(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121577
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】防火安全ガラス窓
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20240830BHJP
E06B 1/36 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028742
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁仁
(72)【発明者】
【氏名】山岡 一郎
(72)【発明者】
【氏名】川妻 幸宏
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011DA01
2E239CA05
2E239CA22
2E239CA32
2E239CA52
(57)【要約】
【課題】火災等が発生した場合であっても、加熱側で発生した火炎を遮るとともに、液化した樹脂製中間膜が非加熱側に漏れ出て、火炎が広がるのを防止することができる防火安全ガラス窓を提供する。
【解決手段】上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23を有する矩形枠状の窓枠2と、複数のガラス板31、及び複数のガラス板31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23の少なくとも1つの枠材に設けられ、当該枠材の側面を開口する第2開口孔25とを備える防火安全ガラス窓1であって、第2開口孔25に着脱可能に嵌め込まれる封止材71と、封止材71を覆うように配置されるカバー部材72とを備え、カバー部材72は、板状の金属部材からなり、封止材71と一体的に固定され、且つ第2開口孔25の両側にて窓枠2と固定されてなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠部、下枠部、及び一対の側枠部を有する矩形枠状の窓枠と、
複数のガラス板、及び前記複数のガラス板の間に形成された樹脂製中間膜からなり、前記窓枠の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板と、
前記上枠部、下枠部、及び一対の側枠部の少なくとも1つの枠材に設けられ、当該枠材の側面を開口する排出孔とを備える防火安全ガラス窓であって、
前記排出孔に着脱可能に嵌め込まれる封止材と、
前記封止材を覆うように配置されるカバー部材とを備え、
前記カバー部材は、
板状の金属部材からなり、
前記封止材と一体的に固定されてなるとともに、
前記排出孔の両側にて前記窓枠と固定されてなる、
ことを特徴とする防火安全ガラス窓。
【請求項2】
前記カバー部材は、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、
前記封止材は、前記貫通孔と同軸上に貫通する雌螺孔を有し、
前記カバー部材と前記封止材とは、
前記貫通孔に挿入され、且つ前記雌螺孔と螺合する締結部材によって一体的に固定され、
前記貫通孔の内径は、
前記締結部材における、前記貫通孔に挿入される領域の外径に比べて大きい、
ことを特徴とする、請求項1に記載の防火安全ガラス窓。
【請求項3】
前記排出孔は、
前記窓枠の枠材における外側から内側に向かって、開口面積が徐々に縮小するテーパ状に形成され、
前記封止材は、
前記排出孔の形状に沿ったテーパ状に形成される、
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の防火安全ガラス窓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火安全ガラス窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、百貨店等の商業施設や、市役所等の公共施設、或いはオフィスビルなどの大型建築物において、当該大型建築物の開口部を塞ぐ防火安全ガラス窓が知られている。
この種の防火安全ガラス窓においては、火災時における火炎や煙を遮断して延焼を最大限に食い止める防火戸としての機能と、平常時に衝撃を受けて破損した場合であっても破片が飛散せず貫通孔を生じない安全ガラスとしての機能とを兼ね備えている必要があり、国土交通省から特定防火設備として認定されたものを用いるのが一般的である。
なお、特定防火設備とは、建築基準法施行令第112条第1項に規定されており、通常の火災による火炎に晒された場合に、加熱開始後1時間、加熱面以外の面に火炎を出さない性能を有するものであり、国土交通省から指定された評価試験機関による試験に合格した防火設備である。
【0003】
このような防火安全ガラス窓の一例として、例えば特許文献1においては、矩形枠状に形成された窓枠と、樹脂層(樹脂製中間膜)を介在して積層された第1板ガラス及び第2板ガラス(複数のガラス板)からなり、外縁に沿って当該窓枠に嵌め込まれた合わせガラス(防火安全ガラス板)とを備える防火窓(防火安全ガラス窓)が開示されている。
【0004】
上記防火安全ガラス窓においては、防火安全ガラス板の下端と、窓枠の下枠(下枠部)に設けられる溝部との間に、複数(例えば2個)のセッティングブロックが設けられており、防火安全ガラス板は、これら複数のセッティングブロックによって支持されている。
また、窓枠の下枠部には、上記溝部の底面を貫通する複数の内周壁貫通孔(第1開口孔)と、当該下枠部の側面を貫通する第1側壁貫通孔及び第2側壁貫通孔(複数の第2開口孔)とが設けられている。
