(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121530
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20240830BHJP
F16F 15/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E04H9/02 311
F16F15/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028678
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】398000141
【氏名又は名称】有限会社津谷工業
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】津谷 雄次
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA22
2E139BD14
2E139BD22
3J048AA01
3J048AD14
3J048BA24
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】弾性的に振動を吸収し、地震に対して構造物を保護するために十分な振動抑制効果を備えた振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法を提供する。
【解決手段】
本発明の振動抑制部材1は、管部材11、中空の環状部材111、軸部材12、第一の軸把持部材13、第二の軸把持部材14、第一の弾性部材15、第二の弾性部材16を有する。また、本発明の振動抑制システムSは、振動抑制部材と構造物Cに接続する第一の接続部材21、第二の接続部材22を備える。また、本発明の振動抑制方法は、構造物における第一の接続部材及び第二の接続部材を接続し、第一の接続部材及び第二の接続部材の間に、本振動抑制部材を配置して、構造物に対する振動を抑制する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、
前記環状部材を貫通して配置される軸部材と、
前記軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、
前記軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、
前記第一の軸把持部材と前記環状部材、及び、前記第二の軸把持部材と前記環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有する振動抑制部材。
【請求項2】
中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、前記環状部材を貫通して配置される軸部材と、前記軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、前記軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、前記第一の軸把持部材と前記環状部材、及び、前記第二の軸把持部材と前記環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有する振動抑制部材と、
前記振動抑制部材の前記第一の軸把持部材に接続され、構造物に接続される第一の接続部材と、
前記振動抑制部材の前記管部材に接続され、構造物に接続される第二の接続部材と、を備える振動抑制システム。
【請求項3】
前記構造物に固定され前記第一の接続部材に接続される補強板と、を有する請求項2記載の振動抑制システム。
【請求項4】
前記補強板は、
略垂直に固定される二つの構造柱部材の各々に固定される固定板と、前記固定板の間を接続するとともに前記二つの構造柱部材の接合位置から離れて設けられる緩和部と、を有するものである請求項3記載の振動抑制システム。
【請求項5】
構造物における第一の接続部材及び第二の接続部材を接続し、
前記第一の接続部材及び前記第二の接続部材の間に、振動抑制部材を配置して、前記構造物に対する振動を抑制する振動抑制方法であって、
前記振動抑制部材は、中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、前記環状部材を貫通して配置される軸部材と、前記軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、前記軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、前記第一の軸把持部材と前記環状部材、及び、前記第二の軸把持部材と前記環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有する振動抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や工場等の構造物において、地震対策は非常に重要である。地震によって構造物が大きく揺れることで破損する可能性がある。実際、震度6弱以上の地震になると、耐震性の低い構造物の傾きや倒壊が発生し、震度7以上ではコンクリート造の建物であっても倒壊する危険がある。
【0003】
