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特開2024-121570ワーク加工用シートおよびその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121570
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ワーク加工用シートおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240830BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20240830BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240830BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240830BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/20
C09J201/00
C09J133/04
H01L21/78 M
H01L21/304 622J
H01L21/304 622L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028732
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】山口 征太郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜章
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F057
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA04
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC03
4J004DB02
4J004FA05
4J040DF021
4J040FA132
4J040JA09
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040LA01
4J040NA19
5F057AA53
5F057EC08
5F057EC09
5F063AA08
5F063AA18
5F063EE02
5F063EE27
5F063EE43
(57)【要約】
【課題】ピックアップ性に優れるとともに、優れた帯電防止性を発揮するワーク加工用シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記光重合開始剤の分子量が、210以上、1000以下であり、前記粘着剤層の厚さが、0.5μm以上、3μm未満であり、前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した前後における、前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面の表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上、1.0×1011Ω/□以下であるワーク加工用シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、
前記粘着剤層が、光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、
前記光重合開始剤の分子量が、210以上、1000以下であり、
前記粘着剤層の厚さが、0.5μm以上、3μm未満であり、
前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した前後における、前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面の表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上、1.0×1011Ω/□以下である
ことを特徴とするワーク加工用シート。
【請求項2】
前記光重合開始剤の大気雰囲気下における10%重量減少温度は、200℃以上、500℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項3】
前記基材の片面または両面に積層された、導電性材料を含有する導電層を備えることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有することを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項5】
前記ワーク加工用シートは、ダイシングシートおよびピックアップシートの少なくとも一方として使用されるものであることを特徴とする請求項1に記載のワーク加工用シート。
【請求項6】
請求項1に記載のワーク加工用シートの使用方法であって、
前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面をワークに貼付する工程と、
前記ワーク加工用シート上において前記ワークの加工を行う工程と
を含むことを特徴とする使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等のワークの加工に使用されるワーク加工用シートおよびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハや各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、チップに切断(ダイシング)され、剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等のワークは、基材および粘着剤層を備える粘着シート(以下、「ワーク加工用シート」という場合がある。)上に積層された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディング、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
上述したピックアップの工程では、コレット等の手段を用いて、ワーク加工用シートからチップが個々に分離される。この際、チップの分離を容易にするために、ワーク加工用シートの粘着剤層として、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤から構成されたものが使用されることがある。このようなワーク加工用シートでは、ピックアップ工程に先立って、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射することで、当該粘着剤層を硬化させ、チップに対する粘着力を低下させることができる。これにより、チップが分離し易くなり、ピックアップ時のチップの破損等の問題を抑制することが可能となる。
【0004】
特許文献1および2には、上述した、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤から構成された粘着剤層を備えるワーク加工用シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-212732号公報
【特許文献2】特開2013-209559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述したワーク加工用シートにおいては、粘着剤層における基材とは反対側の面(以下、「粘着面」という場合がある。)を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されることがある。そして、ワーク加工用シートを使用する際には、当該剥離シートが粘着面から剥離されるが、このとき剥離帯電と呼ばれる静電気が発生することがある。また、上記ワーク加工用シート上においてワークを加工した後において、加工済みのワークをワーク加工用シートから分離する際にも剥離帯電が生じることがある。
【0007】
