(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121554
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】袋収容用具と梱包体と梱包方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/30 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B65D85/30 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028712
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 和生
(72)【発明者】
【氏名】西村 和泰
【テーマコード(参考)】
3E096
【Fターム(参考)】
3E096AA01
3E096BA08
3E096BA16
3E096BB04
3E096CA12
3E096DA11
3E096EA02X
3E096FA03
3E096FA09
3E096GA13
(57)【要約】
【課題】異物が電極板の表面に発生することを抑えることができる袋収容用具を提供する。
【解決手段】丸い板状部材200を袋に入れる際に用いる袋収容用具1であって、板状部材200の周縁領域を支持するリング部を備え、リング部10Aの内周面は第一内壁面110と第二内壁面120とを備え、第一内壁面110と第二内壁面120との間隔がリング部10Aの中心軸Cへ向うにつれて広がっている。袋収容用具1のリング部10Aは複数のパーツに分割構成されている。複数のパーツを固定する固定部材をさらに備えている。袋収容用具と袋とを用いて板状部材を梱包する梱包方法では、板状部材200の周縁領域を袋収容用具1のリング部10Aで支持する第一梱包工程と、板状部材の周縁領域が袋収容用具のリング部で覆われた第一梱包体に袋を被せる第二梱包工程と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸い板状部材を袋で梱包する際に用いる袋収容用具であって、
前記板状部材の周縁領域を支持するリング部を備え、
前記リング部の内周面は、前記板状部材の最大径からなる一方の面の第一縁が当たる第一内壁面と、前記板状部材の前記第一縁とは反対側に設けられる第二縁が当たる第二内壁面とを備え、
前記第一内壁面と前記第二内壁面との間隔が前記リング部の中心軸へ向うにつれて広がっていることを特徴とする、袋収容用具。
【請求項2】
前記リング部が複数のパーツに分割構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の袋収容用具。
【請求項3】
複数の前記パーツを固定する固定部材をさらに備えていることを特徴とする、請求項2に記載の袋収容用具。
【請求項4】
丸い板状部材と、この板状部材の周縁領域を少なくとも覆う袋収容用具と、前記板状部材及び前記袋収容用具を収容した合成樹脂製の袋と、を備え、
前記袋収容用具は、前記板状部材の前記周縁領域を支持するリング部と、このリング部に接続して設けられていて前記板状部材の一方の面の一部を袋収容用具外部に露出させる第一筒部と、を備え、
前記リング部の内周面は、間隔が前記リング部の中心軸へ向うにつれて広がった第一内壁面及び第二内壁面を備え、
前記第一内壁面には前記板状部材の最大径からなる一方の面の第一縁が当たっており、
前記第二内壁面には前記板状部材の前記第一縁とは反対側に設けられる第二縁が当たっており、
前記板状部材の前記一方の面と前記袋との間には、前記リング部と前記第一筒部とで囲われる第一空間が配置されていることを特徴とする、梱包体。
【請求項5】
前記袋収容用具は、前記リング部を間に配置して前記第一筒部とは反対側に設けられていて前記板状部材の他方の面の一部を袋収容用具外部に露出させる第二筒部をさらに備え、
前記板状部材の前記他方の面と前記袋との間には、前記リング部と前記第二筒部とで囲われる第二空間が配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の梱包体。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の袋収容用具と前記袋とを用いて前記板状部材を梱包する梱包方法であって、
前記袋収容用具の前記リング部で前記板状部材の前記周縁領域を支持する第一梱包工程と、
前記板状部材の前記周縁領域が前記袋収容用具の前記リング部で覆われた第一梱包体に、前記袋を被せる第二梱包工程と、を備え、
前記第一梱包工程では、前記板状部材の前記第一縁を前記第一内壁部に当てると共に、前記板状部材の前記第二縁を前記第二内壁部に当てることを特徴とする、梱包方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高清浄度が要求されるプラズマエッチャー用の電極版や半導体向けスパッタリングターゲット等の外形が丸い板状部材を収容する袋収容用具と梱包体と梱包方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマエッチャー用の電極板が知られている。このような電極板は、鏡面加工が施された鏡面(鏡面加工面)に異物が付着した状態で使用すると不具合が生じるため、製造の際に鏡面は洗浄されて異物が除去されている。
【0003】
このように鏡面を洗浄された電極板は容器や袋を用いて梱包された状態で搬送される。
梱包の対象が異なるが半導体ウェーハ(以下、ウェーハと称す。)において、鏡面を有するウェーハの梱包に関して、特許文献1にはウェーハの梱包方法が開示されており、このウェーハの梱包方法では、複数のウェーハと超純水から作られた氷板とを交互に積層配置し容器に収容することが行われている。
また、特許文献2にはウェーハの保管方法が開示されている。ウェーハの保管方法では、単一のプラスチック容器に複数枚のウェーハを収容し、この容器を複数個、各容器の間にクッション材を介在させて箱詰めして梱包し、その箱を搬送している。
【0004】
さらに電極板の搬送等を行う際に、電極板への異物の付着を抑制するために、例えば電極板を袋に真空状態で密封することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-128173号公報
【特許文献2】特開平6-204315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電極板を袋で梱包しても、袋内で異物が電極板の表面に発生することを抑えることができない。電極板に限らず、プラズマ処理装置や半導体製造装置のチャンバー内に配置される外形が丸い板状部材を袋で梱包した場合にも、同様の問題が生じ得る。
【0007】
