(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121543
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H01G4/30 201N
H01G4/30 201C
H01G4/30 201L
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028695
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC07
5E001AE02
5E001AE03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】 音鳴きを抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供する。
【解決手段】 積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層および前記複数の誘電体層を介して設けられ、互いに対向する2端面に交互に引き出された複数の内部電極層を有する素体と、前記複数の内部電極層が対向する第1方向と、前記2端面が対向する第2方向とに直交する第3方向において前記素体を挟む1対のサイドマージンと、前記素体および前記1対のサイドマージンにおける前記第2方向のそれぞれの端に設けられた1対の外部電極と、を備え、前記1対のサイドマージンのうち少なくともいずれか一方は、複数のサイド誘電体層と、前記複数のサイド誘電体層を介して設けられて前記第3方向において対向し、前記第2方向に対向する2端面に交互に引き出された6層以上のサイド内部電極層と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層および前記複数の誘電体層を介して設けられ、互いに対向する2端面に交互に引き出された複数の内部電極層を有する素体と、
前記複数の内部電極層が対向する第1方向と、前記2端面が対向する第2方向とに直交する第3方向において前記素体を挟む1対のサイドマージンと、
前記素体および前記1対のサイドマージンにおける前記第2方向のそれぞれの端に設けられた1対の外部電極と、を備え、
前記1対のサイドマージンのうち少なくともいずれか一方は、複数のサイド誘電体層と、前記複数のサイド誘電体層を介して設けられて前記第3方向において対向し、前記第2方向に対向する2端面に交互に引き出された6層以上のサイド内部電極層と、を備える、積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1方向における前記素体の寸法は、前記第3方向における前記素体の寸法と前記1対のサイドマージンの寸法との和より大きい、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記複数の誘電体層および前記複数のサイド誘電体層は、チタン酸バリウムを含む、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第3方向における前記複数のサイド誘電体層の平均厚さは、前記第1方向における前記複数の誘電体層の平均厚さの2倍以下である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記複数のサイド誘電体層の誘電率は、前記複数の誘電体層の誘電率以上である、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記第2方向における前記素体の寸法は、前記第3方向における前記素体の寸法と前記1対のサイドマージンの寸法との和より小さい、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記1対のサイドマージンのうち一方のサイドマージンのみに、6層以上の前記サイド内部電極層が設けられている、請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
請求項7に記載の積層セラミック電子部品と、
前記積層セラミック電子部品が前記一方のサイドマージン側の面を実装面として実装された実装基板と、を備える回路基板。
【請求項9】
請求項7に記載のセラミック電子部品と、
シール面と、前記シール面から窪み、前記セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、
前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、
を備えることを特徴とする包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品(例えば、特許文献1~16参照。)は、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの多様な電子機器に搭載されている。電子機器の小型・高性能化に伴って、回路基板上で積層セラミック電子部品に要求される容量が増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-149570号公報
【特許文献2】特開2014-179583号公報
【特許文献3】特開2015-229491号公報
【特許文献4】特開2016-54323号公報
【特許文献5】特開2000-232030号公報
【特許文献6】特開2016-105453号公報
【特許文献7】特開2013-180908号公報
【特許文献8】特開2009-35431号公報
【特許文献9】特開2013-206966号公報
【特許文献10】特開2021-89940号公報
【特許文献11】特開2013-211357号公報
【特許文献12】特開2015-226026号公報
【特許文献13】特開2019-140204号公報
【特許文献14】特開2009-27101号公報
【特許文献15】特開2021-13012号公報
