(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121580
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ファン制御装置、車両、およびファン制御方法
(51)【国際特許分類】
B60K 11/02 20060101AFI20240830BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20240830BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60K11/02
B60L58/26
H02K9/19 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028747
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅田 奨平
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA06
3D038AB01
3D038AC14
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125EE52
5H609BB03
5H609PP02
5H609QQ04
5H609RR52
5H609SS20
5H609SS21
5H609SS22
5H609SS23
(57)【要約】
【課題】電動車両において、ファンの回転によって生じる騒音を抑えつつ、冷却回路の冷却性能を確保することができるファン制御装置、車両、およびファン制御方法を提供する。
【解決手段】本開示のファン制御装置は、車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得する取得部と、前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を決定する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得する取得部と、
前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を決定する制御部と、
を備える、ファン制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記車両の走行速度を示す走行速度情報をさらに取得し、
前記制御部は、前記温度差が前記所定閾値以上である場合、
前記ラジエータに送風するファンの回転数の第1候補値を、前記車両の走行速度情報に基づいて決定し、
前記回転数の第2候補値を前記第2冷媒温度情報に基づいて決定し、
前記第1候補値および前記第2候補値のうち、低い方の候補値を前記回転数として決定する、
請求項1に記載のファン制御装置。
【請求項3】
前記冷却回路は、前記冷媒を冷却する二次冷媒が循環する二次冷媒回路を有しており、
前記制御部は、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差が所定閾値未満である場合、前記二次冷媒回路を動作させる、
請求項1に記載のファン制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のファン制御装置と、
前記冷却回路と、
を備える、車両。
【請求項5】
車両に搭載されたコンピューターが実行するファンの制御方法であって、
車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得し、
前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を判断する、
ファン制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される冷却回路に設けられたファンを制御するファン制御装置、車両、およびファン制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両はバッテリに蓄えられた電力を用いてモーターを回転させることで駆動力を得る。モーターに電力を供給する際、バッテリに熱が発生するため、バッテリを冷却する冷却回路を搭載した電動車両が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、冷却回路において、外気温によっては、ファンを回転させてもラジエータにて冷媒を十分に冷却することができず、冷却効率が低下することがある。このような場合に冷却性能を補うことができるように、冷却回路は、冷媒を冷却するための他の冷却手段を備えていることがある。他の冷却手段は、例えば電力により別の冷却回路により冷媒を冷却する装置である。
【0005】
一方で、外気温によっては、冷却回路は、他の冷却手段を動作させずとも、十分な冷却性能を確保できることもある。
【0006】
冷却回路において、ファンの回転と他の冷却手段とを併用する場合、ファンを回転させるエネルギーと他の冷却手段を動作させるためのエネルギーの両方が必要になるため、電費が悪化することがある。
【0007】
