(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121589
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】光学ガラスおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/068 20060101AFI20240830BHJP
C03C 3/062 20060101ALI20240830BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C03C3/068
C03C3/062
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028767
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522503632
【氏名又は名称】豪雅光電科技(威海)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中塚 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勇人
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】 屈折率が高く、かつ比重が低い光学ガラスおよび光学素子を提供すること。
【解決手段】 SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比[SiO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]が0.39以上であり、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5の含有量の質量比[Nb2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.17以上であり、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するBaOの含有量の質量比[BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.72以下であり、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量の質量比[CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.66以下であり、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量[TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3]が23質量%以上であり、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.35以上であり、SiO2の含有量が25質量%以下であり、TiO2の含有量が30質量%以下であり、La2O3の含有量が40質量%以下であり、Pbを実質的に含まない、光学ガラス。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比[SiO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]が0.39以上であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5の含有量の質量比[Nb2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.17以上であり、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するBaOの含有量の質量比[BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.72以下であり、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量の質量比[CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.66以下であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量[TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3]が23質量%以上であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.35以上であり、
SiO2の含有量が25質量%以下であり、
TiO2の含有量が30質量%以下であり、
La2O3の含有量が40質量%以下であり、
Pbを実質的に含まない、
光学ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
高い屈折率とともに高分散特性(低アッベ数)を有する光学ガラスは、各種レンズなどの光学素子材料として需要が高い。例えば、高屈折率低分散性のレンズを、分散性が異なるガラスからなるレンズと組合せることにより、コンパクトで高機能な色収差補正用の光学系を構成することができる。そのため、かかる光学ガラスは、撮像光学系やプロジェクタ等の投射光学系を構成する光学素子用材料として有用である。
【0003】
光学ガラスに望まれる物性として、低比重であることが挙げられる。低比重の光学ガラスによれば、軽量な光学素子を提供できるためである。例えば、オートフォーカス方式の光学系において、光学素子が軽量であるほど、オートフォーカス時の消費電力を抑えることが可能となる。
【0004】
特許文献1および特許文献2には、高屈折率である光学ガラスが開示されている。しかしながら、特許文献1および特許文献2の光学ガラスは、BaOの含有量が多く、比重を十分に低減できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許第109650714号
【特許文献2】中国特許第109650717号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、屈折率が高く、かつ比重が低い光学ガラスおよび光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1) SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比[SiO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]が0.39以上であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5の含有量の質量比[Nb2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.17以上であり、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するBaOの含有量の質量比[BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.72以下であり、
MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量の質量比[CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]が0.66以下であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量[TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3]が23質量%以上であり、
TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.35以上であり、
SiO2の含有量が25質量%以下であり、
TiO2の含有量が30質量%以下であり、
La2O3の含有量が40質量%以下であり、
Pbを実質的に含まない、
光学ガラス。
【0009】
(2) 上記(1)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈折率が高く、かつ比重が低い光学ガラスおよび光学素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様である導光板を用いたヘッドマウントディスプレイの構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明および本明細書において、光学ガラスのガラス組成は、特記しない限り、酸化物基準で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されて光学ガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいい、各ガラス成分の表記は慣習にならい、SiO2、TiO2などと記載する。ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り質量基準であり、「%」は「質量%」を意味する。また、質量比とは、質量%における、ガラス成分同士の含有量(複数種のガラス成分の合計含有量も含む)の割合(比)をいう。
【0013】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量することができる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0014】
