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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121549
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】繊維処理剤組成物
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/03 20060101AFI20240830BHJP
   D06M 13/144 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
D06M13/03
D06M13/144
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028702
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】714008950
【氏名又は名称】白元アース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002778
【氏名又は名称】弁理士法人IPシーガル
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直樹
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AB04
4L033AC15
4L033BA03
4L033BA11
4L033BA98
(57)【要約】      (修正有)
【課題】繊維製品の風合いを損なうことなく、繊維製品からしわを取り除く効果において優れ、べたつきにくく、容器への充填の際、特に詰め替えの際の泡立ちが解消された繊維処理剤組成物およびこれを用いたスプレー式の繊維処理剤を提供する。
【解決手段】この発明の繊維処理剤組成物は、界面活性剤と、溶媒とを含有するもので、前記界面活性剤として、ジェミニ型界面活性剤を選択し、前記溶媒として、水、或いは水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒を選択するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と、溶媒を含有し、
前記界面活性剤は、
ジェミニ型界面活性剤であり、
前記溶媒は、
水、或いは水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒であること
を特徴とする繊維処理剤組成物。
【請求項2】
前記ジェミニ型界面活性剤は、
アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエトキシ化体から選択されること
を特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項3】
前記ジェミニ型界面活性剤は、
下記一般式(I)で表されるアセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエチレンオキサイド誘導体から選択されること
を特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【化1】

〔上記式(I)中、Rは、炭素数1~10のアルキル基を示す。〕
【請求項4】
前記ジェミニ型界面活性剤は、
2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール及びこれらのエチレンオキサイド誘導体から選択されること
を特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項5】
前記溶媒は、
水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒であること
を特徴とする請求項1又は4に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項6】
前記繊維処理剤組成物で、繊維製品又はこれを構成する生地を処理した後の曲げ硬さが、処理する前の曲げ硬さの1.1倍以下であること
を特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項7】
水に対する水と相溶可能な溶媒との混合比は、
質量比で、0.15~0.55であること
を特徴とする請求項5に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項8】
前記繊維処理剤組成物は、
しわ除去用の繊維処理剤組成物であること
を特徴とする請求項1に記載の繊維処理剤組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の繊維処理剤組成物をスプレー容器に充填したこと
を特徴とするスプレー式繊維処理剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、繊維処理剤組成物に関するものである。
より詳しくは、衣類などの各種繊維製品やその原料となる生地などに適用される繊維処理剤組成物、特に各種繊維製品やその原料となる生地などからしわを除去する、しわ除去用の繊維処理剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイロンなどの熱処理を行うことなく、衣類(例えばワイシャツなど)などの繊維製品からしわを手軽に除去する方法として、衣類などの繊維製品に対して、しわ除去組成物を用いる方法が知られている。
