(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121553
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】シーラントフィルム
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240830BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240830BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240830BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240830BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/32 E
B32B7/023
B65D65/40 D
C09K3/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028711
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成志
(72)【発明者】
【氏名】芋田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】安海 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】畠 源英
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4H017
【Fターム(参考)】
3E086AD01
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB22
3E086BB51
3E086CA01
3E086DA08
4F071AA19
4F071AA46
4F071AA54
4F071AA82
4F071AF30Y
4F071AH04
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4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK06A
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4F100AK46A
4F100AK63A
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4F100JL12C
4F100JN01
4F100YY00A
4H017AA04
4H017AB07
4H017AD06
4H017AE04
(57)【要約】
【課題】リサイクルポリオレフィンを使用しながら、熱接着性が確保される、環境適性に優れたシーラントフィルムを提供する。
【解決手段】本発明のシーラントフィルムは、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムを用いたシーラントフィルムであって、前記リサイクルポリオレフィンは、ポリオレフィンに非相溶性である異物を1~20質量%含有し、かつ、前記異物は最大径が1~2000μmであることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層を用いたシーラントフィルムであって、前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層は、ポリオレフィンに非相溶性である異物を1~20質量%含有し、かつ、前記異物は最大径が1~2000μmであることを特徴とするシーラントフィルム。
【請求項2】
前記異物が、リサイクルポリオレフィン由来のゲル、ポリエステル、ポリアミド、接着剤及び着色剤から選択される1種以上である請求項1に記載のシーラントフィルム。
【請求項3】
前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層の両側に前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層が設けられている請求項1または2に記載のシーラントフィルム。
【請求項4】
前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層が、さらにポリオレフィンに相溶性のバージンポリオレフィンを含有する請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項5】
前記リサイクルポリオレフィン及びポリオレフィン層が、それぞれリサイクルポリエチレン及びポリエチレン層である請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項6】
前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層の少なくとも一方が着色剤を含む請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項7】
可視光線透過率が90%以下である請求項3に記載のシーラントフィルム。
【請求項8】
キャスト製膜により成形される、請求項3に記載されたシーラントフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載されたシーラントフィルムのどちらか一方のリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層上に基材フィルムを積層した包装用積層体。