このような剥離帯電は、加工済みのワークが例えば半導体チップである場合に、当該チップ上に形成された回路が破壊されるといった問題をもたらし得る。特許文献1および2に開示されるワーク加工用シートにおいても、帯電防止性を発現するための改良が施されているものの、十分とは言い難かった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ピックアップ性に優れるとともに、優れた帯電防止性を発揮するワーク加工用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層された粘着剤層とを備えるワーク加工用シートであって、前記粘着剤層が、光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、前記光重合開始剤の分子量が、210以上、1000以下であり、前記粘着剤層の厚さが、0.5μm以上、3μm未満であり、前記粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した前後における、前記粘着剤層の前記基材とは反対側の面の表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上、1.0×1011Ω/□以下であることを特徴とするワーク加工用シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層が、上述した分子量を有する光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されていることで、活性エネルギー線照射後において、チップに対する粘着力が十分に低下し、これにより優れたピックアップ性を示すことができる。さらに、粘着剤層の厚さが上記範囲であるとともに、上述した表面抵抗率を示すことにより、優れた帯電防止性を発揮することができる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記光重合開始剤の大気雰囲気下における10%重量減少温度は、200℃以上、500℃以下であることが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明1,2)においては、前記基材の片面または両面に積層された、導電性材料を含有する導電層を備えることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明1~3)において、前記粘着剤組成物は、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体を含有することが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明1~4)において、前記ワーク加工用シートは、ダイシングシートおよびピックアップシートの少なくとも一方として使用されるものであることが好ましい(発明5)。
【0015】
第2に本発明は、前記ワーク加工用シート(発明1~5)の使用方法であって、前記粘着剤層における前記基材とは反対側の面をワークに貼付する工程と、前記ワーク加工用シート上において前記ワークの加工を行う工程とを含むことを特徴とする使用方法を提供する(発明6)。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワーク加工用シートは、ピックアップ性に優れるとともに、優れた帯電防止性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材と、当該基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。
【0018】
そして、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいては、粘着剤層の厚さが、0.5μm以上、3μm未満である。一般的に粘着剤層は絶縁性であり、その厚さを3μm未満とすることで、本実施形態に係るワーク加工用シートは優れた帯電防止性を示すものとなる。さらに、基材として帯電防止性を有するものを使用した場合には、粘着剤層が3μm未満であることで、粘着面と当該基材との距離が短くなるため、基材による帯電防止性を効果的に発揮することが可能となる。
【0019】
さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいては、上記粘着剤層が、光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されており、当該光重合開始剤の分子量が、210以上、1000以下となっている。
【0020】
一般的に、粘着剤組成物から揮発性成分を乾燥させて粘着剤層を形成する際、光重合開始剤も揮発して、形成された粘着剤層中の光重合開始剤の含有量が低下し易い。光重合開始剤の含有量が低下した場合、活性エネルギー線を照射しても粘着剤層が十分に硬化せず、それにより被着体に対する粘着力の低下が不十分となり、結果として、ピックアップ性が大きく低下することとなる。特に、光重合開始剤の揮発は、形成しようとする粘着剤層の厚さが薄いほど進行することとなる。
【0021】
しかしながら、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいては、上記の通り分子量210以上の光重合開始剤を使用することで、粘着剤層の形成時における光重合開始剤の揮発を十分に抑制することができる。その結果、粘着剤層の厚さが3μm未満であるにもかかわらず、優れたピックアップ性を達成することができる。
【0022】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートにおいては、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した前後における、粘着剤層の基材とは反対側の面の表面抵抗率が、1.0×10Ω/□以上、1.0×1011Ω/□以下である。このことによっても、本実施形態に係るワーク加工用シートは優れた帯電防止性を示すものとなる。
【0023】
以上の通り、本実施形態に係るワーク加工用シートは、優れたピックアップ性と優れた帯電防止性とを良好に両立することができる。
【0024】
1.ワーク加工用シートの構成部材
前述の通り、本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材と、当該基材における片面側に積層された粘着剤層とを備える。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートは、基材の片面または両面に積層された、導電性材料を含有する導電層をさらに備えることも好ましい。当該導電層を備えることにより、本実施形態に係るワーク加工用シートは、より優れた帯電防止性を発揮し易いものとなる。
【0025】
(1)基材
本実施形態における基材としては、ワーク加工用シートの使用の際に所望の機能を発揮するものである限り、特に限定されない。特に、基材は、樹脂系の材料を主材とする樹脂フィルムであることが好ましい。その具体例としては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、エチレン-ノルボルネン共重合体フィルム、ノルボルネン樹脂フィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系フィルム;エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体フィルム、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム等のエチレン系共重合フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム等のポリ塩化ビニル系フィルム;(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム;ポリウレタンフィルム;ポリイミドフィルム;ポリスチレンフィルム;ポリカーボネートフィルム;フッ素樹脂フィルムなどが挙げられる。また、これらの架橋フィルム、アイオノマーフィルムといった変性フィルムも用いられる。また、基材は、上述したフィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0026】
上記の中でも、ポリオレフィン系フィルムおよびエチレン系共重合体フィルムの少なくとも一種を使用することが好ましく、特にエチレン-(メタ)アクリル酸共重合体フィルムを使用することが好ましい。なお、本明細書における「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。また、本明細書における「重合体」は「共重合体」の概念も含むものとする。
【0027】
基材は、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、酸化防止剤、着色剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、イオン捕捉剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量としては、特に限定されないものの、基材が所望の機能を発揮する範囲とすることが好ましい。
【0028】
基材の粘着剤層が積層される面には、粘着剤層との密着性を高めるために、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0029】
基材の厚さは、ワーク加工用シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、例えば、200μm以下であることが好ましく、特に150μm以下であることが好ましい。また、基材の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に25μm以上であることが好ましい。
【0030】
(2)導電層