本明細書において、ガラスの熱的安定性および再加熱時安定性とは、ともにガラス中における結晶析出のしにくさを指す。特に、熱的安定性は熔融状態のガラスが固化する際の結晶析出のしにくさを指し、再加熱時安定性はリヒートプレス時のように、固化したガラスを再加熱したときの結晶析出のしにくさを指すものとする。
【0015】
屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0016】
アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。ここで、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
νd=(nd-1)/(nF-nC)
【0017】
部分分散比Pg,Fは、g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、nCを用いて次のように表される。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC)
横軸をアッベ数νd、縦軸を部分分散比Pg,Fとする平面において、ノーマルラインは次の式により表される。
Pg,F(0)=0.6483-(0.0018×νd)
さらに、ノーマルラインからの部分分散比Pg,Fの偏差ΔPg,Fは次のように表される。
ΔPg,F=Pg,F-Pg,F(0)
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対するSiO2の含有量の質量比[SiO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]は0.39以上である。また、該質量比の下限は、好ましくは0.40であり、さらには0.45、0.48、0.51、0.53、0.55、0.60、0.61、0.62、0.63、0.64の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98、0.97、0.96、0.90、0.85、0.80の順により好ましい。
【0020】
本実施形態に係る光学ガラスは、ネットワーク形成成分として主にSiO2を含有する。質量比[SiO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]を上記範囲とすることで、熱的安定性に優れる光学ガラスが得られる。一方、該質量比が大きすぎると、ガラスの熔融性が低下するおそれがあり、また屈折率ndが低下するおそれがある。
【0021】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対するNb2O5の含有量の質量比[Nb2O5/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]は0.17以上である。該質量比の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.25,0.30,0.35、0.40、0.45、0.50の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.95、0.90、0.85、0.80、0.75、0.70,0.65の順により好ましい。該質量比を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndを有し、また部分分散比Pg,Fが低減された光学ガラスが得られる。
【0022】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するBaOの含有量の質量比[BaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]は0.72以下である。また、該質量比の上限は、好ましくは0.71であり、さらには0.70、0.69、0.68、0.67、0.66、0.65、0.64、0.63、0.60、0.55、0.50の順により好ましい。また、該質量比は、好ましくは0以上であり、より好ましくは0を超え、さらにその下限は、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20の順により好ましい。該質量比を上記範囲とすることで、比重が低減された光学ガラスが得られる。
【0023】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量の質量比[CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO)]は0.66以下である。また、該質量比の上限は、好ましくは0.65であり、さらには0.64、0.63、0.62、0.61、0.60、0.59、0.58、0.55、0.50の順により好ましい。また、該質量比は、好ましくは0以上であり、より好ましくは0を超え、さらにその下限は、0.01、0.02、0.04、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.24の順により好ましい。該質量比を上記範囲とすることで、熱的安定性に優れ、液相温度LTの低減された光学ガラスが得られる。
【0024】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量[TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3]は23%以上である。また、該合計含有量の下限は、好ましくは25%であり、さらには26%、28%、30%、31%、32%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは60%であり、さらには58%、56%、54%、52%、50%、48%、46%、44%、42%、40%の順により好ましい。該合計含有量を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndおよびアッベ数νdを有する光学ガラスが得られる。一方、該合計含有量が少なすぎると、屈折率ndを高められないおそれがある。また、該合計含有量が多すぎると、比重が増大する、または熱的安定性が低下するおそれがある。
【0025】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]が0.35以上である。また、該質量比の下限は、好ましくは0.36であり、さらには0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.50、0.55、0.60の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは2.00であり、さらには1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55の順により好ましい。
【0026】
La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3といった希土類は、屈折率ndを高め、部分分散比Pg,Fを低下させる成分である。また、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3は、ガラスの高屈折率化に寄与する成分である。質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndを有し、部分分散比Pg,Fの低減された光学ガラスが得られる。
【0027】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2の含有量は25%以下である。SiO2の含有量の上限は、好ましくは24%であり、さらには23%、22%、21%、20%、19%、18%の順により好ましい。また、SiO2の含有量の下限は、好ましくは4%であり、さらには5%、6%、7%、8%の順により好ましい。
【0028】
SiO2は、ガラスネットワーク形成成分である。SiO2の含有量を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndを有し、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、および耐候性を改善された光学ガラスが得られる。一方、SiO2の含有量が多すぎると、熔融性が低下し、部分分散比Pg,Fが上昇するおそれがある。
【0029】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量は30%以下である。TiO2の含有量の上限は、好ましくは28%であり、さらには27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。また、TiO2の含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%の順により好ましい。
【0030】
TiO2はガラスの高屈折率化および高分散化に寄与する成分である。Nb2O5やZrO2も同様にガラスの高屈折率化に寄与する成分であるが、Nb2O5やZrO2と比較し、TiO2はガラスの比重を増大させにくい。TiO2の含有量を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndを有し、比重の低減された光学ガラスが得られる。一方、TiO2の含有量が多すぎると、所望の光学恒数が維持できなくなり異常部分分散性が悪化し、ガラスの熱的安定性が低下し、また、ガラスの着色が強まるおそれがある。また、TiO2の含有量が少なすぎると、所望の屈折率nd、アッベ数、および部分分散比Pg,Fが得られないおそれがある。
【0031】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3の含有量は40%以下である。La2O3の含有量の上限は、好ましくは38%であり、さらには36%、34%、32%の順により好ましい。また、La2O3の含有量の下限は、好ましくは4%であり、さらには6%、8%、10%、12%の順により好ましい。
