させること等によって行う。乾燥温度は40℃~80℃が好ましい。
【0158】
工程(6):樹脂粒子分散液の塗工
積層体の少なくとも一方の面に、樹脂粒子分散液を塗工する。樹脂粒子分散液を塗工する方法としては、ナイフコート法、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
【0159】
工程(7):樹脂粒子分散液の乾燥
積層体上の樹脂粒子分散液を乾燥させ、樹脂粒子を積層体の表面に付着させる。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること等によって行う。乾燥温度は40℃~100℃が好ましい。
【0160】
製造方法A又は形態B-2~形態B-4の製造方法Bは、上記の工程(1)~(7)を一部省略したり変更したりすることで実施できる。
【0161】
<非水系二次電池>
本開示の非水系二次電池は、リチウムイオンのドープ及び脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、本開示のセパレータとを備える。ドープとは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0162】
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
【0163】
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータが低温低圧のウェットヒートプレスによって電極とよく接着することにより、電池の生産性に優れる。
【0164】
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
【0165】
正極の実施形態例としては、正極活物質及び結着樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられ、具体的にはLiCoO2、LiNiO2、LiMn1/2Ni1/2O2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCo1/2Ni1/2O2、LiAl1/4Ni3/4O2等が挙げられる。結着樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm~20μmの、アルミニウム箔、チタン箔、ステンレス箔等が挙げられる。
【0166】
負極の実施形態例としては、負極活物質及び結着樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、さらに導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられ、具体的には例えば、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。結着樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等が挙げられる。導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末、極細炭素繊維等の炭素材料が挙げられる。集電体としては、例えば厚さ5μm~20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
【0167】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等が挙げられる。非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びそのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル;などが挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80~40:60で混合し、リチウム塩を0.5モル/L~1.5モル/Lの範囲にて溶解した溶液が好適である。
【0168】
外装材としては、アルミニウムラミネートフィルム製パック、金属缶などが挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本開示のセパレータはいずれの形状にも好適である。
【0169】
本開示の非水系二次電池は、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層物を製造した後、この積層物を用いて、例えば下記の製造方法1又は製造方法2により製造できる。
【0170】
製造方法1:積層物をドライヒートプレスして電極とセパレータとを仮接着した後、外装材(例えばアルミニウムラミネートフィルム製パック。以下同じ)に収容し、そこに電解液を注入する。そして、外装材の上から積層物をウェットヒートプレスし、電極とセパレータとの接着と、外装材の封止とを行う。
【0171】
製造方法2:積層物を外装材に収容し、そこに電解液を注入する。そして、外装材の上から積層物をウェットヒートプレスし、電極とセパレータとの接着と、外装材の封止とを行う。
【0172】
製造方法1及び製造方法2において、ウェットヒートプレスのプレス温度は、50℃~80℃が好ましく、60℃~70℃がより好ましい。ウェットヒートプレスのプレス圧は、40kPa~200kPaが好ましく、50kPa~100kPaがより好ましい。ウェットヒートプレスのプレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば8時間~20時間の範囲で調節する。