なお、上記複数の第1開口孔は、セッティングブロックの直下を避けた所定の位置に、各々配置されている。
【0005】
そして、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から上記下枠部の溝部へと漏れ出した場合、液化した樹脂製中間膜(以下、適宜「液化中間膜」と記載する)は、複数の第1開口孔を介して下枠部の内部に漏れ出し、その後、複数の第2開口孔(排出孔)を介して窓枠の外部へと排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から下枠部の内部に漏れ出した場合、火災が発生している側(以下、適宜「加熱側」と記載する)においては、複数の第2開口孔(排出孔)を介して、液化中間膜を直ちに窓枠の外部へと排出する一方、火災が発生していない側(以下、適宜「非加熱側」と記載する)においては、複数の第2開口孔(排出孔)を介して、液化中間膜が窓枠の外部に排出されるのを防止する必要がある。
これは、液化中間膜が一般的に引火し易く、当該液化中間膜が非加熱側に排出されることにより火災が噴出し、当該非加熱側にまで延焼が広がるのを防止するためである。
【0008】
このようなことから、窓枠の下枠部に設けられる複数の第2開口孔(排出孔)については、平常時においては確実に封止された状態とする一方、火災等が発生した場合においては、加熱側に位置する第2排出孔に限って、直ちに開封された状態とすることが好ましい。
前記特許文献1においては、第2実施形態及び第3実施形態において、特に、金属製のプレート部材(第1金属プレート部材及び第2金属プレート部材)によって、上記複数の第2開口孔(排出孔)を塞ぐこととし、火災時においては、各プレート部材に熱膨張が生じることにより、所定の第2開口孔(排出孔)が開放される構成が開示されている。
【0009】
しかしながら、前記特許文献1における第2実施形態及び第3実施形態において、第2開口部(排出孔)は、単にプレート部材によって塞がれているだけであるため、密閉性が比較的低く、火災等が発生した場合において、プレート部材と第2開口部(排出孔)との間の隙間を介して、非加熱側に液化中間膜が流入する虞があり、防火安全ガラス窓の防火性能として十分ではなかった。
【0010】
本発明は、以上に示した現状の問題点に鑑みてなされたものであり、例えば火災等が発生した場合であっても、加熱側で発生した火炎を遮るとともに、液化した樹脂製中間膜が非加熱側に漏れ出て、火炎が広がるのを防止することができる防火安全ガラス窓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、本発明に係る防火安全ガラス窓の第1形態においては、上枠部、下枠部、及び一対の側枠部を有する矩形枠状の窓枠と、複数のガラス板、及び前記複数のガラス板の間に形成された樹脂製中間膜からなり、前記窓枠の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板と、前記上枠部、下枠部、及び一対の側枠部の少なくとも1つの枠材に設けられ、当該枠材の側面を開口する排出孔とを備える防火安全ガラス窓であって、前記排出孔に着脱可能に嵌め込まれる封止材と、前記封止材を覆うように配置されるカバー部材とを備え、前記カバー部材は、板状の金属部材からなり、前記封止材と一体的に固定されてなるとともに、前記排出孔の両側にて前記窓枠と固定されてなることを特徴とする。
このような構成を有することにより、例えば火災等による加熱によって、板状の金属部材からなるカバー部材に熱膨張が生じると、当該カバー部材は、排出孔の両側にて窓枠と固定されているため、排出孔より封止材を引き抜くように、窓枠の外側(加熱側)に向かって凸状に湾曲し、当該排出孔が直ちに開放される。
よって、樹脂製中間膜が液化し、防火安全ガラス板から窓枠の枠材内に漏れ出した場合、火災が発生している側(加熱側)においては、直ちに排出孔から封止材を離脱させ、当該排出孔から液化した樹脂製中間膜を外部に排出することができる。
一方、火災が発生していない側(非加熱側)においては、封止材によって排出孔を確実に塞ぐことができ、液化した樹脂製中間膜が外部に排出されるのを防止することができる。
従って、本発明に係る防火安全ガラス窓によれば、加熱側で発生した火災による火炎を遮るとともに、液化した樹脂製中間膜が非加熱側に漏れ出て、火炎が広がるのを防止することができる。
【0013】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓の第2形態においては、上記第1形態において、前記カバー部材が、厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記封止材は、前記貫通孔と同軸上に貫通する雌螺孔を有し、前記カバー部材と前記封止材とは、前記貫通孔に挿入され、且つ前記雌螺孔と螺合する締結部材によって一体的に固定され、前記貫通孔の内径は、前記締結部材における、前記貫通孔に挿入される領域の外径に比べて大きいことを特徴とする。
このような構成を有することにより、カバー部材の貫通孔と、当該貫通孔に挿入された締結部材との隙間を介して、カバー部材と封止材との相対位置のズレを吸収し、これら両部材(カバー部材及び封止材)の固定作業を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る防火安全ガラス窓の第3形態においては、上記第1形態または上記第2形態において、前記排出孔が、前記窓枠の枠材における外側から内側に向かって、開口面積が徐々に縮小するテーパ状に形成され、前記封止材は、前記排出孔の形状に沿ったテーパ状に形成されることを特徴とする。
