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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012157
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ラマン分光装置及びラマン分光法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240118BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20240118BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20240118BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
G01N21/65
G02B21/06
G02B21/00
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114321
(22)【出願日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】2210391.5
(32)【優先日】2022-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520143993
【氏名又は名称】アンドール・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Andor Technology Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー コルム デニス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード シムズ
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043CA05
2G043DA06
2G043EA03
2G043FA02
2G043FA06
2G043HA02
2G043HA07
2G043HA09
2G043JA03
2G043JA04
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA09
2G043LA03
2H052AA08
2H052AB01
2H052AC04
2H052AC12
2H052AC13
2H052AC15
2H052AC18
2H052AC34
2H052AD18
2H052AD20
2H052AD32
2H052AD34
2H052AF07
2H052AF14
(57)【要約】      (修正有)
【解決手段】ラマン分光装置100は、オブジェクト55からの光を、分光器14に、光路に沿って伝送する結像光学系30を備える。走査デバイスは、光路と交差し、光路に対して移動可能である。光は、走査デバイス上に誘導され、オブジェクトを複数の照明ポイント66において照明する。結像光学系は、オブジェクトから照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を中間結像面に伝送し、走査デバイスは、中間結像面に位置しており、ラマン散乱光を中間結像面から分光器に伝送する。
【効果】従来の共焦点ラマン分光法と比較して、本装置は、試料のラマン分析を、より迅速に実行することができ、従来のライン走査ラマン分光法と比較して、本装置は、ラマン分析を、より正確に実行することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光器と、
オブジェクトからの光を光路に沿って前記分光器に伝送するように構成された結像光学系と、
光源を備え、前記光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するように構成された照射光学系と、
複数の開口を備える走査デバイスであって、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である走査デバイスと、
を備え、
前記照射光学系は、前記光を前記走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、
前記結像光学系は、前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送し、前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するように構成されている、
ラマン分光装置。
【請求項2】
前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を前記分光器の入力焦点面に集光するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分光器が、複数のビームの線形アレイであって、各ビームが、前記照明ポイントのそれぞれ1つからのラマン散乱光で構成されている、ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記分光器は、複数の光ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記分光器は、前記複数のビームの線形アレイを受信するためのスリットを画定する形状を有する入口開口を備え、前記入口開口は、好ましくは、前記分光器の前記入力焦点面に位置している、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記照射光学系は、前記複数の照明ポイントが線形アレイに配置されるように構成されている、
請求項1から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
請求項5に従属する場合、前記結像光学系は、前記照明ポイントの線形アレイからの光を前記スリットに結像するか、又は、伝送するように構成されている、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記ラマン散乱光の測定を少なくとも1回実行するように構成されており、各測定において、前記装置は、複数のラマンスペクトルを検出し、各ラマンスペクトルは、前記照明ポイントのそれぞれ1つに対応している、
請求項1から7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記測定を複数回実行するように構成されており、各測定において、前記ラマンスペクトルは、複数の照明ポイントの組のそれぞれに対応しており、各照明ポイントの組は、前記オブジェクトの異なる領域に対応しており、各照明ポイントの組は、好ましくは、前記オブジェクトの線形領域のそれぞれに対応している、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記領域が前記オブジェクトのターゲット領域を集合的にカバーするように、前記オブジェクトを走査するように構成されている、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記オブジェクトと、前記オブジェクトの領域であって、当該領域に対して各回の測定が実行される、前記オブジェクトの領域と、の間の相対移動を生じさせるための走査手段を含む、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記走査手段は、前記オブジェクトを前記照射光学系に対して移動させるための手段、前記光源からの前記光を前記オブジェクトに対して走査するように構成された走査システム、及び/又は、前記分光器の入口開口を移動させるための手段のうち何れか1つ以上を備える、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
光検出器が、前記分光器の出口開口に、典型的には前記分光器の出口焦点面に設けられている、
請求項1から12の何れか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、ラマン分光法、及び/又は、ラマンイメージングを実行するように構成されているか、又は、構成可能であり、ラマンイメージングモードにおいて、前記照射光学系は、前記オブジェクトのターゲット領域を複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、前記結像光学系は、前記照明ポイントからの、選択された1つ以上の波長範囲内のラマン散乱光を検出することによって、前記ターゲット領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成されている、
請求項1から13の何れか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記結像光学系は、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように構成可能な分光フィルタを含む、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路内に位置し、前記分光器に、前記選択された1つ以上の波長範囲内の光を透過するように構成されている、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路に出入り可能であるか、又は、前記選択可能な波長範囲のうち全ての波長範囲内の光を同時に通過させるように構成可能である、
請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
ラマン分光モードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散するように構成され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散しないように構成され、前記分光器は、好ましくは、ラマン画像を前記分光器の入口から出口まで中継するように構成されている、
請求項14から17の何れか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記分光器は、少なくとも1つの分散素子を備え、前記少なくとも1つの分散素子は、前記分光器の前記入口と前記出口との間の光路に出入り可能であり、前記少なくとも1つの分散素子は、前記ラマン分光モードにおいて前記光路内に位置しており、前記ラマンイメージングモードにおいて前記光路外に位置しているか、又は、前記少なくとも1つの分散素子は、分散状態と非分散状態との間で構成可能である、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記分光器は、前記光路に出入り可能な、少なくとも1つの非分散素子を備え、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子と前記光路内で置き換わる、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つの分散素子及び前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子が前記光路内に位置している分散状態と、前記少なくとも1つの非分散素子が前記光路内に位置している非分散状態と、の間で移動可能なアセンブリの上に設けられている、
請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記分光フィルタは、光検出器の前の前記光路内に位置しており、前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を、前記分光器、及び/又は、前記光検出器に誘導するための誘導手段を含む、
請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記誘導手段は、ビームスプリッタ、ミラー、又は、任意の他の好適な光学ビームスイッチング素子若しくはビーム誘導素子を備える、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記誘導手段は、ラマン分光モードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記分光器に誘導され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記光検出器に誘導されるように、前記光路に対して移動可能であるか、又は、調整可能である、
請求項22又は23に記載の装置。
【請求項25】
前記走査デバイスは、前記複数の開口と位置合わせされており、前記光を前記開口の上に集光する、複数のレンズを備える、
請求項1から24の何れか一項に記載の装置。
【請求項26】
前記走査デバイスは、回転可能な走査ディスクを備える、
請求項1から25の何れか一項に記載の装置。
【請求項27】
請求項25に従属する場合、前記走査デバイスは、回転可能なレンズディスクであって、当該レンズディスク内に前記複数のレンズが設けられている、レンズディスクを含み、前記レンズディスクは、前記走査ディスクと共に回転可能である、
請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成されている、
請求項1から27の何れか一項に記載の装置。
【請求項29】
前記光路内に位置するビームスプリッタであって、前記光源の光と前記ラマン散乱光との一方に対して透過性であり、前記光源の光と前記ラマン散乱光との他方に対して反射性である、ビームスプリッタをさらに含み、前記結像光学系は、前記オブジェクトを、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して結像するか、又は、前記オブジェクトからの光を、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して伝送するように構成されており、前記照射光学系は、前記オブジェクトを、前記ビームスプリッタを介して照明するように構成されている、
請求項1から28の何れか一項に記載の装置。
【請求項30】
前記ビームスプリッタは、前記光源の光に対して透過性であり、前記ラマン散乱光に対して反射性である、
請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記ビームスプリッタは、前記走査デバイスと前記分光器との間に位置している、
請求項29又は30に記載の装置。
【請求項32】
前記分光フィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように、チューニング可能であるか、又は、調整可能である、
請求項15に記載の装置。
【請求項33】
前記照射光学系及び前記結像光学系は、前記オブジェクトを共焦点的に照明し結像するように構成されている、
請求項1から32の何れか一項に記載の装置。
【請求項34】
オブジェクトからの光を光路に沿って分光器に伝送するステップと、
光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するステップと、
前記光を走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するステップであって、前記走査デバイスは、複数の開口を備え、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である、ステップと、
