IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社関電工の特許一覧

<>
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図1
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図2
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図3
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図4
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図5
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図6
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図7
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図8
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図9
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図10
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図11
  • 特開-柱上変圧器の交換方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121586
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】柱上変圧器の交換方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20240830BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240830BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240830BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 180
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028759
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重嘉
(72)【発明者】
【氏名】堀川 豊
(72)【発明者】
【氏名】佐野 常世
(72)【発明者】
【氏名】於保 健一
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 丙午郎
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066AA10
5G066HA11
5G066HB09
5G066JA02
5G066JB03
5G503AA04
5G503AA07
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】無停電工法による柱上変圧器の交換作業の効率を向上させる柱上変圧器の交換方法を提供すること。
【解決手段】柱上変圧器20の交換方法は、交換対象である柱上変圧器20から電力の供給を受けている配電線12の下に、電池を搭載した高所作業車30を移動し、前記配電線12に前記高所作業車30に搭載された前記電池から電力を供給し、前記配電線12から電力の供給を受けている需要者を停電させずに前記柱上変圧器20を交換用柱上変圧器209に交換する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換対象である柱上変圧器から電力の供給を受けている配電線の下に、電池を搭載した高所作業車を移動し、
前記配電線に前記高所作業車に搭載された前記電池から電力を供給し、
前記配電線から電力の供給を受けている需要者を停電させずに前記柱上変圧器を交換用柱上変圧器に交換する
柱上変圧器の交換方法。
【請求項2】
前記柱上変圧器は、高圧配電線と低圧配電線とに接続されており、
前記電池を、前記低圧配電線に接続する
請求項1に記載の柱上変圧器の交換方法。
【請求項3】
前記高所作業車は、前記電池から供給された電力で動作する電気自動車である
請求項1に記載の柱上変圧器の交換方法。
【請求項4】
前記電池に充電可能な電源車を前記電池に接続する
請求項1に記載の柱上変圧器の交換方法。
【請求項5】
前記電源車から、前記柱上変圧器または交換用柱上変圧器を運搬する運搬用電気自動車に対して電力を供給する
請求項4に記載の柱上変圧器の交換方法。
【請求項6】
前記電池から供給した電力量を記録する
