(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121585
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】配電設備工事方法
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
H02G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028758
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重嘉
(72)【発明者】
【氏名】堀川 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐野 常世
(72)【発明者】
【氏名】於保 健一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 丙午郎
【テーマコード(参考)】
5G352
【Fターム(参考)】
5G352AC01
5G352AE04
5G352AE07
5G352AJ02
5G352AJ03
5G352AJ09
(57)【要約】
【課題】配電線から高所作業車に電力を供給する配電設備工事方法を提供すること。
【解決手段】
配電設備工事方法は、配電線11、12の下に電池を搭載した高所作業車30を移動し、前記配電線11、12に、前記電池と、前記配電線11、12から取得する電力量を測定する電力量計とを接続し、前記電池を充電しながら配電設備の工事を行なう。前記配電線11、12と、前記電池とを、活線工法を用いて接続する。前記活線工法は、前記配電線11、12と前記電池に接続される配線材34とを、被覆貫通型のコネクターを用いて接続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電線の下に電池を搭載した高所作業車を移動し、
前記配電線に、前記電池と、前記配電線から取得する電力量を測定する電力量計とを接続し、
前記電池を充電しながら配電設備の工事を行なう
配電設備工事方法。
【請求項2】
前記配電線と前記電池とを、活線工法を用いて接続する
請求項1に記載の配電設備工事方法。
【請求項3】
前記活線工法は、前記配電線と前記電池に接続される配線材とを、被覆貫通型のコネクターを用いて接続する
請求項2に記載の配電設備工事方法。
【請求項4】
前記配電線の被覆を活線工法を用いて除去し、
前記電池に接続される配線材を、前記配電線の被覆が除去された部分に活線工法を用いて接続する
請求項2に記載の配電設備工事方法。
【請求項5】
前記配電線を修復した後に終了する
請求項4に記載の配電設備工事方法。
【請求項6】
前記電力量計は、前記配電線と前記電池との間に接続される
請求項1に記載の配電設備工事方法。
【請求項7】
前記配電線から、前記電池をバイパスして前記工事に用いる電動機材に電力を供給する
請求項1に記載の配電設備工事方法。
【請求項8】
前記電力量計により測定された電力量を記録する
請求項1に記載の配電設備工事方法。
【請求項9】
記録した前記電力量と、前記高所作業車を識別する情報とを電気事業者に送信する
請求項8に記載の配電設備工事方法。
【請求項10】
前記配電線は、低圧配電線である請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の配電設備工事方法。
【請求項11】
前記配電線は、高圧配電線である請求項1から請求項9のいずれか一つに記載の配電設備工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電設備工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2050年カーボンニュートラルに向けて車両の電動化が進められている。一方、工事用大型車両のようにエンジンを作業動力源としても活用する車両については、電動化が難しいと考えられる。
【0003】
配線用差込接続器と、カードリーダとを設け、電気自動車等への電力供給を有償で行える電柱が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電柱は、設置コストおよびメンテナンスコストが高い。さらに一般の人の手に届く場所に配線用差込接続器を配置するため、不正利用が行われるリスクがある。
【0006】
一方、電気工事事業者が配線設備工事に使用する高所作業車は、一般の乗用車等に比べて大型・大重量である上、作業床を動かす際にも電力を消費する。電力消費量に応じた大容量の電池を搭載する場合、電池の重量やスペースが大きくなってしまう。
【0007】
一つの側面では、配電線から高所作業車に電力を供給する配電設備工事方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
配電設備工事方法は、配電線の下に電池を搭載した高所作業車を移動し、前記配電線に、前記電池と、前記配電線から取得する電力量を測定する電力量計とを接続し、前記電池を充電しながら配電設備の工事を行なう。