【特許文献16】US特許公開第2020/01618399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの積層セラミック電子部品では、いわゆる音鳴きの問題が生じている。例えば、誘電体層厚を減らして積層数を増やすことによって容量を上げようとすると、薄層化で誘電体層への電界強度が増すことに加え積層数が増すことで積層方向における電歪が大きくなってしまい、音鳴きの問題が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、音鳴きを抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層および前記複数の誘電体層を介して設けられ、互いに対向する2端面に交互に引き出された複数の内部電極層を有する素体と、前記複数の内部電極層が対向する第1方向と、前記2端面が対向する第2方向とに直交する第3方向において前記素体を挟む1対のサイドマージンと、前記素体および前記1対のサイドマージンにおける前記第2方向のそれぞれの端に設けられた1対の外部電極と、を備え、前記1対のサイドマージンのうち少なくともいずれか一方は、複数のサイド誘電体層と、前記複数のサイド誘電体層を介して設けられて前記第3方向において対向し、前記第2方向に対向する2端面に交互に引き出された6層以上のサイド内部電極層と、を備える。
【0007】
上記積層セラミック電子部品において、前記第1方向における前記素体の寸法は、前記第3方向における前記素体の寸法と前記1対のサイドマージンの寸法との和より大きくてもよい。
【0008】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数の誘電体層および前記複数のサイド誘電体層は、チタン酸バリウムを含んでいてもよい。
【0009】
上記積層セラミック電子部品において、前記第3方向における前記複数のサイド誘電体層の平均厚さは、前記第1方向における前記複数の誘電体層の平均厚さの2倍以下であってもよい。
【0010】
上記積層セラミック電子部品において、前記複数のサイド誘電体層の誘電率は、前記複数の誘電体層の誘電率以上であってもよい。
【0011】
上記積層セラミック電子部品において、前記第2方向における前記素体の寸法は、前記第3方向における前記素体の寸法と前記1対のサイドマージンの寸法との和より小さくてもよい。
【0012】
上記積層セラミック電子部品において、前記1対のサイドマージンのうち一方のサイドマージンのみに、6層以上の前記サイド内部電極層が設けられていてもよい。
【0013】
本発明に係る回路基板は、上記積層セラミック電子部品と、前記積層セラミック電子部品が前記一方のサイドマージン側の面を実装面として実装された実装基板と、を備える。
【0014】
本発明に係る包装体は、上記セラミック電子部品と、シール面と、前記シール面から窪み、前記セラミック電子部品を収容する凹部と、を有するキャリアテープと、前記シール面に貼り付けられ、前記凹部を覆うトップテープと、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、音鳴きを抑制することができる積層セラミック電子部品、回路基板、および包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】積層セラミックコンデンサのX軸方向の中央における、サイドマージンのYZ断面の拡大図である。
【
図5】積層チップの一方の端面を例示する図である。
【
図6】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図10】第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの外観図である。
【
図11】第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図12】X軸方向の寸法Y軸方向の寸法よりも小さい場合を例示する図である。
【
図13】Y軸方向の寸法YがZ軸方向における寸法よりも大きい場合を例示する図である。
【
図14】一方のサイドマージンのみにサイド内部電極層が設けられている場合を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の外観図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10においてX軸方向に対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0019】
なお、
図1~
図3において、Z軸方向(第1方向)は、積層方向であり、各内部電極層が対向する方向である。X軸方向(第2方向)は、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第3方向)は、内部電極層の幅方向であり、積層チップ10の4側面のうち2端面以外の2側面が対向する方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0020】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、内部電極層12とが、交互に積層された素体40を備える。各内部電極層12の端縁は、素体40の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。また、素体40において、誘電体層11と内部電極層12との積層部分の積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層部分の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。
【0021】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0022】
内部電極層12は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。Z軸方向における内部電極層12の1層当たりの平均厚みは、例えば、1.5μm以下であり、1.0μm以下であり、0.7μm以下である。内部電極層12の厚みは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の内部電極層12についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0023】
誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3),ジルコン酸カルシウム(CaZrO3),チタン酸カルシウム(CaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸マグネシウム(MgTiO3),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。例えば、誘電体層11において、主成分セラミックは、90at%以上含まれている。Z軸方向における誘電体層11の厚みは、例えば、5.0μm以下であり、3.0μm以下であり、1.0μm以下である。誘電体層11の厚みは、積層セラミックコンデンサ100の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察し、異なる10層の誘電体層11についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0024】
誘電体層11には、添加物が添加されていてもよい。誘電体層11への添加物として、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、希土類元素(イットリウム(Y)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)およびイッテルビウム(Yb))の酸化物、または、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、リチウム(Li)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)もしくはケイ素(Si)を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0025】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該電気容量を生じる領域を、容量部14と称する。すなわち、容量部14は、異なる外部電極に接続された隣接する内部電極層12同士が対向する領域である。
【0026】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、電気容量を生じない領域である。
【0027】
図3で例示するように、積層チップ10において、1対のサイドマージン30は、Y軸方向から素体40を挟んでいる。それにより、1対のサイドマージン30は、素体40の2側面側の端部(Y軸方向の端部)を覆っている。
【0028】
高誘電率系の積層セラミック電子部品は、誘電体に電圧がかかると誘電体が変形する(歪む)「電歪」という特性がある。このため、周期的な電圧が積層セラミック電子部品にかかると、積層セラミック電子部品が振動し、基板にその振動が伝達して増幅され、可聴域周波数(20Hz~20kHz)の音鳴きが発生する。
【0029】
これまでに音鳴き対策として特許文献にて多くの手段が報告されている。それらは、例えば、次の5つのカテゴリーに大別できる。(1)実装基板と距離をとる。(2)振動方向を制御する。(3)低い比誘電率(εr)の材料を使う。(4)内部電極の変位が大きいところが重ならないようにずらす。(5)外電端子間距離を変える(小さくする)。
【0030】
カテゴリ(1)は、さらに次の3つのサブカテゴリに分かれる。(1-1)金属の足をつける(例えば、特許文献1参照)。(1-2)インターポーザをつける(例えば、特許文献2参照)。(1-3)特殊形状の外部電極にする(例えば、特許文献3参照)。
【0031】
同様に、カテゴリ(2)は、さらに次の3つのサブカテゴリに分かれる。(1-2)上下から左右に振動方向を変える(例えば、特許文献4参照)。(2-2)振動を相殺する(例えば、特許文献5参照)。(2-3)チップ実装方向を変えて複数並べる(例えば、特許文献6参照)。
【0032】
同様に、カテゴリ(3)は、さらに次の2つのサブカテゴリに分かれる。(3-1)タングステンブロンズ相と常誘電体ブレンド(例えば、特許文献7参照)。(3-2)Ba(TixZr1-x)O3やSrTiO3ベースのコアシェル材料で誘電率を落とした材料(例えば、特許文献8参照)。
【0033】
同様に、カテゴリ(4)は、さらに次の4つのサブカテゴリに分かれる。(4-1)内部電極交差部をずらして変位を分散する(例えば、特許文献9参照)。(4-2)内部電極を部分的に湾曲させる(例えば、特許文献10参照)。(4-3)内部電極印刷パターンを変える(特許文献11参照)。(4-4)下面側のカバーを厚くする(例えば、特許文献12参照)。
【0034】
同様に、カテゴリ(5)は、さらに次の2つのサブカテゴリに分かれる。(5-1)横から内部電極を引き出して外部電極つけることで端子位置を動かす(例えば、特許文献13参照)。(5-2)多端子構造にする(例えば、特許文献14参照)。
【0035】
これらの手段はいずれも、音鳴きが解消される代償として大きなデメリットが避けられない。具体的には、追加の部材が必要となってしまう。例えば、金属の足やインターポーザは、そもそも高背で容量積み増しに使いたい高さ空間を消費してしまう。また、回路実装において特殊な制約が要求される、例えば、音鳴き対策構造のための特殊なランドパターンが要求される。また、特殊な低誘電率ε材料や特殊な電極印刷パターンにより結局のところ低容量品しか作れないおそれがある。これらの場合でも誘電体層厚を減らして積層数を増やせば容量を上げられるが、薄層化で誘電体層への電界強度が増すことに加え積層数が増すことで結局のところは電歪が大きくなるうえに、薄層化によって信頼性まで低下してしまう。このように、各特許文献の方法では大容量確保と両立できる根本的な音鳴き解決はできていなかった。
【0036】