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の柱上変圧器の交換方法。
【請求項7】
記録した前記電力量に基づいて電気料金を算出する
請求項6に記載の柱上変圧器の交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱上変圧器の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配電網を介して、電気事業者から需要者に電力が供給されている。住宅等への電力供給については、都市部においては無電柱化が進められている。しかし都市部以外の地域では、今後も主に電柱が使用されると考えられる。
【0003】
発電所で作られた数十万ボルトの超高電圧の電力は、複数の変電所を順次介して降圧される。住宅地等に設置された電柱には、たとえば6600ボルトの高圧配電線と、100ボルトまたは200ボルトの低圧配電線とが張り渡されている。
【0004】
高圧配電線には、各地域の変電所から電力が供給される。低圧配電線には、高圧配電線の電力を電柱の上に配置された柱上変圧器により降圧した電力が供給される。一般の住宅等には、低圧配電線から電力が供給される。
【0005】
需要者に対する電力供給を継続しながら、柱上変圧器の交換または修理等のメンテナンス作業を行ういわゆる無停電工法を実現するために、車両に変圧器を搭載した移動用変圧器装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-200066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の移動用変圧器装置を使用するためには、高圧配電線および低圧配電線に移動用変圧器装置を接続する必要がある。接続作業は、工事作業員が電柱に登るか、または、高所作業車を使用して実施する。いずれの場合も、接続作業には時間とコストとが掛かる。
【0008】
一つの側面では、無停電工法による柱上変圧器の交換作業の効率を向上させる柱上変圧器の交換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
柱上変圧器の交換方法は、交換対象である柱上変圧器から電力の供給を受けている配電線の下に、電池を搭載した高所作業車を移動し、前記配電線に前記高所作業車に搭載された前記電池から電力を供給し、前記配電線から電力の供給を受けている需要者を停電させずに前記柱上変圧器を交換用柱上変圧器に交換する。
【発明の効果】
【0010】
一つの側面では、無停電工法による柱上変圧器の交換作業の効率を向上させる柱上変圧器の交換方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】配電設備の概要を説明する説明図である。
図2】工事手順を説明する説明図である。
図3】工事手順を説明する説明図である。
図4】工事手順を説明する説明図である。
図5図4におけるV部拡大図である。
図6】工事手順を説明する説明図である。
図7】電気料金算出システムの構成を説明する説明図である。
図8】測定値DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図9】料金DBのレコードレイアウトを説明する説明図である。
図10】プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。
図11】変形例の工事手順を説明する説明図である。
図12】実施の形態2の工事手順を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態1]
図1は、配電設備の概要を説明する説明図である。第1電柱191、第2電柱192、第3電柱193および第4電柱194の4本の電柱19が一列に配置されている。電柱19の上端部に、高圧配電線11が張り渡されている。高圧配電線11の下側に、低圧配電線12が張り渡されている。高圧配電線11は、たとえば6600ボルトの三相交流を伝送する3本の電線により構成されている。
【0013】
低圧配電線12は、三相三線式または単相三線式の交流を伝送する3本の電線により構成されている。なお、三相三線式と単相三線式との両方の低圧配電線12が張り渡されていてもよい。低圧配電線12からは需要者に対して三相または単相の交流を供給できる。低圧配電線12から需要者に供給できる電圧は、高圧配電線11と低圧配電線12との接続方法により異なる。図1は、低圧配電線12から需要者に対して100ボルトの交流を供給する場合の例を示す。
【0014】
図示を省略するが、低圧配電線12は単相二線式の交流を伝送する2本の電線により構成されていてもよい。単相二線式の低圧配電線12からは、需要者に対して100ボルトの交流を供給できる。低圧配電線12は、4本の電線を用いて需要者に100ボルトの交流と200ボルトの交流との両方を供給できる三相四線式であってもよい。
【0015】