このような構成を有することにより、枠材の外側から、排出孔に封止材を嵌め込み挿着する際、当該排出孔は枠材の内側に向かって狭まるテーパ状に形成されているため、容易に封止材を排出孔に挿着することができる。
また、例えば火災等による加熱によって液化した樹脂製中間膜を、排出孔を介して枠材の内側から外側に排出する際、当該排出孔は枠材の外側に向かって広がるテーパ状に形成されているため、効率よく樹脂製中間膜を排出することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
即ち、本発明に係る防火安全ガラス窓によれば、例えば火災等が発生した場合であっても、加熱側で発生した火炎を遮るとともに、液化した樹脂製中間膜が非加熱側に漏れ出て、火炎が広がるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る防火安全ガラス窓の全体的な構成を示した正面図である。
【
図2】防火安全ガラス窓の下枠部における構成を示した図であって、
図1中の矢視X1の方向に見た拡大断面図である。
【
図3】防火安全ガラス窓の下枠部における構成を示した図であって、
図2中の矢視X2の方向に見た拡大平面図である。
【
図4】封止材が固定されたカバー部材の動作を説明するための図であって、(a)は平常時におけるカバー部材の状態を示した拡大平面図であり、(b)は火災等により加熱された場合におけるカバー部材の状態を示した拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、
図1乃至
図4を用いて説明する。
なお、以下の説明に関しては便宜上、
図1乃至
図4に示した矢印の方向によって、防火安全ガラス窓1の前後方向、左右方向、及び上下方向を規定して説明する。
【0018】
[防火安全ガラス窓1の全体構成]
先ず、本実施形態における防火安全ガラス窓1の全体構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0019】
防火安全ガラス窓1は、例えば、百貨店、スーパー等の商業施設や、市役所、病院、駅ビル等の公共施設、或いはオフィスビルなどの大型建築物の開口部に用いられ、当該開口部を採光可能に塞ぐものである。
防火安全ガラス窓1は、
図1に示すように、主に、矩形枠状の窓枠2と、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、防火安全ガラス板3の下端を支持するセッティングブロック4と、窓枠2の両側面を開口する開口孔(より具体的には、後述する第2開口孔25)と、当該開口孔(第2開口孔25)を封止する封止機構7とを備える。
また、防火安全ガラス窓1は、施工の際に設けられ、窓枠2に嵌め込まれた防火安全ガラス板3の固定、及び水や泥水等の窓枠2内への侵入防止などを目的として、窓枠2と防火安全ガラス板3との隙間に封入される、充填材5及び防火性シリコーン6等を備える。
【0020】
窓枠2は、火災によって軟化、燃焼しない材質により構成することができる。
例えば、窓枠2の素材としては、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅等の金属製部材が挙げられるが、窓枠2は、亜鉛メッキ等の防錆加工が施された、鋼板製の中空材によって構成されるのが好ましい。
【0021】
窓枠2は、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23を有する。
上枠部21は、例えば、一方向に延出する断面視略凹形状であり、一側面の中央に設けられた断面視矩形状の上枠側溝部21aを下方に向け、且つ長さ方向(延出方向)を左右方向とした状態で配置される。
また、一対の側枠部23・23も上枠部21と同様に、それぞれ一方向に延出する断面視略凹形状であり、一側面の中央に設けられた断面視矩形状の側枠側溝部23a・23aを互いに対向させ、且つ長さ方向(延出方向)を上下方向とした状態で平行に配置される。
【0022】
一方、
図2に示すように、下枠部22は、枠本体部22a、及び枠本体部22aに固定される押縁22bなどにより構成される。
【0023】
枠本体部22aは、一方向に延出する断面視略L形状であり、第1上面22a1、第1上面22a1に対して下方に位置する第2上面22a2、第2上面22a2に対して下方に位置する下面22a3、第1上面22a1と下面22a3とを連結する第1側面22a4、第2上面22a2と下面22a3とを連結する第2側面22a5、及び第1上面22a1と第2上面22a2とを連結する第3側面22a6とを有する。
また、押縁22bは、一方向に延出する断面視矩形状を有し、その高さ寸法hは、第1上面22a1と第2上面22a2との離間寸法d1と略同等であるとともに(h=d1)、その幅寸法Waは、第2側面22a5と第3側面22a6との離間寸法d2に比べて十分小さい(Wa<d2)。
【0024】
押縁22bは、第2上面22a2上において、第3側面22a6と所定の離間間隔(後述する幅寸法W1)を有した状態で、当該枠本体部22aの長さ方向(延出方向)に沿って配置され、ボルト等の締結部材によって着脱可能に固定される。
これにより、下枠部22の一側面の中央には、第2上面22a2と第3側面22a6と押縁22bとにより構成される、断面視矩形状の下枠側溝部22cが、当該下枠部22の長さ方向(延出方向)に沿って形成される。
【0025】
そして、
