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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121534
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】食肉スライサ
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20240830BHJP
   B26D 7/12 20060101ALI20240830BHJP
   B24B 3/46 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B26D3/28 610F
B26D3/28 610R
B26D7/12
B26D3/28 610J
B26D3/28 610S
B24B3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028684
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】523070300
【氏名又は名称】GASTROTEC Holdings株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 守紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 賢人
【テーマコード(参考)】
3C158
【Fターム(参考)】
3C158AA04
3C158CA01
3C158CB04
3C158DB07
(57)【要約】
【課題】丸刃物の回転面に沿って往復移動する肉箱から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物で切り落してスライス片を得る食肉スライサにおいて、操作性を向上する。
【解決手段】食肉スライサ100は、機台3の一側に立設されて回転する丸刃物1と、丸刃物1の回転面に沿って往復移動する肉箱2とを備え、肉箱2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物1で切り落してスライス片を得るスライサであって、押しボタン式の運転スイッチ81を備え、運転スイッチ81が押された回数に応じて、肉箱2を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させる。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機台の一側に立設されて回転する丸刃物と、丸刃物の回転面に沿って往復移動する肉箱とを備え、肉箱から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物で切り落してスライス片を得る食肉スライサであって、
押しボタン式の運転スイッチを備え、
前記運転スイッチが押された回数に応じて、前記肉箱を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させる、
食肉スライサ。
【請求項2】
前記運転スイッチが押されて前記丸刃物を回転駆動させた後に、さらに前記運転スイッチが1回又は複数回押されることで前記肉箱を一往復移動又は連続往復移動させる、
請求項1に記載の食肉スライサ。
【請求項3】
前記肉箱の往復移動中に前記運転スイッチが押されると、前記肉箱を停止位置まで移動させて停止させる、
請求項1又は2に記載の食肉スライサ。
【請求項4】
前記丸刃物の研磨処理を行うための研磨処理モードを選択可能に構成しており、
前記研磨処理モードが選択された状態において、前記運転スイッチが押されると前記肉箱を前記丸刃物に対向する奥側位置へ移動させて停止させ、前記肉箱の手前側で前記丸刃物に研磨装置の砥石車が当接した状態で前記運転スイッチが押されると前記丸刃物を回転駆動させるように構成している、
請求項1又は2に記載の食肉スライサ。
【請求項5】
前記肉箱の往復移動方向に沿って前記丸刃物の手前側に立設される当板を備え、
前記当板は、前記機台に着脱可能に支持されており、
前記研磨装置は、前記当板を取り外した状態で前記砥石車を前記丸刃物に当接可能に設けられるとともに、
前記研磨処理モードが選択された状態において、前記当板が装着されていないときは、前記丸刃物の回転駆動を許容する一方、前記肉箱の移動を禁止する、
請求項4に記載の食肉スライサ。
【請求項6】
押しボタン式の停止スイッチをさらに備え、
前記停止スイッチが押されると、前記丸刃物が停止状態でかつ前記肉箱が停止位置に停止した状態になるとともに、前記運転スイッチが押されても前記丸刃物及び前記肉箱が動作しない操作ロック状態になり、
前記操作ロック状態において前記停止スイッチが押されると、前記運転スイッチが押されたときに前記丸刃物もしくは前記丸刃物及び前記肉箱が動作する操作可能状態に復帰する、
請求項1又は2に記載の食肉スライサ。
【請求項7】
前記操作可能状態において、所定時間の間、前記運転スイッチが押されないときは前記操作ロック状態になる、
請求項6に記載の食肉スライサ。
【請求項8】
前記肉箱を連続往復移動させるときに、予め設定された間欠枚数のスライス片を切り落とす度に、予め設定された待ち時間の間だけ前記肉箱を停止位置に停止させた後、前記肉箱の連続往復移動を再開する、
請求項1又は2に記載の食肉スライサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、食肉スライサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、肉塊を保持する肉箱を回転する丸刃物の回転面に沿わせて往復移動させる動作と、肉箱から肉塊を所定量ずつ送り出す動作とを繰り返すことで、肉箱から送り出される肉塊の先端部を丸刃物で切り落としてスライス片を得る食肉スライサが知られている(例えば特許文献1及び2等参照)。この種の食肉スライサは、肉箱の底部に設けた肉送りコンベアと、肉送りコンベアの上方に設けた肉送りローラとで肉塊を上下に挟み込み、肉箱が一往復する毎に肉塊を所定の送り出し量で送り出すことで、均一な厚みのスライス片を得る。
【0003】
従来の食肉スライサでは、肉箱が一往復する毎に、肉箱の底部に設けた送りレバーが揺動し、その揺動が一方向クラッチと伝達機構とを介して肉送りコンベアと肉送りローラとに伝達され、送りレバーの揺動量に応じて肉送りコンベアと肉送りローラが回転して肉塊を送り出す。スライス片の厚みの調整は、送りレバーに接離する肉送り量調整台の位置をねじ送り機構のハンドルを回転操作することで調整し、送りレバーの揺動量を調整することで行われる。
【0004】
また、このような食肉スライサは、運転切替え用の運転レバースイッチを作業者が立つ機台の手前側側面の上部に備えている。当該運転レバースイッチは左右方向に揺動可能に設けられ、当該運転レバースイッチを右側(運転位置)へ倒すと肉箱が連続して往復移動して連続スライスを行ない、左側(停止位置)へ倒すと肉箱が停止するように構成している。また、運転レバースイッチは停止位置でロックするように構成されており、操作レバーを引き上げてロック機構を解除してから右側へ向けて操作することで運転位置へ移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-169540号公報
【特許文献2】特開2007-319955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の食肉スライサでは、運転レバースイッチを停止位置から運転位置へ操作する際にレバーを引き上げてロック機構を解除する操作が必要であり、操作が煩雑であるという問題があった。また、食肉スライサを一枚切り動作をさせるにあたり、運転レバースイッチのロック機構を解除して運転位置へ操作して肉箱の往復移動を開始させた後、即座に運転レバースイッチを停止位置へ戻すという複雑な操作が必要であり、操作の習熟にある程度の時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した食肉スライサを提供することを技術的課題としている。
【0008】
本願発明は、機台の一側に立設されて回転する丸刃物と、丸刃物の回転面に沿って往復移動する肉箱とを備え、肉箱から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物で切り落してスライス片を得る食肉スライサであって、押しボタン式の運転スイッチを備え、前記運転スイッチが押された回数に応じて、前記肉箱を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させる、というものである。
食肉スライサ。
【0009】
本願発明の食肉スライサにおいて、前記運転スイッチが押されて前記丸刃物を回転駆動させた後に、さらに前記運転スイッチが1回又は複数回押されることで、前記肉箱を一往復移動又は連続往復移動させるようにしてもよい。
【0010】
また、前記肉箱の往復移動中に前記運転スイッチが押されると、前記肉箱を停止位置まで移動させて停止させるようにしてもよい。
【0011】
また、前記丸刃物の研磨処理を行うための研磨処理モードを選択可能に構成しており、前記研磨処理モードが選択された状態において、前記運転スイッチが押されると前記肉箱を前記丸刃物に対向する奥側位置へ移動させて停止させ、前記肉箱の手前側で前記丸刃物に研磨装置の砥石車が当接した状態で前記運転スイッチが押されると前記丸刃物を回転駆動させるように構成しているようにしてもよい。
【0012】
さらに、前記肉箱の往復移動方向に沿って前記丸刃物の手前側に立設される当板を備え、前記当板は、前記機台に着脱可能に支持されており、前記研磨装置は、前記当板を取り外した状態で前記砥石車を前記丸刃物に当接可能に設けられるとともに、前記研磨処理モードが選択された状態において、前記当板が装着されていないときは、前記丸刃物の回転駆動を許容する一方、前記肉箱の移動を禁止するようにしてもよい。
【0013】
また、押しボタン式の停止スイッチをさらに備え、前記停止スイッチが押されると、前記丸刃物が停止状態でかつ前記肉箱が停止位置に停止した状態になるとともに、前記運転スイッチが押されても前記丸刃物及び前記肉箱が動作しない操作ロック状態になり、前記操作ロック状態において前記停止スイッチが押されると、前記運転スイッチが押されたときに前記丸刃物もしくは前記丸刃物及び前記肉箱が動作する操作可能状態に復帰するようにしてもよい。さらに、前記操作可能状態において、所定時間の間、前記運転スイッチが押されないときは前記操作ロック状態になるようにしてもよい。
【0014】
また、本願発明の食肉スライサにおいて、前記肉箱を連続往復移動させるときに、予め設定された間欠枚数のスライス片を切り落とす度に、予め設定された待ち時間の間だけ前記肉箱を停止位置に停止させた後、前記肉箱の連続往復移動を再開するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本願発明によると、作業者が押しボタン式の運転スイッチを押すという簡単な操作で肉箱を往復移動させてスライス動作させることができるので操作性が向上する。また、運転スイッチが押された回数に応じて肉箱を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させるので、作業者は一枚切りと連続切りの選択を簡単な操作で行うことができ、操作性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】スライサの一実施形態の平面図である。
図2】同実施形態の正面図である。
図3】同実施形態の左側面図である。
図4】同実施形態の右側面図である。
図5】同実施形態の背面図である。
図6】同実施形態を左斜め前方から見た斜視図である。
図7】同実施形態を右斜め後方から見た斜視図である。
図8】肉箱を示す斜視図である。
図9】肉箱のコンベア及び伝達機構を示す側面図である。
図10】機台の内部を示す平面図である。
図11】同機台を一部切り欠いて示す概略斜視図である。
図12】丸刃物の周辺を右斜め後方から見た斜視図である。
図13図4のA-A位置に沿った横断面図である。
図14】研磨処理を実施する際の同実施形態の平面図である。
図15】同実施形態を右斜め前方から見た斜視図である。
図16】同実施形態の概略的な機能ブロック図である。
図17】スライス動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図18】操作ロック状態移行フローの一例を説明するためのフローチャートである。
図19】表示装置に表示される厚み設定画面の例を示す図である。
図20】表示装置に表示される設定記憶画の例を示す図である。
図21】表示装置に表示される速度設定画面の例を示す図である。
図22】間欠スライス動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図23】表示装置に表示されるメニュー画面の例を示す図である。
図24】表示装置に表示されるオプション画面の例を示す図である。
図25】表示装置に表示される研磨処理モード画面の例を示す図である。