【0032】
La2O3は、ガラスの高屈折率化に寄与する成分である。また、La2O3は、液相温度LTを上昇させ、比重を増大させる成分でもある。La2O3の含有量を上記範囲とすることで、所望の屈折率ndを有し、液相温度LTの上昇および比重の増大が抑制された光学ガラスが得られる。一方、La2O3の含有量が多すぎると、比重が増大し、またガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0033】
Pbは、毒性を有し、環境負荷が懸念される成分である。したがって、本実施形態に係る光学ガラスは、Pbを実質的に含まない。すなわち、Pbの含有量は、酸化物換算で0%であることが好ましい。
【0034】
本実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量および比率について、以下に非制限的な例を示す。
【0035】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量[SiO2+B2O3+P2O5]の下限は、好ましくは10%であり、さらには11%、12%、13%、14%、15%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには33%、31%、29%、27%、26%、25%、24%、23%の順により好ましい。ガラスの熱的安定性を向上させ、比重をより一層低減させ、さらに所望の光学恒数を得る観点から、該合計含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0036】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2O、およびK2Oの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O]の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.05%、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには9.0%、8.0%、7.0%、6.0%、5.0%、4.5%、4.0%、3.5%、3.0%の順により好ましい。Li2O、Na2O、およびK2Oはガラスの熔融性を改善する働きを有し、部分分散比Pg,Fを低減させ、液相温度を下げ、またガラスの熱的安定性を改善する働きを有する成分である。一方で、化学的耐久性および耐候性の観点から、該合計含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0037】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrO、およびBaOの合計含有量[MgO+CaO+SrO+BaO]の下限は、好ましくは1%であり、さらには2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、23%、22%、21%の順により好ましい。MgO、CaO、SrOおよびBaOは、いずれもガラスの熱的安定性および耐失透性を改善させる働きを有するガラス成分である。所望の光学恒数を維持しながら比重をより一層の低減する観点、ならびにガラスの熱的安定性および耐失透性の向上の観点から、該合計含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0038】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量[La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3]の下限は、所望の光学恒数を維持しながら屈折率ndを高める観点から、好ましくは0%であり、さらには2%、4%、6%、8%、10%、12%、14%、16%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、比重をより一層の低減する観点から、好ましくは40%であり、さらには38%、36%、34%、32%、30%、29%の順により好ましい。
【0039】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対するZrO2の含有量の質量比[ZrO2/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、好ましくは0であり、さらには0.02、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.90、0.80、0.70、0.60、0.55、0.50、0.45の順により好ましい。ZrO2は屈折率ndを高める働きを有する成分である。屈折率ndを高める観点から、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。一方、該質量比が大きすぎると、液相温度が上昇するおそれがあり、また再加熱安定性が損なわれるおそれがある。
【0040】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量に対するZrO2の含有量の質量比[ZrO2/(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)]の下限は、好ましくは0であり、さらには0.02、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.0であり、さらには0.90、0.80、0.70、0.65、0.60の順により好ましい。La2O3、Gd2O3、Y2O3、Yb2O3、およびZrO2は屈折率ndを高め、部分分散比Pg,Fを低減する働きを有するが、ZrO2の含有量が多くなると、ガラスの熔融性が低下するおそれがあり、また再加熱安定性が損なわれるおそれがある。そのため、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0041】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対する、Li2O、Na2O、K2O、およびZrO2の合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O+ZrO2)/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、好ましくは0であり、さらには0.02、0.04、0.06、0.08、0.10、0.12、0.14、0.16の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは2であり、さらには1.8、1.6、1.4、1.2、1.0、0.90、0.80、0.70、0.60の順により好ましい。Li2O、Na2O、K2O、およびZrO2は、部分分散比Pg,Fを低減させる働きを有する成分であるが、これらの含有量が多くなると、再加熱安定性が損なわれるおそれがある。そのため、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0042】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対する、Li2O、Na2O、およびK2Oの合計含有量の質量比[(Li2O+Na2O+K2O2)/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、熔融性を維持し、部分分散比Pg,Fを低減させる観点から、好ましくは0であり、さらには0.01、0.02の順により好ましい。また、該質量比の上限は、熱的安定性、化学的耐久性、および耐候性の維持の観点から、好ましくは1.5であり、さらには1.2、1.0、0.90、0.80、0.60、0.50、0.40、0.30の順により好ましい。
【0043】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対する、MgO、CaO、SrO、およびBaOの合計含有量の質量比[(MgO+CaO+SrO+BaO)/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、好ましくは0.05であり、さらには0.10、0.20、0.30、0.35、0.40、0.45の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは3.0であり、さらには2.5、2.0、1.8、1.6、1.4、1.2、1.0の順により好ましい。アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrO、およびBaOは、液相温度を下げ、熱的安定性を改善する働きを有する。一方、これらの含有量が多くなると、ガラスの化学的耐久性および/または耐候性が低下する傾向がある。SiO2およびB2O3は、熱的安定性を改善する働きを有するが、これらの含有量が多くなると熔融性や屈折率ndが低下する傾向がある。そのため、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.20、0.30、0.40、0.50、0.60、0.65、0.70の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは4.0であり、さらには3.5、3.0、2.5、2.2、2.0、1.9、1.8、1.7の順により好ましい。希土類酸化物であるLa2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3は、ガラスの高屈折率化に寄与する成分であるが、これらの含有量が多くなると熱的安定性が低下する傾向がある。また、SiO2およびB2O3は熱的安定性を改善する働きを有する成分であるが、これらの含有量が多くなると屈折率ndが低下する傾向がある。そのため、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0045】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2、B2O3およびP2O5の合計含有量に対する、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量の質量比[(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)/(SiO2+B2O3+P2O5)]の下限は、比重の増大を抑えつつ屈折率ndを高める観点から、好ましくは0.65であり、さらには0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25の順により好ましい。また、該質量比の上限は、所望のアッベ数νdを維持する観点、およびガラスの耐失透性を向上させる観点から、好ましくは5.0であり、さらには4.5、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、3.1の順により好ましい。
