(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121562
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240830BHJP
B62D 1/08 20060101ALI20240830BHJP
B62D 1/10 20060101ALI20240830BHJP
B62D 1/06 20060101ALI20240830BHJP
G01B 7/00 20060101ALI20240830BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D1/08
B62D1/10
B62D1/06
G01B7/00 101C
B62D113:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028720
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大舘 正太郎
【テーマコード(参考)】
2F063
3D030
3D232
【Fターム(参考)】
2F063AA02
2F063BA08
2F063BA29
2F063BD15
2F063CA09
2F063DA01
2F063DA02
2F063DA05
2F063DC08
2F063DD02
2F063HA01
3D030DB13
3D030DB19
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA04
3D232DA09
3D232DA10
3D232DA23
3D232DA91
3D232DC34
3D232EB04
3D232EC22
3D232EC34
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】低車速時における操舵操作の負担を軽減する。
【解決手段】運転制御装置3は、ステアリングホイール22に設けられ、運転者の手がステアリングホイール22に接近するのに応じて検出値が変化するように構成された接近センサ35と、運転者による車両1の操舵操作に応じて車輪17を転舵するステアリング装置7と、ステアリング装置7を制御する制御装置15と、を備え、制御装置15は、接近センサ35の検出値の変化に基づいて、ステアリングホイール22に接近した運転者の手の位置の変化を推定し、推定した運転者の手の位置の変化に基づいて、ステアリングホイール22に接近した運転者の手の移動態様を推定し、車両1の車速が所定の閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様がステアリングホイール22の周方向に沿った態様である場合に、ステアリング装置7に車輪17を転舵させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転制御装置であって、
運転者による車両の操舵操作を受け付けるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに設けられ、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて検出値が変化するように構成された接近センサと、
運転者による前記車両の操舵操作に応じて車輪を転舵するステアリング装置と、
前記ステアリング装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記接近センサの検出値の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の変化を推定し、
推定した運転者の手の位置の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の移動態様を推定し、
前記車両の車速が所定の閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記ステアリングホイールの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させる運転制御装置。
【請求項2】
前記接近センサは、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて静電容量が変化するように構成された複数の静電容量センサを含み、
前記制御装置は、
前記複数の静電容量センサの静電容量の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の時系列的な変化を推定し、
推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動方向及び移動速度を推定する請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、算出した運転者の手の移動方向及び移動速度に基づいて、前記車輪の転舵方向及び転舵速度を決定する請求項2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
前記ステアリングホイールは、環状のリムを有し、
前記接近センサは、運転者の手が前記リムに接近するのに応じて、運転者の手が前記リムに対して非接触な状態で静電容量が変化し始めるように構成された静電容量センサを含む請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車両の車速が前記閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記リムの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させる請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記ステアリングホイールは、
前記ステアリングホイールの回転軸線上に設けられるハブと、
前記ステアリングホイールの径方向において前記ハブの外側に設けられる環状のリムと、
前記ステアリングホイールの径方向に延びて前記ハブと前記リムを連結する複数のスポークと、を備え、
前記接近センサは、前記ハブ及び/又は前記複数のスポークに配置された複数の静電容量センサによって構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記複数のスポークは、