図1に示すように、下枠部22は、上枠部21の下方において、下枠側溝部22cを上枠側溝部21aと対向させた状態で(即ち、下枠側溝部22cを上方に向けた状態で)、長さ方向(延出方向)を左右方向とし、且つ当該上枠部21の長さ方向(延出方向)と平行に配置される。
【0026】
このような構成からなる、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23は、後述するように、溶接やネジ止め等によって互いに一体的に連結され、内側の側面に沿って、断面視矩形状の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)が設けられた、矩形枠状の窓枠2として構築される。
そして、窓枠2は、上記溝部を介して、防火安全ガラス板3の周縁部を嵌め込み、充填材5及び防火性シリコーン6等を介して、当該防火安全ガラス板3を固定する。
【0027】
なお、本実施形態において例示する窓枠2の寸法は、外寸が2495mm×1250mm×125mmであり、内寸が2400mm×1200mm×125mmである。
また、窓枠2の内側に設けられる、断面視矩形状の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)の幅寸法は、何れも略同等である。
【0028】
そして、上記溝部の幅寸法(例えば、
図2に示す幅寸法W1)は、防火安全ガラス板3の厚み寸法tに応じて設定されており、例えば、(上記溝部の幅寸法W1)-(防火安全ガラス板3の厚み寸法t)=+5~15mmである。
【0029】
防火安全ガラス板3は、
図2に示すように、複数(例えば、本実施形態においては2枚)のガラス板31・31、及び2枚のガラス板31・31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、2枚のガラス板31・31を樹脂製中間膜32によって貼り付けることで積層された、ガラス積層体である。
【0030】
防火安全ガラス板3は、2枚のガラス板31・31の間に、樹脂製中間膜32を挟んで積層状態とし、オートクレーブ等の加熱手段によって加熱することにより樹脂製中間膜32を融着させて、2枚のガラス板31・31と樹脂製中間膜32とを一体化させることで、製造することができる。
【0031】
樹脂製中間膜32としては、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂,UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂(PUR)、熱硬化性ポリイミド(PI)等の熱硬化性樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂(THV)、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリビニルアルコール樹脂(PVA)、アイオノマー樹脂等の熱可塑性樹脂、その他紫外線硬化樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂の中でも、THV樹脂、EVA樹脂、PVB樹脂は、コスト面や接着性の面に優れているため好ましい。
【0032】
このように、2枚のガラス板31・31を積層させることにより、防火安全ガラス板3の強度を高めることが可能となる。
また、樹脂製中間膜32が介在しているため、非常に強い衝撃が加わり、防火安全ガラス板3が破損したとしても、破片が飛散する虞がなくなり、安全性が向上する。
【0033】
なお、本実施形態においては、2枚のガラス板31・31を積層しているが、防火性に応じて3枚以上のガラス板31を積層してもよい。
また、複数枚のガラス板31・31・・・のうち、少なくとも一枚が耐熱ガラス板からなることにより、最低限の防火性能を付与できるが、優れた防火性能とするためには、全てのガラス板31が耐熱ガラス板からなることが好ましい。
【0034】
セッティングブロック4は、下枠部22の下枠側溝部22c内に配置され、防火安全ガラス板3の下端を支持する。
セッティングブロック4は、例えば、ケイ酸カルシウム等の耐火物や、アルミニウム、鋼、ステンレス、銅等の金属を素材とする直方体形状の部材からなり、長手方向を下枠側溝部22cの長さ方向(延出方向)とした状態で、当該下枠側溝部22cの底面(より具体的には、第2上面22a2)に載置される。
【0035】
セッティングブロック4・4は、例えば、1枚の防火安全ガラス板3に対して複数(例えば、本実施形態においては2個)設けられており、
図1に示すように、防火安全ガラス板3の左右中心となる中心線CLに対して、左側の領域である左ガラス部分S1の下端の左右中間部と、右側の領域である右ガラス部分S2の下端の左右中間部とを、各々支持するように配設される。
【0036】
具体的には、これら2個のセッティングブロック4・4は、防火安全ガラス板3の幅寸法Wの1/4程度の間隔d4を有して(d4=(1/4)×W)、窓枠2における両側の側枠部23・23(より具体的には、側枠側溝部23aの底面)から各々離間した位置に配置される。
これにより、左右一対のセッティングブロック4・4によって、防火安全ガラス板3を効率よく安定して支持することができる。
【0037】
なお、金属製部材によってセッティングブロック4が形成される場合、当該セッティングブロック4と当接する防火安全ガラス板3の下端を保護するために、例えば、シリカ繊維やガラス繊維等からなる耐熱シートを、これら両部材の間(防火安全ガラス板3の下端と、セッティングブロック4の上面との間)に介在させることが好ましい。
【0038】
図2に示すように、下枠部22における下枠側溝部22cの底面(第2上面22a2)には、枠本体部22aの内部に繋がる第1開口孔24が設けられている。