【0046】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、MgO、CaO、SrO、およびBaOの合計含有量の質量比[(MgO+CaO+SrO+BaO)/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]の下限は、好ましくは0.10であり、さらには0.14、0.16、0.18、0.20、0.22、0.25、0.30の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.3であり、さらには1.2、1.1、1.0、0.90、0.80、0.70、0.65、0.60の順により好ましい。TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3は、ガラスの高屈折率化に寄与する成分であり、ガラスを高分散化する働きを有する成分でもある。一方、MgO、CaO、SrO、およびBaOは、屈折率ndを低下させ、ガラスを低分散化する働きを有する成分である。そのため、所望の光学恒数を有する光学ガラスを得る観点から、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0047】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、SrO、およびBaOの合計含有量に対する、La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3の合計含有量の質量比[(La2O3+Gd2O3+Y2O3+Yb2O3)/(MgO+CaO+SrO+BaO)]の下限は、好ましくは0.1であり、さらには0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは7.0であり、さらには6.0、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5の順により好ましい。MgO、CaO、SrO、およびBaOは、ガラスの熱的安定性の向上に寄与する成分であるが、これらの含有量が多くなると、屈折率ndが低下するおそれがある。La2O3、Gd2O3、Y2O3、およびYb2O3は、ガラスの高屈折率化に寄与する成分であるが、これらの含有量が多くなると熱的安定性が損なわれるおそれがある。熱的安定性を維持しながら、所望の光学恒数を維持する観点から、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2の含有量に対するB2O3の含有量の質量比[B2O3/SiO2]の上限は、ガラスの化学的耐久性を向上させる観点から、好ましくは1.50であり、さらには1.40、1.30、1.20、1.10、1.00、0.90の順により好ましい。また、該質量比は、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、好ましくは0以上であり、より好ましくは0を超え、さらにその下限は、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の順により好ましい。
【0049】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、およびBi2O3の合計含有量に対する、TiO2の含有量の質量比[TiO2/(TiO2+Nb2O5+Ta2O5+WO3+Bi2O3)]の下限は、好ましくは0.22であり、さらには0.24、0.26、0.28、0.30、0.32、0.34の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.83であり、さらには0.80、0.75、0.70、0.65、0.60の順により好ましい。部分分散比Pg,Fを低減させる観点から、該質量比を上記範囲とすることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2O、K2O、MgO、CaO、SrO、およびBaOの合計含有量[Li2O+Na2O+K2O2+MgO+CaO+SrO+BaO]の下限は、好ましくは1%であり、さらには2%、3%、4%、6%、8%、10%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには38%、36%、34%、32%、30%、28%、26%の順により好ましい。アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O、およびK2O、ならびにアルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrO、およびBaOは、ガラスの熔融性および熱的安定性の維持に寄与する成分である。一方、これらの含有量が多くなると、ガラスの熔融性および熱的安定性が低下する傾向がある。そのため、該合計含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0051】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、B2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには18%、16%、14%、12%、10%の順により好ましい。また、B2O3の含有量は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、1%、2%、3%、4%、6%の順により好ましい。B2O3は、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するが、B2O3の含有量が多すぎると、屈折率ndが低下するおそれがあり、さらに熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、熱的安定性を維持する観点からB2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、P2O5の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%の順により好ましい。P2O5の含有量は0%であってもよい。ガラスの熱的安定性を維持する観点から、P2O5の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Al2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%の順により好ましい。また、Al2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。ガラスの耐失透性および熱的安定性を維持する観点から、Al2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0054】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Li2Oの含有量は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、0.10%、0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%の順により好ましい。屈折率ndを高める観点、ならびに化学的耐久性、耐候性、および再加熱時の安定性を維持する観点から、Li2Oの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0055】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。Na2Oの含有量は0%であってもよい。屈折率ndを高める観点、ならびに部分分散比Pg,Fを低下させる観点から、Na2Oの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0056】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、K2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。K2Oの含有量は0%であってもよい。