図26】丸刃物の研磨処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1図7を参照しながら、食肉スライサ100(以下、単に「スライサ100」という)の概要について説明する。なお、以下の説明において、特定の方向や位置を示す用語(例えば「手前」、「奥」、「前後」、「左右」等)を用いるが、これは、スライサ100を使用する作業者の向きを基準にしている。これらの用語は説明の便宜のために用いたものであり、本願発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
図1図7に示すように、本実施形態の食肉スライサ100は、丸刃物1を回転させながら肉塊(図示しない)を保持する肉箱2を丸刃物1に向けて往復運動させ、肉箱2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物1で連続的に切り落し、丸刃物1の刃先と、丸刃物1の側方(手前側)に配置した当板5との隙間からスライス片(図示しない)を得ることができる装置である。
【0019】
肉箱2は、丸刃物1の回転面と平行方向に往復移動可能に機台3の天面部31に支持されている。本実施形態では、丸刃物1は左右方向に延びる水平方向の丸刃物回転軸1aを中心として回転可能に機台3上に支持され、丸刃物駆動用の電動モータ11の駆動によって回転駆動される。また、肉箱2は、肉箱駆動用の電動モータ41の回転によって駆動するクランク機構4により、丸刃物1の切断面と平行方向(前後方向)にほぼ水平に往復移動する。
【0020】
肉箱2は、肉塊が載置されるベルト式の下部コンベア21と、肉塊の上部に接触されるベルト式の上押えコンベア22とが配置されており、その間に肉塊を挟み込み得るようになっている。本実施形態では、肉箱2による肉塊の搬送方向(送り出し方向)を左向きとしている。肉箱2の停止位置(図1等参照)の肉送り方向下流側(本実施形態では左側)に当板5が立設している。
【0021】
当板5は、肉箱2から送り出される肉塊の先端位置を規制するためのものであり、起立姿勢で前後方向に延びて丸刃物1の手前側に立設されている。本実施形態では、当板5はステンレス製の板材で形成されており、腐食しにくく、肉塊等の食品が当たっても衛生的である。
【0022】
当板5は、機台3の天面部31の手前側左寄り部位に設けられた当板調節機構51に、肉箱2に対して位置調整可能に支持されている。当板調節機構51は、固定レバー52およびハンドル53の操作によって、肉箱2に対する当板5の左右位置を調整可能に設けられている。
【0023】
当板5の左側に、機台3の天面部31から張り出したまな板7が設けられている。まな板7は、天面部31と同じ高さ位置に設けられる天面部を備え、ハンドルノブ(図示省略)の回転操作によって容易に取外し可能に機台3に取り付けられている。
【0024】
肉箱2は、肉塊が載置されるベルト式の下部コンベア21と、跳ね上げ可能に支持されるとともに肉塊の上部に接触されるベルト式の上押えコンベア22と、コンベア21,22を駆動する電動モータ25と、電動モータ25の駆動力を上押えコンベア22及び下部コンベア21に伝達する伝達機構26とを備えている。本実施形態では、電動モータ25の駆動を制御する制御装置6の制御によって、下部コンベア21と上押えコンベア22とが連動して肉塊を肉箱2から当板5側へ向けて送り出す。
【0025】
これにより、肉塊を送り出すコンベア21,22を駆動させるための、肉箱2の往復移動を駆動源とする機械的な機構やその送り出し量調整機構が不要になるから、部品点数を低減でき、ひいては製造コストを低減できる。また、電動モータ25の駆動を電子制御できるから、肉塊の送り出し量の精度を向上させてスライス片の厚み精度を向上できるとともに、送り出し量の変更および設定操作が簡単になり、作業性が向上する。
【0026】
また、電動モータ25を肉塊の送り出し時とは逆転駆動させることで、コンベア21,22を送り搬送方向とは反対方向へ駆動させ、肉塊を肉箱2の後部側(本実施形態では右側)へ移動させて取り出しやすくすることも可能である。また、ベルト式の上下のコンベア21,22で肉塊を送り出すようにしたので、従来技術の下ベルトおよび上スパイクローラの構成に比べて、上押えコンベア22の先端部を肉塊の送り出し位置に近づけて配置できるから、最後の肉塊ロスを少なくできるとともに、スライス時に肉塊原料が傾斜するのを防止できる。
【0027】
図8及び図9も参照して、肉箱2の構成について説明する。肉箱2は、本体フレーム23上に配置された下部コンベア21と、本体フレーム23に跳ね上げ可能に支持された上押えコンベア22とを備えている。ここで、本体フレーム23の肉塊送り出し側の端部(本実施形態では左端部)を前部とし、その反対側の端部(右端部)を後部とする。
【0028】
本体フレーム23の手前縁部に、起立姿勢で前後方向に延びる手前側板27が立設されている。手前側板27は、本体フレーム23の底面に取り付くハンドルノブ27aを締緩操作することで、本体フレーム23に対して着脱可能に設けられている。本体フレーム23には、下部コンベア21と上押えコンベア22との間で前後方向に移動可能な幅寄せ板28が左右方向に延びて起立姿勢で設けられている。本体フレーム23の手前右角部に設けられたハンドル28aを回転操作することで、幅寄せ板28の前後位置を調節可能に設けられている。
【0029】
本体フレーム23の奥縁部の左寄り部位に、起立姿勢で前後方向に延びる奥側板29が立設している。本体フレーム23の後端部に、略水平姿勢で右側へ突設された補助トレー部30が前後方向に延設されている。補助トレー部30は、肉箱2の外面に頭部が露出した取付用ねじ30aの締結によって本体フレーム23に固着している。そして、補助トレー部30は、取付用ねじ30aを外すという簡単な作業で取外し可能に本体フレーム23に取り付いている。例えば、スライサ100の搬入時や撤去時に、補助トレー部30を取り外すことで、スライサ100の左右幅を小さくできるので作業性が向上する。
【0030】
図8等に示すように、本体フレーム23の底部の前部寄り部位に、機台3の天面部31の左寄り部位に設けた前後方向に延びる直動シャフト42に摺動自在に取り付くスライダ部材233が設けられている。直動シャフト42は、前後方向に延設されて天面部31に取り付く右向き開口のカバー部材42aで覆われている。また、本体フレーム23の底部の後部寄り部位に、天面部31の右寄り部位に設けた前後方向に延びるレール部材43に沿って転動自在に設けた複数のローラ部材234(図5参照)が設けられている。さらに、本体フレーム23には、天面部31の下方で水平回転するクランクアーム44の先端部に一端が回転自在に連結された連結棒45の他端に回転自在に連結されたる連結部材46が連結している。
【0031】
本実施形態では、連結部材46は、直動シャフト42とレール部材43との間の位置で天面部31に設けられた前後方向に長い天板長穴311を上下に挿通し、下端部が連結棒45の他端に連結されるとともに、上端部がスライダ部材233に固着して本体フレーム23に連結している。肉箱駆動用の電動モータ41の駆動によってクランク機構4のクランクアーム44が回転すると、肉箱2が直動シャフト42及びレール部材43に沿って前後方向に往復摺動する。
【0032】
図1図7から分かるように、本実施形態では、肉箱2の大部分が機台3の天面部31の内側に収まっている。これにより、スライサ100の設置面積を省スペース化できるとともに、スライス動作時の安全性を向上できる。なお、本実施形態では、幅寄せ板28の位置調整用のハンドル28aと補助トレー部30とが天面部31の内側からはみ出しているが、往復移動する肉箱2の全部の部品が天面部31の内側に収まるように肉箱2を構成しても構わない。
【0033】
肉箱2の下部コンベア21は、本体フレーム23の後部側(本実施形態では右側)寄りの部位に回動自在に支持された下コンベア駆動ローラ211と、本体フレーム23に支持された下コンベア前部フレーム212の前端部位に回動自在に支持された下コンベア従動ローラ213とを備えている。駆動ローラ211及び従動ローラ213は、回転軸を前後方向(肉箱2の摺動方向)に沿わせて配置されている。駆動ローラ211と従動ローラ213とに、肉塊を左右方向に搬送可能な下ベルト214が巻き掛けられている。
【0034】
上押えコンベア22は、本体フレーム23に回動自在に支持された上押え支持アーム24に保持されている。上押え支持アーム24の上押え回動軸241は前後方向に延びて、本体フレーム23の後部寄り部位に設けられている。本実施形態では、上押え回動軸241は、下部コンベア21の駆動ローラ221の回転軸221aに対して後ろ側斜め上の位置に設けられている。上押え支持アーム24は、本体フレーム23の奥側、手前側それぞれに起立配置された奥側アーム242及び手前側アーム243と、前後方向に延びてアーム242,243の上部位同士を連結する連結アーム244とを備えた門形の形態を有している。アーム242,243の下部それぞれに上押え回動軸241が設けられている。
【0035】
上押えコンベア22は、上押え支持アーム24の奥側アーム242に回動自在に支持された上コンベア駆動ローラ221と、奥側アーム242から肉塊の搬送下流側(本実施形態では左側)へ向けて延出した上コンベア前部フレーム222の前端部位に回動自在に支持された上コンベア従動ローラ223とを備えている。これらのローラ221,223は回転軸を前後方向に沿わせて配置されている。ローラ221,223に、肉塊を左右方向に搬送可能な上ベルト224が巻き掛けられている。
【0036】
図5図9等から分かるように、上押え支持アーム24の回動可能範囲は、本体フレーム23の奥側の側面部に取り付けた前ストッパー部材231と、本体フレーム23の奥側及び手前側の側面部それぞれに取り付けた後ストッパー部材232とで規制される。本実施形態では、上押え支持アーム24が前ストッパー部材231に接触した状態で上押えコンベア22は左低右高姿勢(肉塊送り出し側が低い姿勢)で斜め下向きに保持される。なお、下部コンベア21上に載置された肉塊の上部に上押えコンベア22の上ベルト224が接触した状態では、上押え支持アーム24の奥側アーム242は前ストッパー部材231から離間して配置され、上押えコンベア22などの上押え支持アーム24に取り付く部材の自重で肉塊が下部コンベア21側へ付勢される。手前側アーム243に、左側へ向けて延設されて先端部が上向きに屈曲した上押え回動操作レバー245が取り付けられている。
【0037】
また、上押え支持アーム24が後ストッパー部材232に接触した状態では、上押えコンベア22が後ろ側(右側)へ跳ね上げられて、上押えコンベア22の全部又は大部分が下部コンベア21の上方から退避する位置に保持されるように構成されている。本実施形態では、平面視で上コンベア従動ローラ223が下コンベア駆動ローラ211と重なる位置まで上押えコンベア22が退避可能に設けられている。これにより、上押えコンベア22を後ろ側へ跳ね上げた状態で、肉箱2の上方から下部コンベア21上に肉塊を出し入れする十分なスペースを確保できる。また、上押えコンベア22を後ろ側へ大きく跳ね上げ可能に設けたので、肉箱2内を掃除が容易になる。
【0038】
また、本実施形態では、上押えコンベア22を支持する上押え支持アーム24の上押え回動軸241を本体フレーム23の後部に設けているので、上押え支持アーム24の回動可能範囲を小さく抑えながら、上押えコンベア22の全部又は大部分を下部コンベア21の上方から退避可能に構成できる。
【0039】
また、上押えコンベア22を下部コンベア21の上方に配置している状態、すなわち上押えコンベア22と下部コンベア21とが対峙している状態で、肉箱2の後部(右側側面)は開放されている。これにより、下部コンベア21と上押えコンベア22とで肉塊を挟み込むにあたり、肉箱2の後部から下部コンベア21上に肉塊を投入し、コンベア21,22を肉塊送り出し方向へ回転駆動させることで、上押えコンベア22を跳ね上げなくても肉塊を送り出し側(当板5側)へ向けて搬送できる。
【0040】
次に、下部コンベア21、上押えコンベア22の駆動機構について説明する。肉箱2は、コンベア21,22を駆動する電動モータ25と、電動モータ25の駆動力をコンベア21,22それぞれに伝達する伝達機構26とを備えている。本実施形態では、電動モータ25は減速機付きの電動モータであり、モータ部251と減速機構部252とを備えている。肉箱2は、電動モータ25の駆動を制御する制御装置6の制御によって、下部コンベア21と上押えコンベア22とが連動して肉塊を肉箱2から送り出すように構成されている。
【0041】
電動モータ25は、上押え支持アーム24の奥側アーム242の上部に取り付けられている。本実施形態では、電動モータ25の減速機構部252の出力軸253が前後方向に向くようにして、減速機構部252が奥側アーム242の上部外側面に取り付いている。奥側アーム242に、電動モータ25を覆うモータカバー254が取り付けられている。
【0042】
電動モータ25及びモータカバー254は、上押えコンベア22などの上押え支持アーム24に取り付く部材の自重で肉塊を下部コンベア21側へ付勢するのに寄与する。これにより、上押え支持アーム24や上押えコンベア22に錘部材などを別途設けなくても、下部コンベア21上の肉塊を下向きに付勢するのに十分な力が得られるようにすることができ、部品点数の増加および肉箱2の重量増加を抑制できる。
【0043】
図8等に示すように、上押えコンベア22の上コンベア駆動ローラ221の回転軸221aは、減速機付きの電動モータ25の出力軸253と同軸上に位置して出力軸253に連結している。本実施形態では、出力軸253と回転軸221aは、軸継手255によって相対回転不能に連結している。