また、下枠部22の両側面(より具体的には、第1側面22a4及び第2側面22a5)には、枠本体部22aの内部に繋がる第2開口孔25・25が各々設けられている。
つまり、下枠部22の両側面(第1側面22a4及び第2側面22a5)には、第1開口孔24を介して下枠側溝部22cと繋がり、窓枠2の外部に向かって当該両側面を開口する第2開口孔25・25が設けられている。
なお、第2開口孔25は、本発明に係る排出孔の一例である。
【0039】
第1開口孔24・24・24は、1枚の防火安全ガラス板3に対して複数(例えば、本実施形態にいては3個所)設けられており、
図1に示すように、中心線CLに対して左右対称となるように配置されている。
具体的には、これら3個所の第1開口孔24・24・24は、防火安全ガラス板3の下端を支持する左右一対のセッティングブロック4・4を避けるようにして、これら一対のセッティングブロック4・4の間と、左側のセッティングブロック4の左側と、右側のセッティングブロック4の右側とに、各々配置されている。
【0040】
ここで、下枠部22は、防火安全ガラス板3による荷重により、当該下枠部22の長さ寸法の中央に向かって凹状に経年変形することがある。
このとき、液化中間膜(例えば、火災等による加熱によって液化した樹脂製中間膜32)は、下枠部22の長さ寸法の中央方向に流動し易くなる。
【0041】
各第1開口孔24が、2個のセッティングブロック4・4に比べて、下枠部22の長さ寸法の中央側に設けられている場合、液化中間膜の流動がセッティングブロック4・4によって阻害され、下枠側溝部22c内に液化中間膜が溜まり易くなる。
よって、上記のように、少なくとも2箇所の第1開口孔24・24は、セッティングブロック4・4の近傍、且つ窓枠の側枠部23側に設けられることが好ましい。
【0042】
第2開口孔25・25・・・は、下枠部22の両側面(第1側面22a4及び第2側面22a5)において、各々複数(例えば、本実施形態においては、各側面に対して3個所)設けられており、下枠部22の長さ方向(延出方向)における、当該第1開口孔24と略同等の位置に各々配置されている。
【0043】
これら複数の第2開口孔25・25・・・は、平常時の状態(例えば火災等の発生時以外の状態)において、水や泥水等の窓枠2内への侵入防止を目的として、封止機構7によって封止されている。
また、これら複数の第2開口孔25・25・・・は、火災等が発生した場合、加熱側(防火安全ガラス窓1を隔てて、火災が発生している側)に位置する封止機構7のみが作動して開放状態となり、窓枠2の内部と、当該窓枠2の加熱側の外部とが、直ちに繋がる構成となっている。
【0044】
そして、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3の下端から下枠部22の下枠側溝部22cに漏れ出した場合、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)は、当該樹脂製中間膜32から発生するガスとともに、第1開口孔24、枠本体部22aの内部、及び第2開口孔25と順に通過して、窓枠2の加熱側の外部へと効率よく排出される。
【0045】
このような構成からなる複数の第2開口孔25・25・・・は、窓枠2を構成する上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23の少なくとも1つの枠材に設けられていればよく、例えば、上枠部21、及び一対の側枠部23・23の両側面においても、同様に設けられていてもよい。
この場合、例えば火災等による加熱によって樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3の上端、及び両側端から、上枠部21の上枠側溝部21a、及び側枠部23の側枠側溝部23aに各々漏れ出したとしても、各々の枠材に設けられる第2開口孔25を介して、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)を、当該樹脂製中間膜32から発生するガスとともに、窓枠2の加熱側の外部へと効率よく排出することができる。
【0046】
封止機構7は、上述したように、平常時の状態において、複数の第2開口孔25・25・・・を封止するとともに、火災等が発生した場合において、加熱側に位置する複数の第2開口孔25・25・・・のみを開放状態とするものである。
封止機構7は、
図2に示すように、主に、各第2開口孔25に対して着脱可能に嵌め込まれる封止材71と、当該封止材71を覆うように配置されるカバー部材72とを備える。
なお、封止機構7の詳細な構成については、後述する。
【0047】
以上に示した構成からなる防火安全ガラス窓1は、例えば、以下の手順に従い施工され、構築される。
なお、防火安全ガラス窓1の施工手順については、この手順に限定されるものではない。
【0048】
まず始めに、
図1において、アルミニウムや鋼等の金属板を加工して、上述した通り、所定の断面形状を有した上枠部21、下枠部22(より具体的には、枠本体部22a)、及び一対の側枠部23・23を各々作製する。
【0049】
次に、上枠部21の上枠側溝部21a、及び側枠部23の側枠側溝部23aに防火安全ガラス板3の周縁部を嵌め込み、且つ下枠部22(枠本体部22a)の第2上面22a2に防火安全ガラス板3の下端を載置させた状態で、これらの上枠部21、下枠部22(枠本体部22a)、及び一対の側枠部23・23を、溶接やネジ止め等によって互いに一体的に連結し、矩形枠状の窓枠2を作製する。
【0050】