これに対して、本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100は、音鳴きを抑制することができる構成を有している。
【0037】
図4は、積層セラミックコンデンサ100のX軸方向の中央における、サイドマージン30のYZ断面の拡大図である。
図4で例示するように、各サイドマージン30は、複数のサイド誘電体層31と複数のサイド内部電極層32とが交互に積層された構造を有している。各サイド誘電体層31は、2層の隣り合うサイド内部電極層32によって挟まれている。各サイドマージン30において、Y軸方向の最も外側には、サイド内部電極層32ではなくセラミック材料が配置されている。それにより、金属成分を含んでいるサイド内部電極層32の露出を抑制することができる。また、各サイドマージン30において、Y軸方向の最も内側にも、サイド内部電極層32ではなくセラミック材料が配置されている。それにより、内部電極層12とサイド内部電極層32との電気的な接触を抑制することができる。
【0038】
各サイド内部電極層32は、サイドマージン30において、外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各サイド内部電極層32は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。
図5は、積層チップ10の一方の端面を例示する図である。
図5で例示するように、内部電極層12およびサイド内部電極層32が積層チップ10の端面に引き出されている。内部電極層12およびサイド内部電極層32は積層チップ10の2端面に交互に引き出されていることから、
図4と比較すると、
図5では内部電極層12およびサイド内部電極層32の層数が半分となっている。
【0039】
サイド誘電体層31は、セラミック材料を主成分とする。サイド誘電体層31は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、チタン酸バリウム(BaTiO3),ジルコン酸カルシウム(CaZrO3),チタン酸カルシウム(CaTiO3),チタン酸ストロンチウム(SrTiO3),チタン酸マグネシウム(MgTiO3),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaxSryTi1-zZrzO3は、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。例えば、サイド誘電体層11において、主成分セラミックは、90at%以上含まれている。例えば、サイド誘電体層31は、誘電体層11と組成が同じであっても、異なっていても構わない。Y軸方向におけるサイド誘電体層31の厚みは、例えば、5.0μm以下であり、3.0μm以下であり、1.0μm以下である。サイド誘電体層31の厚みは、積層セラミックコンデンサ100のYZ断面をSEMで観察し、異なる5層のサイド誘電体層31についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0040】
サイド内部電極層32は、金属材料を主成分とする。例えば、サイド内部電極層32は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)等の卑金属を主成分とする。サイド内部電極層32として、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。サイド内部電極層32は、内部電極層12と組成が同じであっても、異なっていても構わない。Y軸方向におけるサイド内部電極層32の1層当たりの平均厚みは、例えば、1.5μm以下であり、1.0μm以下であり、0.7μm以下である。サイド内部電極層32の厚みは、積層セラミックコンデンサ100のYZ断面をSEMで観察し、異なる5層のサイド内部電極層32についてそれぞれ10点ずつ厚みを測定し、全測定点の平均値を導出することによって測定することができる。
【0041】
Z軸方向におけるサイド内部電極層32の幅は、例えば、サイドマージン30のZ軸方向における寸法に対して、例えば0.6倍以上0.7倍以下であり、0.7倍以上0.8倍以下であり、0.8倍以上0.9倍以下である。または、Z軸方向におけるサイド内部電極層32の幅は、例えば、素体40における最外層の2層の内部電極層12の距離程度である。
【0042】
本実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100では、サイド内部電極層32も外部電極20a,20bと接続されている。この構成では、素体40の各内部電極層12に交番電界が印可されて電歪振動するときに、サイド内部電極層32も同周期で電歪振動する。しかしながら、サイドマージン30における振動方向は素体40における振動方向に対して交差するため、破壊されない限り体積を一定に保つという物理的要請から、サイドマージン30における電歪変位は、素体40における電歪変位を抑制する力として作用する。これにより、実装基板に伝達される変位を抑制することができ、音鳴きが抑制される。この構成は、弾性率の高いセラミックスに対して特に有効な手段である。なお、本発明者の鋭意研究により、少なくとも一方のサイドマージン30において、6層以上のサイド内部電極層32を設けることによって、音鳴きを十分に抑制できることが突き止められた。
【0043】
音鳴きを抑制する観点から、少なくとも一方のサイドマージンにおいて、6層以上のサイド内部電極層32が設けられていることが好ましく、11層以上のサイド内部電極層32が設けられていることがさらに好ましい。
【0044】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100が優れている点について、さらに説明する。第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100によれば、通常普及している2端子構造がそのまま使えるので追加部材は不要であり、既存の積層セラミックコンデンサの回路パターンを変える必要もない。素体40の誘電体層11の誘電体材料を変える必要もない。サイドマージン30に容量層が追加されるわけなので容量は減らない。
