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特開2024-121542バックコンタクト型太陽電池およびバックコンタクト型太陽電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121542
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】バックコンタクト型太陽電池およびバックコンタクト型太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0747 20120101AFI20240830BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20240830BHJP
【FI】
H01L31/06 455
H01L31/04 240
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028694
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 真悟
(72)【発明者】
【氏名】吉河 訓太
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251AA05
5F251CB21
5F251DA07
5F251DA10
5F251GA04
5F251HA03
5F251HA07
(57)【要約】
【課題】FSF半導体膜によるキャリア取り出し効率の向上と、FSF半導体膜による半導体基板への光入射低減の抑制とを両立するバックコンタクト型太陽電池を提供する。
【解決手段】バックコンタクト型太陽電池1は、受光面に凹凸構造を有する第1導電型または第2導電型の半導体基板11と、半導体基板11の裏面側の一部に配置された第1導電型半導体層と、半導体基板11の裏面側の他の一部に配置された第2導電型半導体層と、半導体基板11の受光面側の一部に配置されており、半導体基板11と同一の導電型であり、導電型ドーパントのドーピング濃度が半導体基板11よりも高いFSF半導体膜14と、半導体基板11の受光面側に配置された反射防止層とを備える。FSF半導体膜14は、半導体基板11と反射防止層15との間において、半導体基板11の凹凸構造の谷部に配置されており、半導体基板11の凹凸構造の頂部には配置されていない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面および裏面を有し、前記受光面は凹凸構造を有する、第1導電型または第2導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の前記裏面側の一部に配置された第1導電型半導体層と、
前記半導体基板の前記裏面側の他の一部に配置された第2導電型半導体層と、
前記半導体基板の前記受光面側の一部に配置されており、前記半導体基板と同一の導電型であり、導電型ドーパントのドーピング濃度が前記半導体基板よりも高いFSF半導体膜と、
前記半導体基板の前記受光面側に配置された反射防止層と、
を備え、
前記FSF半導体膜は、前記半導体基板と前記反射防止層との間において、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部に配置されており、前記半導体基板の前記凹凸構造の頂部には配置されていない、
バックコンタクト型太陽電池。
【請求項2】
前記半導体基板の導電型および前記FSF半導体膜の導電型はn型である、請求項1に記載のバックコンタクト型太陽電池。
【請求項3】
請求項1に記載のバックコンタクト型太陽電池の製造方法であって、
前記半導体基板の前記裏面側に、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、
前記半導体基板の前記受光面側の全面に、前記FSF半導体膜の材料膜を形成するFSF半導体材料膜形成工程と、
エッチング溶液を用いて、前記半導体基板の前記受光面側の前記FSF半導体膜の材料膜をエッチングすることにより、前記半導体基板の前記凹凸構造の頂部における前記FSF半導体膜の材料膜を除去し、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部における前記FSF半導体膜の材料膜を残して、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部に前記FSF半導体膜を形成するFSF半導体膜形成工程と、
前記半導体基板の受光面側に、前記反射防止層を形成する反射防止層形成工程と、
を含む、バックコンタクト型太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記FSF半導体膜は、n型アモルファスシリコン膜であり、
前記エッチング溶液は、フッ化水素酸と酸化性液体との混合溶液である、
請求項3に記載のバックコンタクト型太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記酸化性液体は、オゾン水、過酸化水素水および硝酸のうちのいずれかである、請求項4に記載のバックコンタクト型太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックコンタクト型太陽電池およびバックコンタクト型太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を用いた太陽電池として、裏面側のみにpn接合が形成されたバックコンタクト型太陽電池がある。このようなバックコンタクト型太陽電池は、半導体基板と、半導体基板の裏面側の一部に形成(積層、堆積)された第1導電型半導体層と、半導体基板の裏面側の他の一部に形成(積層、堆積)された第2導電型半導体層とを備える。
【0003】
また、バックコンタクト型太陽電池は、半導体基板の受光面側に形成(積層、堆積)された反射防止層を備える。また、バックコンタクト型太陽電池および半導体基板は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有する。これらにより、受光面側の入射光の反射を防止または抑制し、半導体基板への光の入射効率を向上することができる。
【0004】
