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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121541
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】軸受、減速機、およびロボット
(51)【国際特許分類】
   F16C 33/38 20060101AFI20240830BHJP
   F16C 19/16 20060101ALI20240830BHJP
   B25J 17/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16C33/38
F16C19/16
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028693
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000107147
【氏名又は名称】ニデックドライブテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】杉下 健治
【テーマコード(参考)】
3C707
3J701
【Fターム(参考)】
3C707CX01
3C707CX03
3C707HT25
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA34
3J701BA44
3J701BA49
3J701EA03
3J701EA31
3J701FA15
3J701GA11
3J701GA32
3J701XB03
3J701XB14
3J701XB26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】転動体の径を小さくしつつ、多くの転動体を設ける場合でも、強度を十分に確保した軸受けを提供する。
【解決手段】内輪は、中心軸よりも径方向外側に配置される。外輪は、内輪よりも径方向外側に配置される。保持器は、内輪と外輪との間に配置される。複数の転動体は、内輪と外輪との間において、保持器により周方向に間隔をあけて配列される。保持器は、複数の柱部とフランジ部とを有する。柱部は、隣り合う転動体の間に配置される。フランジ部は、複数の柱部の軸方向一方側の端部を周方向に繋ぐ。フランジ部は、柱部の軸方向一方側の端部から、径方向内側へ向けて延びる。転動体の径方向中心を通り、中心軸と直交する横断面において、柱部の径方向中心が、転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置される。フランジ部の軸方向他方端が、転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸よりも径方向外側に配置される内輪と、
前記内輪よりも径方向外側に配置された外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された環状の保持器と、
前記内輪と前記外輪との間において、前記保持器により周方向に間隔をあけて配列された複数の転動体と、
を備え、
前記保持器は、
隣り合う前記転動体の間に配置された複数の柱部と、
前記複数の柱部の軸方向一方側の端部を周方向に繋ぐフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部は、前記柱部の軸方向一方側の端部から、径方向内側へ向けて延び、
前記転動体の径方向中心を通り、前記中心軸と直交する横断面において、前記柱部の径方向中心が、前記転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置され、
前記フランジ部の軸方向他方端が、前記転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される、軸受。
【請求項2】
請求項1に記載の軸受であって、
前記横断面において、前記柱部の径方向内端が、前記転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置される、軸受。
【請求項3】
請求項1に記載の軸受であって、
前記横断面において、前記柱部の径方向外端が、前記転動体の径方向中心と前記転動体の径方向外端との径方向中点よりも径方向外側に配置される、軸受。
【請求項4】
請求項1に記載の軸受であって、
前記フランジ部の軸方向中心が、前記転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される、軸受。
【請求項5】
請求項1に記載の軸受であって、
前記内輪は、径方向外側面から径方向内側へ凹み、周方向に延びる溝を有し、
前記フランジ部の径方向内側の端部が、前記溝に収容される、軸受。
【請求項6】
請求項1に記載の軸受であって、
前記外輪は、
前記転動体の径方向外側に配置され、軸方向に延びる壁部と、
前記転動体の軸方向一方側に配置され、径方向に延びる環状部と、
を有し、
前記環状部は、軸方向他方側の面から軸方向一方側へ凹む環状の第1凹部を有し、
前記フランジ部の一部分が、前記第1凹部に収容される、軸受。
【請求項7】
請求項6に記載の軸受であって、
前記環状部は、前記第1凹部よりも径方向内側に配置され、前記第1凹部よりも軸方向一方側へ凹む環状の第2凹部を有する、軸受。
【請求項8】
請求項7に記載の軸受であって、
前記フランジ部は、
前記第1凹部と軸方向に対向する外側フランジ部と、
前記第2凹部と軸方向に対向する内側フランジ部と、
を有し、
前記内側フランジ部の軸方向一方側の面は、前記外側フランジ部の軸方向一方側の面よりも、軸方向一方側に配置され、
前記内側フランジ部の軸方向他方側の面は、前記外側フランジ部の軸方向他方側の面よりも、軸方向一方側に配置される、軸受。
【請求項9】
請求1に記載の軸受であって、
前記転動体は玉であり、
前記玉の直径をφ、前記玉の数をN、前記玉の中心を結ぶ円周の長さをLとして、
φ×N/L>0.92
の関係を満たす、軸受。
【請求項10】
請求項1に記載の軸受であって、
前記保持器は、
前記複数の柱部の軸方向他方側の端部を周方向に繋ぐ接続部
をさらに有する、軸受。
【請求項11】
請求項1に記載の軸受であって、
前記柱部は、軸方向に対して傾斜し、
前記柱部の軸方向一方側の端部は、前記柱部の軸方向他方側の端部よりも、径方向内側に配置される、軸受。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の軸受を備える、減速機。
【請求項13】
請求項12に記載の減速機を備える、ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受、減速機、およびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ロボットの関節等に搭載される減速機の需要が急速に高まっている。また、減速機の需要とともに、減速機に使用される軸受の需要も高まっている。当該軸受としては、耐久性の向上の観点から、例えば、アンギュラ玉軸受が用いられる(特許文献1)。