【0003】
例えば、特開2006-161197号公報(特許文献1)においては、衣料に擦りつけながら接触させることにより、シワが形成された部分を引き伸ばし、しかも伸ばされた状態を維持できることによって、有効にシワを除去することができる衣料のシワ除去方法が提案されている。
【0004】
このシワ除去方法は、(a)シリコーン化合物を除く高分子潤滑剤、(b)シリコーン化合物、(c)水溶性有機溶剤、及び(d)水を含有する液状のシワ除去剤を、可撓性材料を用いて擦りながら衣料に接触させるものである。
【0005】
さらに、特開2006-104648号公報(特許文献2)においては、繊維製品にスプレーするだけで繊維製品のしわを効果的に除去することができ、特にアイロンがけやスチームプレス等の熱処理を行わなくても、風合いを損なうことなく、繊維製品のしわを効果的に除去することができる、しわ除去組成物が提案されている。
【0006】
このしわ除去組成物は、一般式(1)又は(2)又は(3)で表される特定の化合物(a)を含有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-161197号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2006-104648号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示されているシワ除去方法では、液状のシワ除去剤が用いられており、このシワ除去剤に含まれている高分子潤滑剤は、繊維間の潤滑性を高める一方で、当該成分が残留することにより繊維がべたついたり、生地が硬化して生地本来の風合いを損ねたりするおそれがあった。
【0009】
また、前記特許文献2に開示されているしわ除去組成物では、当該組成物の残留による風合いの変化の問題については比較的改善されている。
しかしながら、十分なしわ除去効果を得るためには、このしわ除去組成物にポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン系の界面活性剤を多量に配合する必要がある、という問題があった。
さらに、このしわ除去組成物は、これに含まれている界面活性剤の作用により、泡立ちやすく、これをスプレー製剤に適用した場合においては、特に詰め替えの際に、泡立ちにより、スプレー容器から溢れ出す、という問題もあった。
【0010】
この発明はかかる現状に鑑み、生地の硬化によって衣類などの繊維製品の風合いが損なわれることなく、繊維製品からしわを取り除く効果(しわ除去効果)において優れ、べたつきにくく、容器への充填の際、特に詰め替えの際の泡立ちが解消された繊維処理剤組成物、特にしわ除去用の繊維処理剤組成物およびこれを用いたスプレー式の繊維処理剤、特にスプレー式のしわ除去剤を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、この発明の請求項1に記載の発明は、
界面活性剤と、溶媒を含有し、
前記界面活性剤は、
ジェミニ型界面活性剤であり、
前記溶媒は、
水、或いは水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒であること
を特徴とする繊維処理剤組成物である。
【0012】
この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物において、
前記ジェミニ型界面活性剤は、
アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエトキシ化体から選択されること
を特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物において、
前記ジェミニ型界面活性剤は、
下記一般式(I)で表されるアセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエチレンオキサイド誘導体から選択されること
を特徴とするものである。
【0014】
【化1】
【0015】
〔上記式(I)中、Rは、炭素数1~10のアルキル基を示す。〕
【0016】
この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物において、
前記ジェミニ型界面活性剤は、
2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール及びこれらのエチレンオキサイド誘導体から選択されること
を特徴とするものである。
【0017】
この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1又は4に記載の繊維処理剤組成物において、
前記溶媒は、
水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒であること
を特徴とするものである。
【0018】
この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物において、
前記繊維処理剤組成物で、繊維製品又はこれを構成する生地を処理した後の曲げ硬さが、処理する前の曲げ硬さの1.1倍以下であること
を特徴とするものである。
【0019】
この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項5に記載の繊維処理剤組成物において、