このようなバックコンタクト型太陽電池において、半導体基板の受光面側の全面にFSF(Front Surface Field)半導体膜を形成(積層、堆積)する技術がある(例えば、特許文献1および2を参照)。FSF半導体膜は、半導体基板と同一の導電型であり、導電型ドーパントのドーピング濃度が前記半導体基板よりも高い。これにより、半導体基板の受光面側にキャリアが移動することを抑制し、半導体基板の裏面側からのキャリアの取り出し効率を向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-118112号公報
【特許文献2】特開2017-112379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、バックコンタクト型太陽電池において、半導体基板の受光面側の全面にFSF半導体膜が形成されると、受光面側の膜厚増加およびFSF半導体膜の光吸収特性により、受光面側の寄生光吸収損失が増大することが考えられる。そのため、半導体基板への光の入射が低減してしまい、寧ろ光電変換性能が低下してしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は、FSF半導体膜によるキャリア取り出し効率の向上と、FSF半導体膜による半導体基板への光入射低減の抑制とを両立するバックコンタクト型太陽電池およびバックコンタクト型太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るバックコンタクト型太陽電池は、受光面および裏面を有し、前記受光面は凹凸構造を有する、第1導電型または第2導電型の半導体基板と、前記半導体基板の前記裏面側の一部に配置された第1導電型半導体層と、前記半導体基板の前記裏面側の他の一部に配置された第2導電型半導体層と、前記半導体基板の前記受光面側の一部に配置されており、前記半導体基板と同一の導電型であり、導電型ドーパントのドーピング濃度が前記半導体基板よりも高いFSF半導体膜と、前記半導体基板の前記受光面側に配置された反射防止層とを備える。前記FSF半導体膜は、前記半導体基板と前記反射防止層との間において、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部に配置されており、前記半導体基板の前記凹凸構造の頂部には配置されていない。
【0009】
本発明に係るバックコンタクト型太陽電池の製造方法は、上記のバックコンタクト型太陽電池の製造方法であって、前記半導体基板の前記裏面側に、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層を形成する半導体層形成工程と、前記半導体基板の前記受光面側の全面に、前記FSF半導体膜の材料膜を形成するFSF半導体材料膜形成工程と、エッチング溶液を用いて、前記半導体基板の前記受光面側の前記FSF半導体膜の材料膜をエッチングすることにより、前記半導体基板の前記凹凸構造の頂部における前記FSF半導体膜の材料膜を除去し、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部における前記FSF半導体膜の材料膜を残して、前記半導体基板の前記凹凸構造の谷部に前記FSF半導体膜を形成するFSF半導体膜形成工程と、前記半導体基板の受光面側に、前記反射防止層を形成する反射防止層形成工程とを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バックコンタクト型太陽電池において、FSF半導体膜によるキャリア取り出し効率の向上と、FSF半導体膜による半導体基板への光入射低減の抑制とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る太陽電池モジュールの一例を示す側面図である。
図2】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図3図2の太陽電池におけるIII-III線断面図である。
図4A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
図4B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるFSF半導体材料膜形成工程を示す図である。
図4C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるFSF半導体膜形成工程を示す図である。
図4D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における反射防止層形成工程を示す図である。
図4E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
図5A】実施例1の太陽電池における半導体基板の受光面側の凹凸構造の谷部の断面のTEM画像である。
図5B図5Aに示すVB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
(太陽電池モジュール)
図1は、本実施形態に係る太陽電池モジュールの一例を示す側面図である。太陽電池モジュール100は、二次元状に配列された複数の太陽電池セル1を備える。
【0014】
太陽電池セル1は、配線部材2によって直列および/または並列に接続される。具体的には、配線部材2は、太陽電池セル1の電極層におけるバスバー部(後述)に、導電性接着部材を介して接続される。配線部材2は、例えば、タブ等の公知のインターコネクタである。導電性接着部材としては、金属微粒子を内包した樹脂フィルム等の導電性フィルム、金属微粒子を含有する導電性ペースト、または、はんだ粒子を含有するはんだペースト等が用いられる。これらの中でも、接着性および低コンタクト抵抗性の観点からはんだペーストが好ましい。
【0015】
太陽電池セル1および配線部材2は、受光面保護部材3と裏面保護部材4とによって挟み込まれている。受光面保護部材3と裏面保護部材4との間には、液体状または固体状の封止材5が充填されており、これにより、太陽電池セル1および配線部材2は封止される。受光面保護部材3は、例えばガラス基板であり、裏面保護部材4はガラス基板または金属板である。封止材5は、例えば透明樹脂である。
【0016】