前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送するステップと、
前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するステップと、
を含む、
ラマン分光法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン分光法に関する。本発明は、特に、共焦点ラマン分光法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ及び共焦点顕微鏡を使用する、共焦点ラマン分光法が知られている。この方法は、レーザ光を誘導して単一のピンホールを通過させ、試料を単一のレーザポイントにより照明するステップと、その結果生じた、試料からのラマン散乱光を、同一のピンホール又は他のピンホールを介して収集するステップと、を含む。収集されたラマン光は、単一点ラマンスペクトル取得を実行する、分光計に送られる。ラマン画像が必要な場合、従来技術では、試料が、電動XYステージ又は電動XYZステージを使用して、静止レーザポイントに対して移動される。或いは、レーザが、試料に対して走査される場合もある。何れの場合でも、画像が、ラマンスペクトルから構成され、当該ラマンスペクトルは、一度に1つずつ照明されるサンプルポイントのそれぞれから個別に取得される。各ポイントについて取得されたスペクトルは、結果として得られるマルチスペクトルラマン画像の、単一の各画素を表す画像データを提供する。しかし、従来のポイント走査ラマン共焦点分光法は、時間がかかる。試料をラスタ走査しなければならず、各ステージ位置において、光の収集のために十分な滞留時間が必要とされる。ラマン効果は、他の電磁効果に比べて非常に弱く、このことが、画像データの収集に時間がかかる、さらなる要因となる。従って、マルチスペクトルラマン画像は、取得に時間がかかるため、比較的小さくなる傾向がある。
【0003】
試料の広視野照明又は大域照明を用いる、非共焦点ラマン分光法も知られている。しかし、広視野ラマン分光法では、典型的には、2つの主な理由により、画像がぼやけてしまう。第一に、試料の均一な広視野照明を実現することは非常に困難であるため、レーザの明るさに視野内にわたってばらつきが生じ得る。第二に、ほとんどのラマン試料は、非常に散乱性が高い。入射光子の大部分は、弾性散乱し、且つ、非弾性散乱し、ラマン光子になる前に、複数回跳ね返り得る。ラマン光子は、収集され検出される前に、試料の周囲で跳ね返り得る。これは、ある分子種のラマン信号が、その分子種が存在しない場所から観測される可能性が、大いにあることを意味する。この結果、画像がぼやける。
【0004】
ライン走査ラマン分光法又はライン照明ラマン分光法は、ハイブリッド形式のラマン分光法であり、当該ラマン分光法によって、試料が光のラインにより照明され、ラマン散乱が、ラマン信号を検出するために使用される分光計の焦点面に位置するスリットへ誘導され、当該スリットを通して集光される。この形式のラマン顕微鏡では、このスリットが、分光器のスリットに垂直な軸において共焦点開口として機能するものの、このスリットの軸には、共焦点開口がない。この形式のラマン分光法は、真に共焦点的であるとはみなし得ない。
【0005】
上記の問題を軽減することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様から、本発明は、ラマン分光装置を提供し、このラマン分光装置は、
分光器と、
オブジェクトからの光を光路に沿って前記分光器に伝送するように構成された結像光学系と、
光源を備え、前記光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照射するように構成された照射光学系と、
複数の開口を備える走査デバイスであって、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である走査デバイスと、
を備え、
前記照射光学系は、前記光を前記走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、
前記結像光学系は、前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送し、前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するように構成されている。
【0007】
従来の共焦点ラマン分光法と比較して、前記装置の好ましい実施形態は、試料のラマン分析を、より迅速に実行することができ、従来のライン走査ラマン分光法と比較して、前記装置の好ましい実施形態は、ラマン分析を、より正確に実行することができる。
【0008】
好ましくは、前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を前記分光器の入力焦点面に集光するように構成されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記分光器が、複数のビームの線形アレイであって、各ビームが、前記照明ポイントのそれぞれ1つからのラマン散乱光で構成されている、ビームの線形アレイを受信するように、前記装置が構成されている。
【0010】
前記分光器は、複数の光ビームの線形アレイを受信するように構成されているか、又は、構成可能であり得る。前記分光器は、前記複数のビームの線形アレイを受信するためのスリットを画定する形状を有する入口開口を備え得、前記入口開口は、好ましくは、前記分光器の前記入力焦点面に位置している。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記照射光学系は、前記複数の照明ポイントが線形アレイ状に配置されるように構成されている。前記結像光学系は、前記照明ポイントの線形アレイからの光を前記スリットに結像するか、又は、伝送するように構成され得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記装置は、前記ラマン散乱光の測定を少なくとも1回実行するように構成されており、各測定において、前記装置は、複数のラマンスペクトルを検出し、各ラマンスペクトルは、前記照明ポイントのそれぞれ1つに対応している。前記装置は、前記測定を複数回実行するように構成され得、各測定において、前記ラマンスペクトルは、複数の照明ポイントの組のそれぞれに対応しており、各照明ポイントの組は、前記オブジェクトの異なる領域に対応しており、各照明ポイントの組は、好ましくは、前記オブジェクトの線形領域のそれぞれに対応している。任意に、前記装置は、前記領域が前記オブジェクトのターゲット領域を集合的にカバーするように、前記オブジェクトを走査するように構成されている。任意に、前記装置は、前記オブジェクトと、前記オブジェクトの領域であって、当該領域に対して各回の測定が実行される、前記オブジェクトの領域と、の間の相対移動を生じさせるための走査手段を含む。典型的には、前記走査手段は、前記オブジェクトを前記照射光学系に対して移動させるための手段、前記光源からの前記光を前記オブジェクトに対して走査するように構成された走査システム、及び/又は、前記分光器の入口開口を移動させるための手段のうち何れか1つ以上を備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、光検出器が、前記分光器の出口開口に、典型的には前記分光器の出口焦点面に設けられている。
【0014】
好ましい実施形態において、前記装置は、ラマン分光法、及び/又は、ラマンイメージングを実行するように構成されているか、又は、構成可能であり、ラマンイメージングモードにおいて、前記照射光学系は、前記オブジェクトのターゲット領域を複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、前記結像光学系は、前記照明ポイントからの、選択された1つ以上の波長範囲内のラマン散乱光を検出することによって、前記ターゲット領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成されている。前記結像光学系は、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように構成可能な分光フィルタを含み得る。前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路内に位置し得、前記分光器に、前記選択された1つ以上の波長範囲内の光を透過するように構成されている。任意に、前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路に出入り可能であるか、又は、前記選択可能な波長範囲のうち全ての波長範囲内の光を同時に通過させるように構成可能である。
【0015】
任意に、ラマン分光モードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散するように構成され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散しないように構成され、前記分光器は、好ましくは、ラマン画像を前記分光器の入口から出口まで中継するように構成されている。前記分光器は、少なくとも1つの分散素子を備え得、前記少なくとも1つの分散素子は、前記分光器の前記入口と前記出口との間の光路に出入り可能であり、前記少なくとも1つの分散素子は、前記ラマン分光モードにおいて前記光路内に位置しており、前記ラマンイメージングモードにおいて前記光路該に位置しているか、又は、前記少なくとも1つの分散素子は、分散状態と非分散状態との間で構成可能である。任意に、前記分光器は、前記光路に出入り可能な、少なくとも1つの非分散素子を備え、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子と前記光路内で置き換わる。任意に、前記少なくとも1つの分散素子及び前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子が前記光路内に位置している分散状態と、前記少なくとも1つの非分散素子が前記光路内に位置している非分散状態と、の間で移動可能なアセンブリの上に設けられている。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記分光フィルタは、光検出器の前の前記光路内に位置しており、前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を、前記分光器、及び/又は、前記光検出器に誘導するための誘導手段を含む。典型的には、誘導手段は、ビームスプリッタ、ミラー、又は、任意の他の好適な光学ビームスイッチング素子(複数可)若しくはビーム誘導素子(複数可)を備える。任意に、前記誘導手段は、ラマン分光モードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記分光器に誘導され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記光検出器に誘導されるように、前記光路に対して移動可能であるか、又は、調整可能である。
【0017】
典型的な実施形態において、前記走査デバイスは、前記複数の開口と位置合わせされており、前記光を前記開口の上に集光する、複数のレンズを備える。好ましくは、前記走査デバイスは、回転可能な走査ディスクを備える。好ましくは、前記走査デバイスは、回転可能なレンズディスクであって、当該レンズディスク内に前記複数のレンズが設けられている、レンズディスクを含み、前記レンズディスクは、前記走査ディスクと共に回転可能である。
【0018】
典型的には、前記光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成されている。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記装置は、前記光路内に位置するビームスプリッタであって、前記光源の光と前記ラマン散乱光との一方に対して透過性であり、前記光源の光と前記ラマン散乱光との他方に対して反射性である、ビームスプリッタを含み、前記結像光学系は、前記オブジェクトを、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して結像するか、又は、前記オブジェクトからの光を、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して伝送するように構成されており、前記照射光学系は、前記オブジェクトを、前記ビームスプリッタを介して照明するように構成されている。前記ビームスプリッタは、好ましくは、前記光源の光に対して透過性であり、前記ラマン散乱光に対して反射性である。好ましくは、前記ビームスプリッタは、前記走査デバイスと前記分光器との間に位置している。
【0020】
好ましくは、前記分光フィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように、チューニング可能であるか、又は、調整可能である。
【0021】
好ましい実施形態において、前記照射光学系及び前記結像光学系は、前記オブジェクトを共焦点的に照明し結像するように構成されている。
【0022】
好ましくは、前記照射光学系は、レーザ帯域通過フィルタであって、好ましくは、前記光源と前記走査デバイスとの間に位置している、レーザバンドパスフィルタを含む。
【0023】
好ましくは、前記結像光学系は、フィルタであって、好ましくは、前記走査デバイスと前記光検出器との間の前記光路内に位置しており、前記光源からの前記光に対応する波長帯域の光を拒絶するように構成されている、フィルタを含む。
【0024】
前記光検出器、又は、各光検出器は、電子画像センサであって、例えば、CCD検出器若しくはEMCCD検出器を備える、電子画像センサ、又は、任意の他の好適なデジタル画像センサを備え得、任意に、デジタルカメラに組み込まれ得、若しくは、デジタルカメラを備え得、及び/又は、前記光検出器は、光学分光分析器であって、例えば、分光計又は分光器を備える、光学分光分析器を備える。
【0025】
前記分光フィルタは、(a)1つ以上の固定波長帯域の光を通過させるように構成された光学フィルタ、若しくは、例えば液晶チューナブルフィルタ(LCTF:liquid crystal tuneable filter)などのチューナブル光学フィルタ、(b)音響光学チューナブルフィルタ(AOTF:acousto-optic tuneable filter)、(c)フィルタホイール若しくは他の可動キャリッジ上の複数の異なるフィルタ、(d)旋回可能なフィルタホイール上の複数の波長/角度チューナブルフィルタ、(e)ファブリペローエタロンと組み合わせて使用される、複数の広帯域通過フィルタ、又は、(f)サブトラクティブ方式ダブルモノクロメータのうち何れか1つを備え得る。
【0026】
前記分光フィルタ、及び/又は、前記少なくとも1つの光学分光分析器は、前記走査デバイスと前記光検出器との間の前記光路内に位置し得るか、又は、前記少なくとも1つの光学分光分析器は、前記光検出器として機能する。
【0027】
ビームスプリッタは、典型的には、前記走査ディスクと前記分光器の間に位置しており、好ましくは、前記走査ディスクの近傍に位置している。
【0028】
1つ以上の光学偏光子が、前記照射光学系内に設けられ得、前記偏光子又は各偏光子は、好ましくは、前記光源と前記走査デバイスとの間に位置している。
【0029】
1つ以上の偏光分析器が、前記結像光学系内に設けられ得、前記偏光分析器は、好ましくは、前記分光フィルタ又は分光分析器の前に位置している。
【0030】
