(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121582
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】パイル糸
(51)【国際特許分類】
D02G 3/04 20060101AFI20240830BHJP
A47L 13/20 20060101ALI20240830BHJP
D02G 3/44 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
D02G3/04
A47L13/20 A
D02G3/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028753
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133445
【氏名又は名称】株式会社ダスキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 夏美
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真暁
【テーマコード(参考)】
3B074
4L036
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AB04
3B074BB04
4L036MA06
4L036MA33
4L036MA39
4L036MA40
4L036PA21
4L036PA46
4L036UA06
(57)【要約】
【課題】ダスト除去能力の高いパイル糸およびモップの提供。
【解決手段】複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸であって、前記第一の下撚糸は、前記第二の下撚糸よりも太い、パイル糸。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸であって、前記第一の下撚糸は、前記第二の下撚糸よりも太い、パイル糸。
【請求項2】
前記第一の下撚糸の太さは、前記第二の下撚糸の太さの等倍より大きい、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項3】
前記第一および第二の下撚糸の太さは、180dtex以上18000dtex以下である、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項4】
前記第一および第二の下撚糸に用いられる単糸の太さは、100dtex以上10000dtex以下ある、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項5】
前記第一および第二の下撚糸に用いられる単糸の本数は、88本以下である、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項6】
前記単糸における撚り数は、60以上1220以下である、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項7】
前記第一の下撚糸及び前記第二の下撚糸における撚り数は、40以上800以下である、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項8】
前記パイル糸における撚り数は、40以上400以下である、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項9】
パイル軸方向に沿った螺旋形状を有する、請求項1に記載のパイル糸。
【請求項10】
らせん径は、パイル径の等倍より大きいである、請求項9に記載のパイル糸。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のパイル糸を有するモップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パイル糸および当該パイル糸を用いたモップに関する。
【背景技術】
【0002】
フロア等の床面のダストを除去する道具として、モップが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モップのダスト除去能力の向上が求められている。本発明は、ダスト除去能力の高いパイル糸およびモップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のパイル糸は、複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸であって、第一の下撚糸は、第二の下撚糸よりも太い。
【0006】
本開示のモップは、本発明のパイル糸を有する。
【発明の効果】
【0007】
複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸において、第一の下撚糸を第二の下撚糸よりも太くすることにより、ダスト保持力が高いモップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示のパイル糸を模式的に示す斜視図である。
【
図4】実施例におけるパイルダスト保持試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係るパイル糸およびモップを説明する。なお、以下に説明するパイル糸およびモップは、本開示に係る発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本開示に係る発明を以下のものに限定しない。各図面中、同一の機能を有する部材には、同一符号を付している場合がある。異なる態様として示した構成の部分的な置換または組み合わせは可能である。後述の態様では、前述と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する場合がある。特に、同様の構成による同様の作用効果については、態様ごとには逐次言及しないものとする。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張して示している場合もある。
【0010】
(パイル糸)