前記ハブから右方に延びる右側スポークと、
前記ハブから左方に延びる左側スポークと、を含み、
前記複数の静電容量センサは、
前記右側スポークに配置される第1右側静電容量センサと、
前記第1右側静電容量センサの下方において前記右側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2右側静電容量センサと、
前記左側スポークに配置される第1左側静電容量センサと、
前記第1左側静電容量センサの下方において前記左側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2左側静電容量センサと、を含む請求項6に記載の運転制御装置。
【請求項8】
前記接近センサは、
前記ステアリングホイールの右側部に配置される右側センサと、
前記ステアリングホイールの左側部に配置される左側センサと、を含み、
前記右側センサと前記左側センサの検出値が交互に変化する場合に、前記制御装置は、運転者の手の移動態様の推定結果を無効にすることを制限する請求項1~5のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中の脆弱な立場にある人々に配慮し、このような人々に持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。その実現に向けて、運転支援技術に関する開発を通して、交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発が注目されている。特に、運転支援技術に関する開発として、運転制御装置に関する開発が注目されている。
【0003】
例えば、運転者による車両の操舵操作を受け付けるステアリングホイールと、運転者による車両の操舵操作に応じて車輪を転舵するステアリング装置と、ステアリング装置を制御する制御装置と、を備えた運転制御装置が知られている。
【0004】
このような運転制御装置において、低車速時における操舵操作には、大きな力が必要になる。特に、停車時における操舵操作(所謂「据え切り」)には、大きな力が必要になる。そこで、一般的な運転制御装置には、低車速時における操舵操作をアシストするためのパワーステアリング装置が設けられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パワーステアリング装置によって低車速時における操舵操作をアシストしても、低車速時における操舵操作には依然としてある程度の力が必要である。そのため、比較的力の弱い運転者(例えば、高齢の運転者)にとっては、低車速時における操舵操作が依然として負担になっており、車両の商品性の向上のために改善の余地が残されている。
【0007】
本発明は、以上の背景に鑑み、低車速時における操舵操作の負担を軽減することを課題とし、延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、運転制御装置(3)であって、運転者による車両(1)の操舵操作を受け付けるステアリングホイール(22)と、前記ステアリングホイールに設けられ、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて検出値が変化するように構成された接近センサ(35)と、運転者による前記車両の操舵操作に応じて車輪(17)を転舵するステアリング装置(7)と、前記ステアリング装置を制御する制御装置(15)と、を備え、前記制御装置は、前記接近センサの検出値の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の変化を推定し、推定した運転者の手の位置の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の移動態様を推定し、前記車両の車速が所定の閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記ステアリングホイールの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させる。
【0009】
この態様によれば、停車時を含む低車速時において、運転者は、ステアリングホイールの周方向に沿って手を移動させることで、ステアリングホイールを把持して回転させなくても、車両を旋回させることができる。言い換えると、低車速時において、運転者は、ステアリングホイールの周方向に沿ったジェスチャーを行うことで、ステアリングホイールに対する直接的な操舵操作(例えば、据え切り)を行わなくても、車両を旋回させることができる。そのため、ステアリングホイールの持ち替え等を含む煩雑な操舵操作が不要となり、低車速時における操舵操作の負担を軽減することができる。延いては、持続可能な輸送システムの発展に寄与することができる。
【0010】
上記の態様において、前記接近センサは、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて静電容量が変化するように構成された複数の静電容量センサ(53~54、56~57)を含み、前記制御装置は、前記複数の静電容量センサの静電容量の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の時系列的な変化を推定し、推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動方向及び移動速度を推定しても良い。
【0011】
この態様によれば、運転者の手の位置の時系列的な変化を監視することで、運転者の手の移動方向及び移動速度を正確に推定することができる。
【0012】
上記の態様において、前記制御装置は、算出した運転者の手の移動方向及び移動速度に基づいて、前記車輪の転舵方向及び転舵速度を決定しても良い。
【0013】
この態様によれば、運転者のジェスチャーの方向及び速度に基づいて、車輪の転舵方向及び転舵速度を決定することができる。これにより、ステアリング装置による車輪の自動的な転舵に運転者の意思を反映させることができるため、運転者の違和感を低減することができる。
【0014】