【0173】
正極と負極との間にセパレータを配置した積層物を製造する際において、正極と負極との間にセパレータを配置する方式は、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層する方式(所謂スタック方式)でもよく、正極、セパレータ、負極、セパレータをこの順に重ね、長さ方向に捲き回す方式でもよい。
【実施例0174】
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0175】
以下の説明において、合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0176】
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例に適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0177】
[セパレータ及び多孔質基材の透気度]
セパレータ及び多孔質基材の透気度(秒/100mL)は、JIS P8117:2009に従い、デジタル型王研式透気度試験機(旭精工社、EGO1-55-1MR)を用いて測定した。
【0178】
[セパレータ及び多孔質基材の厚さ]
セパレータ及び多孔質基材の厚さは、接触式の厚み計(株式会社ミツトヨ、LITEMATIC VL-50S)にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求めた。測定端子には球の半径10mmの球面測定子(株式会社ミツトヨ)を用い、測定中に0.19Nの荷重が印加されるように調整した。
【0179】
[多孔質層の厚さ]
セパレータから接着層を除去した平膜の厚さから、多孔質基材の厚さを減算して求めた。平膜の厚さは、接触式の厚み計(株式会社ミツトヨ、LITEMATIC VL-50S)にて10cm四方内の20点を測定し、これを平均することで求めた。測定端子には球の半径10mmの球面測定子(株式会社ミツトヨ)を用い、測定中に0.19Nの荷重が印加されるように調整した。
【0180】
[接着層の目付]
セパレータを20cm×20cmに切り出し、接着層に該当する層部分の質量を測定し、質量を面積で除算し、両面合計の目付(g/m2)を求めた。すべての実施例及び比較例において接着層がセパレータ両面に等量形成されているので、両面合計の目付の2分の1の値を片面あたりの目付(g/m2)とした。
【0181】
[無機粒子の平均一次粒径]
多孔質層の形成に用いる無機粒子を試料にして走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行い、平均一次粒径を求めた。具体的には、SEMによる観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径の平均値を平均一次粒径(μm)とした。
【0182】
[樹脂粒子の平均一次粒径]
接着層の形成に用いる樹脂粒子分散液の乾固物を試料にしてSEMによる観察を行い、平均一次粒径を求めた。具体的には、SEMによる観察において無作為に選んだ樹脂粒子100個の長径を計測し、100個の長径の平均値を平均一次粒径(μm)とした。
【0183】
[樹脂のガラス転移温度]
接着層の形成に用いる樹脂粒子分散液の乾固物を試料にして、示差走査熱量測定(DSC)を行った。DSC装置としてQ200 Differential Scanning Calorimeter(TA Instruments社)を用い、試料の重量は5mgとした。昇温速度10℃/minで-65℃から150℃まで昇温後、クエンチして同昇温速度で再昇温し、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線において、低温側のベースラインと階段状変化部分の曲線の接線との交点(1)、及び、高温側のベースラインと階段状変化部分の曲線の接線との交点(2)を求め、交点(1)と交点(2)の中央の温度をガラス転移温度(Tg、℃)とした。
【0184】
[樹脂の組成]
接着層を構成する樹脂に含まれる単量体単位をNMRによって定量した。
接着層の形成に用いる樹脂粒子分散液の乾固物を試料にした。試料を重クロロホルムで膨潤させた後、NMR装置(日本電子社製JNM-ECA600)及び半固体用プローブ(日本電子社製FGMASプローブ)を用いて室温で、600MHzにて1H-NMRスペクトル(MAS回転数6kHz、観測幅15ppm、ポイント数32k、パルス繰り返し待ち時間4秒)を測定し、150MHzにて13C-NMRスペクトルを測定した。13C-NMRスペクトルは定量モード(逆ゲート付きデカップリング法、MAS回転数6kHz、観測幅250ppm、ポイント数32k、パルス繰り返し待ち時間12秒)で約33000回積算した。
【0185】
[接着強度]
後述の試験用二次電池を用意した。電池に圧縮型曲げ試験(3点曲げ測定)を行った。測定はテンシロン(エー・アンド・デイ社、STB-1225S)に圧縮型曲げ試験治具を取り付けて実施した。支持台間距離は4cmとし、電池の短手方向が圧子長手方向と平行になり且つ測定時の圧縮位置が電池内電極の長手方向の中央になるように電池を支持台に設置し、0.1Nの荷重がかかるまで圧子を下げた時の変位を0とし測定を開始した。測定時の圧縮速度は2mm/minとし、変位2mmまで測定を行った。この結果から得られる荷重変位曲線における降伏点荷重(N)を接着強度とした。降伏点荷重が観測できなかった場合は最大荷重(N)を接着強度とした。結果を表3に示す。