第1電柱191に第1柱上変圧器201が、第3電柱193に第2柱上変圧器202がそれぞれ取り付けられている。以後の説明においては、第1柱上変圧器201と第2柱上変圧器202とを特に区別する必要がない場合には、柱上変圧器20と記載する場合がある。
【0016】
需要者に100ボルトの交流を供給するために、高圧配電線11を構成する3本の電線のうち2本から、柱上変圧器20に高圧引下線13が接続されている。柱上変圧器20から低圧配電線12を構成する3本の電線のそれぞれに、低圧引上線14が接続されている。
【0017】
第1柱上変圧器201は、高圧配電線11の高電圧電力を降圧した電力を、図1に区間Aで示す第2電柱192よりも右側の区間の低圧配電線12に供給する。第2柱上変圧器202は、高圧配電線11の高圧配電線11の高電圧電力を降圧した電力を、図1に区間Bで示す第2電柱192から第4電柱194までの区間の低圧配電線12に供給する。第2電柱192の両側の低圧配電線12同士は、接続されていない。
【0018】
低圧配電線12は、図示を省略する引き込み線を介して住宅等の分電盤に接続される。すなわち、一般の需要者に対する電力供給は、低圧配電線12および引き込み線を介して行われる。
【0019】
電力を安定して供給するために、鳥の巣の除去、凧等の飛来物の除去、および、配電設備を構成する種々の機器の点検または交換等の様々なメンテナンス作業が行われる。電力需要の変化に対応するために、配電設備の新設または変更等の工事も行われる。以下の説明ではこれらの工事を総称して、配電設備工事と記載する。
【0020】
第2柱上変圧器202を交換する場合について説明する。工事作業員は第2柱上変圧器202を高圧配電線11および低圧配電線12から切り離す。したがって第2柱上変圧器202から区間Bの低圧配電線12に電力を供給できない状態になる。
【0021】
区間Bの低圧配電線12から電力の供給を受ける需要者に停電を引き起こさない無停電工法を実現するには、たとえば特許文献1の移動用変圧器装置を使用できる。しかしながら、高圧配電線11と移動用変圧器装置とを接続する作業、および、移動用変圧器装置を高圧配電線11から取り外す作業は、高電圧を扱うため難易度が高く、工事作業員の負担が大きい。
【0022】
第1柱上変圧器201の容量に余裕がある場合、工事作業員は第2柱上変圧器202を切り離す前に、第2電柱192の両側の低圧配電線12同士をジャンパ線16(図11参照)により接続する。区間Aと区間Bの両方の区間の低圧配電線12に、第1柱上変圧器201から電力が供給することにより、停電を回避して無停電工法を実現できる。
【0023】
しかしながら、電力需要は時間帯、曜日、および天候等の様々な要因により変動する。仮に、配電設備工事中に第1柱上変圧器201の容量を超える電力需要が発生した場合、停電等のトラブルが発生する可能性がある。
【0024】
このような予定外の停電等のトラブルを防止するために、工事事業者は配電設備工事の予定日と類似する条件の日時に電力需要量を実測し、第1柱上変圧器201の容量に十分な余裕があるか否かを調査する。このような実測作業には、手間と時間とを要する。手間と時間をかけて実測した結果、第1柱上変圧器201の容量に十分な余裕がない場合には、たとえば特許文献1の移動用変圧器装置を使用する必要がある。
【0025】
図2は、工事手順を説明する説明図である。本実施の形態においては、配電設備工事を担当する工事作業員は、図2に示すように高所作業車30を低圧配電線12の下に停車させる。高所作業車30は、工事作業員が乗って高所作業を行なう作業床31と、作業床31を持ち上げるブーム39とを備える。本実施の形態で使用する高所作業車30は、作業床31およびブーム39が絶縁されている、いわゆる電気工事仕様である。
【0026】
本実施の形態の高所作業車30は、電池35(図3参照)に蓄えた電力を使用して動作する電気自動車である。高所作業車30は、ガソリン車、またはディーゼル車であり、図示を省略するエンジンを搭載していてもよい。高所作業車30は、いわゆるハイブリッド車であり、図示を省略するエンジンにより発電した電力を電池35に蓄えてもよい。高所作業車30は、トラックの荷台等に積載されて、作業現場まで運ばれる車両であってもよい。高所作業車30は垂直昇降型であってもよい。
【0027】
工事作業員は低圧配電線12を構成する3本の電線と高所作業車30とを接続ケーブル34でそれぞれ接続する。接続ケーブル34は、低圧配電線12と電池35とを接続する配線材の例示である。電池35から区間Bの低圧配電線12を介して需要者に電力が供給される。
【0028】
交換用柱上変圧器209を運搬する運搬車63の運転手は、第3電柱193の近くに運搬車63を停める。工事作業員は、第2柱上変圧器202と高圧引下線13および低圧引上線14との接続を取り外す。工事作業員は、第3電柱193から第2柱上変圧器202を取り外して、運搬車63の荷台に降ろす。
【0029】
工事作業員は、交換用柱上変圧器209を第3電柱193に取り付けて、高圧引下線13および低圧引上線14を接続する。工事作業員は、低圧配電線12から接続ケーブル34を取り外す。以上により、配電設備工事が完了する。