導電層は、導電性材料を含有するものである限り、特に限定されない。導電層は、導電性材料の他に、バインダー樹脂を含むことが好ましい。導電性材料の例としては、導電性高分子、導電性フィラー、アニオン性やカチオン性の化合物、分子中の主鎖や側鎖に4級アンモニウム塩基を有する化合物等が挙げられる。
【0031】
上記導電性高分子の例としては、リチオフェン系、ポリアニリン系またはポリピロール系の導電性高分子が挙げられる。ポリチオフェン系の導電性高分子としては、例えば、ポリチオフェン、ポリ(3-アルキルチオフェン)、ポリ(3-チオフェン-β-エタンスルホン酸)、ポリアルキレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホネートとの混合物等が挙げられる。なお、ポリアルキレンジオキシチオフェンとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリプロピレンジオキシチオフェン、ポリ(エチレン/プロピレン)ジオキシチオフェン等が挙げられる。ポリアニリン系の導電性高分子としては、例えば、ポリアニリン、ポリメチルアニリン、ポリメトキシアニリン等が挙げられる。ポリピロール系の導電性高分子としては、例えば、ポリピロール、ポリ3-メチルピロール、ポリ3-オクチルピロール等が挙げられる。これらの導電性高分子化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、これらの導電性高分子は、水中に分散させて水溶液の形態で使用することが好ましい。
【0032】
導電性フィラーの例としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、ステンレス、カーボン、導電性セラミックス、酸化錫、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化インジウム-酸化錫(ITO)、酸化亜鉛、五酸化アンチモンなどの粒子が挙げられる。
【0033】
アニオン性やカチオン性の化合物の例としては、イオン性液体、イオン性固体、アニオン系界面活性剤、アルカリ金属塩、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等が挙げられる。イオン性液体およびイオン性固体の例としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩等が挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、リチウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
4級アンモニウム塩基を有する化合物としては、具体的には、ピロリジウム環、アルキルアミンの4級化物、さらにこれらをアクリル酸やメタクリル酸と共重合したもの、N-アルキルアミノアクリルアミドの4級化物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、2-ヒドロキシ3-メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0035】
上記4級アンモニウム塩基を有する化合物は、高分子化合物であることが望ましい。4級アンモニウム塩基を有する化合物の数平均分子量は、1000以上であることが好ましく、特に2000以上であることが好ましく、さらには5000以上であることが好ましい。また、当該数平均分子量の上限に関しては、導電性の材料を含む塗布液の粘度が高くなり過ぎないようにする観点から、当該数平均分子量は500000以下であることが好ましい。なお、本明細書における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0036】
導電層中における導電性材料の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましい。また、当該含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましい。導電性材料の含有量が1質量%以上であることで、帯電防止性等の所望の機能が効果的に発揮される。また、導電性高分子の含有量が30質量%以下であることで、導電層中におけるバインダー樹脂の比率が十分なものとなり、導電層自体の塗膜強度が良好なものとなる。
【0037】
バインダー樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、ポリビニルアルコール等が挙げられる。メラミン樹脂の例としては、例えば、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、メチル/ブチル化メラミン樹脂等が挙げられ、これらの中でもブチル化メラミン樹脂を使用することが好ましい。これらのバインダー樹脂は、共重合等により骨格構造が複合構造を有しているものであってもよい。複合構造を有するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂グラフトポリエステル、アクリル樹脂グラフトポリウレタン、ビニル樹脂グラフトポリエステル、ビニル樹脂グラフトポリウレタン等が挙げられる。
【0038】
導電層は、架橋反応性化合物をさらに含んでもよい。架橋反応性化合物は、導電性の材料を含む塗布液中に架橋剤を含有させて、塗布液中に含まれる化合物の官能基と架橋反応させることで得られる。塗布液中に架橋剤を含有させることで、導電層の耐水性、耐溶剤性、機械的強度等が改良される。
【0039】
架橋剤としては、メラミン系架橋剤やエポキシ系架橋剤が挙げられる。メラミン系架橋剤としては、アルキロールまたはアルコキシアルキロール化したメラミン系化合物であるメトキシメチル化メラミン、ブトキシメチル化メラミン等を例示でき、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものを使用してもよい。エポキシ系架橋剤としては、水溶性あるいは水溶化率50%以上のエポキシ基を持つ化合物を用いることが好ましい。
【0040】
導電層は、必要に応じて、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子等の添加剤の少なくとも1種を含有していてもよい。
【0041】
導電層は、上述した導電性高分子等を含む塗布液中に基材を浸漬し、得られた塗膜を乾燥させることで形成することができる。また、導電層は、当該塗布液を基材の片面または両面上に塗布し、得られた塗膜を乾燥させることによっても形成することができる。なお、導電層の形成後、当該導電層における粘着剤層が積層される面には、当該積層の前に、後述する電子線照射およびプラズマ処理の少なくとも一方を行うことも好ましく、特に電子線照射およびプラズマ処理の両方を行うことが好ましい。
【0042】
導電層の厚さは、ワーク加工用粘着シートが使用される方法に応じて適宜設定できるものの、通常、0.003μm以上であることが好ましく、特に0.005μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、1.5μm以下であることが好ましく、特に0.5μm以下であることが好ましい。
【0043】
(3)粘着剤層
粘着剤層は、前述した分子量を有する光重合開始剤を含有する粘着剤組成物から形成された活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されるものである限り、特に限定されない。
【0044】
本実施形態に係るワーク加工用シートは、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されたものであることで、粘着力を良好に制御することが可能となる。すなわち、活性エネルギー線の照射前においては良好な粘着力を発揮しながらも、活性エネルギー線の照射により粘着剤層を硬化させて、粘着力を十分に低下させることが可能となる。これにより、活性エネルギー線の照射によって、加工後のワークをワーク加工用シートから容易に分離することが可能となる。
【0045】
本実施形態における粘着剤層を構成する活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着力を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0046】
アクリル系粘着剤を使用する場合、本実施形態における粘着剤組成物の好ましい態様としては、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)および前述した分子量を有する光重合開始剤を少なくとも含有する粘着剤組成物、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されていないアクリル系重合体(B)、活性エネルギー線硬化性成分および前述した分子量を有する光重合開始剤を少なくとも含有する粘着剤組成物等が挙げられる。これらの粘着剤組成物のなかでも、活性エネルギー線照射後において加工後のワークを粘着面からより容易に分離し易くなるという観点から、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)および前述した分子量を有する光重合開始剤を少なくとも含有する粘着剤組成物を使用することが好ましい。