【発明の効果】
【0009】
一つの側面では、配電線から高所作業車に電力を供給する配電設備工事方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第2柱上変圧器を交換する作業の様子を説明する説明図である。
【
図4】電力使用量記録システムの構成を説明する説明図である。
【
図5】測定値DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
【
図6】使用量DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
【
図7】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
【
図8】変形例1の高所作業車の構成を説明する説明図である。
【
図9】変形例2の作業の様子を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は、配電設備の概要を説明する説明図である。第1電柱191、第2電柱192、第3電柱193および第4電柱194の4本の電柱19が一列に配置されている。電柱19の上端部に、高圧配電線11が張り渡されている。高圧配電線11の下側に、低圧配電線12が張り渡されている。高圧配電線11は、たとえば6600ボルトの三相交流を伝送する3本の電線により構成されている。
【0012】
低圧配電線12は、三相三線式または単相三線式の交流を伝送する3本の電線により構成されている。なお、三相三線式と単相三線式との両方の低圧配電線12が張り渡されていてもよい。いずれの場合であっても、需要者に対して三相または単相の交流を供給できる。低圧配電線12から需要者に供給できる電圧は、高圧配電線11と低圧配電線12との接続方法により異なる。
図1は、低圧配電線12から需要者に対して100ボルトの交流を供給する場合の例を示す。
【0013】
図示を省略するが、低圧配電線12は単相二線式の交流を伝送する2本の電線により構成されていてもよい。単相二線式の低圧配電線12からは、需要者に対して100ボルトの交流を供給できる。低圧配電線12は、4本の電線を用いて需要者に100ボルトの交流と200ボルトの交流との両方を供給できる三相四線式であってもよい。
【0014】
第1電柱191に第1柱上変圧器201が、第3電柱193に第2柱上変圧器202がそれぞれ取り付けられている。以後の説明においては、第1柱上変圧器201と第2柱上変圧器202とを特に区別する必要がない場合には、柱上変圧器20と記載する場合がある。
【0015】
需要者に100ボルトの交流を供給するために、高圧配電線11を構成する3本の電線のうち2本から、柱上変圧器20に高圧引下線13が接続されている。柱上変圧器20から低圧配電線12を構成する3本の電線のそれぞれに、低圧引上線14が接続されている。
【0016】
第1柱上変圧器201は、高圧配電線11の高電圧電力を降圧した電力を、
図1に区間Aで示す第2電柱192よりも右側の区間の低圧配電線12に供給する。第2柱上変圧器202は、高圧配電線11の高圧配電線11の高電圧電力を降圧した電力を、
図1に区間Bで示す第2電柱192から第4電柱194までの区間の低圧配電線12に供給する。第2電柱192の両側の低圧配電線12同士は、接続されていない。
【0017】
低圧配電線12は、図示を省略する引き込み線を介して住宅等の分電盤に接続される。すなわち、一般の需要者に対する電力供給は、低圧配電線12および引き込み線を介して行われる。
【0018】
電力を安定して供給するために、鳥の巣の除去、凧等の飛来物の除去、および、配電設備を構成する種々の機器の点検または交換等の様々なメンテナンス作業が行われる。電力需要の変化に対応するために、配電設備の新設または変更等の工事も行われる。以下の説明ではこれらの工事を総称して、配電設備工事と記載する。
図2は、第2柱上変圧器202を交換する作業の様子を説明する説明図である。
【0019】
配電設備工事を担当する工事作業員は、高所作業車30を低圧配電線12の下に停車させる。高所作業車30は、工事作業員が乗って高所作業を行なう作業床31と、作業床31を持ち上げるブーム39とを備える。本実施の形態で使用する高所作業車30は、作業床31およびブーム39が絶縁されている、いわゆる電気工事仕様である。
【0020】
本実施の形態の高所作業車30は、電池35(
図3参照)に蓄えた電力を使用して動作する電気自動車である。前述のとおり高所作業車30は一般の乗用車等に比べて大型・大重量であるため、走行時の消費電力が大きい。高所作業車30は、作業床31を動かす際にも電力を消費する。
【0021】
図2を使用して第2柱上変圧器202を交換する配電設備工事の概要を説明する。工事作業員は、高所作業車30が走行済の距離、次の目的地までの走行予定距離、電池35の残量および作業床31を使用する作業の所要時間等を勘案して、電池35への充電を行なうべきか否かを決定する。担当作業の指示書に、充電作業の有無が記載されていてもよい。
【0022】