【0030】
電池35は、配電工事の所要時間中は第2柱上変圧器202の定格容量と同等の電力を継続して供給できる容量を有することが望ましい。配電設備工事の準備段階における、電力需要量の実測を省略できるため、配電設備工事の手間とコストとを削減できる。特許文献1の移動用変圧器装置を使用する場合に比べて、高圧配電線11への接続作業の回数が少ないため、工事担当者の負担を低減できる。
【0031】
図3および図4は、工事手順を説明する説明図である。まず、図3を使用して高所作業車30の構成の概要を説明する。高所作業車30は、前述の作業床31、ブーム39および電池35に加えて、架装部311、インバータ36、電力量計37および接続器33を備える。
【0032】
接続器33は、後述する接続ケーブル34(図4参照)が接続される端子盤である。接続器33は、導通状態のON/OFFを切り替える内部スイッチ331を有する。内部スイッチ331がON状態である場合には、接続器33は導通状態であり、内部スイッチ331がOFF状態である場合には接続器33は絶縁状態である。
【0033】
架装部311、電池35、インバータ36、電力量計37および接続器33を結ぶ太線は、電力伝送用のケーブルを模式的に示す。電力量計37の配線の詳細については図示を省略する。架装部311は、電池35から供給されたエネルギーを使用して、ブーム39を伸縮および回動させる機構である。架装部311は、図示を省略するエンジンから供給されたエネルギーを使用して動作してもよい。
【0034】
電池35は、たとえばリチウムイオン電池、鉛蓄電池または全固体電池等の二次電池である。電池35は、たとえば水素燃料電池またはアルコール燃料電池等の燃料電池であってもよい。
【0035】
インバータ36は、電池35に蓄えられた電力を交流に変換する。変換された交流は、接続器33に伝達される。電力量計37は、接続器33とインバータ36との間に接続されており、電池35から供給される電力を測定する。なお、インバータ36から出力される交流の位相を、低圧配電線12の位相と同期させる同期回路は図示を省略する。
【0036】
図5は、図4におけるV部拡大図である。図2図4および図5を使用して説明を続ける。図4においては、低圧配電線12および接続ケーブル34を模式的に1本の太線で記載しているが、図2および図5に示すように低圧配電線12および接続ケーブル34はそれぞれ3本である。接続器33に3本の接続ケーブル34が接続されている。
【0037】
工事作業員は、内部スイッチ331がOFF状態であることを確認する。工事作業員は、作業床31に乗って低圧配電線12に近づく。工事作業員は、低圧配電線12を構成するそれぞれの電線と接続ケーブル34とをコネクター32を用いて接続する。接続作業には、直接活線工法が用いられる。
【0038】
図5においては、コネクター32が被覆貫通型である場合を示す。コネクター32は、被覆除去型であってもよい。被覆除去型のコネクター32を使用する場合には、工事作業員は直接活線工法を用いて低圧配電線12を構成する電線の被覆の一部を除去した後に、コネクター32を用いて接続ケーブル34を接続する。直接活線工法、および、直接活線工法用のコネクター32は、従来から使用されているため、詳細については説明を省略する。
【0039】
工事作業員は、内部スイッチ331をON状態にする。図示を省略する同期回路の作用により、インバータ36から出力される交流の位相が、第2柱上変圧器202から低圧引上線14を介して低圧配電線12に出力されている交流の位相と一致する。第2柱上変圧器202と電池35の双方から、区間Bの低圧配電線12に交流が供給される状態になる。電力量計37は、インバータ36から接続器33を介して低圧配電線12に供給される電力を測定する。
【0040】
なお、高所作業車30には、工事作業員が内部スイッチ331のON/OFF操作を遠隔操作で行なえるリモートスイッチが設けられていてもよい。リモートスイッチは、作業床31に配置されていてもよい。高所作業車30には、内部スイッチ331に加えて、または内部スイッチ331の代わりに、インバータ36の動作のON/OFF操作を行なえるスイッチが設けられていてもよい。
【0041】
図6は、工事手順を説明する説明図である。工事作業員は、柱上変圧器20と高圧引下線13および低圧引上線14との接続を外す。電池35からインバータ36および接続器33を介して低圧配電線12に電力が供給されるため、低圧配電線12から需要者に対する電力供給は停電することなく継続できる。
【0042】
工事作業員は、第2柱上変圧器202を電柱19から取り外して、運搬車63に降ろす。工事作業員は、交換用柱上変圧器209を電柱19に取り付けて、高圧引下線13および低圧引上線14を接続する。高圧配電線11から低圧配電線12への電力供給が再開する。
【0043】
なお、工事作業員は、第2柱上変圧器202を交換用柱上変圧器209に交換する代わりに、第2柱上変圧器202の点検または修理等を行なってもよい。