水に対する水と相溶可能な溶媒との混合比は、
質量比で、0.15~0.55であること
を特徴とするものである。
【0020】
この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物において、
前記繊維処理剤組成物は、
しわ除去用の繊維処理剤組成物であること
を特徴とするものである。
【0021】
この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載の繊維処理剤組成物をスプレー容器に充填したこと
を特徴とするスプレー式繊維処理剤である。
【発明の効果】
【0022】
この発明の繊維処理剤組成物は、界面活性剤と、溶媒とを含有するもので、前記界面活性剤として、ジェミニ型界面活性剤を選択し、前記溶媒として、水、或いは水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒を選択するものである。
したがって、前記繊維処理剤組成物は、べたつきにくく、衣類などの繊維製品や、これを構成する生地に適用した場合には、生地の硬化によって衣類などの繊維製品の風合いが損なわれることなく、繊維製品や生地からしわを効果的に取り除くことができる。
よって、前記繊維処理剤組成物については、しわ除去用の繊維処理剤組成物として使用することが可能である。
【0023】
さらに、前記繊維処理剤組成物は、容器への充填の際、特に詰め替えの際の泡立ちが解消されたものである。
したがって、消費者ないし使用者は、容器への前記繊維処理剤組成物の充填又は詰め替えを容易に行うことができる。
【0024】
前記作用効果は、前記ジェミニ型界面活性剤が、アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエトキシ化体、より好ましくは下記一般式(I)で表されるアセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びそのエチレンオキサイド誘導体から選択される場合に、優れている。
【0025】
【化2】
【0026】
〔上記式(I)中、Rは、炭素数1~10のアルキル基、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。〕
【0027】
特に、前記作用効果は、前記ジェミニ型界面活性剤が、2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール及びこれらのエチレンオキサイド誘導体から選択される場合に、優れている。
【0028】
さらにまた、前記繊維処理剤組成物においては、前記水に対する前記水と相溶可能な溶媒との混合比を、質量比で、0.15~0.55にすることができる。
このような構成によって、前記繊維処理剤組成物を、速乾性及び有効成分であるジェミニ型界面活性剤の溶解性に優れるとともに、優れたしわ除去(しわ取りを含む)効果を有するものとすることができる。
【0029】
前記繊維処理剤組成物は、繊維製品やこれを構成する生地に適用することによって、当該繊維製品や生地からしわを効果的に除去する作用効果を有するもので、例えば、これをスプレー容器に充填して、スプレー式の繊維処理剤、特にしわ除去剤として使用することができるものである。
したがって、消費者ないし使用者は、繊維製品や生地に対して、前記繊維処理剤を適用することによって、繊維製品や生地からのしわの除去を手軽に行うことができる。
【0030】
さらに、前記繊維処理剤組成物は、容器への充填の際、特に詰め替えの際の泡立ちが解消されている。
したがって、消費者ないし使用者は、前記繊維処理剤組成物をスプレー容器に充填し又は詰め替える場合には、前記繊維処理剤組成物の充填又は詰め替えを容易に行うことができる。
【0031】
なお、この発明によれば、前記しわ除去用の繊維処理剤組成物を、繊維製品やこれを構成する生地に適用することによって、当該繊維製品や生地からしわを除去する繊維製品のしわ除去方法を提供することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明にかかる繊維処理剤組成物を実施するための形態を、詳細に説明するが、この発明は、これらに限定されるものではない。
【0033】
この発明の繊維処理剤組成物は、界面活性を有する有機化合物、すなわち界面活性剤と、溶媒とを含有するものである。
【0034】
前記界面活性剤としては、好ましくはジェミニ型界面活性剤が選択される。
この発明において、「ジェミニ型界面活性剤」とは、少なくとも2つの親水性基と、少なくとも2つの疎水性基を有する化合物であって、少なくとも1つの親水性基と少なくとも1つの疎水性基を持つ構造が、スペーサーを介して少なくとも2個結合した構造を有するものをいう。
したがって、前記ジェミニ型界面活性剤としては、前記構造を有するものであれば、特に限定されることなく使用することができる。
なお、前記親水性基及び疎水性基が複数存在する場合には、同じもので構成されていてもよく、異なったもので構成されていてもよい。
【0035】
かかるジェミニ型界面活性剤は、特有の構造を有することにより、水の表面張力を低下させる作用効果に優れるとともに、少量の配合でしわ除去効果を発揮するものである。
したがって、界面活性剤として、前記ジェミニ型界面活性剤を、特にしわ除去効果を発揮させることを目的として前記繊維処理剤組成物に配合する場合には、その配合量は少量で済むので、前記繊維処理剤組成物を、べたつきにくいものとすることができる。