このような地震の揺れに対して構造物を保護しようとする試みとして、例えば、下記特許文献1には、地震のエネルギーを吸収し、大きな揺れに対しても対応できるようにするための地震用のエネルギー吸収装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術であっても、振動抑制効果を得るには十分ではないといった課題がある。より具体的には、上記特許文献1に記載の技術は、地震による振動が発生した場合、棒状部材が延伸することによって地震のエネルギーを吸収支持しようとするものであるが、不可逆的な延伸であり、一度変形してしまった後は交換するしかないといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、弾性的に振動を吸収し、地震に対して構造物を保護するために十分な振動抑制効果を備えた振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討を行った結果、管状の管部材内に弾性部材を備えさせることで弾性的に振動を吸収し地震に対して構造物を保護するために十分な振動抑制効果を備えさせることができることを発見して本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一観点に係る振動抑制部材は、中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、環状部材を貫通して配置される軸部材と、軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、第一の軸把持部材と環状部材、及び、第二の軸把持部材と環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有するものである。
【0009】
また、本発明の他の一観点にかかる振動抑制システムは、中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、環状部材を貫通して配置される軸部材と、軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、第一の軸把持部材と環状部材、及び、第二の軸把持部材と環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有する振動抑制部材と、
振動抑制部材の第一の軸把持部材に接続され、構造物に接続される第一の接続部材と、振動抑制部材の管部材に接続され、構造物に接続される第二の接続部材と、を備えるものである。
【0010】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、構造物に固定され第一の接続部材に接続される補強板と、を有することが好ましい。
【0011】
また、本観点においては、限定されるわけではないが、補強板は、略垂直に固定される二つの構造柱部材の各々に固定される固定板と、固定板の間を接続するとともに二つの構造柱部材の接合位置から離れて設けられる緩和部と、を有するものであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の他の一観点にかかる振動抑制方法は、構造物における第一の接続部材及び第二の接続部材を接続し、第一の接続部材及び前記第二の接続部材の間に、振動抑制部材を配置して、構造物に対する振動を抑制する振動抑制方法であって、振動抑制部材は、中空の環状部材が内部に固定されている管部材と、環状部材を貫通して配置される軸部材と、軸部材の一方に固定される第一の軸把持部材と、軸部材の他方に固定される第二の軸把持部材と、第一の軸把持部材と環状部材、及び、第二の軸把持部材と環状部材の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材及び第二の弾性部材と、を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
以上本発明によって、弾性的に振動を吸収し、地震に対して構造物を保護するために十分な振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係る振動抑制システムの概略図である。
【
図2】実施形態に係る振動抑制部材の外観の概略を示す図である。
【
図3】実施形態に係る振動抑制部材の断面の概略を示す図である。
【
図4】実施形態に係る振動抑制部材の分解斜視図である。
【
図5】実施形態に係る振動抑制部材によって振動が吸収される場合のイメージを示す図である。
【
図6】実施形態に係る振動抑制システムにおける設置部材の第一の接続部材の概略図である。
【
図7】実施形態に係る振動抑制システムにおける設置部材の第二の接続部材の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例に記載の具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る振動抑制システム(以下「本システム」という。)Sの概略を示す図であり、
図2は、本システムSにおける振動抑制部材(以下「本振動抑制部材」という。)1の外観の概略を示す図であり、
図3は、本振動抑制部材1の断面の概略を示す図であって、
図4はその分解斜視図である。
【0017】
本図で示すように、本システムSは、本振動抑制部材1と、構造物Cに設置するための設置部材2とを備えており、構造物Cに対して与えられる振動などの衝撃を吸収して構造物の損壊を防ぐためのものである。
【0018】
本システムSが保護する対象は上記の通り構造物Cである。一般に構造物は木材や鉄骨等の柱、梁、桁等を組み合わせて構成されるものであって、家屋やビル、工場等の建築物が典型的な例であるがこれに限定されない。本システムSは、構造物C中の柱や梁によって構成される矩形状に囲まれる領域におけるいわゆる筋交として活用され、地震などの災害が発生した場合に、この振動による変形を抑え、損壊を防止することができる。