充電を行なう場合、工事作業員は低圧配電線12を構成する3本の電線と高所作業車30とを接続ケーブル34でそれぞれ接続する。接続ケーブル34は、低圧配電線12と電池35とを接続する配線材の例示である。低圧配電線12から電池35への充電が開始される。以後の作業は、電池35への充電を行なわない場合と同様の作業であるため、概要のみ記載する。
【0023】
工事作業員は、第2電柱192の両側の低圧配電線12同士を図示を省略するジャンパ線で接続する。区間Bの低圧配電線12に、第1柱上変圧器201から電力が供給される。
【0024】
交換用柱上変圧器209を運搬する運搬車63の運転手は、第3電柱193の近くに運搬車63を停める。工事作業員は、第2柱上変圧器202と高圧引下線13および低圧引上線14との接続を取り外す。工事作業員は、第3電柱193から第2柱上変圧器202を取り外して、運搬車63の荷台に降ろす。工事作業員は、交換用柱上変圧器209を第3電柱193に取り付けて、高圧引下線13および低圧引上線14を接続する。
【0025】
以上により、区間Bへの低圧配電線12に、第2柱上変圧器202から電力が供給される。工事作業員は、第2電柱192の両側の低圧配電線12同士を接続するジャンパ線を取り外す。その後、低圧配電線12から接続ケーブル34を取り外す。以上により、配電設備工事が終了する。
【0026】
図3は、高所作業車30の構成を説明する説明図である。
図3の上半分は、
図2におけるIII部拡大図である。高所作業車30は、前述の作業床31、ブーム39および電池35に加えて、架装部311、AC-DCコンバータ38、電力量計37および接続器33を備える。
【0027】
接続器33は、3本の接続ケーブル34が取り付けられる端子盤である。接続器33は、導通状態のON/OFFを切り替える内部スイッチ331を有する。内部スイッチ331がON状態である場合には、接続器33は導通状態であり、内部スイッチ331がOFF状態である場合には接続器33は絶縁状態である。
【0028】
電池35には、電動ドライバ等の電動機材71が接続可能である。架装部311、電動機材71、電池35、AC-DCコンバータ38、電力量計37および接続器33を結ぶ太線は、電力伝送用のケーブルを模式的に示す。電力量計37の配線の詳細については図示を省略する。架装部311は、電池35から供給されたエネルギーを使用して、ブーム39を伸縮および回動させる機構である。
【0029】
電池35は、たとえばリチウムイオン電池、鉛蓄電池または全固体電池等の二次電池である。高所作業車30は、電池35に蓄えられた電力を使用して走行およびブーム39の動作を行なう。高所作業車30は、図示を省略するエンジンと電池35との両方を搭載した、いわゆるハイブリッド車であってもよい。高所作業車30は、ブーム39の動作用と走行用等との、複数の電池35を搭載していてもよい。高所作業車30は垂直昇降型であってもよい。
【0030】
AC-DCコンバータ38は、低圧配電線12から接続器33を介して印加された交流を直流に変換する。電力量計37は、接続器33とAC-DCコンバータ38との間に接続されており、低圧配電線12から供給される電力を測定する。
【0031】
工事作業員は、内部スイッチ331がOFF状態であることを確認する。工事作業員は、作業床31に乗って低圧配電線12に近付く。工事作業員は、低圧配電線12を構成するそれぞれの電線と接続ケーブル34とをコネクター32を用いて接続する。接続作業には、直接活線工法が用いられる。
【0032】
図3においては、コネクター32が被覆貫通型である場合を示す。コネクター32は、被覆除去型であってもよい。被覆除去型のコネクター32を使用する場合には、工事作業員は直接活線工法を用いて低圧配電線12を構成する電線の被覆の一部を除去した後に、コネクター32を用いて接続ケーブル34を接続する。直接活線工法、および、直接活線工法用のコネクター32は、従来から使用されているため、詳細については説明を省略する。
【0033】
工事作業員は、内部スイッチ331をON状態にする。接続ケーブル34および接続器33を介して100ボルトまたは200ボルトの交流がAC-DCコンバータ38に印加される。AC-DCコンバータ38により直流に変換された電力は、図示を省略する充電回路を介して電池35に充電される。電力量計37は、接続器33を通過してAC-DCコンバータ38に供給される電力を測定する。
【0034】
なお、高所作業車30には、工事作業員が内部スイッチ331のON/OFF操作を遠隔操作で行なえるリモートスイッチが設けられていてもよい。リモートスイッチは、作業床31に配置されていてもよい。高所作業車30には、内部スイッチ331に加えて、または内部スイッチ331の代わりに、AC-DCコンバータ38または図示を省略する充電回路の動作のON/OFF操作を行なえるスイッチが設けられていてもよい。
【0035】
電池35は、充電中であってもブーム39および電動機材71を動作させる電力を供給する機能を有する。配電設備工事の終了後、または、電池35の充電終了後、工事作業員は内部スイッチ331をOFF状態にする。低圧配電線12から高所作業車30への電力供給が停止する。