【0044】
このように、電動モータ25の出力軸253と上コンベア駆動ローラ221の回転軸221aとを同軸上に配置することで、下部コンベア21と連動して肉箱2から肉塊を押し出す上押えコンベア22に、電動モータ25の駆動力を簡素な構成で伝達でき、部品点数を低減できる。
【0045】
また、電動モータ25を上押え支持アーム24の上部に取り付けることで、スライサ100のスライス作業時に電動モータ25及びモータカバー254に肉片飛沫がかかりにくい構成とすることができる。また、スライサ100を水洗いする時に、電動モータ25及びモータカバー254に洗浄水がかかりにくい構成とすることができる。これにより、スライサ100の清掃性及び信頼性を向上できる。
【0046】
また、電動モータ25を上押え支持アーム24の上部に取り付けることで、肉箱2の側部(本実施形態では奥側の側部)の下部位で機台3の天面部31の上方に突出する部材を少なくできるので、天面部31の清掃性が向上する。なお、天面部31の右寄り部位に、電動モータ25に電力を供給する配線を挿通するための配線用長穴312が前後方向に延びて設けられている。
【0047】
図9等に示すように、伝達機構26は、奥側アーム242及び本体フレーム23の外側(奥側)の側面部に設けられている。伝達機構26は、電動モータ25の出力軸253に相対回転不能に取り付く駆動スプロケット261の駆動力を、上押え回動軸241に回転自在に支持された第1中間スプロケット262とスプロケット261とに巻き掛けられた第1チェーン263を通じて、第1中間スプロケット262に同軸上で相対回転不能に固着した第1中間ギア264に伝達する。
【0048】
本体フレーム23に突設した中間ギア軸265aに回転自在に支持された第2中間ギア265が第1中間ギア264に噛み合っており、第1中間ギア264に伝達された駆動力は第2中間ギア265に逆回転方向の駆動力として伝達される。第2中間ギア265に同軸上で相対回転不能に固着した第2中間スプロケット266と、中間ギア軸265aの左側(前部側)斜め下の位置で本体フレーム23から突設した下コンベア駆動ローラ211の回転軸211aに相対回転不能に取り付く従動スプロケット267とに第2チェーン268が播き掛けられている。スプロケット262,266及び中間ギア264,265は、本体フレーム23に取り付くギアカバー269で奥側(奥側アーム242から離れる側)への移動が規制されて、軸241,265aに抜け不能に保持されている。
【0049】
図9を参照してコンベア21,22の駆動について説明する。奥側から見て、電動モータ25の出力軸253が反時計回りに回転すると、駆動スプロケット261、軸継手255、上コンベア駆動ローラ221及び回転軸221aが反時計回りに回転する。上コンベア駆動ローラ221の反時計回りの回転により、上ベルト224及び上コンベア従動ローラ223も反時計回りに回転し、上押えコンベア22が肉送り回転方向に駆動する。
【0050】
また、駆動スプロケット261反時計回りに回転すると、第1チェーン263、第1中間スプロケット262、第1中間ギア264が反時計回りに回転し、第1中間ギア264に噛み合う第2中間ギア265が時計回りに回転する。第2中間ギア265が時計回りに回転すると、第2中間ギア265、第2チェーン268、従動スプロケット267、下コンベア駆動ローラ211及び回転軸211aが時計回りに回転する。下コンベア駆動ローラ211の時計回りの回転により、下ベルト214及び下コンベア従動ローラ213も時計回りに回転し、下部コンベア21が肉送り回転方向に駆動する。
【0051】
スライサ100は、電動モータ25を肉送り時とは逆回転駆動させることで、コンベア21,22を肉送り回転方向とは逆回転させて、肉箱2に搭載した肉塊を後部側(右側)へ搬送することも可能である。肉箱2に搭載した肉塊を逆送りすることで、肉箱2から肉塊を取り出しやすくなる。本実施形態では、機台3の前上部側面部341に設けた正逆送りスイッチ84を操作することで、コンベア21,22を回転駆動可能に構成している。
【0052】
本実施形態では、正逆送りスイッチ84は3ノッチのセレクタスイッチで構成されている。スイッチ84を中立位置から反時計回りに操作すると、コンベア21,22が肉送り方向に回転駆動する。これにより、肉箱2に投入した肉塊を当板5に近づくように移動させて、切り落とし処理の準備をできる。また、肉塊を肉箱2の後方から下部コンベア21の搬送方向上流側の箇所に載置し、スイッチ84を反時計回りに操作してコンベア21,22を肉送り方向に回転駆動させて肉塊を当板5側へ移動させることができる。
【0053】
一方、スイッチ84を中立位置から時計回りに操作すると、コンベア21,22が肉送り方向とは逆回転駆動する。例えば肉箱2から肉塊を取り出したいときに、スイッチ84を時計回りに操作してコンベア21,22を逆回転駆動させることで肉塊を肉箱2の後部側へ移動させて肉箱2の後方から取り出すことができる。このように、本実施形態のスライサ100は、肉塊を、手前側板27を超える高さまで持ち上げなくても肉箱2に投入したり肉箱2から取り出したりできるので、作業者の労力を低減できる。
【0054】
なお、正逆送りスイッチ84は、3ノッチのセレクタスイッチに限定されず、コンベア21,22の正回転駆動(肉送り方向駆動)と逆回転駆動とを操作できる操作具であればよい。例えば正逆送りスイッチ84の機能は複数の押しボタン式スイッチで実現されても構わない。
【0055】
本実施形態では、上押え支持アーム24を回動自在に支持する上押え回動軸241に第1中間ギア264を回動自在に支持しているので、第1中間ギア264を軸支するための専用の軸を別途設ける必要がなく、部品点数の増加及び製造コストの上昇を抑制できる。
【0056】
次に、図10及び図11も参照しながら、スライサ100の機台3について説明する。図1図5等に示すように、機台3は、平面視矩形の天面部31のコーナー部を支持する4本の脚体32を備えている。脚体32は、例えばステンレス製の四角パイプで形成されている。脚体32の下端部に、設置面の上に配置されるとともに高さ調節可能なアジャスタ321が設けられている。
【0057】
4本の脚体32は、肉箱2の往復移動方向の延長方向から見た正面視又は背面視で略鉛直姿勢に設けられる一方、往復移動方向に直交する方向から見た側面視で脚体32の下端部が上端部よりも外側に位置する傾斜姿勢に設けられている。これにより、左右幅を大きくすることなく、機台3の接地面積を前後方向(肉箱2の往復移動方向)に大きくすることができ、設置スペースの大幅な増加を抑制しつつ、間口が小さい設置場所への搬入作業のし易さを確保できる構成でありながら、スライサ100のスライス動作時の振動を低減できる。
【0058】
スライサ100の左側で前後方向に並ぶ脚体32の上端部同士は前後方向に延びるステンレス製の左上部フレーム331で連結され、右側で前後方向に並ぶ脚体32の上端部同士は前後方向に延びるステンレス製の右上部フレーム332で連結されている。図示は省略するが、スライサ100の手前側および奥側で左右方向に並ぶ脚体32の上端部同士は、左右方向に延びるステンレス製の手前上部フレームと奥上部フレームでそれぞれ連結されている。
【0059】
天面部31は、前後方向に長い長方形に設けられ、脚体32の上端部及び上部フレームを覆っている。天面部31には、上述のように、前後方向に延びる天板長穴311及び配線用長穴312が開口している。機台3の手前側で左右方向に並ぶ脚体32の上部間の空間は前上部側面部341で塞がれている。また、機台3の奥側で左右方向に並ぶ脚体32の上部間の空間は後ろ上部側面部342で覆われている。
【0060】
本実施形態では、天面部31及び前後の上部側面部341,342は、側方視で下向きコ字形に曲げ加工された1枚のステンレス板で形成されている。天面部31は平坦な板材で形成されているので、清掃性が高い。
【0061】
機台3は、4本の脚体32の中途部それぞれに固着して4本の脚体32で囲まれた空間を上下に区画する中間板部34と、4本の脚体32に固着して中間板部34の下方空間の側方を塞ぐ4つの側面部351,352,353,354とを備えている。また、機台3は、手前側で左右方向に並ぶ脚体32の中途部同士を連結する前横桟フレーム361と、奥側で左右方向に並ぶ脚体32の中途部同士を連結する後ろ横桟フレーム362とを備えている。横桟フレーム361,362は、ステンレス製の四角パイプで形成され、中間板部34よりも低い位置で左右の脚体32間に横架している。本実施形態では、横桟フレーム361,362は同じ高さ位置に設けられ、左右の脚体32の高さ方向中央部近くの部位同士を連結している。
【0062】
中間板部34は、平面視略長方形で、天面部31の下方に天面部31とは間隔をあけて配設されている。中間板部34は、4つのコーナー部が切り欠かれており、その切欠き部分に脚体32が嵌り込んで隙間なく固着している。中間板部34の前縁部と後ろ縁部は、前上部側面部341の下縁部と後ろ上部側面部342の下縁部に機台3の内側から連結している。天面部31と中間板部34の間の空間は、前後が上部側面部341,342で塞がれる一方、左右方向に開放されている。
【0063】
4つの側面部のうち、前側面部351は、ステンレス製の板材で形成され、機台3の手前側で左右方向に並ぶ脚体32と中間板部34と前横桟フレーム361とで囲まれた開口を隙間なく塞いでいる。前側面部351の上縁部は中間板部34の前縁部よりも後ろ側で中間板部34の下面に連結する一方、前側面部351の下縁部は前横桟フレーム361の上面の前縁部に連結している。これにより、前側面部351は、上部側が奥まった姿勢で傾斜して、左右の脚体32、中間板部34及び前横桟フレーム361に取り付いている。
【0064】
また、4つの側面部のうち、後ろ側面部352は、ステンレス製の板材で形成され、機台3の奥側で左右方向に並ぶ脚体32と中間板部34と前横桟フレーム361とで囲まれた開口を隙間なく塞いでいる。後ろ側面部352は、略四角形板状の形態を有し、後ろ上部側面部342の下方で、脚体32の後側面及び後ろ横桟フレーム362の後側面を覆うように、例えばボルト締結によって脚体32の後側面に着脱可能に取り付けられる。
【0065】
本実施形態では、後ろ側面部352の上縁部に、機台3の内向きに延出して左右の脚体32間に嵌り込む左右横長の延出片が設けられていることで、機台3内への水の浸入が防止されている。具体的には、後ろ側面部352が機台3に取り付けられた状態で、上記延出片が左右の脚体32の間で中間板部34の後縁部の下方に潜り込んで配置されて当該延出片の先端部が中間板部34の下面に接触することで、後ろ側面部352と後ろ上部側面部342の隙間の防水性を高めている。なお、後ろ側面部352の取付け構成はこれに限定されず、機台3内部への水の浸入を抑制できるのであればどのような構成であっても構わない。例えば、後ろ側面部352の周縁部にシール部材を設け、後ろ側面部352と、脚体32、後ろ横桟フレーム362及び後ろ上部側面部342との間の水密性が確保されているようにしてもよい。
【0066】
4つの側面部のうち、左側面部353と右側面部354は、機台3の左右それぞれで前後方向に並ぶ脚体32の間を塞ぐように、起立姿勢で前後方向に延びて設けられている。左右の側面部353,354の上縁部は中間板部34の左右縁部に連結している。左右の側面部353,354の前縁部及び後縁部は脚体32の左右外側の側面に沿って、脚体32の前後内側の側面に固着している。側面部353,354の下縁部は、前後の横桟フレーム361,362の下面とほぼ同じ高さ位置で前後方向に延びている。
【0067】
本実施形態では、中間板部34及び左右の側面部353,354は、正面視で下向きコ字形に曲げ加工された1枚のステンレス板で形成されており、機台3の強度メンバーを構成している。中間板部34及び側面部353,354と4本の脚体32は例えば溶接によって接合している。側面部353,354の前縁部及び後縁部は、脚体32の前後方向内向き側面に沿って上下方向に延設されるとともに、脚体32の前後方向内向き側面に突合せて固着しているので、機台3の前後方向の揺れに対する剛性を向上できる。また、中間板部34は平坦な板材で形成されているので、上面の清掃性が高い。
【0068】
また、前後の側面部351,352はステンレス製の板金で形成されている。そして、4本の脚体32と中間板部34と4つの側面部351,352,353,354とで囲まれた空間Sは、上方及び側方から水が浸入しないように防水性が確保されている。
【0069】
図3図4図5図10図11等に示すように、機台3には、空間Sの下開口を塞ぐ下カバー部37が着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、下カバー部37は前後長さが機台3の前後の横桟フレーム361,362の間隔よりも少し長く、左右幅が左右の側面部353,354の間隔よりも少し小さいステンレス製の板材で形成されている。下カバー部37は、略四角形板状の主面部37aから前向きに延出した前縁部37bが左右の脚体32の間で前横桟フレーム361の上面部に載置されて支持される一方、主面部37aから後ろ向きに延出したの後縁部37cが左右の脚体32の間で後ろ横桟フレーム362の下面部に着脱可能に取り付けられることで、機台3に前高後低の傾斜姿勢で脱落不能に保持される。このような下カバー部37の支持構造は、下カバー部37の前部を機台3に取り付ける固定具が不要なので、部品点数及び製造コストを低減できる。