【0047】
(3-1)側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)
本実施形態における側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)(以下「活性エネルギー線硬化性重合体(A)」という場合がある。)としては、特に限定されず、例えば、官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)と、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)とを反応させて得られるものであることが好ましい。
【0048】
上記アクリル系共重合体(a1)は、官能基含有モノマーから導かれる構成単位と、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体から導かれる構成単位とを含むことが好ましい。
【0049】
アクリル系共重合体(a1)の構成単位としての官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基とを分子内に有するモノマーであることが好ましい。
【0050】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブ、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルト等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。上述したモノマーの中でも、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましく、特にアクリル酸2-ヒドロキシエチルが好ましい。
【0051】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
アミノ基含有モノマーまたは置換アミノ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
アクリル系共重合体(a1)が上記官能基含有モノマーを含む場合、アクリル系共重合体(a1)中における上記官能基含有モノマー由来の構造部分の質量の割合は、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また上記割合は、45質量%以下であることが好ましく、特に40質量%以下であることが好ましく、さらには35質量%以下であることが好ましい。官能基含有モノマー由来の構造部分の割合が上記範囲であることにより、不飽和基含有化合物(a2)の導入量を好適な範囲に調整し易くなる。
【0054】
アクリル系共重合体(a1)を構成する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~20である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が好ましく用いられる。
【0055】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特にアルキル基の炭素数が1~18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等が好ましく用いられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上述したモノマーの中でも、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、特にアクリル酸2-エチルヘキシルが好ましい。
【0056】
アクリル系共重合体(a1)が上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む場合、アクリル系共重合体(a1)中における上記(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構造部分の質量の割合は、20質量%以上であることが好ましく、特に30質量%以上であることが好ましく、さらには35質量%以上であることが好ましい。また上記割合は、99質量%以下であることが好ましく、特に95質量%以下であることが好ましく、さらには90質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構造部分の割合が上記範囲であることにより、所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0057】
上記アクリル系共重合体(a1)は、以上説明したモノマー以外の成分を構成モノマーとして含んでいてもよく、例えば、ジメチルアクリルアミド、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、脂環式構造を有するモノマー等を含んでいてもよい。これらの中でも、酢酸ビニルが好ましい。
【0058】
アクリル系共重合体(a1)が酢酸ビニルを含む場合、アクリル系共重合体(a1)中における酢酸ビニル由来の構造部分の質量の割合は、5質量%以上であることが好ましく、特に10質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また上記割合は、80質量%以下であることが好ましく、特に70質量%以下であることが好ましく、さらには60質量%以下であることが好ましい。酢酸ビニル由来の構造部分の割合が上記範囲であることにより、所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0059】
上記官能基含有モノマー単位を有するアクリル系共重合体(a1)を、その官能基に結合する官能基を有する不飽和基含有化合物(a2)と反応させることにより、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0060】
不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基は、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基含有モノマー単位の官能基の種類に応じて、適宜選択することができる。例えば、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がヒドロキシ基、アミノ基または置換アミノ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはイソシアネート基またはエポキシ基が好ましく、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基がエポキシ基の場合、不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基としてはアミノ基、カルボキシ基またはアジリジニル基が好ましい。
【0061】
また、上記不飽和基含有化合物(a2)には、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合が、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1~6個、さらに好ましくは1~4個含まれている。このような不飽和基含有化合物(a2)の具体例としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-(1-アジリジニル)エチル、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等が挙げられる。
【0062】
上記不飽和基含有化合物(a2)の量は、上記アクリル系共重合体(a1)が有する官能基の量にして、40モル%以上であることが好ましく、特に50モル%以上であることが好ましい。また、上記不飽和基含有化合物(a2)の量は、上記アクリル系共重合体(a1)が有する官能基の量にして、99モル%以下であることが好ましく、特に95%以下であることが好ましく、さらには90モル%以下であることが好ましい。
【0063】
アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応においては、アクリル系共重合体(a1)が有する官能基と不飽和基含有化合物(a2)が有する官能基との組合せに応じて、反応の温度、圧力、溶媒、時間、触媒の有無、触媒の種類を適宜選択することができる。これにより、アクリル系共重合体(a1)中に存在する官能基と、不飽和基含有化合物(a2)中の官能基とが反応し、不飽和基がアクリル系共重合体(a1)中の側鎖に導入され、活性エネルギー線硬化性重合体(A)が得られる。
【0064】
特に、アクリル系共重合体(a1)と不飽和基含有化合物(a2)との反応に使用される触媒としては、有機錫化合物、ジルコニウム錯体、亜鉛錯体およびジルコニウム含有金属石鹸から選択される少なくとも1種の有機金属触媒の存在下で行うことが好ましい。このような有機金属触媒が使用されることにより、粘着剤層と基材とが優れた密着性を示し易いものとなり、使用時等における基材と粘着剤層との分離を抑制し易くなる。