【0036】
工事作業員は直接活線工法を用いて低圧配電線12からコネクター32および接続ケーブル34を取り外す。その後工事作業員は、直接活線工法を用いて、被覆を貫通した部分、または被覆を除去した部分に絶縁テープを巻き付けて低圧配電線12を修復する。その後、工事作業員は、作業床31を降ろし、次の作業場所に移動する。
【0037】
内部スイッチ331は、AC-DCコンバータ38と連動していてもよい。具体的には、AC-DCコンバータ38は接続器33と同時にON状態およびOFF状態になる。低圧配電線12から電力が供給されていない間のAC-DCコンバータ38による電力消費を防止する高所作業車30を提供できる。
【0038】
AC-DCコンバータ38は、たとえば高所作業車30に設けられたアウトリガまたはジャッキ等の転倒防止装置と連動して動作しても良い。具体的には、工事作業員が転倒防止装置を動作させて高所作業車30を地面に固定した場合にAC-DCコンバータ38は動作を開始し、工事作業員が転倒防止装置を収容して高所作業車30を走行可能な状態にした場合にAC-DCコンバータ38は動作を終了する。工事作業員が、AC-DCコンバータ38のON/OFFの操作を行なう手間を省ける高所作業車30を提供できる。
【0039】
電気料金の精算について説明する。たとえば制御部81(
図4参照)が、工事ごとに使用した電力量に関するデータを電気事業者に送信する。工事事業者の経理担当部門等が、それぞれの配電設備工事代金の明細と共に工事ごとに使用した電力量に関するデータを電気事業者に提示してもよい。
【0040】
電気事業者は、使用量に応じた電気料金を工事事業者に請求する。工事事業者は、電気料金を電気事業者に支払う。なお、電気料金の精算は、配電設備工事の代金の精算と同時に行われても、別途行なわれてもよい。
【0041】
図4は、電力使用量記録システム10の構成を説明する説明図である。電力使用量記録システム10は、サーバ40と、ネットワークを介してサーバ40に接続された情報処理装置80とを備える。それぞれの情報処理装置80には、電力量計37が接続されている。情報処理装置80および電力量計37は、高所作業車30に搭載されている。
【0042】
サーバ40は、制御部41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信部44、入力部45、出力部46およびバスを備える。制御部41は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部41には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部41は、バスを介してサーバ40を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0043】
主記憶装置42は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置42には、制御部41が行なう処理の途中で必要な情報および制御部41で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0044】
補助記憶装置43は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置43には、使用量DB53、制御部41に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。使用量DB53は、サーバ40に接続された外部の大容量記憶装置に記憶されていてもよい。通信部44は、サーバ40とネットワークとの間の通信を行なうインターフェイスである。
【0045】
入力部45は、たとえばキーボード、マウスまたはマイク等の入力デバイスである。出力部46は、たとえば液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)パネルである。入力部45と出力部46とが積層されてタッチパネルを構成していてもよい。
【0046】
本実施の形態のサーバ40は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレットまたはスマートフォン等の情報処理機器である。サーバ40は、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、クラウドコンピューティングシステム、または、分散処理を行なう複数のパソコン等であってもよい。
【0047】
情報処理装置80は、制御部81、主記憶装置82、補助記憶装置83、通信部84およびバスを備える。制御部81は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部81には、一または複数のCPU、GPU、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部81は、バスを介して情報処理装置80を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0048】