本開示のパイル糸は、複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸である。第一の下撚糸は、第二の下撚糸よりも太い。本開示のパイル糸は、太さの異なる下撚糸を用いて撚られていることから、紆曲形状を有し、ダスト保持能力が向上する。
【0011】
第一の下撚糸および第二の下撚糸は、単糸を下撚りすることにより得ることができる。
【0012】
単糸の材料としては、特に限定されないが、例えば木綿などの天然繊維;レーヨン、アセテート繊維などの再生繊維;ポリビニルアルコール繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維などの合成繊維が挙げられる。
【0013】
単糸は、単独の紡績糸又はフィラメント糸のいずれであってもよく、2種以上の混紡糸又は混繊フィラメント糸であってもよい。
【0014】
第一および第二の下撚糸に用いられる単糸の太さは、好ましくは100dtex以上10000dtex以下、より好ましくは120dtex以上5000dtex以下、さらに好ましくは150dtex以上1000dtex以下であり得る。
【0015】
単糸における撚り数(1メートルあたりの撚り数)は、好ましくは60以上1220以下、より好ましくは100以上1000以下、さらに好ましくは150以上800以下であり得る。単糸の撚り数を小さくすることにより、単糸における毛羽立ちが増加し、得られるパイル糸のダスト保持能力が向上し得る。単糸の撚り数を大きくすることにより、単糸の強度が向上し得る。
【0016】
第一の下撚糸に用いられる単糸と、第二の下撚糸に用いられる単糸は、同一であっても、異なっていてもよいが、好ましくは同一であり得る。同一の単糸を用いることにより、得られるパイル糸の強度が向上し得る。
【0017】
第一の下撚糸および第二の下撚糸に用いられる単糸の本数は、好ましくは100本以下、より好ましくは88本以下、さらに好ましくは50本以下、さらにより好ましくは20本以下であり得る。第一の下撚糸および第二の下撚糸に用いられる単糸の本数は、好ましくは2本以上、例えば、3本以上、又は4本以上であり得る。
【0018】
一の態様において、第一の下撚糸に用いられる単糸の本数は、第二の下撚糸に用いられる単糸の本数よりも多い。第一の下撚糸に用いられる単糸の本数を、第二の下撚糸に用いられる単糸の本数よりも多くすることにより、第一の下撚糸の太さを第二の下撚糸の太さよりも大きくすることができる。
【0019】
好ましい態様において、第一の下撚糸に用いられる単糸の本数は、第二の下撚糸に用いられる単糸の本数よりも、2本以上、より好ましくは3本以上、さらに好ましくは4
本以上、例えば6本、8本、又は10本以上多い。
【0020】
一の態様において、第一の下撚糸に用いられる単糸の本数は、好ましくは2本以上88本以下、より好ましくは4本以上50本以下、さらに好ましくは6本以上20本以下であり得る。
【0021】
一の態様において、第二の下撚糸に用いられる単糸の本数は、好ましくは1本以上50本以下、より好ましくは2本以上30本以下、さらに好ましくは4本以上20本以下、例えば4本以上10本以下であり得る。
【0022】
第一の下撚糸及び第二の下撚糸における撚り数(1メートルあたりの撚り数)は、好ましくは40以上800以下、より好ましくは100以上500以下、さらに好ましくは160以上300以下であり得る。下撚糸における撚り数を大きくすることにより、パイル糸の纏まり感が向上する。
【0023】
第一の下撚糸の太さは、第二の下撚糸の太さの等倍より大きい。第一の下撚糸の太さは、第二の下撚糸の太さの、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上、さらにより好ましくは2.5倍以上、又は3.0倍以上大きい。第一の下撚糸の太さと第二の下撚糸の太さの比率を大きくすることにより、得られるパイル糸がより紆曲し、ダストの保持能力が向上し得る。
【0024】
第一の下撚糸の太さは、第二の下撚糸の太さの、好ましくは10倍以下、より好ましくは6.0倍以下、さらに好ましくは5.0倍以下であり得る。第一の下撚糸の太さと第二の下撚糸の太さの比率を大きくすることにより、得られるパイル糸の強度がより向上する。
【0025】
第一の下撚糸および第二の下撚糸の太さは、好ましくは180dtex以上18000dtex以下、より好ましくは300dtex以上12000dtex以下、さらに好ましくは400dtex以上8000dtex以下であり得る。
【0026】
第一の下撚糸の太さと第二の下撚糸の太さの差は、好ましくは10dtex以上5000dtex以下、より好ましくは100dtex以上3000dtex以下であり得る。
【0027】
パイル糸は、第一の下撚糸と第二の下撚糸を上撚りすることにより得ることができる。
図1に本開示のパイル糸を模式的に示す。
【0028】
パイル糸は、好ましくは、第一の下撚糸、第二の下撚糸及び融着糸を上撚りすることにより得られる。
【0029】
融着糸の材料は、特に限定されなしが、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。融着糸の材料は、好ましくは、ポリアミド系樹脂である。
【0030】
パイル糸は、典型的には、1本の融着糸を第一の下撚糸と第二の下撚糸の間に配置し、これらを、融着糸が2本の下撚糸の接触界面の中央部に位置するように上撚りして、得ることができる。
【0031】
パイル糸における撚り数(1メートルあたりの撚り数)は、好ましくは40以上400以下、より好ましくは100以上300以下であり得る。パイル糸における撚り数を大きくすることにより、パイル糸の纏まり感が向上する。
【0032】
パイル糸の太さは、好ましくは500dtex以上30000dtex以下、より好ましくは1000dtex以上20000dtex以下、さらに好ましくは1500dtex以上10000dtex以下、例えば2000dtex以上5000dtex以下であり得る。
【0033】
上記単糸、下撚糸、及びパイル糸の太さ(dtex)は、綿番手(s)より換算して規定することができる。例えば、1(s)の場合、1(s)=0.5905g/mであり、1(dtex)=0.0001g/mであることから、1(s)=5905(dtex)となる。また、上記単糸、下撚糸、及びパイル糸の太さ(dtex)は、これらの糸を温度25℃、湿度50%RHの環境に24時間以上静置したのち、1m相当分を測りとりその重量を測定し、その重量から10,000mあたりの重さを計算することにより測定することもできる。