【0019】
本システムSにおいて、本振動抑制部材1は、そのシステムの主要な部分を占めるものであり、具体的には、中空の環状部材111が内部に固定されている管部材11と、環状部材111を貫通して配置される軸部材12と、軸部材12の一方に固定される第一の軸把持部材13と、軸部材12の他方に固定される第二の軸把持部材14と、第一の軸把持部材13と環状部材111、及び、第二の軸把持部材14と環状部材111の間のそれぞれに設けられる第一の弾性部材15及び第二の弾性部材16と、を有する。
【0020】
本振動抑制部材1における中空の環状部材111が内部に固定されている管部材11は、本振動抑制部材1の主要な骨格を示す部分である。管部材11の形状は、文字通り、中空となっており、この内部に上記の通り軸部材12が挿入され、管内を管の延伸軸方向に移動可能となっている。なお、後述の記載からも明らかとなるが、管部材11は、設置部材2、具体的には第二の接続部材22に接続されており、直接、又は間接的に(例えば、別に設けられるもう一つの振動抑制部材1を介して)構造物Cに設置される。
【0021】
本振動抑制部材1の管部材11は、管状である限りにおいてその断面の形状は限定されず、円形状であることが好ましいが、四角形や六角形等の多角形であってもよく、その断面形状は限定されない。
【0022】
また、本振動抑制部材1の管部材11の内部には、中空の環状部材111が固定されている。そして、中空の環状部材111内に上記の通り軸部材12が貫通して配置されており、この内部を軸部材12が延伸方向に沿って移動可能となっている。なお、中空の孔の径は、軸部材12の太さに応じて適宜調整可能である一方、上述の第一及び第二の弾性部材15、16を支持することができる程度に広い面積を維持しておく必要がある。
【0023】
また、本振動抑制部材1の管部分11の内部の中空の環状部材111の貫通部分の断面は、上記の図で示すように矩形であってもよいが、その角に丸みを帯びた曲面で形成していることも好ましい。このようにすることで、管部材11と軸部材12の延伸軸がずれて傾いた場合でも曲面を設けることで、軸部材12がこの角に引っかかることなく滑らかに移動が可能となるといった効果がある。
【0024】
本振動抑制部材1の管部材11の材質については、本振動抑制部材1による効果を安定的に発揮することができる限りにおいて限定されるわけではないが、例えばステンレス等の鉄等の金属で構成されていることが好ましい。また、中空の環状部材111の材質においても上記と同様である。なお金属の場合、中空の環状部材111は管部材11内において溶接により固定されていることが好ましい。
【0025】
また、本振動抑制部材1には、上記の通り、軸部材12が中空の環状部材111を貫通して配置されている。そして軸部材12の周囲には上記の通り、第一の軸把持部材13等が配置されており、これらと相まって構造物Cに対して加えられる振動を吸収することができるようになる。詳細な機能については後述の説明から明らかとなる。
【0026】
本振動抑制部材1の軸部材12の構造としては、一方向に延伸した軸(棒状)となっている限りにおいて限定されるわけではないが、ねじ溝が周囲に形成されていることが好ましい。ねじ溝を形成することで、後述の第一の軸把持部材13、第二の軸把持部材14にもねじ溝を形成し、嵌め合わせることで安定的にこれらを固定することが可能となる。
【0027】
本振動抑制部材1の軸部材12の長さは適宜調整可能であるが、第一の軸把持部材13、第二の軸把持部材14を固定しその間に第一の弾性部材15及び第二の弾性部材16、さらにこれらの間に上記管部材11の中空の環状部材111を配置することができる長さを確保しておくことが好ましい。なお、軸部材12の長さは、管部材11よりも長くてもよい。
【0028】
なお、本振動抑制部材1の軸部材12の一方(例えば第二の軸把持部材14が固定されている側)は、他の部材に接続されておらず、他方(例えば第一の軸把持部材13が固定されている側)は、設置部材2(具体的には第一の設置部材21)を介して構造物Cに接続されている。この結果、本振動抑制部材1において管部材11と軸部材12をそれぞれ構造物Cの異なる位置に固定することが可能となり、それぞれの位置からの振動による動きを伝え、例えば第一の弾性部材15によって吸収することが可能となる。
【0029】
本振動抑制部材1における第一の軸把持部材13は、軸部材12の一方側に配置されている。より具体的には、軸部材12上に固定されている。ここで「一方」とあるのは、軸部材12上には第一の軸把持部材13だけでなく第二の軸把持部材14も配置されているため、これらが別々の部材として離れた位置に配置されていることを意味するために用いる表現であり、それ以上の意味は持たない。第一の軸把持部材13は、上記の図からも明らかであるが、管部材11内の中空の環状部材111との間に第一の弾性部材15を挟み込み、この弾性部材の圧縮により振動を吸収するために設けられるものである。第一の軸把持部材13としては限定されるわけではないが、その内部に軸部材12のねじ溝に対応したねじ溝を備えた貫通孔が形成されており、この貫通孔内に軸部材12を回転させて通すことで固定が可能である。なお、本実施形態の、第一の軸把持部材13においては、貫通孔とすることで軸部材12を貫通させ、そのまま第一の接続部材21と接続させることとしているが、本実施形態の図で示すように、第一の軸把持部材13に形成される孔は貫通孔ではなくともよい。貫通孔でない場合、他方にも孔を形成し、軸部材12等を挿入して設置部材2と接続することで構造物Cと接続が可能となる。貫通させて軸部材12をそのまま接続に用いることで簡便な構成とすることができる一方、貫通孔とせず複数の棒状部材を用いて接続させることで、本振動抑制部材1を構造物Cから取り外しやすくなる、具体的には第一の接続部材21から切り離しやすくなるといった利点がある。なおこの場合、貫通孔及び軸部材等にはネジの切込みがなされていることが好ましい。