【0070】
主面部37aの左右側縁部それぞれに側縁折り曲げ片37dが上向きに立設しており、下カバー部37の強度を向上している。また、下カバー部37の後ろ寄り部位に配線挿通穴37eが形成されている。本実施形態では、配線挿通穴37eは、主面部37aの右後ろ角部に設けられた後ろ向き開口の切欠き溝で形成されている。本実施形態では、配線挿通穴37eは、右後ろの脚体32の前向き側面の手前側に配設される位置に形成されている。制御装置6に外部から電力を供給するための電源ケーブルなどの配線の中途部を配線挿通穴37eに嵌め込んだ状態で下カバー部37を機台3に取り付けることで、配線を脚体32に沿わせて配設できる。また、下カバー部37の主面部37aは、機台3に前高後低の傾斜姿勢で保持されるので、何らかの事情で下カバー部37の主面部37a上に水が溜まるような状況が発生したときには、配線挿通穴37eと配線との隙間を通じて水を空間S外部に排出できる。
【0071】
このように、機台3の4本の脚体32に取り付く各側面部341,342,352,353,354は、脚体32の左右外側面または前後外側面に沿って設けられているので、機台3は凹凸が少ない形態を有し、高い清掃性を有している。また、機台3は下カバー部37が設置面とは十分な間隔をあけたスッキリとした構造を有しているので、機台3下の清掃がし易く、清掃作業性が向上する。
【0072】
空間Sの内部に、クランク機構4を駆動する肉箱駆動用の電動モータ41と、丸刃物1を回転駆動する丸刃物駆動用の電動モータ11と、電動モータ11,25,41の駆動を制御する制御装置6とが収容されている。
【0073】
丸刃物駆動用の電動モータ11は、全閉外扇型の電動モータであり、平面視で、モータ軸11aが前後方向(肉箱の往復移動方向)に略直交する姿勢で丸刃物1に重なって配置されている。本実施形態では、電動モータ11は、モータ軸11aを左側へ向けた姿勢で、機台3の左側面部353の奥寄り部位に固着している。モータ軸11aは機台3の左側面部353に設けた挿通穴(図示省略)を挿通して左側面部353から左向きに突出している。
【0074】
図10及び図11等に示すように、制御装置6は、平面視で肉箱2の往復移動方向と交差する前後一対の側面部351,352のうち後ろ側面部352(丸刃物1側の側面部)の近傍に配置されている。制御装置6は、空間Sに露出した盤61に、電気制御機器や電気機器、電気部品などの実装部品62を空間Sに露出させて保持している。本実施形態では、盤61は後ろ側面部352に対向して中間板部34の下面にボルトにて固着されており、盤61の後ろ側面部352とは反対側の面に実装部品62が保持されている。
【0075】
肉箱駆動用の電動モータ41は、全閉外扇型の減速機付きの電動モータであって、モータ部411と減速機構部412とを有している。減速機構部412は、モータ部411が制御装置6側になるようにして、平面視で停止位置の肉箱2に重なる位置で中間板部34の下面に固着している。本実施形態では、電動モータ41は、モータ部411のモータ軸が前後方向(肉箱2の往復移動方向)に略平行になる姿勢で、機台3の左右方向中央位置に配置されている。
【0076】
電動モータ41の減速機構部412の出力軸41aは中間板部34を挿通して上向きに突出して設けられている。出力軸41aの上端部にクランク機構4のクランクアーム44の基端部が固着している。出力軸41aと中間板部34との間にシール部材が設けられて水密性が確保されており、出力軸41aの挿通穴を通じた空間Sへの水分の浸入が防止されている。
【0077】
本実施形態では、肉箱駆動用の電動モータ41を機台3内の手前寄り箇所に配置する一方、丸刃物駆動用の電動モータ11及び制御装置6を機台3内の奥寄り箇所に配置しているので、前後方向の重量バランスがよく、スライサ100のスライス動作時の振動を低減できる。
【0078】
また、制御装置6が配置される空間Sは、上述のように上方及び側方の防水性が確保されている。したがって、制御装置6は、盤61や実装部品62を覆う防水性を確保した箱体を別途備える必要がないので、部品点数及び製造コストを低減できる。また、肉箱駆動用の電動モータ41と丸刃物駆動用の電動モータ11とを防水性が高い空間Sに配置することで、これらの電動モータ11,41の水分や汚れの付着に起因する故障を防止できる。
【0079】
図10に示すように、制御装置6が配置される空間Sには、制御装置6の他に全閉外扇型の電動モータ11,41が配置されている。これにより、電動モータ11,41の駆動によって、例えば図10中の矢印で示すような対流が発生して盤61や実装部品62の周囲の空気が動くので、制御装置6における結露が抑制され、水分に起因する制御装置6の故障や誤動作を防止できる。
【0080】
また、発熱源である電動モータ11,41と当板5及びまな板7との間に、クランク機構4が配設される天面部31と中間板部34との間の空間が設けられ、当該空間は左右方向に解放されいるので、電動モータ11,41の熱が当板5及びまな板7に伝わらない。これにより、肉箱2に搭載される肉塊や切り出されたスライス片の熱変性を防止できる。
【0081】
図1図7に示すように、機台3の天面部31の左奥部位上方に丸刃物1が起立姿勢で保持されている。丸刃物1は、機台3の左上部フレーム331及び左側面部353に固着した丸刃物台12に、回転面を前後方向に沿わせて回転自在に支持されている。丸刃物台12は、丸刃物駆動用の電動モータ11の駆動力を丸刃物1に伝達する伝達機構13の収容ケースを構成している。本実施形態では、丸刃物台12は略直方体の形態を有し、側方視で前高後低姿勢に傾斜して機台3に支持されている。
【0082】
伝達機構13は、丸刃物台12の内部の下寄り箇所に配置されて電動モータ11のモータ軸11aに相対回転不能に固着した駆動プーリ131と、丸刃物台12の右側面上寄り部位に回転自在に支持された左右方向に延びる丸刃物回転軸1aと、丸刃物回転軸1aの左端部に相対回転不能に固着した従動プーリ132と、プーリ131,132に巻き掛けたベルト133とを備えている。左側から見て電動モータ11のモータ軸11aが時計回りに回転する駆動力は、駆動プーリ131、ベルト133、従動プーリ132を通じて丸刃物回転軸1aに伝達され、丸刃物回転軸1aの右端部に相対回転不能に固着した丸刃物1が時計回りに回転駆動する。
【0083】
図1図7に示すように、丸刃物1の周辺に、丸刃物1と丸刃物台12との隙間を塞ぐ手前カバー14と、丸刃物1と天面部31との隙間を塞ぐ丸刃物下カバー15と、丸刃物1の上方及び奥側を覆う丸刃物上カバー16と、丸刃物1の上方及び奥側をカバー15,16ごと覆う飛沫防止カバー17が設けられている。丸刃物1の手前側に、丸刃物1の外周の刃先に沿った円弧状の奥側端部を有する当板5が立設している。これらのカバー14,15,16,17は例えばステンレス製である。
【0084】
図2及び図6から分かるように、手前カバー14は、丸刃物台12の手前側面部に支持され、丸刃物台12の手前側面部に沿った本体部141と、本体部141の丸刃物1側の縁部(右側縁部)から丸刃物1へ向けて起立姿勢で延びる傾斜板部142を備えている。傾斜板部142の先端部(丸刃物1側の端部)は、丸刃物1の表面に沿って配置されるとともに、傾斜板部142の基端部よりも奥側(後ろ側)に位置している。すなわち、傾斜板部142は、先端部が基端部よりも奥側に位置するように傾斜している。これにより、丸刃物1と当板5との間から切り出されるスライス片を作業者が受け取る作業スペースが広くなり、作業性が向上する。
【0085】
図3図6及び図12から分かるように、丸刃物下カバー15は、丸刃物1の下方で前後方向に沿って天面部31に立設されている。丸刃物下カバー15の上縁部は、丸刃物1の外周の刃先を左側から覆っている。これにより、丸刃物1の刃先への作業者の指頭や手袋の接触が防止されており、安全性を確保できる。
【0086】
図2図4図6及び図12から分かるように、丸刃物上カバー16は、丸刃物1の上方及び奥側を覆うように円弧状に設けられている。丸刃物上カバー16は、丸刃物台12の上端面部と丸刃物下カバー15の奥側上端部とで支持されている。飛沫防止カバー17は、丸刃物1及びカバー15,16の上方及び奥側と、丸刃物台12の奥側で丸刃物1及びカバー15,16の左側を覆うようにして、丸刃物台12及び機台3に取り付いている。丸刃物上カバー16及び飛沫防止カバー17は、丸刃物台12の上端面に設けたハンドルノブ19を回転操作して締緩することで、着脱可能に設けられている。
【0087】
さて、図12及び図13等に示すように、丸刃物上カバー16の奥側部位に、二度切り防止部材18が取り付く取付部161が奥側(丸刃物1とは反対側)へ向けて延出している。取付部161は、起立姿勢で前後方向に沿って延出した板状に設けられている。図13は、図4のA-A位置に沿った断面図である。
【0088】
取付部161の右側面に二度切り防止部材18が固着している。二度切り防止部材18は平板板状で、丸刃物1の奥側で丸刃物1の刃先に沿って配置される円弧状縁部181を備えている。二度切り防止部材18は、円弧状縁部181が丸刃物1の奥側(当板5とは反対側)で丸刃物1の刃先に近接するとともに、前後方向に沿った肉塊接触面部182が丸刃物1の刃先よりも少し右側(正面視で肉箱2側)に位置するようにして取付部161に固着している。
【0089】
スライサ100のスライス動作時に肉箱2が往復移動する際、肉箱2から送り出された肉塊の先端部が当板5の近傍で丸刃物1によって切り落とされた後、肉箱2がさらに奥側へ移動したときに、肉箱2からはみ出した肉塊の先端部が奥側(当板5とは反対側)で丸刃物1の刃先に接触する、いわゆる二度切りが発生することがある。このような二度切りは、肉塊の切断面を損傷するのでスライス片の見栄えを低下させる。
【0090】
本実施形態では、丸刃物1を挟んで当板5とは反対側の位置に、丸刃物1の刃先に近接するとともに丸刃物1の刃先よりも少し右側(正面視で肉箱2側)に位置する肉塊接触面部182を有する二度切り防止部材18を備えている。二度切り防止部材18は、肉箱2が丸刃物1側へ移動したときに肉塊が当板5とは反対側で丸刃物1の刃先に接触することを防止するので、肉塊の切断面の損傷によるスライス片の見栄えの低下を防止できる。
【0091】
図12に示すように、二度切り防止部材18は前後方向に位置調節可能に取付部161に取り付けられる。取付部161には前後方向に延びる上下一対の取付け穴161aが穿設されており、二度切り防止部材18には取付け穴161aに対応して上下一対のねじ挿通穴18aが穿設されている。
【0092】
取付け穴161aとねじ挿通穴18aとに挿通したねじ部材183の先端にナット部材184を螺合し、円弧状縁部181が丸刃物1の刃先に近接するように二度切り防止部材18を前後方向に位置合わせした上で、ねじ部材183及びナット部材184を締め込むことで、二度切り防止部材18の位置調整を行える。これにより、丸刃物1の刃先の研磨処理によって丸刃物1の外径が小さくなった場合であっても、肉塊接触面部182を丸刃物1の刃先に近接して配置でき、肉塊の二度切りをより正確かつ確実に防止できる。
【0093】
なお、本実施形態では二度切り防止部材18を丸刃物上カバー16に支持させているが、二度切り防止部材18は他の部材、例えば丸刃物下カバー15に支持されていてもよいし、二度切り防止部材18を支持する専用の部材を設けてもよい。
【0094】
図1~4及び図6等に示すように、機台3の前側面に、スライサ100を操作するための操作具群8が設けられている。操作具群8は、前上部側面部341の左寄り部位に配置され、運転・停止スイッチ81(運転スイッチ)、全停止スイッチ82(停止スイッチ)、緊急停止スイッチ83、正逆送りスイッチ84を備えている。運転・停止スイッチ81と全停止スイッチ82は、モーメンタリ形の押しボタンスイッチである。緊急停止スイッチ83は、ボタンを押し下げられた位置のままで保持する自己保持機構を有し、引っ張り操作又は回転操作することで復帰するノーマルクローズタイプの押しボタンスイッチである。正逆送りスイッチ84は3ノッチのセレクタスイッチである。
【0095】
本実施形態では、前上部側面部341の左上部位に、左から順に運転・停止スイッチ81、全停止スイッチ82、正逆送りスイッチ84が左右方向に並んで配置され、前上部側面部341の左下部位に緊急停止スイッチ83が配置されている。正逆送りスイッチ84の右側に、断面が略L字形のスイッチカバー87が正逆送りスイッチ84の右側に設けたカバー回動軸87a周りに回動自在に取り付けられている。図15等から分かるように、スイッチカバー87は、前上部側面部341に近接配置されてカバー回動軸87aに回動自在に支持される取付部871と、取付部871の縁部から手前向きに立設するとともにスイッチ81,82,84の上方を覆う長さに設けた上カバー部872と、上カバー部872の手前縁部から取付部871に対向する向きに延出するとともにスイッチ81,82,84の手前側を覆う長さに設けた手前カバー部873とを備えている。
【0096】
スイッチカバー87がカバー回動軸87aに吊り下げ支持された状態からカバー回動軸87aを支点としてスイッチカバー87を正面視で反時計回りにおおよそ270°回動させることで、スイッチカバー87が水平姿勢になってスイッチ81,82,84の上方及び手前側を覆うように構成されている。スイッチカバー87がスイッチ81,82,84を覆った状態では、作業者や台車などの異物のスイッチ81,82,84への接触を阻止できるので、意図しないスイッチ操作を防止でき、作業性及び安全性が向上する。