【0036】
さらに、前記ジェミニ型界面活性剤は、その構造的な特徴から、気液界面では界面に対して平行に配列し、「疎水基-親水基」型の一般的な界面活性剤と異なり分子間引力(疎水性相互作用等)が非常に小さいものである。
したがって、界面活性剤として、前記ジェミニ型界面活性剤を選択した場合には、一般的な界面活性剤と比較して気液界面が低密度になるため、前記繊維処理剤組成物の、容器への充填の際、特に詰め替えの際の泡立ちが解消される。
【0037】
前記親水性基及び前記疎水性基については、特段の制限はなく、公知の官能基から選択することができる。
【0038】
前記親水性基としては、例えば、
水酸基、(ポリ)エチレンオキサイド誘導体などの(ポリ)アルキレンオキサイド誘導体、(ポリ)アルキレンオキサイドアルキルエーテル誘導体、カルボキシ基、スルホン基、リン酸基、アンモニウム基、アミノ基、アミド基、およびこれらの塩など
が挙げられる。
【0039】
前記親水性基については、好ましくは水酸基、(ポリ)エチレンオキサイド誘導体から選択される。
【0040】
前記疎水性基としては、例えば、炭化水素基、含フッ素炭化水素基などから選択することができる。
【0041】
前記炭化水素基としては、例えば、
1-メチルプロピル、1,3-ジメチルプロピル、n-ブチル、1-メチルブチル、1,3-ジメチルブチル、n-ペンチル、1-メチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、n-ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-デシル、n-ドデシル、sec-トリデシル、オクタデシル、イソオクタデシル、エイコシルなどの炭素数4~20のアルキル基、3-ブテニル、5-ヘキセニル、5-デセニル、11-ドデセニル、11-オクタドデセニルなどのアルケニル基、フェニル、ノニルフェニル、オクチルフェニル、ナフチルなどのアリール基、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルヘキシル、ノニルフェニルエチルなどのアリールアルキル基など
が挙げられる。
【0042】
前記含フッ素炭化水素基としては、例えば、
n-パーフルオロブチル、n-パーフルオロヘキシル、2-パーフルオロエチルヘキシル、n-パーフルオロデシル、n-パーフルオロドデシル、パーフルオロオクタデシル、パーフルオロイソオクタデシル、パーフルオロエイコシルなどの炭素数4~20のフルオロアルキル基、3-パーフルオロブテニル、5-パーフルオロヘキセニル、5-パーフルオロデセニル、11-パーフルオロオクタデセニルなどのフルオロアルケニル基、パーフルオロフェニル、パーフルオロノニルフェニル、パーフルオロオクチルフェニル、パーフルオロナフチルなどのフルオロアリール基など
が挙げられる。
【0043】
前記疎水性基については、好ましくはアルキル基から選択される。
【0044】
前記スペーサーについては、親水性基と疎水性基を持つ有機基を化学結合により結合させることができる有機基である限りにおいて、特段の制限はない。
前記スペーサーとして、例えば、
炭素数が1~24の飽和炭化水素、炭素数が2~24で炭素-炭素二重結合を持つ不飽和炭化水素、炭素数が1~24で炭素-炭素三重結合を持つ不飽和炭化水素などから水素原子が2個除かれた構造、1,4-フェニレン、1,2-フェニレン、1,3-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2,5-ジメチル-1,4-フェニレン、1,4-ナフチレンなどのアリーレンなどの2価の有機基
が挙げられる。
なお、これらの有機基は、さらに酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などが結合された構造を有するものであってもよい。
【0045】
前記スペーサーとしては、気液界面に直線的に配列する(気液界面において界面に対して平行な配列を実現する)ものが好適であり、より好ましくはアセチレンが選択される。
【0046】
したがって、この発明においては、前記ジェミニ型界面活性剤として、親水性基として水酸基若しくは(ポリ)エチレンオキシド基、疎水基としてアルキル基、スペーサーとしてアセチレンを有する構造のもの、すなわちアセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤を選択することがより好ましい。
なお、前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤については、アルコキシ化、特にエトキシ化されたものであってもよい。
【0047】
前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤としては、例えば、下記一般式(I)で表されるものを選択することができる。
【0048】
【化3】
【0049】
上記式(I)中、Rは、炭素数1~10のアルキル基である。
【0050】
上記式(I)において、炭素数1~10のアルキル基については、特に限定されず、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
具体的には、前記アルキル基(上記式(I)中、R)として、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基など
が挙げられる。
【0051】