【0186】
[耐熱性]
後述の試験用二次電池を用意した。室温下、電池に0.2C且つ4.2Vの定電流定電圧充電を行った。次いで、電池を温度150℃のオーブン内に置き、電池に約500gの重りを乗せた。60分間後、電池をオーブンから取り出し、室温まで冷ました。電池の電圧を測定し、3.5V以下であったとき短絡したと判断した。電池5個のうち短絡した個数を下記のとおり分類した。結果を表3に示す。
A:0個
B:1個~2個
C:3個~5個
【0187】
<セパレータ及び電池の作製>
[実施例1]
-セパレータの作製-
ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)の混合溶媒(DMAc:TPG=80:20[質量比])を用意した。メタ型アラミド(ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人、コーネックス)を樹脂濃度が4質量%となるように混合溶媒に溶解し、樹脂溶液を得た。樹脂溶液に水酸化マグネシウム粒子(平均一次粒径0.8μm)を水酸化マグネシウム粒子:メタ型アラミド=70:30[質量比]となる量添加し、攪拌混合して塗工液(1)を得た。
【0188】
樹脂粒子分散液(1)(分散媒:水、固形分濃度7質量%)を用意した。樹脂粒子分散液(1)の乾固物を試料にして、先述のSEM観察、DSC及びNMRを行い、樹脂粒子の粒径、樹脂のTg及び樹脂の組成を分析した。結果を表2に示す。
【0189】
一対のマイヤーバーに塗工液(1)を適量のせ、ポリエチレン微多孔膜(厚さ9μm、透気度95秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、塗工液(1)を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=30:8:62[質量比]、液温40℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温40℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、樹脂粒子分散液(1)を適量のせた一対のバーコータ間に通して、樹脂粒子分散液(1)を両面に等量塗工し、乾燥させた。こうして、ポリエチレン微多孔膜の両面に多孔質層及び接着層が形成されたセパレータを得た。
得られたセパレータをSEMで観察したところ、多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層であった。
【0190】
-正極の作製-
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末89.5質量部、導電助剤であるアセチレンブラック4.5質量部、結着樹脂であるポリフッ化ビニリデン6質量部、及び適量のN-メチル-2-ピロリドンを双腕式混合機にて攪拌して混合し、正極用スラリーを作製した。正極用スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面又は片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を両面又は片面に有する正極を得た。
【0191】
-負極の作製-
負極活物質である人造黒鉛300質量部、結着樹脂であるスチレン-ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含有する水溶性分散液7.5質量部、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3質量部、及び適量の水を双腕式混合機にて攪拌して混合し、負極用スラリーを作製した。負極用スラリーを厚さ10μmの銅箔の両面又は片面に塗布し、乾燥後プレスして、負極活物質層を両面又は片面に有する負極を得た。
【0192】
-接着強度評価用の電池の作製-
両面正極及び両面負極をそれぞれ30mm×70mmの長方形に切り出した。
セパレータをTD35mm×MD75mmの長方形に切り出した。
これらを正極と負極が交互に且つ正極と負極の間にセパレータが挟まるように重ね、正極3枚、負極3枚、セパレータ5枚からなる積層物を作製した。積層物をアルミニウムラミネートフィルム製のパック中に挿入し、パック内に電解液(1モル/L LiPF6-エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート[質量比3:7])を注入し、積層物に電解液をしみ込ませた。次いで、パックごと積層物の積層方向に熱プレス機を用いて熱プレスを行い(ウェットヒートプレス)、電極とセパレータとの接着を行った。熱プレスの条件は、プレス温度60℃、プレス圧50kPa、プレス時間17時間とした。こうして得た試験用二次電池を、先述の接着強度に供した。
【0193】
-耐熱性評価用の電池の作製-
片面正極及び片面負極をそれぞれ14mm×20mmの長方形に切り出した。
セパレータをTD20mm×MD26mmの長方形に切り出した。