他の態様から、本発明は、ラマン分光法を提供し、このラマン分光法は、
オブジェクトからの光を光路に沿って分光器に伝送するステップと、
光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するステップと、
前記光を走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するステップであって、前記走査デバイスは、複数の開口を備え、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である、ステップと、
前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送するステップと、
前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するステップと、
を含む。
【0031】
前記方法は、前記ラマン散乱光の測定を少なくとも1回実行するステップを含み得、各測定において、複数のラマンスペクトルが検出され、各ラマンスペクトルは、前記照明ポイントのそれぞれ1つに対応している。前記方法は、前記測定を複数回実行するステップを含み得、各測定において、前記ラマンスペクトルは、複数の照明ポイントの組のそれぞれに対応しており、各照明ポイントの組は、前記オブジェクトの異なる領域に対応しており、各照明ポイントの組は、好ましくは、前記オブジェクトの線形領域のそれぞれに対応している。任意に、前記方法は、前記領域が前記オブジェクトのターゲット領域を集合的にカバーするように、前記オブジェクトを走査するステップを含む。
【0032】
前記方法は、ラマン分光法、及び/又は、ラマンイメージングを実行するステップを含み得、ラマンイメージングモードにおいて、前記方法は、前記オブジェクトのターゲット領域を複数の照明ポイントにおいて照明するステップと、前記照明ポイントからの、選択された1つ以上の波長範囲内のラマン散乱光を検出することによって、前記ターゲット領域の少なくとも1つのラマン画像を取得するステップと、を含む。
【0033】
任意に、ラマン分光モードにおいて、前記方法は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散するステップを含み、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記方法は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散しない。
【0034】
本発明のさらなる有利な態様が、以下の具体的な実施形態の説明を検討し、添付図面を参照することで、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明の実施形態が、以下、例示として、添付図面を参照しながら説明され、当該添付図面中、同等の部分を示すために同等の符号が使用されている。
【0036】
図1図1は、本発明の一態様を具現化した走査ディスク共焦点ラマン分光装置の概略図である。
図2図2は、試料、ライン走査データ収集の一環として分析された試料の一部、カメラにおいて収集されたイメージの表現、及び、点であって、当該点から光が収集された、点における試料の組成に対応する、関連するラマンスペクトルを図示する。
図3図3は、図1の装置の一部である、分光器の側面図である。
図4図4は、分光器の平面図である。
図5図5は、分光器の第1の代替実施形態の平面図である。
図6図6は、分光器の第2の代替実施形態の平面図である。
図7図7は、本発明を具現化する代替走査ディスク共焦点ラマン分光装置の概略図である。
図8図8は、図1又は図7の装置における使用に好適な走査ディスクアセンブリの第1の実施形態の概略図である。
図9図9は、図1又は図7の装置における使用に好適な走査ディスクアセンブリの第2の実施形態の概略図である。
図10図10は、図1又は図7の装置における使用に好適な走査ディスクアセンブリの第3の実施形態の概略図である。
図11A図11Aは、試料が図8の走査ディスクアセンブリを使用して照明されたときの、スリット開口形態の分光器の入口開口の正面図である。
図11B図11Bは、試料が図9の走査ディスクアセンブリを使用して照明されたときの、スリット開口形態の分光器の入口開口の正面図である。
図11C図11Cは、試料が図9の走査ディスクアセンブリを使用して照明されたときの、広開口形態の分光器の入口開口の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ここで、図面を参照すると、本発明の一態様を具現化するラマン分光装置が、全体的に100として示され、図示されている。装置100は、好ましい実施形態において、スピニングディスク(又は走査ディスク)共焦点顕微鏡である光学顕微鏡を備え得る。好ましい実施形態において、装置100は、共焦点ラマン分光装置と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、以下により詳細に説明するように、装置100は、ラマン散乱光を使用して試料の画像を取得するように構成可能であり、従って、ラマンイメージング装置、特に共焦点ラマンイメージング装置として動作可能である。
【0038】
装置100は、分析対象となるオブジェクト、すなわち試料、55を受けるためのステージ20を含む。試料55は、通常、標本を、典型的には、生物学的標本、半導体標本、結晶標本、又は、化学標本を含み、スライド、又は、他のホルダ(図示せず)の中、又は、上に配置され得る。オブジェクト55は、対物面内に配置される。
【0039】
装置100は、分光器14、すなわち、光学分光分析器を含む。分光器14は、典型的には、入口開口74であって、当該入口開口74によって光が分光器14に入射し得る、入口開口74と、受光した光を波長ごとに分散、すなわち分離し、1つ以上の対応するスペクトルを生成するための少なくとも1つの分散素子(図1には図示せず)と、を有する。これは、波長分散と呼ばれることがある。分散された光は、検出器76に誘導され、当該検出器76は、典型的には、スペクトル又は各スペクトルを検出する、出口開口78に、又は、その近傍に位置している。特に、検出器76は、出口焦点面に位置し得、分光器14は、分散された光を出口焦点面の上に集光するように構成されている。典型的には、(反射性又は透過性であり得る)1つ以上の回折格子、又は、1つ以上のプリズム、又は、格子(複数可)とプリズム(複数可)の組み合わせが、光を分散するために設けられている。分光器14は、典型的には、必要に応じて光を集光、コリメート、誘導、拡散、及び/又は、調整するための、ミラー(複数可)、及び/又は、レンズ(複数可)などの、1つ以上の他の光学素子を含む。分光器14は、従来の構成、又は、実質的に従来の構成を有し得、例えば、用途に応じて、エシェル構成、ツェルニーターナー構成、又は、シュミット・ツェルニーターナー構成を有し得る。好ましい実施形態において、分光器14は、光を、一次元のみに、好ましくは、光が単一平面内で分散されるように、分散するように構成されている。
【0040】
好ましい実施形態において、検出器76は、分析対象となるスペクトル範囲に応じて、例えば、CCD検出器若しくはEMCCD検出器を備える電子画像センサ(図示せず)、又は、例えば、InGaAs検出器、CMOS検出器、InSb検出器、Ge検出器、若しくはMCD検出器などの、任意の他の好適なデジタル画像センサを備える。検出器76は、デジタルカメラ、又は、デジタル画像センサを備える他の装置に組み込まれ得、又は、これを備え得る。他の実施形態(図示せず)において、検出器76は、必ずしも画像センサを備える必要はなく、代わりに、1つ以上の他の従来の光学検出デバイス、例えば、1つ以上の単一画素検出器、又は、ライン検出器を備え得る。
【0041】
装置100は、オブジェクト55における画像を、分光器14に、光路に沿って中継するように構成された、結像光学系30を含む。好ましい構成は、試料55からのラマン光が、典型的には入口開口74に位置している分光器14の入力焦点面に集光される、構成である。結像光学系30は、オブジェクト、すなわち試料55を分光器14に結像する、又は、オブジェクト、すなわち試料55の画像を、分光器に、光学的に伝送する、若しくは、光学的に中継する、と言える。
【0042】
結像光学系30は、典型的には、少なくとも1つのレンズを備え、任意に、少なくとも1つのミラーを備え、オブジェクト55からの光を分光器14に誘導するように配置された一連の光学デバイスを備える。結像光学系30の一連の光学デバイスは、対物レンズ7を含む。対物レンズ7は、典型的には、オブジェクト面に対して垂直な光軸を有する。対物レンズ7は、例えば複合顕微鏡対物レンズなどの顕微鏡対物レンズであると便利であるものの、平凸(PCX)レンズ、色消しレンズ、非球面レンズ、カセグレンレンズ、又は、他の対物レンズを使用してもよい。一連の光学デバイスの具体的な組成及び構成は、当業者には明らかなように、実施形態ごとに異なり得、本明細書では、本発明を理解する上で有用な構成要素のみが図示され説明されている。
【0043】
好ましい実施形態において、結像光学系30の一連の光学デバイスは、オブジェクト55の中間画像を中間結像面において形成するように構成されている。この目的のために、結像光学系30は、典型的には、対物レンズ7と共に中間画像を形成するように構成された、チューブレンズ、又は、他のレンズ(複数可)(図示せず)を備える。走査ディスク11が、中間結像面に位置しており、光路と交差している。走査ディスク11は、回転可能であり、一般的にピンホールと呼ばれる開口のアレイを備える。そのため、走査ディスク11は、スピニングディスク、又は、スピニングピンホールディスクと呼ばれることもある。好ましくは、第2の回転可能なディスク15が、走査ディスク11と共に回転するために、走査ディスク11に結合されている。ディスク11、15は、典型的には、共通の回転軸9に固定されており、シャフトに連動して回転する。第2のディスク15は、レンズ、又は、マイクロレンズのアレイを備え、スピニングレンズディスク、又は、コレクタディスクと呼ばれることがある。ディスク11、15は、スピニングディスクアセンブリを共に形成し、ディスク11、15の配置は、レンズに入射した光がピンホール上に集光されるように、レンズアレイとピンホールアレイとが互いに位置合わせされた、配置である。レンズディスク15は、省略され得るものの、これにより、光の使用が非効率になり、得られる画像の信号対雑音比に悪影響を与え得る。ディスク11、15の何れか一方、又は、両方は、一般的にニポウディスクと呼ばれるタイプのものであり得る。
【0044】
装置100は、ディスクアセンブリ11、15を、その中心軸の周りで(例えば回転軸9を介して)回転させるための、任意の好適な駆動手段(図示せず)を含み得る。駆動手段は、ディスクアセンブリの回転軸に結合されたモータを、通常は電気モータを典型的に備える。ディスク11、15は、用途の要件に適合する、任意の速度で回転し得る。例えば、いくつかの実施形態において、ディスク11、15は、約400RPM、又は、約20,000RPMで回転し得る。典型的には、ディスク11、15は、最大約20,000RPMまでの任意の所望の速度で回転する。
【0045】
代替実施形態(図示せず)において、走査ディスクアセンブリ11、15は、可動構造を有する代替走査デバイスで置き換えられ得、当該可動構造は、典型的には板状であり、複数の開口、すなわちピンホールが当該可動構造内に形成されており、好ましくは、対応する、位置合わせされたレンズ構造に結合されており、ディスクアセンブリ11、15と同一の、又は、同様の方法でオブジェクト55をポイント照明するために、光路に対して移動可能である。走査デバイスは、必ずしも回転可能である必要はないものの、代わりに、光路に対して往復運動又は振動運動するように構成され得る。任意の好適な駆動手段が、この目的のために設けられ得る。ピンホールは、ディスク11、15について説明した方法と同一の、又は、同様の方法で配置され得る。
【0046】
結像光学系30の一連の光学デバイスは、典型的には、オブジェクト55からの光を分光器14に中継するための少なくとも1つのリレーレンズ13、13’を備える、光リレーを含む。図示した実施形態において、光リレーは、この例では、第1及び第2のリレーレンズ13、13’を備え、スピニングディスクアセンブリ11、15と分光器14との間に位置している。結像光学系の一連の光学デバイスは、レンズ、及び、必要に応じて、ミラー(複数可)、並びに/若しくは、ビームスプリッタ(複数可)の、任意の他の好適な配置を含み得ることが理解されるであろう。
【0047】
装置100は、試料55を照射するための照射光学系45を含む。照射光学系45は、好ましい実施形態では、1つ以上のレーザデバイスを備えるものの、代わりに、任意の他の好適な従来の光源、例えば1つ以上のLEDを備え得る光源25を備えるか、又は、光源25に接続可能である。光源25は、当業者には明らかなように、用途に応じて、1つ以上の周波数帯域の光を生成するように構成され得る。例えば、ラマン分光法及びラマンイメージングに適した波長は、488nm、532nm、785nmであるものの、より一般的には、ラマン散乱は、紫外-可視-近赤外の波長範囲の、例えば200nm~1600nmの範囲の光を、好ましくはレーザ光を使用して検出され得る。
【0048】
好ましい実施形態において、照射光学系45は、典型的にはレーザビーム65の形態の光を、オブジェクト55に、結像光学系30により画定された光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、オブジェクト55を照射するように構成されている。
【0049】
任意に、例えば、1つ以上の偏光フィルタ、及び/又は、他の偏光構成要素(複数可)を備える、1つ以上の偏光子26が、照射光65を偏光するために照射光学系45内に設けられている。偏光子26は、試料55に向かう光を偏光する。偏光子26は、光照射経路内の任意の好適な位置に設けられ得る。好ましくは、偏光子26は、光源25と走査ディスクアセンブリ11、15との間に位置している。例えば、研究対象の分子の対称性に関する情報を取得することが所望されている場合には、偏光された光をラマン実験のために使用することが必要とされ得る。
【0050】
任意に、コリメートレンズ29が、ビーム65をコリメートするために、光源とディスクアセンブリとの間に設けられている。
【0051】
任意に、1つ以上の光学フィルタ、例えば、帯域通過フィルタが、ビーム65を用途に適合するように調整するために設けられ得る。好ましい実施形態では、帯域通過フィルタ27が、好ましくは光源25とディスクアセンブリ11、15との間に、好適に狭い波長帯域の励起光65のみが試料55に透過することを確実にするために設けられている。例えば、帯域通過フィルタ27は、選択された励起光の波長を含む、1nm~4nmの間の通過帯域を有するように構成され得る。レーザラインクリーンアップフィルタと呼ばれることもあるタイプのフィルタが、フィルタ27として使用され得る。帯域通過フィルタ27がないと、望まない波長の光が試料に入射し、これにより、その結果得られる散乱光のスペクトル汚染が引き起こされる虞がある。
【0052】