なお、太陽電池モジュールの態様はこれに限定されず、公知の種々の態様であってもよい。以下、太陽電池セル(以下、太陽電池という。)1について詳細に説明する。
【0017】
(太陽電池)
図2は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図であり、図3は、図2の太陽電池におけるIII-III線断面図である。図2および図3に示す太陽電池1は、バックコンタクト型(裏面接合型、裏面電極型ともいう。)であってヘテロ接合型の太陽電池である。
【0018】
太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1領域7と第2領域8とを有する。以下では、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面を受光面とし、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面を裏面とする。
【0019】
第1領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0020】
同様に、第2領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
【0021】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に設けられている。なお、第1領域7および第2領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0022】
図3に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の受光面側に順に形成(堆積、積層)されたパッシベーション層13および反射防止層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の受光面側の一部に形成(堆積、積層)されたFSF半導体膜14を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の一部(第1領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(第2領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35および第2電極層37を備える。
【0023】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0024】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0025】
半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有する。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0026】
また、半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0027】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0028】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1領域7に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0029】
第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2領域8に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。
なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0030】
第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23と、第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33とは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33の一部は、隣接する第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23の一部の上に重なっていてもよい(図示省略)。
【0031】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第1領域7における第1導電型半導体層25の上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第2領域8における第2導電型半導体層35の上に形成されている。第1電極層27および第2電極層37は、透明電極層と金属電極層とで構成されていてもよいし、金属電極層のみで構成されていてもよい。
【0032】
透明電極層は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。金属電極層は、例えば、銀、銅、アルミニウム等の粒子状の金属材料、絶縁性の樹脂材料および溶媒を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0033】
第1電極層27および第2電極層37は、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第1電極層27と第2電極層37とは互いに分離されている。
【0034】
反射防止層15は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上に形成されている。反射防止層15は、入射光の反射を防止または抑制し、半導体基板11への光の入射効率を向上する。反射防止層15は、例えば酸化珪素(SiO)、窒化珪素(SiN)、または酸窒化珪素(SiON)のようなそれらの複合物等の絶縁体材料で形成される。
【0035】