【0097】
また、機台3の前側面にタッチパネル85と電源スイッチ86も設けられている。タッチパネル85は、切り出すスライス片の厚みや肉箱2の往復移動速度などの各種設定を行うものであり、前側面部351の左寄り位置に設けられている。電源スイッチ86はスライサ100の電源のオンとオフを切り換えるものであり、前側面部351の右側上寄り部位に取り付けられたセレクタスイッチで構成されている。上述のように、実施形態では、前側面部351は上部側が奥まった姿勢で傾斜して、左右の脚体32、中間板部34の下面及び前横桟フレーム361に取り付いており、前側面部351に取り付けられたタッチパネル85及び電源スイッチ86に異物や作業者が接触しにくい構成になっている。
【0098】
操作具群8の各スイッチ81,82,83及びスイッチ84、タッチパネル85ならびに電源スイッチ86は、図示しない配線によって制御装置6に電気接続されている。これらの電気部品を操作することで、スライサ100を所望の動作で駆動させることができる。
【0099】
次に、図16を参照しながら、スライサ100の制御系について説明する。スライサ100には、丸刃物1及び肉箱2に関連する制御を司る制御手段としての制御装置6が搭載されている。制御装置6は、盤61に搭載された複数の実装部品62で構成され、各種演算処理や制御を実行するCPU(Central Processing Unit)や、制御プログラムや各種データを記憶したROM(Read Only Memory)と制御プログラムや各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含む記憶装置63、端子台などを有している。
【0100】
制御装置6には、丸刃物駆動用の電動モータ11、肉送りコンベア駆動用の電動モータ25、肉箱駆動用の電動モータ41、運転・停止スイッチ81、全停止スイッチ82、緊急停止スイッチ83、正逆送りスイッチ84、タッチパネル85、電源スイッチ86、スライス回数検出用センサ88、当板検知用センサ89等を接続している。タッチパネル85は、各種設定用画像やボタン画像などを画面に表示する表示装置85aと、画面上を指などで押すことで入力位置や座標を出力する入力装置85bとを備える。スライス回数検出用センサ88は、肉箱2の往復移動回数を検知するためのものである。当板検知用センサ89は、当板調節機構51への当板5の装着を検知するためのものである。
【0101】
電動モータ11,25,41は、直流モータ、交流モータ、ステッピングモータ、サーボモータなど、種類は特に限定されない。本実施形態では、肉送りコンベア駆動用の電動モータ25はブラシレスDCモータで構成され、丸刃物駆動用の電動モータ11及び肉箱駆動用の電動モータ41は三相モータで構成されている。
【0102】
本実施形態では、図11に示すように、スライス回数検出用センサ88は、防水性に優れた空間Sの内部で減速機構部412の下方に設けた誘導型近接センサで構成されている。センサ88は、電動モータ41の出力軸41aの下端に回転軸に対して偏在して設けた金属片(例えば出力軸41aの下端部に下向きに延出して取り付けられたボルト)の接近を検出可能な位置に配置されている。制御装置6は、スライス回数検出用センサ88の検出信号をカウントすることで、出力軸41aの回転数、つまりクランク機構4の回転数をカウント可能に構成し、ひいては肉箱2の往復移動回数をカウント可能に構成している。
【0103】
また、スライス回数検出用センサ88は、肉箱2が停止位置にあるときに上記金属片の接近を検出するように設けられている。すなわち、センサ88は、肉箱2が停止位置で停止していることを検知することもできる。
【0104】
なお、図2図5では、スライス回数検出用センサ88及びその支持部材の図示は省略している。また、スライス回数検出用センサ88は、肉箱2の往復移動を検出できるもの、もしくは肉箱2の位置を検出できるもの、又はそれらの両方の検出をできるものであればよく、例えば光電センサなどの非接触式のセンサの他、リミットスイッチなどの接触式のセンサであってもよい。また、スライス回数検出用センサ88は、空間Sの外部に配置されたものであっても構わない。
【0105】
図15に示すように、当板調節機構51への当板5の装着を検知するための当板検知用センサ89は、当板調節機構51の機台に設けた誘導型近接センサで構成されている。センサ89は、当板5の下部に一体に設けらて右向きに延出する前後一対の支持シャフト部材(図示省略)が当板調節機構51の機台に支持されていることを検出可能な位置に配置されている。なお、センサ89は、当板5の前後一対の支持シャフト部材のうち一方の支持シャフト部材の存在を検出する。
【0106】
次に、図17のフローチャートを参照しながら、スライサ100での肉塊切り落とし制御について説明する。なお、以下に開示のフローチャートに示すアルゴリズムは、制御装置6のROMにプログラムとして予め記憶されていて、RAMに読み出されてからCPUで実行される。ここで、肉箱2内には予め肉塊を投入していて、上押えコンベア22を肉塊の上面に接触させた状態にしているものとする。この段階では、肉箱2は停止位置にある(図1参照)。
【0107】
図17のフローチャートに示すように、電源スイッチ86をオンにし(S01:YES)、運転・停止スイッチ81を1回押し操作すると(S02:YES)、スライサ100は丸刃物駆動用の電動モータ11を回転駆動して丸刃物1を所定の速度で回転させる(S03)。この状態で、全停止スイッチ82を押し操作すると(S04:YES)、スライサ100は電動モータ11への電力供給を停止して丸刃物1の回転を停止させる(S05)。
【0108】
丸刃物1が回転している状態で運転・停止スイッチ81を押し操作すると(S06:YES)、スライサ100は運転・停止スイッチ81が予め設定された所定時間内に押された回数に応じて肉箱2を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させる。運転・停止スイッチ81を押し操作した回数が1回のとき(S07:1回)、スライサ100は肉箱駆動用の電動モータ41を回転駆動して肉箱2を一往復移動させる(S08)。これにより、肉箱2が保持する肉塊の先端部が丸刃物1によって切り落とされ、丸刃物1と当板5との間から一枚のスライス片が切り落とされる。
【0109】
一方、運転・停止スイッチ81を押し操作した回数が2回のとき(S07:2回)、スライサ100は肉箱2を連続的に往復移動させるように電動モータ41を回転駆動する(S09)。肉箱2が一往復移動する毎に、丸刃物1と当板5との間からスライス片が一枚ずつ切り落とされる。
【0110】
肉箱2の連続往復移動中に運転・停止スイッチ81を押し操作すると(S10:YES)、スライサ100は電動モータ41の回転駆動を制御して、肉箱2を停止位置(当板5に対向する位置)で停止させる(S11)。これにより、スライサ100の連続切り動作が停止する。
【0111】
肉箱2の往復移動が停止されても丸刃物1を回転させる電動モータ11は回転駆動しており、運転・停止スイッチ81を1回又は2回押し操作することで(S06:YES)、運転・停止スイッチ81を押した回数に応じた一枚切り又は連続切りの動作を再開できる。肉箱2が停止した状態で全停止スイッチ82を押し操作すると(S04:YES)、丸刃物1の回転が停止する(S05)。
【0112】
また、肉箱2の連続往復移動中に全停止スイッチ82を押し操作すると(S12:YES)、スライサ100は、肉箱2を停止位置で停止させるとともに(S13)、丸刃物1の回転を停止させる(S05)。そして、電源スイッチ86をオフにすることで(S01:NO)、スライサ100の電源が落ち、スライサ100の操作が終了する。
【0113】
このように、本実施形態のスライサ100は、作業者が押しボタン式の運転・停止スイッチ81を押すという簡単な操作で肉箱2を往復移動させてスライス動作させることができるので操作性が向上する。また、運転・停止スイッチ81が押された回数に応じて肉箱2を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させるので、作業者は一枚切りと連続切りの選択を簡単な操作で行うことができ、操作性が向上する。
【0114】
また、スライサ100は、運転・停止スイッチ81が押されて丸刃物1を回転駆動させた後に(S03)、さらに運転・停止スイッチ81が1回又は複数回押されることで(S06,S07)、肉箱2を一往復移動又は連続往復移動させる(S08,S09)。このように、肉箱2が往復移動を開始する前に丸刃物1を予め回転駆動させておくようにしたので、丸刃物1の回転速度不足によるスライス片(特に1枚目のスライス片)の切断面の劣化を防止できる。また、丸刃物1の回転駆動を開始させる操作と、肉箱2の往復移動を開始させる操作とを同じ運転・停止スイッチ81を使用して行うので、肉箱2が往復移動を開始する時点で、肉塊からスライス片を綺麗に切り出すのに十分な丸刃物1の回転速度を確保できる。
【0115】
また、本実施形態では、運転・停止スイッチ81に肉箱2の停止機能を持たせている。これにより、連続スライス動作中(肉箱2の連続往復移動中)に運転・停止スイッチ81を押し操作することで、肉箱2を停止位置で停止させることができる。具体的には、図17のステップS10で、肉箱2の連続往復移動中に運転・停止スイッチ81の押し操作を監視し、運転・停止スイッチ81が押し操作されたときは、肉箱2を停止位置で停止させる(S10:YES,S11)。これにより、1つの運転・停止スイッチ81で、一枚切り動作又は連続スライス動作の開始(S7)と、連続スライス動作の停止(S10、S11)とを操作できるので、操作性及び作業性が向上する。
【0116】
また、連続スライス動作を停止させるにあたり、全停止スイッチ82を押すつもりが誤って運転・停止スイッチ81を押してしまった場合でも肉箱2を停止位置に停止できるので、安全性が向上する。また、スライス片をパックに盛り付ける作業者は機台3の左手前に立って作業を行うことが多く、運転・停止スイッチ81は機台3の前上部側面部341の左上寄り部位に配設される操作具群8の中で最も作業者に近い位置(最も左側の位置)に配設されているので、スライサ100は操作性及び作業性に優れている。
【0117】
また、本実施形態では、運転・停止スイッチ81で、丸刃物1の回転駆動の開始(S03)も操作できるので、操作性及び作業性がさらに向上する。なお、肉箱2の連続往復移動中に肉箱2を停止させるための押しボタン式スイッチ等の操作具や、丸刃物1の回転を停止させるための操作具をスイッチ81,82,83とは別途設けても構わない。
【0118】
なお、スライサ100の作動中に緊急停止スイッチ83が押し操作されたときは、モータ11,41への電力供給が直ちに停止され、丸刃物1の回転や肉箱2の往復移動が停止する。そして、緊急停止スイッチ83は押し下げられた状態を保持し、運転・停止スイッチ81を押し操作してもモータ11,41への電力供給は行われず、丸刃物1及び肉箱2が動作しないように構成されている。
【0119】
緊急停止を解除するときには緊急停止スイッチ83を引っ張り操作又は回転操作することで緊急停止スイッチ83をクローズ状態に復帰させる。そして、運転・停止スイッチ81を押し操作すると、スライサ100は、肉箱2が停止位置にないときには肉箱2を停止位置へ移動させるように電動モータ41及びクランク機構4が駆動し、図17のステップS2の状態になる。すなわち、緊急停止スイッチ83が押し操作されて緊急停止した後は、運転・停止スイッチ81を押し操作しても丸刃物1の回転や肉箱2の往復移動が行われず、安全性を確保している。
【0120】
次に、図18のフローチャートを参照しながら、操作ロック状態の動作を含む制御について説明する。ステップS01~S11の動作は図17と同じなので、それらのステップの詳細な説明は省略する。
【0121】
本実施形態のスライサ100は、運転・停止スイッチ81が押されても丸刃物1及び肉箱2が動作しない操作ロック状態(S05-1)に移行する機能を備えている。この制御は制御装置6によって実行される。例えば、タッチパネル85に操作ロック画面(図示省略)が表示されることで、作業者にスライサ100が操作ロック状態であることを通知可能に構成している。なお、操作ロック状態であることは、別途設けたランプ等で表示されても構わない。
【0122】
操作ロック状態は、所定のロック解除操作を行うことで解除できる(S05-2)。例えば、全停止スイッチ82を2回続けて押し操作するというロック解除操作を行うと(S05-2:YES)、操作ロック状態が解除されて、運転・停止スイッチ81が押されたときに丸刃物1もしくは丸刃物1及び肉箱2が動作する操作可能状態に復帰する(S05-3)。
【0123】
なお、所定のロック解除操作は、全停止スイッチ82の2回連続押し操作に限定されず、例えば運転・停止スイッチ81の2回連続押し操作であってもよい。このように、押しボタン式のスイッチ81又は82を2回続けて押し操作することをロック解除操作とすることで、作業者や台車などの異物がスイッチ81,82に意図せずに当たってロック解除されることを防止でき、安全性を向上できる。
【0124】