【特許文献1】特開2010-127323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記公報の軸受は、円弧状の複列の外側転走面が内周に形成された外方部材と、複列の外側転走面に対向する円弧状の内側転走面が外周に形成された一対の内輪と、これらの転走面間に収容された複列の転動体と、これらの転動体を転動自在に保持する保持器と、を備えている。保持器は、環状の保持器本体のインナー側の凹球面に、ポケットを備えている。ポケットは、開口部の寸法が転動体の外径よりも小さく形成されている。そして、開口部を弾性変形させて転動体を装着し、所定のポケットすきまを介して転動体を包持する。
【0004】
当該状況下において、昨今では、軸受の剛性のさらなる向上が求められている。そこで、軸受において、転動体の径を小さくしつつ、より多くの転動体を設けることによって、軸受の剛性を向上させることが考えられる。しかしながら、この場合、隣り合う転動体の間隙も小さくなる。このため、転動体を保持するための保持器における、隣り合う転動体の間隙に位置する部位を細くする必要が生じる。この場合、軸受の製造時および使用時に、保持器の強度を十分に確保できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、減速機の軸受において、転動体の径を小さくしつつ、より多くの転動体を設ける場合でも、転動体を保持する保持器の強度を十分に確保できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の例示的な第1発明は、軸受であって、中心軸よりも径方向外側に配置される内輪と、前記内輪よりも径方向外側に配置された外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置された環状の保持器と、前記内輪と前記外輪との間において、前記保持器により周方向に間隔をあけて配列された複数の転動体と、を備え、前記保持器は、隣り合う前記転動体の間に配置された複数の柱部と、前記複数の柱部の軸方向一方側の端部を周方向に繋ぐフランジ部と、を有し、前記フランジ部は、前記柱部の軸方向一方側の端部から、径方向内側へ向けて延び、前記転動体の径方向中心を通り、前記中心軸と直交する横断面において、前記柱部の径方向中心が、前記転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置され、前記フランジ部の軸方向他方端が、前記転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、保持器の柱部の径方向中心が、転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置される。これにより、転動体の径を小さくしつつ転動体の数を増加させた際に、隣り合う転動体の隙間が狭くなる場合でも、保持器の柱部の太さを確保できる。また、フランジ部の軸方向他方端が、転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される。これにより、柱部だけではなく、フランジ部も利用して転動体を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ロボットの概要図である。
図2図2は、減速機の斜視図である。
図3図3は、減速機の縦断面図である。
図4図4は、減速機の横断面図である。
図5図5は、減速機の横断面図である。
図6図6は、軸受の斜視図である。
図7図7は、減速機の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本願の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素は、あくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また、図面においては、必要に応じて各部の寸法や数が誇張または簡略化して図示されている場合がある。
【0010】
<1.ロボットについて>
図1は、第1実施形態に係る減速機1を搭載したロボット100の概要図である。ロボット100は、例えば、工業製品の製造ラインにおいて、部品の搬送、加工、組立等の作業を行う、いわゆる産業用ロボットである。図1に示すように、ロボット100は、減速機1を有する。これにより、後述するメカニズムによって、転動体44の数を増やして剛性を高め、かつ、転動体44を保持する保持器43における隣り合う転動体44の間隔に位置する柱部431の太さを確保できる、軸受85を有する減速機1を搭載したロボット100を提供できる。本実施形態においては、ロボット100は、ベースフレーム101、アーム102、モータ103、および減速機1を有する。
【0011】
アーム102は、ベースフレーム101に対して、回動可能に支持されている。モータ103および減速機1は、ベースフレーム101とアーム102との間の関節部に、組み込まれている。モータ103に駆動電流が供給されると、モータ103から回転運動が出力される。また、モータ103から出力される回転運動は、減速機1により減速されて、アーム102へ伝達される。これにより、ベースフレーム101に対してアーム102が、減速後の速さで回動する。
【0012】
<2.減速機の構成>
続いて、減速機1の全体の構成について、説明する。
【0013】
なお、以下では、後述する減速機の中心軸と平行な方向を「軸方向」、減速機の中心軸に直交する方向を「第1径方向」、減速機の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。また、後述する図3図7において「第1径方向」を「r1」と表示し、図4および図5において「周方向」を「c1」と表示する。また、後述する遊星ギアおよびクランク軸の自転軸に直交する方向を「第2径方向」と称する。また、後述する図3および図4において「第2径方向」を「r2」と表示する。
【0014】
また、以下では、後述する図3および図7において、減速機の中心軸の方向、ならびに遊星ギアおよびクランク軸の自転軸の方向を左右方向とし、右側を「軸方向一方側」、左側を「軸方向他方側」として、各部の形状や位置関係を説明する。また、後述する図3図6,および図7において、「軸方向一方側」を「a1」、および「軸方向他方側」を「a2」と表示する。ただし、この左右方向の定義により、本発明に係る軸受、減速機、およびロボットの製造時および使用時の向きを限定する意図はない。また、本願において「平行な方向」とは、幾何学的に厳密に平行な場合に限定されない。つまり、ある方向と略平行である方向が、発明の効果を奏する程度に略平行な関係であればよい。また、本願において「直交する方向」とは、幾何学的に厳密に直交する場合に限定されない。つまり、ある方向と略直交である方向が、発明の効果を奏する程度に略直交となる関係であればよい。
【0015】
