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特開2024-121591排水処理装置及び排水処理装置の製造方法、並びに、排水処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121591
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】排水処理装置及び排水処理装置の製造方法、並びに、排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240830BHJP
   B01D 61/00 20060101ALI20240830BHJP
   B01D 63/08 20060101ALI20240830BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D61/00 500
B01D63/08
B01D61/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028771
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 拓
(72)【発明者】
【氏名】石田 進
(72)【発明者】
【氏名】円谷 輝美
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006HA44
4D006HA46
4D006JA07A
4D006JA08A
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006JA31Z
4D006KA01
4D006KA43
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA56
4D006KB17
4D006KC03
4D006KD04
4D006KD11
4D006KD14
4D006KD15
4D006KD16
4D006KD17
4D006MA03
4D006PA01
4D006PB08
(57)【要約】
【課題】本発明は、FO膜を用いた排水の処理を効率的に実行することができる排水処理装置を提供する。
【解決手段】排水処理システム10は排水FSが貯留されている排水貯留槽12を備え、排水貯留槽12内の排水FSには排水処理装置であるFO膜エレメント20を格納するFO膜モジュール13が浸漬され、FO膜エレメント20は複数のFO膜エレメントパーツ22からなり、複数のFO膜エレメントパーツ22は接続され、一本道の駆動溶液DSの流路が形成され、隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22は所定の間隙を有する離間部25を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、
前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備える排水処理装置であって、
前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材は所定の間隙を有し、前記第1の排出側端部及び前記第2の流入側端部は接続されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記排水処理装置は、
前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第3の流入側端部を有する第3の正浸透膜部材と、をさらに備え、
前記第2の正浸透膜部材は前記第2の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第2の排出側端部を有し、
前記第2の正浸透膜部材及び前記第3の正浸透膜部材は所定の間隙を有し、前記第2の排出側端部及び前記第3の流入側端部は接続されていることを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記第1の流入側端部は前記排水又は前記駆動溶液を前記第1の正浸透膜部材に供給する供給部を有することを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記供給部に供給される排水又は駆動溶液から気泡を分離除去する脱気手段をさらに備えることを特徴とする請求項3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記第3の正浸透膜部材は前記第3の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第3の排出側端部を有することを特徴とする請求項2記載の排水処理装置。
【請求項6】
前記第3の排出側端部は前記排水に含まれる水分及び前記駆動溶液が混合された集水溶液を集水する集水部を有することを特徴とする請求項5記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記第1の流入側端部、前記第1の排出側端部及び前記第2の流入側端部は複数の開口を有することを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項8】
前記第2の排出側端部及び前記第3の流入側端部は複数の開口を有することを特徴とする請求項2記載の排水処理装置。
【請求項9】
前記第3の排出側端部は複数の開口を有することを特徴とする請求項6記載の排水処理装置。
【請求項10】
前記第1の正浸透膜部材は前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜を支持する第1の支持部材を有し、前記第2の正浸透膜部材は前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜を支持する第2の支持部材を有することを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項11】
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は複数の突起を有することを特徴とする請求項10記載の排水処理装置。
【請求項12】