そこで、本発明は、異物が板状部材の表面に発生することを抑えることができる袋収容用具と、梱包体と、梱包方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、丸い板状部材を袋で梱包する際に用いる袋収容用具であって、前記板状部材の周縁領域を支持するリング部を備え、前記リング部の内周面は、前記板状部材の最大径からなる一方の面の第一縁が当たる第一内壁面と、前記板状部材の前記第一縁とは反対側に設けられる第二縁が当たる第二内壁面とを備え、前記第一内壁面と前記第二内壁面との間隔が前記リング部の中心軸へ向うにつれて広がっている。
【0009】
第一内壁面と第二内壁面とが中心軸へ向けて開拡していることで、板状部材の第一縁を第一内壁面に当て、第二縁を第二内壁面に当てて、板状部材を支持することができる。これにより板状部材がリング部の内側に固定される。
袋収容用具によれば、板状部材の最大径から成る第一縁とこれとは反対側に位置する第二縁とにだけ接触して、その他の箇所とは接触せずに、板状部材の周縁領域を覆うことができる。これにより、袋収容用具が板状部材の面を擦ることを防止する。このような擦れが起こると、板状部材の表面には異物が生じ得る。この異物は、目視でシミ、曇り、粒子状白点として確認される汚れであり、梱包に用いる袋収容用具や袋の材料である有機成分から成る。
なお、板状部材は、平面視でその輪郭が円形或いは楕円に形成されており、この輪郭を形成する板状部材の第一縁に対応して、第一内壁面もリング状に形成されている。
また、板状部材の第二縁は、第一縁とは反対に位置する他方の面の最大径の周縁に限らず、この周縁よりも板状部材の中心軸側にずらした位置に、周縁よりも厚さ方向に突き出た段差面を有する場合には、段差面の一方の面側とは反対に位置し出隅を成す縁を第二縁として、この第二縁を押さえるように第二内壁面を形成することもできる。
さらに、周縁領域は、前記板状部材の一方の面の第一縁とこれと反対に位置する第二縁とをリング部の内周面に当てるものであれば、一方の面のうち、第一縁から面の中心へ向けて広がる一部の箇所と、他方の面のうち、第二縁から中心へ向けて広がる一部の箇所と、を少なくとも含み、さらに外周面を含む。
また、他方の面に段差面を有する板状部材であれば、他方の面は、少なくとも、第二縁から面の中心へ向けて広がる一部の箇所と、段差面と、段差面の第二縁とは反対に位置して入隅を成す端から最大径の周縁までの箇所とが、一方の面の周縁領域と、外周面と共に、リング部で覆われる。
【0010】
本発明の袋収容用具は、好ましくは、前記リング部が複数のパーツに分割構成されている。
袋収容用具の前記リング部が分割構成されていることで、パーツを個々に取り扱って作業を行うことができ、梱包作業が容易になる。
【0011】
本発明の袋収容用具は、好ましくは、複数の前記パーツを固定する固定部材をさらに備えている。
各パーツを固定部材で固定することで、板状部材を空間に一層安定して収容することができる。
【0012】
本発明の梱包体は、丸い板状部材と、この板状部材の周縁領域を少なくとも覆う袋収容用具と、前記板状部材及び前記袋収容用具を収容した合成樹脂製の袋と、を備え、前記袋収容用具は、前記板状部材の前記周縁領域を支持するリング部と、このリング部に接続して設けられていて前記板状部材の一方の面の一部を袋収容用具外部に露出させる第一筒部と、を備え、前記リング部の内周面は、間隔が前記リング部の中心軸へ向うにつれて広がった第一内壁面及び第二内壁面を備え、前記第一内壁面には前記板状部材の最大径からなる一方の面の第一縁が当たっており、前記第二内壁面には前記板状部材の前記第一縁とは反対側に設けられる第二縁が当たっており、前記板状部材の前記一方の面と前記袋との間には、前記第一内壁面と前記第一筒部とで囲われる第一空間が配置されている。
本発明の梱包体では、袋収容用具のリング部の内側に、板状部材の最大径から成る第一縁とこれとは反対側に位置する第二縁とを接触させて収容されることで、袋収容用具が板状部材の面を擦ることを防止する。
さらに、板状部材を袋で梱包した状態で、袋収容用具によって板状部材と袋との間に第一空間を設けることで、板状部材を袋と非接触の状態で収容することができ、袋が板状部材の面を擦ることを防止する。
【0013】
本発明の梱包体は、好ましくは、前記リング部を間に配置して前記第一筒部とは反対側に設けられていて前記板状部材の他方の面の一部を袋収容用具外部に露出させる第二筒部をさらに備え、前記板状部材の前記他方の面と前記袋との間には、前記リング部と前記第二筒部とで囲われる第二空間が配置されている。
本発明の梱包体では、袋収容用具が前記第二筒部を設けて、板状部材の他方の面を覆う箇所を省くことで梱包の際に板状部材と接することを一層抑えることができる。さらに、板状部材を袋で梱包した状態で、袋収容用具によって板状部材と袋との間に第二空間を設けることで、板状部材を袋と非接触の状態で収容することができる。
【0014】
本発明は、前記袋収容用具と袋とを用いて前記板状部材を梱包する梱包方法であって、前記袋収容用具の前記リング部で前記板状部材の前記周縁領域を支持する第一梱包工程と、前記板状部材の前記周縁領域が前記袋収容用具の前記リング部で覆われた第一梱包体に前記袋を被せる第二梱包工程と、を備え、前記第一梱包工程では、前記板状部材の一方の面の第一縁を前記第一内壁部に当てると共に、前記板状部材の前記第一縁とは反対側に設けられる第二縁を前記第二内壁部に当てる。
【0015】
梱包方法によれば、袋収容用具を板状部材の第一縁とこれとは反対側に位置する第二縁とにだけ接触させ、その他の箇所とは接触せずに、板状部材の周縁領域を袋収容用具のリング部で覆う。これにより、袋収容用具が板状部材の面を擦ることを防止する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、異物が板状部材の表面に発生することを抑え、清浄度の高い状態を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(a)は本発明の第一実施形態に係る袋収容用具の平面図であり、(b)は(a)の袋収容用具のS1-S1線に沿った断面図であり、(c)は(b)の破線の円で囲った部分を拡大した図であり、(d)は(a)の袋収容用具を構成するパーツの平面図であり、(e)は(d)のパーツの正面図である。
【
図2】(a)は本発明の第一実施形態に係る袋収容用具に収容する電極板の平面図であり、(b)は(a)の電極板のS2-S2線に沿った断面図であり、(c)は(b)の破線の円で囲った部分を拡大した図である。
【
図3】(a)は本発明の第一実施形態に係る袋収容用具を用いて電極板を梱包した第一梱包体の平面図であり、(b)は(a)の第一梱包体の正面図であり、(c)は(a)の第一梱包体のS3-S3線に沿った断面図であり、(d)は(c)の破線の円で囲った部分を拡大した図である。