好ましい実施形態において、照射光学系45は、オブジェクト55を、対物レンズ7を通して照射するように構成されている。これを容易にするために、ビームスプリッタ12が、結像光学系30に含まれ得る。ビームスプリッタ12は、光源25によって生成された光に対応する、1つ以上の周波数帯域の光に対して透過性であり、照射されたときにオブジェクト55から発せられる光、特にラマン散乱光に対応する、1つ以上の波長帯域の光に対して反射性である(又は、少なくとも部分的に反射性である)ように構成されている。これに関連して、ラマン散乱光は、典型的には、レーザ波長に対して、概ね-1000cm-1~+4000cm-1の間であり、負のcm-1は、アンチストークス散乱光を示す。ビームスプリッタ12は、オブジェクト55から発せられる光に対応する、1つ以上の反射帯域と、光源25によって生成された光に対応する透過帯域と、を有すると言える。典型的には、ビームスプリッタ12は、ダイクロイックフィルタ、ダイクロイックミラー、又は、他のダイクロイック光学構成要素を備える。光源25は、レーザビーム65を、ビームスプリッタ12を通って光路上に誘導するように配置されており、レーザビーム65は、光路上に誘導されると、オブジェクト55に、対物レンズ7を通って誘導される。ビームスプリッタ12は、走査ピンホールディスク11と分光器14との間に位置しており、典型的には、走査ピンホールディスク11の近傍に位置している。好ましい実施形態において、ビームスプリッタ12は、走査ディスク11とレンズディスク15との間に位置している。ビームスプリッタ12は、本実施例では、光路に沿って、試料55から走査ディスク11を通って分光器14に、光リレー13、13’を介して誘導された光を反射するように配置されている。代替実施形態(図示せず)において、ビームスプリッタ12は、レーザ光に対して反射性であり、ラマン散乱光に対して透過性であり得、照射光学系45及び結像光学系30は、それに応じて構成され得る(例えば、図1に関して、分光器14の位置と光源25の位置とが交換され得る)。
【0053】
好ましい実施形態において、装置100は、スピニングディスク共焦点顕微鏡法を実行するように構成されており、光源25は、レーザビーム65を、スピニングディスクアセンブリ11、15上に、特に(存在する場合には)レンズディスク15上に誘導するように配置されている。光源25からのビーム65は、レンズディスク15に入射し、複数のレンズ17を(又は、レンズディスクが存在しない場合にはピンホールを)同時に照明する。照明された各レンズ17は、それぞれの光ビーム65Aを走査ディスク11のそれぞれのピンホール19上に集光し、各レンズ17は、典型的には、それぞれのピンホール19に位置合わせされている。そのため、複数のピンホールが、同時に照明される。それぞれの光ビーム65Bは、照明された各ピンホール19から出射し、オブジェクト55上に対物レンズ7を介して集光され、オブジェクト55上のそれぞれのポイント66、すなわちスポットを同時に照明する。従って、対物レンズ7は、ピンホールディスク11の出口側の画像を試料55上に中継し、その結果、光(通常はレーザ)スポット66のアレイが試料55上に生じる。オブジェクト55上に入射した光65Bは、入射光又は励起光と呼ばれることがある。ディスク11、15が回転するにつれて、異なるレンズ17及びピンホール19の組が照明され、これにより、オブジェクト55上の対応するポイント66の組が照明される。これと、レンズ17及びピンホール19が配置されているパターンと、の組み合わせにより、試料55の異なる部分がポイント照明される。従って、スピニングディスク11、又は、スピニングディスクアセンブリは、走査装置として機能するように構成されており、これにより、オブジェクト55が、ディスク11、15が回転するにつれてポイント照明される。オブジェクト55は、この照明中、静止したままであり得、すなわち、より具体的には、対物レンズ7とオブジェクト55(又はステージ20)との間の相対移動が生じなくてもよいことに留意されたい。光源25も、典型的には固定されており、すなわち非走査性である。
【0054】
典型的には、ピンホール19の総数は(且つ、好ましい実施形態では、これに対応して、レンズ17の総数も)、数百又は数千のオーダーであり(但し、当該総数は、実施形態に応じて、より多くてもよいし、又は、より少なくてもよく、例えば、数十のオーダーでもよいし、数万のオーダーでもよい)、ピンホール19の一部(通常は、総数の約12分の1~20分の1)が、ディスク11が回転するにつれて、一度に照明され得る。例えば、好ましい実施形態では、400個~2000個のピンホール19が、同時に照明される。従って、任意の瞬間において、オブジェクト55の複数の(例えば、最大で数百又は数千の)点が同時に照明される。これに対応して、以下により詳細に説明するように、複数の(例えば、最大で数百又は数千の)瞬間のデータが、オブジェクト55から同時に取得され得る。そのため、データが、標本から、従来の単一ポイント走査機器を使用した場合よりも、はるかに迅速に、収集され得る。さらに、走査ディスク11を使用することにより、単一ポイント走査機器に比べて比較的高出力のレーザ光を使用することが可能になる。
【0055】
光ビーム65は、コリメートされていることが好ましく、典型的にはレーザ光から構成されている。レンズディスク15に入射する光は、コリメートされている必要はなく、すなわち、コリメートされていない光が使用され得、この場合、レンズディスク15とピンホールディスク11との間の間隔が、必要に応じて補償するために調整され得、及び/又は、それに応じて、レンズ17の焦点距離が、調整され得る。レンズディスク15には入射するものの、レンズには入射しない光は、(通常は非透過性コーティングによって)拒絶される。ピンホールディスク11には入射するもののピンホール17を外れた光も(通常は非透過性コーティングによって)拒絶される。レンズディスク15は、省略され得、その場合、ビーム65は、走査ディスク11に直接入射し得る。
【0056】
典型的な実施形態において、レンズ17及びピンホール19は、例えばアルキメデスパターン又はニポウパターンで、共通の中心点から放射状に広がっている、複数の螺旋アームに配置されている。好ましい配置は、オブジェクト55の均一な照明が実現可能な配置である。上述した走査照明を実現するために、他のパターンが使用され得ることが理解されるであろう。好ましい実施形態において、レンズ17のパターンは、ピンホールのパターンと一致し、レンズ17及びピンホール19は、光の進行方向において、互いに位置合わせされる。
【0057】
好ましくは、ピンホール19は、オブジェクト55上の照射ポイント66、すなわちスポットが、回折限界となる、寸法を有している。或いは、ピンホール19は、回折限界スポットを生成するために必要な大きさよりも大きくてもよく、これにより、照明光の光学スループットと散乱光の光学スループットとの両方が増加するものの、空間分解能/共焦点性が犠牲になる。
【0058】
ピンホール19の直径は、典型的には10μm~100μmの範囲内である。ピンホール19間の間隔は、典型的には1000μmであるものの、ピンホールの数、及び/又は、光学系を通過している画像のサイズなどの要因に応じて、それよりも大きくてもよいし、又は、小さくもよい。蛍光顕微鏡法に比べて、ラマン顕微鏡法は、かなり多くの跳ね返る光子(鏡面散乱光又は拡散散乱光)を生成する試料を分析するステップを含み、その結果、典型的な実施形態では、ピンホール間隔が、蛍光顕微鏡において見受けられるピンホール間隔よりも広い。そのため、所定の照明野/視野について照明されるピンホールが、より少ない。但し、分析対象の試料によっては、跳ね返る光子のレベルが非常に少ない場合があるため、蛍光顕微鏡のピンホール間隔と同一の、又は、同様のピンホール間隔が、有効である場合もある。レンズ17は、これに対応するサイズを有し得、且つ、これに対応する間隔で配置され得る。
【0059】
任意に、スピニングディスク11、又は、該当する場合は、スピニングディスクアセンブリは、任意の好適な搬送手段(図示せず)によって、光路に出入り可能である。スピニングディスク11(又は、スピニングディスクアセンブリ)が、光路内に位置しているとき、装置100は、装置100がスピニングディスク共焦点レーザ顕微鏡法を実行し得る共焦点モードにある。スピニングディスク11(又は、スピニングディスクアセンブリ)が、光路外に位置しているとき、装置100は、広視野ラマン分光法、微分位相差顕微鏡法、明視野顕微鏡法、又は、落射蛍光顕微鏡法を含む、他のタイプの顕微鏡法を実行し得る。
【0060】
光65Bがオブジェクト55に入射すると、(反射、透過、蛍光、非ラマン光散乱、ラマン散乱などを含む)1つ以上の電磁現象が、試料/標本の性質若しくは組成に応じて、及び/又は、入射光65Bの特性に応じて、発生し得る。装置100は、ラマン散乱光、特に自発ラマン散乱光(通常ラマン散乱光、又は、遠視野ラマン散乱光としても知られる)と、増強ラマン散乱光、すなわち近視野ラマン散乱光と、を検出するように構成されている。装置100は、共鳴ラマン光、及び/又は、表面増強ラマン光が存在する場合には、それらを検出することもできる。
【0061】
ラマン散乱光は、試料/標本55によって散乱された、入射光65Bと異なる波長を有する、光から構成されており、すなわち、入射光子が、試料/標本55内の分子(複数可)と相互作用し、その結果、エネルギーが変化し、従って、波長が変化する。ラマン散乱は、非弾性散乱としても知られており、試料/標本内において、入射光に応答して、自発的に発生する。ラマン散乱光は、励起光子が、試料/標本内の分子と、散乱された光子が、励起光子よりも低いエネルギーを有する(つまり、より長い波長を有する(赤方偏移された))ように相互作用した場合におけるラマン散乱光から構成された、ストークス散乱光と、励起光子が、試料/標本内の分子と、散乱された光子が、励起光子よりも高いエネルギーを有する(つまり、より短い波長を有する(青法偏移された))ように相互作用した場合におけるラマン散乱光から構成された、アンチストークス散乱光と、を含んでいる。ラマン散乱光は、オブジェクト55によって発せられ、以下に説明するように検出される。ラマン散乱光は、分析対象となる標本料/試料55の分子との相互作用の結果として生じるため、その特性を、オブジェクト55の特性(例えば、化学組成)の指標を提供するために使用し得る。オブジェクト55の温度も、ラマン散乱光から判定され得、例えば、所定のラマン帯域のストークス信号強度とアンチストークス信号強度の比から導出され得る。
【0062】
非ラマン散乱光は、試料/標本55によって散乱され、且つ、それによって波長が変化していない光である、弾性散乱光から構成されており、すなわち、入射光子は、試料内の分子と相互作用するものの、エネルギー(波長)は変化していない。
【0063】
オブジェクト55が光65Bによって照射されたことに応答して、散乱光が、オブジェクト55から全方向に発せられ、この光の一部が、対物レンズ7を通過する。オブジェクト55は、この光の収集中、静止したままであり、すなわち、より具体的には、対物レンズ7とオブジェクト55(又はステージ20)との間の相対移動が生じないことに留意されたい。光源25も固定されており、すなわち非走査性である。結像光学系30が、この一部の散乱光を、中間結像面であって、当該中間結像面内に走査ディスク11が位置している、中間結像面に誘導する。結像光学系30の構成は、オブジェクト55の現在照明されているポイント66から発する光のみが中間結像面上に集光され、それにより、ピンホール19を通過する、構成である。特に、配置は、オブジェクト上の各照明されたポイント66から発せられる光が、それぞれのピンホール19であって、当該それぞれのピンホール19を通して、当該各ポイント66が照明されている、それぞれのピンホール19を通過する、配置である。照明されたスポット66から発せられる光ではない光、例えば、二次(又は多重)反射からの光は、中間結像面よりも上、若しくは、下で集光するか、又は、ピンホールディスク11には入射するもののピンホールには入射しないため、走査ディスク11によって拒絶され、これは、典型的には、ディスク11上の非透過性コーティングによって容易にされる。
【0064】
従って、光が共焦点的に収集される。ピンホールのサイズと、対物レンズ7の倍率とが、試料55上のレーザスポット66のサイズを決定し、従って、収集されたラマンスペクトルの空間分解能を決定することに留意されたい。光検出器76の画像センサの画素は、検出器76がラマンスペクトルをアンダーサンプルし、その結果、解像度が低下することがないことを確実にするように、適切に選択されるべきである。いくつかの実施形態では、(共焦点顕微鏡法を実行する場合に典型的であるように)回折限界スポットからの光を生成又は収集するために最適化されていない、比較的大きなピンホールを使用することが有益であり得る。この構成は、より多くのラマン光子が測定されるように、(照明されたスポット66のすぐ近くで反射された)反射された/跳ね返った光子の一部を収集することを容易にする。このアプローチによれば、解像度が犠牲になる一方、より強い信号強度が得られる。
【0065】
ピンホール19を通過した散乱光は、(レーザ光65と同一の波長の)弾性散乱された光子と、(励起光65の波長と異なる波長を有する)非弾性散乱されたラマン光子と、を含む、散乱光子から構成されている。走査ディスク11を通過した散乱光は、ラマン散乱光のみが分光器14に到達するように構成された、ビームスプリッタ12に入射する。図示された実施形態において、ビームスプリッタ12は、弾性散乱された光が、ビームスプリッタ12を通過し、光源25に向かって戻る(さもなければ、分光器14から離れる)ことを可能にするものの、ラマン散乱光を、本実施例では光リレー13、13’を介して、反射するか、さもなければ分光器14に誘導するように構成されている。結像光学系30は、(走査ディスク11が配置されている)中間結像面からのラマン光を分光器14に中継する、すなわち誘導するように構成されている。
【0066】
ほとんどの自発ラマンイメージング応用では、微結晶材料である場合の試料からの散乱の方が、単結晶材料又は非結晶材料である場合の試料からの散乱よりも高い。従って、ピンホール19のサイズ、ピンホール19の数、ピンホール19間の間隔、及び/又は、ピンホール19のパターンの何れか1つ以上に関して、用途に適合するように構成された、走査ディスク11を使用することが好ましい。任意に、複数の異なる走査ディスク11(及び、該当する場合は対応するレンズディスク15)が設けられ、そのそれぞれ1つは、特定のサンプルタイプからのラマン光の収集を最適化するために、用途に適合するように、例えば、シリコンウェーハ若しくはグラフェン単分子膜を分析する場合は、ピンホールが比較的狭い間隔で配置されており、又は、法医学タイプの粉末試料若しくは医薬品錠剤を分析する場合は、ピンホールが比較的広い間隔で配置されているように、選択され、装置100に取り付けられている。例えば、走査ディスク11は、用途に応じて、ディスク当たりに2個~12個の入れ子ピンホール螺旋を有し得るものの、単一のピンホール螺旋、又は、12個より多くの入れ子ピンホール螺旋が、代わりに使用されることもある。入れ子螺旋の数が少なくなると、特定のディスク回転速度での結像速度が低下する。nを入れ子螺旋の数とすると、1/n個の入れ子螺旋につき1つの画像が取得され得る(例えば、10個の入れ子螺旋を有するディスクは、ディスクが10分の1回転するごとに完全な試料の照明パターンを生成し、2個の入れ子螺旋は、画像が、ディスクが1/2回転するごとにしか収集され得ないことを意味する)。
【0067】
好ましい実施形態において、装置100は、複数の走査ディスクアセンブリを保持するためのマガジン(図示せず)と、ディスクアセンブリのうちの任意の選択された1つを、典型的にはコントローラ50の制御下で、光路内に設置するように構成された、動力作動式作動システムと、を含む。或いは、選択されたディスクアセンブリは、必要に応じて、手動で、取り付けられ、又は、交換され得る取り外し可能なカートリッジに配置され得る。さらに代替的に、1つ以上の走査ディスクアセンブリがあってもよく、当該ディスク、又は、各ディスクは、複数のセクタを有し、各セクタは、異なる配置のピンホール/レンズを有する。