上記の態様において、前記ステアリングホイールは、環状のリム(44)を有し、前記接近センサは、運転者の手が前記リムに接近するのに応じて、運転者の手が前記リムに対して非接触な状態で静電容量が変化し始めるように構成された静電容量センサ(53~54、56~57)を含んでも良い。
【0015】
この態様によれば、運転者の手がリムに対して非接触な状態であっても、静電容量センサの静電容量に基づいて、運転者のジェスチャーを認識することができる。そのため、運転者は、リムに接触することなく車両を旋回させることができる。従って、運転者の手がリムに接触することを必要とするセンサ(例えば、接触式の感圧センサ)を用いて運転者のジェスチャーを認識する場合と比べて、運転者の手がリムに接触する頻度を減らすことができる。これにより、リムの外表面の経年劣化を抑制する効果が期待される。
【0016】
上記の態様において、前記制御装置は、前記車両の車速が前記閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記リムの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させても良い。
【0017】
この態様によれば、運転者がリムの周方向に沿ったジェスチャーを行っている最中に車輪の転舵状態が急変しても、運転者はすぐにリムを把持してステアリングホイールに対する直接的な操舵操作を行うことができる。そのため、車両の安全性を高めることができる。
【0018】
上記の態様において、前記ステアリングホイールは、前記ステアリングホイールの回転軸線(A)上に設けられるハブ(43)と、前記ステアリングホイールの径方向において前記ハブの外側に設けられる環状のリム(44)と、前記ステアリングホイールの径方向に延びて前記ハブと前記リムを連結する複数のスポーク(45~47)と、を備え、前記接近センサは、前記ハブ及び/又は前記複数のスポークに配置された複数の静電容量センサ(53~54、56~57)によって構成されていても良い。
【0019】
この態様によれば、静電容量センサを構成する電極がハブ及び/又は複数のスポークに配置される。これにより、静電容量センサを構成する電極が環状のリムの内部にインサート成形される場合と比較して、静電容量センサの設置コストを削減することができる。そのため、ステアリングホイール全体の製造コストを削減することができる。
【0020】
上記の態様において、前記複数のスポークは、前記ハブから右方に延びる右側スポーク(45)と、前記ハブから左方に延びる左側スポーク(46)と、を含み、前記複数の静電容量センサは、前記右側スポークに配置される第1右側静電容量センサ(53)と、前記第1右側静電容量センサの下方において前記右側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2右側静電容量センサ(54)と、前記左側スポークに配置される第1左側静電容量センサ(56)と、前記第1左側静電容量センサの下方において前記左側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2左側静電容量センサ(57)と、を含んでも良い。
【0021】
この態様によれば、複数の静電容量センサが複数のスポークのみに配置される場合や、複数の静電容量センサがハブのみに配置される場合と比較して、複数の静電容量センサの検出範囲を広げることができる。そのため、複数の静電容量センサをリムに配置しなくても、運転者の手の移動態様を正確に推定することができる。
【0022】
上記の態様において、前記接近センサは、前記ステアリングホイールの右側部に配置される右側センサ(53~54)と、前記ステアリングホイールの左側部に配置される左側センサ(56~57)と、を含み、前記右側センサと前記左側センサの検出値が交互に変化する場合に、前記制御装置は、運転者の手の移動態様の推定結果を無効にすることを制限しても良い。
【0023】
この態様によれば、運転者がリムの周方向に沿ったジェスチャーを行っていないにも拘わらず、運転者の手の移動態様がステアリングホイールの周方向に沿った態様であると誤って推定してしまうのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上の態様によれば、低車速時における操舵操作の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る運転制御装置が適用された車両を示す機能構成図
【
図2】本発明の一実施形態に係るステアリングホイールを示す正面図
【
図3】本発明の一実施形態に係る操舵アシスト制御を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0026】
<車両1>
まず、
図1を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る運転制御装置3が適用された車両1について説明する。例えば、車両1は、自動車である。他の実施形態では、車両1は、自動車以外の車両(例えば、2輪車)であっても良い。
【0027】
車両1は、駆動装置5と、ブレーキ装置6と、ステアリング装置7と、HMI8(Human Machine Interface)と、運転操作子9と、ナビゲーション装置10と、外界センサ11と、車両センサ12と、運転者センサ13と、制御装置15と、を有する。以下、車両1の構成要素について順番に説明する。
【0028】
駆動装置5は、車両1に駆動力を付与する装置である。駆動装置5は、車両1を走行させるための駆動力を発生させる駆動源を含む。例えば、駆動源は、内燃機関及び/又は電動モータによって構成されている。
【0029】
ブレーキ装置6は、車両1に制動力を付与する装置である。例えば、ブレーキ装置6は、ブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダと、を含む。
【0030】
ステアリング装置7は、運転者による車両1の操舵操作に応じて車輪17を転舵することで、車輪17の舵角を変える装置である。例えば、ステアリング装置7は、車輪17に接続されたラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータと、を含む。
【0031】