【0065】
上記有機錫化合物の例としては、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジオクチル錫ジラウレート(DOTDL)、ジブチル錫ジアセテート(DBTDA)、ジオクチル錫ジアセテート(DOTDA)、ジオクチル錫マレート(DOTM)、ジブチル錫マレート(DBTM)等が挙げられる。これらの中でも、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を使用することが好ましい。
【0066】
上記有機金属触媒として有機錫化合物を使用する場合、粘着剤組成物中における有機錫化合物の含有量は、アクリル系共重合体(a1)を構成するモノマーの総量100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.01質量部以上であることが好ましく、さらには0.02質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、0.3質量部未満であることが好ましく、特に0.1質量部以下であることが好ましく、さらには0.07質量部以下であることが好ましい。
【0067】
このようにして得られる活性エネルギー線硬化性重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、10万以上であることが好ましく、特に20万以上であることが好ましく、さらには30万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、120万以下であることが好ましく、特に100万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。
【0068】
(3-2)側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されていないアクリル系重合体(B)
側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されていないアクリル系重合体(B)としては、例えば、前述したアクリル系共重合体(a1)と同様の成分が使用できる。
【0069】
なお、上記アクリル系重合体(B)として使用されるアクリル系共重合体(a1)が前述した官能基含有モノマーを含む場合、当該アクリル系共重合体(a1)中における官能基含有モノマー由来の構造部分の質量の割合は、0.1質量%以上であることが好ましく、特に1質量%以上であることが好ましく、さらには3質量%以上であることが好ましい。また上記割合は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。官能基含有モノマー由来の構造部分の割合が上記範囲であることにより、所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0070】
また、上記アクリル系重合体(B)として使用されるアクリル系共重合体(a1)が前述した(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含む場合、当該アクリル系共重合体(a1)中における(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構造部分の質量の割合は、70質量%以上であることが好ましく、特に75質量%以上であることが好ましく、さらには80質量%以上であることが好ましい。また上記割合は、99.9質量%以下であることが好ましく、特に99質量%以下であることが好ましく、さらには97質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の構造部分の割合が上記範囲であることにより、所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0071】
(3-3)活性エネルギー線硬化性成分
本実施形態における活性エネルギー線硬化性成分としては、活性エネルギー線硬化性を有する成分である限り特に限定されない。なお、本明細書においては、活性エネルギー線硬化性成分とは、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)とは異なるものとする。
【0072】
本実施形態における粘着剤組成物が側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されていないアクリル系重合体(B)を含有する場合、当該粘着剤組成物がさらに活性エネルギー線硬化性成分を含有することで、本実施形態における粘着剤層が良好な活性エネルギー線硬化性を示すものとなる。なお、本実施形態における粘着剤組成物が側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体(A)を含有する場合であっても、当該粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化性成分を含有してもよい。
【0073】
活性エネルギー線硬化性成分の好ましい例としては、活性エネルギー線硬化性のモノマーおよび/またはオリゴマーが挙げられる。具体的な例としては(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性アクリル酸エステル類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート等の多官能性アクリル酸エステル類、ポリエステルオリゴ(メタ)アクリレート、ポリウレタンオリゴ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
本実施形態における粘着剤組成物が側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されていないアクリル系重合体(B)とともに活性エネルギー線硬化性成分を含有する場合、粘着剤組成物中における活性エネルギー線硬化性成分の含有量は、アクリル系重合体(B)100質量部に対して、30質量部超であることが好ましく、特に60質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、アクリル系重合体(B)100質量部に対して、250質量部以下であることが好ましく、特に200質量部以下であることが好ましい。
【0075】
(3-4)架橋剤
本実施形態における粘着剤組成物は、架橋剤を含有することも好ましい。粘着剤組成物が架橋剤を含有することにより、粘着剤層において、アクリル系重合体(A)またはアクリル系重合体(B)が架橋し、良好な三次元網目構造を形成することが可能となる。これにより、得られる粘着剤の凝集力がより向上し、活性エネルギー線の照射後にワーク加工用シートから分離されたワークにおいて、糊残りの発生を効果的に抑制することができる。なお、粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、アクリル系共重合体(a1)は、重合体を構成するモノマー単位として、上述した官能基含有モノマーを含有することが好ましく、特に、使用する架橋剤との反応性の高い官能基を有する官能基含有モノマーを含有することが好ましい。
【0076】
上記架橋剤の例としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。これらの架橋剤は、アクリル系共重合体が有する、官能基含有モノマー由来の官能基に応じて選択することができる。なお、これらの架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0078】
本実施形態における粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合、粘着剤組成物中における架橋剤の含有量は、アクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)の合計量(アクリル系重合体(A)およびアクリル系重合体(B)の一方のみを含有する場合には、当該含有される成分の含有量)100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.5質量部以上であることが好ましく、さらには3質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、20質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部以上であることで、活性エネルギー線の照射後における粘着剤層の凝集力を向上させ易くなり、それによって、糊残りを効果的に抑制することが可能となる。また、架橋剤の含有量が20質量部以下であることで、架橋の程度が適度なものとなり、粘着剤層が所望の粘着力を発揮し易くなる。
【0079】
(3-5)光重合開始剤