【
図4】(a)は本発明の第一実施形態に係る袋収容用具を用いて電極板を梱包した第二梱包体の平面図であり、(b)は(a)の第二梱包体のS4-S4線に沿った断面図である。
【
図5】(a)は本発明の第一実施形態の第一変形例に係る袋収容用具の平面図であり、(b)は(a)の袋収容用具の正面図であり、(c)は(b)のS5-S5線に沿った断面図であり、(d)は(c)の破線の円で囲った部分を拡大した図である。
【
図6】(a)は本発明の第一実施形態の第二変形例に係る袋収容用具の平面図であり、(b)は(a)の袋収容用具のS6-S6線に沿った断面図であり、(c)は(a)の袋収容用具のS7-S7線に沿った断面図である。
【
図7】(a)は本発明の第一実施形態の第三変形例に係る袋収容用具の平面図であり、(b)は(a)の袋収容用具の梱包方法を説明するための図であり、(c)は(a)の袋収容用具のS8-S8線に沿った断面図である。
【
図8】(a)~(d)は、本発明の第一実施形態の他の変形例に係る袋収容用具の部分断面図である。
【
図9】実施例の評価方法を説明するための図である。
【
図10】(a)は実施例の試料Aの表面を走査型電子顕微鏡画像であり、(b)は実施例の試料Bの表面を走査型電子顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら実施形態を説明する。
(第一実施形態)
図1(a)及び(b)に示すように、袋収容用具1はリング状に形成されていて、プラズマ処理装置用の電極板200を支持するリング部10Aを備えている。
リング部10Aは内周面10を備えており、この内周面10は、中心軸Cに向かうにつれて互いの間隔が広がる第一内壁面110及び第二内壁面120と、第一内壁面110と第二内壁面120の間に設けられる第三内壁面130とを有する。
第一内壁面110と第二内壁面120とは、中心軸Cに対して傾斜した面として形成されている。なお、
図1(c)では中心軸Cと平行に延びる仮想線L1を破線で表していて、第一内壁面110は角度θ1で傾斜し、第二内壁面120は角度θ2で傾斜している。図示例では、一定の傾きの面として形成された場合を示すが、第一内壁面110と第二内壁面120は曲面として形成することもできる。曲面は、第一内壁面110であれば中心軸Cから最も離れた位置に配置される端(後述の入隅部111側)から中心軸Cへ向かって延びていて、中心軸Cからの距離(r11,
図1(b))が漸次短くなり、さらに第一内壁面110よりも中心軸Cに沿って位置をずらして設けられた第二内壁面120側へ凸となる或いは凹となる曲面に形成することもできる。第二内壁面120も曲面の形状も、第一内壁面110と同様に、中心軸Cから最も離れた位置に配置される端(後述の入隅部121側)から中心軸Cへ向かって延びていて、中心軸Cとの距離(r12,
図1(b))が漸次短くなり、さらに第一内壁面110側へ凸となる或いは凹となる曲面に形成することもできる。
【0019】
第三内壁面130は、断面形状が中心軸Cに平行な面として形成されているが、これに限らず、曲面として形成されてもよい。また、第三内壁面130と第一内壁面110とでなる入隅部111や第三内壁面130と第二内壁面120とでなる入隅部121を省いて、第一内壁面110の最大径の周縁と第二内壁面120の最大径の周縁とがつながるように構成してもよい。
【0020】
さらに、袋収容用具1では、リング部10Aの第一内壁面110の中心軸C寄りに配置された最小径側の端部(以下、最小径箇所と称す。)に接続して円筒状に形成された第一筒部20と、リング部10Aの第二内壁面120の中心軸C寄りに配置された最小径の端部(以下、最小径箇所と称す。)に接続して円筒状に形成された第二筒部30と、を有する。第一筒部20は中心軸Cからの半径がr2であり、第二筒部30は中心軸Cからの半径がr3であり、これらの半径r2,r3は同一に或いは相違するように設定することができる。第二筒部30はリング部10Aを間に配置して第一筒部20とは反対側に設けられている。
【0021】
第一筒部20は、リング部10Aの第一内壁面110側の最小径箇所とつながって中心軸Cのまわりに配置される第一内側接続部21を構成すると共に、第一外壁部40とつながって中心軸Cのまわりに配置される第一外側接続部22を構成する。第一外側接続部22は第一内側接続部21よりも中心軸Cに沿った方向に位置をずらして配置されている。第一外側接続部22によって第一筒部20の一方の開口(以下、第一開口41と称す。)が第一外壁部40に形成されている。なお、
図1(b)では、第一開口41を二点鎖線で表している。
第二筒部30は、リング部10Aの第二内壁面120側の最小径箇所とつながって中心軸Cのまわりに配置される第二内側接続部31を構成すると共に、第二外壁部50とつながって中心軸Cのまわりに配置される第二外側接続部32を構成する。第二外側接続部32は第二内側接続部31よりも中心軸Cに沿った方向に位置をずらして配置されている。第二外側接続部32によって第二筒部30の一方の開口(以下、第二開口51と称す。)が第二外壁部50に形成されている。
図1(b)では、第二開口51を二点鎖線で表している。
また、袋収容用具1では、第三外壁部70が第一外壁部40の周縁と第二外壁部50の周縁との間に設けられて、袋収容用具1の外周面70′を構成している。
さらに袋収容用具1では、第一筒部20及び第二筒部30が間に配置したリング部10Aと連なって、袋収容用具1の貫通穴100を構成している。貫通穴100のうち、リング部10Aで形成される箇所は、リング部10Aが第一筒部20及び第二筒部30とつながる第一内側接続部21や第二内側接続部31を除いて、第一筒部20の半径r2及び第二筒部30の半径r2よりも中心軸Cからの半径r11,r12が大きく形成されて、電極板200を配置可能な収容空間SP′として構成されている。
【0022】
袋収容用具1は、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどの合成樹脂で構成されている。
また、袋収容用具1は、複数のパーツに分割構成され、各パーツが分離した状態ではリング部10A(内周面10)、第一筒部20,第二筒部30も分割されている。
図1(a)の袋収容用具1は、中心(中心軸C)まわりに90度の間隔で四分割にされたパーツ1A,1B,1C,1Dからなり、パーツ1Aを例にすると、パーツ1Aはリング部10A(内周面10)の一部を形成する第一部分10Pと、第一筒部20の一部を形成する第二部分20Pと,第二筒部30の一部を形成する第三部分30Pと、第一外壁部40の一部を形成する第四部分40Pと、第二外壁部50の一部を形成する第五部分50Pと、第三外壁部70の一部を形成する第六部分70Pと、さらにこれらの縁に接続して袋収容用具1が分離する箇所に配置されると共に隣接するパーツと合わさる接合部61P,62Pと、を備え、パーツ1B,1C,1Dもパーツ1Aと同様に構成されている。また