本開示は、電費を抑えつつ、効率よく冷却を行うことができるファン制御装置、車両、およびファン制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係るファン制御装置は、車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得する取得部と、前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を決定する制御部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る車両は、上記のファン制御装置と、前記冷却回路と、を備える。
【0010】
本開示の一態様に係るファン制御方法は、車両に搭載されたコンピューターが実行するファンの制御方法であって、車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得し、前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を判断する。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、電費を抑えつつ、効率よく冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態に係るファン制御装置を含む冷却回路の構成の一例を説明するための図
【
図5】制御部による、ファンの回転数を決定する場合のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明、例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明等は省略する場合がある。
【0014】
<冷却回路100>
図1は、本開示の実施の形態に係るファン制御装置を含む冷却回路100の構成の一例を説明するための図である。
【0015】
冷却回路100は、ファン制御装置1、バッテリ2、ラジエータ3、ラジエータファン4、切替部5、ポンプ6、チラー7、冷媒温度センサ8、冷媒温度センサ9、速度センサ10、電動コンプレッサ11、コンデンサ12、コンデンサファン13、冷媒膨張弁14、エバポレータ15、ブロアファン16、冷媒膨張弁17を備える。冷却回路100は、バッテリ2を冷却する一次冷媒が循環する一次冷媒回路101と、一次冷媒を冷却するための二次冷媒回路102と、を含む。冷却回路100は、電動車両EVに搭載される。
【0016】
バッテリ2は、例えば、電気自動車用リチウムイオンバッテリである。バッテリ2は、放電時および充電時に発熱する。バッテリ2は、一次冷媒回路を循環する冷媒と熱交換することにより冷却される。
【0017】
ラジエータ3は、一次冷媒回路において冷媒と外気とを熱交換させる。ラジエータファン4は、回転してラジエータ3を通過する外気の流れを発生させることにより、ラジエータ3内を通過する冷媒を冷却する。
【0018】
ファン制御装置1は、ラジエータファン4の回転を制御する。より詳細には、ファン制御装置1は、電動車両EVの状態などの各種情報に基づいて、ラジエータファン4を回転させるタイミング、回転の時間的な長さ、および一定時間あたりの回転数などの各種パラメータを決定し、決定したパラメータに基づく回転制御を行う。
【0019】
切替部5は、冷媒の流路を切り替える。
図1に示す例では、切替部5は、ラジエータ3に冷媒を流す流路と流さない流路とを切り替えるバルブである。ポンプ6は、一次冷媒回路において冷媒の流れを発生させる。チラー7は、一次冷媒と二次冷媒とを熱交換させることにより一次冷媒を冷却する。チラー7は、冷媒膨張弁17を通過した低温低圧の霧状の二次冷媒と高温の一次冷媒とを熱交換させることにより、二次冷媒を気化させる。二次冷媒は、気化する際に周囲の一次冷媒から熱を奪うことにより一次冷媒を冷却する。
【0020】
冷媒温度センサ8は、一次冷媒回路においてラジエータ3の上流に配置される。冷媒温度センサ8は、バッテリ2から流出した一次冷媒の温度(以下、第1冷媒温度と記載)を検知する。第1冷媒温度は、ラジエータ3の流入する一次冷媒の温度でもある。冷媒温度センサ9は、一次冷媒回路においてラジエータ3の下流に配置される。冷媒温度センサ9は、ラジエータ3において外気と熱交換した後、ラジエータ3から流出した一次冷媒の温度(以下、第2冷媒温度と記載)を検知する。速度センサ10は、電動車両EVの走行速度を検知する。
【0021】
電動コンプレッサ11は、チラー7において冷媒との熱交換により気化した低温低圧の二次冷媒を圧縮して高温高圧の状態にする。コンデンサ12は、コンデンサファン13が発生させる冷却風により、高温高圧の二次冷媒を冷却して凝縮させる。
【0022】
冷媒膨張弁14は、コンデンサ12が凝縮させた液状の二次冷媒を小孔から強制的に噴霧することにより、二次冷媒を膨張させて低温低圧の霧状にする。冷媒膨張弁14は、低温低圧の霧状の二次冷媒をエバポレータ15へ供給する。冷媒膨張弁14は、ファン制御装置1からの制御信号に基づいて、二次冷媒をエバポレータ15へ供給する開状態と、二次冷媒をエバポレータ15へ供給しない閉状態とを切り替える。
【0023】