【請求項10】
請求項9に記載された包装用積層体を用いた包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルポリオレフィンを含むシーラントフィルムに関するものであり、さらには、該シーラントフィルムを用いた包装用積層体及び包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における環境保護の重要性から、使用済みプラスチック成形体や成形体製造時に発生するプラスチック廃材などからプラスチックを再生し、再利用するリサイクル技術が種々検討されている。例えば、ポリエチレンは、種々の用途に広く使用されているが、そのリサイクル品をフィルム等の用途に使用することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリエチレン層、接着層及びナイロン層からなる透明多層フィルムのスクラップに低分子量ポリエチレンを配合することを特徴とする多層フィルムの回収再生方法が提案されており、回収されたリサイクル品をペレット化し、このペレットを用いてフィルムを製造することが提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、フィルム全体に対する再生材(例えばリサイクルポリエチレン)の混入率が50~90質量%であり、異物の混入率が0.1~2質量%であるリサイクルフィルムが提案されており、このリサイクルフィルムを3層構造とし、第1の層が、50~90質量%の再生材と0.1~2質量%の異物と2~4質量%の粘着剤とを含み、第2の層が、50~90質量%の再生材と0.1~2質量%の異物とを含み、第3の層が、未使用の低密度ポリエチレン(LDPE)よりなることが開示されている。
【0005】
しかしながら、上記のようなリサイクルポリオレフィンを使用したフィルムは、シーラントフィルム、特に包装袋の作製には使用できないのが実情であった。即ち、シーラントフィルムとしては、再生材の使用による熱接着性の低下、臭気によるフレーバー性の低下、着色による外観不良、及び強度低下等、種々の問題が生じるためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3-237143号公報
【特許文献2】特開2001-122985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、リサイクルポリオレフィンを使用しながら、熱接着性が確保される、環境適性に優れたシーラントフィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、リサイクルポリオレフィンを含んでいるにも限らず、臭気や着色の問題あるいは強度低下等の問題が解決されたシーラントフィルムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、リサイクルポリオレフィンを含む上記のシーラントフィルムを用いて形成された包装用積層体及び包装容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層を用いたシーラントフィルムであって、前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層は、ポリオレフィンに非相溶性である異物を1~20質量%含有し、かつ、前記異物は最大径が1~2000μmであることを特徴とするシーラントフィルムが提供される。
【0009】
本発明のシーラントフィルムにおいては、以下の態様が好適に採用される。
(1)前記異物が、リサイクルポリオレフィン由来のゲル、ポリエステル、ポリアミド、接着剤及び着色剤から選択される1種以上であること。
(2)前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層の両側に前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層が設けられていること。
(3)前記リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層が、さらにポリオレフィンに相溶性のバージンポリオレフィンを含有すること。
(4)前記リサイクルポリオレフィン及びポリオレフィン層が、それぞれリサイクルポリエチレン及びポリエチレン層であること。
(5)前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層の少なくとも一方が着色剤を含むこと。
(6)前記シーラントフィルムの可視光線透過率が90%以下であること。
(7)前記シーラントフィルムがキャスト製膜により成形される、シーラントフィルムの製造方法。
(8)前記シーラントフィルムのどちらか一方のリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層上に基材フィルムを積層した包装用積層体。
(9)前記包装用積層体を用いた包装容器
【発明の効果】
【0010】
本発明のシーラントフィルムは、好ましくは、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層の両側に前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層が設けられているシーラントフィルムである。このため、リサイクルポリオレフィンによる接着性(ラミネート性、ヒートシール性)の低下を有効に回避することができる。特に、前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層の一方の側に基材フィルムを溶剤型又は無溶剤型の熱硬化性接着剤や接着性樹脂により積層することにより、包装用積層体とすることができ、このような包装用積層体において、他方側を内層としてヒートシールすることにより、包装容器とすることができる。