図2は、減速機1の斜視図である。図3は、減速機1の縦断面図である。なお、図3では、図の煩雑化を避けるため、後述する入力軸20および後述する太陽ギア30を、一部簡略化して図示している。モータ103は、軸方向に延びる図示を省略した中心軸に沿って配置される。モータ103の中心軸と、減速機1の中心軸91とは、互いに一致するものとする。モータ103は、ステータを含む静止部と、ロータを含む回転部とを有する。ステータに駆動電流が供給されると、ロータを含む回転部は、中心軸91を中心として、減速前の回転速度である入力回転速度N1で回転する。
【0016】
減速機1は、モータ103から得られる回転運動を減速させて、アーム102へ伝達する。本実施形態では、減速機1は、偏心揺動型減速機として構成されている。より具体的には、減速機1は、入力部である後述する入力軸20の回転を減速して、出力部である後述する出力軸95を回転可能である。すなわち、減速機1は、入力軸20の回転を減速して出力可能である。ただし、減速機1は、偏心揺動型減速機とは異なる種類の減速機であってもよい。
【0017】
図2および図3に示すように、減速機1は、入力軸20と、太陽ギア30と、複数の遊星ギア40と、複数のクランク軸50と、複数の軸受55と、複数の外歯歯車60と、複数の軸受651と、複数の軸受652と、内歯歯車70と、キャリア80と、複数の軸受85と、を有する。本実施形態では、減速機1は、入力軸20と、太陽ギア30と、3つの遊星ギア40と、3つのクランク軸50と、6つの軸受55と、2つの外歯歯車60と、3つの軸受651と、3つの軸受652と、内歯歯車70と、キャリア80と、2つの軸受85と、を有する。
【0018】
入力軸20は、中心軸91を中心として軸方向に延びる部材である。入力軸20は、モータ103の回転部に接続される。入力軸20は、モータ103の回転部に対して、相対回転不能に固定される。これにより、入力軸20は、モータ103の回転部とともに、中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転可能である。
【0019】
太陽ギア30は、中心軸91と略同軸に配置されたギアである。太陽ギア30は、入力軸20の周囲に、相対回転不能に固定される。これにより、モータ103を駆動させると、入力軸20および太陽ギア30は、中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転する。すなわち、太陽ギア30は、入力軸20とともに中心軸91を中心として入力回転速度N1で回転可能である。ただし、太陽ギア30と入力軸20とは、単一部材であってもよい。
【0020】
図4は、図3のA-A位置から見た減速機1の横断面図である。図の煩雑化を避けるため、図4においては、断面を示すハッチングが省略されている。図4に示すように、太陽ギア30の外側面には、複数の外歯301が形成されている。複数の外歯301はそれぞれ、第1径方向r1外側へ向かって突出する。また、複数の外歯301は、周方向c1に沿って、一定のピッチで配列される。
【0021】
遊星ギア40は、太陽ギア30の周囲に配置される。また、図4に示すように、本実施形態では、太陽ギア30の周囲に、3つの遊星ギア40が等間隔に配置されている。ただし、遊星ギア40の数は、2つであってもよく、4つ以上であってもよい。3つの遊星ギア40はそれぞれ、自転軸92に沿って配置される。自転軸92は、中心軸91と略平行である。また、遊星ギア40は、自転軸92を中心とする第2径方向r2に円板状に拡がる。また、各遊星ギア40は、外側面に複数の外歯401を有する。複数の外歯401はそれぞれ、第2径方向r2外側へ向かって突出する。
【0022】
外歯401は、外歯301に、中心軸91を中心とする第1径方向r1外側から噛み合う。すなわち、複数の遊星ギア40はそれぞれ、中心軸91を中心とする第1径方向r1外側から太陽ギア30に噛み合う。これにより、太陽ギア30が中心軸91を中心として回転すると、各遊星ギア40は、太陽ギア30からの動力を受け、自転軸92を中心として、太陽ギア30の回転方向とは逆方向に自転する。すなわち、複数の遊星ギア40はそれぞれ、太陽ギア30の回転に伴い自転可能である。
【0023】
ここで、本実施形態では、図4に示すように、各遊星ギア40の径は、太陽ギア30の径よりも大きい。また、1つの遊星ギア40が有する外歯401の数は、太陽ギア30が有する外歯301の数よりも多い。このため、各遊星ギア40は、太陽ギア30と噛み合うことにより、自転軸92を中心として、入力回転速度N1よりも遅い減速後の中間回転速度N2で回転する。ただし、減速機1が、本実施形態のように入力軸20の回転を減速して出力軸95を回転させるのではなく、入力軸20の回転を増速して出力軸95を回転させる場合は、各遊星ギア40の径を、太陽ギア30の径よりも小さくしてもよい。また、1つの遊星ギア40が有する外歯401の数を、太陽ギア30が有する外歯301の数よりも少なくしてもよい。そして、これにより、各遊星ギア40が、太陽ギア30と噛み合うことにより、自転軸92を中心として、入力回転速度N1よりも速い増速後の中間回転速度N2で回転するように構成してもよい。なお、3つの遊星ギア40のそれぞれには、貫通孔400が設けられている。各貫通孔400は、自転軸92に沿って遊星ギア40を軸方向に貫通する。
【0024】
クランク軸50は、自転軸92に沿って延びる柱状の部材である。図4に示すように、本実施形態では、遊星ギア40毎に、1つのクランク軸50が設けられる。すなわち、減速機1は、合計3つのクランク軸50を有する。複数のクランク軸50はそれぞれ、固定部51と、軸状部52と、偏心部53と、を有する。
【0025】
固定部51は、クランク軸50のうち、軸方向一方側a1に位置する部位である。遊星ギア40は、貫通孔400を介して自転軸92の方向に沿って固定部51に挿入される。そして、遊星ギア40は、固定部51にスプライン結合される。これにより、3つのクランク軸50はそれぞれ、遊星ギア40の自転に伴い、遊星ギア40とともに、自転軸92を中心として中間回転速度N2で自転可能である。ただし、遊星ギア40は、固定部51に、圧入、接着、溶着、または他の方法によって固定されてもよい。
【0026】
軸状部52は、クランク軸50のうち、固定部51よりも軸方向他方側a2において、自転軸92に沿って延びる柱状の部位である。すなわち、軸状部52は、固定部51から軸方向他方側a2へ柱状に延びる。軸状部52および偏心部53は、キャリア80の後述する空洞800に配置される。
【0027】
図3に示すように、キャリア80の内部における後述する空洞800に面する内壁801と、軸状部52の外周面との、第2径方向r2の間には、軸受55が介在する。本実施形態では、1つのクランク軸50に対して、2つの軸受55が、互いに軸方向に間隙を隔てて設けられる。より具体的には、軸状部52のうちの軸方向一方側a1の部位の外周面と内壁801との間、および軸状部52のうちの軸方向他方側a2の部位の外周面と内壁801との間に、それぞれ軸受55が設けられる。また、軸受55には、例えば、テーパローラベアリングが用いられる。ただし、軸受55には、他の種類の軸受が用いられてもよい。これにより、クランク軸50は、キャリア80に対して、自転軸92を中心として自転可能に支持される。