【0034】
パイル糸は、紆曲形状、例えばウェーブ形状、螺旋形状等を有し得る。
【0035】
パイル糸の外観太さは、パイル径の等倍より大きく、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.3倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上、例えば1.8倍以上、又は2.0以上であり得る。
【0036】
パイル糸の外観太さは、典型的にはウェーブ幅又はらせん径であり得る。
【0037】
この場合におけるパイル糸のパイル径とは、パイル糸自体の軸方向に垂直な断面の直径(
図2における「r」)を意味する。パイル糸の外観太さとは、パイル糸が紆曲した空間にもパイル糸が存在するとして測定される太さ(
図2における「R」)を意味する。
【0038】
本開示のモップは、本開示のパイル糸を有する。本開示もパイル糸は、モップの払拭部として用いられる。
【0039】
本開示のモップは、例えば、キャンバスに、フレンジ整列させた本開示のパイル糸を縫製して接合することにより得ることができる。
【実施例0040】
以下、本開示のモップについて、実施例において説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
(モップの作製)
(実施例1)
単糸として、Z方向に484回撚られたナイロン製18番単糸を準備した。18番単糸を、それぞれ、6本及び2本用いて、Z方向に200回下撚りして、第一の下撚(1947dtex)糸及び第二の下撚糸(649dtex)を得た。ついで、得られた第一の下撚糸、第二の下撚糸、及び融着糸(110dtex)を用いて、S方向に250回上撚りして、
図3に示すような実施例1のパイル糸(2596dtex)を得た。
【0042】
(比較例1)
単糸として、Z方向に576回撚られたナイロン製18番単糸を準備した。18番単糸を、4本用いて、Z方向に160回下撚りして、下撚糸(1298dtex)を得た。ついで、得られた下撚糸2本、及び融着糸(110dtex)を用いて、S方向に200回上撚りして、比較例1のパイル糸(2596dtex)を得た。
【0043】
【0044】
上記実施例1のパイル糸、及び比較例1のパイル糸を用いて、モップを作成した。小型洗濯機で負荷モップを入れて吸着剤を塗布後、実施例1及び比較例1のモップを作製した。試験片は作製したモップのパイルを規定の長さにカットして作製した。
【0045】
(評価)
・綿、砂付着試験
下記のパイルダスト保持試験を実施した。
作成した試験片に規定量のダストを付着させ、パイルダスト保持試験機にて規定回数振り落とした後の試験片におけるダストの保持量を測定した。
〈使用ダスト〉
綿ボコリ:0.1mmカット綿(振り落とし:表裏100回)
砂ボコリ:JIS2種(振り落とし:表裏10回)
【0046】
・ペット毛髪付着試験
床面に下記表に示す人毛、猫毛、及び犬毛をフローリングに散布し、モップの自重にて50cm払拭した。モップを持ちあげてモップに付着した毛の本数を測定した。
【0047】
【0048】
結果を、試行回数3回の平均値として、
図4に示す。なお、結果は比較例1を100として相対値で示す。
【0049】
(実施例2)
単糸として、Z方向に576回撚られたナイロン製18番単糸を準備した。18番単糸を、8本と4本用いて、Z方向に200回下撚りして、第一の下撚糸及び第二の下撚糸を得た。ついで、得られた第一の下撚糸、第二の下撚糸、及び融着糸を用いて、S方向に250回上撚りして、実施例2のパイル糸(3936dtex)を得た。
【0050】
(比較例2)
単糸として、Z方向に576回撚られたナイロン製18番単糸を準備した。18番単糸を、4本用いて、Z方向に190回下撚りして、下撚糸を得た。ついで、得られた下撚糸2本、及び融着糸を用いて、S方向に200回上撚りして、比較例2のパイル糸(2625dtex)を得た。
【0051】
【0052】
(評価)
実施例2及び比較例2について、上記の綿、砂付着試験を行った。結果を書き表に示す。なお、結果は比較例2を100として相対値で示す。
【0053】
【0054】
本開示は、以下の態様を含む。
[1] 複数本の単糸が下撚りされた第一の下撚糸と第二の下撚糸とが上撚りされたパイル糸であって、前記第一の下撚糸は、前記第二の下撚糸よりも太い、パイル糸。
[2] 前記第一の下撚糸の太さは、前記第二の下撚糸の太さの等倍より大きい、上記[1]に記載のパイル糸。
[3] 前記第一および第二の下撚糸の太さは、180dtex以上18000dtex以下である、上記[1]又は[2]に記載のパイル糸。
[4] 前記第一および第二の下撚糸に用いられる単糸の太さは、100dtex以上10000dtex以下ある、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[5] 前記第一および第二の下撚糸に用いられる単糸の本数は、88本以下である、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[6] 前記単糸における撚り数は、60以上1220以下である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[7] 前記第一の下撚糸及び前記第二の下撚糸における撚り数は、40以上800以下である、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[8] 前記パイル糸における撚り数は、40以上400以下である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[9] パイル軸方向に沿った螺旋形状を有する、上記[1]~[8]のいずれか1項に記載のパイル糸。
[10] らせん径は、パイル径の等倍より大きいである、上記[9]に記載のパイル糸。
[11] 上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のパイル糸を有するモップ。