本実施形態における光重合開始剤は、前述した通り、分子量が210以上、1000以下である限り、特に限定されない。当該分子量は、特に2以上であることが好ましく、さらには230以上であることが好ましい。また、当該分子量は、特に900以下であることが好ましく、さらには800以下であることが好ましい。本実施形態における粘着剤組成物が光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線を照射して粘着剤層を硬化させる際の重合硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。そして、光重合開始剤の上記範囲であることにより、粘着剤層の形成時における光重合開始剤の揮発を抑制し易くなり、結果として、より優れたピックアップ性を達成し易くなる。
【0080】
また、本実施形態における光重合開始剤は、大気雰囲気下における10%重量減少温度が、200℃以上であることが好ましく、特に230℃以上であることが好ましく、さらには260℃以上であることが好ましい。また、当該10%重量減少温度は、500℃以下であることが好ましく、特に450℃以下であることが好ましく、さらには400℃以下であることが好ましい。10%重量減少温度が上記範囲であることにより、粘着剤層の形成時における光重合開始剤の揮発をさらに抑制し易くなる。
【0081】
なお、上記10%重量減少温度は、示差熱・熱重量同時測定装置( 株式会社島津製作所製,製品名「DTG-60」)を用い、JIS K7120:1987に準拠して測定されるものであり、具体的には、流入ガスとして大気または窒素を用いて、ガス流入速度100ml/min、昇温速度20℃/minで、40℃から550℃まで昇温させて熱重量測定を行い、得られた熱重量曲線から、温度100℃での質量に対して質量が10%減少する温度として求められるものである。
【0082】
光重合開始剤の例としては2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(分子量:340.4)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(分子量:348.4)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(分子量:256.3)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-メチルプロパノン(分子量:224.3)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(分子量:279.4)、2-ベンジル-2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルフォリノブチロフェノン(分子量:366.5)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド(分子量:418.5)等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
粘着剤組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、特に1.5質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、10質量部以下であることが好ましく、7質量部以下であることがより好ましく、特に5質量部以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が上記範囲であることで、活性エネルギー線の照射によって、粘着剤層を効率良く硬化させることができ、それにより、被着体に対するワーク加工用シートの粘着力を良好に低下させ易くなる。
【0084】
(3-6)その他の成分
本実施形態における粘着剤組成物は、本実施形態に係るワーク加工用シートによる前述した効果を損なわない限り、所望の添加剤、例えばシランカップリング剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。
【0085】
(3-7)粘着剤組成物の調製方法
本実施形態における粘着剤組成物は、光重合開始剤とその他の成分(アクリル系重合体(A)、アクリル系重合体(B)、活性エネルギー線硬化性成分、架橋剤、添加剤等)とを混合することで製造することができる。このとき、所望により希釈溶剤を添加して、粘着剤組成物の塗布液を得てもよい。
【0086】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0087】
このようにして調製された塗布液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であれば特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着剤組成物の濃度が10質量%以上、60質量%以下となるように希釈する。なお、塗布液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着剤組成物は、アクリル系共重合体(a1)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布液となる。
【0088】
(3-8)粘着剤層の厚さ
本実施形態における粘着剤層の厚さは、前述の通り、3μm未満であり、特に2μm以下であることが好ましく、さらには1.5μm以下であることが好ましい。粘着剤層の厚さが当該範囲であることにより、優れた帯電防止性を発揮し易いものとなる。また、粘着剤層の厚さは、0.5μm以上であり、特に0.7μm以上であることが好ましく、さらには0.9μm以上であることが好ましい。粘着剤層の厚さが当該記範囲であることにより、所望の粘着力を発揮し易くなる。
【0089】
(4)剥離シート
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面(粘着面)をワークに貼付するまでの間、当該面を保護する目的で、当該面に剥離シートが積層されていてもよい。
【0090】
上記剥離シートの構成は任意であり、プラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル、ゴム系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0091】
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、16μm以上、250μm以下であってよい。
【0092】
(5)その他
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における基材とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。当該シートでは、接着剤層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたチップを得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該チップが搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0093】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層における粘着面に保護膜形成層が積層されていてもよい。この場合、本実施形態に係るワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。このようなシートでは、保護膜形成層における粘着剤層とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたチップを得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をチップに形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0094】
2.ワーク加工用シートの物性
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層に対して活性エネルギー線を照射した前後における、粘着剤層の前記基材とは反対側の面の表面抵抗率が、1.0×1011Ω/□以下であり、特に1010Ω/□以下であることが好ましく、さらには10Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が上記範囲であることにより、優れた帯電防止性を発揮し易いものとなる。なお、上記表面抵抗率の下限値については特に限定されず、1.0×10Ω/□以上であってよく、特に10Ω/□以上であってよく、さらには10Ω/□以上であってよい。上記表面抵抗率の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0095】