主記憶装置82は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置82には、制御部81が行なう処理の途中で必要な情報および制御部81で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0049】
補助記憶装置83は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置83には、測定値DB51、制御部81に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。測定値DB51は、情報処理装置80に接続された外部の大容量記憶装置に記憶されていてもよい。通信部84は、情報処理装置80とネットワークとの間の通信を行なうインターフェイスである。
【0050】
情報処理装置80は、たとえば汎用のシングルボードコンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレットまたはスマートフォン等の情報処理機器である。情報処理装置80と電力量計37とは、一つの筐体に組み込まれて、一体化されていてもよい。
【0051】
電力量計37は、電気事業者から貸与または提供される。電力量計37は、たとえば30分等の所定の時間ごとに電力量を電気事業者のサーバコンピュータにアップロードするスマートメータであってもよい。工事事業者は、工事対象である配電設備を管理している電気事業者に対応する電力量計37を情報処理装置80に接続して、配電設備工事を行なう。
【0052】
配電設備工事ごとに、低圧配電線12から供給された電力量が測定値DB51に記録される。測定値DB51の構成については後述する。
【0053】
配電設備工事が終了し、高所作業車30を工事事業者の事業場に戻した後に、工事作業員が有線または無線通信により情報処理装置80をネットワークに接続する。測定値DB51に記録された電力量が、使用量DB53に記録される。
【0054】
情報処理装置80は、たとえばUSB(Universal Serial Bus)メモリまたはSDカード等の可搬型記憶媒体に電力量を記録してもよい。工事作業員は、事業場に戻った後に電力量計37から可搬型記憶媒体を抜き、ネットワークに接続された汎用のパソコン等に挿入する。情報処理装置80は、公衆通信回線等を介して常時ネットワークに接続されている、いわゆるIoT(Internet of Things)デバイスであってもよい。
【0055】
図5は、測定値DB51のレコードレイアウトを説明する説明図である。測定値DB51は、電力量計IDフィールド、記録日時フィールドおよび電力量フィールドを有する。電力量計IDフィールドには、電力量計37に固有に付与された電力量計IDが記録されている。なお、以下の説明では電力量計37は、それぞれ定められた高所作業車30に搭載される場合を例にして説明する。電力量計37は、日によって異なる高所作業車30に搭載されてもよい。
【0056】
記録日時フィールドには、電力量の測定結果を記録した日時が記録されている。電力量フィールドには、電力量の測定結果が記録されている。測定値DB51は、1回の工事ごとに一つのレコードを有する。
【0057】
図6は、使用量DB53のレコードレイアウトを説明する説明図である。使用量DB53は、電力量計IDフィールド、高所作業車IDフィールド、日付フィールド、時間フィールド、工事IDフィールドおよび電力量フィールドを有する。時間フィールドは、開始フィールドおよび終了フィールドを有する。
【0058】
電力量計IDフィールドには、電力量計37に固有に付与された電力量計IDが記録されている。高所作業車IDフィールドには、高所作業車30に固有に付与された高所作業車IDが記録されている。高所作業車IDは、個々の高所作業車30を識別する情報の例示である。
【0059】
日付フィールド、時間フィールド、および工事IDフィールドには、電力量計37が搭載された高所作業車30を使用する配電設備工事の予定が記録されている。すなわち日付フィールドには配電設備工事の日付が記録されている。開始フィールドには配電設備工事の開始予定時刻が記録されている。終了フィールドには、配電設備工事の終了予定時刻が記録されている。工事IDフィールドには、配電設備工事に固有に付与された工事IDが記録されている。
【0060】
日付フィールド、時間フィールド、および工事IDフィールドのデータは、たとえば高所作業車30のスケジュールに連動して、自動的に入力される。高所作業車30のスケジュールを調整する担当者が、これらのデータを使用量DB53に手入力してもよい。
【0061】
電力量フィールドには、電力量計37を用いて測定された電力量が記録される。工事ID「C03」については、未だ配電設備工事が完了していないため、電力量フィールドは空欄である。
【0062】