【0028】
偏心部53は、軸状部52から第2径方向r2の外側へ突出する部位である。すなわち、偏心部53の、少なくとも一部が、軸状部52よりも自転軸92を中心とする第2径方向r2の外側に配置される。本実施形態では、1つのクランク軸50に固定される2つの軸受55の軸方向の間において、2つの偏心部53が設けられる。以下では、2つの偏心部53のうち、軸方向一方側a1に位置するものを「第1偏心部531」と称し、軸方向他方側a2に位置するものを「第2偏心部532」と称することとする。1つのクランク軸50において、1つの第1偏心部531と、1つの第2偏心部532とが、互いに軸方向に並んで設けられる。また、上記のとおり、第1偏心部531と第2偏心部532はそれぞれ、キャリア80の後述する空洞800に配置される。
【0029】
第1偏心部531は、自転軸92と平行で、かつ、自転軸92から変位した第1偏心軸931に沿って円柱状に延びる部位である。減速機1において設けられる3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。第2偏心部532は、自転軸92と平行で、かつ、自転軸92から変位した第2偏心軸932に沿って円柱状に延びる部位である。減速機1において設けられる3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。また、軸方向に見て、第1偏心軸931および第2偏心軸932がそれぞれ変位する方向は、自転軸92を中心として、約180度離間している。すなわち、第1偏心部531と第2偏心部532とは、自転軸92から、互いに自転軸92に対して約180度異なる方向に偏心している。
【0030】
外歯歯車60は、キャリア80の後述するキャリア台部811と第2キャリア部82との軸方向の間に保持される部材である。本実施形態の外歯歯車60は、第1歯車部61と第2歯車部62とを含む。第1歯車部61は、第2歯車部62よりも軸方向一方側a1に位置する。第1歯車部61および第2歯車部62はそれぞれ、中心軸91を中心とする第1径方向r1に円板状に拡がる。第1歯車部61と第2歯車部62とは、互いに形状および大きさが略等しい。図5は、図3のB-B位置から見た減速機1の横断面図(ただし、僅かに斜め上方向から図示している)である。図の煩雑化を避けるため、図5においては、断面を示すハッチングが省略されている。
【0031】
図3および図5に示すように、第1歯車部61は、第1径方向r1の外側面に複数の外歯611を有する。第2歯車部62は、第1径方向r1の外側面に複数の外歯621を有する。複数の外歯611,621はそれぞれ、第1径方向r1の外側へ向かって突出する。
【0032】
また、第1歯車部61は、複数の挿入部610を有する。本実施形態では、第1歯車部61は、3つの挿入部610を有する。3つの挿入部610はそれぞれ、第1歯車部61を軸方向に貫通する。また、3つの挿入部610にはそれぞれ、クランク軸50の第1偏心部531が挿入される。第2歯車部62は、複数の挿入部620を有する。本実施形態では、第2歯車部62は、3つの挿入部620を有する。3つの挿入部620はそれぞれ、挿入部610の軸方向他方側a2の位置において、第2歯車部62を軸方向に貫通する。また、3つの挿入部620にはそれぞれ、クランク軸50の第2偏心部532が挿入される。
【0033】
ここで、第1偏心部531の外周面と、第1歯車部61における挿入部610に面する内壁との間には、軸受651が挿入される。軸受651には、例えば、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第1偏心部531は、第1歯車部61に対して、クランク軸50の自転に伴い、自転軸92を中心として回転可能に支持される。また、第2偏心部532の外周面と、第2歯車部62における挿入部620に面する内壁との間には、軸受652が挿入される。軸受652には、例えば、ニードルベアリングが用いられる。これにより、第2偏心部532は、第2歯車部62に対して、クランク軸50の自転に伴い、自転軸92を中心として回転可能に支持される。
【0034】
上記のとおり、3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、自転軸92から変位した第1偏心軸931に沿って円柱状に延びる。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第1偏心部531は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。このため、3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として自転すると、3つの第1偏心部531はそれぞれ、自転軸92を中心として偏心回転する。これにより、第1歯車部61は、内歯歯車70の後述する内歯71によって規定された円形空間内で、第1径方向r1に揺動する。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、自転軸92から変位した第2偏心軸932に沿って円柱状に延びる。また、3つのクランク軸50のそれぞれの第2偏心部532は、互いに自転軸92に対して同じ方向に変位する。このため、3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として自転すると、3つの第2偏心部532はそれぞれ、自転軸92を中心として偏心回転する。これにより、第2歯車部62は、内歯歯車70の後述する内歯71によって規定された円形空間内で、第1径方向r1に揺動する。
【0035】
図3および図5に示すように、第1歯車部61は、複数の通過孔615を有する。本実施形態では、第1歯車部61は、3つの通過孔615を有する。3つの通過孔615はそれぞれ、第1歯車部61を軸方向に貫通する。また、通過孔615は、軸方向に見て、周方向c1に隣り合う挿入部610の間に設けられる。各通過孔615には、キャリア80の後述するキャリア柱部812が軸方向に挿入される。第2歯車部62は、複数の通過孔616を有する。本実施形態では、第2歯車部62は、3つの通過孔616を有する。3つの通過孔616はそれぞれ、通過孔615の軸方向他方側a2の位置において、第2歯車部62を軸方向に貫通する。また、通過孔616は、軸方向に見て、周方向c1に隣り合う挿入部620の間に設けられる。各通過孔616には、後述するキャリア柱部812が軸方向に挿入される。これにより、第1歯車部61および第2歯車部62はそれぞれ、中心軸91を中心として回転可能である。
【0036】
内歯歯車70は、中心軸91と略同軸に配置される。内歯歯車70は、中心軸91を中心として円環状に拡がる。本実施形態の内歯歯車70は、ベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定されている。これにより、内歯歯車70は、周方向c1、第1径方向r1、および軸方向の動きが制限される。