本実施形態に係るワーク加工用シートでは、活性エネルギー線照射前におけるシリコンウエハ(鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面,以下同じ)に対する粘着力が、500mN/25mm以上であることが好ましく、特に700mN/25mm以上であることが好ましく、さらには900mN/25mm以上であることが好ましい。活性エネルギー線照射前におけるシリコンウエハに対する粘着力が900mN/25mm以上であることで、ワークをワーク加工用シート上に良好に固定し易くなり、意図しないワーク(特に個片化後のワーク)の脱落(特にチップ飛び)を良好に防止し易くなる。なお、上記粘着力の上限値については特に限定されないものの、例えば、20000mN/25mm以下であることが好ましく、特に10000mN/25mm以下であることが好ましく、さらには7000mN/25mm以下であることが好ましい。上記粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0096】
また、本実施形態に係るワーク加工用シートでは、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力が、300mN/25mm以下であることが好ましく、特に200mN/25mm以下であることが好ましく、さらには100mN/25mm以下であることが好ましい。本実施形態に係るワーク加工用シートでは、粘着剤層が活性エネルギー線硬化性粘着剤から構成されているとともに、上述した分子量を有する光重合開始剤が使用されていることにより、活性エネルギー線照射後において、上述のように粘着力を十分低下させることが可能となる。そして、活性エネルギー線照射後におけるワークに対する粘着力が100mN/25mm以下であることで、加工後のワークをワーク加工用シートから剥離し易くなる。また、活性エネルギー線照射後におけるシリコンウエハに対する粘着力は、10mN/25mm以上であることが好ましく、特に15mN/25mm以上であることが好ましく、さらには20mN/25mm以上であることが好ましい。これにより、活性エネルギー線照射後における意図しない段階でのワークの分離・脱落を抑制し易いものとなる。なお、上記粘着力の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載する通りである。
【0097】
3.ワーク加工用シートの製造方法
本実施形態に係るワーク加工用シートの製造方法は特に限定されず、好ましくは、基材の片面側に粘着剤層を積層することにより製造される。
【0098】
基材の片面側への粘着剤層の積層は、公知の方法により行うことができる。例えば、剥離シート上において形成した粘着剤層を、基材の片面側に転写することが好ましい。この場合、粘着剤層を構成する粘着剤組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗工液を調製し、剥離シートの剥離処理された面(以下「剥離面」という場合がある。)上に、ダイコーター、カーテンコーター、スプレーコーター、スリットコーター、ナイフコーター、アプリケータ、ロールナイフコーター等によりその塗工液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成することができる。塗工液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、粘着剤層を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。この積層体における剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、ワーク加工用シートを被着体に貼付するまでの間、粘着剤層の粘着面を保護するために用いてもよい。
【0099】
粘着剤層を形成するための塗工液が架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のアクリル系共重合体と架橋剤との架橋反応を進行させ、粘着剤層内に所望の存在密度で架橋構造を形成させればよい。この架橋反応を十分に進行させるために、上記の方法などによって基材に粘着剤層を積層させた後、得られたワーク加工用シートを、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0100】
上述のように剥離シート上で形成した粘着剤層を基材の片面側に転写する代わりに、基材上で直接粘着剤層を形成してもよい。この場合、前述した粘着剤層を形成するための塗工液を基材の片面側に塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることにより、粘着剤層を形成する。
【0101】
本実施形態に係るワーク加工用シートが導電層を備える場合には、前述した通り、導電性高分子等を含む塗布液中に基材を浸漬するか、または、該塗布液を基材の片面または両面上に塗布することで塗膜を形成し、当該塗膜を乾燥させることで導電層を形成する。そして、当該塗膜が形成された基材に対し、上述した通り粘着剤層を積層または形成することで、導電層を備えるワーク加工用シートを得ることができる。
【0102】
4.ワーク加工用シートの使用方法
本実施形態に係るワーク加工用シートは、半導体ウエハ等のワークの加工のために使用することができる。すなわち、本実施形態に係るワーク加工用シートの粘着面をワークに貼付した後、ワーク加工用シート上にてワークの加工を行うことができる。当該加工に応じて、本実施形態に係るワーク加工用シートは、バックグラインドシート、ダイシングシート、エキスパンドシート、ピックアップシート等として使用されることとなる。ここで、ワークの例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。
【0103】
本実施形態に係るワーク加工用シートは、前述した通り、優れたピックアップ性を示すとともに、剥離帯電の発生を良好に抑制することができる。そのため、本実施形態に係るワーク加工用シートは、特にダイシングシートおよびピックアップシートの少なくとも一方として使用することが好適である。
【0104】
本実施形態に係るワーク加工用シートの好適な使用方法としては、粘着剤層における基材とは反対側の面をワークに貼付する工程と、ワーク加工用シート上においてワークの加工を行う工程とを含む使用方法が挙げられる。
【0105】
なお、本実施形態に係るワーク加工用シートが前述した接着剤層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、ダイシング・ダイボンディングシートとして使用することができる。さらに、本実施形態に係るワーク加工用シートが前述した保護膜形成層を備える場合には、当該ワーク加工用シートは、保護膜形成兼ダイシング用シートとして使用することができる。
【0106】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0107】
例えば、基材と粘着剤層との間、または基材における粘着剤層とは反対側の面には、その他の層が設けられてもよい。
【実施例0108】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0109】
〔実施例1〕
(1)基材の作製
エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)(三井・デュポンポリケミカル社製,製品名「ニュクレルN0903HC」)を、小型Tダイ押出機(東洋精機製作所社製,製品名「ラボプラストミル」)によって押出成形することで、厚さ80μmのEMAAフィルムを得た。そして、得られたEMAAフィルムの両面に対し、コロナ処理を行った。これにより、基材を得た。
【0110】
(2)導電層の形成
イオン交換水1Lに、ピロール(東京化成工業社製)13.4gを溶解させて、濃度0.2mol/Lのピロール水溶液を調製した。また、イオン交換水1Lに、塩化鉄(III)(富士フィルム和光純薬製)8.1gを溶解させて、濃度0.05mol/Lの塩化鉄水溶液を調製した。そして、調製したこれらの水溶液を1:1の割合で混合することで、導電層形成用溶液を得た。
【0111】
上記工程(1)にて作製した基材を筒上に巻き取り、40℃に調温した上記導電層形成用溶液中に3時間浸漬した。浸漬後、基材をイオン交換水で十分に洗浄した後、エアーによって表面の水分をとばした。これにより、基材の両面に厚さ50nmの導電層をそれぞれ形成した。
【0112】
(3)粘着剤組成物の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル35質量部と、酢酸ビニル45質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを、溶液重合法により重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。続いて、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体を構成するアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する量の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を添加するとともに、スズ含有触媒としてのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.15質量部の量で添加した。その後、50℃で24時間反応させることで、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体を得た。当該活性エネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量を後述の方法によって測定したところ、50万であった。