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は、少なくとも1つの孔部を有することを特徴とする請求項10又は11記載の排水処理装置。
【請求項13】
前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材は、前記正浸透膜を固定する位置を決める位置決め手段を有することを特徴とする請求項10記載の排水処理装置。
【請求項14】
前記正浸透膜は、前記位置決め手段及び前記位置決め手段に嵌合される嵌合手段によって前記第1の支持部材及び前記第2の支持部材に固定されることを特徴とする請求項13記載の排水処理装置。
【請求項15】
前記第1の支持部材及び前記第1の流入側端部の間、並びに、前記第1の支持部材及び前記第1の排出側端部の間には貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項10記載の排水処理装置。
【請求項16】
前記第2の支持部材及び前記第2の流入側端部の間、並びに、前記第2の支持部材及び前記第2の正浸透膜部材が有し且つ前記第2の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第2の排出側端部の間には貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項10記載の排水処理装置。
【請求項17】
前記第3の正浸透膜部材は前記第3の正浸透膜部材が有する正浸透膜を支持する第3の支持部材を有することを特徴とする請求項2記載の排水処理装置。
【請求項18】
前記第3の支持部材は複数の突起を有することを特徴とする請求項17記載の排水処理装置。
【請求項19】
前記第3の支持部材は、少なくとも1つの孔部を有することを特徴とする請求項17記載の排水処理装置。
【請求項20】
前記第3の支持部材は、前記正浸透膜を固定する位置を決める位置決め手段を有することを特徴とする請求項17記載の排水処理装置。
【請求項21】
前記正浸透膜は、前記位置決め手段及び前記位置決め手段に嵌合される嵌合手段によって前記第3の支持部材に固定されることを特徴とする請求項20記載の排水処理装置。
【請求項22】
前記第3の支持部材及び前記第3の流入側端部の間、並びに、前記第3の支持部材及び前記第3の正浸透膜部材が有し且つ前記第3の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第3の排出側端部の間には貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項17記載の排水処理装置。
【請求項23】
夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備える排水処理装置の製造方法において、
前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材が所定の間隙に基づいて配置される配置ステップと、
前記第1の排出側端部及び前記第2の流入側端部を接続する接続ステップとを有することを特徴とする排水処理装置の製造方法。
【請求項24】
夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備え、前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材が所定の間隙を有する排水処理装置によって実行される排水処理方法において、
前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜が前記排水に含まれる水分を透過する透過ステップと、
前記排水に含まれる水分が前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜を透過したとき、前記所定の間隙に位置する前記排水が前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜に移動する移動ステップと、を有することを特徴とする排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水処理装置及び排水処理装置の製造方法、並びに、排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、排水FS(Feed Solution)に溶解している溶解性有機物や排水FSに分散されている夾雑物を排水FSから分離除去する排水処理が実行されるときに用いられるFO(Forward Osmosis)膜が知られている(例えば、特許文献1参照。)。FO膜は2種類の溶質濃度の異なる水溶液、例えば、所定の溶質濃度の排水FS及び排水FSの溶質濃度よりも高い溶質濃度を有する海水等の駆動溶液DS(Draw Solution)の間に介在すると、排水FSに含まれる水分を駆動溶液DSに透過するとともに、排水FSに含まれる夾雑物及び溶解性有機物を捕捉し、排水FSを濃縮する。
【0003】
特許文献1のFO膜エレメントはFO膜及びFO膜に囲まれた駆動溶液DSの流路を備え、流路の一端は駆動溶液DSをFO膜エレメントに供給する供給部を有し、流路の他端は駆動溶液DSと、排水FSに含まれていた水分であってFO膜を透過した水分とからなる集水溶液CSを集水する集水部を有する。流路は駆動溶液DSが供給部から集水部に向かう一本道であり、排水FSに含まれる水分がFO膜を透過する領域を確保するために、FO膜エレメント内部において蛇行し、隙間なく形成されている。
【0004】