図1(a)はパーツ1A,1B,1C,1Dが接合部61P,62Pに形成された例えば平坦な分割面61,62を合わせて一体になった形態を表している。なお
図1(a)では中心(中心軸C)を●の印で表し、
図1(c)ではパーツ1Aの一方の分割面61を表している。
さらに、各パーツ1A,1B,1C,1Dが一体になった状態を保持するために、固定部材として例えばゴム製の弾性リングを用いることができる。この弾性リングを取り付けるための溝部71が各パーツ1A,1B,1C,1Dの第六部分70Pに形成されている。なお、各パーツ1A,1B,1C,1Dが合わさると、第六部分70Pが連なり袋収容用具1の第三外壁部70を構成し、また各溝部71がつながった状態になり、弾性リングを入れることができる。また、このように各パーツ1A,1B,1C,1Dが一体になった状態では、複数の第一部分10Pが連なり、リング部10Aを構成する。
なお、各パーツ1A,1B,1C,1Dは、好ましくは後述の
図3(d)に示すように内側を第一部分10Pと第二部分20Pと第三部分30Pと第四部分40Pと第五部分50Pと第六部分70Pと接合部61P,62Pとで画される空間とした中空に形成されている。
【0023】
(電極板200)
袋収容用具1の貫通穴100に収容される電極板200は、
図2(a)及び(b)に示すように、薄く形成された周縁部210と、この周縁部210につながって形成されていて周縁部210よりも厚く形成された周縁隣接部220と、を備えて、円板状に形成されている。本実施形態において、丸い板状部材は例えば電極板である。
また、電極板200では、周縁部210と周縁隣接部220とが面一の一方の面201を構成し、さらに周縁部210と周縁隣接部220とで他方の面202を構成する。他方の面202では、周縁部210と周縁隣接部220とが段差部230を構成している。
ここで、他方の面202の段差部230は、
図2(c)に示すように、他方の面202のうち、周縁部210に配置される第一ステップ面202A、第一ステップ面202Aの中心軸C′側の端から立ち上がるように延びた段差面202B、周縁隣接部220に配置されていて段差面202Bを介して第一ステップ面202Aにつながっている第二ステップ面202Cと、から構成されている。
図2(c)では周縁部210と周縁隣接部220の境界を一点鎖線で表している。
なお、電極板200は、単結晶シリコン、柱状晶シリコン、又は多結晶シリコンからなり、また細部の構成の表示は省略するが、エッチングガスが流れる複数のガス流路が中心軸に沿って電極板200を貫通している。これらのガス流路を設ける箇所が、周縁部と同様に、周縁隣接部220よりも薄い箇所として形成されてもよい。
【0024】
また、電極板200の周縁部210では、一方の面201と外周面211とが最大径から成る第一角部E1を構成し、他方の面202の第一ステップ面202Aと周縁部210の外周面211とが第二角部E2を構成し、さらに、他方の面202の段差面202Bと第二ステップ面202Cとが第三角部E3を構成している。
ここで、
図2(c)の電極板200の断面図において、第二角部E2と第三角部E3とを通る仮想の直線(以下、仮想線L2と称す。)を想定すると、この仮想線L2の仮想線L3(中心軸C′に平行な線)に対する傾きθ3と、第二内壁面120の傾きθ2とを比べると、第二内壁面120の傾きθ2が仮想線L3の傾きθ3よりも小さく(θ2<θ3)設定されている。
また、電極板200の表面は少なくとも一部が、鏡面加工を施して形成されており、例えば一方の面201と、この面201とは反対に位置する第一ステップ面202Aとは粗さRaが0.2μm以下に形成されていて、電極板200は鏡面加工体として構成されている。なお、前記のガス流路は鏡面加工された面に配置されている。
【0025】
(梱包方法)
電極板200の梱包方法は、袋収容用具1のリング部10Aで電極板200の周縁領域を支持する第一梱包工程と、第一梱包工程を経て袋収容用具1で電極板200の周縁領域を支持した状態の電極板200及び袋収容用具1、つまり第一梱包体を袋で梱包する第二梱包工程と、を備えている。
【0026】
(第一梱包工程)
第一梱包工程では、
図3(a)に示すように、袋収容用具1の各パーツ1A,1B,1C,1Dで電極板200の周縁領域としての周縁部210と周縁隣接部220の一部とを覆うと共に、各パーツ1A,1B,1C,1Dの分割面61,62を合わせる。なお、
図3(a)では、電極板200の周縁部210の外周面211と段差面202Bを一点鎖線で表している。
また、第一梱包工程では、各パーツ1A,1B,1C,1Dが合わさった状態で
図3(b)に示すように、袋収容用具1の外周面(第三外壁部70)に設けられた溝部71に弾性リング81(本実施形態の固定部材)を伸ばして入れることで、各パーツ1A,1B,1C,1Dを固定する。これにより、電極板200を袋収容用具1のリング部10Aで周縁領域を支持した状態が保持され、袋収容用具1で電極板200の周縁領域を覆った第一梱包体300が完成する。
第一梱包体300では、
図3(c)及び(d)に示すように、電極板200は、最大径から成る第一角部E1(本実施形態の第一縁)を袋収容用具1の第一内壁面110に当てると共に、第三角部E3(本実施形態の第二縁)を袋収容用具1の第二内壁面120に当てて、固定され、収容空間SP′に収容される。袋収容用具1は、電極板200が配置される収容空間SP′
また、第一梱包体300では、電極板200の一方の面201の一部が、具体的にはリング部10Aで覆われていない周縁領域より内側の非被覆箇所が、第一筒部20を介して袋収容用具外部に露出する。これと同様に、電極板200の他方の面202の一部(周縁領域より内側の非被覆箇所)が第二筒部30を介して袋収容用具外部に露出する。
なお、電極板200は袋収容用具1に接触して周縁領域を覆われる前に、電極板200の洗浄として、エアブローなどで電極板200の表面に付着した異物の除去を行うことが望ましい。
【0027】
(第二梱包工程)
第二梱包工程では、ポリエチレンなどの合成樹脂からなる袋400に第一梱包体300を入れた後に、袋400の内部のエアを真空引きなどで除き、封をすることで、
図4(a)に示す梱包製品としての第二梱包体500が完成する。袋400の内面に付着している付着物の数は、例えば1000個/cm
2以下であり、好ましくは100個/cm
2以下であり、より好ましくは10個/cm
2以下である。ここで、付着物は袋加工時の残渣や切断片、気中のパーティクルなどである。
なお、