HMI8は、車両1の乗員(例えば、運転者)に対して情報を提示すると共に、乗員による情報の入力を受け付ける装置である。HMI8は、タッチパネル19と、音声出力装置20と、を含む。タッチパネル19は、乗員に対して各種画面を表示すると共に、乗員による各種画面に対する入力操作を受け付ける。音声出力装置20は、音声ガイダンスや警告音等を出力する。
【0032】
運転操作子9は、運転者による運転操作を受け付ける装置である。運転操作子9は、運転者による車両1の操舵操作を受け付けるステアリングホイール22と、運転者による車両1の加速操作を受け付けるアクセルペダル23と、運転者による車両1の制動操作を受け付けるブレーキペダル24と、を含む。なお、ステアリングホイール22の詳細は、後述する。
【0033】
ナビゲーション装置10は、車両1の目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置10は、人工衛星から受信したGNSS信号に基づいて、車両1の現在位置を特定する。ナビゲーション装置10は、車両1の現在位置と乗員がタッチパネル19に入力した車両1の目的地とに基づいて、車両1の目的地までの経路を設定する。
【0034】
外界センサ11は、車両1の外界の状態を検出する装置である。外界センサ11は、複数のカメラ26と、複数のレーダ27と、複数のライダ28(LiDAR)と、を含む。各カメラ26は、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)の画像を撮影する。各レーダ27は、ミリ波等の電波を車両1の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。各ライダ28は、赤外線等の光を車両1の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、車両1の周囲に存在する物標の位置を検出する。
【0035】
車両センサ12は、各種の車両状態を検出するセンサである。車両センサ12は、車両1の車速を検出する車速センサ30と、車両1の左右方向の加速度(横加速度)を検出する加速度センサ31と、運転者による車両1の操舵操作に応じて発生する操舵トルクを検出する操舵トルクセンサ32と、を含む。
【0036】
運転者センサ13は、運転者の状態を検出する装置である。運転者センサ13は、ドライバモニタカメラ34と、接近センサ35と、を含む。ドライバモニタカメラ34は、運転者の画像を撮影する。接近センサ35は、ステアリングホイール22に設けられ、運転者の手がステアリングホイール22に接近するのに応じて静電容量(検出値)が変化するように構成されている。なお、接近センサ35の詳細は、後述する。
【0037】
制御装置15は、HMI8、運転操作子9、ナビゲーション装置10、外界センサ11、車両センサ12、及び、運転者センサ13と共に、運転制御装置3を構成している。
【0038】
制御装置15は、各種処理を実行するように構成されたコンピュータからなる電子制御装置(ECU)である。制御装置15は、演算処理装置(CPU、MPU等のプロセッサ)と、記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)と、を含む。演算処理装置は、記憶装置から必要なソフトウェアを読み取り、読み取ったソフトウェアに従って所定の演算処理を実行する。制御装置15は、1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。制御装置15は、CAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークによって車両1の各構成要素に接続されており、車両1の各構成要素を制御する。
【0039】
制御装置15は、機能的な構成要素として、外界認識部37と、走行制御部38と、運転支援制御部39と、移動態様推定部40と、を含む。制御装置15の機能的な構成要素の少なくとも一部は、LSI、ASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0040】
外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の外界の状態を認識する。例えば、外界認識部37は、外界センサ11の検出結果に基づいて、車両1の周囲に存在する物標(前走車等の周辺車両、歩行者、道路上の構造物、区画線等)を認識する。
【0041】
走行制御部38は、運転者による運転操作子9に対する運転操作に応じて、車両1の走行を制御する。例えば、走行制御部38は、運転者によるステアリングホイール22に対する車両1の操舵操作に応じてステアリング装置7を制御し、車両1を旋回させる。走行制御部38は、運転者によるアクセルペダル23に対する車両1の加速操作に応じて駆動装置5を制御し、車両1を加速させる。走行制御部38は、運転者によるブレーキペダル24に対する車両1の制動操作に応じてブレーキ装置6を制御し、車両1を減速させる。
【0042】
運転支援制御部39は、外界認識部37の認識結果に基づいて、車両1の先進運転支援制御(ADAS:Advanced Driver Assistance Systems)を実行する。以下、先進運転支援制御のことを、「運転支援制御」と略称する。
【0043】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、追従走行制御(ACC:Adaptive Cruise Control)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、ACCの実行時に、車両1を前走車に所定の車間距離を保って追従走行させるべく、駆動装置5及びブレーキ装置6を制御する。
【0044】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、車線維持支援制御(LKAS;Lane Keeping Assistance System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、LKASの実行時に、車両1が車線内の走行位置を維持するように運転者による車両1の操舵操作を支援すべく、ステアリングホイール22及びステアリング装置7を制御する。
【0045】
運転支援制御部39は、運転支援制御として、衝突軽減ブレーキ制御(CMBS:Collision Mitigation Brake System)を実行可能に設けられている。運転支援制御部39は、CMBSの実行時に、車両1と車外の物体との衝突を軽減すべく、ブレーキ装置6を制御する。