【0044】
工事作業員は直接活線工法を用いて低圧配電線12からコネクター32および接続ケーブル34を取り外す。その後工事作業員は、直接活線工法を用いて、被覆を貫通した部分、または被覆を除去した部分に絶縁テープを巻き付けて低圧配電線12を修復する。その後、工事作業員は、作業床31を降ろし、次の作業場所に移動する。
【0045】
電気料金の精算について説明する。たとえば制御部81(図7参照)が、配電設備工事ごとに使用した電力量に関するデータを工事事業者の経理部門等に送信する。工事事業者の経理担当部門等は、それぞれの工事代金と共に、電気料金を発注者に請求する。電気料金の精算は、工事代金の精算と同時に行われても、別途行なわれてもよい。
【0046】
図7は、電気料金算出システム10の構成を説明する説明図である。電気料金算出システム10は、サーバ40と、ネットワークを介してサーバ40に接続された情報処理装置80とを備える。それぞれの情報処理装置80には、電力量計37が接続されている。情報処理装置80および電力量計37は、高所作業車30に搭載されている。
【0047】
サーバ40は、制御部41、主記憶装置42、補助記憶装置43、通信部44、入力部45、出力部46およびバスを備える。制御部41は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部41には、一または複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部41は、バスを介してサーバ40を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0048】
主記憶装置42は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置42には、制御部41が行なう処理の途中で必要な情報および制御部41で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0049】
補助記憶装置43は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置43には、料金DB52、制御部41に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。料金DB52は、サーバ40に接続された外部の大容量記憶装置に記憶されていてもよい。通信部44は、サーバ40とネットワークとの間の通信を行なうインターフェイスである。
【0050】
入力部45は、たとえばキーボード、マウスまたはマイク等の入力デバイスである。出力部46は、たとえば液晶表示パネルまたは有機EL(electro-luminescence)パネルである。入力部45と出力部46とが積層されてタッチパネルを構成していてもよい。
【0051】
本実施の形態のサーバ40は、汎用のパーソナルコンピュータ、タブレットまたはスマートフォン等の情報処理機器である。サーバ40は、大型計算機、大型計算機上で動作する仮想マシン、クラウドコンピューティングシステム、または、分散処理を行なう複数のパソコン等であってもよい。
【0052】
情報処理装置80は、制御部81、主記憶装置82、補助記憶装置83、通信部84およびバスを備える。制御部81は、本実施の形態のプログラムを実行する演算制御装置である。制御部81には、一または複数のCPU、GPU、またはマルチコアCPU等が使用される。制御部81は、バスを介して情報処理装置80を構成するハードウェア各部と接続されている。
【0053】
主記憶装置82は、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等の記憶装置である。主記憶装置82には、制御部81が行なう処理の途中で必要な情報および制御部81で実行中のプログラムが一時的に保存される。
【0054】
補助記憶装置83は、SRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクまたは磁気テープ等の記憶装置である。補助記憶装置83には、測定値DB51、制御部81に実行させるプログラム、およびプログラムの実行に必要な各種データが保存される。測定値DB51は、情報処理装置80に接続された外部の大容量記憶装置に記憶されていてもよい。通信部84は、情報処理装置80とネットワークとの間の通信を行なうインターフェイスである。
【0055】
情報処理装置80は、たとえば汎用のシングルボードコンピュータ、パーソナルコンピュータ、タブレットまたはスマートフォン等の情報処理機器である。情報処理装置80と電力量計37とは、一つの筐体に組み込まれて、一体化されていてもよい。
【0056】