前記アルキル基(上記式(I)中、R)の炭素数は、好ましくは2~5であり、より好ましくは3~4である。
【0052】
具体的には、前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤として、
2,5,8,11-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、5,8-ジメチル-6-ドデシン-5,8-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、4,7-ジメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,3,6,7-テトラメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールなど
が挙げられる。
【0053】
前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤をエトキシ化したものとしては、例えば、アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤をエチレンオキサイドでエトキシ化したもの、すなわちエチレンオキサイド誘導体が挙げられる。
前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤のエチレンオキサイド誘導体としては、例えば、アセチレン骨格側に4~30のエチレンオキサイド(EО)鎖を付加したアルキル基を有するアセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤が挙げられる。
【0054】
前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤のエチレンオキサイド誘導体としては、例えば、
2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール-ジ(ポリオキシエチレン)エーテルなど
を挙げることができる。
【0055】
特に、前記界面活性剤が、上記一般式(I)で表され、かつ式(I)中、Rが炭素数4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基のものであって、誘導体ではないものから選択される場合、特に2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールが選択される場合には、これを使用して得られる繊維処理剤組成物は、しわ除去効果が著しく向上したものとなる。
【0056】
前記アセチレングリコール系のジェミニ型界面活性剤及びその誘導体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて、使用することができる。
【0057】
前記界面活性剤の含有量は、有効量であればよく、特段の制限はないが、組成物全体に対して、好ましくは0.1~5質量%程度であり、より好ましくは0.1~1.5質量%程度であり、更に好ましくは0.2~1質量%程度である。
前記含有量が0.1質量%未満の場合には、しわ除去効果が十分に発揮されない傾向にあり、5質量%を超えると適用される繊維製品や生地などの風合いが損なわれるなどの不具合が生じる傾向にある。
【0058】
前記溶媒としては、水、或いは水及びこれと相溶可能な溶媒との混合溶媒が選択される。
前記溶媒として、水及びこれと相溶可能な溶媒の混合溶媒を選択する場合には、組成物の速乾性が向上する傾向にある。
【0059】
前記水と相溶可能な溶媒としては、例えば、
エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど
を挙げることができる。
【0060】
前記水と相溶可能な溶媒については、1種を単独で配合してもよいし、2種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0061】
前記溶媒として、水及びこれと相溶可能な溶媒の混合溶媒を選択する場合において、水に対する水と相溶可能な溶媒との混合比は、好ましくは質量比で、0.15~0.55である。
水の量が少ない場合(特に質量比が0.15未満の場合)には十分なしわ除去効果が得られない傾向にあり、水の量が多すぎる場合(特に質量比0.55を上回る場合)には、速乾性に劣るとともに有効成分(界面活性剤)の溶解性が悪くなる傾向にある。
【0062】
この発明の繊維処理剤組成物には、必要に応じて、さらに、この発明の目的および効果(しわ除去効果や、風合い、泡立ち度合など)を阻害しない範囲で、各種添加剤を任意に添加することができる。
例えば、ゲル化剤、酵素(プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼなど)、風合い向上剤、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、色素、紫外線吸収剤、アレルゲン不活化剤、抗菌剤、抗ウィルス剤、防カビ剤などを適宜添加することができる。
【0063】
特に、前記繊維処理剤組成物には、この発明の目的および効果を阻害しない範囲で、消臭成分を配合することができる。
前記消臭成分については、この発明の目的および効果を阻害しない限りにおいて、特段の限定はない。
前記消臭成分としては、例えば、植物抽出物、ポリフェノール類、アクリル系両性高分子などの両性界面活性剤系消臭剤、ベタイン系界面活性剤などを挙げることができる。