【0011】
さらに、上記のような多層構造を有する本発明のシーラントフィルムでは、この多層構造を利用して、リサイクルポリオレフィンの使用による性能低下等を抑制するための剤、例えば臭気によるフレーバー性の低下を回避するには脱臭剤、着色による外観不良を回避するには、着色剤(着色層の形成)、強度低下を回避するには、改質材などを使用することができる。
また、このシーラントフィルムに積層される基材フィルムを活用して、包装袋の突き刺し強度を高めることができるし、無機蒸着膜の形成によるガスバリア性の向上や印刷層の形成による外観特性の向上も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のシーラントフィルムの層構造を示す概略側断面図。
【
図2】
図1のシーラントフィルムを用いて形成された、包装容器の層構造の一例を示す概略側断面図。
【
図3】本発明のシーラントフィルムにおける着色層を含む層構造を示す概略側断面図。
【
図4】本発明のシーラントフィルムの層構造を含む包装用積層体の例を示す概略側断面図。
【
図5】
図4の包装用積層体を用いて形成された、包装容器の層構造の一例を示す概略側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<シーラントフィルム>
図1は、本発明のシーラントフィルム10が、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層5の両側に前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層1、3を有している層構造を示す概略側断面図である。
【0014】
尚、このシーラントフィルム10は、これに限定されるものではないが、基本的には、後述する基材フィルムを貼り付けて包装用積層体として使用され、最終的に得られる包装容器において、基材フィルム側が外面となり、基材フィルムとは反対側が包装容器に収容される内容物と接触する側となる。そこで、
図4~5においては、基材フィルムが貼り付けられる側を(外)とし、その反対側を(内)と表記している。
【0015】
図1から理解されるように、本発明では、2つのリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層1、3の間に、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層5が中間層としてサンドイッチされている。このため、このシーラントフィルム10では、外面側及び内面側の何れも優れたヒートシール性が発揮されるような層構造となっている。
【0016】
図2には、
図1で示したシーラントフィルム10を積層した包装容器20の層構造の一例を示す概略側断面図である。ここで、内面側のリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層3がヒートシールされることが示されている。
【0017】
前記リサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層1、3は、バージンポリオレフィンを用いて製造される。当該ポリオレフィンはヒートシール性を有するものであれば、特に限定されるものではないが、低密度ポリエチレン(LDPE)または直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)から選択されるポリエチレン、及びポリプロピレン(PP)を用いることが好ましく、前記ポリエチレンを用いることがさらに好ましい。また、低密度ポリエチレン(LDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を混合して用いる等、異なるポリオレフィンを混合して用いてもよい。また、石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。
【0018】
また、中間層であるポリオレフィン層5に含まれるリサイクルポリオレフィンは、使用済みのポリオレフィン成形体、ポリエステルやポリアミド、接着剤、着色剤を含む使用済みポリオレフィン積層体、または、ポリオレフィン成形体やポリオレフィン積層体の製造時の廃材から回収されたものであり、粉砕、アルカリなどによる洗浄、溶融状態でのろ過、有機溶媒による抽出などの種々の工程を経て得られる、いわゆるマテリアルリサイクルされたものである。そのため、このような工程を経ていることに関連して、リサイクルポリオレフィンは、ポリオレフィンに非相溶性の異物を含有している。ここで、リサイクルポリオレフィンとしては、ポリオレフィン成形体製造時の廃材から回収されたものが好ましく、ラミネートフィルム製造時の廃材から回収されたものがさらに好ましい。
【0019】
リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層は非相溶性の異物を1~20質量%含有し、かつ、前記異物は最大径が1~2000μmである。異物の含有量は1~15質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがさらに好ましい。異物とはポリエステル、ポリアミド、接着剤等を示しており、非相溶性の異物として大部分を占めるポリエステルやポリアミド等の樹脂類に由来する異物が10質量%より少ないことが特に好ましい。異物の含有率が1質量%未満であると、環境適性に優れるという課題を解決することが困難となり、20質量%を超えると、リサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層の成形時に穴あきが発生し、また、熱接着性の低下、強度低下等が発生し、シーラントフィルムの品質が低下する。さらに、異物の最大径が1μm未満であると、異物をそのような大きさになるまで粉砕する工程等に過度の負担となる可能性があり、2000μmを超えるとフィルム表面に凹凸が発生して平坦性が悪化し、また、上記穴あきが発生しやすくなるため、シーラントフィルムの品質が低下する。ここで、異物の最大径について、異物形状が楕円形の場合は長径を意味し、多角形の場合は各対角線における最大長さを意味する。