【0030】
また本振動抑制部材1の第一の軸把持部材13は、実際に第一の弾性部材15をしっかり支える本体部分131だけでなく、補助固定部材132を備えていることも好ましい。すなわち本体部分131によって第一の弾性部材15を安定的に支える一方、補助固定部材132によって本体部分131を動かないように安定的に固定することが可能となる。なおこの補助固定部材132としては、限定されるわけではないが、いわゆるナットであることが好ましい。
【0031】
第一の軸把持部材13の材質としては、本振動抑制部材1の管部材11や軸部材12と同様、ステンレス等の鉄を含む金属で構成されていることが好ましい。
【0032】
本振動抑制部材1における軸部材12の他方に固定される第二の軸把持部材14は、上記第一の軸把持部材13と対となって構成されるものであり、第一の軸把持部材13と同様の構成や材質を採用することができる。ただし、上記の通り第一の軸把持部材13は設置部材2を介して構造物Cの他方の部分に固定されるものであるため、第二の軸把持部材14は比較的簡易な構造を採用することができる。例えば本実施形態で示すように、貫通孔が形成された環状部分141と、その環状部材141を抑えるナット等の補助部材142を備えていることが好ましい。
【0033】
本振動抑制部材1においては、上記の通り、第一の軸把持部材13と環状部材111の間に設けられる第一の弾性部材15を備え、第一の弾性部材15によって構造物Cに加わる振動のエネルギーを吸収することが可能となる。振動を吸収するイメージ図について
図5に示しておく。本図で示すように、本振動抑制部材1の構造物Cの二つの設置位置が離れる方向に移動しようとする場合、第一の軸把持部材13と管部材11内の環状部材111の間の距離が縮む。するとこの間に配置される第一の弾性部材15が圧縮されることとなり、この圧縮によるエネルギーを弾性体で吸収することでその振動を抑えることが可能となる。
【0034】
本振動抑制部材1の第一の弾性部材15の構造は、上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、上記の軸部材12を貫通させるための貫通孔151が形成されていることが好ましい。貫通孔151を設けることで軸部材12全体を覆うことが可能となり、圧縮されたとしても軸に対してずれるおそれが格段に低くなり、その衝撃吸収の効率が向上する。なお、第一の弾性部材15の貫通孔151の内側には軸部材12のねじ溝に対応したねじ溝が形成されていてもよいが、すでに第一の軸把持部材13と環状部材111によって挟まれているため、特にねじ溝を設ける必要はない。また、第一の弾性部材15の外形としては、特に限定されるわけではないが、管部材11の内部の断面形状に沿った形としておくことが好ましい。断面形状に沿った形としておくことで管部材11内の内部空間の無駄を少なくすることが好ましい。ただし、第一の弾性部材15は圧縮された場合に軸部材12の半径方向に膨れる場合があるため、膨れた場合でも管部材11の内面に容易に接触しないように余裕の空間を持たせておくことが好ましい。一方で、一定以上膨張した場合には、管部材11の内面に接触してその圧縮に関して制限をかけるようにしておくことが好ましい。
【0035】
本振動抑制部材1の第一の弾性部材15の長さや径については適宜調整が可能である。大きく設ければ設けるほどその振動吸収能力は向上するがコスト等が大きくなるため適切な大きさにすることが好ましい。
【0036】
本振動抑制部材1の第一の弾性部材15の材質としては、上記機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、弾性だけでなく粘性も備えた材料、具体的には高分子材料であることが好ましく、さらに具体的にはウレタンゴム、ポリウレタンエラストマー等を例示することができるがこれに限定されない。
【0037】
また、本振動抑制部材1には、上記の通り、第二の軸把持部材14と環状部材111の間に設けられる第二の弾性部材16を備え、第二の弾性部材16によって構造物Cに加わる振動のエネルギーを吸収することが可能となる。より具体的には、第二の弾性部材16は、上記図が示すように、本振動抑制部材1の構造物Cの二つの設置位置が離れる方向に移動しようとして、第二の軸把持部材14と管部材11内の環状部材111の間の距離が縮んだ場合に、この間に配置される第二の弾性部材16が圧縮されることとなり、この圧縮によるエネルギーを弾性体で吸収することでその振動を抑えることが可能となる。
【0038】
本振動抑制部材1の第二の弾性部材16の材質や大きさについては上記第一の弾性部材15と同様であるため、その説明は省略するが、弾性部材は環状部材111をはさんで一対に配置されているため、いずれの方向に対しても振動の抑制が可能となっている。
【0039】
また、本システムSでは、上記の通り、構造物Cに設置するための設置部材2とを備えており、具体的には、本振動抑制部材1の第一の軸把持部材13に接続され、構造物Cに接続される第一の接続部材21と、本振動抑制部材1の管部材11に接続され、構造物Cに接続される第二の接続部材22と、を備える。
図6に、本実施形態にかかる設置部材2、より具体的には第一の接続部材21の概略を示しておく。なお図中(A)は上面から見た場合であり、(B)はその側面から見た場合の側面図である。