【0064】
前記繊維処理剤組成物は、これを用いて繊維製品又はこれを構成する生地を処理した後の曲げ硬さ(gf・cm/cm)が、処理する前の曲げ硬さの1.1倍以下になるようなものであることが望ましい。
なお、前記曲げ硬さについては、例えば、純曲げ硬さ測定機(例えば、カトーテック製KES-FB2-A)を用いることによって測定することができる。
【0065】
この発明の繊維処理剤組成物の調製方法については、特に限定されず、種々の方法で調製可能である。
各種成分の混合順序についても特に限定されないが、例えば、前記溶媒に、前記界面活性剤及び必要に応じて各種添加剤を添加・混合して、この発明の繊維処理剤組成物を調製することができる。
【0066】
前記繊維処理剤組成物については、その性状および必要に応じて配合される各種添加剤に応じて、任意の形態で使用することができ、その使用形態は特に限定されない。
例えば、液状、ゲル状、ジェル状、ミスト状、エアゾール状、エマルジョン状、サスペンション状などの形態で使用することができる。
【0067】
前記繊維処理剤組成物については、各種繊維製品及びこれを構成する各種生地に適用することができる。
【0068】
かかる繊維製品としては、特に限定はされないが、例えば、
タオル、ハンカチ、スポーツウエア、Tシャツ、ポロシャツ、ブラウス、チノパン、スーツ、スラックス、スカート、肌着、カーテン、ソファ、シーツなど
を挙げることができる。特に、前記繊維処理剤組成物は、比較的しわが発生しやすい繊維製品に対して好適である。
【0069】
さらに、前記生地(特定の繊維で構成されるもの)についても、特に限定はされないが、例えば、
綿、ウール、麻などの天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、レーヨン、リヨセル、ポリノジックなどの再生繊維およびこれら各種繊維の混紡品、混織品、混編品などで構成される生地
を挙げることができる。
【0070】
かかる繊維処理剤組成物を、前記繊維製品又は生地に、噴霧、塗布、吸着、混合、分散、担持、浸透或いは含浸等によって適用することで、特にしわ除去作用が得られる。
すなわち、前記繊維処理剤組成物は、繊維処理剤、特にしわ除去剤として使用可能なものである。
【0071】
なお、前記繊維処理剤組成物を適用する方法としては、噴霧や塗布、含浸が好ましいが、噴霧がより好ましく、各種トリガースプレイヤー等の空気圧を利用した噴霧方法が考えられる。
すなわち、噴霧手段を備えた容器(スプレー容器)に充填してなるスプレー式の繊維処理剤、特にスプレー式のしわ除去剤として使用することが好適である。
したがって、既製衣類を対象とする場合であっても、消費者は、着用前に手軽に衣類のケアを行うことができる。
【0072】
なお、前記繊維処理剤組成物を適用する方法としては、前記繊維製品又は生地に前記繊維処理剤組成物を、直接塗布や噴霧、含浸等させる方法の他、所定の容器に衣類と、前記繊維処理剤組成物を水等の溶媒に溶解させたものとを入れて、浸漬処理する方法等であってもよい。
【0073】
前記繊維処理剤組成物は、繊維製品やこれを構成する生地に適用することによって、特に、しわを効果的に除去するものである。
したがって、この発明によれば、前記繊維処理剤組成物を含むしわ除去剤、ならびに前記繊維処理剤組成物を繊維製品やこれを構成する生地に適用することによって、当該繊維製品や生地からしわを除去する繊維製品や生地のしわ除去方法を提供することも可能である。
【実施例0074】
以下に、実施例を挙げて、この発明を詳細に説明するが、この発明は、これらの実施例により制限されることはない。
【0075】
[実施例1~4]
下記表1に示した組成に従い、各成分を混合し、撹拌して、繊維処理剤組成物を得た。
【0076】
【表1】

*1 オルフィン D-10H
*2 オルフィン E-1004
【0077】
[比較例1~5]
下記表2に示した組成に従い、各成分を混合し、撹拌して、繊維処理剤組成物を得た。
【0078】
【表2】
【0079】
[試験例1]生地への浸透し易さの評価
上記実施例1~4および比較例1~5において得られた繊維処理剤組成物について、下記測定方法に基づき、沈降時間を測定し、下記の評価基準に従って、生地への染み込み易さの評価を行った。
その結果を表3に示す。
【0080】
<測定方法>
100%羊毛フェルト生地(厚さ約1mm)を1cm×1cm角に切り出し、試験片を作製した。
繊維処理剤組成物をビーカー(100mL)に入れた後、この液面に上記得られた試験片を静かに浮かべた。
その後、試験片が沈降し始めるまでにかかった時間を測定した。
上記測定を25℃で5回行い、最大値と最小値を除いた3回の値の平均値を、沈降時間として得た。
【0081】
<評価基準>
◎:素早く沈降した(10秒未満で沈降)
△:沈降に時間を要した(10秒以上100秒未満で沈降)
×:沈降が非常に遅かった(100秒以上で沈降)
【0082】
【表3】
【0083】
<結 果>
実施例1~4において得られた繊維処理剤組成物では、いずれも試験片(生地)の沈降時間が短かった。
生地の沈降時間が短いということは、液体の生地に対する浸透速度が速いことを意味し、その液体が生地に染み込み、この生地を構成している繊維間に入り込み易いことを意味する。
以上のことから、この発明の繊維処理剤組成物は、しわ除去効果が得られ易いものであることは明らかである。
【0084】
[実施例5]
上記実施例1において得られた繊維処理剤組成物を、トリガー式スプレー容器(噴射量約1g/1プッシュ)に充填してスプレー式の繊維処理剤を得た。