【0020】
ポリオレフィンに非相溶性の異物は、前記ポリオレフィン成形体が含有する非相溶性の異物のすべてを含む。異物は樹脂類であることが好ましく、リサイクルポリオレフィン由来のゲル、ポリエステル、ポリアミド及び接着剤から選択される1種以上であることがさらに好ましい。ここで、リサイクルポリオレフィン由来のゲルは、リサイクルポリオレフィンが架橋等により固化したものであり、加熱しても溶融せず非相溶性となったものを意味する。
【0021】
本発明では、中間層であるポリオレフィン層5にリサイクルポリオレフィンを含むため、このシーラントフィルム10及び当該フィルム10から作製される包装用積層体や包装容器も環境適性に優れたものとなるが、必要以上に多量のリサイクルポリオレフィンを使用すると、その量に応じてバージンポリオレフィンの使用量が少なくなるため、ヒートシール性やその他の物性低下が著しくなる。従って、このような物性低下を回避するという観点から、このシーラントフィルム10中のリサイクルポリオレフィン含量は15~90質量%とすることが好ましく、15~60質量%とすることがさらに好ましい。
【0022】
また、接着性、特にヒートシール性の低下をより確実に回避するという点では、例えば、中間層であるポリオレフィン層5の厚みを100μmとしたとき、外側のポリオレフィン層1、3のそれぞれの厚みが10~60μm程度(フィルム5の厚みに対して、10~60%)となるように設定することが好ましい。
【0023】
さらに、上記の中間層であるポリオレフィン層5は、リサイクルポリオレフィン単独で形成されていてもよいが、一般的には、バージンポリオレフィンも含んでいることが好ましい。このようなリサイクルポリオレフィン含有ペレットとバージンポリオレフィンペレットを用いての共押出成形によりシーラントフィルム10が成形されるからである。例えば、前述したリサイクルポリオレフィン含有率や外側のポリオレフィン層1、3との厚みを満足する範囲内で中間層であるポリオレフィン層5には、バージンポリオレフィンが配合されていることが好ましい。具体的には、前述したリサイクルポリオレフィン含有率や厚み比を満足していることを条件として、中間層であるポリオレフィン層5におけるリサイクルポリオレフィンとバージンポリオレフィンとの質量比は、リサイクルポリオレフィン:バージンポリオレフィン=95:5~25:75の範囲内とすることが好ましい。ここで50:50の場合は2倍希釈、25:75の場合は4倍希釈となる。また、中間層であるポリオレフィン層5を構成するポリオレフィンは、石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。
【0024】
上述した層構造を有する本発明のシーラントフィルム10において、各層には、脱臭剤、酸化防止剤、着色剤、改質材等が配合されていることが好ましい。
【0025】
脱臭剤は、リサイクルポリオレフィンが有する異臭を捕捉し、異臭による内容物のフレーバー性の低下を防止するものであり、外側のポリオレフィン層1、3及び中間層であるポリオレフィン層5の何れに配合されていてもよいが、リサイクルポリオレフィンによる異臭を捕捉し、異臭による内容物のフレーバー性低下を防止するために使用されるという観点からは、中間層であるポリオレフィン層5、または後述する
図4、5における内側のポリオレフィン層3に相当するフィルムに配合することが好ましい。
【0026】
このような脱臭剤としては、シリカゲル等のシリカ系粒子やゼオライト等のケイ酸アルミニウム塩系粒子が代表的であるが、特に樹脂に対する分散性や脱臭力が強いことから、MFI型ゼオライト、特にシリカアルミナモル比(SiO2/Al2O3比)が80以上であるシリカリッチのMFI型ゼオライトが好ましい。このような脱臭剤は、通常、リサイクルポリオレフィン100質量部当り1~30質量部の量で使用することが好ましい。
【0027】
酸化防止剤は、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン類が代表的であり、従来から樹脂配合剤として使用されている。このような酸化防止剤は、特にリサイクルポリオレフィンの酸化によるさらなる劣化を防止するために、中間層であるポリオレフィン層5にリサイクルポリオレフィンと共に使用されるものであり、通常、リサイクルポリオレフィン100質量部当り0.1~0.3質量部の量で使用することが好ましい。
【0028】
着色剤は、リサイクルポリオレフィンに起因する着色の隠蔽、包装容器の印刷層、印刷ベース層等を目的として用いるものであり、顔料及び染料のどちらを用いてもよいが、耐侯性、耐久性に優れることから顔料を用いることが好ましい。着色の種類については、上記目的を達成するのであれば、特に制限はないが、包装容器の印刷ベース層を考慮すると白色顔料が好ましい。代表的な白色顔料として、酸化チタン、亜鉛華、炭酸カルシウム等が挙げられる。着色剤は、外側のポリオレフィン層1、3の少なくとも一方に含まれていればよい。また、着色濃度については、前記着色の隠蔽を考慮し、適度な量で使用されるが、380~800nmにおける可視光線透過率を90%以下とすることが好ましく、60%以下とすることがさらに好ましい。