図4(b)に示すように、袋400は、袋収容用具1を覆うと共に、第一開口41に対応して設けられる一部が第一開口閉塞部410として第一筒部20の第一開口41を塞ぎ、さらに第二開口51に対応して設けられる袋400の他の一部が第二開口閉塞部420として第二筒部30の第二開口51を塞いでいる。このように梱包した状態で、第一梱包体の電極板200で露出した箇所も袋400で覆われるが、電極板200の一方の面201と、第一筒部20の外側の第一開口41を塞ぐ第一開口閉塞部410との間には、第一内壁面110(リング部10A)と第一筒部20とで囲われる第一空間SP1が配置されて、電極板200の一方の面201が袋400(第一開口閉塞部410)と離れている。さらに、電極板200の一方の面201とは反対側においても、電極板200の他方の面202と、第二筒部30の外側の第二開口51を塞ぐ第二開口閉塞部420との間には、第二内壁面120(リング部10A)と第二筒部30とで囲われる第二空間SP2が配置されて、電極板200の他方の面202が袋400(第二開口閉塞部420)と離れている。
図4(b)では、第一開口41と第に開口51を二点鎖線で表し、また
図4(b)にはパーツ1Aの分割面61とパーツ1Bの分割面62が表れている。
【0028】
また、梱包製品(第二梱包体500)の開梱は、先ず、平面視で袋400の矩形を成す四つの縁部401,402,403,404のうち、一つを残して、三つを切除などして、袋400を開ける。次に、第一梱包体300の弾性リング81を各パーツ1A,1B,1C,1Dから取り外し、さらに各パーツ1A,1B,1C,1Dを電極板200から取り外す。このように梱包製品(第二梱包体500)から電極板200を容易に取り出すことができる。
【0029】
第一実施形態の袋収容用具1によれば、第一内壁面110で電極板200の第一角部E1を押さえ、第二内壁面120で電極板200の第三角部E3を押さえて、電極板200を梱包する。電極板200が袋収容用具1で梱包された状態で、袋収容用具1は電極板200の第一角部E1とこれとは反対側に位置する第三角部E3とにだけ接触して、その他の箇所とは接触せずに、電極板200を袋収容用具1の貫通穴100の中で一定の位置に保持することができる。また袋収容用具1が電極板200の面201、第一ステップ面202A,段差面202B及び第二ステップ面202Cを擦ることも防止できる。
【0030】
袋収容用具1を用いずに、電極板200を合成樹脂製の袋で直に覆う従来の梱包方法では、電極板200に密着している袋が外部の環境の温度変化によって膨張などすると、電極板200の表面が袋で擦れて、袋の一部(有機成分)が分離して異物として電極板200の表面に付着することになる。このような異物が電極板に存在すると、プラズマ処理装置で使用した際にパーティクルの発生の原因となってしまう。
【0031】
このような従来の梱包方法と比べて、本実施形態では、前記のように、袋収容用具1の電極板200との接触が第一角部E1及び第三角部E3に限られており、鏡面加工を施している一方の面201に対して、第一内壁面110を合わせずに第一角部E1を第一内壁面110に当て、さらに電極板の反対側でも鏡面加工を施している第二ステップ面202Cに対して、第二内壁面120を合わせずに第三角部E3を第二内壁面120に当てて、鏡面加工が施された面201及び第二ステップ面202Cに実質触れずに電極板200を袋収容用具1の貫通穴100に収容することができる。また、第二梱包体500は袋収容用具1と袋400との間に第一空間SP1及び第二空間SP2を備え、袋収容用具1を用いることで、電極板200は袋400と非接触に収容することができる。
【0032】
電極板200の鏡面加工された面201及び第二ステップ面202Cと袋収容用具1の面や袋400が成す面との擦れの発生を抑えることができ、梱包に用いる袋収容用具1や袋400の材料(有機成分)が異物として電極板200の鏡面加工された面201及び第二ステップ面202C等に分離して付着することを防止することができる。また、袋収容用具1を用いて梱包された電極板200を用いれば、プラズマ処理を好適に行うことができる。
【0033】
(第一変形例)
図5(a)及び(b)に示す第一変形例のリング状の袋収容用具2は、第一実施形態の袋収容用具1と比べると、リング状態の形態の分割構造が異なり、袋収容用具2は、電極板200の一方の面201を覆う第一パーツ2Aと、他方の面202を覆う第二パーツ2Bと、これらが分割面63,64を合わせて一体になった状態を保持する鎹82(本実施形態の固定部材)と、備えている。
図5(c)及び(d)に示すように、第一パーツ2Aは第一内壁面110と第一筒部20と分割面63とを備え、第二パーツ2Bは第二内壁面120と第二筒部30と分割面64とを備えており、第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとは分割面63,64を合わせて一体になった状態で、これらは協働して電極板200を支持するためのリング部10A(内周面10)を構成する。以下、第一実施形態の袋収容用具1の構成と同じ構成には同じ符号を用いて説明し、また図面に表し、それらの詳細な説明は省略する。
袋収容用具2では、第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとは分割面63,64を合わせて一体になった状態で、鎹82の折れ曲がった先端部82A,82Bが嵌る受部72A,72Bを第三外壁部70に有する。
図5(d)は、鎹82が受部72A,72Bから外れている状態を表している。
図示例の袋収容用具2では、四本の鎹82を第三外壁部70に取り付けて、第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとを接合させている。なお、鎹82の数は図示例の四本に限られるものではなない。また、受部72A,72Bは凹部として、或いは貫通した穴として形成することができる。第一パーツ2Aの受部72Aと第二パーツ2Bの受部72Bとは、平面視で中心(中心軸C)まわりに同じ角度の位置に配置されている。
【0034】
袋収容用具2を用いた電極板200の梱包は、例えば、先ず第一パーツ2Aを作業テーブルに置き、その際、第一内壁面110を上にする。そして、この第一内壁面110に電極板200を載せる。電極板200は第一角部E1を第一内壁面110に当てて、鏡面処理された一方の面201を第一内壁面110とは実質非接触に配置する。さらに電極板200の段差部230とその周辺とが第二パーツ2Bで覆われ、さらに第二パーツ2Bはその第二内壁面120を電極板200の第三角部E3に当てて、第二内壁面120を鏡面処理された電極板200の第二ステップ面202Cとは実質非接触に配置する。また、第一パーツ2Aの分割面63と第二パーツ2Bの分割面64とを合わせる。
さらに第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとが一体に合わさった状態で、鎹82をその先端部82A,82Bを第三外壁部70の受部72A,72Bに嵌めて、第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとを固定する。