電力量計37は、たとえば電気事業者から貸与または提供される。電力量計37は、たとえば30分等の所定の時間ごとに電力量を電気事業者のサーバコンピュータにアップロードするスマートメータであってもよい。工事事業者は、工事対象である配電設備を管理している電気事業者に対応する電力量計37を情報処理装置80に接続して、配電設備工事を行なう。電力量計37は、汎用の計測器であってもよい。電力量計37は、汎用の電流計と電圧計とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0057】
配電設備工事ごとに、低圧配電線12から供給された電力量が測定値DB51に記録される。測定値DB51の構成については後述する。
【0058】
配電設備工事が終了し、高所作業車30を工事事業者の事業場に戻した後に、工事作業員が有線または無線通信により情報処理装置80をネットワークに接続する。測定値DB51に記録された電力量が、料金DB52に記録される。
【0059】
情報処理装置80は、たとえばUSB(Universal Serial Bus)メモリまたはSDカード等の可搬型記憶媒体に電力量を記録してもよい。工事作業員は、事業場に戻った後に電力量計37から可搬型記憶媒体を抜き、ネットワークに接続された汎用のパソコン等に挿入する。情報処理装置80は、公衆通信回線等を介して常時ネットワークに接続されている、いわゆるIoT(Internet of Things)デバイスであってもよい。
【0060】
図8は、測定値DB51のレコードレイアウトを説明する説明図である。測定値DB51は、電力量計IDフィールド、記録日時フィールドおよび電力量フィールドを有する。電力量計IDフィールドには、電力量計37に固有に付与された電力量計IDが記録されている。なお、以下の説明では電力量計37は、それぞれ定められた高所作業車30に搭載される場合を例にして説明する。電力量計37は、日によって異なる高所作業車30に搭載されてもよい。
【0061】
記録日時フィールドには、電力量の測定結果を記録した日時が記録されている。電力量フィールドには、電力量の測定結果が記録されている。測定値DB51は、1回の測定ごとに一つのレコードを有する。
【0062】
図9は、料金DB52のレコードレイアウトを説明する説明図である。料金DB52は、電力量計IDフィールド、高所作業車IDフィールド、日付フィールド、時間フィールド、工事IDフィールドおよび実績フィールドを有する。時間フィールドは、開始フィールドおよび終了フィールドを有する。実績フィールドは、電力量フィールドおよび料金フィールドを有する。
【0063】
電力量計IDフィールドには、電力量計37に固有に付与された電力量計IDが記録されている。高所作業車IDフィールドには、高所作業車30に固有に付与された高所作業車IDが記録されている。高所作業車IDは、個々の高所作業車30を識別する情報の例示である。
【0064】
日付フィールド、時間フィールド、および工事IDフィールドには、電力量計37が搭載された高所作業車30を使用する配電設備工事の予定が記録されている。すなわち日付フィールドには配電設備工事の日付が記録されている。開始フィールドには配電設備工事の開始予定時刻が記録されている。終了フィールドには、配電設備工事の終了予定時刻が記録されている。工事IDフィールドには、配電設備工事に固有に付与された工事IDが記録されている。
【0065】
日付フィールド、時間フィールド、および工事IDフィールドのデータは、たとえば高所作業車30のスケジュールに連動して、自動的に入力される。高所作業車30のスケジュールを調整する担当者が、これらのデータを料金DB52に手入力してもよい。
【0066】
電力量フィールドには、電力量計37を用いて測定された電力量が記録される。料金フィールドには、電力量に基づいて算出された電気料金が記録される。工事ID「C03」については、未だ配電設備工事が完了していないため、電力量フィールドおよび料金フィールドは空欄である。
【0067】
図10は、プログラムの処理の流れを説明するフローチャートである。電力量計37は、測定した電力量を情報処理装置80に随時送信する(ステップS801)。制御部81は、配電設備工事を開始するか否かを判定する(ステップS701)。たとえば制御部81は、内部スイッチ331がOFF状態からON状態に変化した場合に、配電設備工事を開始すると判定する。制御部81は、高所作業車30が停止して、アウトリガを固定した場合に、配電設備工事を開始すると判定してもよい。
【0068】
配電設備工事を開始したと判定した場合(ステップS701でYES)、制御部81は、電力量計37から送信された電力量を受信する(ステップS702)。制御部81は、配電設備工事が終了したか否かを判定する(ステップS703)。たとえば制御部81は、内部スイッチ331がOFF状態に変化した場合に、配電設備工事が終了したと判定する。制御部81は、高所作業車30がアウトリガを収納した場合に、配電設備工事が終了したと判定してもよい。
【0069】