【0029】
また、改質材は、リサイクルポリオレフィンの分子量低下等に起因する強度低下を抑制するために使用されるものであり、通常、リサイクルポリオレフィンが存在している中間層であるポリオレフィン層5に配合される。このような改質材としては、熱可塑性エラストマーが好適に使用される。即ち、中間層であるポリオレフィン層5に弾性を付与することにより耐衝撃性を向上させるというものである。このような熱可塑性エラストマーとしては、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(EPBR)などが使用され、特にポリオレフィンに対する分散性に優れている点で、エチレン・α-オレフィン共重合体が好適である。
また、前記改質材は、リサイクルポリオレフィン100質量部当り1~30質量部の量で中間層であるポリオレフィン層5中に配合されていることが好ましい。
さらにリサイクルポリオレフィンには上述したポリエステル、ポリアミド、接着剤及び着色剤が含まれるため、これらの分子量低下等に起因する強度低下を抑制するために、カルボジイミド化合物等のエステル分解抑制材、さらに分散性を向上させるための相溶化材を含めてもよい。相溶化材は極性基としては、有機イソシアネート基、無水カルボン酸基、カルボン酸基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、アクリル酸エステル基が挙げられ、酸変性オレフィン系樹脂あるいはイミン変性オレフィン系樹脂、アクリル酸エステル-グリシジルメタクリレート共重合オレフィン系樹脂が好適である。
他に物性を損なわない範囲で、滑剤、紫外線吸収剤、可塑剤、結晶核剤、充填剤、加水分解抑制剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤を配合してもよい。
【0030】
本発明のシーラントフィルム10は、上述した基本3層構造を有していることを条件として、種々の態様を採り得る。例えば、
図2における外側のポリオレフィン層1に着色剤を配合して着色層とすることにより、リサイクルポリオレフィンに起因する着色を外部から見えないように隠蔽すると同時に、内側のポリオレフィン層3に脱臭剤を配合してリサイクルポリオレフィンに由来する臭気を捕捉することにより、包装容器の内容物のフレーバーの低下を防止することができる。
【0031】
また、上記の着色層や脱臭剤が配合された層を独立した層として設けることもできる。
【0032】
図3は、
図1に示したシーラントフィルム10のリサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィン層5とリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層1、3の間に、それぞれ着色層7を独立した層として設けたシーラントフィルム11の5層構造を示す概略側断面図である。着色層7はバージンポリオレフィンに着色剤が配合されている。このような5層構造のシーラントフィルム11においても、前記シーラントフィルム10と同様にリサイクルポリオレフィンの含有割合は、前述した範囲(15~90質量%)に保持することが望ましい。
【0033】
上述した本発明のシーラントフィルム10の厚みは特に制限されないが、包装容器としたときの剛性等を考慮すれば、通常、50~200μm程度の範囲であることが好ましい。
【0034】
尚、本発明のシーラントフィルム10は、各成分をドライブレンドして押出機に投入して溶融混練し、Tダイからフィルム状にブレンド物を共押出し、押し出された多層フィルム状の溶融物を、冷却ロールに接触させて固化させて巻き取るキャスト製膜により製造される。各成分の投入形態はフィルム状の破砕片、ペレット、粒状物、液体でもよい。ここで、前記フィルム状の破砕片は本発明の実施過程で発生するフィルムの端材であってもよい。一般的にシーラントフィルムの製膜に用いられる、袋状のフィルムを押出成形するインフレーション成形では、ポリオレフィンに非相溶性の異物が存在すると穴あきや偏肉を生じやすく、異物除去を目的として、目開きが細かいメッシュフィルターを通すと生産速度が著しく低下する。それに対し、キャスト製膜では、穴あきがなく、偏肉の少ない、良質なフィルムを得ることが容易であり、目開きが細かいメッシュフィルターを通す必要がないため、生産速度の低下を抑制することができる。
【0035】
<包装用積層体>
上述した本発明のシーラントフィルム10は、その両面に存在するバージンポリオレフィン層1、3が有する良好な接着性を利用して種々の用途に利用することができるが、特に包装容器の作製に用いる包装用積層体として使用することが最適である。
【0036】
図4は、シーラントフィルム10におけるリサイクルポリオレフィンを含まないポリオレフィン層1の上に積層された基材フィルム21を備えており、基材フィルム21とポリオレフィン層1との間には、必要に応じて、機能層23が形成されている包装用積層体30の層構造を示す概略側断面図である。
【0037】
上記の基材フィルム21は、包装容器の外面側に位置するように設けられるものであり、その材質は特に制限されないが、包装容器として使用したときに適度な剛性がえられるという点で、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好適である。