【0046】
移動態様推定部40は、接近センサ35の静電容量に基づいて、ステアリングホイール22に接近した運転者の手の位置を推定する。移動態様推定部40は、推定した運転者の手の位置に基づいて、運転者の手の移動態様、移動方向、及び移動速度を推定する。なお、運転者の手の移動態様、移動方向、及び移動速度の推定方法の詳細は、後述する。
【0047】
以下、説明の便宜上、制御装置15の機能的な構成要素を区別せずに、単に「制御装置15」と記載する。
【0048】
<ステアリングホイール22の構成>
次に、
図2を参照しつつ、ステアリングホイール22の構成について説明する。以下、単に「径方向」と記載する場合には、ステアリングホイール22の径方向を示し、単に「周方向」と記載する場合には、ステアリングホイール22の周方向を示す。
【0049】
ステアリングホイール22は、ステアリングホイール22の回転軸線A上に設けられる円柱状のハブ43と、径方向においてハブ43の外側に設けられる環状のリム44と、径方向に延びてハブ43とリム44を連結する複数のスポーク45~47と、を備えている。
【0050】
ハブ43は、ステアリング装置7に接続されたステアリングシャフト(図示せず)に一体回転可能に連結されている。これにより、ステアリングホイール22がステアリングシャフトに回転可能に支持されている。
【0051】
リム44は、ハブ43に対して径方向に間隔をおいて設けられている。他の実施形態では、リム44がハブ43に直接接続されることで、複数のスポーク45~47が省略されても良い。
【0052】
複数のスポーク45~47は、周方向に間隔をおいて設けられている。複数のスポーク45~47は、ハブ43から右方に延びる右側スポーク45と、ハブ43から左方に延びる左側スポーク46と、ハブ43から下方に延びる下側スポーク47と、を含む。右側スポーク45の後面(運転者側の面)には、矩形状の右側スイッチユニット49が設けられている。例えば、右側スイッチユニット49は、運転支援制御を開始/終了するためのスイッチや、運転支援制御の状態(例えば、ACCの設定車速)を変更するためのスイッチ等を含む。左側スポーク46の後面(運転者側の面)には、矩形状の左側スイッチユニット50が設けられている。例えば、左側スイッチユニット50は、空調装置(図示せず)を操作するためのスイッチや、ナビゲーション装置10を操作するためのスイッチ等を含む。
【0053】
<接近センサ35の構成及び作用>
次に、
図2を参照しつつ、接近センサ35の構成及び作用について説明する。
【0054】
接近センサ35は、第1右側静電容量センサ53と、第2右側静電容量センサ54と、第1左側静電容量センサ56と、第2左側静電容量センサ57と、を含む。第1、第2右側静電容量センサ53~54は、ステアリングホイール22の右側部に配置される右側センサの一例であり、第1、第2左側静電容量センサ56~57は、ステアリングホイール22の左側部に配置される左側センサの一例である。以下、これらを区別しない場合には、「静電容量センサ53~54、56~57」と記載する。
【0055】
静電容量センサ53~54、56~57は、それぞれ、ステアリングホイール22に接近した物体と容量結合可能な電極によって構成されている。運転者の手がステアリングホイール22に接近するのに応じて、運転者の手と静電容量センサ53~54、56~57を構成する電極との距離が短くなると、静電容量センサ53~54、56~57の静電容量(検出値の一例)が上昇する。静電容量センサ53~54、56~57は、運転者の手がステアリングホイール22のリム44に接近するのに応じて、運転者の手がリム44に対して非接触な状態で、静電容量が変化し始めるように構成されている。つまり、静電容量センサ53~54、56~57は、運転者の手がリム44から離間している状態で運転者の手の位置を検出できる感度を有する。
【0056】
第1右側静電容量センサ53は、右側スポーク45に配置されている。第1右側静電容量センサ53は、右側スイッチユニット49の上縁に沿って左右方向に延びる第1延出部61と、第1延出部61の左端部(径方向における内側の端部)から上方に向けて屈曲され、ハブ43の上部外周に沿って延びる第2延出部62と、第1延出部61の右端部(径方向における外側の端部)から下方に向けて屈曲され、右側スイッチユニット49の右縁(外縁)に沿って延びる第3延出部63と、を有する。
【0057】
第2右側静電容量センサ54は、第1右側静電容量センサ53の下方において、右側スポーク45とハブ43とに跨って配置されている。第2右側静電容量センサ54は、右側スイッチユニット49の下縁に沿って左右方向に延びる上側延出部65と、上側延出部65の左端部(径方向における内側の端部)から下方に向けて屈曲され、ハブ43の下部外周に沿って延びる下側延出部66と、を含む。
【0058】
第1左側静電容量センサ56は、左側スポーク46に配置されている。第1左側静電容量センサ56は、第1右側静電容量センサ53と同様に、第1延出部61、第2延出部62、及び、第3延出部63を含む。
【0059】
第2左側静電容量センサ57は、第1左側静電容量センサ56の下方において、左側スポーク46とハブ43とに跨って配置されている。第2左側静電容量センサ57は、第2右側静電容量センサ54と同様に、上側延出部65及び下側延出部66を含む。
【0060】
運転者の手(例えば、右手)がリム44の右上部44R1に接近すると、第1右側静電容量センサ53の静電容量が所定の基準値以上まで上昇する。この場合、制御装置15は、運転者の手がリム44の右上部44R1に接近していると推定する。言い換えると、接近センサ35は、運転者の手がリム44の右上部44R1に接近していることを検出する。
【0061】
運転者の手がリム44の右中央部44R2に接近すると、第1右側静電容量センサ53及び第2右側静電容量センサ54の静電容量が基準値以上まで上昇する。この場合、制御装置15は、運転者の手がリム44の右中央部44R2に接近していると推定する。言い換えると、接近センサ35は、運転者の手がリム44の右中央部44R2に接近していることを検出する。
【0062】