屈折率ndを高める観点、ならびにガラスの熱的安定性を維持する観点から、K2Oの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Cs2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。Cs2Oの含有量は0%であってもよい。比重を低減し、また原料コストを低減する観点から、Cs2Oの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0058】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%の順により好ましい。MgOの含有量は0%であってもよい。所望の光学恒数を維持しながらガラスの熱的安定性および熔融性を改善する観点から、MgOの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、CaOの含有量の上限は、好ましくは19%であり、さらには18%、16%、14%、12%、10%の順により好ましい。また、CaOの含有量は、好ましくは0%以上であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、1.0%、1.5%の順により好ましい。所望の光学恒数を維持しながらガラスの熱的安定性および熔融性を改善する観点から、CaOの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0060】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、SrOの含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには18%、16%、14%、12%、10%の順により好ましい。また、SrOの含有量は、好ましくは0%であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%の順により好ましい。所望の光学恒数を維持しながらガラスの熱的安定性および熔融性を改善する観点から、SrOの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0061】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量の上限は、好ましくは16%であり、さらには15%、14%、13%、12%、11%、10%の順により好ましい。また、BaOの含有量は、好ましくは0%であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、0.5%、0.8%、1.0%、2.0%、3.0%の順により好ましい。所望の光学恒数を維持しながら比重の増大を抑制する観点から、BaOの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0062】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZnOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%の順により好ましい。また、ZnOの含有量は、好ましくは0%であり、より好ましくは0%を超え、さらにその下限は、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%の順により好ましい。屈折率ndを高め、ガラスの熱的安定性を改善する観点から、ZnOの含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0063】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Y2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。Y2O3の含有量は0%であってもよい。ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点、および原料コストを低減する観点から、Y2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0064】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gd2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。Gd2O3の含有量は0%であってもよい。ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点、比重の増大を抑制する観点、および原料コストを低減する観点から、Gd2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Yb2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Yb2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。ガラスの熱的安定性の低下を抑制し、また比重の増大を抑制する観点から、Yb2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0066】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZrO2の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには14%、13%、12%、11%、10%、9%の順により好ましい。また、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%の順により好ましい。ZrO2はガラスの高屈折率化に寄与する成分である。一方、ZrO2の含有量が多すぎると、熱的安定性が低下し、また、比重が増大するおそれがある。そのため、ZrO2の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0067】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nb2O5の含有量の下限は、好ましくは4%であり、さらには6%、8%、10%、12%、13%の順により好ましい。また、Nb2O5の含有量の上限は、好ましくは35%であり、さらには33%、31%、29%、27%、25%、23%の順により好ましい。Nb2O5はガラスの高屈折率化に寄与する成分である。一方、Nb2O5の含有量が多すぎると、熔解性が悪化し、液相温度が上昇するおそれがある。また、熱的安定性が低下し、比重が増大するおそれもある。そのため、Nb2O5の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0068】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ta2O5の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Ta2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta2O5はガラスの高屈折率化に寄与する成分である。また、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有するガラス成分でもある。一方、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下するおそれがあり、比重が増大するおそれがあり、また、原料コストが増大するおそれがある。そのため、Ta2O5の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0069】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、WO3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、WO3の含有量の下限は、好ましくは0%である。WO3はガラスの高屈折率化に寄与する成分である。一方、WO3の含有量が多すぎると、熱的安定性が低下し、比重が増大するおそれがあり、またガラスの着色が増大して、透過率が低下するおそれがある。そのため、WO3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bi2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Bi2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Bi2O3は、適量を含有させることによりガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。また、ガラスの高屈折率化に寄与する成分である。一方、Bi2O3の含有量が多すぎると比重が増大するおそれがあり、また、ガラスの着色が増大するおそれがある。そのため、Bi2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Sc2O3の含有量は、好ましくは2%以下である。また、Sc2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0072】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、HfO2の含有量は、好ましくは2%以下である。また、HfO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0073】