【0113】
上記で得られた、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入された(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部(固形分換算,以下同じ)と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド127」,分子量:340.4,10%重量減少温度:294℃)2質量部と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(三井化学社製,製品名「タケネートD-101E」)0.21質量部とを溶媒中で混合し、固形分濃度20%の粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0114】
(4)粘着剤層の形成
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382150」)の剥離面に対して、ロールナイフコーターを用いて、上記工程(3)で得られた粘着剤組成物の塗布液を塗布し、100℃で1分間乾燥させることで、剥離シート上に厚さ1μmの粘着剤層が形成されてなる積層体を得た。
【0115】
(5)ワーク加工用シートの作製
上記工程(2)で得られた、基材の両面に導電層が形成されてなる積層体の片面と、上記工程(4)で得られた積層体における粘着剤層側の面とを貼り合わせることで、ワーク加工用シートを得た。
【0116】
(6)重量平均分子量の測定
前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0117】
〔実施例2~3および比較例1~4〕
光重合開始剤の種類、架橋剤の含有量および粘着剤層の厚さを表1に示す通り変更した以外、実施例1と同様にしてワーク加工用シートを得た。
【0118】
〔試験例1〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを100mm×100mmに裁断し、これを表面抵抗率測定用サンプルとした。当該表面抵抗率測定用サンプルを23℃、50%相対湿度下で24時間調湿したのち、剥離シートを剥離し、粘着剤面の表面抵抗率(Ω/□)を、DIGITAL ELECTROMETER(ADVANTEST社製)を用いて印加電圧100Vで測定した。これにより得られた値を、活性エネルギー線照射前(UV前)の表面抵抗率として表1に示す。
【0119】
上記と同様に得た表面抵抗率測定用サンプルに対し、基材側の面から紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線照射(照度:230mW/cm、光量:190mJ/cm)を行った。その後、上記と同様にして、粘着剤面の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。これにより得られた値を、活性エネルギー線照射後(UV後)の表面抵抗率として表1に示す。
【0120】
〔試験例2〕(粘着力の測定)
実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートを、25mm幅の短冊状に裁断した。得られた短冊状のワーク加工用シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面を、鏡面加工してなるシリコンウエハの当該鏡面に対して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、2kgゴムローラーを用いて貼付し、20分静置し、測定用サンプルとした。なお、上記シリコンウエハにおける上記鏡面は、研削してから1か月以上経過し、活性が消失した面(通常面)であった。
【0121】
得られた測定用サンプルについて、万能引張試験機(オリエンテック社製,製品名「テンシロンUTM-4-100」)を用い、シリコンウエハから、剥離速度300mm/min、剥離角度180°にてワーク加工用シートを剥離し、JIS Z0237:2009に準じた180°引き剥がし法により、シリコンウエハに対する粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、活性エネルギー線照射前(UV前)における粘着力として表1に示す。
【0122】
また、上記と同様に取得した測定用サンプルについて、シリコンウエハ貼付20分後において、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて紫外線(UV)照射(照度:230mW/cm、光量:190mJ/cm)を行った。当該紫外線照射後における測定用サンプルについて、上記と同様に粘着力(mN/25mm)を測定した。これにより得られた粘着力を、活性エネルギー線照射後(UV後)の粘着力として表1に示す。
【0123】
〔試験例3〕(ピックアップ性の評価)
グラインダー(ディスコ社製,製品名「DFG8540」)を用いて、厚さが150μmとなるまで、6インチシリコンウエハの片面を研削した。当該研削面に対し、ラミネーターを用いて、実施例および比較例にて製造したワーク加工用シートから剥離シートを剥離して露出した粘着剤層の露出面を貼付した。
【0124】
貼付から4時間後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、以下のダイシング条件でダイシングを行うことで、シリコンウエハをチップに個片化した。
ダイシング条件
チップサイズ:10mm×10mm
カッティング高さ:60μm
ブレード:製品名「ZH05-SD2000-Z1-90 CC」
ブレード回転数:35000rpm
切削スピード:60mm/sec
切削水量:1.0L/min
切削水温度:20℃
【0125】
続いて、チップが積層されてなるワーク加工用シートにおけるワーク加工用シート側の面に対し、紫外線照射装置(リンテック社製,製品名「RAD-2000」)を用いて、紫外線(UV)照射(照度:230mW/cm、光量:190mJ/cm)を行った。
【0126】
次いで、ワーク加工用シートを平面視したときの中心付近に位置する1つのチップについて、ピックアップ装置を用いて、常温下で、突き上げ速度を5mm/sec、保持時間を0.1msecとし、突き上げ量を所定の値に設定して、ニードルを用いて、チップの突き上げを行った。当該突き上げと同時に、10mm×10mmのサイズの真空コレットでワーク加工用シートからのチップの引き離しを試みた。これらチップの突き上げとコレットによる引き離しとを、突き上げ量を段階的に変えながら繰り返し、3回連続して異常を伴うことなくピックアップできた場合の突き上げ高さ(μm)の最小値を求めた。当該値を表1に示す。
【0127】
なお、表1に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
オムニラッド127:2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド127」,分子量:340.4,10%重量減少温度:294℃)
オムニラッドTPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(IGM Resins社製,製品名「オムニラッドTPO」,分子量:348.4,10%重量減少温度:284℃)
オムニラッド651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド651」,分子量:256.3,10%重量減少温度:208℃)
オムニラッド184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IGM Resins社製,製品名「オムニラッド184」,分子量:204.3,10%重量減少温度:189℃)
【0128】
【表1】
【0129】
表1から分かるように、実施例で得られたワーク加工用シートは、表面抵抗率が十分に低下した。そのため、実施例で得られたワーク加工用シートは、剥離帯電を良好に抑制できると予想される。また、実施例で得られたワーク加工用シートは、活性エネルギー線の照射前において良好な粘着力を示す一方で、活性エネルギー線の照射により上記粘着力を低下させることができた。その結果として、ピックアップ時の突き上げ高さが低く抑えられ、優れたピックアップ性を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のワーク加工用シートは、半導体ウエハ等のワークの加工に好適に使用することができる。