配電設備工事が終了してないと判定した場合(ステップS703でNO)、制御部81はステップS702に戻る。配電設備工事が終了したと判定した場合(ステップS703でYES)、制御部81はステップS701からステップS703までのループで最後に受信した電力量と、ステップS701からステップS703までのループで最初に受信した電力量との差分を算出する(ステップS704)。算出した差分が、一回の配電設備工事でインバータ36から低圧配電線12に供給された電力量である。
【0070】
制御部81は、測定値DB51に新規レコードを作成する。制御部81は、記録日時フィールドに内蔵する時計から取得した現在日時を、電力量フィールドにステップS704で算出した差分をそれぞれ記録する(ステップS705)。制御部81は、ステップS701に戻る。
【0071】
配電設備工事を開始していないと判定した場合(ステップS701でNO)、制御部81はサーバ40との通信を開始できるか否かを判定する(ステップS711)。たとえば、工事作業員が情報処理装置80に設けられた通信開始スイッチを操作した場合、または、Bluetooth(登録商標)または無線LAN(Local Area Network)等の通信機能がサーバ40を検出した場合に、電力量計37は通信を開始できると判定する。
【0072】
通信を開始できると判定した場合(ステップS711でYES)、制御部81と制御部41とは、所定のプロトコルに基づいて互いに接続を確立する(ステップS712、ステップS901)。制御部81は、測定値DB51に記録されているレコードをサーバ40に送信する(ステップS713)。制御部81は、送信済のレコードを測定値DB51から削除する。
【0073】
制御部81は、処理を終了するか否かを判定する(ステップS714)。たとえばユーザから終了指示を受け付けた場合に、制御部81は処理を終了すると判定する。処理を終了しないと判定した場合(ステップS714でNO)、制御部81はステップS701に戻る。処理を終了すると判定した場合(ステップS714でYES)、制御部81は処理を終了する。
【0074】
制御部41は、情報処理装置80から送信されたレコードを受信する(ステップS902)。制御部41は、電力量計IDをキーにして、料金DB52からレコードを抽出する。制御部41は、ステップS902で受信した記録日時フィールドに記録された日時に近い日時が、日付フィールドおよび終了フィールドに記録されているレコードを、さらに抽出する。制御部41は、抽出したレコードの電力量フィールドにステップS902で受信した電力量を記録する(ステップS903)。
【0075】
制御部41は、電力量フィールドに記録された電力量に基づいて電気料金を算出し、料金フィールドに記録する(ステップS904)。電気料金は、たとえば電力量と電力の単価との積により算出される。
【0076】
電力の単価は、たとえば工事事業者と電気事業者との契約に基づいて定められる。時間帯、天候、または地域等により、電力の単価が変動するように定められていてもよい。電力市場における配電工事当日の取引価格に基づいて、電力の単価が定められてもよい。
【0077】
ステップS902で複数のレコードが記録された測定値DB51を受信した場合、制御部41は受信したレコードの数と同じ回数ステップS903およびステップS904を繰り返す。以上により、高所作業車30および工事IDと、インバータ36から低圧配電線12に供給された電力の電力量とが関連づけられて、料金DB52に記録される。
【0078】
なお、ステップS904の電気料金の算出は、電気事業者のサーバ等で行われてもよい。そのようにする場合には、制御部41はステップS904で受信した電力量を電気事業者のサーバに送信する。
【0079】
制御部41は、料金DB52に記録されたデータを図示を省略する経理システムに送信する。工事事業者は、工事ごとの電気料金を含む工事明細を添えて、発注者に料金を請求する。
【0080】
なお情報処理装置80は、工事ごとの電力量を測定し、測定値DB51に記録する機能のみを有してもよい。工事作業員は、測定値DB51に記録された電力量を手作業で料金DB52、または、入力担当者宛の連絡票等に転記する。
【0081】
本実施の形態によると、無停電工法による柱上変圧器20の交換、修理および点検等のメンテナンス作業の効率を向上できる。移動用変圧器等を使用する場合に比べて、高圧引下線13の接続作業の回数が少ないため、工事作業者の負担を低減できる。事前に電力需要量を実測する手間が不要であるため、工事の準備に要する期間が短く、必要時に速やかに配電工事を実施できる。
【0082】
本実施の形態の高所作業車30は、柱上変圧器20等の配電設備の故障により低圧配電線12への電力供給が停止した場合であっても使用できる。電池35から低圧配電線12に電力を供給することにより、需要者の停電を速やかに解消した上で、故障した配電設備の修理または交換等の作業を行なえる。
【0083】
本実施の形態の高所作業車30は、災害等により高圧配電線11への電力供給が停止した場合であっても使用できる。高圧配電線11への電力供給が復旧するまでの期間、電池35から低圧配電線12に電力を供給することにより、需要者の停電を速やかに解消できる。