Sc2O3、HfO2は、ガラスの分散性を高める働きを有するが、高価な成分である。そのため、Sc2O3、HfO2の各含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0074】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Lu2O3の含有量は、好ましくは2%以下である。また、Lu2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0075】
Lu2O3は、ガラスの分散性を高める働きを有するが、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増大させるガラス成分でもある。そのため、Lu2O3の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0076】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、GeO2の含有量は、好ましくは2%以下である。また、GeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0077】
GeO2は、ガラスの分散性を高める働きを有するが、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。そのため、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeO2の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
【0078】
本実施形態に係る光学ガラスは、主として上述のガラス成分、すなわち、SiO2、TiO2、La2O3、B2O3、P2O5、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、Y2O3、Gd2O3、Yb2O3、ZrO2、Nb2O5、Ta2O5、WO3、Bi2O3、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、およびGeO2で構成されていることが好ましく、上述のガラス成分の合計含有量は、95%以上が好ましく、98%以上がより好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.5%以上が一層好ましい。
【0079】
本実施形態に係る光学ガラスは、基本的に上記ガラス成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0080】
(その他の成分)
本実施形態に係る光学ガラスは、上記成分の他に、清澄剤としてSb2O3、CeO2等を少量含有することができる。なお、本明細書では、清澄剤の含有量は、外割の表示とし、酸化物基準で表示する全てのガラス成分の合計含有量に含まない。したがって、清澄剤以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときの清澄剤の総量は、好ましくは1質量%以下であり、さらには0.5質量%以下、0.1質量%以下とすることがより好ましい。清澄剤の含有量は0質量%であってもよい。
【0081】
Cd、As、Th等は、環境負荷が懸念される成分である。
そのため、CdO、ThO2、As2O3の各含有量は、0~0.1%であることが好ましく、0~0.05%であることがより好ましく、0~0.01%であることが一層好ましく、CdO、ThO2、As2O3を実質的に含まないことが特に好ましい。
【0082】
さらに、本実施形態に係る光学ガラスは、可視領域の広い範囲にわたり高い透過率が得られる。こうした特長を活かすには、着色性の元素を含まないことが好ましい。着色性の元素としては、Cu、Co、Ni、Fe、Cr、Eu、Nd、Er等を例示することができる。いずれの元素とも、100質量ppm未満であることが好ましく、0~80質量ppmであることがより好ましく、0~50質量ppm以下であることが更に好ましく、実質的に含まれないことが特に好ましい。
【0083】
また、Ga、Te、Tb等は、導入が不要な成分であり、高価な成分でもある。そのため、質量%表示によるGa2O3、TeO2、TbO2の含有量の範囲は、いずれも、それぞれ0~0.1%であることが好ましく、0~0.05%であることがより好ましく、0~0.01%であることが更に好ましく、0~0.005%であることが一層好ましく、0~0.001%であることがより一層好ましく、実質的に含まれないことが特に好ましい。
【0084】
(ガラス特性)
[屈折率nd]
本実施形態では、屈折率ndの高い光学ガラスが提供できる。本実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndの下限は、好ましくは1.900であり、1.910、1.915、1.920、1.925、1.930、1.935、または1.940であってもよい。また、屈折率ndの上限は、好ましくは2.050であり、2.000、1.990、1.985、1.980、1.975、1.970、1.965、または1.960であってもよい。
【0085】
[アッベ数νd]
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、アッベ数νdの下限は、好ましくは22.0であり、22.5、23.0、23.5、24.0、24.2、24.4、24.6、24.8、または25.0であってもよい。また、アッベ数νdの上限は、好ましくは30.0であり、29.5、29.0、28.5、28.0、27.8、27.6、27.4、27.2、または27.0であってもよい。異なる光学恒数を有するレンズと組合せて色収差を補正する観点から、アッベ数νdを上記範囲とすることが好ましい。
【0086】
[部分分散比Pg,F]
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、部分分散比Pg,Fの上限は、好ましくは0.6250であり、さらには0.6240、0.6230、0.6220、0.6210、0.6200の順により好ましい。部分分散比Pg,Fを上記範囲とすることで、高次の色収差補正に好適な光学ガラスが得られる。また、部分分散比Pg,Fの下限は、好ましくは0.6030であり、さらには0.6040、0.6050、0.6060、0.6070の順により好ましい。
【0087】
また、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、偏差ΔPg,Fの上限は、好ましくは0.0200であり、さらには0.0190、0.0180、0.0170、0.0160、0.0150、0.0140の順により好ましい。偏差ΔPg,Fを上記範囲とすることで、高次の色収差補正に好適な光学ガラスが得られる。また、偏差ΔPg,Fの下限は、好ましくは0.030であり、さらには、0.040、0.050、0.060、0.070の順により好ましい。
【0088】
[比重]
本実施形態では、比重の低減された光学ガラスが提供できる。本実施形態に係る光学ガラスにおいて、比重の上限は、好ましくは5.20であり、さらには5.10、5.00,4.99、4.97、4.95、4.90、4.80、4.70、4.60、4.50の順により好ましい。比重の下限は、特に限定されないが、通常3.80であり、好ましくは3.90であり、より好ましくは4.00である。
【0089】
[ガラス転移温度Tg]
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、ガラス転移温度Tgの上限は、アニール炉や成形型への負担軽減の観点から、好ましくは800℃であり、さらには790℃、780℃、770℃、760℃、750℃、740℃、730℃の順により好ましい。一方、ガラス転移温度が高いガラスは、切断、切削、研削、研磨等のガラスの機械加工を行う際に破損しにくい傾向があり好ましい。そこで、ガラス転移温度Tgの下限は、ガラスの機械加工性を向上させる観点から、好ましくは570℃であり、さらには580℃、590℃、600℃、610℃、620℃の順により好ましい。
【0090】
[透過率]
本実施形態に係る光学ガラスは、着色が極めて少ない光学ガラスであることができる。かかる光学ガラスは、カメラレンズ等の撮像用の光学素子や、プロジェクタ等の投射用の光学素子の材料として好適である。
【0091】
一般に光学ガラスの着色度は、λ70、λ5などにより表される。厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、外部透過率が70%となる波長をλ70、外部透過率が5%となる波長をλ5とする。
【0092】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、λ70は、好ましくは550nm以下であり、さらには540nm以下、530nm以下、520nm以下、510nm以下、500nm以下の順により好ましい。λ5は、好ましくは400nm以下であり、さらには395nm以下、390nm以下、385nm以下、380nm以下の順により好ましい。
【0093】
(ガラスの製造方法)
本実施形態に係る光学ガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料である酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、水酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得られる。具体的には公知の熔融法を用いて製造できる。本実施形態に係る光学ガラスは、高屈折率でありながら、熱的安定性が優れているため、公知の熔融法、成形法を用いて、安定的に製造することができる。
【0094】
(プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、およびそれらの製造方法)