FSF半導体膜14は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上の一部に、例えば島状に(連続せずに)配置されている。具体的には、FSF半導体膜14は、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13と反射防止層15との間において、半導体基板11およびパッシベーション層13の凹凸構造の谷部に配置されており、半導体基板およびパッシベーション層13の凹凸構造の頂部には配置されていない。
【0036】
FSF半導体膜14は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。FSF半導体膜14は、半導体基板11と同一の導電型である。例えば半導体基板11がn型である場合、FSF半導体膜14は、アモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。一方、例えば半導体基板11がp型である場合、FSF半導体膜14は、アモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0037】
FSF半導体膜14の導電型ドーパントのドーピング濃度は、半導体基板11よりも高い。これにより、半導体基板の受光面側にキャリアが移動することを抑制し、半導体基板の裏面側からのキャリアの取り出し効率を向上することができる。
【0038】
(太陽電池の製造方法)
次に、図4A図4Eを参照して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。図4Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図であり、図4Bは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるFSF半導体材料膜形成工程を示す図である。図4Cは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法におけるFSF半導体膜形成工程を示す図であり、図4Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における反射防止層形成工程を示す図である。図4Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における電極層形成工程を示す図である。
【0039】
まず、図4Aに示すように、少なくとも受光面側に凹凸構造(テクスチャ構造)を有するn型またはp型の半導体基板11の裏面側の一部に、具体的には第1領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(半導体層形成工程)。
【0040】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第1導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25をパターニングしてもよい。なお、p型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸や、硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0041】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第1導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層23およびp型半導体層25の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0042】
次に、半導体基板11の裏面側の他の一部に、具体的には第2領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0043】
例えば、上述同様に、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全てにパッシベーション膜および第2導電型半導体膜を製膜した後、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0044】
または、CVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側にパッシベーション層および第2導電型半導体層を積層する際に、マスクを用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35の製膜およびパターニングを同時に行ってもよい。
【0045】
このとき、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成する(半導体層形成工程)。例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側にパッシベーション膜を製膜する。
【0046】
次に、図4Bに示すように、半導体基板11の受光面側の全面に、すなわちパッシベーション層13上の全面に、FSF半導体膜の材料膜14Zを形成する(FSF半導体材料膜形成工程)。例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側にFSF半導体膜の材料膜を製膜する。
【0047】
次に、図4Cに示すように、エッチング溶液を用いて、半導体基板11の受光面側のFSF半導体膜の材料膜14Zをエッチングすることにより、半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上の一部にFSF半導体膜14を形成する(FSF半導体膜形成工程)。具体的には、半導体基板11の受光面側の凹凸構造の頂部におけるFSF半導体膜の材料膜14Zを除去し、半導体基板11の受光面側の凹凸構造の谷部におけるFSF半導体膜の材料膜14Zを残して、半導体基板11の受光面側の凹凸構造の谷部にFSF半導体膜14を形成する。
【0048】
エッチング溶液としては、例えばフッ化水素酸と酸化性液体との混合溶液、或いは水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。酸化性液体としては、オゾン水、過酸化水素水および硝酸のうちのいずれかが用いられる。
【0049】