【0037】
また、図5に示すように、内歯歯車70の内側面には、複数の内歯71が周方向c1に形成されている。本実施形態では、内歯歯車70の内側面に、複数の内歯ピンが、周方向c1に一定のピッチで配置されることによって、複数の内歯71が周方向c1に一定のピッチで形成されている。ただし、複数の内歯71を形成する方法は、これに限定されない。また、複数の内歯71はそれぞれ、第1径方向r1内側へ向かって突出する。
【0038】
上記のとおり、第1歯車部61が第1径方向r1に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第1歯車部61の外歯611が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。同様に、第2歯車部62が第1径方向r1に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第2歯車部62の外歯621が、第1歯車部61よりも軸方向他方側a2において、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。すなわち、内歯歯車70は、外歯611,621に、第1径方向r1外側から噛み合う。つまり、外歯611,621は、中心軸91を中心として揺動しながら、内歯歯車70と噛み合う。
【0039】
キャリア80は、中心軸91と同軸に配置された略円筒状の部材である。キャリア80は、第1キャリア部81と、第2キャリア部82と、固定ボルト83と、を有する。第1キャリア部81は、キャリア80における軸方向他方側a2に位置する部材である。第2キャリア部82は、キャリア80における軸方向一方側a1に位置する部材である。
【0040】
また、第1キャリア部81は、キャリア台部811と、複数のキャリア柱部812と、を有する。本実施形態では、第1キャリア部81は、キャリア台部811と、3つのキャリア柱部812と、を有する。キャリア台部811は、第1キャリア部81における軸方向他方側a2の位置において、中心軸91と同軸かつ略円筒状に延びる部位である。3つのキャリア柱部812はそれぞれ、キャリア台部811における軸方向一方側a1の面から、さらに軸方向一方側a1へ、中心軸91と平行かつ柱状に延びる。上記のとおり、3つのキャリア柱部812はそれぞれ、第1歯車部61の通過孔615と第2歯車部62の通過孔616とを貫通する。
【0041】
また、キャリア台部811は、中心軸91よりも第1径方向r1外側において、複数の貫通孔810を有する。本実施形態では、キャリア台部811は、3つの貫通孔810を有する。3つの貫通孔810はそれぞれ、キャリア台部811を軸方向に貫通する。また、3つの貫通孔810はそれぞれ、第1歯車部61の挿入部610、および第2歯車部62の挿入部620と、軸方向に重なる。
【0042】
また、第2キャリア部82は、中心軸91を中心とする円環板状である。第2キャリア部82は、第1キャリア部81に、固定ボルト83を用いたボルト止めによって固定される。また、第2キャリア部82は、中心軸91よりも第1径方向r1外側において、複数の貫通孔820を有する。本実施形態では、第2キャリア部82は、3つの貫通孔820を有する。3つの貫通孔820はそれぞれ、第2キャリア部82を軸方向に貫通する。また、3つの貫通孔820はそれぞれ、第1歯車部61の挿入部610、および第2歯車部62の挿入部620と、軸方向に重なる。
【0043】
貫通孔810と、第2歯車部62の挿入部620と、第1歯車部61の挿入部610と、貫通孔820と、によって、キャリア80の内部において3つの空洞800が、中心軸91を中心とする周方向c1に等間隔に形成される。3つの遊星ギア40はそれぞれ、クランク軸50に固定され、クランク軸50は、空洞800に挿入され、2つの軸受55を介して、キャリア80に対して、自転可能に支持される。すなわち、キャリア80は、複数のクランク軸50をそれぞれ自転可能に支持する。
【0044】
また、キャリア台部811の外周面と内歯歯車70の内周面との間には、軸受851が挿入される。本実施形態では、軸受851の内輪41は、キャリア台部811の外周部において、キャリア台部811と単一部材として形成される。すなわち、後述する図7に示すように、軸受851の内輪41は、キャリア80である。軸受851の外輪42は、内歯歯車70の内周面に固定される。また、第2キャリア部82の外周面と内歯歯車70の内周面との間には、軸受852が挿入される。本実施形態では、軸受852の内輪41は、第2キャリア部82の外周部において、第2キャリア部82と単一部材として形成される。すなわち、軸受852の内輪41は、キャリア80である。軸受852の外輪42は、内歯歯車70の内周面に固定される。軸受851および軸受852はそれぞれ、中心軸91と同軸に配置される。
【0045】
これにより、キャリア80は、内歯歯車70に対して、軸受851および軸受852を介して、中心軸91を中心として回転可能に支持される。また、キャリア80にそれぞれ軸受55を介して支持された、3つのクランク軸50と、3つのクランク軸50に固定された3つの遊星ギア40は、中心軸91を中心として公転可能に支持される。
【0046】
また、本実施形態の軸受851および軸受852には、それぞれアンギュラ玉軸受が用いられる。また、軸受851および軸受852は、互いに同等の構造を有する。また、軸受851と軸受852の中間に位置し、かつ、中心軸91に直交する、図示を省略した基準面に対して、軸受851と軸受852とが互いに対称となるように、配置されている。以下では、軸受851および軸受852を、それぞれ「軸受85」と称することとする。なお、軸受85は、本発明の「軸受」の一例である。すなわち、減速機1は、軸受85である「軸受」を有する。これにより、後述するメカニズムによって、転動体44の径を小さくしつつ転動体44の数を増加させた際に、隣り合う転動体44の隙間が狭くなる場合でも、保持器43の柱部431の太さを確保できる、軸受85を有する減速機1を提供できる。ただし、軸受85には、ころ軸受等の他の種類の軸受が用いられてもよい。軸受85の詳細な構成については、後述する。
【0047】
上記のとおり、3つのクランク軸50の各第1偏心部531が挿入される第1歯車部61が第1径方向r1に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第1歯車部61の外歯611が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。また、3つのクランク軸50の各第2偏心部532が挿入される第2歯車部62が第1径方向r1に揺動すると、中心軸91から揺動した方向に位置する第2歯車部62の外歯621が、内歯歯車70の内歯71と噛み合う。また、第1偏心部531と第2偏心部532とは、自転軸92から、互いに自転軸92に対して約180度異なる方向に偏心している。このため、第1歯車部61の外歯611と第2歯車部62の外歯621は、互いに中心軸91と中心として約180度離間した箇所において、それぞれ内歯歯車70の内歯71と噛み合う。