【0068】
ビームスプリッタ12は、フィルタ、例えば、必要に応じて、ショートパスフィルタ、ロングパスフィルタ、帯域通過フィルタ、又は、ノッチフィルタとして機能し、何れの波長(複数可)の光が分光器14に到達し得るかを制御するように構成され得る。例えば、ストークスラマン散乱光の収集を容易にするために、ビームスプリッタ12は、特定の波長よりも短い側、すなわち青い側の全ての光を透過し、(赤方偏移された、より長い波長を有する)ストークス散乱光子を分光器14に向かって反射するショートパスフィルタとして構成され得る。或いは、ビームスプリッタ12は、励起光65の波長の光を透過し、ストークス(赤方)遷移された光及びアンチストークス(青方)遷移された光を含む、他の光を反射するノッチフィルタとして機能するように構成され得る。或いは、ビームスプリッタ12は、アンチストークス自発ラマン発光のみを反射する、ロングパスフィルタとして機能するように構成され得る。結像光学系30が、特にビームスプリッタ12が、透過された光が分光器14に到達し、反射された光が分光器14から離れる方向に誘導されるように構成されている代替実施形態において、ビームスプリッタ12は、上述した構成と逆の方法で構成され得ることが理解されるであろう。
【0069】
任意に、ビームスプリッタ12は、取り外し可能であり、異なる用途に適合する、異なる透過/反射特性を有する代替ビームスプリッタによって置き換えられ得る。任意に、装置100は、一度にビームスプリッタ12のうち何れか1つを光路内に配置するように動作可能な搬送デバイス(図示せず)上に設けられた、それぞれが異なる透過/反射特性を有する複数のビームスプリッタ12を備える。搬送デバイスは、例えば、ホイール又はリニアコンベアを備える、任意の好適な形態をとり得、手動で移動可能であり、又は、(例えば、電気モータによって)動力作動し、ビームスプリッタ12のうちの選択された1つを光路内に移動させ得る。異なるビームスプリッタ12の使用をサポートすることは、これが、(例えば、ストークス散乱、アンチストークス散乱、又は、同時ストークス/アンチストークス散乱の収集の間で切り替える)異なるタイプのオブジェクト55からの発光の分析を容易にする点で有利であるのみならず、これが、異なる光源25の使用、すなわち異なる波長の光65を生成することを容易にする点でも有利であり、あるタイプの試料を分析する際には、あるレーザが、より感度が高いため、異なる光源25の使用は、望ましい可能性がある。
【0070】
任意に、結像光学系30は、1つ以上の光学フィルタ32を光路内に含み得、フィルタ(複数可)32は、オブジェクト55から発せられた光から、実行される分析に関して望ましい波長ではない波長(複数可)を有する光を除去するように構成されている。図示された実施形態において、光学フィルタ32は、ビームスプリッタ12と分光器14との間、好ましくはリレーレンズ13、13’の間に位置している。フィルタ(複数可)32は、光路内において、ビームスプリッタ12の検出器の側の、他の場所に位置し得る。一例として、弾性散乱された光子の一部は、ビームスプリッタ12によって反射され得、フィルタ32は、この弾性散乱されたレーザ光を拒絶し、当該レーザ光が分光器14に到達することを阻止するように構成され得る。フィルタ32は、典型的にはノッチフィルタ又はエッジフィルタであり、好ましくは、光源25によって生成された光ビーム65に対応する波長帯域の光を拒絶するように構成されている。
【0071】
任意に、例えば、1つ以上の偏光フィルタ、及び/又は、他の偏光構成要素(複数可)を備える、1つ以上の偏光分析器33が、結像光学系30内に設けられる。偏光分析器33は、光学結像経路内の任意の好適な位置に設けられ得る。好ましくは、偏光分析器33は、ビームスプリッタ12と分光器14との間に位置している。偏光子26と偏光分析器33との相対的な向きは、出力において観測される分光パターンに影響を与える。例えば、偏光分析器33が偏光子26に対して平行に方向付けられている場合、特定の分光パターンが存在する一方、2つの光学構成要素26、33が、偏光が交差するように方向付けられている場合、すなわち平行ではない場合には、異なる分光パターンが観測される。これらの2つの偏光において観測された、異なるピーク強度は、分子振動の対称性に対応している可能性がある。
【0072】
上述の説明から、好ましい実施形態では、試料55上の多数のポイントを、典型的にはその表面を走査し、自発ラマン散乱光を同一のディスクのピンホールを介して収集し、収集された光を分光器14に誘導するように、走査ニポウディスク対が、励起光により照射されることが明らかであろう。本発明の実施形態は、共鳴ラマン光、及び/又は、表面増強ラマン光も検出し得る。
【0073】
好ましい実施形態では、オブジェクト55から同時に収集された、あらゆる他の光子が、結像光学系30、特にビームスプリッタ12、及び/又は、フィルタ(複数可)32によって、分光器14に到達する前に、除去され、又は、拒絶されるため、分光器14で受信された光は、ラマン光子からなる。比較的低いレベルの残留レーザ/レイリー光子は、結像光学系30によって拒絶又は除去されず、依然として存在している可能性があることに留意されたい。それにもかかわらず、光は、主に、又は、実質的に、ラマン光子から構成されている。
【0074】
結像光学系30によって収集され、分光器14に送達されたラマン光は、照明されたスポット66の位置によって決定される、オブジェクト55の異なる位置から同時に発せられた、複数の異なる波長の光、すなわち光子を含む。収集された光の波長は、典型的には、紫外-可視-近赤外の波長範囲内である。分光器14は、収集された光の複数のビーム67を同時に受信する。典型的には、各ビーム67は、それぞれの同時に照明されたスポット66に対応し、すなわち、各ビーム67は、それぞれの同時に照明されたスポット66から発せられたラマン光で構成されている。ビーム67は、同時に、分光器14の入口開口74に、結像光学系30によって誘導される。分光器14は、各受信されたビーム67を色分散し、それぞれのラマンスペクトルを生成するように構成されている。続いて、ラマンスペクトルが、検出器76によって検出される。
【0075】
照射光学系45の構成に応じて、同時に照明されたスポット66は、一例として図8に示すように、ライン(すなわち1次元アレイ)に配置され得、又は、図9に示すように、二次元アレイに配置され得る。ラインに配置された場合、このラインは、直線であり得るものの、或いは、曲線、又は、任意の他の線形状であり得る。2次元アレイに配置された場合、このアレイは、規則的アレイであり得るものの、規則的アレイである必要はなく、任意の好適な形状をとり得る。典型的には、スポット66のライン又はアレイの形状は、走査ディスク11内のピンホール19の配置に依存し、且つ、光源25からスピニングディスクアセンブリ11、15上に、特に(存在する場合には)レンズディスク15上に誘導されたビーム25の形状にも依存し得る。図8の例において、ビーム25は、直線状、すなわち細い長方形の断面を有し、当該断面は、(コリメートレンズ29の代わりに設けられ得る)任意の好適な従来のビーム整形光学素子(複数可)79、例えばシリンドリカルレンズを使用して形成され得る。図9の例において、ビーム25は、円形の断面を有し、当該断面は、(例えば、コリメートレンズ29であり得る)任意の好適な従来のビーム整形光学素子(複数可)29を使用して形成され得る。何れの場合においても、ビーム25は、ディスクアセンブリ11、15の、これに対応する形状を有する部分を照射し、当該部分が、任意の時点において何れのピンホール19の組が照射されるかを決定し、任意の時点において何れのピンホール19の組が照射されるかが、スポット66の数、及び、スポット66の空間的配置を決定する。
【0076】
好ましい実施形態において、分光器14によって受信されたビーム67は、線形アレイに配置されている。典型的には、これは、スリットであって、典型的には、真っ直ぐ、又は、直線状であり、当該スリットを通してビーム67が分光器14内に通過する、スリットとして構成された、入口開口74によって促進される。特に図11Aを参照すると、同時に照射されたスポット66が、(例えば、図8に図示するように)線形アレイに配置されている場合、対応するビーム67は、これに対応する線形アレイに配置され、当該線形アレイは、ビーム67がスリット74を通過するように、スリット74と位置合わせされる。特に図11Bを参照すると、同時に照射されたスポット66が、(例えば、図9に図示するように)2次元アレイに配置されている場合、対応するビーム67、67’は、対応する2次元アレイに配置されるものの、入口開口74と位置合わせされたビーム67のみが、スリットを通過し、分光器14によって受信される。スリット74は、スリット74に入射していない光を拒絶することによって、分光器14に入射する光を制限する。典型的には、スリット74の幅は、10μm~300μmである。結像光学系30、及び/又は、分光器14(又は、少なくともその入口開口74)は、必要に応じてビーム67、67’と入口開口74との位置合わせを容易にする、任意の好適な方法で構成され得る。
【0077】
好ましい実施形態において、入口開口74は、分光器14の入力焦点面に位置しており、結像光学系30は、ビーム67、67’を入力焦点面上に集光するように構成されている。
【0078】
図3及び図4は、分光器14の例示的な構成を示す。各受信されたビーム67は、本実施例では、回折格子、特に反射格子から構成されている分散素子90上に誘導される。典型的には、格子90は、その標準的な、入射モードの1次回折角で使用される。各受信されたビーム67は、典型的には、1つ以上のミラー91、92、及び/又は、他の光学素子(複数可)を備える任意の好適な手段によって、分散素子90上に誘導され得る。図示された例において、ミラー92は、受信された光を、コリメートし、格子90上に誘導するように構成された、コリメートミラー92である。分散素子90は、各ビーム67を色分散し、各分散されたビーム67Dを生成する。分散されたビーム67Dは、分光器14の出口焦点面上に集光される。図示された実施形態では、これは、集光ミラー93によって実現されるものの、代わりに、任意の他の好適な集光手段によって実現され得る。代替実施形態(図示せず)では、分光器の異なる構成、又は、代替タイプの分光器が、都合に応じて使用され得ることが理解されるであろう。例えば、代替実施形態では、ミラー(複数可)、及び/又は、回折格子(複数可)の異なる配置が使用され得る。レンズ(複数可)が、ミラー(複数可)に加えて、又は、ミラー(複数可)の代わりに、使用され得、透過型格子(複数可)、プリズム(複数可)、又は、他の光学分散素子が、反射格子(複数可)に加えて、又は、反射格子(複数可)の代わりに、使用され得、或いは、単一の凹面反射格子が、格子及びミラー(複数可)の配置の代わりに使用され得る。より一般的に、分光器14は、入口開口74において受信された、各ビーム67を、波長ごとに、すなわち色ごとに、分散し、分散されたビーム67Dを、出口開口78における出口焦点面上に集光するように構成されている。
【0079】
特に図2を参照すると、分光器14によって同時に受信されたビーム67は、試料55の領域80に対応し、当該領域は、任意の時点において、すなわち装置100によって実行される任意の測定中に、装置100によって分析されている。領域80は、試料55の部分であり、当該部分は、測定中に分光器14によって受信されたビーム67に対応する、同時に照明されたスポット66を含む。従って、好ましい実施形態において、領域80は、実質的に線形である。好ましい実施形態において、領域80のサイズ及び形状は、入口開口74のサイズ及び形状に依存している。図2において、領域80は、長方形、すなわちスリット状であるものとして示されているが、他の形状をとってもよい。典型的には、領域80は、ミリメートル又はセンチメートルのオーダーの長さを有するものの、ミクロンのオーダーの幅を有する。従来のライン走査ラマン分光法と異なり、領域80は、連続した光のラインによって照明されるのではなく、その代わりに、間隔を隔てて配置された光スポット66のアレイによって照明される。対応するビーム67は、結像光学系30によって、同時に、且つ、別々に、分光器14の入口開口74に誘導される。領域80に対応するスポット66は、好ましくは、線形アレイ、すなわち一次元アレイを形成することに留意されたい。アレイは、その形状が、パターンであって、当該パターンでピンホール19が配置されている、パターンに依存するため、真っ直ぐであり得るものの、必ずしも真っ直ぐである必要はない。分光器14は、受信されたビーム67のそれぞれを、同時に、波長ごとに分散し、ビーム67ごとに、それぞれのラマンスペクトル82を生成する。典型的には、領域80内の照明されたスポットごとに、それぞれの単一ラマンスペクトルが生成される。各スペクトルは、典型的には、それぞれの照明されたスポットに存在する全ての化学種のスペクトル情報を含む。例えば、試料55が微結晶である場合、照明のそれぞれの単一回折限界点から生じる、それぞれの単一スペクトルは、複数の化学種のスペクトルの共加算であり得る。試料55を、(例えば、図8で図示するように)スポット66のラインのみによって、分光器のスリット74を通して結像される試料の領域80に対応するように照明することが、(例えば、光をより浪費する、図9の配置と比較して)照明光の効率的な使用を提供するため、好ましい。
【0080】
ラマンスペクトル82は、典型的には、分光器14の出口焦点面に位置する検出器76によって検出される。分散されたビーム67Dは、分光器によって出口焦点面上に、従って、検出器76上に、集光される。典型的には、検出器76は、画素81のアレイを備える、画像センサ77を備え、画像センサ77は、典型的には、デジタルカメラの一部である。画像センサ77は、分光器14の出口焦点面に位置している。画像センサ77は、分散されたビーム67Dごとに、すなわち、ラマンスペクトル82ごとに、1つ以上のライン、列、又は、他のグループの画素81を有し得る。図2の例において、センサ77は、スペクトル82ごとに1列の画素81を有するものの、各スペクトル82は、1つ以上のライン、列、又は、グループの画素81から、任意の他の好適な方法で生成され得る。例えば、ディスク11の回転の結果として、1つ以上のライン、列、又は、グループの画素81が、複数の照明されたスポット66からのラマン光を検出し得る。いずれにしても、検出器76は、必要に応じて、ラマンスペクトル82を、画素81によって検出されたラマン光から生成するように構成されたプロセッサ(図示せず)を含み得る。この構成は、分光器14が、それぞれのスペクトル82を検出するために、それぞれの分散されたビーム67Dを、センサ77の、それぞれの画素の列(複数可)、又は、ライン(複数可)上に誘導する、構成である。
【0081】
上述の説明から、装置100が、複数のラマン光のビーム67を、同時に、共焦点的に収集することが明らかになるであろう。従って、従来の共焦点ラマン分光法と比較して、装置100は、試料55のラマン分析を、より迅速に実行し、従来のライン走査ラマン分光法と比較して、装置100は、ラマン分析を、より正確に実行する。スピニングディスクアセンブリ11、15の使用は、スリット74が、従来のライン走査ラマン分光法の場合のように面外拒絶を実行する必要がないように、共焦点セクショニングを提供し、そのため、装置100は、標準的なアプローチと異なり、真に共焦点的に動作する。
【0082】