図7は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。電力量計37は、測定した電力量を情報処理装置80に随時送信する(ステップS801)。制御部81は、配電設備工事を開始するか否かを判定する(ステップS701)。たとえば制御部81は、内部スイッチ331がOFF状態からON状態に変化した場合に、配電設備工事を開始すると判定する。制御部81は、高所作業車30が停止して、アウトリガを固定した場合に、配電設備工事を開始すると判定してもよい。
【0063】
配電設備工事を開始したと判定した場合(ステップS701でYES)、制御部81は、電力量計37から送信された電力量を受信する(ステップS702)。制御部81は、配電設備工事が終了したか否かを判定する(ステップS703)。たとえば制御部81は、内部スイッチ331がOFF状態に変化した場合に、配電設備工事が終了したと判定する。制御部81は、高所作業車30がアウトリガを収納した場合に、配電設備工事が終了したと判定してもよい。
【0064】
配電設備工事が終了してないと判定した場合(ステップS703でNO)、制御部81はステップS702に戻る。配電設備工事が終了したと判定した場合(ステップS703でYES)、制御部81はステップS701からステップS703までのループで最後に受信した電力量と、ステップS701からステップS703までのループで最初に受信した電力量との差分を算出する(ステップS704)。算出した差分が、一回の配電設備工事で低圧配電線12から供給された電力量である。
【0065】
制御部81は、測定値DB51に新規レコードを作成する。制御部81は、記録日時フィールドに内蔵する時計から取得した現在日時を、電力量フィールドにステップS704で算出した差分をそれぞれ記録する(ステップS705)。制御部81は、ステップS701に戻る。
【0066】
配電設備工事を開始していないと判定した場合(ステップS701でNO)、制御部81はサーバ40との通信を開始できるか否かを判定する(ステップS711)。たとえば、工事作業員が情報処理装置80に設けられた通信開始スイッチを操作した場合、または、Bluetooth(登録商標)または無線LAN(Local Area Network)等の通信機能がサーバ40を検出した場合に、電力量計37は通信を開始できると判定する。
【0067】
通信を開始できると判定した場合(ステップS711でYES)、制御部81と制御部41とは、所定のプロトコルに基づいて互いに接続を確立する(ステップS712、ステップS901)。制御部81は、測定値DB51に記録されているレコードをサーバ40に送信する(ステップS713)。制御部81は、送信済のレコードを測定値DB51から削除する。
【0068】
制御部81は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS714)。たとえばユーザから終了指示を受け付けた場合に、制御部81は処理を終了すると判定する。処理を終了しないと判定した場合(ステップS714でNO)、制御部81はステップS701に戻る。処理を終了すると判定した場合(ステップS714でYES)、制御部81は処理を終了する。
【0069】
制御部41は、情報処理装置80から送信されたレコードを受信する(ステップS902)。制御部41は、電力量計IDをキーにして、使用量DB53からレコードを抽出する。制御部41は、ステップS902で受信した記録日時フィールドに記録された日時に近い日時が、日付フィールドおよび終了フィールドに記録されているレコードを、さらに抽出する。制御部41は、抽出したレコードの電力量フィールドにステップS602で受信した電力量を記録する(ステップS903)。
【0070】
ステップS902で複数のレコードが記録された測定値DB51を受信した場合、制御部41は受信したレコードの数と同じ回数ステップS903を繰り返す。以上により、高所作業車30および工事IDと、低圧配電線12から高所作業車30に供給された電力の電力量とが関連づけて使用量DB53に記録される。
【0071】
使用量DB53に記録されたデータは、制御部41または図示を省略する経理システムにより電気事業者に送信される。電気事業者は、高所作業車30ごと、または工事IDごとに電気代を算出して、工事事業者に請求する。
【0072】
なお情報処理装置80は、工事ごとの電力量を測定し、測定値DB51に記録する機能のみを有してもよい。工事作業員は、測定値DB51に記録された電力量を手作業で使用量DB53に転記する。
【0073】
本実施の形態によると、低圧配電線12から高所作業車30に電力を供給する配電設備工事方法を提供できる。本実施の形態によると、高所作業中に電池35を充電できる高所作業車30を提供できる。低圧配電線12と電池35との接続に直接活線工法を使用するため、電池35の充電のために停電を引き起こさない高所作業車30を提供できる。
【0074】
電気工事仕様の高所作業車30を使用するため、一般の人が作業を見た場合であっても、その作業を模倣して、電気事業者に無断で電力を得ることはできない。電気工事仕様の高所作業車30を使用できる工事事業者は、電気事業者と契約を結び各種工事を受注する場合が多いため、適切に電気料金を精算できる。
【0075】