【0048】
3つのクランク軸50がそれぞれ自転軸92を中心として中間回転速度N2で自転すると、第1歯車部61の揺動方向および第2歯車部62の揺動方向も変化する。このため、第1歯車部61の外歯611と内歯歯車70の内歯71との噛み合い位置、および第2歯車部62の外歯621と内歯歯車70の内歯71との噛み合い位置も、それぞれ変化する。ここで、内歯歯車70は、ロボット100のベースフレーム101に固定されており、回転しない。この結果、内歯歯車70およびベースフレーム101に対して、キャリア80が、中心軸91を中心として、中間回転速度N2よりも遅い減速後の出力回転速度N3で回転する。すなわち、キャリア80は、内歯歯車70に対する外歯歯車60の揺動によって、中心軸91を中心として出力回転速度N3で回転可能である。つまり、本実施形態においては、出力軸95は、キャリア80である。なお、他の実施形態として、キャリア80がベースフレーム101に固定され、内歯歯車70が中心軸91を中心として出力回転速度N3で回転可能であってもよい。この場合、当該他の実施形態における出力軸95は、内歯歯車70である。
【0049】
<3.軸受の詳細な構成>
続いて、軸受85の詳細な構成について、説明する。より具体的には、軸受851の詳細な構成について、説明する。なお、軸受852の構造は、軸受851の構造を軸方向に反転させたものである。よって、軸受852の構成は、軸受851の構造における軸方向一方側a1と軸方向他方側a2を読み替えて理解すればよい。図6は、軸受85の斜視図である。ただし、図6では、内輪41を簡略的に図示するとともに、外輪42の図示を省略している。また、図6では、説明容易のため、後述する複数の転動体44の一部を、二点鎖線にて図示している。図7は、減速機1の軸受851付近の部分縦断面図である。すなわち、図7は、減速機1の軸受85付近の部分縦断面図である。ただし、図の煩雑化を避けるため、図7においては、断面を示すハッチングが省略されている。図6および図7に示すように、軸受85は、内輪41と、外輪42と、保持器43と、複数の転動体44と、を備える。
【0050】
内輪41は、中心軸91よりも径方向外側に配置されている。内輪41の径方向外側面は、中心軸91を中心とする環状に形成されている。また、図7に示すように、内輪41の径方向外側面には、凹状の収容底部501が形成されている。収容底部501は、内輪41の径方向外側面における、周方向c1の全周に亘って、径方向内側へ凹む。また、内輪41の径方向外側面における収容底部501よりも軸方向一方側a1には、溝410がさらに形成されている。溝410は、内輪41の径方向外側面における、周方向c1の全周に亘って、径方向内側へ凹む。すなわち、内輪41は、径方向外側面から径方向内側へ凹み、周方向c1に延びる溝410を有する。ただし、例えば、転動体が収容底部に対して周方向c1の特定箇所で自転し、かつ、保持器が静止している実施形態においては、収容底部および溝はそれぞれ、周方向c1の一部分のみにおいて形成されていてもよい。
【0051】
外輪42は、中心軸91を中心とする環状の部材である。外輪42は、内輪41よりも径方向外側に配置されている。すなわち、外輪42は、内輪41よりも径が大きい。また、図7に示すように、外輪42の径方向内側面には、凹状の収容蓋部502が形成されている。収容蓋部502は、外輪42の径方向内側面における、周方向c1の全周に亘って、径方向外側へ凹む。ただし、例えば、転動体が収容蓋部に対して周方向c1の特定箇所で自転している実施形態においては、収容蓋部は、周方向c1の一部分のみにおいて形成されていてもよい。
【0052】
複数の転動体44は、内輪41と外輪42との間に位置する。本実施形態の転動体44は、玉である。複数の転動体44は、内輪41の収容底部501と外輪42の収容蓋部502との間に位置し、収容底部501および収容蓋部502に沿って周方向c1に転動可能となっている。内輪41、外輪42、および複数の転動体44は、いわゆる軸受鋼等の金属により形成される。
【0053】
保持器43は、内輪41と外輪42との間に配置される。保持器43は、内輪41と外輪42との間において、複数の転動体44を、周方向c1に間隔をあけた状態に保持するための部材である。すなわち、複数の転動体44は、内輪41と外輪42との間において、保持器43により、周方向c1に間隔をあけて配列される。保持器43は、例えば樹脂により形成される。また、本実施形態では、保持器43は、中心軸91を中心とする環状に形成される。しかしながら、他の実施形態においては、保持器43は、中心軸91を中心とする円弧状に形成されてもよい。保持器43は、複数の柱部431と、フランジ部432と、接続部433と、を有する。すなわち、保持器43は、複数の柱部431と、フランジ部432と、を有する。
【0054】
柱部431は、転動体44と同じ数だけ設けられている。そして、互いに周方向c1に間隔をあけつつ隣接して配列される転動体44の、当該周方向c1の間隔に、柱部431が1つずつ配置される。すなわち、複数の柱部431は、隣り合う転動体44の間に配置されている。
【0055】
ここで、本発明の軸受85においては、転動体44の径をより小さくすることによって、より多くの転動体44を周方向c1に配置している。これにより、本実施形態の軸受85は、図6に示すように、転動体44である玉の直径Drをφ、玉の数をN、玉の中心を結ぶ円Crの円周の長さをLとすると、「φ×N/L>0.92」の関係を満たす。このように、玉の数を増やすことによって、軸受85の剛性を向上させることができる。
【0056】
しかしながら、この場合、隣り合う転動体44の周方向c1の間隔が小さくなるため、当該周方向c1の間隔に、太い柱部をそのまま配置することはできない。そこで、本実施形態では、複数の柱部431が、より第1径方向r1外側に配置される。具体的には、図7に示すように、転動体44の径方向中心Orを通り、中心軸91と直交する横断面Scにおいて、柱部431の径方向中心Opが、転動体44の径方向中心Orよりも径方向外側に配置される。このように、転動体44の径を小さくして転動体44の数を増やす一方で、柱部431をより第1径方向r1外側に配置することによって、柱部431を設けるスペースを確保することができる。この結果、転動体44の数が増加して、隣接する転動体44の周方向c1の隙間が狭くなる場合でも、柱部431を径方向外側に配置し、柱部431の太さを確保できることによって、柱部431を含む保持器43全体の強度を高めることができる。なお、本実施形態においては、柱部431は、軸方向に延びる柱状である。柱部431の径方向中心Opは、柱部431の径方向内端Ipと径方向外端Epとの径方向中点である。ここで、例えば柱部の径方向内端又は径方向外端が複数ある場合には、そのいずれかを代表して径方向内端及び径方向外端の径方向位置を定義すればよい。