各測定において、装置100は、試料55の線形領域80に関して、複数のラマンスペクトルを収集する。図示された実施形態において、領域80は、試料55上のスポット66のラインに対応する(図8参照)。図2では、ディスク11の回転の結果、センサ77が、均一に照明された光の長方形を検出するため、領域80は、長方形であるものとして示されている。試料55全体、又は、少なくとも試料55のターゲット領域全体について、ラマンスペクトルを収集するために、装置100は、複数の測定を実行し、当該測定ごとに、試料領域80は試料55の異なる位置にある。好ましくは、これは、領域80を、試料55に対して、領域80の長手軸に垂直な軸方向に走査することによって実現される。例えば、図2において、領域80の長手軸が、Y軸に沿っているものと仮定すると、領域80は、垂直なX軸に沿った方向に走査される。対応するY軸スペクトルが取得されるように、X軸に沿った位置ごとに、それぞれの測定が行われる。各測定が実行されている間、領域80と試料55との間の相対移動がなく、代わりに、領域80は、測定の合間に移動されることに留意されたい。領域80と試料55との間の相対移動は、任意の好適な手段によって実現され得る。例えば、試料55は、対物レンズ7に対して移動され得る。この移動は、ステージ20を移動させることによって好適に実現され得る。この目的のために、ステージ20は、可動ステージであり得、ステージ20を移動させるための、(典型的には、モータを備える)任意の従来の動力駆動手段に結合され得る。この例において、ステージ20は、少なくともX軸に沿って移動可能であるものの、Y軸、及び/又は、Z軸に沿っても移動可能であり得る。図10を参照すると、代わりに、又は、加えて、照射光学系45が、入射光65Bを、試料55に対して、移動、すなわち走査するように構成された、走査システム84を含み得る。走査システム84は、例えば、1つ以上の走査(例えば、可倒式)ミラー85を備える、任意の好適な形態をとり得る。好ましくは、走査システム84は、ピンホールディスク11と対物レンズ7との間に位置している。走査システム84は、好ましくは、電動式である。代わりに、又は、加えて、領域80の位置は、入口開口74の位置を測定の合間に移動させることによって、移動され得る。任意の好適な走査速度が、用途に応じて、領域80について使用され得る。典型的には、領域80が走査される速度は、照明スポット66の走査速度よりも遅い。
【0083】
従って、好ましい実施形態において、装置100は、ライン走査共焦点ラマン分光法を実行し、それによって試料55の真に共焦点的なラマンスペクトル分析が提供される。
【0084】
任意に、本発明を具現化するラマン分光装置は、上述された共焦点ラマン分光法を実行するように構成されるだけではなく、試料55のラマンイメージングを代わりに実行するようにも構成され得る。そのような装置は、ラマン分光モードとラマンイメージングモードとのうち何れか1つで動作可能である。ラマン分光モードでは、以下、別段の記載がない限り、装置は、上述したように構成され得る。ラマンイメージングモードにおいて、装置は、試料55全体の、又は、少なくとも試料55のターゲット領域全体の、少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成される。各ラマン画像は、同時に、又は、実質的に同時に、試料55上の異なる位置から、同時に、又は、実質的に同時に照明されたポイント66に従って、収集されたラマン光子から構成されている。特に、走査ディスク11が回転して試料55全体(すなわち、分析対象のターゲット領域全体)をポイント照明すると、ラマン画像が、実質的に同時に、試料55のターゲット領域全体にわたる、全ての照明ポイント66から、すなわち、走査ディスク11が試料55のターゲット領域全体をポイント照明するためにかかる時間内に、収集されたラマン散乱光から構成される。そのため、ラマン分光モードと対照的に、イメージングモードでは、ラマン光子は、任意の時点において、所定の線形試料部分80からのみ収集されるわけではない。いくつかの実施形態において、装置は、ラマン分光法とラマンイメージングとの両方を同時に実行するように構成され得る。
【0085】
ラマン画像を撮像することは、ラマンスペクトルと対照的に、試料55の組成を分析する上で、特に、予期される組成が分かっているときに、例えば、工程管理又は品質管理の目的について、有用である。これは、所定の、波長範囲、又は、複数の波長範囲内のラマン光の存在が、試料55中における、対応する化学物質、又は、他の検出可能な物質の存在と関連している可能性があるためである。また、ラマン画像が生成されるので、試料55中における各物質の空間分布が検出される。ラマンイメージングモードにおいて、装置は、ラマンスペクトル全体を検出するのではなく、代わりに、当該選択された波長帯域、又は、各選択された波長領域に対応する、それぞれのラマン画像を撮像することに留意されたい。有利には、各波長帯域は、波長に対応するように選択され、当該波長において、所定のターゲット物質又はターゲット種のラマンスペクトルにピークが存在し、好ましくは、当該波長において、試料55中に存在し得る、1つ以上の他の物質又は種の、それぞれのラマンスペクトルにピークが存在しない。この文脈において、ピークは、好適な閾値レベルを超えるラマン散乱光の存在として定義され得る。閾値レベルは、用途に応じて設定され得、経験的に、又は、計算によって、及び/又は、任意の好適な較正プロセスによって、決定され得る。
【0086】
ラマンイメージングを実行するために、分光分析器フィルタ70の好ましい形態における分光フィルタデバイスが、結像光学系30の光路内に設けられる。図1の実施形態において、分光分析器フィルタ70は、ビームスプリッタ12と分光器14との間に位置しているものの、結像光学系30内の他の場所に位置していてもよい。好ましい分光分析器フィルタ70は、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように、調整可能であるか、又は、チューニング可能である。分光分析器フィルタ70は、任意の好適な調整可能分光フィルタデバイスを備え得る。例えば、分光分析器フィルタ70は、以下のデバイスのうち何れか1つを備え得るものの、これらに限定されない:(a)液晶チューナブルフィルタ(LCTF);(b)音響光学チューナブルフィルタ(AOTF);(c)フィルタホイール又は他の可動キャリッジ上の複数の異なるフィルタ;(d)旋回可能なフィルタホイール上の複数の波長/角度チューナブルフィルタ;(e)ファブリペローエタロンと組み合わせて使用される複数の広帯域通過フィルタ;(f)一対のファブリペローフィルタ;又は、(g)(例えば、第1の分光器が、光を分散し、その後、光を、第1の分光器と第2の分光器との間の中間焦点面であって、特定の波長範囲のみを通過させるために物理的ブロックが設けられている、中間焦点面に再集光するように構成され得、第2の分光器が、光の分散を元に戻すように構成されており、単色画像、又は、フィルタされた画像が、第2の分光器の出力に配置される)サブトラクティブ方式ダブルモノクロメータ。
【0087】
分光分析器フィルタ70の好ましい調整性は、フィルタ70、及び、ひいては装置100が、イメージングモードにおいて、特定のターゲット物質を、収集されたラマン光の波長に従って、撮像するように調整されることを可能にする。代替実施形態において、分光分析器フィルタ70は、調整可能であるか、又は、チューニング可能である必要はなく、代わりに、固定波長帯域の、又は、好ましくは、複数の、異なる、好ましくは、離散的な、又は、重複しない、固定波長帯域の、光を通過させるように構成され得る。固定波長帯域(複数可)は、特定の関心のある物質(複数可)を含む試料55を分析するために選択され得、例えば、波長帯域(複数可)は、使用中に試料55から発せられるラマン光の特定の波長(複数可)に対応する。それぞれが異なる通過帯域特性を有する複数の、そのような固定フィルタが設けられ得、分析対象の試料の組成に応じ、必要に応じて、取り付けたり取り外したりされ得る。
【0088】
イメージングモードにおいて、結像光学系30は、試料55の照明された領域全体からのラマン光が、分光分析器フィルタ70を通過するように構成される。分光分析器フィルタ70の設定に応じて、当該選択された波長範囲、又は、各選択された波長範囲内の波長以外の、全ての波長が、フィルタ70によって拒絶され、単一の選択された波長帯域、又は、複数の選択された波長帯域のラマン光は、通過可能とされる。分光分析器フィルタ70は、続いて、1つ以上の異なる波長範囲からのラマン光が通過することを可能にするように調整され得る。この工程は、用途に応じて、所望の数の波長範囲に対して実行され得る。従って、好ましい実施形態において、フィルタ70は、複数の異なる波長帯域の何れか1つの光が、フィルタ70を同時に通過することを可能にするようにチューニング可能である。従って、試料55中のターゲット物質が、複数の波長帯域のラマン散乱光に関連している場合、フィルタ70は、それらの帯域それぞれの光が、フィルタ70を同時に通過することを可能にするようにチューニングされ得る。或いは、フィルタ70は、各帯域の光が、フィルタ70を、一度に1帯域ずつ順番に通過するように調整され得る。試料55中の1つ以上の化学物質、又は、他の物質の存在は、分光分析器フィルタ70を、波長範囲、又は、複数の波長範囲それぞれのラマン光を通過させるように設定することによって、検出され得る。
【0089】
ラマンイメージングモードとラマン分光モードとの両方をサポートするように構成された、好ましい実施形態において、分光分析器フィルタ70は、分光分析器フィルタ70が、イメージングモードにおける動作のために、光路内に移動され得、分光モードにおける動作のために、光路外に移動され得るように、(図1中の矢印Aによって示されるように)光路に対して移動可能である。任意の好適な作動手段(図示せず)、好ましくは動力作動手段が、この目的のために設けられ得る。例えば、フィルタ70は、可動キャリッジ、又は、可動ステージ上に設けられ得、当該可動キャリッジ、又は、可動ステージは、好ましくは、モータ、又は、他の駆動手段に結合され、移動を生じさせる。或いは、分光分析器フィルタ70は、分光分析器フィルタ70が、全ての関心のあるラマン波長を含む範囲(例えば、200nmから1600nmまでの、又は、それよりも広い、通過帯域)内の波長を通過させる広帯域通過モードをとるように構成され得、ラマン分光モード中に、広帯域通過モードをとり得る。ラマンイメージングがサポートされていない実施形態では、分光分析器フィルタ70が、省略され得る。例えば、分光器14が、図4に示すように構成されている、すなわち、分光法のみを実行するように構成されている、実施形態では、分光分析器フィルタ70が、(例えば、フィルタ70を、選択的に、バイパスさせる状態、又は、バイパスさせない状態に制御するように動作可能な、1つ以上の可動ミラーを設けることによって)省略、又は、バイパスされ得る。
【0090】
ラマン画像は、検出器76によって撮像され得る。但し、イメージングモードでは、フィルタ70を通過したラマン光を色分散することは望ましくない。図5及び図6は、ラマンイメージングモードとラマン分光モードとの両方をサポートするための、装置100における使用に適した、分光器14の代替構成の一例を示す。図5及び図6の分光器14は、図4の分光器に類似しており、当業者であれば理解できるように、別段の記載がない限り、同一の、又は、同様の説明が当てはまり、同等の符号が、同等の部分を示すために使用される。この実施形態において、(典型的には、回折格子を備える)分散素子90は、イメージングモードにおいて、光が色分散されないように、分光器14を通過する光の経路の外へ移動可能であるか、又は、非分散となるようにチューニング可能、若しくは、再構成可能であり、及び/又は、非分散素子によって置き換えられる。図示された実施形態において、分散素子90は、非分散素子94置き換え可能であり、当該非分散素子94、好適には、ミラー、又は、他の光学反射素子(複数可)、並びに/若しくは、光学中継素子(複数可)であり、光を、分散することなく、出口焦点面へ向かって中継する。好ましい実施形態において、分光モードでは、分散素子90が、光を分散すると共に、光をミラー93へ反射し、イメージングモードでは、(好ましい形態のミラーである)非分散素子94が、分散素子90の代わりに、ミラー93へ光を反射するように構成される。格子、特に反射格子は、好ましくは0次で使用され、ミラーと同じ光学反射機能を提供するために使用され得、従って、非分散素子94として使用され得るであろう。代替実施形態において、分散素子90は、分散性、又は、非分散性となるようにチューニング可能な、チューナブル回折格子、例えば、チューナブル反射格子を備え得、この場合、分散素子と非分散素子とを分離して設ける必要がない。分散素子90が、非分散性となるように、チューニング可能であるか、又は、構成可能である、実施形態では、分散素子90を移動する必要はない。
【0091】
分散素子90及び非分散素子94が、移動可能である、実施形態(例えば、図5及び図6の実施形態)では、素子90、94が、任意の好適な手段によって、光の経路に出し入れされ得る。図示された実施形態において、分散素子90及び非分散素子94は、アセンブリ95内に設けられており、アセンブリ95は、分散素子90が、光路内に位置し、光を色分散する分散状態(図5)と、非分散素子94が、光路内に位置する非分散状態(図6)と、の間で移動可能である。アセンブリ95は、分散状態と非分散状態との間で回転可能であり得る。図示された例において、素子90、94は、アセンブリ95の反対の側に設けられており、アセンブリは、素子90、94の一方又は他方が、ビーム67の経路内に位置するように回転可能である。或いは、アセンブリ95は、直線的に、又は、旋回的に、分散状態と非分散状態との間で移動可能であり得、素子90、94は、それに応じて、互いに対して(例えば、直線移動の場合には、並んで)配置され得る。或いは、分散素子90及び非分散素子94は、必要に応じて、個別に、光路に出入り可能であってもよい。好ましくは、(例えば、1つ以上のモータを備える)動力作動手段が、関連する移動を生じさせるために、アセンブリ95に、又は、該当する場合には、素子90、94に、個別に、結合されている。或いは、素子90、94は、所望の動作モードに応じて、手動で交換され得る。いずれにせよ、装置100が、ラマン分光モードにあるときは、分散素子90が、光路内にあり、従って、分光器14が、上述したように、光を分散し、ラマンスペクトルを生成し、装置100が、ラマンイメージングモードにあるときは、分光器14が、ラマン光に対して色分散を実行しないように、非分散素子94が、光路内にある。代わりに、ラマンイメージングモードにおいて、分光器14は、入力焦点面において受信された光を、出口焦点面に、色分散を実行することなく、中継する、画像中継デバイスとして機能するように構成されていると言える。
【0092】
ラマンイメージングモードでは、図11A及び図11Bに示すように、分光器14に入射するラマン光を、分光モードにおいて使用される、スリット開口74を使用して制限することは望ましくない。代わりに、例えば図11Cに示すように、より広い入口開口74が使用される。これは、各モードにおいて、開口74を画定するために、異なる構造を使用することによって、又は、異なるサイズの開口74を提供するように構成可能な、調整可能絞り装置を使用することによって、実現され得る。好ましくは、調整可能絞り装置は、動力作動式であり、例えば、電動式である。好ましくは、イメージングモードにおいて、入口開口74は、試料55のターゲット領域全体からのラマン光が分光器74に入射することを可能にするために十分な大きさを有する。一例として、イメージングモードにおいて、開口74の幅は、300μm~32mmの間であり得る。
【0093】