エバポレータ15は、冷媒膨張弁14を通過した低温低圧の霧状の二次冷媒と、車室内の空気とを熱交換させることにより、二次冷媒を気化させる。二次冷媒は、気化する際に車室内の空気から熱を奪うことにより車室内の温度を低下させる。ブロアファン16は、車室内の空気がエバポレータ15を通過するように空気の流れを作り出し、二次冷媒と車室内の空気とを熱交換させる。
【0024】
冷媒膨張弁17は、上述した冷媒膨張弁14と同様に、液状の二次冷媒を小孔から強制的に噴霧することにより、二次冷媒を膨張させて低温低圧の霧状にする。冷媒膨張弁17は、低温低圧の霧状の二次冷媒をチラー7へ供給する。
【0025】
<ファン制御装置1>
図2は、ファン制御装置1の構成を説明するための図である。ファン制御装置1は、取得部21と、制御部22と、記憶部23と、を備える。なお、記憶部23はファン制御装置1の内部に設けられていなくてもよく、ファン制御装置1の外部に独立して設けられてもよい。ファン制御装置1は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備える、いわゆるコンピューターである。
【0026】
取得部21は、電動車両EVの走行速度情報、バッテリから流出した一次冷媒の温度(第1冷媒温度)を示す第1冷媒温度情報、およびラジエータ3から流出する一次冷媒の温度(第2冷媒温度)を示す第2冷媒温度情報を取得する。取得部21は、速度センサ10から走行速度情報を、冷媒温度センサ8から第1冷媒温度情報を、冷媒温度センサ9から第2冷媒温度情報を、それぞれ取得する。
【0027】
制御部22は、走行速度情報、第1冷媒温度情報、および第2冷媒温度情報に基づいて、ラジエータファン4の回転を制御する。具体的には、制御部22は、第1冷媒温度情報および第2冷媒温度情報に基づいて、ラジエータファン4を回転させるか否かを判断する。制御部22は、ラジエータファン4を回転させると判断した場合、次に走行速度情報および第2冷媒温度情報に基づいて、ラジエータファン4の回転数を決定する。制御部22がラジエータファン4の回転数を決定する方法の詳細については、後述する。
【0028】
記憶部23は、制御部22によるラジエータファン4の回転制御に必要な各種情報を記憶する。
【0029】
<制御部22によるラジエータファン4を回転させるか否かの判断>
以下では、制御部22によるラジエータファン4を回転させるか否かの判断について詳細に説明する。
【0030】
制御部22は、バッテリ2から流出した一次冷媒の温度であってラジエータ3に流入する一次冷媒の温度である第1冷媒温度と、ラジエータ3から流出する一次冷媒の温度である第2冷媒温度と、の差分を算出し、当該差分が所定温度以上であるか否かに基づいてラジエータファン4を回転させるか否かを判断する。
【0031】
所定温度とは、冷却回路100の一次冷媒回路101において、ラジエータ3が冷却性能を発揮できているか否かを判断するための閾値である。例えば第1冷媒温度と第2冷媒温度との差分ΔT_radが所定温度以上であった場合、ラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できていると見なすことができ、差分ΔT_radが所定温度未満であった場合、ラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できていないと見なすことができる。
【0032】
所定温度は、例えば冷却回路100の設計時に、実験的に設定されればよい。具体例を挙げると、所定温度は例えば2℃である。所定温度は、例えばバッテリ2のパック数などに基づいて変化させてもよい。
【0033】
制御部22は、第1冷媒温度と第2冷媒温度との差分ΔT_radが所定温度以上である場合、すなわち、ラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できていると見なせる場合、ラジエータファン4を回転させると判断する。一方、制御部22は、第1冷媒温度と第2冷媒温度との差分ΔT_radが所定温度未満である場合、すなわちラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できていないと見なせる場合、ラジエータファン4を回転させない(停止させる)と判断する。
【0034】
このような判断により、例えば外気温などの影響により、ラジエータファン4を回転させてもラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できていない場合には、ラジエータファン4の回転を停止させることができる。この場合、制御部22は、チラー7を含む二次冷媒回路102を動作させることで一次冷媒回路101の第1冷媒を冷却させる。
【0035】
一方、ラジエータファン4を回転させることでラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できている場合には、ラジエータファン4を回転させると判断する。この場合、制御部22は、以下説明する、ラジエータファン4の回転数の決定方法に基づいて、ラジエータファン4の回転数を決定する。
【0036】
<制御部22によるラジエータファン4の回転数の決定方法>