本発明の他の一態様は、
本実施形態に係る光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、および
本実施形態に係る光学ガラスからなる光学素子ブランク
に関する。
【0095】
本発明の他の一態様によれば、
上記光学ガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;
上記光学ガラスプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法;
上記光学ガラスガラスを光学素子ブランクに成形する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、
も提供される。
【0096】
光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研磨しろ(研磨により除去することになる表面層)、必要に応じて研削しろ(研削により除去することになる表面層)を加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスをプレス成形する方法(ダイレクトプレス法と呼ばれる。)により、光学素子ブランクを作製することができる。他の一態様では、上記ガラスを適量熔融して得た熔融ガラスを固化することにより光学素子ブランクを作製することもできる。
【0097】
また、他の一態様では、プレス成形用ガラス素材を作製し、作製したプレス成形用ガラス素材をプレス成形することにより、光学素子ブランクを作製することができる。
プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスする公知の方法により行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。
【0098】
プレス成形用ガラス素材は、そのままの状態で光学素子ブランク作製のためのプレス成形に供されるプレス成形用ガラスゴブと呼ばれるものに加え、切断、研削、研磨などの機械加工を施してプレス成形用ガラスゴブを経てプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法などがある。また、研削、研磨方法としてはバレル研磨などが挙げられる。
【0099】
プレス成形用ガラス素材は、例えば、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を複数のガラス片に切断することにより作製することができる。または、適量の熔融ガラスを成形してプレス成形用ガラスゴブを作製することもできる。プレス成形用ガラスゴブを、再加熱、軟化してプレス成形して作製することにより、光学素子ブランクを作製することもできる。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形して光学素子ブランクを作製する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。
【0100】
(光学素子およびその製造方法)
本発明の他の一態様は、
本実施形態に係る光学ガラスからなる光学素子に関する。
【0101】
上記光学素子は、上記光学ガラスを用いて作製される。上記光学素子において、ガラス表面には、例えば、反射防止膜等の多層膜等、一層以上のコーティングが形成されていてもよい。
【0102】
また、本発明の一態様によれば、
上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。
【0103】
上記光学素子の製造方法において、研削、研磨は公知の方法を適用すればよく、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させるなどすることにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。このようにして、上記ガラスからなる光学素子を得ることができる。光学素子としては、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズなどの各種のレンズ、プリズムなどを例示することができる。
【0104】
また、上記光学ガラスからなる光学素子は、接合光学素子を構成するレンズとしても好適である。接合光学素子としては、レンズ同士を接合したもの(接合レンズ)、レンズとプリズムを接合したものなどを例示することができる。例えば、接合光学素子は、接合する2つの光学素子の接合面を形状が反転形状となるように精密に加工(例えば、球面研磨加工)し、接合レンズの接着に使用される紫外線硬化型接着剤を塗布し、貼り合わせてからレンズを通して紫外線を照射し接着剤を硬化させることで作製することができる。このように接合光学素子を作製するために、上記ガラスは好ましい。接合する複数個の光学素子を、アッベ数νdが相違する複数種のガラスを用いてそれぞれ作製し、接合することにより、色収差の補正に好適な素子とすることができる。
【0105】
(導光板、画像表示装置)
本発明の他の一態様は、
本実施形態に係る光学ガラスからなる導光板;
画像表示素子と、上記画像表示素子から出射した光を導光する導光板と、を含み、上記導光板が本実施形態に係る光学ガラスからなる導光板である画像表示装置、
に関する。画像表示装置の具体的形態については後述する。
【実施例0106】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
表1(1)~(2)、表2(1)~(2)、表3(1)~(2)、表4(1)~(2)、表5(1)~(2)、表6(1)~(2)、および表7(1)~(2)に示すガラス組成を有するガラスサンプルを以下の手順で作製し、各種評価を行った。
【0108】
まず、ガラスの構成成分に対応する硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、水酸化物、酸化物、およびホウ酸等を原材料として準備し、得られる光学ガラスのガラス組成が、表1(1)~(2)、表2(1)~(2)、表3(1)~(2)、表4(1)~(2)、表5(1)~(2)、表6(1)~(2)、および表7(1)~(2)に示す各組成となるように上記原材料を秤量、調合して、原材料を十分に混合した。こうして得られた調合原料(バッチ原料)を、白金坩堝に投入し、1200~1450℃で加熱して熔融ガラスとし、攪拌して均質化を図り、清澄してから、熔融ガラスを適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを、ガラス転移温度付近まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラス転移温度Tg近傍の温度で1時間熱処理してアニール処理した後、炉内で室温まで放冷することにより、ガラスサンプルを得た。
【0109】
[ガラス成分組成の確認]
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定し、表1(1)~(2)、表2(1)~(2)、表3(1)~(2)、表4(1)~(2)、表5(1)~(2)、表6(1)~(2)、および表7(1)~(2)に示す各組成のとおりであることを確認した。
【0110】
得られた光学ガラスの諸特性は、以下に示す方法により測定した。
【0111】
(i)屈折率nd、アッベ数νd
降温速度-30℃/時間で降温して得られたガラスについて、日本光学硝子工業会規格の屈折率測定法により、屈折率ndおよびアッベ数νdを測定した。
【0112】
(ii)部分分散比Pg,F
g線、F線、c線における各屈折率ng、nF、nCを用いて、下記式に基づき部分分散比Pg,Fを算出した。
Pg,F=(ng-nF)/(nF-nC)
【0113】
(iii)部分分散比Pg,Fの偏差ΔPg,F
部分分散比Pg,Fおよびアッベ数νdを用いて、下記式に基づき算出した。
ΔPg,F=Pg,F+(0.0018×νd)-0.6483
【0114】
(iv)比重
アルキメデス法により測定した。
【0115】
(v)ガラス転移温度Tg
ガラスを乳鉢で十分粉砕したものを試料とし、Rigaku社製の示差走査熱量分析装置(DSC8271)を使用し、昇温速度を10℃/分にしてガラス転移温度Tgを測定した。
【0116】
(vi)透過率(λ70およびλ5)
厚さ10.0mm±0.1mmのサンプルについて波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定した。外部透過率が70%となる波長をλ70、外部透過率が5%となる波長をλ5とした。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
(実施例2)
実施例1で作製した各ガラスサンプルを使用し、プレス成形用ガラス塊(ガラスゴブ)を作製した。このガラス塊を大気中で加熱、軟化し、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各ガラスサンプルからなる球面レンズを作製した。
【0132】
(実施例3)
実施例1で作製した熔融ガラスを所望量、プレス成形型でプレス成形し、レンズブランク(光学素子ブランク)を作製した。作製したレンズブランクをプレス成形型から取り出し、アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各ガラスサンプルからなる球面レンズを作製した。
【0133】
(実施例4)
実施例1で作製した熔融ガラスを固化して作製したガラス塊(光学素子ブランク)アニールし、研磨を含む機械加工を行い、実施例1で作製した各ガラスサンプルからなる球面レンズを作製した。
【0134】
(実施例5)
実施例2~4において作製した球面レンズを、他種のガラスからなる球面レンズと貼り合せ、接合レンズを作製した。
【0135】
(実施例6)