図7は、本発明を具現化する、代替的なラマン分光装置100’を示す。装置100’は、装置100と同一、又は、同様であり、同等の符号が、同等の部分を示すために使用されており、別段の記載がない限り、同一の、又は、同様の説明が当てはまる。装置100’は、(好適には図4に示されたとおりであり得る)分光器14及び検出器76のみならず、検出器76と同一であり得る、第2の検出器76’も含む。分光分析器フィルタ70は、結像光学系30’に含まれており、第2の検出器76’の前の光路内に位置しているものの、分光器14への光路内には位置していない。結像光学系30’は、収集されたラマン光を、分光器14に、及び/又は、第2の検出器76’に誘導するための手段97を含む。誘導手段97は、ビームスプリッタ(例えば、ダイクロイックミラー)、ミラー、又は、任意の他の好適な、光学ビームスイッチング素子(複数可)、若しくは、ビーム誘導素子(複数可)を備え得る。誘導手段97は、分光モードにおいて、収集されたラマン光の少なくとも一部(好ましくは、全て)が、分光器14に誘導され、イメージングモードにおいて、収集されたラマン光の少なくとも一部(好ましくは、全て)が、第2の検出器76’に誘導されるように、光路に対して移動可能であり得、又は、調整可能であり得る。分光モードにおいて、装置100’は、分光器14を使用して、上述したようにラマン分光法を実行し得る。ラマンイメージングモードにおいて、装置100’は、第2の検出器76’を使用して、上述したようにラマンイメージングを実行し得る。任意に、誘導手段97(例えば、ビームスプリッタの形態である場合)は、収集された光のそれぞれの部分を、分光器14及び第2の検出器76’のそれぞれに誘導するように構成され得、この場合、装置100’は、ラマン分光法とラマンイメージングとの両方を実行し得る。
【0094】
任意に、誘導手段97は、(例えば、図7に示すように)光路内に誘導手段97が位置しているとき、誘導手段97が、光の少なくとも一部を、検出器76’又は分光器14の一方(図7の例では検出器76’)に誘導し、光路外に誘導手段97が位置しているとき、光が、分光器14又は検出器76’の他方(図7の例では分光器14)に誘導されるように、光路に出入り可能であり得る。誘導手段97は、任意の好適な手段、好ましくは、例えば、モータ(図示せず)を備える動力駆動手段によって移動可能であり得る。誘導手段97は、光路内にあるとき、ビームスプリッタ12と分光器14との間に、好ましくはリレーレンズ13、13’の間に、位置し得る。第3のリレーレンズ13’’が、分光分析器フィルタ70と第2の検出器76’との間に設けられ得る。
【0095】
イメージングモードにおいて、選択された波長範囲、又は、選択された複数の波長範囲内のラマン光のみからなる、(好ましい実施形態では、分光器14を通して中継された)オブジェクト55全体(又は、少なくともターゲット領域全体)のラマン画像が、光検出器76の焦点面上に集光される。また、(全てのラマン光が、スピニングディスク11内のピンホールを通過しているため)画像は、共焦点的に撮像される。ラマン画像を、上述した方法で撮像することは、ラマン画像を構築する従来の方法と比較して、非常に迅速であるものの、これは、全てのラマンスペクトル情報を収集するわけではない。試料55上の全ての照明されたポイントについてのラマンスペクトル全体が、分光分析器フィルタ70に入射するものの、一度に、1つ以上の選択された波長範囲内のラマン光のみが、光検出器76に到達可能とされる。複数のラマン画像を、対応する異なる波長範囲において撮像することにより、画像及びスペクトルの、ハイパーキューブ、又は、データキューブが、全ての画素から抽出され得る。それぞれのラマン画像は、全てのデータポイントにおける全てのスペクトル情報を提供するために、装置100によってサポートされた、全ての波長において、撮像され得る。特に、取得された情報を、波長に従って順番に配置することによって、完全な(又は、部分的な)スペクトルが、画像内の全てのピクセルから構築され得る。結果として得られるデータセットは、XY画素情報(任意に、Zデータも)と、スペクトル若しくは部分スペクトルと、を含む。このタイプのデータセットは、データのハイパーキューブ、又は、ハイパースペクトル画像データキューブと呼ばれることがある。この技術は、単一波長についての、全てのXYデータを含む、完全な画像を収集することを含み得、欠落しているスペクトルデータは、分光分析器を走査することによって収集され得る。大きな画像についても、この工程は、従来のポイント走査よりも、はるかに高速なままであろう。より一般的に、ラマン画像が撮像される波長帯域の数が多いほど、より多くのスペクトル情報が取得される。用途に応じて、ラマン画像が撮像される波長帯域の数は、試料が不正確に識別されることがないことを確実にするために十分なスペクトル情報を提供しつつ、実用的(且つ、それでも、従来のポイント走査に比べて、はるかに迅速)であろうタイムスケールで画像を取得するために十分な迅速さで実行可能であるように、選択され得る。このアプローチは、孤立したスペクトル特徴を含まない混合物から、スペクトル寄与を、計量化学的に、又は、単変量的に、分離するために適している。
【0096】
対照的に、ラマン分光モードでは、各測定が、照明されたポイント66ごとの波長データを伴う、共焦点Y軸イメージングを提供する。データキューブを取得するために、共焦点X軸データ(及び、必要に応じて、任意に、Z軸データ)が、上述したように(及び、必要に応じて、Z軸に沿って)走査することによって、取得され得る。
【0097】
従って、イメージングモードと分光モードとの両方は、試料55の任意の焦点位置について、空間的X情報、空間的Y情報、任意に、空間的Z情報、及び、波長情報を含む情報のデータセット、すなわち、最大で4次元(X、Y、Z、及び、λ)を有するデータセットを提供し得る。各モードは、ユーザが、(X、Y、Z)における撮像速度を重視するのか、又は、高度なスペクトル情報(λ)を取得することを重視するのか、に応じて、相対的な利点を有する。
【0098】
装置100、100’は、典型的には、装置100、100’の動作を、本明細書に記載されたとおり制御するように、特に、動力作動された、任意の構成要素を制御するように構成される1つ以上のコントローラ50を備える、制御システムを含む。他の構成要素は、必要に応じて、手動で制御され得る。典型的には、コントローラ50は、当該光検出器76、76’、若しくは、各光検出器76、76’、分光器14、ステージ20、誘導手段97の動作、及び、分光分析器フィルタ70が適用される場合はそれの動作を制御するように構成されている。典型的な実施形態において、コントローラ50は、試料についての関連するデータセットを取得するために、ステージ20を、従って試料55を移動させる。コントローラ50は、例えば、異なる波長において測定を行うことを容易にするために、分光分析器70の帯域通過位置、及び/又は、スペクトル範囲を制御するように構成され得る。任意に、コントローラ50は、光源25、及び/又は、走査ディスクアセンブリ11、15を制御するように構成されている。図示された実施形態では、光源25又は走査ディスクアセンブリ11、15の動作を、装置100の他の構成要素、特に、分光分析器70、分光器14、又は、光検出器76、76’と同期する必要はなく、従って、コントローラ50が、この点に関して、光源25、又は、走査ディスクアセンブリ11の動作を制御する必要はない。但し、任意に、コントローラ50は、必要に応じて、光源25、及び/又は、走査ディスクアセンブリ11、15の制御をオン及びオフにするために使用され得る。当該コントローラ50、又は、各コントローラ50は、任意の従来の形態をとり得、典型的には、好適にプログラムされたプロセッサ、例えば、マイクロプロセッサ、又は、マイクロコントローラを備え、コントローラ50が、任意の従来の方法で制御する必要がある、構成要素(複数可)に接続され得る。
【0099】
本発明は、本明細書に記載された実施形態(複数可)に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、修正又は変更され得る。
【0100】
(付記)
(付記1)
分光器と、
オブジェクトからの光を光路に沿って前記分光器に伝送するように構成された結像光学系と、
光源を備え、前記光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するように構成された照射光学系と、
複数の開口を備える走査デバイスであって、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である走査デバイスと、
を備え、
前記照射光学系は、前記光を前記走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、
前記結像光学系は、前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送し、前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するように構成されている、
ラマン分光装置。
【0101】
(付記2)
前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を前記分光器の入力焦点面に集光するように構成されている、
付記1に記載の装置。
【0102】
(付記3)
前記分光器が、複数のビームの線形アレイであって、各ビームが、前記照明ポイントのそれぞれ1つからのラマン散乱光で構成されている、ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
付記1又は2に記載の装置。
【0103】
(付記4)
前記分光器は、複数の光ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
付記1から3の何れか一つに記載の装置。
【0104】
(付記5)
前記分光器は、前記複数のビームの線形アレイを受信するためのスリットを画定する形状を有する入口開口を備え、前記入口開口は、好ましくは、前記分光器の前記入力焦点面に位置している、
付記4に記載の装置。
【0105】
(付記6)
前記照射光学系は、前記複数の照明ポイントが線形アレイに配置されるように構成されている、
付記1から5の何れか一つに記載の装置。
【0106】
(付記7)
付記5に従属する場合、前記結像光学系は、前記照明ポイントの線形アレイからの光を前記スリットに結像するか、又は、伝送するように構成されている、
付記6に記載の装置。
【0107】
(付記8)
前記装置は、前記ラマン散乱光の測定を少なくとも1回実行するように構成されており、各測定において、前記装置は、複数のラマンスペクトルを検出し、各ラマンスペクトルは、前記照明ポイントのそれぞれ1つに対応している、
付記1から7の何れか一つに記載の装置。
【0108】
(付記9)
前記装置は、前記測定を複数回実行するように構成されており、各測定において、前記ラマンスペクトルは、複数の照明ポイントの組のそれぞれに対応しており、各照明ポイントの組は、前記オブジェクトの異なる領域に対応しており、各照明ポイントの組は、好ましくは、前記オブジェクトの線形領域のそれぞれに対応している、
付記8に記載の装置。
【0109】
(付記10)
前記装置は、前記領域が前記オブジェクトのターゲット領域を集合的にカバーするように、前記オブジェクトを走査するように構成されている、
付記9に記載の装置。
【0110】
(付記11)
前記装置は、前記オブジェクトと、前記オブジェクトの領域であって、当該領域に対して各回の測定が実行される、前記オブジェクトの領域と、の間の相対移動を生じさせるための走査手段を含む、
付記9に記載の装置。
【0111】
(付記12)
前記走査手段は、前記オブジェクトを前記照射光学系に対して移動させるための手段、前記光源からの前記光を前記オブジェクトに対して走査するように構成された走査システム、及び/又は、前記分光器の入口開口を移動させるための手段のうち何れか1つ以上を備える、
付記11に記載の装置。
【0112】
(付記13)
光検出器が、前記分光器の出口開口に、典型的には前記分光器の出口焦点面に設けられている、
付記1から12の何れか一つに記載の装置。
【0113】
(付記14)
前記装置は、ラマン分光法、及び/又は、ラマンイメージングを実行するように構成されているか、又は、構成可能であり、ラマンイメージングモードにおいて、前記照射光学系は、前記オブジェクトのターゲット領域を複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、前記結像光学系は、前記照明ポイントからの、選択された1つ以上の波長範囲内のラマン散乱光を検出することによって、前記ターゲット領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成されている、
付記1から13の何れか一つに記載の装置。
【0114】
(付記15)
前記結像光学系は、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように構成可能な分光フィルタを含む、
付記14に記載の装置。
【0115】
(付記16)
前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路内に位置し、前記分光器に、前記選択された1つ以上の波長範囲内の光を透過するように構成されている、
付記15に記載の装置。
【0116】
(付記17)
前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路に出入り可能であるか、又は、前記選択可能な波長範囲のうち全ての波長範囲内の光を同時に通過させるように構成可能である、
付記15又は16に記載の装置。
【0117】
(付記18)
ラマン分光モードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散するように構成され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散しないように構成され、前記分光器は、好ましくは、ラマン画像を前記分光器の入口から出口まで中継するように構成されている、
付記14から17の何れか一つに記載の装置。
【0118】
(付記19)
前記分光器は、少なくとも1つの分散素子を備え、前記少なくとも1つの分散素子は、前記分光器の前記入口と前記出口との間の光路に出入り可能であり、前記少なくとも1つの分散素子は、前記ラマン分光モードにおいて前記光路内に位置しており、前記ラマンイメージングモードにおいて前記光路外に位置しているか、又は、前記少なくとも1つの分散素子は、分散状態と非分散状態との間で構成可能である、
付記18に記載の装置。
【0119】
(付記20)
前記分光器は、前記光路に出入り可能な、少なくとも1つの非分散素子を備え、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子と前記光路内で置き換わる、
付記19に記載の装置。
【0120】
(付記21)
前記少なくとも1つの分散素子及び前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子が前記光路内に位置している分散状態と、前記少なくとも1つの非分散素子が前記光路内に位置している非分散状態と、の間で移動可能なアセンブリの上に設けられている、
付記20に記載の装置。
【0121】
(付記22)
前記分光フィルタは、光検出器の前の前記光路内に位置しており、前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を、前記分光器、及び/又は、前記光検出器に誘導するための誘導手段を含む、
付記15に記載の装置。
【0122】
(付記23)
前記誘導手段は、ビームスプリッタ、ミラー、又は、任意の他の好適な光学ビームスイッチング素子若しくはビーム誘導素子を備える、