【0045】
ところで、特許文献15で、マージン部に電極層を設ける構成が開示されている。しかしながら、これらの特許文献は、マージン部の電極層はダミー電極であるので、本実施形態とは全く異なる構造である。一方で、特許文献16ではキャパシタとして作用する内部電極が配置されている。しかしながら、この文献でのマージン部内部電極の効果は、ESL低減、付加容量、電流の分散であり、電歪変位を与える作用について記述がない。その理由は、いわば薄型積層セラミックコンデンサとして作用するマージン部において、誘電体材料の誘電率が十分に高くなく、誘電体層厚も大きく、積層数も少なすぎるために素体の電歪に影響を与えるだけの電歪を与えられていないために、本実施形態に係る作用効果を実現できていないためである。本実施形態は、一般にセラミック板として内部電極を物理的に保護する役割であるサイドマージンを電歪素子化して利用する点にあり、単純に電極を含んでいるだけの構造や僅かな容量追加の機能やESL低減機能とは一線を画すものである。
【0046】
Y軸方向におけるサイド誘電体層31の平均厚さは、Z軸方向における誘電体層11の2倍以下であることが好ましい。電歪を発生させるための電界強度が必要だからである。一方、Y軸方向におけるサイド誘電体層31の平均厚さは、Z軸方向における誘電体層11の0.5倍以上であることが好ましい。それより薄いと絶縁劣化の原因となる場合があるからである。
【0047】
サイド誘電体層31の誘電率は、誘電体層11の誘電率以上であるか、誘電体層11の誘電率よりも大きいことが好ましい。電歪変位量を確保するためである。
【0048】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図6は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0049】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、チタン酸バリウムは、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い比誘電率を示す。このチタン酸バリウムは、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0050】
得られたセラミック原料粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、ジルコニウム、ハフニウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、バナジウム、クロム、希土類元素(イットリウム、サマリウム、ユーロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイッテルビウム)の酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含む酸化物、または、コバルト、ニッケル、リチウム、ホウ素、ナトリウム、カリウムもしくはケイ素を含むガラスが挙げられる。
【0051】
例えば、セラミック原料粉末に添加化合物を含む化合物を湿式混合し、乾燥および粉砕してセラミック材料を調製する。例えば、上記のようにして得られたセラミック材料について、必要に応じて粉砕処理して粒径を調節し、あるいは分級処理と組み合わせることで粒径を整えてもよい。以上の工程により、誘電体材料が得られる。
【0052】
次に、サイドマージン30のサイド誘電体層31を形成するためのサイド誘電体材料を用意する。サイド誘電体材料は、サイド誘電体層31の主成分セラミックの粉末を含む。主成分セラミックの粉末として、例えば、上記の誘電体材料の主成分セラミックの粉末を用いることができる。目的に応じて所定の添加化合物を添加する。
【0053】
(塗工工程)
次に、得られた原料粉末に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。基材は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。塗工工程を例示する図は省略した。
【0054】
(内部電極形成工程)
次に、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の内部電極パターン52を配置する。金属導電ペーストには、ニッケルに加えて共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。内部電極パターン52が印刷された誘電体グリーンシート51を積層単位と称する。
【0055】
その後、
図7で例示するように、焼成後の内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、積層単位を積層していく。例えば、内部電極パターン52の積層数を100~500層とする。
【0056】
(圧着工程)
図7で例示するように、積層単位が積層された積層体の上下にカバーシート53を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着する。
【0057】
(サイドマージン形成工程)
サイドマージン部は、上記積層部分の側面に貼り付ける。具体的には、
図7で例示するように、サイド誘電体グリーンシート54と、サイド内部電極パターン55とを交互に積層することで、サイド積層部分を得る。サイド誘電体グリーンシート54には、サイド誘電体材料を用いる。次に、誘電体グリーンシート51と内部電極パターン52との積層部分の側面にサイド積層部分を貼り付ける。なお、サイド誘電体グリーンシート54はサイド内部電極パターン55よりも大きい幅を有していることから段差が生じるおそれがある。サイド誘電体グリーンシート54上においてサイド内部電極パターン55が形成されていない領域に逆パターン56を形成してもよい。逆パターン56には、サイド誘電体材料などを用いることができる。
【0058】
(焼成工程)
その後、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層チップ10が得られる。