窓枠2の作製後、当該窓枠2に対して、防火安全ガラス板3を上枠部21側に僅かにずらした状態で、2個のセッティングブロック4・4を各々所定位置に配置する。
その後、
図2に示すように、下枠部22において、第2上面22a2の所定位置に押縁22bを配置し、ボルト等の締結部材によって当該押縁22bを固定する。
【0051】
押縁22bの固定後、防火安全ガラス板3の下端と、下枠部22の下枠側溝部22cとの間において、発泡ポリ塩化ビニルやセラミックファイバーブランケット等により構成された充填材5・5を介在させる。
また、図示しないが、防火安全ガラス板3の上端と、上枠部21の上枠側溝部21a(
図1を参照)との間、及び防火安全ガラス板3の両側端と、一対の側枠部23の側枠側溝部23a・23aとの間においても、それぞれ充填材5・5を介在させる。
【0052】
そして、防火安全ガラス板3の周縁部と、上枠部21、下枠部22、及び側板部23における各々の溝部(上枠側溝部21a、下枠側溝部22c、及び側枠側溝部23a)との間に生じる隙間に対して、防火性シリコーン6・6を封入する。
防火性シリコーン6としては、例えば、SE5007(東レ・ダウコーニング社製)、シーランド40N(信越シリコーン社製)、シーラント74(信越シリコーン社製)等を用いることができ、コーキングガンにより充填される。
【0053】
防火性シリコーン6・6の封入の完了後、下枠部22の両側面に各々設けられる複数の第2開口孔25・25・・・に対して、封止材71・71・・・を各々嵌め込み挿着する。
その後、後述するように、下枠部22の両側面において、カバー部材72・72を各々所定の位置に配置するとともに、ボルト等の締結部材によって、カバー部材72に複数の封止材71・71・71を固定し、且つ下枠部22の各側面にカバー部材72を固定する。
これにより、防火安全ガラス窓1の施工が完了し、当該防火安全ガラス窓1が構築される。
【0054】
なお、上記における封止材71の挿着、及びカバー部材72の固定については、防火性シリコーン6・6の封入の完了を待つことなく、押縁22bの固定の完了後、何れのタイミングで行われてもよい。
【0055】
[封止機構7の構成]
次に、封止機構7の構成について、
図1、
図3、及び
図4を用いて詳細に説明する。
図3において、封止機構7は、下枠部22の両側面(より具体的には、第1側面22a4及び第2側面22a5)に各々設けられ、各側面の第2開口孔25・25・25に対して、着脱可能に各々嵌め込まれる複数(例えば、本実施形態においては3個)の封止材71・71・71と、これら複数(3個)の封止材71・71・71を覆うように配置されるカバー部材72とを備える。
【0056】
封止材71は、例えば鋼、ステンレス、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の金属に加えて、シリコーンゴムやクロロプレンゴム等を素材として採用することができる。
【0057】
なお、本発明の効果をより一層享受する観点から、耐熱温度が、400℃以上である材料を採用することが好ましく、具体的には、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等を採用することが好ましい。
また、耐熱温度が、750℃以上である材料を採用することがより好ましく、具体的には、鉄、鋼、ステンレス等を採用することがより好ましい。
ここで、耐熱温度とは、融点が存在する材料の融点、または、融点が存在しない材料の分解温度を示す。
【0058】
このような構成を有することにより、封止材71は、非加熱側において、火災の熱により間接的に加熱されても溶融または変形しにくいため、非加熱側への樹脂製中間膜32(液化中間膜)の流入を確実に防止することができるとともに、加熱側においては、封止材71とカバー部材72とが一体に構成されているため、カバー部材72の変形により、封止材71が第2開口孔25から引き抜かれて、当該第2開口孔25が直ちに開放される。
従って、直ちに当該第2開口孔25から封止材71を離脱させ、当該第2開口孔25から液化した樹脂製中間膜32を外部に排出することができる。
【0059】
一方、樹脂製中間膜32(液化中間膜)を窓枠2の加熱側の外部に効率良く排出することを重視する場合、例えば、耐熱温度が、400℃未満である材料を採用してもよい。
この場合、シリコーンゴム、クロロプレンゴムを採用することが好ましい。
【0060】
なお、封止部材71は、各第2開口孔25に沿った形状からなる。
即ち、本実施形態において、第2開口孔25は矩形状に形成されており、封止材71は、当該第2開口孔25と同形状の略矩形板状に形成される。
また、封止材71の厚みは、第2開口孔25が設けられる下枠部22の側面(第1側面22a4または第2側面22a5)と略同等に設定されている。
【0061】
封止材71の形状については、第2開口孔25に沿った形状であれば、何れの形状であってもよく、例えば、第2開口孔25が円形である場合、封止材71は、短柱形状に形成される。
【0062】
ここで、第2開口孔25は、窓枠2の下枠部22における外側から内側に向かって、開口面積が徐々に縮小するテーパ状に形成されている。
また、封止材71も同様に、第2開口孔25の形状に沿って、厚み方向に向かって断面積が徐々に縮小するテーパ状に形成されている。
そして、封止材71は、断面積の縮小方向を窓枠2の内側に向けた状態で、第2開口孔25に嵌め込まれて挿着される。
【0063】
このような構成を有することにより、下枠部22の外側から、第2開口孔25に封止材71を嵌め込み挿着する際、当該第2開口孔25は枠材の内側に向かって狭まるテーパ状に形成されているため、容易に封止材71を第2開口孔25に挿着することができる。