【0040】
本システムSでは、設置部材2を設けることで構造物Cに対して本振動抑制部材1を設置することが可能となる。より具体的な構造については下記の記載から明らかとなるが、第一の接続部材21と第二の接続部材22によって本振動抑制部材1の別々の部材に接続され、本振動抑制部材1における第一の弾性部材15又は第二の弾性部材16にその位置のずれによる衝撃を吸収させることができるようになる。
【0041】
本システムSにおいて、第一の接続部材21は、本振動抑制部材1の軸部材12に直接または間接的に接続される。より具体的には、本振動抑制部材1の第一の軸把持部材13側に接続され、構造物Cとの接続を担う。第一の接続部材21を設けることで、構造物Cに対して強い振動が加えられたとしてもその接続を確保することが可能となり、また、構造物Cと本振動抑制部材1の間がどの程度あってもその長さを調整することができるようになるといった利点がある。
【0042】
また、本システムSにおいては、第一の接続部材21の構造としては、限定されるわけではないが、軸部材12又は、第一の軸把持部材13に接続された棒状の部材に接続される接続板211と、構造物Cに接続される補強板212と、接続板211と補強板212を回転可能に支持する軸部材213と、を有する構成としておくことが好ましい。このように軸部材213によって回転可能としておくことで、本振動抑制部材1の構造物Cに対する接続角度を任意に調整することが可能となるだけでなく、構造物Cが大きく揺れた場合でもその振動をこの角度調整によって吸収することが可能となる。
【0043】
第一の接続部材21の接続板211は、板状としておくことで補強板212との接続領域を増やすことが可能となり、特に軸部材213等を介して接続することで安定的に接続が可能となるといった利点がある。接続板211の材質としては特に制限されるわけではないが、ステンレスや鋼等の硬質な金属で構成されていることが好ましいがこれに限定されない。また、接続板211には、補強板212と組み合わされ軸部材213が貫通するための貫通孔部が形成されていることが好ましい。
【0044】
また、第一の接続部材21の補強板212は、構造物Cにおいて略垂直に固定される二つの構造柱部材の各々に固定される固定板2121と、固定板2121の間を接続するとともに二つの構造柱部材の接合位置から離れて設けられる緩和部2122と、を有するものであることが好ましい。このように、一対の固定板2121を設けて構造柱部材に固定する一方これらの間に地震などによってひずみが生じる場合でも、この間に設けられる緩和部2122が衝撃を吸収し、固定板2121と構造柱部材の固定を安定的に維持することが可能となる。なおここで「構造柱部材」とは、柱状の部材であるという意味であり、略鉛直方向に設けられるものだけではなく、略水平方向に設けられるいわゆる梁や土台として設けられる部材も含む概念である。なお、補強板212の材質としても限定されることなく、例えば上記接続板211と同様の材質を用いることができる。
【0045】
また、補強板212の具体的な構造としては、上記のとおりであるが、接続板211と軸部材213によって固定されることが好ましいため補強板212にも軸部材213が貫通するための貫通孔部が形成されていることが好ましく、接続板211の同様の部分と噛み合わせ、この間に軸部材213を挿入することで上記の通り回転可能に接続することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態では、
図1で記載されているとおり、構造物C内に、二つの本振動抑制部材1が接続して配置されており、それぞれ構造物C側に第一の接続部材21が設けられており本振動抑制部材1と接続されており、本振動抑制部材1同士は第二の接続部材22によって接続されている。
図7に、本実施形態にかかる第二の接続部材22の概略について説明する。
【0047】
第二の接続部材22は、円筒部分を備えて構成されており、本振動抑制部材1の管部分11とネジ部材等によって組み合わされる構造となっている。本振動抑制部材1では、上記の通り第一の接続部材21はその軸部材12側において構造物Cと接続されている一方、第二の接続部材22はその管部材11において構造物Cと接続されている。本実施形態の本振動抑制部材1では、他の本振動抑制部材1に接続されているため、各本振動抑制部材1の管部材11同士を接続することになる。ただし、一つの本振動抑制部材1のみで構造物Cに接続される場合は、第二の接続部材22が直接構造物Cに接続されることになる。なお、この第二の接続部材22に関しては上記管部材11と同様の材質を採用することができる。
【0048】
(振動抑制方法)
ここで、振動抑制方法(以下「本方法」という。)について説明する。本方法は、構造物における第一の接続部材及び第二の接続部材を接続し、第一の接続部材及び第二の接続部材の間に、本振動抑制部材を配置して、構造物に対する振動を抑制する振動抑制方法であり、本方法では上記の通り、本振動抑制部材を用いるものであり、本振動抑制部材による効果によって、構造物を十分に保護することが可能となる。なおこの場合において、上記の記載から明らかなように、構造物において、第一の接続部材及び第二の接続部材の長さを調節することで、様々な距離に対応して設置することが可能となる。
【0049】
以上本発明によって、弾性的に振動を吸収し、地震に対して構造物を保護するために十分な振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、振動抑制部材及び振動抑制システム並びにこれを用いる振動抑制方法として産業上の利用可能性がある。