次に、図4Dに示すように、半導体基板11の受光面側の全面に、すなわちパッシベーション層13およびFSF半導体膜14上に、反射防止層15を形成する(反射防止層形成工程)。例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の受光面側に反射防止層を製膜する。
【0050】
次に、図4Eに示すように、第1導電型半導体層25上に第1電極層27を形成し、第2導電型半導体層35上に第1電極層28を形成する(電極形成工程)。例えばCVD法またはPVD法とエッチング法とを用いて、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上に、互いに分離された透明電極層を形成する。その後、例えば印刷法または塗布法を用いて、透明電極層上に金属電極層をそれぞれ形成する。
以上の工程により、本実施形態のバックコンタクト型の太陽電池1が得られる。
【0051】
ここで、バックコンタクト型太陽電池において、半導体基板の受光面側の全面にFSF半導体膜が形成されると、受光面側の膜厚増加およびFSF半導体膜の光吸収特性により、受光面側の寄生光吸収損失が増大することが考えられる。そのため、半導体基板への光の入射が低減してしまい、寧ろ光電変換性能が低下してしまうことが考えられる。
【0052】
この点に関し、本実施形態の太陽電池1では、半導体基板11の受光面側の一部に、半導体基板11と同一の導電型であり、その導電型ドーパントのドーピング濃度が半導体基板11よりも高いFSF半導体膜14が配置されている。具体的には、半導体基板11と反射防止層15との間において、半導体基板11の受光面側の凹凸構造の谷部のみにFSF半導体膜14が配置されており、半導体基板11の受光面型の凹凸構造の頂部にはFSF半導体膜14が配置されていない。
【0053】
このように、半導体基板11の受光面型の凹凸構造の谷部にはFSF半導体膜14が配置されているので、半導体基板11の受光面側にキャリアが移動することを抑制し、半導体基板11の裏面側からのキャリアの取り出し効率を向上することができる。
【0054】
一方、半導体基板11の受光面型の凹凸構造の頂部にはFSF半導体膜14が配置されていないので、受光面側の膜厚増加およびFSF半導体膜14の光吸収特性により、受光面側の寄生光吸収損失が増大することを抑制することができ、半導体基板11への光の入射が低減することを抑制することができる。そのため、FSF半導体膜14によるキャリア取り出し効率の向上と、FSF半導体膜14による半導体基板への光入射低減の抑制とを両立することができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【実施例0056】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
図2および図3に示す太陽電池1を作製した。実施例1の主な特徴は以下の通りである。
・半導体基板11の受光面側の凹凸構造の谷部のみに、FSF半導体膜14が配置されており、
・半導体基板11の受光面側の凹凸構造の頂部には、FSF半導体膜14が配置されていない。
【0058】
(比較例1)
実施例1において、以下の点が異なる。
・半導体基板11の受光面側の全面に、FSF半導体膜14が配置されていない。
【0059】
(比較例2)
実施例1において、以下の点が異なる。
・半導体基板11の受光面側の全面に、FSF半導体膜14が配置されている。
【0060】
(実施例1の確認)
図5Aは、実施例1の太陽電池における半導体基板の受光面側の凹凸構造の谷部の断面のTEM画像であり、図5Bは、図5Aに示すVB部分の拡大図である。なお、図5Aおよび図5Bでは、反射防止層15を製膜する前の状態、すなわち図4Cに示す反射防止層形成工程の前の状態のTEM画像を示す。また、図5Aおよび図5Bでは、観察のためのコントラストを得るために、また、表面保護のために、パッシベーション層13およびFSF半導体膜14の上にいくつかの膜(測定のための膜)を製膜しているが、これらの膜(測定のための膜)の詳細は省略する。図5Aおよび図5Bに示すように、実施例1では、半導体基板11の受光面側の凹凸構造の谷部のみに、FSF半導体膜14が配置されていることが確認できた。
【0061】
(評価)
AM1.5のスペクトル分布を有するパルスソーラーシミュレーターを用いて、25℃の下で擬似太陽光を100mW/cmのエネルギー密度で照射して、上記の実施例および比較例の太陽電池の性能特性(光電変換効率Eff、短絡電流Isc、開放電圧Voc、最大出力電力Pmax、曲線因子FF、直列抵抗Rsおよび並列抵抗Rsh)を測定した。測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
なお、実施例1の測定結果はサンプル数190個の測定結果の平均値であり、比較例1の測定結果はサンプル数186個の測定結果の平均値であり、比較例2の測定結果はサンプル数187個の測定結果の平均値である。
【0063】
表1によれば、比較例2の性能が比較例1の性能よりも低下した。これは、半導体基板11の受光面側の全面にFSF半導体膜14が形成されたことにより、受光面側の膜厚増加およびFSF半導体膜14の光吸収特性により、受光面側の寄生光吸収損失が増大したことによるものと考えられる。そのため、半導体基板11への光の入射が低減してしまい、寧ろ性能が低下してしまったと考えられる。
【0064】
これに対して、実施例1の性能は比較例1および2の性能よりも向上した。これは、FSF半導体膜14の形成箇所を半導体基板11の受光面側の一部に制限したことにより、FSF半導体膜14によるキャリア取り出し効率の向上と、FSF半導体膜14による半導体基板11への光入射低減の抑制とを両立できたことによるものと考えられる。
【符号の説明】
【0065】
1 太陽電池
2 配線部材
3 受光面保護部材
4 裏面保護部材
5 封止材
7 第1領域
8 第2領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
11 半導体基板
13,23,33 パッシベーション層
14 FSF半導体膜
14Z FSF半導体膜の材料膜
15 反射防止層
25 第1導電型半導体層
27 第1電極層
35 第2導電型半導体層
37 第2電極層
100 太陽電池モジュール
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B