【0059】
(再酸化処理工程)
還元雰囲気で焼成された誘電体層11およびサイド誘電体層31の部分的に還元された主相であるチタン酸バリウムに酸素を戻すために、内部電極層12およびサイド内部電極層32を酸化させない程度に、約1000℃でN2と水蒸気の混合ガス中、もしくは500℃~700℃の大気中での熱処理が行われることがある。この工程は、再酸化処理工程とよばれる。
【0060】
(塗布工程)
次に、積層チップ10の2端面に、外部電極20a,20bとなる金属ペーストをディップ法などで塗布する。金属ペーストは、例えば、銅、ニッケルなどを主成分とする。この金属ペーストには、ガラスフリットなどのガラス成分を含ませる。
【0061】
(焼付工程)
次に、700℃~900℃程度の温度で金属ペーストを焼き付けることで、外部電極20a,20bを形成する。
【0062】
(めっき処理工程)
その後、外部電極20a,20b上に、めっき処理により、銅、ニッケル、スズ等の金属コーティングを行うことでめっき層を形成する。以上の工程により、積層セラミックコンデンサ100が完成する。
【0063】
なお、外部電極20a,20bは、焼成工程において同時に焼成してもよい。
【0064】
(第2実施形態)
第2実施形態では、高背構造の積層セラミックコンデンサについて説明する。
【0065】
電子機器の小型・高性能化に伴って、回路基板上で積層セラミックコンデンサに要求される容量が増加している。一方で、積層セラミック電子部品に割り当てられる実装面積が益々減少している。
【0066】
このような背景から、積層セラミックコンデンサの小型大容量化のための技術検討が進められている。このようなトレンドの中で、実装面積を増やさずに容量を大きくする方法として、
図8(a)の積層セラミックコンデンサに対して、
図8(b)のような高背構造の積層セラミック電子部品が登場している。この構造は、積層セラミック電子部品の高さだけを大きくしたものであり、高さ方向が積層方向であれば積層数増加の効果が得られ、高さ方向が積層方向に垂直な方向であれば各層の電極面積増加の効果が得られ、いずれにせよ実装面積を増やさずに容量を増大させることができる。もちろん、高さにも制限があるが、電子回路基板上には積層セラミック電子部品よりも背の高い部品が存在するため、その高さまでは高さ方向に使える空間が残されており、その空間を有効利用できる製品となっている。
【0067】
しかしながら、
図9(a)および
図9(b)で例示するように、高背化することで、内部電極層12の積層方向における音鳴きが大きくなるという新たな課題が発生することがある。
【0068】
第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100aは、音鳴きを抑制しつつ高容量を実現することができる構成を有している。以下、説明する。
【0069】
図10は、第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100aの外観図である。
図11は、積層セラミックコンデンサ100aの部分断面斜視図である。積層セラミックコンデンサ100aにおいては、積層チップ10のZ軸方向の寸法Z
0がY軸方向の寸法Y
0よりも大きくなっている。例えば、寸法Z
0は、寸法Y
0の1.1倍以上であり、1.3倍以上であり、または1.5倍以上である。なお、寸法Z
0および寸法Y
0は、それぞれZ軸方向およびY軸方向の最大寸法である。
【0070】
なお、本実施形態において、Z軸方向(第1方向)は、積層方向であり、各内部電極層が対向する方向である。X軸方向(第2方向)は、積層チップ10の長さ方向であって、積層チップ10の2端面が対向する方向であり、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第3方向)は、内部電極層の幅方向であり、積層チップ10の4側面のうち2端面以外の2側面が対向する方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0071】
本実施形態においては、少なくとも一方のサイドマージン30において、少なくとも1層のサイド内部電極層32が設けられている。それにより、高背構造という音鳴きが大きくなり得る構造において、音鳴きを十分に抑制することができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、高背化に伴ってサイド内部電極層32のZ軸方向の幅が大きくなっていてもよい。サイドマージン30におけるその他の構成は、第1実施形態と同様であってもよい。例えば、少なくとも一方のサイドマージン30において、6層以上のサイド内部電極層32が設けられていることが好ましい。
【0073】
(第3実施形態)
第3実施形態においては、端子間距離を短くすることによって、振動振幅を抑制することができる構成について説明する。
【0074】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100または第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100aについて、
図12で例示するように、X軸方向の寸法X
0が、Y軸方向の寸法Y
0よりも小さくなっている。この構成により、外部電極20aと外部電極20bとの距離が短くなり、振動振幅を抑制することができる。それにより、音鳴きをより抑制することができるようになる。なお、
図12では外部電極20a,20bが省略してあるが、X軸方向の各端面に、外部電極20a,20bがそれぞれ設けられることになる。
【0075】
例えば、X軸方向の寸法X0は、Y軸方向の寸法Y0の0.7倍以下であり、0.6倍以下であることが好ましく、0.5倍以下であることがより好ましい。
【0076】
(第4実施形態)
第4実施形態においては、Y軸方向における寸法がZ軸方向における寸法よりも大きい場合について説明する。
【0077】