【0057】
特に、本実施形態では、当該横断面Scにおいて、柱部431の径方向内端Ipが、転動体44の径方向中心Orよりも径方向外側に配置される。このように、転動体44の径を小さくして転動体44の数を増やす一方で、柱部431をより第1径方向r1外側に配置することによって、柱部431を設けるスペースをより確保することができる。この結果、柱部431の太さをより確保できることによって、柱部431を含む保持器43全体の強度をより高めることができる。
【0058】
また、本実施形態では、当該横断面Scにおいて、柱部431の径方向外端Epが、転動体44の径方向中心Orと転動体44の径方向外端Erとの径方向中点Mrrよりも径方向外側に配置される。このように、転動体44の径を小さくして転動体44の数を増やす一方で、柱部431をより第1径方向r1外側に配置することによって、柱部431を設けるスペースをより確保することができる。この結果、柱部431の太さをより確保できることによって、柱部431を含む保持器43全体の強度をより高めることができる。
【0059】
また、図7に示すように、各柱部431は、軸方向に対して傾斜し、柱部431の軸方向一方側a1の端部は、柱部431の軸方向他方側a2の端部よりも、径方向内側に配置される。これにより、アンギュラ玉軸受である軸受85において、転動体44と外輪42との接触位置に合わせた角度で、柱部431を配置できる。この結果、柱部431が外輪42に接触することを回避しつつ、転動体44を保持し、転動体44が脱落することを抑制できる。
【0060】
図6に示すように、フランジ部432は、中心軸91を中心とする円環状の部位である。フランジ部432は、柱部431の軸方向一方側a1の端部から、径方向内側へ向けて延びる。フランジ部432は、複数の柱部431の軸方向一方側a1の端部を周方向c1に繋ぐ。複数の転動体44はそれぞれ、内輪41の収容底部501に配置され、内輪41と、保持器43の複数の柱部431と、保持器43のフランジ部432と、の間に保持される。これにより、内輪41の収容底部501に配置された複数の転動体44が脱落することが抑制される。
【0061】
また、本実施形態では、内輪41の径方向外側面の凹状の収容底部501に転動体44が配置された状態で、フランジ部432の径方向内側の端部が、内輪41の溝410に、径方向外側から径方向内側へ嵌まる。すなわち、フランジ部432の径方向内側の端部が、溝410に収容される。これにより、内輪41からフランジ部432が軸方向にはずれることを抑制できる。すなわち、内輪41から保持器43が軸方向に抜けることを抑制できる。
【0062】
なお、本実施形態では、フランジ部432は、内輪41の収容底部501に配置されている複数の転動体44を、より収容底部501の内側へ向けて押さえ込むように、より軸方向他方側a2に形成されている。具体的には、フランジ部432の軸方向他方端A2fが、転動体44の軸方向一方端A1rよりも、軸方向他方側a2に配置される。これにより、複数の転動体44を、保持器43の複数の柱部431だけではなく、フランジ部432も利用して転動体を保持できる。これにより、軸受85のその後の製造工程および使用時に、内輪41の収容底部501に配置された複数の転動体44が脱落することがより抑制される。
【0063】
特に、本実施形態では、フランジ部432の軸方向中心Mafが、転動体44の軸方向一方端A1rよりも、軸方向他方側a2に配置される。なお、フランジ部432の軸方向中心Mafとは、フランジ部432のうち、後述する段差形状の箇所よりも径方向外側の、転動体44と軸方向に重なる部位の軸方向中心を示すものとする。これにより、フランジ部432による転動体44の保持をより安定させることができる。また、フランジ部432をより軸方向他方側a2に形成することによって、フランジ部432の軸方向の幅を確保しつつ、軸受85を軸方向に小型化できる。
【0064】
上記のとおり、保持器43は、接続部433をさらに有する。接続部433は、複数の柱部431の軸方向他方側a2の端部を周方向c1に繋ぐ。接続部433を設けることにより、保持器43の強度をより高めることができる。
【0065】
また、外輪42は、壁部421と、環状部422と、を有する。壁部421は、転動体44の径方向外側に配置され、軸方向に延びる。環状部422は、転動体44の軸方向一方側a1に配置され、径方向に延びる。さらに、環状部422は、環状の第1凹部423と、環状の第2凹部424と、を有する。
【0066】
第1凹部423は、環状部422の軸方向他方側a2の面から、周方向c1の全周に亘って、軸方向一方側a1へ凹む部位である。すなわち、環状部422は、軸方向他方側a2の面から軸方向一方側a1へ凹む環状の第1凹部423を有する。また、保持器43のフランジ部432の一部は、第1凹部423に位置する。すなわち、フランジ部432の一部分が、第1凹部423に収容される。外輪42の環状部422および保持器43のフランジ部432をこのような構造とすることにより、フランジ部432の軸方向の幅をより太くすることができる。この結果、フランジ部432を含む保持器43全体の強度をより高めることができる。ただし、第1凹部423は、周方向c1の一部分のみにおいて形成されていてもよい。
【0067】
第2凹部424は、第1凹部423よりも径方向内側において、周方向c1の全周に亘って、環状部422の軸方向他方側a2の面から、第1凹部423よりも軸方向一方側a1へ凹む部位である。すなわち、環状部422は、第1凹部423よりも径方向内側に配置され、第1凹部423よりも軸方向一方側a1へ凹む環状の第2凹部424を有する。第2凹部424には、グリス溜まりを設けることができる。すなわち、第2凹部424によって、グリスが外部に漏れるのを抑制できる。これにより、内輪41の中心軸91を中心とした回転に伴って、グリスは、遠心力により、外輪42と転動体44との接触箇所全体に到達する。この結果、外輪42と転動体44との接触時に、これらの部材に掛かる負荷をさらに軽減できる。ただし、第2凹部424は、周方向c1の一部分のみにおいて形成されていてもよい。
【0068】
また、保持器43のフランジ部432は、径方向内側の部位が僅かに軸方向一方側a1へ突出する、段差形状を有する。これに伴い、フランジ部432を、外側フランジ部434と、内側フランジ部435と、に分けて定義することができる。外側フランジ部434は、柱部431の軸方向一方側a1の端部から径方向内側へ延びる部位である。外側フランジ部434は、外輪42の第1凹部423と軸方向に対向する。内側フランジ部435は、外側フランジ部434よりも、軸方向一方側a1へ突出しつつ、さらに外側フランジ部434の径方向内側の端部から径方向内側へ延びる部位である。内側フランジ部435は、外輪42の第2凹部424と軸方向に対向する。
【0069】