運転者の手がリム44の右下部44R3に接近すると、第2右側静電容量センサ54の静電容量が基準値以上まで上昇する。この場合、制御装置15は、運転者の手がリム44の右下部44R3に接近していると推定する。言い換えると、接近センサ35は、運転者の手がリム44の右下部44R3に接近していることを検出する。
【0063】
運転者の手(例えば、左手)がリム44の左上部44L1、左中央部44L2、左下部44L3に接近すると、制御装置15は、上記と同様の作用により、運転者の手がリム44の左上部44L1、左中央部44L2、左下部44L3に接近していると推定する。言い換えると、接近センサ35は、運転者の手がリム44の左上部44L1、左中央部44L2、左下部44L3に接近していることを検出する。
【0064】
<運転者の手の移動態様、移動方向、及び移動速度の推定>
次に、
図2を参照しつつ、制御装置15が運転者の手の移動態様、移動方向、及び移動速度を推定する方法について説明する。なお、運転者の手がリム44の左側部44L(左上部44L1、左中央部44L2、左下部44L3)に接近又は接触した場合の推定方法と、運転者の手がリム44の右側部44R(右上部44R1、右中央部44R2、右下部44R3)に接近又は接触した場合の推定方法は、同様である。そのため、以下、運転者の手がリム44の左側部44Lに接近又は接触した場合の推定方法のみを説明する。以下、「時計方向」又は「反時計方向」と記載する場合には、車両正面視における「時計方向」又は「反時計方向」を示す。
【0065】
図2に矢印Zで示されるように、運転者の手がリム44の左側部44Lに接近又は接触した状態で、運転者がリム44の左側部44Lの周方向に沿った時計方向のジェスチャーを行うと、第1、第2左側静電容量センサ56~57の静電容量が変化する。
【0066】
例えば、運転者の手が時刻T1においてリム44の左下部44L3に接近すると、第1左側静電容量センサ56の静電容量が基準値未満のまま、第2左側静電容量センサ57の静電容量が基準値以上まで上昇する。
【0067】
次に、運転者の手がリム44の左下部44L3から上方に移動し、時刻T2においてリム44の左中央部44L2に接近すると、第2左側静電容量センサ57の静電容量が基準値以上のまま、第1左側静電容量センサ56の静電容量が基準値以上まで上昇する。
【0068】
次に、運転者の手がリム44の左中央部44L2から上方に移動し、時刻T3においてリム44の左上部44L1に接近すると、第1左側静電容量センサ56の静電容量が基準値以上のまま、第2左側静電容量センサ57の静電容量が基準値未満に下降する。
【0069】
第1、第2左側静電容量センサ56~57の静電容量が時刻T1~T3において上記のように変化すると、制御装置15は、運転者の手の位置が時刻T1~T3においてリム44の左下部44L3、左中央部44L2、左上部44L1の順番で変化したと推定する。このように、制御装置15は、第1、第2左側静電容量センサ56~57の静電容量の変化に基づいて、運転者の手の位置の時系列的な変化を推定する。
【0070】
また、運転者の手の位置が時刻T1~T3において上記の順番で変化したと推定すると、制御装置15は、リム44に接近した運転者の手(以下、単に「運転者の手」と称する)の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であると推定する。このように、制御装置15は、推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動態様を推定する。
【0071】
また、運転者の手の位置が時刻T1~T3において上記の順番で変化したと推定すると、制御装置15は、運転者の手の移動方向が時計方向であると推定する。このように、制御装置15は、推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動方向を推定する。
【0072】
また、運転者の手の位置が時刻T1~T3において上記の順番で変化したと推定すると、制御装置15は、運転者の手の移動距離(リム44の左下部44L3から左上部44L1までの周方向の距離)を運転者の手の移動時間(時刻T1から時刻T3までの時間)で割ることで、運転者の手の移動速度を推定する。このように、制御装置15は、推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動速度を推定する。
【0073】
詳細な説明は省略するが、運転者がリム44の左側部44Lの周方向に沿った反時計方向のジェスチャーを行うと、制御装置15は、上記と同様の作用によって運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であると推定すると共に、運転者の手の移動方向が反時計方向であると推定する。
【0074】
なお、第1、第2左側静電容量センサ56~57と第1、第2右側静電容量センサ53~54の静電容量が交互に変化する場合、制御装置15は、運転者の手の移動態様の推定結果を無効にする。そのため、第1、第2左側静電容量センサ56~57と第1、第2右側静電容量センサ53~54の静電容量が交互に変化する場合、制御装置15は、運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であるとは推定しない。
【0075】
また、運転者の手の移動時間(時刻T1から時刻T3までの時間)が所定時間を超えている場合に、制御装置15は、運転者の手の移動態様の推定結果を無効にする。つまり、運転者の手の移動時間が所定時間を超えている場合に、制御装置15は、運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であるとは推定しない。
【0076】
<操舵アシスト制御>
次に、
図3を参照しつつ、運転者による操舵操作をアシストするための操舵アシスト制御について説明する。例えば、操舵アシスト制御は、車両1の目標駐車位置への駐車時に実行されると良い。
【0077】
操舵アシスト制御が開始されると、制御装置15は、車速センサ30の検出結果に基づいて、車両1の車速が所定の閾値Th以下であるか否かを判定する(ステップST1)。つまり、制御装置15は、車両1が低速状態(停止状態を含む)であるか否かを判定する。本実施形態では、上記の閾値Thは、時速15kmに設定されている。他の実施形態では、上記の閾値Thは、時速15kmよりも低い速度(例えば、時速1km~5km)に設定されていても良いし、時速15kmよりも高い速度に設定されていても良い。また、他の実施形態では、上記の閾値Thが0に設定されていても良い。この場合、制御装置15は、車両1が停止状態であるか否かを判定することになる。