第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100または第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100aについて、
図13で例示するように、Y軸方向における寸法Y
0をZ軸方向における寸法Z
0よりも大きくしてもよい。例えば、Y軸方向の寸法Y
0は、Z軸方向の寸法Z
0の1.1倍以上であり、または1.2倍以上であり、または1.3倍以上である。この構成では、容量の拡大といった効果が得られる。なお、
図13では外部電極20a,20bが省略してあるが、X軸方向の各端面に、外部電極20a,20bがそれぞれ設けられることになる。
【0078】
ただし、この構成では、1層あたりの内部電極層12の電極面積が大きくなる。そこで、このような構成において、X軸方向の寸法X0をY軸方向の寸法Y0よりも小さくすることにより、振動振幅を抑制する効果が顕著となる。
【0079】
例えば、X軸方向の寸法X0は、Y軸方向の寸法Y0の0.7倍以下であることが好ましく、0.6倍以下であることがより好ましく、0.5倍以下であることがさらに好ましい。
【0080】
(第5実施形態)
上記の第1実施形態から第4実施形態の積層セラミックコンデンサにおいて、いずれか一方のサイドマージン30にのみにサイド誘電体層31が設けられていてもよい。例えば、
図14(a)のように、Y軸方向に同じ厚みを有する1対のサイドマージン30のうち、一方のみにサイド内部電極層32が設けられていてもよい。または、
図14(b)のように、Y軸方向に異なる厚みを有する1対のサイドマージン30のうち、厚い方のサイドマージン30のみにサイド内部電極層32が設けられていてもよい。
【0081】
音鳴きは実装基板に接する面において生じやすいため、実装基板側のサイドマージンにのみにサイド内部電極層32を設けることによって、余計な構成を付加しなくても効果的に音鳴きを抑制することができるようになる。
【0082】
ここで、積層セラミックコンデンサの実装について説明する。
図15は、第1実施形態から第4実施形態のいずれかの積層セラミックコンデンサ100,100a(積層セラミックコンデンサ100または積層セラミックコンデンサ100a)を含む回路基板200の側面図である。回路基板200は、積層セラミックコンデンサ100,100aが実装される実装基板210を有する。実装基板210は、X軸方向およびY軸方向の平面に沿って延び、Z軸方向に垂直な実装面Gを有する基材211と、実装面Gに設けられた一対の接続電極212と、を有する。
【0083】
回路基板200では、積層セラミックコンデンサ100,100aの外部電極20a,20bがそれぞれ実装基板210の一対の接続電極212にハンダHを介して接続されている。これにより、回路基板200では、積層セラミックコンデンサ100,100aが実装基板210に対して固定されるとともに電気的に接続されている。
【0084】
積層セラミックコンデンサ100,100aは、実装基板210に実装する際に包装体300として包装された状態で準備される。
図16および
図17は、包装体300を例示する図である。
図16は、包装体300の部分平面図である。
図17は、
図16のC-C線に沿った包装体300の断面図である。
【0085】
包装体300は、積層セラミックコンデンサ100,100aと、キャリアテープ310と、トップテープ320と、を備える。キャリアテープ310は、W方向に延びる長尺状のテープとして構成されている。キャリアテープ310には、積層セラミックコンデンサ100,100aを1個ずつ収容する複数の凹部311がY軸方向に間隔をあけて配列されている。
【0086】
キャリアテープ310は、Z軸方向と直交する上向きの面であるシール面Pを有し、複数の凹部311はシール面PからX軸方向の下向きに窪んでいる。つまり、キャリアテープ310は、シール面P側から複数の凹部311内の積層セラミックコンデンサ100,100aを取り出すことが可能なように構成されている。
【0087】
キャリアテープ310では、複数の凹部311の列とはX軸方向にずれた位置に、Y軸方向に間隔をあけて配列されたZ軸方向に貫通する複数の送り孔312が設けられている。送り孔312は、テープ搬送機構がキャリアテープ310をY軸方向に搬送するために用いられる係合孔として構成される。
【0088】
包装体300では、トップテープ320が複数の凹部311の列に沿ってキャリアテープ310のシール面Pに貼り付けられ、複数の積層セラミックコンデンサ100,100aを収容した複数の凹部311がトップテープ320によって一括して覆われている。これにより、複数の積層セラミックコンデンサ100,100aが複数の凹部311内に保持される。
【0089】
図16に示すように、キャリアテープ310の凹部311内の積層セラミックコンデンサ100,100aでは、積層チップ10におけるZ軸方向上方を向いた第1主面M1がトップテープ320と対向している。また、積層チップ10のZ軸方向下方を向いた第2主面M2は、凹部311の底面と対向している。
【0090】
包装体300として包装された積層セラミックコンデンサ100,100aの実装の際には、キャリアテープ310のシール面Pからトップテープ320をY軸方向に沿って剥離させる。これにより、包装体300では、複数の積層セラミックコンデンサ100,100aが収容された複数の凹部311をZ軸方向上方に順次開放させることができる。
【0091】
開放された凹部110に収容された積層セラミックコンデンサ100,100aは、Z軸方向上方を向いた積層チップ10の第1主面M1が実装装置の吸着ノズルの先端に吸着された状態で取り出される。実装装置は、吸着ノズルを移動させることで、実装基板210の実装面G上に積層セラミックコンデンサ100,100aを移動させる。
【0092】
続いて、実装装置は、積層チップ10の第2主面M2を実装面Gに対向させ、外部電極20a,20bを半田ペーストが塗布された一対の接続電極212上に位置合わせした状態で、積層チップ10の第1主面M1に対する吸着ノズルによる吸着を解除する。これにより、積層セラミックコンデンサ100が実装面G上に載置される。
【0093】