これにより、電極板200を空間S1に収容した第一梱包体が完成する。この第一梱包体を、第一実施形態と同様に袋400に収容することで(第二梱包工程)、梱包製品としての第二梱包体が完成する。
【0035】
このように、鎹82で第一パーツ2Aと第二パーツ2Bとを一体に合わさった状態を保持することができ、第一パーツ2Aと第二パーツ2Bが電極板200から外れることを防止し、電極板200を袋収容用具1の貫通穴100に安定して収容することができる。また、第二梱包体は袋収容用具2と袋400との間に第一空間SP1及び第二空間SP2を備え、袋収容用具2を用いることで、電極板200は袋400と非接触に収容することができる。
また、第一変形例の袋収容用具2も、第一実施形態の袋収容用具1と同様に、異物が電極板200に付着することを防止することができる。これにより、電極板200を用いたプラズマ処理を好適に行うことができる。
【0036】
(第二変形例)
図6(a)に示す第二変形例のリング状の袋収容用具3は、第一実施形態の袋収容用具1と比べると、リング状態の形態の分割構造が異なり、袋収容用具3は平面視で中心(中心軸C)まわりに二分割されており、第一角度の範囲を構成する第一パーツ3Aと、第二角度の範囲を構成する第二パーツ3Bと、これらが一体に合わさった状態を保持する第一鎹83及び第二鎹84(本実施形態の固定部材)と、備えている。例えば第一角度と第二角度は180度に設定されているが、角度は限定されるものではない。
図6(a)に示すように、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとは分割面65,66を合わせて一体になった状態で、これらは協働して電極板200を固定するためのリング部10A(内周面10)を構成する。以下、第一実施形態の袋収容用具1等の構成と同じ構成には同じ符号を用いて説明し、また図面に表し、それらの詳細な説明は省略する。また、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとは、第一実施形態のパーツ1Aと比べると、中心(中心軸C)まわりの角度に対応した寸法が相違するが、構成はパーツ1Aと同様である。
袋収容用具3では、
図6(b)に示すように、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとは分割面65,66を合わせて一体になった状態で、第一鎹83の折れ曲がった一方の先端部83Aが嵌る受部42Aを第一パーツ3Aの第一外壁部40に有し、他方の先端部83Bが嵌る受部42Bを第二パーツ3Bの第一外壁部40に有し、さらに、第二鎹84の折れ曲がった一方の先端部84Aが嵌る受部52Aを第一パーツ3Aの第二外壁部50に有し、第二鎹84の他方の折れ曲がった先端部84Bが嵌る受部52Bを第二パーツ3Bの第二外壁部50に有する。
図6(b)は、第一鎹83及び第二鎹84が受部42A,42B,52A,52Bから外れている状態を表している。
第一鎹83は、第一パーツ3Aの第一外壁部40と第二パーツ3Bの第一外壁部40とに架け渡して配置され、第二鎹84は、第一パーツ3Aの第二外壁部50と第二パーツ3Bの第二外壁部50とに架け渡して配置される。
図示例の袋収容用具3では、第一外壁部40側に二本の第一鎹83を取り付け、第二外壁部50側に二本の第二鎹84を取り付けているが、第一鎹83と第二鎹84の数は図示例に限られるものではなく、また第一鎹83の数と第二鎹84の数とは相違してもよく、さらに第一鎹83及び第二鎹84の一方を省いて構成することもできる。
また、受部42A,42B,52A,52Bは凹部として、或いは貫通した穴として形成することができる。
【0037】
袋収容用具3を用いた電極板200の梱包は、例えば、先ず第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとで電極板200の周縁部210と周縁隣接部220の一部を覆うと共に、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bの分割面65,66を合わせて、袋収容用具3の貫通穴100に電極板200を収容する。
電極板200は第一角部E1を第一内壁面110に当てて、鏡面処理された一方の面201を第一内壁面110とは実質非接触に配置する。また電極板200は反対側の第三角部E3を第二内壁面120に当てて、鏡面処理された第二ステップ面202Cを第二内壁面120とは実質非接触に配置する。これにより、電極板200がリング部10Aで支持され、貫通穴100の一定の位置に保持される。
このように、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとが一体に合わさった状態で、第一鎹83を第一パーツ3A及び第二パーツ3Bの第一外壁部40に形成された受部42A,42Bに嵌め、さらに第二鎹84を第一パーツ3A及び第二パーツ3Bの第二外壁部50に形成された受部52A,52Bに嵌めて、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとを固定する。
これにより、電極板200を空間S1に収容した第一梱包体が完成する。この第一梱包体を、第一実施形態と同様に袋400に収容する(第二梱包工程)。
第二梱包工程では、ポリエチレンなどの合成樹脂からなる袋400に第一梱包体を入れた後に、袋400の内部のエアを真空引きなどで除き、封をすることで、
図6(C)に示す梱包製品としての第二梱包体500′が完成する。
第二変形例の袋収容用具3と袋400とを用いて電極板200を梱包した第二梱包体500′では、第一開口部41に対応して設けられる袋400の一部が第一開口カバー部410′として第一鎹83によって第一筒部20の第一開口41から離間して配置され、第一開口部41に対応して設けられる袋400の他の一部が第二開口カバー部420′として第二鎹84によって第二筒部30の第二開口51から離間して配置されて、第一梱包体の電極板200で露出した箇所も袋400で覆われる。第一鎹83や第二鎹84を備えた袋収容用具3を用いて梱包した第二梱包体500′においても、電極板200の一方の面201と第一開口カバー部410′との間には、第一内壁面110と第一筒部20とで囲われる第一空間SP1が配置されて、電極板200の一方の面201が袋400(第一開口カバー部410′)と離れている。
さらに、電極板200の一方の面201とは反対側においても、電極板200の他方の面202と、第二開口カバー部420′との間には、第二内壁面120と第二筒部30とで囲われる第二空間SP2が配置されて、電極板200の他方の面202が袋400(第二開口カバー部420′)と離れている。