上記のポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンがあげられる。ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロプレン、ランダムポリプロピレンがあげられる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、芳香族ナイロン(例えばポリメタキシリレンアジパミド)、アモルファスナイロン(例えばナイロン6I/6T)等を挙げることができる。また、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を挙げることができる。包装袋の突き刺し強度を高めるという点ではポリアミドフィルムやポリエステルフィルムが好適である。ガスバリア性能を高めるという点では、ポリビニルアルコール系樹脂が好適で、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体でエチレン含有量が20~50mol%のものがよい。また、この基材フィルム21は、延伸されていてもよいし、無延伸で積層されていてもよい。また、基材フィルム21を構成する材料は、石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。また、マテリアルリサイクル材やケミカルリサイクル材を含んでいてもよい。
このような基材フィルム21の厚みは、通常、5~50μm程度である。
【0038】
また、必要に応じて形成される機能層23としては、無機蒸着層や印刷層が代表的である。
【0039】
無機蒸着層は、アルミニウム、アルミニウム化合物やケイ素化合物などを用いてのプラズマCVDなどにより形成され、包装袋のガスバリア性を高めたり、リサイクルポリオレフィンに起因する着色を隠蔽したりするために使用される。このような無機蒸着層は、0.001~1μm程度の厚みの薄層である。ガスバリア性能をより高める目的で薄層上にカルボン酸と金属の架橋反応塗膜や、金属酸化物が分散されたコーティング膜が含まれていてもよい。
【0040】
また、印刷層は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などにより各色のインクにより形成され、加飾等を目的とするものであるが、特にベタ印刷などの場合には、リサイクルポリオレフィンに起因する着色を隠蔽する作用、機能も有している。
さらに、
図3における着色層7と併用することにより、より高度で複雑な加飾印刷層とすることもできる。
かかる印刷層の厚みは、通常、10μm以下である。
【0041】
このような包装用積層体30は、基材フィルム21の表面に適宜無機蒸着層や印刷層などの機能層を設けた後、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などの熱硬化性接着剤を用いてシーラントフィルム10におけるポリオレフィン層1の上に基材フィルム21(或いは機能層23)を貼り付けることにより製造することもできる。また接着性樹脂を用いて押出コートで貼り付けることにより製造してもよい。
【0042】
<包装容器>
図5は、上記の包装用積層体30を適宜、適度な大きさに裁断した後に、
図4の内面側に位置するポリオレフィン層3同士でのヒートシールにより接着された包装容器40の層構造の一例を示す概略側断面図である。
【0043】
ヒートシールによる接着は、公知の手段により行われる。例えば2枚の積層体30を用いての3方シールにより、空パウチを作製し、開口部から内容物を充填し、最後に開口部をヒートシールにより閉じることにより内容物が充填された包装容器(パウチ)40が得られる。また、1枚の積層体30を筒状にして両側端のポリオレフィン層3同士をヒートシールすることによりパウチの胴部を作製し、次いで専用の形状を有する底部をヒートシールにより作製して空パウチを製造することもできる。このような方法は、パウチの容積を大きくし、あるいはスタンディング性を付与する上で有利である。
【0044】
さらに、本発明の包装用積層体30を胴部専用に使用し、バージンポリオレフィンから形成された通常のシーラントフィルムを底部専用に用いて包装容器40を製造することが好適である。このようにして得られる包装容器40は、底部の強度が高いため、特にスタンディングパウチとして使用される。スタンディングパウチには注ぎ口を立体成形してもよいし、注口部としてスパウトを装着してもよい。
【実施例0045】
以下に本発明を実施例により詳細に説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0046】
表1にリサイクルポリオレフィンとして用いた4種類のラミネートフィルム1~4における、基材フィルム、シーラントフィルム、接着剤について、それぞれの種類を示した。ここで、PE、PA、PET、VM-PET、LLDPEは、それぞれポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレート、直鎖状低密度ポリエチレンの略である。
【0047】
【0048】
上記回収ラミネートフィルム1~4のそれぞれについて、破砕機(株式会社ホーライ製VC-360)を用いてフレーク化した後、造粒設備付帯二軸押出機(東芝機械(株)製TEM-35B)を用い、バレル温度240℃、スクリュ回転速度200rpmの条件下で上記フレークを押出成形し、吐出ストランドを空冷後にペレタイズしてペレットを得た。
【0049】
バージンポリオレフィンとして、「直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.915g/cm3)/低密度ポリエチレン(密度:0.919g/cm3)」=70/30で混合したバージンポリエチレンを用い、上記フレーク由来ペレットを二軸押出機に投入する際にリサイクルポリオレフィンの希釈を必要に応じて行った。
【0050】