【0078】
車両1の車速が閾値Thを超えている場合(ステップST1:No)、制御装置15は、後述する操舵アシスト処理を実行することなく、操舵アシスト制御を終了する。
【0079】
車両1の車速が閾値Th以下である場合(ステップST1:Yes)、制御装置15は、静電容量センサ53~54、56~57の静電容量の変化に基づいて、所定時間内における運転者の手の位置の時系列的な変化を推定する(ステップST2)。
【0080】
次に、制御装置15は、ステップST2において推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、所定時間内における運転者の手の移動態様を推定する(ステップST3)。
【0081】
次に、制御装置15は、ステップST3において推定した運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であるか否かを判定する(ステップST4)。
【0082】
運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様でないと判定した場合(ステップST4:No)、制御装置15は、後述する操舵アシスト処理を実行することなく、操舵アシスト制御を終了する。
【0083】
運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であると判定した場合(ステップST4:Yes)、制御装置15は、ステップST2において推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、所定時間内における運転者の手の移動方向及び移動速度を推定する(ステップST5)。
【0084】
次に、制御装置15は、ステップST5において推定した運転者の手の移動方向及び移動速度に基づいて、車輪17の転舵方向及び転舵速度を決定する(ステップST6)。例えば、運転者の手の移動方向が時計方向であると推定した場合、制御装置15は、車両1を右方向に旋回させるべく、車輪17の転舵方向を右方向に決定すると良い。一方で、運転者の手の移動方向が反時計方向であると推定した場合、制御装置15は、車両1を左方向に旋回させるべく、車輪17の転舵方向を左方向に決定すると良い。また、制御装置15は、所定の上限車速を超えない範囲において、運転者の手の移動速度が高くなる程、車輪17の転舵速度を高くすると良い。
【0085】
次に、制御装置15は、操舵アシスト処理を実行する(ステップST7)。操舵アシスト処理において、制御装置15は、ステップST6において決定した車輪17の転舵方向及び転舵速度に応じて、ステアリング装置7に車輪17を自動的に転舵させる。
【0086】
次に、制御装置15は、静電容量センサ53~54、56~57の静電容量に基づいて、運転者がステアリングホイール22を把持したか否かを判定する(ステップST8)。
【0087】
運転者がステアリングホイール22を把持したと判定した場合(ステップST8:Yes)、制御装置15は、操舵アシスト制御を終了する。運転者がステアリングホイール22を把持していないと判定した場合(ステップST8:No)、制御装置15は、ステップST1に戻って、車両1の車速が閾値Th以下であるか否かを再び判定する。
【0088】
<効果>
上記のように、制御装置15は、車両1の車速が閾値Th以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様である場合に、ステアリング装置7に車輪17を自動的に転舵させている。これにより、停車時を含む低車速時において、運転者は、リム44の周方向に沿って手を移動させることで、ステアリングホイール22を把持して回転させなくても、車両1を旋回させることができる。言い換えると、低車速時において、運転者は、リム44の周方向に沿ったジェスチャーを行うことで、ステアリングホイール22に対する直接的な操舵操作(例えば、据え切り)を行わなくても、車両1を旋回させることができる。そのため、ステアリングホイール22の持ち替え等を含む煩雑な操舵操作が不要となり、低車速時における操舵操作の負担を軽減することができる。
【0089】
なお、自動駐車制御において、車両1を目標駐車位置に駐車するまでの全工程が自動的に行われる場合がある。しかし、この場合、車両1の旋回動作に運転者の意思を反映させることはできない。これに対して、本実施形態では、運転者のジェスチャーに応じて車両1の旋回動作が行なわれるため、車両1の旋回動作に運転者の意思を反映させることができる。
【0090】
また、ステアリングホイール22のリム44に設けられた複数の入力領域に対する運転者の接触操作に応じて、車載機器が制御される場合がある。しかし、この場合、複数の入力領域に対する運転者の接触操作が必要となるため、ステアリングホイール22に対する運転者の操作が煩雑化する。これに対して、本実施形態では、運転者のジェスチャーに応じて車両1の旋回動作が行なわれるため、ステアリングホイール22に対する運転者の接触操作が不要となり、ステアリングホイール22に対する運転者の操作を簡易化することができる。
【0091】
<変形例>
本実施形態では、制御装置15は、車両1の車速が閾値Th以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様である場合に、ステアリング装置7に車輪17を自動的に転舵させている。他の実施形態では、制御装置15は、車両1の車速が閾値Th以下であり、推定した運転者の手の移動態様がリム44の周方向に沿った態様であり、且つ、車輪17の現在の舵角が所定の基準角度以下である場合に、ステアリング装置7に車輪17を自動的に転舵させても良い。
【0092】
本実施形態では、制御装置15は、推定した運転者の手の移動方向及び移動速度に基づいて、車輪17の転舵方向及び転舵速度を決定している。他の実施形態では、制御装置15は、推定した運転者の手の移動距離に基づいて、車輪17の転舵量(ステアリング装置7が車輪17を転舵する角度)を決定しても良い。例えば、制御装置15は、推定した運転者の手の移動距離が長くなる程、車輪17の転舵量を大きくすると良い。