高所作業車30に搭載された電池35に加えて、または高所作業車30に搭載された電池35の代わりに、運搬車63等の電気自動車に対して充電が行われてもよい。そのようにする場合には、たとえば電池35の近傍に、他の電気自動車との接続に用いるコネクター等を設けることが望ましい。
【0076】
本実施の形態によると、工事事業者の事業場に戻ってから、電池35を充電する必要がないため、たとえば工事作業員が交代しながら24時間連続稼働可能な高所作業車30を提供できる。
【0077】
本実施の形態によると、配電設備工事を行なう地域ごとに、工事対象である配電設備を管理している電気事業者に対応する電力量計37を使用できる。したがって、電気事業者に盗電および料金算出ミス等の懸念を与えない配電設備工事方法を提供できる。
【0078】
[変形例1]
本変形例は、電池35をバイパスしてAC-DCコンバータ38から架装部311および電動機材71に直接給電できる配電設備工事方法に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0079】
図8は、変形例1の高所作業車30の構成を説明する説明図である。架装部311および電動機材71がAC-DCコンバータ38に直接接続されている。
【0080】
本変形例の配電設備工事方法においては、配電工事開始時には
図3を使用して説明したように、電池35から架装部311に電力を供給する。工事作業員は、電池35から供給される電力を利用して作業床31を低圧配電線12の近くまで移動させて、低圧配電線12と接続器33とを接続する。
【0081】
低圧配電線12からの給電を開始した後、工事作業員は架装部311および電動機材71をAC-DCコンバータ38に接続し直して、
図8の状態に変更する。なお、高所作業車30には
図3に示す状態と、
図8に示す状態とを容易に切り替え可能な切替器を備えていてもよい。
【0082】
配電設備工事を終了する際には、工事作業員は架装部311を電池35に接続しなおして、
図3を使用して説明した状態に戻す。その後工事作業員は低圧配電線12から接続ケーブル34およびコネクター32を取り外す。以上で、配電設備工事が終了する。
【0083】
本変形例によると、電池35をバイパスして架装部311および電動機材71に直接給電するため、架装部311および電動機材71を使用する際のエネルギー効率の良い高所作業車30を提供できる。
【0084】
[変形例2]
本変形例は、高圧配電線11から電池35に給電する配電設備工事方法に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。本変形例の接続ケーブル34、接続器33、電力量計37およびAC-DCコンバータ38は、高圧配電線11から供給されるたとえば6600ボルトの交流を受電し、電池35に充電可能な直流に変換可能な仕様である。
【0085】
図9は、変形例2の作業の様子を説明する説明図である。電池35への充電を行なう場合、工事作業員は高圧配電線11を構成する3本のケーブルと高所作業車30とを接続ケーブル34でそれぞれ接続する。接続ケーブル34は、高圧配電線11と電池35とを接続する配線材の例示である。高圧配電線11から電池35への充電が開始される。
【0086】
なお、本変形例においては、工事作業員は間接活線工法により高圧配電線11と接続器33とを接続する。
【0087】
本変形例によると、第1柱上変圧器201の容量が不十分であり、区間Bの需要者への電力供給と、電池35の充電とを両立できない場合であっても、電池35に充電可能な配電設備工事方法を提供できる。
【0088】
プログラムは、プログラム製品の例示である。コンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または一つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0089】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0090】
特許請求の範囲に記載した独立請求項および従属請求項は、引用形式に関わらずあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0091】
10 電力使用量記録システム
11 高圧配電線(配電線)
12 低圧配電線(配電線)
13 高圧引下線
14 低圧引上線
19 電柱
191 第1電柱
192 第2電柱
193 第3電柱
194 第4電柱
20 柱上変圧器
201 第1柱上変圧器
202 第2柱上変圧器
209 交換用柱上変圧器
30 高所作業車
31 作業床
311 架装部
32 コネクター
33 接続器
331 内部スイッチ
34 接続ケーブル(配線材)
35 電池
37 電力量計
38 AC-DCコンバータ
39 ブーム
40 サーバ
41 制御部
42 主記憶装置
43 補助記憶装置
44 通信部
45 入力部
46 出力部
51 測定値DB
53 使用量DB
63 運搬車
71 電動機材
80 情報処理装置
81 制御部
82 主記憶装置
83 補助記憶装置
84 通信部