上記ペレットについて、単軸押出機とTダイ付き製膜機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、溶融混錬し、Tダイからフィルム状に吐出し、60℃の冷却ロールに巻き取ることで厚み90μmのフィルムを製膜し、実施例1~4、比較例1~3のリサイクルポリオレフィンを含むポリオレフィンフィルムを得た。ここで、20倍のマイクロスコープを用いて、異物の目視観察を行い、最大径が2000μm(2mm)より大きい異物がないことを確認した。
【0051】
表2に上記実施例1~4、比較例1~3のポリオレフィンフィルムについて、使用したリサイクルポリオレフィンの種類、バージンポリエチレンを用いた希釈倍率、異物の種類、異物の含有率等及びフィルムの穴あきの有無について示した。ここで、異物としてのポリエステル、ポリアミド及び接着剤の含有率は、上記フィルム製造時の仕込割合から算出した。
【0052】
【0053】
実施例1~4のポリオレフィンフィルムはポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、接着剤を異物とし、その異物の合計含有率が4~12質量%であり、フィルムに穴あきは発生しなかった。しかし、比較例1~3のポリオレフィンフィルムは異物の合計含有率が22~24質量%であり、フィルムに異物を起因とする穴あきが発生した。
【0054】
表2の異物の種類において、ポリエチレン由来ゲル、及びアルミニウムが記載されているが、共に0.5質量%未満の微量であったことから、フィルムの穴あき等の物性に大きな影響を与えないと判断して含有率を示さなかった。
【0055】
実施例5~8として、上記実施例1~4のポリオレフィンフィルムを中間層のポリオレフィン層とし、両側の層に前記バージンポリエチレンに酸化チタンを10質量%配合したポリオレフィンフィルムを用いた3層から構成されるシーラントフィルム(厚み30μm/90μm/30μm)を製造した。紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所製UV-3600)を用いて測定した380~780nmの可視光線透過率(%)は24%であり、それぞれのシーラントフィルム内部に異物が視認されず、外観が良好であることが確認された。また、それぞれのシーラントフィルムを用いて、包装容器を製造することができることも確認された。
本発明のシーラントフィルムから得られる包装容器は、リサイクルポリオレフィンを多く含んであり、環境適性に優れているばかりか、リサイクルポリオレフィンによる性能低下が有効に回避されており、液状または固形の形態の物質、特に食品類、液体洗剤、シャンプー、リンスなどが収容された包装容器として、実用に供される。特に、シャンプーやリンスなどの詰め替え用のスタンディングパウチとして好適に使用される。
さらに、上記の中間層であるポリオレフィン層5は、リサイクルポリオレフィン単独で形成されていてもよいが、一般的には、バージンポリオレフィンも含んでいることが好ましい。このようなリサイクルポリオレフィン含有ペレットとバージンポリオレフィンペレットを用いての共押出成形によりシーラントフィルム10が成形されるからである。例えば、前述したリサイクルポリオレフィン含有率や外側のポリオレフィン層1、3との厚み比を満足する範囲内で中間層であるポリオレフィン層5には、バージンポリオレフィンが配合されていることが好ましい。具体的には、前述したリサイクルポリオレフィン含有率や厚み比を満足していることを条件として、中間層であるポリオレフィン層5におけるリサイクルポリオレフィンとバージンポリオレフィンとの質量比は、リサイクルポリオレフィン:バージンポリオレフィン=95:5~25:75の範囲内とすることが好ましい。ここで50:50の場合は2倍希釈、25:75の場合は4倍希釈となる。また、中間層であるポリオレフィン層5を構成するポリオレフィンは、石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。
上記の基材フィルム21は、包装容器の外面側に位置するように設けられるものであり、その材質は特に制限されないが、包装容器として使用したときに適度な剛性がえられるという点で、ポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂などが好適である。
上記のポリエチレン樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレンがあげられる。ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンがあげられる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン13、ナイロン6/ナイロン6,6共重合体、芳香族ナイロン(例えばポリメタキシリレンアジパミド)、アモルファスナイロン(例えばナイロン6I/6T)等を挙げることができる。また、ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等を挙げることができる。包装袋の突き刺し強度を高めるという点ではポリアミドフィルムやポリエステルフィルムが好適である。ガスバリア性能を高めるという点では、ポリビニルアルコール系樹脂が好適で、特にエチレン-ビニルアルコール共重合体でエチレン含有量が20~50mol%のものがよい。また、この基材フィルム21は、延伸されていてもよいし、無延伸で積層されていてもよい。また、基材フィルム21を構成する材料は、石油原料由来、植物原料由来、これらの混合物であってもよい。また、マテリアルリサイクル材やケミカルリサイクル材を含んでいてもよい。
このような基材フィルム21の厚みは、通常、5~50μm程度である。