また、スイッチ81又は82を1回又は3回以上押し操作することをロック解除操作としても構わない。また、ロック解除操作は、例えば、スイッチ81,82とは別途設けられた押しボタン式のスイッチを1回又は複数回押し操作することであっても構わない。また、ロック解除操作は、タッチパネル85に操作ロック状態解除用のボタン画像を表示して、そのボタン画像をタッチ操作することであっても構わない。
【0125】
さて、操作ロック状態への移行条件の例は、例えば、全停止スイッチ82が押し操作されたときである。また、本実施形態では、運転・停止スイッチ81が押し操作されていない時間(肉箱2の連続往復移動制御をしている状態を除く)が所定の待機時間を経過したときも、操作ロック状態へ移行する。
【0126】
図18に示すように、電源スイッチ86をオンした直後又は操作可能状態に復帰した後(S01:YES)、運転・停止スイッチ81が操作されることなく(S02:NO)、所定の待機時間が経過したとき(S01-1:YES)、又は所定待機時間が経過する前に全停止スイッチ82が押し操作されたとき(S01-1:NO、S01-2:YES)、スライサ100は操作ロック状態へ移行する(S05-1)。ここでの所定の待機時間は、例えば60秒であるが適宜変更可能である。
【0127】
また、丸刃物1が回転駆動し、かつ肉箱2が停止している状態(S03、S08、S11)において、運転・停止スイッチ81が操作されることなく(S06:NO)、所定の待機時間が経過したとき(S03-1:YES)、又は所定待機時間が経過する前に全停止スイッチ82が押し操作されたとき(S03-1:NO、S4:YES)、スライサ100は、丸刃物1を停止させるとともに操作ロック状態へ移行する(S05、S05-1)。ここでの所定の待機時間も、例えば60秒であるが適宜変更可能であり、また、ステップS01-1の待機時間と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0128】
また、肉箱2の連続往復移動駆動中に全停止スイッチ82が押し操作されたとき(S12:YES)、スライサ100は、肉箱2を停止位置で停止させ、丸刃物1を停止させるとともに、操作ロック状態へ移行する(S13、S05、S05-1)。
【0129】
本実施形態のスライサ100は、運転・停止スイッチ81が押されても丸刃物1及び肉箱2が動作しない操作ロック状態に移行する機能を備えている。これにより、意図せずに運転・停止スイッチ81が押し操作されることによるスライサ100の誤操作を防止でき、安全性を向上できる。また、スライサ100は、肉箱2が停止位置に停止した状態で丸刃物1が回転駆動しているときに、運転・停止スイッチ81が所定の待機時間だけ押し操作されないときは操作ロック状態に移行して丸刃物1を停止させる。したがって、安全性を向上できるとともに、無駄な電力の消費を抑制できるから経済的である。
【0130】
さて、スライサ100は、制御装置6によって、スライス片の厚み(肉塊の送り出し量)や肉箱2の移動速度などの各種設定を可能に構成している。図19は、機台3の手前側面に設けたタッチパネル85に表示される厚み設定画面を示す図である。
【0131】
タッチパネル85に設けた液晶パネル等の表示装置85aに表示される厚み設定画面851は、表示装置85aの下部に左から順に並べた厚み設定タブ画像851a、速度設定タブ画像852a、メニュータブ画像853aと、表示装置85aの中央部に大きく表示される設定厚み表示画像851bと、設定厚み表示画像851bを左右に挟んで表示される厚み減少ボタン画像851c、厚み増加ボタン画像851dとを有する。設定厚み表示画像851bに表示される数値は例えばmm(ミリメートル)である。本実施形態では、例えば0.1mm単位でスライス片の厚みを設定可能に構成している。作業者は、厚み減少ボタン画像851c又は厚み増加ボタン画像851dを押し操作することで、設定厚み表示画像851bに表示される設定厚み値を所望の値に増減操作できる。
【0132】
制御装置6は、設定厚み表示画像851bに表示される設定厚み値を記憶装置63に記憶するとともに、スライス動作時にその設定厚み値で肉塊が肉箱2から送り出されるように電動モータ25の回転駆動を制御する。本実施形態のスライサ100は、電動モータ25の駆動を電子制御できるから、肉塊の送り出し量の精度を向上させてスライス片の厚み精度を向上できるとともに、送り出し量の変更および設定操作が簡単になり、作業性が向上する。
【0133】
また、本実施形態では、設定したスライス片の設定厚み値を呼び出し可能に記憶装置63に記憶させることも可能である。図20は、タッチパネル85に表示される設定記憶画面を示す図である。設定記憶画面854は、設定厚み表示画像851bと同様に表示装置85aの下部に表示されるタブ画像851a,852a,853aと、表示装置85aの中央部に大きく表示される記憶番号表示画像854aと、記憶番号表示画像854aを左右に挟んで表示される番号繰下げボタン画像854b、番号繰上げボタン画像854cとを有する。
【0134】
厚み設定画面851の設定厚み表示画像851bを長押し操作すると、設定記憶画面854が表示される。作業者は、設定記憶画面854のボタン画像854b,854cを押し操作して所望の記憶番号を記憶番号表示画像854aに表示させた上で、記憶番号表示画像854aを長押し操作することで、表示中の記憶番号に紐づけて厚み設定画面851で設定した設定厚み値が記憶装置63に記憶される。記憶装置63に記憶した設定厚み値を読み出すときは、設定記憶画面854のボタン画像854b,854cを押し操作して記憶番号表示画像854aに所望の記憶番号を表示させた上で、記憶番号表示画像854aをタッチ操作(押し操作)することで読み出すことができる。
【0135】
なお、スライス片の設定厚み値に合わせて丸刃物1の刃先と当板5との間の隙間(開き量)を調整する操作を行う。具体的には、当板調節機構51の固定レバー52を緩み方向に操作してロックを外した上で、当板調節機構51に設けた目盛りを見ながらハンドル53を回転操作し、開き量を調整する。また、各記憶番号に、上記スライス片設定厚み値と、後述する肉箱移動速度、間欠枚数及び待ち時間を紐づけて、記憶装置63に読み出し可能に記憶させることも可能である。
【0136】
図21に示すように、タッチパネル85に表示された速度設定タブ画像852aをタッチ操作すると、表示装置85aに速度設定画面852が表示される。速度設定画面852は、設定速度表示画像852bと、設定間欠枚数表示画像852cと、設定待ち時間表示画像852dとを有する。
【0137】
設定速度表示画像852bをタッチ操作すると、速度選択画像(図示省略)が表示され、所望の速度を選択操作すると設定速度表示画像852bに選択した速度(例えば1分あたりの肉箱2の往復移動回数)が表示される。制御装置6は、肉箱2を往復移動させるときに、設定速度表示画像852bに設定された速度に合わせて、肉箱駆動用の電動モータ41を回転駆動させる。
【0138】
設定間欠枚数表示画像852cをタッチ操作すると、間欠枚数入力画面(図示省略)が表示され、所望の数値を入力すると、設定間欠枚数表示画像852cに入力した数値(設定間欠枚数)が表示される。また、設定待ち時間表示画像852dをタッチ操作すると、待ち時間入力画面(図示省略)が表示され、所望の数値を入力すると、設定待ち時間表示画像852dに入力した数値(例えば、秒単位の設定待ち時間)が表示される。制御装置6は、肉箱2を連続往復移動させるときに、設定された間欠枚数(設定間欠枚数)のスライス片を切り落とす度に、設定された待ち時間(設定待ち時間)の間だけ肉箱2を停止位置に停止させた後、肉箱2の連続往復移動を再開するように肉箱駆動用の電動モータ41の回転駆動を制御する。なお、設定間欠枚数は0又は1以上の数値を設定可能である。そして設定間欠枚数が0に設定されているとき、制御装置6は、肉箱2を連続往復移動させるにあたり、肉箱駆動用の電動モータ41の回転駆動を停止させることなく(肉箱2を停止位置で一時停止させずに)、肉箱2を連続往復移動させる。
【0139】
図22のフローチャートを参照しながら、間欠スライス動作を含む肉塊切り落とし制御について説明する。ステップS01~S08までのフローは図17と同じなので説明は省略する。
【0140】
制御装置6は、肉箱2を連続的に往復移動させるように電動モータ41を回転駆動すると(S09)、スライス回数検出用センサ88の検出信号を利用して肉箱2の往復移動回数(スライス回数)をカウントする(S09-1)。往復移動回数の数値が速度設定画面852の設定間欠枚数表示画像852cで設定した間欠枚数の数値に到達していないとき、又は設定間欠枚数が「0」に設定されているとき(S09-2:NO)、制御装置6は運転・停止スイッチ81及び全停止スイッチ82の操作を監視しながら(S10,S12)、肉箱2の連続往復移動(連続スライス動作)を継続するように肉箱駆動用の電動モータ41を回転駆動する(S09)。
【0141】
肉箱2の往復移動回数の数値が設定した間欠枚数の数値に到達したとき(S09-2:YES)、制御装置6は、電動モータ41の回転駆動を制御して肉箱2を停止位置で停止させる(S09-3)。そして、制御装置6は、往復回数カウント値をリセットする一方で(S09-4)、速度設定画面852の設定待ち時間表示画像852dで設定した待ち時間が経過するまで肉箱2を停止位置で停止させる(S09-5:NO)。肉箱2の停止から時間表示画像852dで設定した待ち時間を経過すると(S09-5:YES)、制御装置6は全停止スイッチ82の操作を監視しながら(S10)、肉箱2の連続往復移動を再開する(S09)。
【0142】
このように、スライサ100は、連続スライス動作中に、設定可能な待ち時間(間欠時間)だけ肉箱2を停止位置で停止する間欠スライス動作を可能に構成している。そして、スライス片をパックに盛り付けする作業者がパックを入れ物へ収容する時間を間欠時間として設定することで、運転・停止スイッチ81を押し操作しなくても運転再開できるので、無駄な動きが無くなり、操作性が向上する。また、パックに盛り付けるスライス片の枚数に合わせて間欠枚数を所望の数値に設定できるので、ユーザーフレンドリーである。さらに、肉箱往復移動速度(肉箱速度)や間欠枚数、間欠時間を適宜設定変更できるので、例えば折り曲げしてのパック盛り付けなど、作業者の技量や目的に合わせた間欠スライス動作を設定できる。
【0143】
また、間欠枚数を1枚に設定するとともに間欠時間と肉箱速度とを適宜設定した上で肉箱2を連続往復移動させることで、連続スライス動作において肉箱2の移動速度を確保しながら、スライス片が切り落とされる時間間隔を長くすることも可能である。例えば、肉箱速度の設定値「40」のとき、制御装置6は肉箱2が1分間で40往復するように肉箱駆動用の電動モータ41の回転速度を制御する。このとき、肉箱2は停止位置で一時停止することなく往復移動を繰り返すので、肉箱2の一往復あたりに要する時間は1.5秒である。ここで、例えば間欠枚数を1枚、間欠時間を1秒に設定すると、肉箱2が一往復動作する時間間隔は、肉箱一往復あたりの所要時間1.5秒に間欠時間1秒を加えた2.5秒になる。すなわち、1分間に24枚のスライス片を等時間間隔で切り落とすように設定できる。
【0144】
このように、間欠枚数を1枚に設定することで、連続スライス動作中に、肉箱2の移動速度を落とすことなく、1分間に切り落とされるスライス片の枚数を少なくすることができる。例えば、スライス片を1枚ずつ丁寧に盛り付け作業したいときに肉箱2の移動速度(肉箱往復移動速度の設定値)を小さくしすぎると、肉塊からスライス片を切り落とす際に肉塊と丸刃物1とが接触している時間が長くなり、スライス片の劣化が懸念される。このような懸念はスライサ100を一枚切り操作することで解消できるが、一枚切り操作するには運転・停止スイッチ81を都度押し操作しなければならないので作業者の労力が増加する。
【0145】
そこで、間欠枚数を1枚に設定するとともに間欠時間と肉箱速度とを適宜設定した上で肉箱2を連続スライス動作させることで、肉塊と丸刃物1の長時間接触によるスライス片の劣化を防止しながら、スライス片が切り落とされる時間間隔を長くできる。さらに、肉箱2を連続スライス動作させることで都度の運転・停止スイッチ81の押し操作を省略できるので、作業者の労力を低減できる。なお、本実施形態のスライサ100において、設定間欠枚数を2枚以上の所望の枚数に設定できることは言うまでもない。
【0146】
図23に示すように、タッチパネル85に表示されたメニュータブ画像853aをタッチ操作すると、表示装置85aにメニュー画面853が表示される。メニュー画面853は、戻りボタン画像853bと、オプション表示ボタン画像853cと、研磨処理モード選択ボタン画像853dとを有する。メニュー画面853の右上領域に「Back」の文字で表示された戻りボタン画像853bをタッチ操作すると、厚み設定画面851に移行する。
【0147】
図24に示すように、オプション表示ボタン画像853cをタッチ操作すると、表示装置85aにオプション画面855が表示される。オプション画面855は、戻りボタン画像855aと、一枚切り/連続運転切替ボタン画像855cと、送りバック切替ボタン画像855dと、速度制限切替ボタン画像855eと、スライス音切替ボタン画像855fとを有する。オプション画面855の右上領域の戻りボタン画像855aをタッチ操作すると、メニュー画面853に移行する。
【0148】
オプション画面855の一枚切り/連続運転切替ボタン画像855cは、運転・停止スイッチ81を1回押し操作したときに、肉箱2が一往復移動で停止する一枚切り動作を行わせるか、停止指示信号が入力されるまで肉箱2の連続往復移動を継続する連続スライス動作を行わせるかを切り替えて設定するためのボタン画像である。