図6(c)では、第一開口41と第に開口51を二点鎖線で表している。
なお、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとを固定する固定部材としては、第一鎹83及び第二鎹84に代えて、例えば外周面に溝部を設けて、弾性リングを溝部に装着してもよい。
【0038】
このように、第一鎹83と第二鎹84とで第一パーツ3Aと第二パーツ3Bとを一体に合わさった状態を保持することができる。これにより、第一パーツ3Aと第二パーツ3Bが電極板200から外れることを防止し、電極板200を袋収容用具3の貫通穴100に一層安定して収容することができる。
また、第二変形例の袋収容用具3も、第一実施形態の袋収容用具1と同様に、異物が電極板200に付着することを防止することができる。これにより、電極板200を用いたプラズマ処理を好適に行うことができる。
さらに、
図6(c)に示すように、第一鎹83が第一外壁部40に架け渡されて第一筒部20の第一開口41の上に配置され、第二鎹84が第二外壁部50に架け渡されて第二筒部30の第二開口51の上に配置されることで、袋400が第一筒部20や第二筒部30に入り込むことを抑え、袋400が電極板200に接触することを一層防止することができる。なお
図6(c)では、第一パーツ3Aの分割面65,66が表れている。
【0039】
(第三変形例)
図7(a)に示す第三変形例のリング状の袋収容用具4は、第二変形例のリング状の袋収容用具3と同様に、平面視で中心(中心軸C)まわりに二分割されており、第一角度の範囲を構成する第一パーツ4Aと、第二角度の範囲を構成する第二パーツ4Bと、これらが一体に合わさった状態を保持する第一鎹83及び第二鎹84(本実施形態の固定部材)と、備えている。
袋収容用具4を構成する第一パーツ4Aと第二パーツ4Bは、第二変形例の袋収容用具3の第一パーツ3A及び第二パーツ3Bと比べると、袋収容用具4の外周面の形状が相違する。以下、第一実施形態の袋収容用具1等の構成と同じ構成には同じ符号を用いて説明し、また図面に表し、それらの詳細な説明は省略する。
【0040】
第一パーツ4Aの外周面75は、
図7(b)に示す作業テーブルなどの平面90に載せる接地面75Aと、接地面75Aの端から延びた第一側面75B及び第二側面75Cと、第一側面75B及び第二側面75Cの端から延びていて第二パーツ4Bに合わさる二つの分割面75D,75Eと、これらの分割面75D,75Eの間に配置された内周面形成部75Gと、を備えている。
内周面形成部75Gは、
図7(c)に示すように、第一内壁面110や第二内壁面120を有するリング部10A(内周面10)の一部を形成する溝状の内周面形成部75Hと、第一筒部20の一部を形成する第二内周面形成部75Iと、第二筒部30の一部を形成する第三内周面形成部75Jと、からなる。
第二パーツ4Bの外周面76も、
図7(b)に示すように、作業テーブルなどの平面90に設置可能に形成された接地面76Aと、接地面76Aの端から延びた第一側面76B及び第二側面76Cと、第一側面76B及び第二側面76Cの端から延びていて第一パーツ4Aの分割面75D,75Eに合わさる二つの分割面76D,76Eと、これらの分割面76D,76Eの間に配置された内周面形成部76Gと、を備えている。
内周面形成部76Gは、内周面形成部75Gと同様、
図7(c)に示すように、第一内壁面110や第二内壁面120を有するリング部10A(内周面10)の一部を形成する溝状の内周面形成部76Hと、第一筒部20の一部を形成する第二内周面形成部76Iと、第二筒部30の一部を形成する第三内周面形成部76Jと、からなる。
これら第一パーツ4Aと第二パーツ4Bとが分割面75D,75E,76D,76Eを合わせて一体になると、第一パーツ4Aの内周面形成部75Gと第二パーツ4Bの内周面形成部76Gとがリング部10A(内周面10)と第一筒部20と第二筒部30とを構成する。
【0041】
袋収容用具4を用いた梱包方法では、
図7(b)に示すように、例えば第一パーツ4Aの接地面75Aを作業テーブルなどの平面に当てて第一パーツ4Aを立たせると、内周面形成部75Gが上方に向けて口を開けた溝を構成する。そして電極板200を第一パーツ4Aの内周面形成部75Gに差し込んだ後に、第一パーツ4Aから突出している電極板200の上部を第二パーツ4Bで覆うと共に、第二パーツ4Bの分割面76E,76Fを第一パーツ4Aの分割面76E,76Fに合わせる。
さらに、第一パーツ4Aと第二パーツ4Bとを第一鎹83及び第二鎹84とで固定して、第一梱包体を作製することができる。この第一梱包体に、第一実施形態と同様に袋400を被せることで(第二梱包工程)、梱包製品としての第二梱包体が完成する。なお、第一パーツ4Aと第二パーツ4Bとを固定する固定部材としては、第一鎹83及び第二鎹84に代えて、例えば外周面に溝部を設けて、例えばゴム製の弾性リングを溝部に装着してもよい。
【0042】
このように、第一鎹83と第二鎹84とで第一パーツ4Aと第二パーツ4Bとを一体に合わさった状態を保持することができる。これにより、第一パーツ4Aと第二パーツ4Bが電極板200から外れることを防止し、電極板200を袋収容用具4の貫通穴100に安定して収容することができる。
また、第一パーツ4Aと第二パーツ4Bとを立たせて、梱包を行うことができる。
さらに、第三変形例の袋収容用具4も、第一実施形態の袋収容用具1と同様に、異物が電極板200に付着することを防止することができる。これにより、電極板200を用いたプラズマ処理を好適に行うことができる。
【0043】
本発明は前記の実施形態の説明や図示例に限らず実施をすることができる。
(第二内壁面)
前記の説明では、電極板の第一角部E1とは反対側のエッジとして、第三角部E3を第二内壁面120に当てて、電極板200を袋収容用具の貫通穴100に収容する形態を説明したが、
図8(a)に示すように、第二内壁面120が他方の面202の最大径の周縁を成す第二角部E2に当るようにリング部10A(内周面10)を構成することもできる。この場合、第二内壁面120が中心軸Cに対する傾きの角度θ2′が、第二角部E2と第三角部E3とを通る仮想線L3の中心軸Cに対する傾きの角度θ3′よりも大きく(θ3′<θ2′)設定される。なお、
図8(a)では中心軸Cと平行な仮想線を破線L4,L5で表している。
また、袋収容用具は、段差部230を設けずに構成された電極板200′をリング部10Aで固定して用いることもできる。この場合には、
図8(b)に示すように、電極板200′の一方の面201′の端に形成される第一角部E1′を第一内壁面110に当て、電極板200′の他方の面202′の端に形成される第二角部E2′を第二内壁面120に当てて、電極板200′をリング部10Aで固定する。