以下では、制御部22によるラジエータファン4の回転数の決定方法について詳細に説明する。制御部22は、電動車両EVの走行速度に基づいてラジエータファン4の回転数の第1候補値を決定するとともに、第2冷媒温度に基づいてラジエータファン4の回転数の第2候補値を決定する。そして、制御部22は、第1候補値および第2候補値に基づいて、ラジエータファン4の回転数を最終的に決定する。
【0037】
[第1候補値の決定方法]
次に、電動車両EVの走行速度に基づく回転数の候補値である、第1候補値の決定方法について説明する。制御部22は、記憶部23に予め記憶されている、電動車両EVの走行速度と第1候補値との関係を示す第1テーブルに基づいて、第1候補値を決定する。第1テーブルは、予め生成され、記憶部23に記憶されている。
【0038】
図3は、第1テーブルを例示した図である。
図3に示す第1テーブルにおいて、ラジエータファン4の回転数がデューティ比で示されている。
【0039】
第1テーブルに示される第1候補値は、走行速度が低速であるほど、ラジエータファン4の回転数が小さくなるように設定されている。また、第1テーブルに示される第1候補値は、走行速度が一定速度(45km/h)より高速である場合は、最大値である90%に設定されている。
【0040】
図3に示される第1テーブルに含まれる第1候補値は一例であり、本開示はこれに限定されない。第1テーブルに含まれる第1候補値の決定方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。すなわち、各走行速度で内燃機関車(例えば、ディーゼル車)を実際に走行させたときに計測された騒音を計測し、これに基づいて走行速度毎に許容できる音量を設定し、設定した音量を超えないように第1候補値を設定する方法である。
【0041】
上述したように、第1候補値は、走行速度に基づく候補値である。このため、第1候補値は、冷却回路100に求められる冷却性能を考慮しない候補値であると言える。
【0042】
このように、制御部22は、速度センサ10から取得した走行速度情報に基づいて、第1テーブルを参照し、現在の走行速度と対応する第1候補値を読み出す。これにより、制御部22は、第1候補値を決定することができる。
【0043】
[第2候補値の決定方法]
次に、バッテリ2から流出する一次冷媒の温度(第2冷媒温度)に基づく回転数の候補値である、第2候補値の決定方法について説明する。制御部22は、記憶部23に予め記憶されている、第2冷媒温度と第2候補値との関係を示す第2テーブルに基づいて、第2候補値を決定する。第2テーブルは、予め生成され、記憶部23に記憶されている。
【0044】
図4は、第2テーブルを例示した図である。
図4に例示される第2テーブルでは、バッテリ2のパック数毎に、第2冷媒温度と第2候補値との関係が設定されている。これは、パック数が多いほどモーターの出力が増大し、一次冷媒の温度が上がりやすくなることを考慮したためである。
【0045】
図4に示す第2テーブルにおいて、第2冷媒温度が比較的低い(例えば、2パックの場合28℃以下)場合、冷媒を積極的に冷却する必要性が低いため、回転数の第2候補値は25%以下の値に設定されている。そして、冷媒温度が高くなるにつれて、第2候補値が大きな値に設定されている。
【0046】
上述したように、第2候補値は、第2冷媒温度に基づく候補値である。このため、第2候補値は、バッテリ2を冷却するために、冷却回路100にとって必要な冷却性能を発揮するために設定された候補値であると言える。
【0047】
図4に示される第2テーブルに含まれる第2候補値は一例であり、本開示はこれに限定されない。第2テーブルに含まれる第2候補値の決定方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。すなわち、バッテリ2の仕様上要求される冷媒温度の上限値を超えず、かつ消費電力ができるだけ少なくなるように、実際の装置を用いた実験、またはシミュレーションなどによって第2候補値を設定する方法である。
【0048】
このように、制御部22は、冷媒温度センサ9から取得した第2冷媒温度情報に基づいて、第2テーブルを参照し、現在の第2冷媒温度と対応する第2候補値を読み出す。これにより、制御部22は、第2候補値を決定することができる。
【0049】
[回転数の最終的な決定方法]
制御部22は、第1候補値および第2候補値に基づいて、第1候補値と第2候補値のうち、低い方の候補値を回転数とする。このような決定方法により、電動車両EVの状態に応じて、適切なラジエータファン4の回転数を決定することができる。
【0050】
以上のようなラジエータファン4の回転数の決定方法により、以下の効果が得られる。冷却回路100において、制御部22は、ラジエータ3前後の一次冷媒の温度に基づいてラジエータ3が所望の冷却性能を発揮できているか否かを判断する。これにより、一次冷媒の温度よりも外気温が高い場合など、ラジエータファン4を回転させてもラジエータ3による冷却効果が得られにくい場合には、ラジエータファン4を回転させずにチラー7を含む二次冷媒回路102により一次冷媒の冷却を行うことができる。これにより、所望の冷却性能を得ることができないにもかかわらずラジエータファン4を回転させるために電費が悪化する事態を回避することができる。
【0051】