そして、積層セラミックコンデンサ100,100aが実装面G上に載置された実装基板210に対してリフロー炉などを用いて半田ペーストを溶融させた後に硬化させる。これにより、外部電極20a,20bが実装基板210の一対の接続電極212に半田Hを介して接続されることで、
図14に示す回路基板200が得られる。
【0094】
なお、
図15~
図17において、X軸はそのままでY軸とZ軸とを入れ替えてもよい。
【0095】
なお、上記各実施形態においては、積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の積層セラミック電子部品を用いてもよい。
【実施例0096】
(実施例1)
サイドマージンにサイド内部電極層を一体成型して焼成した高背構造の積層セラミックキャパシタを作製した。Z軸方向の寸法Z0よりもY軸方向の寸法Y0の方が大きい構成とした。1005形状(X軸方向の寸法X0:1.0mm、Y軸方向の寸法Y0:0.5mm)で、Z軸方向の寸法Z0が0.8mmであった。素体の誘電体層の厚みは1.2μmで200層とした。素体の誘電体層は、チタン酸バリウムを主相としたセラミックであり、焼成後の平均粒径が150nm(一の桁は四捨五入した。以下、同様とする。)であった。素体の誘電体層の誘電率は3500(100以下の桁は四捨五入した。以後同様とする。)であった。内部電極層の積層数は201とした。内部電極層の厚みは、0.6μmであった。
【0097】
これに対して、サイドマージンのサイド誘電体層の厚みは1.0μmで10層とした。サイド誘電体層では、チタン酸バリウムの粒径は250nm、誘電率は4500であった。サイド内部電極層は、11層とした。サイド内部電極層の厚みは、0.6μmであった。
【0098】
(実施例2)
実施例2では、サイドマージンのサイド誘電体層を7層とし、サイド内部電極層を8層とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0099】
(実施例3)
実施例3では、サイドマージンのサイド誘電体層を5層とし、サイド内部電極層を6層とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0100】
(実施例4)
実施例4では、サイドマージンのサイド誘電体層の厚みを2.4μmとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0101】
(実施例5)
実施例5では、サイドマージンのサイド誘電体層の厚みを1.2μmとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0102】
(実施例6)
実施例6では、サイドマージンのサイド誘電体層の厚みを0.8μmとした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0103】
(実施例7)
実施例7では、サイドマージンのサイド誘電体層における平均粒径を200nmとし、比誘電率を3900とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0104】
(実施例8)
実施例8では、サイドマージンのサイド誘電体層における平均粒径を150nmとし、比誘電率を3500とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0105】
(比較例1)
比較例1では、サイドマージンにサイド内部電極層を設けなかった。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0106】
(比較例2)
比較例2では、サイドマージンのサイド誘電体層を4層とし、サイド内部電極層を5層とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0107】
(比較例3)
比較例3では、サイドマージンのサイド誘電体層を3層とし、サイド内部電極層を4層とした。その他の条件は、実施例1と同じとした。
【0108】
(音鳴き試験)
音鳴き試験を行なった。音鳴き試験では、エポキシガラス基板上にリフロー実装した積層セラミックコンデンサ各10個に振幅5Vrms、交流電圧を周波数1Hzから1MHzに上げながら印加し、このときに発生した可聴域の音の強さ(単位はdB)をブリュエル・ケア・ジャパン製のTYPe-3560-B130を用いて防音・無響室(横浜音環境システムズ製)の中で個別に測定した結果(10個の平均値)とした。
【0109】
【0110】
比較例1の音の強さが25dBであったのに対して実施例1では18dBとなり大きな改善があった。サイドマージンのサイド内部電極層の層数を減らして同様の測定を実施したところ、実施例2の誘電体7層(電極数8層)、実施例3の誘電体5層(電極数6層)までは層数に応じた比較例1に対する優位性を示した。しかしながら、比較例2の誘電体4層(電極数5層)では25dBと比較例1と変わらなくなってしまった。比較例3の3層(電極数5層)でも同様であった。このことから少なくとも誘電体5層(電極層6層)は必要であると言える。
【0111】
実施例4は、素体の誘電体層を厚くしたが、比較例1からの改善効果が認められた。このときの膜厚は2.4μmであり、素体の誘電体層の厚みの2倍に相当する。よって音鳴きの観点からは、マージン誘電体の層厚は薄ければ薄いほど良く、電界の影響が大きいことから薄層化の効果は大きいことがわかる。
【0112】
電歪変位は、一般的に誘電率が高いほど大きくなるので、サイドマージンにおける積層数が多くても誘電率が低すぎると十分な変位を発生できないことが起こり得る。これを検証するため、実施例1に対してマージン積層体の誘電体により低誘電率の材料を使用した例が実施例7,8である。実施例7,8の結果から、サイド誘電層の誘電率は高い方が好ましいことがわかる。チタン酸バリウム系誘電体材料の誘電率は一般的にチタン酸バリウム焼結体粒子の粒径と単調増加の関係にあることから、誘電率を変えるには粒径を変えることが最も有効である。
【0113】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。