また、例えば火災等による加熱によって液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)を、第2開口孔25を介して下枠部22の内側から外側に排出する際、当該第2開口孔25は下枠部22の外側に向かって広がるテーパ状に形成されているため、効率よく樹脂製中間膜32(液化中間膜)を排出することができる。
【0064】
封止材71の平面部には、厚み方向に貫通する複数(例えば、本実施形態においては2箇所)の雌螺孔71a・71aが設けられている。
そして、後述するように、封止材71は、これらの雌螺孔71a・71aを介して、ボルト等の第1締結部材73・73を用いて、カバー部材72と一体的に固定される。
なお、雌螺孔71aの個数については、本実施形態に限定されるものではなく、例えば、1個所または3個所以上に設けられていてもよい。
【0065】
カバー部材72は、例えば鉄、鋼、ステンレス、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等を素材する、長尺矩形板状の金属部材からなり、耐熱温度が、750℃以上である材料を採用することが好ましく、具体的には、鉄、鋼、ステンレスを採用することが好ましい。
このような構成を有することにより、カバー部材72は、非加熱側において、火災の熱により間接的に加熱されても、熱膨張は抑制されて、凸型に変形しにくい。
その結果、非加熱側の第2開口孔25を開放することなく、非加熱側への樹脂製中間膜32(液化中間膜)の流入を確実に防止することができる。
【0066】
また、カバー部材72の長手方向の寸法は、下枠部22の長さ方向(延出方向)の寸法と略同等に設定されるとともに、カバー部材72の幅寸法(長手方向及び厚み方向との直交方向の寸法)は、第2開口孔25に挿着された封止材71を覆い隠すのに十分な値に設定されている。
【0067】
なお、カバー部材72の素材については、封止材71と同等であってもよく、また相違してもよいが、シリコーンゴムやクロロプレンゴム等は、例えば、火災の熱によって凸型に変形しにくいため、カバー部材72としての採用は避けることが好ましい。
【0068】
また、防火安全ガラス窓の意匠性を向上させる観点からは、カバー部材72は、窓枠2の素材と同系色、同質感を有する素材で構成されることが好ましい。
例えば、窓枠2が、鋼で構成されている場合、カバー部材72は、鋼で構成されていることが好ましい。
【0069】
そして、カバー部材72は、下枠部22の各側面(第1側面22a4または第2側面22a5)において、複数(3個所)の第2開口孔25・25・25に封止材71・71・71が各々挿着された状態で、これら複数の封止材71・71・71を覆いつつ、当該側面に沿って配置される。
また、カバー部材72は、例えばボルト等の複数の第2締結部材74・74・・・を用いて、下枠部22の各側面に固定される。
【0070】
なお、下枠部22の側面にカバー部材72を固定する手段については、本実施形態のように、ボルト等の締結部材に限定されるものではなく、例えば、十分な固着力を有する接着剤等、何れの手段を採用してもよい。
【0071】
ここで、
図1に示すように、複数の第2締結部材74・74・・・は、下枠部22の長さ方向(延出方向)に沿って、等間隔で配置されている。
また、これら複数の第2締結部材74・74・・・は、互いに隣接する一対の第2締結部材74・74間の略中央部に、第2開口孔25(及び封止材71)が位置するように配置されている。
換言すると、カバー部材72は、各第2開口孔25の両側(下枠部22の長さ方向(延出方向)における両側)にて、第2締結部材74によって、窓枠2(より具体的には、下枠部22の側面)と固定される。
【0072】
このような構成を有することにより、後述するように、例えば火災による加熱によって、カバー部材72に熱膨張が生じることにより、第2開口孔25より封止材71が引き抜かれ、当該第2開口孔25を直ちに開放することができる。
従って、本実施形態における防火安全ガラス窓1によれば、板状部材からなる簡易な構成によって、第2開口孔25より封止材71を脱着可能なカバー部材72を、安価に構築することができる。
【0073】
図3において、カバー部材72には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔72a・72a・・・が設けられている。
これら複数の貫通孔72a・72a・・・は、カバー部材72が下枠部22の側面に沿って配置された状態において、複数(3個所)の第2開口孔25・25・25にそれぞれ挿着された、各封止材71における雌螺孔71a・71aと、各々同軸上となる位置に設けられている。
また、各貫通孔72aの内径は、第1締結部材73における、当該貫通孔72aに挿入される領域、即ち雄螺子部の外径に比べて大きい。
【0074】
そして、下枠部22の外側から内側に向かって、カバー部材72の貫通孔72aに第1締結部材73を差し込み、封止材71の雌螺孔71aに当該第1締結部材73を螺合させる。
これにより、カバー部材72は、複数(3個)の封止材71・71・71と一体的に固定される。
【0075】
このように、本実施形態において、カバー部材72は、厚み方向に貫通する貫通孔72aを有し、封止材71は、貫通孔72aと同軸上に貫通する雌螺孔71aを有し、これらのカバー部材72と封止材71とは、貫通孔72aに挿入され、且つ雌螺孔71aと螺合する第1締結部材73によって一体的に固定される構成となっている。
そして、貫通孔72aの内径は、第1締結部材73における、当該貫通孔に挿入される領域(雄螺子部)の外径に比べて大きい構成となっている。