また、ラジエータファン4を回転させると判断した場合、制御部22は、一次冷媒温度に基づく第2候補値だけでなく、車両速度に基づく第1候補値と第2候補値とを比較して、低い方の候補値をラジエータファン4の回転数として決定する。
【0052】
これにより、ラジエータファン4の回転数を比較的低く抑えることができるので、ラジエータファン4が回転することによる騒音を抑えることができる。特に、電動車両EVが停止している場合など、ラジエータファン4の回転音を運転者が耳障りと感じやすい状況においてラジエータファン4の回転数を比較的低く抑えることにより、運転者が回転音を不快と感じる事態を低減することができる。
【0053】
[制御部22の動作フロー]
図5は、制御部22の動作フローを示す図である。
【0054】
ステップS1において、制御部22は、第1冷媒温度情報、第2冷媒温度情報、および走行速度情報を取得する。
【0055】
ステップS2において、制御部22は、第1冷媒温度情報と第2冷媒温度情報との差分ΔT_radが所定温度以上であるか否かを判断する。制御部22は、差分ΔT_radが所定温度以上である場合(ステップS2:YES)、ステップS3の動作に進め、そうでない場合(ステップS2:NO)、ステップS7に進める。
【0056】
差分ΔT_radが所定温度以上である場合、ステップS3において、制御部22は、走行速度情報に基づいて第1テーブルを参照し、第1候補値を決定する。
【0057】
ステップS4において、制御部22は、第2冷媒温度情報に基づいて第2テーブルを参照し、第2候補値を決定する。
【0058】
ステップS5において、制御部22は、第1候補値と第2候補値のうち、低い方をラジエータファン4の回転数として決定する。
【0059】
ステップS6において、制御部22は、制御部22は、決定した回転数でラジエータファン4を回転させる。
【0060】
一方、差分ΔT_radが所定温度未満である場合、ステップS7において、制御部22は、チラー7を含む二次冷媒回路102を動作させて一時冷媒の冷却を行わせる。
【0061】
このような動作により、冷却回路100における電費を改善しつつ、ラジエータファン4による騒音を抑え、必要な冷却性能を確保することができる。
【0062】
<変形例>
以上、本開示の実施の形態について説明したが、本開示は、上述の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0063】
上述した実施の形態では、冷却回路100はバッテリ2を冷却する回路であるとしたが、本開示はこれに限定されない。本開示の冷却回路の冷却対象は、バッテリ以外の他の高電圧部品であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本開示は、冷却回路に設けられファンの回転を制御するファン制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0065】
100 冷却回路
101 一次冷媒回路
102 二次冷媒回路
1 ファン制御装置
2 バッテリ
3 ラジエータ
4 ラジエータファン
5 切替部
6 ポンプ
7 チラー
8 冷媒温度センサ
9 冷媒温度センサ
11 電動コンプレッサ
12 コンデンサ
13 コンデンサファン
14 冷媒膨張弁
15 エバポレータ
16 ブロアファン
17 冷媒膨張弁
21 取得部
22 制御部
23 記憶部
【手続補正書】
【提出日】2024-06-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得する取得部と、
前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を決定する制御部と、
を備える、ファン制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記車両の走行速度を示す走行速度情報をさらに取得し、
前記制御部は、前記温度差が所定閾値以上である場合、
前記ラジエータに送風するファンの回転数の第1候補値を、前記車両の走行速度情報に基づいて決定し、
前記回転数の第2候補値を前記第2冷媒温度情報に基づいて決定し、
前記第1候補値および前記第2候補値のうち、低い方の候補値を前記回転数として決定する、
請求項1に記載のファン制御装置。
【請求項3】
前記冷却回路は、前記冷媒を冷却する二次冷媒が循環する二次冷媒回路を有しており、
前記制御部は、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差が所定閾値未満である場合、前記二次冷媒回路を動作させる、
請求項1に記載のファン制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のファン制御装置と、
前記冷却回路と、
を備える、車両。
【請求項5】
車両に搭載されたコンピューターが実行するファンの制御方法であって、
車両の電装部品を冷却する冷却回路において、ラジエータに流入する冷媒の温度を示す第1冷媒温度情報、および、前記ラジエータから流出する前記冷媒の温度を示す第2冷媒温度情報を取得し、
前記第1冷媒温度情報および前記第2冷媒温度情報に基づいて、前記ラジエータの前後における前記冷媒の温度差に基づいて、前記ラジエータに送風するファンの回転の有無を判断する、
ファン制御方法。