【0085】
[実施例6~8および比較例6~10]
実施例1において得られた繊維処理剤組成物に代えて、実施例2~4または比較例1~5のいずれかにおいて得られた繊維処理剤組成物を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、スプレー式の繊維処理剤を製造した。
【0086】
[試験例2]しわ除去効果の評価
上記実施例5~8および比較例6~10において得られたスプレー式の繊維処理剤について、下記評価方法に基づき、しわの状態を目視により観察することによって、しわ除去効果の評価を行った。
なお、繊維処理剤を適用しないものを、比較例11とした。
その結果を、表4に示す。
【0087】
<評価方法>
100%毛生地を、外径20cm、内径5cmのドーナツ型(1)に切り出し、その周方向の一箇所に外周端から内周端に達する切込みを形成した。
得られたドーナツ型の形状の生地を、一定の間隔で16箇所にしわが形成されるように、蛇腹折にした後、上端部と下端部のそれぞれに糸を通して仮留めした。
その後、得られたものについて、温度37℃、湿度90%の環境下で、十分なしわが形成されるように、上から約5kgの荷重をかけて1晩静置して、試験片を作製した。
得られた試験布を広げた後、この試験片に対してスプレー式の繊維処理剤から繊維処理剤組成物を5g噴霧し、十分に湿らせた。
次いで、試験布の形を軽く整え、直ちにクリップ付きハンガーに吊るし、温度25℃、湿度60%の環境下で、一晩静置した後、乾燥させた。
その後、試験布のしわの状態(外観)を目視で確認し、全くしわが無い状態を0、十分しわがついている状態(比較例11のしわの状態)を5とした等間隔尺度を用いてモニターによる官能評価によってしわの状態を評価し、さらに下記の評価基準に従って、しわ除去効果の評価を行った。
【0088】
<しわ除去効果の評価基準>
◎:しわがほとんど残っていない状態(スコア2.5以下)
〇:しわがあまり残っていないか残っていてもやや目立つ程度の状態(スコア2.5を超えて3.0以下)
△:目立つしわが認められる状態(スコア3.0を超えて5未満)
×:十分しわがある状態(スコア5)
【0089】
【表4】
【0090】
<結 果>
実施例5~8において得られたスプレー式の繊維処理剤から、繊維処理剤組成物(実施例1~4において得られた繊維処理剤組成物)を噴霧した試験片(生地)では、しわがあまり残っていない状態であった。
特に、実施例5及び6において得られたスプレー式の繊維処理剤から、繊維処理剤組成物(実施例1及び2において得られた繊維処理剤組成物)を噴霧した試験片では、しわがほとんど残っていない状態であった。
これに対して、比較例7及び10において得られたスプレー式の繊維処理剤から繊維処理剤組成物(比較例2及び5において得られた繊維処理剤組成物)を噴霧した試験布では、しわがあまり残っていない状態にまで改善されたものの、比較例6、8及び9において得られたスプレー式の繊維処理剤から繊維処理剤組成物(比較例1、3及び4において得られた繊維処理剤組成物)を噴霧した試験布では、目立つしわが認められた。
したがって、この発明の繊維処理剤組成物によれば、繊維製品やこれを構成する生地から、しわを効果的に除去することができることは、明らかである。
【0091】
[試験例3]風合いの評価
上記実施例5~8および比較例6~10において得られたスプレー式の繊維処理剤について、下記測定方法に基づき、曲げ硬さを測定し、下記の評価基準に従って、生地の風合いの評価を行った。
なお、繊維処理剤を適用しないものを、比較例12とした。
その結果を、表5に示す。
【0092】
<測定方法>
TCツイル生地(100%毛)を5cm×15cmに切り出し、この生地に対してスプレー式の繊維処理剤から繊維処理剤組成物を、2g噴霧し、十分湿らせた。
その後、得られた生地を乾燥させて、試験片を作製した。
得られた試験片について、純曲げ硬さ測定機(カトーテック社製、KES-FB2-A)を用いて、曲げ硬さ(単位:gf・cm/cm)を測定し、さらに下記の評価基準に従って、風合いの評価を行った。
なお、表5において、曲げ硬さは、比較例12の試験片、すなわち繊維処理剤組成物の噴霧前の曲げ硬さを100としたときの相対値である。
【0093】
<風合いの評価基準>
〇:噴霧前(比較例12)の曲げ硬さを100としたときの曲げ硬さが110以下
×:噴霧前(比較例12)の曲げ硬さを100としたときの曲げ硬さが110を超える
【0094】
【表5】
【0095】
<結 果>
実施例5~8において得られたスプレー式の繊維処理剤から、繊維処理剤組成物(実施例1~4において得られた繊維処理剤組成物)を噴霧した試験片(生地)では、いずれも風合いは、噴霧前と同等以上であった。
したがって、この発明の繊維処理剤組成物によれば、生地が硬化することによって生地や繊維製品の風合いを損なうことなく、繊維製品や生地からしわを取り除く(しわを除去する)ことができることは、明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0096】
この発明にかかる繊維処理剤組成物は、特に繊維製品やその原料となる生地の風合いを損なうことなく、繊維製品や生地からしわを取り除く(しわを除去する)ことができるもので、繊維製品や生地への噴霧や、浸漬、塗布などによって、簡便にかつ繰り返して使用することができるものである。
したがって、衣類などの繊維製品や、その原料となる生地を取扱う業界に利用される可能性の高いものである。