【0093】
本実施形態では、静電容量センサ53~54、56~57は、ハブ43及び複数のスポーク45~47に配置されている。他の実施形態では、静電容量センサ53~54、56~57は、ハブ43のみに配置されていても良いし、複数のスポーク45~47のみに配置されていても良い。
【0094】
上記実施形態では、接近センサ35は、ステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサ53~54、56~57を2個ずつ備えている。他の実施形態では、接近センサ35は、ステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサを1個ずつ備えていても良いし、3個以上ずつ備えていても良い。例えば、上記実施形態における第1右側静電容量センサ53及び第1左側静電容量センサ56の第3延出部63が第1延出部61及び第2延出部62に対して別体化されることで、接近センサ35がステアリングホイール22の右側部と左側部に静電容量センサを3個ずつ備えていても良い。
【0095】
上記実施形態では、接近センサ35は、ステアリングホイール22のハブ43、右側スポーク45、及び、左側スポーク46に静電容量センサ53~54、56~57を備えている。他の実施形態では、接近センサ35は、ステアリングホイール22のリム44に静電容量センサを備えていても良い。
【0096】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 :車両
3 :運転制御装置
7 :ステアリング装置
15 :制御装置
17 :車輪
22 :ステアリングホイール
35 :接近センサ
43 :ハブ
44 :リム
45 :右側スポーク
46 :左側スポーク
47 :下側スポーク
53 :第1右側静電容量センサ(右側センサの一例)
54 :第2右側静電容量センサ(右側センサの一例)
56 :第1左側静電容量センサ(左側センサの一例)
57 :第2左側静電容量センサ(左側センサの一例)
A :回転軸線
Th :閾値
【手続補正書】
【提出日】2024-02-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転制御装置であって、
運転者による車両の操舵操作を受け付けるステアリングホイールと、
前記ステアリングホイールに設けられ、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて検出値が変化するように構成された接近センサと、
運転者による前記車両の操舵操作に応じて車輪を転舵するステアリング装置と、
前記ステアリング装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記接近センサの検出値の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の変化を推定し、
推定した運転者の手の位置の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の移動態様を推定し、
前記車両の車速が所定の閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記ステアリングホイールの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させる運転制御装置。
【請求項2】
前記接近センサは、運転者の手が前記ステアリングホイールに接近するのに応じて静電容量が変化するように構成された複数の静電容量センサを含み、
前記制御装置は、
前記複数の静電容量センサの静電容量の変化に基づいて、前記ステアリングホイールに接近した運転者の手の位置の時系列的な変化を推定し、
推定した運転者の手の位置の時系列的な変化に基づいて、運転者の手の移動方向及び移動速度を推定する請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、算出した運転者の手の移動方向及び移動速度に基づいて、前記車輪の転舵方向及び転舵速度を決定する請求項2に記載の運転制御装置。
【請求項4】
前記ステアリングホイールは、環状のリムを有し、
前記接近センサは、運転者の手が前記リムに接近するのに応じて、運転者の手が前記リムに対して非接触な状態で静電容量が変化し始めるように構成された静電容量センサを含む請求項1に記載の運転制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記車両の車速が前記閾値以下であり、且つ、推定した運転者の手の移動態様が前記リムの周方向に沿った態様である場合に、前記ステアリング装置に前記車輪を転舵させる請求項4に記載の運転制御装置。
【請求項6】
前記ステアリングホイールは、
前記ステアリングホイールの回転軸線上に設けられるハブと、
前記ステアリングホイールの径方向において前記ハブの外側に設けられる環状のリムと、
前記ステアリングホイールの径方向に延びて前記ハブと前記リムを連結する複数のスポークと、を備え、
前記接近センサは、前記ハブ及び/又は前記複数のスポークに配置された複数の静電容量センサによって構成されている請求項1~5のいずれか1項に記載の運転制御装置。
【請求項7】
前記複数のスポークは、
前記ハブから右方に延びる右側スポークと、
前記ハブから左方に延びる左側スポークと、を含み、
前記複数の静電容量センサは、
前記右側スポークに配置される第1右側静電容量センサと、
前記第1右側静電容量センサの下方において前記右側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2右側静電容量センサと、
前記左側スポークに配置される第1左側静電容量センサと、
前記第1左側静電容量センサの下方において前記左側スポークと前記ハブとに跨って配置される第2左側静電容量センサと、を含む請求項6に記載の運転制御装置。
【請求項8】
前記接近センサは、
前記ステアリングホイールの右側部に配置される右側センサと、
前記ステアリングホイールの左側部に配置される左側センサと、を含み、
前記右側センサと前記左側センサの検出値が交互に変化する場合に、前記制御装置は、運転者の手の移動態様の推定結果を無効にする請求項1~5のいずれか1項に記載の運転制御装置。