前記の袋収容用具では、内周面10、第一筒部20、第二筒部30、第一外壁部40、第二外壁部50、第三外壁部70を設けた構成を挙げたが、製造方法によっては、第一筒部20、第二筒部30、第一外壁部40、第二外壁部50、第三外壁部70の内、少なくとも一部を省いて構成することもできる。例えば、実施形態では袋収容用具1を第一外壁部40側から第二外壁部50側まで貫通する貫通穴100を設けたが、第二筒部30を省いてこの第二筒部30の箇所も電極板200から離れて電極板200を覆うカバー部35として構成した袋収容用具1Aは、
図8(b)に示すように、電極板200の収容空間SP′から袋収容用具外部へ通じる貫通穴100Aがリング部10Aと第一筒部20とが連なって第一外壁部40側に構成され、袋収容用具1Aの収容空間SP′に電極板200を収容した第一梱包体では、電極板200の一方の面201の一部が第一筒部20を介して袋収容用具外部に露出する。この第一梱包体を袋400に入れ更に内部のエアを真空引きなどで除いた梱包体500″では、
図8(c)に示すように、電極板200の面201と袋400との間には、リング部10Aと第一筒部20とで囲われる第一空間SP1が配置されて、袋400が電極板200に接触することを防止できる。
また、第一内壁面で一方の角部を受け、第二内壁面で、反対側にある他方の角部を受ける構成を含めたものであれば、内周面10、第一筒部20、第二筒部30、第一外壁部40、第二外壁部50、第三外壁部70の形状は、前記の説明や図示例に限らず変形させることができる。例えば、
図8(d)では、第三外壁部70が省いた断面形状を示している。図示例では、第一内側接続部21や第二内側接続部31が円形に形成され、これらから延びた第一筒部20、第二筒部30の内周面が円筒面に形成されているが、第一内側接続部21や第二内側接続部31を矩形にし、第一筒部20、第二筒部30の内周面を角筒状などに形成することもできる。第一筒部20や第二筒部30は内周面の形状が外周面の形状と異なるように、例えば内周面が円筒状であるのに対して外周面が角筒状に形成されてもよい。
また、袋収容用具を構成するパーツも、それぞれ複数の部品を組み立てて構成されたものでもよい。
パーツ同士が合わさる分割面も凹凸状に形成されてもよい。
袋収容用具のリング部で覆われる円形部材の周縁領域は図示例の範囲に限らず、第一内壁面110で覆われる第一角部E1から中心C′への範囲を、さらに第二内壁面110が当る第三角部E3から中心C′への範囲を、または第二内壁面110が当る第二角部E2から中心への範囲を変えてもよい。
実施形態の袋収容用具はリング状に形成されているが、第一開口41と第二開口51を省いて、これらの箇所も板状部材から離間して板状部材を覆う箇所として構成されてもよい。
【0044】
(板状部材)
板状部材としての電極板200では、その段差部230の第一ステップ面202Aの中心(中心軸C)から延びる半径に沿った幅寸法wと、段差面202Bの中心軸Cに沿った高さ寸法hとの比率は図示例に限られるものではない。また、電極板は図示を省略するがエッチングガスが通るガス流路を複数設けたものでもよい。
袋収容用具が収容する板状部材は、電極板やスパッタリングターゲット材に限らず、中央が貫通して形成されたリング部材など、平面視で外形が円形に形成されたものを収容することができる。
板状部材の外形は円形に限らず、楕円形でもよい。
【0045】
(第一梱包工程)
前記の実施形態では、弾性リングなどの固定部材で各パーツを固定したが、固定部材を用いずに板状部材を袋収容用具に収容して第一梱包体とし、この第一梱包体を袋に入れた後、袋内を真空引きして各パーツを袋で固定させることもできる。
【実施例0046】
袋を用いて梱包された
図2に示す電極板200を、小型環境試験機に入れて温度と湿度が異なる二つの環境(第一環境、第二環境)下に交互に晒す加速試験を行い、この加速試験後に電極板を取り出して、その表面に発生した微小異物を確認する。
袋収容用具1で周縁部210と周縁隣接部220を覆った状態で袋に入れ、真空引きしたものを試料Aとし、袋収容用具1を用いずに電極板200を袋に入れ、真空引きして袋を電極板に密着させたものを試料Bとする。袋はポリエチレン(LDPE:低密度ポリエチレン)からなる。なお、試料Aでは、電極板200の第一角部E1を第一内壁面110に当て、第三角部E3を第二内壁面120に当てて、電極板200を貫通穴100に収容した。
加速試験は、第一試験環境から第二試験環境を経て当初の第一試験環境に戻ることを1サイクルとして、これを10サイクル繰り返した。
第一試験環境は、温度を40℃、湿度を85%とし、この雰囲気に試料A,Bを180分間晒す。第二試験環境は、温度を5℃、湿度を50%とし、この雰囲気に試料A,Bを60分間晒す。なお、第一試験環境から第二試験環境への移行と、第二試験環境から第一試験環境への移行の時間を、それぞれ30分間とし、1サイクルの試験時間は、計300分に設定した。
【0047】
(微小異物の発生評価方法)
加速試験を経た電極板200の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、微小異物の有無を観察した。微小異物としては、「スマッジ」と「パーティクル」を対象とする。
ここで、スマッジとは、暗室で、1000ルーメン以上のLED電灯からの距離を1cm,3cm,5cmとし、様々な角度から照射した際に、目視観測できる白い曇りのような汚れ(おおよそ1um以上のもの)である。スマッジの測定では、
図9の角度において角度αは30°,45°,80°、角度βを0°,60°,120°,180°,240°,320°の範囲でそれぞれ測定した。LEDの距離が3通り、角度αが3通り、角度βが6通りあるため、全54通りの条件でスマッジの有無を測定した。
また、パーティクルとは、暗室で、300ルーメン以上のLED電灯からの距離を1cm,3cm,5cmとし、様々な角度から照射した際に、目視観測できる点状異物(おおよそ1um以上のもの)である。パーティクルの測定では、
図9の角度において角度αは30°,45°,80°、角度βを0°,60°,120°,180°,240°,320°の範囲でそれぞれ測定した。全54通りの条件でパーティクルの有無を測定した。
なお、観察は、日本電子株式会社製の走査型電子顕微鏡『JSM-IT500HR』を入射電圧15kV、測定倍率を1000倍として行った。
【0048】
(結果)
試料Aでは、スマッジやパーティクルが見つからなかった。
図10(a)は、試料Aのスマッジの測定の際に走査型電子顕微鏡で撮像した画像である。なお、画像中の一つの白い点は観察の際の焦点を合わせるためのスマッジである。
試料Bでは、スマッジ、パーティクルのいずれも10か所以上見つかった。
図10(b)は、試料Bのスマッジの測定の際に走査型電子顕微鏡で撮像した画像であり、白い斑点状の汚れが多数見受けられる。