【0076】
このような構成を有することにより、カバー部材72の貫通孔72aと、当該貫通孔72aに挿入された第1締結部材73との隙間を介して、カバー部材72と封止材71との相対位置のズレを吸収し、これら両部材(カバー部72材及び封止材71)の固定作業を容易に行うことができる。
【0077】
以上のような構成からなる封止機構7は、例えば火災等が発生した場合、当該火災の火炎によって熱膨張を生じることにより、第2開口孔25を直ちに開放状態とし、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)を、窓枠2(より具体的には下枠部22)の外部へと適切に排出することができる。
【0078】
具体的には、
図4(a)に示すように、平常時の状態(火災等の発生時以外の状態)において、下枠部22の両側面(第1側面22a4及び第2側面22a5)に各々設けられる封止機構7・7は、ともに、各第2開口孔25に封止材71を挿着させた状態で保持されている。
【0079】
ここで、例えば防火安全ガラス窓1に対して、下枠部22の第1側面22a4側(本実施形態においては後側)に火災が発生した場合、当該第1側面22a4側に設けられる封止機構7は、火災による火炎に対して、直接的に晒される。
これにより、
図4(b)に示すように、火災による加熱によってカバー部材72に熱膨張が生じるとともに、当該カバー部材72は、各第2開口孔25の両側において、下枠部22の側面(第1側面22a4)と固定されているため、当該第2開口孔25より封止材71を引き抜くように、窓枠2の外側(加熱側)に向かって凸状に湾曲し、第2開口孔25が直ちに開放される。
【0080】
一方、下枠部22の第2側面側22a5側(本実施形態においては前側)に設けられる封止機構7は、火災による火炎に対して、防火安全ガラス窓1を介して間接的に晒されるため、カバー部材72に生じる熱膨張は抑制される。
【0081】
その結果、火災が発生している側(加熱側)においては、開放された第2開口孔25を介して、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)を、窓枠2の外部に直ちに排出する一方、火災が発生していない側(非加熱側)においては、封止材71によって第2開口孔25を確実に塞ぎ、当該第2開口孔25を介して、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)が窓枠2の外部に排出されるのを、防止することができる。
【0082】
以上のように、本実施形態における防火安全ガラス窓1は、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23を有する矩形枠状の窓枠2と、複数(本実施形態においては2枚)のガラス板31・31、及び複数のガラス板31・31の間に形成された樹脂製中間膜32からなり、窓枠2の内側に嵌め込まれた防火安全ガラス板3と、上枠部21、下枠部22、及び一対の側枠部23・23の少なくとも1つの枠材(本実施形態においては下枠部22)に設けられ、当該枠材の側面(第1側面22a4及び第2側面22a5)を各々開口する複数(本実施形態においては3個所)の第2開口孔(排出孔)25・25・25とを備える防火安全ガラス窓1である。
そして、防火安全ガラス窓1は、各々の第2開口孔(排出孔)25・25・25に着脱可能に嵌め込まれる複数(本実施形態においては3個)の封止材71・71・71と、これらの封止材71・71・71を覆うように配置されるカバー部材72とを備える構成となっている。
【0083】
このような構成を有することにより、例えば火災等による加熱によって板状の金属部材からなるカバー部材72に熱膨張が生じると、当該カバー部材72は、第2開口孔25の両側にて窓枠2と固定されているため、第2開口孔25より封止材71を引き抜くように、窓枠2の外側(加熱側)に向かって凸状に湾曲し、当該第2開口孔25が直ちに開放される。
【0084】
よって、樹脂製中間膜32が液化し、防火安全ガラス板3から窓枠2の枠材内に漏れ出した場合、火災が発生している側(加熱側)においては、直ちに第2開口孔25から封止材71を離脱させ、当該第2開口孔25から液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)を外部に排出する。
一方、火災が発生していない側(非加熱側)においては、封止材71によって第2開口孔25を確実に塞ぐことができ、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)が外部に排出されるのを防止することができる。
【0085】
従って、本実施形態における防火安全ガラス窓1によれば、加熱側で発生した火災による火炎を遮るとともに、液化した樹脂製中間膜32(液化中間膜)が非加熱側に漏れ出て、火炎が広がるのを防止することができる。
【0086】
以上、本発明を具現化する一実施形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、及び範囲内の全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0087】
1 防火安全ガラス窓
2 窓枠
21 上枠部
22 下枠部
22a4 第1側面(側面)
22a5 第2側面(側面)
23 側枠部
25 第2開口孔(排出孔)
3 防火安全ガラス板
31 ガラス板
32 樹脂製中間膜
71 封止材
71a 雌螺孔
72 カバー部材
72a 貫通孔
73 第1締結部材(締結部材)