【0084】
[変形例]
本変形例は、高所作業車30からの給電に加えて、隣接する区間Aからも給電する工法に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0085】
図11は、変形例の工事手順を説明する説明図である。工事作業員は、第2電柱192の両側の低圧配電線12同士をジャンパ線16で接続する。区間Bの低圧配電線12に、第1柱上変圧器201から電力が供給される。
【0086】
たとえば、配電工事が予定よりも長引いてしまい、電池35の容量に不安がある場合、工事作業員はジャンパ線16を接続する。高所作業車30と第1柱上変圧器201の双方から区間Bに電力が供給されるため、電池35の消耗が少なくなり、給電可能時間を延長できる。電池35からの給電があるため、第1柱上変圧器201の負荷が少なくなる。
【0087】
配電設備工事の最初の段階からジャンパ線16が接続されていても良い。たとえば、区間Aと区間Bとの両方に電力を供給するには、第1柱上変圧器201の容量に懸念がある場合、ジャンパ線16に加えて電池35を接続することにより、停電の発生を防止できる。
【0088】
[実施の形態2]
本実施の形態は、電源車61を使用する形態に関する。実施の形態1と共通する部分については、説明を省略する。
【0089】
図12は、実施の形態2の工事手順を説明する説明図である。図12は、実施の形態1における図4と同様の段階に相当し、接続器33と低圧配電線12との間に接続ケーブル34が接続されている。
【0090】
電池35に、電源車61および運搬用電気自動車62が接続されている。電源車61は、電池35を充電可能な車両である。電源車61は、たとえば電池35よりも大容量の電池を搭載している。電源車61は、発電機を搭載した車両であってもよい。
【0091】
運搬用電気自動車62は、たとえば交換用の柱上変圧器20、または交換後の古い柱上変圧器20等を運搬する電気自動車である。高所作業車30および電源車61は、長距離の自走を行なわずに、運搬用電気自動車62に搭載されて輸送されてもよい。運搬用電気自動車62は使用されなくてもよい。
【0092】
電源車61から電池35および運搬用電気自動車62に対して充電が行われる。したがって、配電作業が長引いた場合であっても電池35から低圧配電線12に対する給電を安定的に継続できる。
【0093】
たとえば、実施の形態1で説明した配電工事中に、所要時間が長引くことが判明した場合、または、低圧配電線12からの電力供給量が当初の予想よりも多いことが判明した場合等、電池35の容量が不足するおそれがある場合に、工事作業者が電源車61の出動を要請してもよい。
【0094】
なお、電源車61をインバータ36に直接接続し、電源車61から電源を供給している間に使用済の電池35を新たに搬送した電池35に交換してもよい。
【0095】
プログラムは、プログラム製品の例示である。コンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または一つのサイトにおいて配置されるか、もしくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0096】
各実施例で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組合せ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものでは無いと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味では無く、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0097】
特許請求の範囲に記載した独立請求項および従属請求項は、引用形式に関わらずあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【符号の説明】
【0098】
10 電気料金算出システム
11 高圧配電線
12 低圧配電線(配電線)
13 高圧引下線
14 低圧引上線
16 ジャンパ線
19 電柱
191 第1電柱
192 第2電柱
193 第3電柱
194 第4電柱
20 柱上変圧器
201 第1柱上変圧器
202 第2柱上変圧器(柱上変圧器)
209 交換用柱上変圧器
30 高所作業車
31 作業床
311 架装部
32 コネクター
33 接続器
331 内部スイッチ
34 接続ケーブル
35 電池
36 インバータ
37 電力量計
39 ブーム
40 サーバ
41 制御部
42 主記憶装置
43 補助記憶装置
44 通信部
45 入力部
46 出力部
51 測定値DB
52 料金DB
61 電源車
62 運搬用電気自動車
63 運搬車
80 情報処理装置
81 制御部
82 主記憶装置
83 補助記憶装置
84 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12