【0149】
ボタン画像855cを選択状態(チェック状態)にしておくと、制御装置6は、図17及び図22のステップS6,S7で運転・停止スイッチ81の押し操作が1回だけされたときには肉箱2を一枚切り動作させ、2回されたときは肉箱2を連続スライス動作させる。一方、ボタン画像855cを非選択状態(チェックなし状態)にしておくと、制御装置6は、図17及び図22のステップS6,S7で運転・停止スイッチ81の押し操作が1回だけされたときは肉箱2を連続スライス動作させ、2回されたときは肉箱2を一枚切り動作させる。これにより、作業者は、連続スライス動作での使用が多いときにはボタン画像855cを非選択状態に設定しておくことで、運転・停止スイッチ81を1回だけ押し操作することでスライサ100を連続スライス動作させることができるので、利便性や操作性、連続スライス動作の開始操作の確実性が向上する。
【0150】
オプション画面855の送りバック切替ボタン画像855dは、肉箱2の往復移動に際して、肉箱2が丸刃物1に対向する奥側位置から停止位置へ向けて復移動するときに肉塊を送り出し方向とは反対側へ退避させるか否かを選択するボタン画像である。ボタン画像855dを選択状態(チェック状態)にしておくと、制御装置6は、肉箱2の往復移動に際して、肉箱2が丸刃物1に対向する奥側位置に到達したときに、肉箱2の下部コンベア21と上押えコンベア22とを肉送り時とは逆回転するように電動モータ25を回転駆動させて肉塊を送り出し方向とは反対側へ退避させる。換言すれば、制御装置6は、肉箱2が奥側位置に到達すると、肉塊を所定退避量だけバックさせる。これにより、肉箱2が停止位置へ向けて復移動するときに、肉塊が丸刃物1に接触する(擦れる)のを低減でき、スライス片の見栄えを向上できる。
【0151】
速度制限切替ボタン画像855eは、厚み設定画面851で設定されたスライス片の厚みに対して肉箱2の往復移動速度が大きいときに、肉箱2の往復移動速度を制限するが否かを選択するボタン画像である。厚み設定画面851に設定したスライス片の厚みに対して、速度設定画面852の設定速度表示画像852bに設定した往復移動速度が大きすぎると、肉箱2における肉塊の送出し動作が間に合わず、肉塊が斜めに切り落とされてスライス片の厚みが不均一になることがある。
【0152】
速度制限切替ボタン画像855eを選択状態(チェック状態)にしておくと、制御装置6は、スライス片の設定厚みに対して肉塊の送り出しが間に合わない程度に肉箱2の往復移動速度が設定されているときに、肉箱2の往復移動速度を肉塊の送り出しが間に合う速度に自動で変更する。これにより、肉塊が斜めに切り落とされたり、スライス片が不均一になったりする不具合を防止できる。
【0153】
スライス音切替ボタン画像855fは、運転・停止スイッチ81及び全停止スイッチ82を押し操作した際のブザー音をオン/オフに切り替えて設定するためのボタン画像である。ボタン画像855fを非選択状態に(チェックなし状態)にしておくとボタン81,82を押し操作してもブザー音が鳴らないように設定できる。
【0154】
図25(A)に示すように、研磨処理モードを選択すべく、メニュー画面853の研磨処理モード選択ボタン画像853dをタッチ操作すると、制御装置6は表示装置85aに研磨処理モード画面856を表示し、研磨処理モードに移行する。研磨処理モード画面856は、戻りボタン画像856aと、タンク位置移動ボタン画像856bと、丸刃回転ボタン画像856cとを有する。なお、研磨処理モード画面856の右上領域の戻りボタン画像856aをタッチ操作すると、メニュー画面853に戻る。
【0155】
図26のフローチャートも参照しながら、丸刃物1の研磨処理の手順について説明する。丸刃物1の研磨処理を実施するにあたり、丸刃物1及び肉箱2が停止した状態で、タッチパネル85の表示装置85aに表示されたメニュータブ画像853aをタッチ操作してメニュー画面853を表示させる。そして、メニュー画面853の研磨処理モード選択ボタン画像853dをタッチ操作して研磨処理モード画面856を表示させ、研磨処理モードへ移行する(S21:YES、図25(A)参照)。
【0156】
研磨処理モード画面856のタンク位置移動ボタン画像856bをタッチ操作すると、ボタン画像856bのボックスにチェックマークが表示されて選択状態になる(S22:YES、図25(B)参照)。この状態で、運転・停止スイッチ81を押し操作すると(S23:YES)、制御装置6は肉箱駆動用の電動モータ41を回転駆動させて、肉箱2を丸刃物1に対向する奥側位置へ移動して停止させる(S24、図14及び図15参照)。
【0157】
図14及び図15に示すように、当板調節機構51の固定レバー52を緩む方向へ操作し、ハンドル53を回転操作して当板5(図6等参照)を当板調節機構51の機台から取り外す。このとき、当板5の機台への装着を検知する当板検知用センサ89の検出信号がオフ(非検出)になる。そして、丸刃物台12の上部に設けた研磨装置取付ブラケット9a(図2図3及び図6等参照)に研磨装置9を取り付ける(S25)。研磨装置9は、奥側位置で停止した肉箱2の手前側板27よりも手前側の位置で表砥石車91及び裏砥石車92が丸刃物1の刃先に当接する姿勢で取付ブラケット9aに支持される。
【0158】
次に、研磨処理モード画面856の丸刃回転ボタン画像856cをタッチ操作すると、ボタン画像856cのボックスにチェックマークが表示されて選択状態になる(S26:YES、図25(C)参照)。なお、丸刃回転ボタン画像856cをタッチ操作することで、タンク位置移動ボタン画像856bの選択は解除される。そして、運転・停止スイッチ81を押し操作すると(S27:YES)、制御装置6は、当板検知用センサ89が当板5の装着を検知していないときは(S28:NO)、丸刃物駆動用の電動モータ11を回転駆動させる(S29)。丸刃物1の刃先に砥石車91,92が適切な押圧力で当接する状態で丸刃物1が回転することで、刃先の研磨処理が行われる。
【0159】
なお、当板検知用センサ89が当板5の装着を検知しているとき(S28:YES)、当板調節機構51に当板5が装着され、研磨装置9が未装着の状態なので、制御装置6は丸刃物1を回転駆動させない。この場合、作業者は当板5の取外しと研磨装置9の取付け作業を適切に行った上で(S25)、運転・停止スイッチ81の押し操作を行う(S27)。
【0160】
丸刃物1の研磨処理中に全停止スイッチ82(運転・停止スイッチ81でも良い)を押し操作すると(S30:YES)、スライサ100は電動モータ11への電力供給を停止して丸刃物1の回転を停止させる(S31)。作業者は、丸刃物1の刃先の状態を確認し、再度研磨処理を行うときは(S32:NO)、丸刃回転ボタン画像856cが選択された状態で運転・停止スイッチ81を押し操作して丸刃物1を回転させる(S26~S28)。一方、丸刃物1の研磨処理を完了するとき(S32:YES)、研磨装置9を研磨装置取付ブラケット9aから取り外し、当板調節機構51の機台に当板5を取り付ける(S33)。当板検知用センサ89の検出信号はオン(検出)になる。
【0161】
次に、肉箱2を停止位置に戻すにあたり、タッチパネル85に表示された研磨処理モード画面856のタンク位置移動ボタン画像856bをタッチ操作して選択状態にする(S34:YES、図25(B)参照)。タンク位置移動ボタン画像856bをタッチ操作することで、丸刃回転ボタン画像856cの選択は解除される。そして、運転・停止スイッチ81を押し操作すると(S35:YES)、制御装置6は、当板検知用センサ89が当板5の装着を検知しているときは(S36:YES)、肉箱駆動用の電動モータ41を回転駆動させて、肉箱2を当板5に対向する停止位置へ移動して停止させる(S37、図1図7等参照)。
【0162】
これにより、丸刃物1の研磨処理が完了する。研磨処理モード画面856の戻りボタン画像856aをタッチ操作すると、制御装置6はタッチパネル85の表示装置85aにメニュー画面853を表示し、研磨処理モードを解除する。なお、タンク位置移動ボタン画像856bが選択された状態で当板検知用センサ89が当板5の装着を検知していないとき(S36:NO)、丸刃物1に研磨装置9の砥石車91,92が当接している可能性があるので、制御装置6は肉箱2を移動させない。これにより、肉箱2と研磨装置9との接触を防止できる。また、研磨処理モードにおいて肉箱2を奥側位置へ移動させる際に(S22~S24)、当板5の装着検知判断を行っても構わない。
【0163】
このように、丸刃物1の研磨処理を実施するにあたり、肉箱2が奥側位置で停止し、研磨装置の砥石車が肉箱よりも手前側で丸刃物1の刃先に当接した状態で、丸刃物1を回転駆動させて研磨処理を実施するように構成した。これにより、肉箱2の内部への砥石粉の飛散を防止できるので、衛生的であるとともに、研磨処理後に肉箱2内の砥石粉を除去する手間を省略できる。
【0164】
なお、本実施形態では、制御装置6は、当板検知用センサ89が当板5の装着を検知していないときは、研磨処理モード画面856の丸刃回転ボタン画像856cが選択されている場合を除き、運転・停止スイッチ81が押し操作されても丸刃物1を回転駆動させない。このように、当板5が装着されていないときは、丸刃回転ボタン画像856cを選択するという操作が行われた上で丸刃物1の回転駆動が可能な状態になるので、作業者は安全性を確認しながら研磨処理を実施できる。また、本実施形態では、制御装置6は、当板検知用センサ89が当板5の装着を検知していないとき、肉箱2を往復移動駆動させないようにしている。
【0165】
本実施形態の食肉スライサ100は、機台3の一側に立設されて回転する丸刃物1と、丸刃物1の回転面に沿って往復移動する肉箱2とを備え、肉箱2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物1で切り落してスライス片を得るものである。スライサ100は、機台3の一側面に設けられた押しボタン式の運転・停止スイッチ81を備え、運転・停止スイッチ81が押された回数に応じて、肉箱2を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させる。
【0166】
スライサ100は、作業者が押しボタン式の運転・停止スイッチ81(運転スイッチ)を押すという簡単な操作で肉箱2を往復移動させてスライス動作させることができるので操作性が向上する。また、運転・停止スイッチ81が押された回数に応じて肉箱2を一往復移動又は連続往復移動に切り替えて動作させるので、作業者は一枚切りと連続切りの選択を簡単な操作で行うことができ、操作性が向上する。なお、運転・停止スイッチ81が配置される箇所は機台3の一側面(前面)に限定されず、適宜変更可能である。
【0167】
本実施形態のスライサ100において、運転・停止スイッチ81が押されて丸刃物1を回転駆動させた後に、さらに運転・停止スイッチ81が1回又は複数回押されることで肉箱2を一往復移動又は連続往復移動させるように構成している。これにより、肉箱2が往復移動を開始する前に丸刃物1を予め回転駆動させて、丸刃物1の回転速度不足によるスライス片の切断面の劣化を防止できる。また、丸刃物1の回転開始操作と肉箱2の往復移動開始操作とを同じ運転・停止スイッチ81を使用して行うので、操作性及び作業性が良い上、肉箱2が往復移動を開始する時点で、肉塊からスライス片を綺麗に切り出すのに十分な丸刃物1の回転速度を確保できる。
【0168】
本実施形態のスライサ100において、肉箱2の往復移動中に運転・停止スイッチ81が押されると、肉箱2を停止位置まで移動させて停止させるようにしてもよい。このような態様によれば、1つの運転・停止スイッチ81で、一枚切り動作又は連続スライス動作の開始と、連続スライス動作の停止とを操作できるので、操作性及び作業性が向上する。また、連続スライス動作を停止させるにあたり、全停止スイッチ82を押すつもりが誤って運転・停止スイッチ81を押してしまった場合でも肉箱2を停止位置に停止できるので安全性が向上する。また、スライサ100を使用する作業者は機台3の左手前に立って作業を行うことが多く、運転・停止スイッチ81は機台3の前上部側面部341の左上寄り部位に配設される操作具群8の中で最も作業者に近い位置に配設されているので、操作性及び作業性に優れている。
【0169】
また、スライサ100は、運転・停止スイッチ81が押し操作されたときに、肉箱2を一往復移動させるか、連続往復移動させるかを切り替える切替スイッチを備えていてもよい。すなわち、スライサ100は、切替スイッチによって一往復移動が選択されているときは運転・停止スイッチ81が押し操作されたときに肉箱2が一往復移動して停止する。一方、切替スイッチによって連続往復移動が選択されているときは運転・停止スイッチ81が押し操作されたときに肉箱2を連続往復移動させる。そして、肉箱2の往復移動中に運転・停止スイッチ81が押されると肉箱2を停止位置まで移動させて停止させる構成は、スライサ100が上記切替スイッチを備えている態様にも適用可能である。
【0170】
すなわち、スライサ100は、押しボタン式の運転・停止スイッチ81を備え、運転・停止スイッチ81が押されると肉箱2の往復移動を開始可能に構成するとともに、肉箱2の往復移動中に運転・停止スイッチ81が押されると、肉箱2を停止位置まで移動させて停止させる。これにより、1つの運転・停止スイッチ81で、連続スライス動作の開始と、連続スライス動作の停止とを操作できるので、操作性及び作業性が向上する。