これらを正極活物質層と負極活物質層が向かいうように且つ正極と負極の間にセパレータが挟まるように重ね、正極1枚、負極1枚、セパレータ1枚からなる積層物を作製した。積層物をアルミニウムラミネートフィルム製のパック中に挿入し、パック内に電解液(1モル/L LiPF6-エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート[質量比3:7])を注入し、積層物に電解液をしみ込ませた。次いで、パックごと積層物の積層方向に熱プレス機を用いて熱プレスを行い(ウェットヒートプレス)、電極とセパレータとの接着を行った。熱プレスの条件は、プレス温度60℃、プレス圧50kPa、プレス時間17時間とした。こうして得た試験用二次電池を、先述の耐熱性の評価に供した。
【0194】
[実施例2]
樹脂粒子分散液(2)(分散媒:水、固形分濃度7質量%)を用意した。樹脂粒子分散液(2)の乾固物を試料にして、先述のSEM観察、DSC及びNMRを行い、樹脂粒子の粒径、樹脂のTg及び樹脂の組成を分析した。結果を表2に示す。
【0195】
実施例1と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(2)に変更して、セパレータを作製した。接着層の目付は表2に記載のとおりである。
得られたセパレータをSEMで観察したところ、多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層であった。
【0196】
[比較例1]
樹脂粒子分散液(3)(分散媒:水、固形分濃度7質量%)を用意した。樹脂粒子分散液(3)の乾固物を試料にして、先述のSEM観察、DSC及びNMRを行い、樹脂粒子の粒径、樹脂のTg及び樹脂の組成を分析した。結果を表2に示す。
【0197】
実施例1と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(3)に変更して、セパレータを作製した。接着層の目付は表2に記載のとおりである。
【0198】
[比較例2]
実施例1と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を液状ブタジエン-アクリロニトリル共重体(以下、液状NBRという。)に変更して、セパレータを作製した。接着層の目付は表2に記載のとおりである。
【0199】
[比較例3]
実施例1と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(1)と液状NBRの混合物に変更して、セパレータの作製を試みた。混合比は、樹脂粒子分散液(1)の固形分:液状NBR=15:85[質量比]とした。樹脂粒子分散液(1)の樹脂粒子と液状NBRとが分離し、接着層の形成ができなかった。本例は、ガラス転移温度の測定を行わなかった。
表2に記載した樹脂粒子の粒径は、樹脂粒子分散液(1)の測定値である。表2に記載した単量体単位の種類及び単量体単位の量は、樹脂粒子分散液(1)の測定結果と液状NBRの測定結果を基に記載した。
【0200】
[実施例3]
実施例1と同様にして、ただし、水酸化マグネシウム粒子を硫酸バリウム粒子(平均一次粒径0.03μm)に変更して、セパレータを作製した。多孔質層の組成及び接着層の目付は表1及び表2に記載のとおりである。
得られたセパレータをSEMで観察したところ、多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層であった。
【0201】
[比較例4]
実施例3と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(3)に変更して、セパレータを作製した。多孔質層の組成及び接着層の目付は表1及び表2に記載のとおりである。
【0202】
[実施例4]
実施例1と同様にして、ただし、メタ型アラミドをアクリル系樹脂に変更し、水酸化マグネシウム粒子をアルミナ粒子(平均一次粒径1.0μm)に変更して、セパレータを作製した。多孔質層の組成及び接着層の目付は表1及び表2に記載のとおりである。
得られたセパレータをSEMで観察したところ、多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層であった。
【0203】
[比較例5]
実施例4と同様にして、ただし、樹脂粒子分散液(1)を樹脂粒子分散液(3)に変更して、セパレータを作製した。多孔質層の組成及び接着層の目付は表1及び表2に記載のとおりである。
【0204】
[実施例5]
実施例1と同様にして、ただし、メタ型アラミドをアクリル系樹脂に変更し、水酸化マグネシウム粒子をべーマイト粒子(平均一次粒径1.0μm)に変更して、セパレータを作製した。多孔質層の組成及び接着層の目付は表1及び表2に記載のとおりである。
得られたセパレータをSEMで観察したところ、多孔質層は、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な層であった。
【0205】
実施例4、比較例5及び実施例5において多孔質層の形成に使用したアクリル系樹脂は、メタクリル酸n-ブチル/アクリロニトリル共重合体である。
【0206】
表1及び表2中の略語は下記の意味である。
・PE:ポリエチレン
・St:スチレン
・MMA:メタクリル酸メチル
・BMA:メタクリル酸n-ブチル
・EHMA:メタクリル酸2-エチルヘキシル
・Bt:ブタジエン
・AN:アクリロニトリル
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。