すなわち、フランジ部432は、第1凹部423と軸方向に対向する外側フランジ部434と、第2凹部424と軸方向に対向する内側フランジ部435と、を有する。また、内側フランジ部435の軸方向一方側a1の面435fは、外側フランジ部434の軸方向一方側a1の面434fよりも、軸方向一方側a1に配置される。内側フランジ部435の軸方向他方側a2の面435bは、外側フランジ部434の軸方向他方側a2の面434bよりも、軸方向一方側a1に配置される。本実施形態では、このように、外側フランジ部434と内側フランジ部435の軸方向の位置を変えることで、保持器43および内輪41の設計自由度を向上させることができる。すなわち、溝410の軸方向の位置に合わせて、内側フランジ部435の軸方向の位置を調整することによって、溝410を形成する軸方向の位置の自由度を向上させることができる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0071】
上記の減速機1においては、キャリア80を、出力軸95およびロボット100のアーム102に対して固定し、内歯歯車70を、ロボット100のベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定していた。しかしながら、キャリア80を、ロボット100のベースフレーム101に対して移動不能および回転不能に固定し、内歯歯車70を、出力軸95およびロボット100のアーム102に対して固定してもよい。そして、キャリア80に保持される外歯歯車60の揺動により、内歯歯車70を、中心軸91を中心として回転させてもよい。すなわち、内歯歯車70とキャリア80との少なくとも一方は、内歯歯車70に対する外歯歯車60の揺動によって、中心軸91を中心として出力回転速度N3で回転可能であればよい。
【0072】
また、軸受、減速機、およびロボットの細部の形状については、上記の実施形態の各図に示された形状と相違していてもよい。
【0073】
<5.総括>
なお、本技術は、以下のような構成をとることが可能である。
(1):軸受であって、
中心軸よりも径方向外側に配置される内輪と、
前記内輪よりも径方向外側に配置された外輪と、
前記内輪と前記外輪との間に配置された環状の保持器と、
前記内輪と前記外輪との間において、前記保持器により周方向に間隔をあけて配列された複数の転動体と、
を備え、
前記保持器は、
隣り合う前記転動体の間に配置された複数の柱部と、
前記複数の柱部の軸方向一方側の端部を周方向に繋ぐフランジ部と、
を有し、
前記フランジ部は、前記柱部の軸方向一方側の端部から、径方向内側へ向けて延び、
前記転動体の径方向中心を通り、前記中心軸と直交する横断面において、前記柱部の径方向中心が、前記転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置され、
前記フランジ部の軸方向他方端が、前記転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される、軸受。
【0074】
(2):(1)に記載の軸受であって、
前記横断面において、前記柱部の径方向内端が、前記転動体の径方向中心よりも径方向外側に配置される、軸受。
【0075】
(3):(1)または(2)に記載の軸受であって、
前記横断面において、前記柱部の径方向外端が、前記転動体の径方向中心と前記転動体の径方向外端との径方向中点よりも径方向外側に配置される、軸受。
【0076】
(4):(1)から(3)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記フランジ部の軸方向中心が、前記転動体の軸方向一方端よりも、軸方向他方側に配置される、軸受。
【0077】
(5):(1)から(4)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記内輪は、径方向外側面から径方向内側へ凹み、周方向に延びる溝を有し、
前記フランジ部の径方向内側の端部が、前記溝に収容される、軸受。
【0078】
(6):(1)から(5)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記外輪は、
前記転動体の径方向外側に配置され、軸方向に延びる壁部と、
前記転動体の軸方向一方側に配置され、径方向に延びる環状部と、
を有し、
前記環状部は、軸方向他方側の面から軸方向一方側へ凹む環状の第1凹部を有し、
前記フランジ部の一部分が、前記第1凹部に収容される、軸受。
【0079】
(7):(6)に記載の軸受であって、
前記環状部は、前記第1凹部よりも径方向内側に配置され、前記第1凹部よりも軸方向一方側へ凹む環状の第2凹部を有する、軸受。
【0080】
(8):(7)に記載の軸受であって、
前記フランジ部は、
前記第1凹部と軸方向に対向する外側フランジ部と、
前記第2凹部と軸方向に対向する内側フランジ部と、
を有し、
前記内側フランジ部の軸方向一方側の面は、前記外側フランジ部の軸方向一方側の面よりも、軸方向一方側に配置され、
前記内側フランジ部の軸方向他方側の面は、前記外側フランジ部の軸方向他方側の面よりも、軸方向一方側に配置される、軸受。
【0081】
(9):(1)から(8)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記転動体は玉であり、
前記玉の直径をφ、前記玉の数をN、前記玉の中心を結ぶ円周の長さをLとして、
φ×N/L>0.92
の関係を満たす、軸受。
【0082】
(10):(1)から(9)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記保持器は、
前記複数の柱部の軸方向他方側の端部を周方向に繋ぐ接続部
をさらに有する、軸受。
【0083】
(11):(1)から(10)までのいずれか1つに記載の軸受であって、
前記柱部は、軸方向に対して傾斜し、
前記柱部の軸方向一方側の端部は、前記柱部の軸方向他方側の端部よりも、径方向内側に配置される、軸受。
【0084】
(12):(1)から(11)までのいずれか1つに記載の軸受を備える、減速機。
【0085】
(13):(12)に記載の減速機を備える、ロボット。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本願は、軸受、減速機、およびロボットに利用できる。
【符号の説明】
【0087】
1 減速機
20 入力軸
30 太陽ギア
40 遊星ギア
41 (軸受の)内輪
42 (軸受の)外輪
43 (軸受の)保持器
44 (軸受の)転動体
50 クランク軸
60 外歯歯車
70 内歯歯車
80 キャリア
85 軸受
91 中心軸
95 出力軸
100 ロボット
103 モータ
410 (内輪の)溝
421 (外輪の)壁部
422 (外輪の)環状部
423 (外輪の)第1凹部
424 (外輪の)第2凹部
431 (保持器の)柱部
432 (保持器の)フランジ部
433 (保持器の)接続部
434 (保持器の)外側フランジ部
435 (保持器の)内側フランジ部
501 (内輪の)収容底部
502 (外輪の)収容蓋部
851 軸受
852 軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7