【0171】
このような構成は、上記切替スイッチを備えていない構成にも適用可能である。例えば、運転・停止スイッチ81に肉箱2の往復移動開始機能と往復移動停止機能を持たせ、1枚切りスライスを実施するときは、運転・停止スイッチ81を押し操作して肉箱2の往復移動を開始させた後、肉箱2が停止位置に戻る前にもう一度運転・停止スイッチ81を押し操作すればよい。このような構成は、本実施形態の他の構成と組み合わせ可能であることは言うまでもない。例えば、運転・停止スイッチ81が押されて丸刃物1を回転駆動させた後に、さらに運転・停止スイッチ81が押されることで肉箱2の往復移動を開始させる構成と、運転・停止スイッチ81に肉箱2の往復移動開始機能と往復移動停止機能を持たせた構成とを組み合わせてもよい。
【0172】
また、本実施形態のスライサ100は、丸刃物1の研磨処理を行うための研磨処理モードを選択可能に構成しており、研磨処理モードが選択された状態において、運転・停止スイッチ81が押されると肉箱2を丸刃物1に対向する奥側位置へ移動させて停止させ、肉箱2の手前側で丸刃物1に研磨装置9の砥石車91,92が当接した状態で運転・停止スイッチ81が押されると丸刃物1を回転駆動させるように構成している。これにより、肉箱2の内部への砥石粉の飛散を防止できるので、衛生的であるとともに、研磨処理後に肉箱2内の砥石粉を除去する手間を省略できる。
【0173】
さらに、スライサ100は、肉箱2の往復移動方向に沿って丸刃物1の手前側に立設される当板5を備えている。当板5は機台3に着脱可能に支持されている。研磨装置9は、当板5を取り外した状態で砥石車91,92を丸刃物1に当接可能に設けられる。食肉スライサ100は、研磨処理モードが選択された状態において、当板5が装着されていないときは、丸刃物1の回転駆動を許容する一方、肉箱2の移動を禁止する。これにより、研磨装置9の砥石車91,92が丸刃物1の刃先に当接した状態で丸刃物1を回転駆動させて丸刃物1の研磨処理を実施できる一方、肉箱2の移動が禁止されるので肉箱2と研磨装置9との接触を防止できる。
【0174】
また、本実施形態のスライサ100において、肉箱2は、肉塊が載置されるベルト式の下部コンベア21と、跳ね上げ可能に支持されるとともに肉塊の上部に接触されるベルト式の上押えコンベア22と、コンベア21,22を駆動する電動モータ25と、電動モータ25の駆動力を下部コンベア21及び上押えコンベア22に伝達する伝達機構26とを備えている。そして、スライサ100は下部コンベア21と上押えコンベア22とが連動して肉塊を肉箱2から送り出す構成を有する。スライサ100は、肉箱2の往復移動に際して、肉箱2が丸刃物1に対向する奥側位置に到達すると、下部コンベア21と上押えコンベア22とを肉送り時とは逆回転駆動させて肉塊を送り出し方向とは反対側へ退避させる。これにより、肉箱2が停止位置へ向けて復移動するときに、肉塊の丸刃物1への接触を低減でき、肉塊の損傷を低減してスライス片の見栄えを向上できる。
【0175】
本実施形態において、上押えコンベア22に替えて、従来型の肉送りローラを備えた上押え送り装置を採用してもよい。この場合、肉箱2は、下部コンベア21と、跳ね上げ可能に支持されるとともに肉塊の上部に接触される上押え送り装置と、電動モータ25と、電動モータ25の駆動力を下部コンベア21及び上記上押え送り装置に伝達する伝達機構26とを備え、下部コンベア21と上記上押え送り装置とが連動して肉塊を肉箱2から送り出す構成を有する。そして、肉箱2の往復移動に際して、肉箱2が丸刃物1に対向する奥側位置に到達すると、下部コンベア21と上記上押え送り装置とを肉送り時とは逆回転駆動させて肉塊を送り出し方向とは反対側へ退避させる。
【0176】
また、本実施形態のスライサ100は、押しボタン式の全停止スイッチ82(停止スイッチ)をさらに備え、全停止スイッチ82が押されると、丸刃物1が停止状態でかつ肉箱2が停止位置に停止した状態になるとともに、運転・停止スイッチ81が押されても丸刃物1及び肉箱2が動作しない操作ロック状態になる。また、操作ロック状態において全停止スイッチ82(運転・停止スイッチ81でもよい)が1回又は複数回押されると、運転・停止スイッチ81が押されたときに丸刃物1もしくは丸刃物1及び肉箱2が動作する操作可能状態に復帰する。このように、全停止スイッチ82を押し操作するという簡単な操作でスライサ100を操作ロック状態にでき、消費電力を低減できるとともに安全性が向上する。また、全停止スイッチ82(運転・停止スイッチ81でもよい)を1回又は複数回押し操作するという簡単なロック解除操作で操作ロック状態を解除できるので、操作性がよい。また、全停止スイッチ82(運転・停止スイッチ81でもよい)を2回押し操作することをロック解除操作とすることで、作業者や台車などの異物がスイッチ81,82に意図せずに当たってロック解除されることを防止でき、安全性を向上できる
【0177】
さらに、スライサ100は、上記操作可能状態において、所定時間の間、運転・停止スイッチ81が押されないときは上記操作ロック状態になる。これにより、安全性を向上できるとともに、無駄な電力の消費を抑制できるから経済的である。
【0178】
また、図22に示すように、スライサ100は、肉箱2を連続往復移動させるときに、予め設定された間欠枚数のスライス片を切り落とす度に、予め設定された待ち時間の間だけ肉箱2を停止位置に停止させた後、肉箱2の連続往復移動を再開するように構成した。これにより、作業者が所望の間欠枚数及び待ち時間を設定しておくことで、例えばスライス片を盛り付けたパックを入れ物へ収容するにあたり、肉箱2が停止位置に停止している設定待ち時間の間にパックを入れ物へ収容した後、運転・停止スイッチ81を押し操作しなくても運転再開できるので、無駄な動きが無くなり、操作性が向上する。
【0179】
本実施形態のスライサ100は、機台3の一側に立設されて回転する丸刃物1と、丸刃物1の回転面に沿って往復移動する肉箱2とを備え、肉箱2から所定の送り出し量で送り出される肉塊を回転する丸刃物1で切り落してスライス片を得るものである。肉箱2は、肉塊が載置されるベルト式の下部コンベア21と、跳ね上げ可能に支持されるとともに肉塊の上部に接触されるベルト式の上押えコンベア22と、コンベア21,22を駆動する電動モータ25と、電動モータ25の駆動力を下部コンベア21及び上押えコンベア22に伝達する伝達機構26とを備えている。スライサ100は、電動モータ25の駆動を制御する制御装置6の制御によって下部コンベア21と上押えコンベア22とが連動して肉塊を肉箱2から送り出す。
【0180】
スライサ100は、肉箱2に設けた電動モータ25の駆動によって肉塊を肉箱2から送り出すので、肉塊を送り出すコンベアを駆動させるための、肉箱の往復移動を駆動源とする機械的な機構やその送り出し量調整機構が不要になるから、部品点数を低減できる。
【0181】
また、本実施形態のスライサ100において、電動モータ25は、上押えコンベア22を跳ね上げ可能に支持する上押え支持アーム24の上部に取り付けられている。これにより、スライサ100のスライス作業時に電動モータ25に肉片飛沫がかかりにくい構成とすることができる。また、スライサ100を水洗いする時に、電動モータ25に洗浄水がかかりにくい構成とすることができる。これにより、スライサ100の清掃性及び信頼性を向上できる。
【0182】
また、電動モータ25を上押え支持アーム24の上部に取り付けることで、肉箱2の側部(本実施形態では奥側の側部)の下端寄り部位で機台3の天面部31の上方に突出する部材を少なくできるので、天面部31の清掃性が向上する。なお、電動モータ25を上押え支持アーム24の上部に取り付ける態様において、上押えコンベア22に替えて、従来型の肉送りローラを備えた上押え送り装置を採用することも可能である。
【0183】
本実施形態のスライサ100において、電動モータ25は減速機付きの電動モータであり、上押えコンベア22は、上押え支持アーム24に回転自在に支持された駆動ローラ221と、上押え支持アーム24から肉塊の搬送下流側へ向けて延出したコンベア前部フレーム222に回転自在に支持された従動ローラ223とに巻き掛けられた無端帯ベルト224を備えている。そして、駆動ローラ221の回転軸221aは、減速機付きの電動モータ25の出力軸253と同軸上に位置して出力軸253に連結している。これにより、下部コンベア21と連動して肉箱2から肉塊を押し出す上押えコンベア22に、電動モータ25の駆動力を簡素な構成で伝達でき、部品点数を低減できる。
【0184】
また、スライサ100において、機台3は、平面視矩形の天面部31のコーナー部を支持する4本の脚体32と、4本の脚体32の中途部それぞれに固着して4本の脚体32で囲まれた空間を上下に区画する中間板部34と、4本の脚体32に固着して中間板部34の下方空間の側方を塞ぐ4つの側面部351,352,353,354と、を備えている。天面部31に肉箱2が支持されている。肉箱2を往復移動させるクランク機構4が天面部31と中間板部34の間に設けられている。クランク機構4を駆動する肉箱駆動用の電動モータ41と、丸刃物1を回転駆動する丸刃物駆動用の電動モータ11と、電動モータ11,25,41の駆動を制御する制御装置6とが中間板部34と側面部351,352,353,354とで囲まれた空間Sの内部に収容されている。
【0185】
これにより、制御装置6と肉箱駆動用の電動モータ41と丸刃物駆動用の電動モータ11とを防水性が高い空間Sに配置することで、制御装置6及びこれらの電動モータ11,41の水分や汚れの付着に起因する故障を防止できる。また、制御装置6が配置される空間Sの上方及び側方の防水性を確保できるので、制御装置6は盤61や実装部品62を覆う防水性を確保した箱体を備えていないようにすることも可能である。制御装置6が当該箱体を備えていないようにすれば、部品点数及び製造コストを低減できる。なお、制御装置6は盤61や実装部品62を覆う箱体をさらに備え、当該箱体が空間S内に配置されていても構わない。
【0186】
また、スライサ100において、4本の脚体32は、肉箱2の往復移動方向の延長方向から見て略鉛直姿勢に設けられる一方、往復移動方向に直交する方向から見て脚体下端部が脚体上端部よりも外側に位置する傾斜姿勢に設けられている。これにより、機台3の左右幅を大きくすることなく、機台3の接地面積を前後方向(肉箱2の往復移動方向)に大きくすることができ、設置スペースの大幅な増加を抑制しつつ、間口が小さい設置場所への搬入作業のし易さを確保できる構成でありながら、スライサ100のスライス動作時の振動を低減できる。なお、本実施形態のスライサ100において、4本の脚体32の姿勢は特に限定されず、各脚体32は、例えば鉛直姿勢であってもよいし、平面視で下端側が上端側よりも機台の前後外側及び左右外側に位置する傾斜姿勢であってもよい。
【0187】
また、スライサ100において、平面視で肉箱2の大部分が天面部31の内側に収まっている。これにより、スライサ100の設置面積を省スペース化できるとともに、スライス動作時の安全性を向上できる。
【0188】
また、スライサ100において、丸刃物駆動用の電動モータ11は、全閉外扇型の電動モータであって、平面視で、モータ軸11aが肉箱2の往復移動方向に略直交する姿勢で丸刃物1に重なって配置されている。制御装置6は、平面視で肉箱2の往復移動方向と交差する前後一対の側面部351,352のうち丸刃物1側の側面部352の近傍に配置されている。肉箱駆動用の電動モータ41は、全閉外扇型の減速機付きの電動モータであって、平面視で、減速機構部412が停止位置の肉箱2に重なって配置され、モータ部411が減速機構部412に対して制御装置6側に配置されている。これにより、電動モータ11,41の駆動によって、空間S内に対流が発生して盤61や実装部品62の周囲の空気が動くので、制御装置6における結露が抑制され、水分に起因する制御装置6の故障や誤動作を防止できる。なお、上述のように、制御装置6は盤61や実装部品62を覆う箱体を備えていても構わない。
【0189】
以上、実施形態を説明したが、本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。例えば、前述した実施形態及び変形例(尚書き等)で説明した各構成を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0190】
1 丸刃物,2 肉箱,3 機台,5 当板,6 制御装置,9 研磨装置,21 下部コンベア,22 上押えコンベア,25 電動モータ,26 伝達機構,31 天面部,32 脚体,34 中間板部,41 肉箱駆動用の電動モータ,41a 出力軸,61 盤,62 実装部品,81 運転・停止スイッチ(運転スイッチ),82 全停止スイッチ(停止スイッチ),91 表砥石車,92 裏砥石車,100 食肉スライサ,211 下コンベア駆動ローラ,213 下コンベア従動ローラ,214 下ベルト,221 上コンベア駆動ローラ,221a 回転軸,222 上コンベア前部フレーム,223 上コンベア従動ローラ,224 上ベルト(無端帯ベルト),241 上押え回動軸,251 モータ部,252 減速機構部,253 出力軸,351 前側面部,352 後ろ側面部,353 左側面部,354 右側面部,411 モータ部,412 減速機構部,S 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図21
図22
図23
図24
図25
図26