図1は、画像表示素子と導光板とを含む画像装置の一例であるヘッドマウントディスプレイの概略構成図である。
図1に示す構成を有するヘッドマウントディスプレイ1を、以下の方法によって作製した。
【0136】
表1(1)~(2)、表2(1)~(2)、表3(1)~(2)、表4(1)~(2)、表5(1)~(2)、表6(1)~(2)、および表7(1)~(2)に記載の各光学ガラスを長さ50mm×幅20mm×厚さ1.0mmの矩形薄板状に加工して、導光板10を得た。
【0137】
この導光板を、
図1に示すヘッドマウントディスプレイ1(以下、「HMD1」と略記する。)に取り付けた。
図1(a)は、HMD1の正面側斜視図であり、
図1(b)は、HMD1の背面側斜視図である。
図1(a)および
図1(b)に示すように、使用者の頭部に装着される眼鏡型フレーム2の正面部には、眼鏡レンズ3が取り付けられる。眼鏡型フレーム2の取付部2aには、画像を照明するためのバックライト4が取り付けられる。眼鏡型フレーム2のツル部分には、画像を映し出すための信号処理機器5および音声を再生するスピーカー6が設けられている。信号処理機器5の回路から引き出された配線を構成するFPC(Flexible Printed Circuits)7が、眼鏡型フレーム2に沿って配線されている。表示素子ユニット(例えば液晶表示素子)20は、FPC7によって使用者の両眼中央位置まで配線され、かつバックライト4の光軸線上に表示素子ユニット20の略中心部が配置するように保持される。表示素子ユニット20は、導光板10の略中央部に位置するように、導光板10に対して相対的に固定される。また、使用者の眼前に位置する箇所にはHOE(Holographic Optical Element)32R、32L(第1光学素子)が、それぞれ接着等により導光板10の第1面10a上に密着固定されている。導光板10を挟んで表示素子ユニット20と対向する位置には、HOE52R、52Lが導光板10の第2面10b上に積層されている。
【0138】
図2は、
図1に示すHMD1の構成を模式的に示す側面図である。なお、
図2においては、図面を明瞭化するため、主要部のみを示しており、眼鏡型フレーム2等は図示を省略している。
図2に示すように、HMD1は、画像表示素子24と導光板10の中心を結ぶ中心線Xを挟み左右対称の構造を有している。また、画像表示素子24から導光板10に入射された各波長の光は、後述するように二分割されて使用者の右眼、左眼のそれぞれに導光される。各眼に導光される各波長の光の光路も中心線Xを挟み略左右対称である。
【0139】
図2に示すように、バックライト4は、レーザ光源21、拡散光学系22、およびマイクロレンズアレイ23を有する。表示素子ユニット20は、画像表示素子24を有する画像生成ユニットであり、例えばフィールドシーケンシャル(FieldSequential)方式で駆動する。レーザ光源21は、R(波長436nm)、G(波長546nm)、B(波長633nm)の各波長に対応したレーザ光源を有し、各波長の光を高速で順次照射する。各波長の光は、拡散光学系22、マイクロレンズアレイ23に入射され、光量ムラのない均一な高指向性の平行光束に変換されて、画像表示素子24の表示パネル面に垂直に入射される。
【0140】
画像表示素子24は、例えばフィールドシーケンシャル方式で駆動する透過型液晶(LCDT-LCOS)パネルである。画像表示素子24は、各波長の光に、信号処理機器5の画像エンジン(図示せず)が生成する画像信号に応じた変調をかける。画像表示素子24の有効領域の画素で変調された各波長の光は、所定の光束断面(上記有効領域と略同じ形状)をもって導光板10に入射される。なお、画像表示素子24は、例えばDMD(DigitalMirrorDevice)や反射型液晶(LCOS)パネル、MEMS(MicroElectroMechanicalSystems)、有機EL(Electro-Luminescence)、無機EL等の他の形態の表示素子に置換することも可能である。
【0141】
表示素子ユニット20は、フィールドシーケンシャル方式の表示素子に限らず、同時式の表示素子(射出面前面に所定の配列のRGBカラーフィルタを有する表示素子)の画像生成ユニットとしてもよい。この場合、光源には、例えば白色光源が使用される。
【0142】
図2に示すように、画像表示素子24により変調された各波長の光は、第1面10aから導光板10内部に順次入射される。導光板10の第2面10b上には、HOE52Rと52L(第2光学素子)が積層されている。HOE52Rおよび52Lは、例えば矩形状を有する反射型の体積位相型HOEであって、R、G、Bの各波長の光に対応する干渉縞が各々に記録されたフォトポリマーを三枚積層した構成を有する。すなわち、HOE52Rおよび52Lは、R、G、Bの各波長の光を回折しそれ以外の波長の光を透過する波長選択機能を有するように構成されている。
【0143】
HOE32Rおよび32Lも反射型の体積位相型HOEであり、HOE52Rおよび52Lと同一の層構造を有する。HOE32Rおよび32Lと52Rおよび52Lは、例えば干渉縞パターンのピッチが略同一であってもよい。
【0144】
HOE52Rと52Lは、互いの中心が一致し、かつ干渉縞パターンが180(deg)反転された状態で積層されている。そして、積層された状態でその中心が中心線Xと一致するように導光板10の第2面10b上に接着等により密着固定されている。HOE52R、52Lには、画像表示素子24により変調された各波長の光が導光板10を介して順次入射される。
【0145】
HOE52R、52Lはそれぞれ、順次入射される各波長の光を右眼、左眼に導くため所定の角度を付与して回折する。HOE52R、52Lにより回折された各波長の光はそれぞれ、導光板10と空気との界面で全反射を繰り返して導光板10内部を伝搬しHOE32R、32Lに入射される。ここで、HOE52R、52Lは、各波長の光に同一の回折角を付与する。そのため、導光板10に対する入射位置が略同一の(または別の表現によれば、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出された)すべての波長の光は、導光板10内部の略同一の光路を伝搬して、HOE32R、32L上の略同位置に入射する。別の観点によれば、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係がHOE32R、32L上で忠実に再現されるようにRGBの各波長の光を回折する。
【0146】
このように本実施例においては、HOE52R、52Lは、それぞれ、画像表示素子24の有効領域内の略同一座標から射出されたすべての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折する。または、HOE52R、52Lは、画像表示素子24の有効領域内で相対的にずらされた本来同一画素をなすすべての波長の光をHOE32R、32L上の略同位置に入射させるように回折するように構成されてもよい。
【0147】
HOE32R、32L上に入射された各波長の光は、HOE32R、32Lにより回折されて導光板10の第2面10bから外部に略垂直に順次射出される。このように略平行光として射出された各波長の光はそれぞれ、画像表示素子24により生成された画像の虚像Iとして使用者の右眼網膜、左眼網膜に結像する。また、使用者が拡大画像の虚像Iを観察できるように、HOE32R、32Lにコンデンサ作用を付与してもよい。すなわち、HOE32R、32Lの周辺領域に入射された光ほど瞳の中心に寄るように角度をもって射出され使用者の網膜に結像するようにしてもよい。または、使用者に拡大画像の虚像Iを観察させるために、HOE52R、52Lは、HOE32R、32L上での画素位置関係が画像表示素子24の有効領域に表示された画像の該有効領域内における画素位置関係に対して拡大された相似形状をなすようにRGBの各波長の光を回折するようにしてもよい。
【0148】
導光板10内を進む光の空気換算光路長が、屈折率が高いほど短くなるため、屈折率が高い上記各光学ガラスを使用することにより、画像表示素子24の幅に対する見かけの視野角を大きくすることができる。更に、屈折率が高いものの比重が低く抑えられているため、軽量でありながら上記効果が得られる導光板を提供することができる。
【0149】
このようにして得られた導光板10を、HMD1に組み込み、アイポイントの位置で画像を評価したところ、広い視野角で、高輝度かつ高コントラストな画像を観察することができた。
【0150】
なお、上記各光学ガラスからなる導光板は、シースルーである透過型のヘッドマウントディスプレイや非透過型のヘッドマウントディスプレイなどに使用することができる。
【0151】
これらヘッドマウントディスプレイは、導光板が高屈折率低比重のガラスからなることによって、広視野角による没入感が優れており、情報端末と組み合わせて使用したり、AR(Augmented Reality:拡張現実)等の提供用として使用したり、映画鑑賞やゲームやVR (Virtual Reality:仮想現実)等の提供用として使用する画像表示装置として好適である。
【0152】
本実施例では、ヘッドマウントディスプレイを例にとり説明したが、その他の画像表示装置に上記導光板を取り付けてもよい。
【0153】
本実施形態に係る光学ガラスは低比重であるため、各レンズとも同等の光学特性、大きさを有するレンズよりも重量が小さく、各種撮像機器、特に省エネ可能という理由等によりオートフォーカス式の撮像機器用として好適である。
【0154】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0155】
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製することができる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。