付記22に記載の装置。
【0123】
(付記24)
前記誘導手段は、ラマン分光モードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記分光器に誘導され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記光検出器に誘導されるように、前記光路に対して移動可能であるか、又は、調整可能である、
付記22又は23に記載の装置。
【0124】
(付記25)
前記走査デバイスは、前記複数の開口と位置合わせされており、前記光を前記開口の上に集光する、複数のレンズを備える、
付記1から24の何れか一つに記載の装置。
【0125】
(付記26)
前記走査デバイスは、回転可能な走査ディスクを備える、
付記1から25の何れか一つに記載の装置。
【0126】
(付記27)
付記25に従属する場合、前記走査デバイスは、回転可能なレンズディスクであって、当該レンズディスク内に前記複数のレンズが設けられている、レンズディスクを含み、前記レンズディスクは、前記走査ディスクと共に回転可能である、
付記26に記載の装置。
【0127】
(付記28)
前記光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成されている、
付記1から27の何れか一つに記載の装置。
【0128】
(付記29)
前記光路内に位置するビームスプリッタであって、前記光源の光と前記ラマン散乱光との一方に対して透過性であり、前記光源の光と前記ラマン散乱光との他方に対して反射性である、ビームスプリッタをさらに含み、前記結像光学系は、前記オブジェクトを、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して結像するか、又は、前記オブジェクトからの光を、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して伝送するように構成されており、前記照射光学系は、前記オブジェクトを、前記ビームスプリッタを介して照明するように構成されている、
付記1から28の何れか一つに記載の装置。
【0129】
(付記30)
前記ビームスプリッタは、前記光源の光に対して透過性であり、前記ラマン散乱光に対して反射性である、
付記29に記載の装置。
【0130】
(付記31)
前記ビームスプリッタは、前記走査デバイスと前記分光器との間に位置している、
付記29又は30に記載の装置。
【0131】
(付記32)
前記分光フィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように、チューニング可能であるか、又は、調整可能である、
付記15に記載の装置。
【0132】
(付記33)
前記照射光学系及び前記結像光学系は、前記オブジェクトを共焦点的に照明し結像するように構成されている、
付記1から32の何れか一つに記載の装置。
【0133】
(付記34)
オブジェクトからの光を光路に沿って分光器に伝送するステップと、
光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するステップと、
前記光を走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するステップであって、前記走査デバイスは、複数の開口を備え、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である、ステップと、
前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送するステップと、
前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するステップと、
を含む、
ラマン分光法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
【手続補正書】
【提出日】2023-08-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光器と、
オブジェクトからの光を光路に沿って前記分光器に伝送するように構成された結像光学系と、
光源を備え、前記光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するように構成された照射光学系と、
複数の開口を備える走査デバイスであって、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である走査デバイスと、
を備え、
前記照射光学系は、前記光を前記走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、
前記結像光学系は、前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送し、前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するように構成されている、
ラマン分光装置。
【請求項2】
前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を前記分光器の入力焦点面に集光するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記分光器が、複数のビームの線形アレイであって、各ビームが、前記照明ポイントのそれぞれ1つからのラマン散乱光で構成されている、ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記分光器は、複数の光ビームの線形アレイを受信するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記分光器は、前記複数のビームの線形アレイを受信するためのスリットを画定する形状を有する入口開口を備え、前記入口開口は、好ましくは、前記分光器の入力焦点面に位置している、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記照射光学系は、前記複数の照明ポイントが線形アレイに配置されるように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記分光器は、スリットを画定する形状を有する入口開口を備え、前記結像光学系は、前記照明ポイントの線形アレイからの光を前記スリットに結像するか、又は、伝送するように構成されている、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記ラマン散乱光の測定を少なくとも1回実行するように構成されており、各測定において、前記装置は、複数のラマンスペクトルを検出し、各ラマンスペクトルは、前記照明ポイントのそれぞれ1つに対応している、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記装置は、前記測定を複数回実行するように構成されており、各測定において、前記ラマンスペクトルは、複数の照明ポイントの組のそれぞれに対応しており、各照明ポイントの組は、前記オブジェクトの異なる領域に対応しており、各照明ポイントの組は、好ましくは、前記オブジェクトの線形領域のそれぞれに対応している、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記装置は、前記領域が前記オブジェクトのターゲット領域を集合的にカバーするように、前記オブジェクトを走査するように構成されている、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記オブジェクトと、前記オブジェクトの領域であって、当該領域に対して各回の測定が実行される、前記オブジェクトの領域と、の間の相対移動を生じさせるための走査手段を含む、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記走査手段は、前記オブジェクトを前記照射光学系に対して移動させるための手段、前記光源からの前記光を前記オブジェクトに対して走査するように構成された走査システム、及び/又は、前記分光器の入口開口を移動させるための手段のうち何れか1つ以上を備える、
請求項11に記載の装置。
【請求項13】
光検出器が、前記分光器の出口開口に、典型的には前記分光器の出口焦点面に設けられている、
請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は、ラマン分光法、及び/又は、ラマンイメージングを実行するように構成されているか、又は、構成可能であり、ラマンイメージングモードにおいて、前記照射光学系は、前記オブジェクトのターゲット領域を複数の照明ポイントにおいて照明するように構成されており、前記結像光学系は、前記照明ポイントからの、選択された1つ以上の波長範囲内のラマン散乱光を検出することによって、前記ターゲット領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記結像光学系は、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように構成可能な分光フィルタを含む、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路内に位置し、前記分光器に、前記選択された1つ以上の波長範囲内の光を透過するように構成されている、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記分光フィルタは、前記分光器への前記光路に出入り可能であるか、又は、前記選択可能な波長範囲のうち全ての波長範囲内の光を同時に通過させるように構成可能である、
請求項15に記載の装置。
【請求項18】
ラマン分光モードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散するように構成され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記分光器は、前記ラマン散乱光を波長ごとに分散しないように構成され、前記分光器は、好ましくは、ラマン画像を前記分光器の入口から出口まで中継するように構成されている、
請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記分光器は、少なくとも1つの分散素子を備え、前記少なくとも1つの分散素子は、前記分光器の前記入口と前記出口との間の光路に出入り可能であり、前記少なくとも1つの分散素子は、前記ラマン分光モードにおいて前記光路内に位置しており、前記ラマンイメージングモードにおいて前記光路外に位置しているか、又は、前記少なくとも1つの分散素子は、分散状態と非分散状態との間で構成可能である、
請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記分光器は、前記光路に出入り可能な、少なくとも1つの非分散素子を備え、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子と前記光路内で置き換わる、
請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つの分散素子及び前記少なくとも1つの非分散素子は、前記少なくとも1つの分散素子が前記光路内に位置している分散状態と、前記少なくとも1つの非分散素子が前記光路内に位置している非分散状態と、の間で移動可能なアセンブリの上に設けられている、
請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記分光フィルタは、光検出器の前の前記光路内に位置しており、前記結像光学系は、前記ラマン散乱光を、前記分光器、及び/又は、前記光検出器に誘導するための誘導手段を含む、
請求項15に記載の装置。
【請求項23】
前記誘導手段は、ビームスプリッタ、ミラー、又は、任意の他の好適な光学ビームスイッチング素子若しくはビーム誘導素子を備える、
請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記誘導手段は、ラマン分光モードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記分光器に誘導され、前記ラマンイメージングモードにおいて、前記ラマン散乱光の少なくとも一部が前記光検出器に誘導されるように、前記光路に対して移動可能であるか、又は、調整可能である、
請求項22又は23に記載の装置。
【請求項25】
前記走査デバイスは、前記複数の開口と位置合わせされており、前記光を前記開口の上に集光する、複数のレンズを備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記走査デバイスは、回転可能な走査ディスクを備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項27】
記走査デバイスは、前記複数の開口と位置合わせされており、前記光を前記開口の上に集光する、複数のレンズと、回転可能なレンズディスクであって、当該レンズディスク内に前記複数のレンズが設けられている、レンズディスクと、を含み、前記レンズディスクは、前記走査ディスクと共に回転可能である、
請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記光路内に位置するビームスプリッタであって、前記光源の光と前記ラマン散乱光との一方に対して透過性であり、前記光源の光と前記ラマン散乱光との他方に対して反射性である、ビームスプリッタをさらに含み、前記結像光学系は、前記オブジェクトを、光検出器に、前記ビームスプリッタを介して結像するか、又は、前記オブジェクトからの光を、前記光検出器に、前記ビームスプリッタを介して伝送するように構成されており、前記照射光学系は、前記オブジェクトを、前記ビームスプリッタを介して照明するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項30】
前記ビームスプリッタは、前記光源の光に対して透過性であり、前記ラマン散乱光に対して反射性である、
請求項29に記載の装置。
【請求項31】
前記ビームスプリッタは、前記走査デバイスと前記分光器との間に位置している、
請求項29に記載の装置。
【請求項32】
前記分光フィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つ以上の波長範囲内の光のみを透過するように、チューニング可能であるか、又は、調整可能である、
請求項15に記載の装置。
【請求項33】
前記照射光学系及び前記結像光学系は、前記オブジェクトを共焦点的に照明し結像するように構成されている、
請求項1に記載の装置。
【請求項34】
オブジェクトからの光を光路に沿って分光器に伝送するステップと、
光源からの光を、前記オブジェクトに、前記光路の少なくとも一部に沿って誘導することによって、前記オブジェクトを照明するステップと、
前記光を走査デバイス上に誘導し、前記オブジェクトを複数の照明ポイントにおいて照明するステップであって、前記走査デバイスは、複数の開口を備え、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能である、ステップと、
前記オブジェクトから前記照明ポイントにおいて発せられたラマン散乱光を、前記走査デバイスが位置している中間結像面に伝送するステップと、
前記ラマン散乱光を前記中間結像面から前記分光器に伝送するステップと、
を含む、
ラマン分光法。
【外国語明細書】