ところで、FO膜エレメントは実際の排水処理設備において、一定の排水FSの量が確保される場合、複数のFO膜エレメントが等間隔に連結された一体型FO膜エレメント(図6)が用いられる。図6の一体型FO膜エレメント60において、FO膜エレメント61,62は隣接し、FO膜エレメント61はFO膜63,64を有し、FO膜エレメント62はFO膜65,66を有し、FO膜64及びFO膜65が対向している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-185522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一体型FO膜エレメント60をコンパクトにするために、FO膜エレメント61,62は近接して配置される。これにより、FO膜エレメント61,62の間の排水FSは流動性を喪失し、FO膜64及びFO膜65の間で停滞する。FO膜64及びFO膜65の間で停滞している排水FSの水分がFO膜64又はFO膜65を透過し、FO膜64及びFO膜65の間で停滞している排水FSが濃縮されると、次第に排水FSの溶質濃度及び駆動溶液DSの溶質濃度の濃度差は縮小し、FO膜64,65に生じる浸透圧は低下するので、効率的に排水FSを濃縮することができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、効率的に排水FSを濃縮することができる排水処理装置及び排水処理装置の製造方法、並びに、排水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理装置は、夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備える排水処理装置であって、前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材は所定の間隙を有し、前記第1の排出側端部及び前記第2の流入側端部は接続されていることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理装置の製造方法は、夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備える排水処理装置の製造方法において、前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材が所定の間隙に基づいて配置される配置ステップと、前記第1の排出側端部及び前記第2の流入側端部を接続する接続ステップとを有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の排水処理方法は、夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水、並びに、前記排水の溶質濃度よりも高い溶質濃度の駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第1の流入側端部及び前記第1の流入側端部から流入した排水又は駆動溶液を排出する第1の排出側端部を有する第1の正浸透膜部材と、前記排水及び前記駆動溶液の間に配設される正浸透膜を有するとともに、前記排水又は前記駆動溶液が流入する第2の流入側端部を有する第2の正浸透膜部材と、を備え、前記第1の正浸透膜部材及び前記第2の正浸透膜部材が所定の間隙を有する排水処理装置によって実行される排水処理方法において、前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜が前記排水に含まれる水分を透過する透過ステップと、前記排水に含まれる水分が前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜を透過したとき、前記所定の間隙に位置する前記排水が前記第1の正浸透膜部材が有する正浸透膜及び前記第2の正浸透膜部材が有する正浸透膜に移動する移動ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、十分な強度を有するFO膜エレメントを用いて効率的に排水FSを濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る排水処理装置であるFO膜エレメントを用いた排水処理システムを概略的に示すブロック図である。
図2図1におけるFO膜モジュールを構成するFO膜エレメントを示す概略図であり、図2(A)はFO膜エレメントの平面図であり、図2(B)はFO膜エレメント正面図である。
図3図2におけるFO膜エレメントパーツを説明するために用いられる図であり、図3(A)はFO膜エレメントパーツに用いられる基材の概略図であり、図3(B)は図3(A)の基材を含むFO膜エレメントパーツの概略図である。
図4図2のFO膜エレメントを用いて実行される排水処理の手順を示すフローチャートである。
図5図2におけるFO膜エレメント20が複数接続されている一体型FO膜エレメントを説明するために用いられる図である。
図6】従来の複数のFO膜エレメントからなる一体型FO膜エレメントを説明するために用いられる図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る排水処理装置であるFO膜エレメント20を用いた排水処理システム10を概略的に示すブロック図である。
【0015】
図1の排水処理システム10は、夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水FSから大型の夾雑物を除去するためのスクリーン11と、スクリーン11によって大型の夾雑物が除去された排水FSを貯留する排水貯留槽12とを備え、排水貯留槽12はFO膜モジュール13と、散気装置14とを有する。また、排水処理システム10は、海水等の駆動溶液DSをFO膜モジュール13に供給する駆動溶液供給部15を備える。FO膜モジュール13は排水処理装置であるFO膜エレメント20を専用の筺体(ケーシング)に格納することによって構成され、排水貯留槽12に供給された排水FSに浸漬されている。これにより、FO膜モジュール13を構成するFO膜エレメント20も排水FSに浸漬されている。
【0016】
散気装置14は排水貯留槽12の底部に設置されている。散気装置14には不図示のブロワが接続され、ブロワが駆動すると、散気装置14は大量の気泡を排水FSに供給する。これにより、排水貯留槽12に貯留される排水FSは撹拌されるとともに、FO膜エレメント20に用いられるFO膜38(図3(B))の表面は洗浄される。これにより、FO膜38の表面に付着したファウリング物質がFO膜38の表面から剥落するので、FO膜38の目詰まりを防止することができる。
【0017】
FO膜モジュール13及び駆動溶液供給部15はポンプP1に接続されている。ポンプP1が駆動すると、駆動溶液DSが駆動溶液供給部15からFO膜モジュール13に供給される。また、排水貯留槽12の外部にはポンプP2が配置され、ポンプP2はFO膜モジュール13に接続されている。ポンプP2が駆動すると、ポンプP1が駆動しているか否かに関わらず、駆動溶液DSが駆動溶液供給部15からFO膜モジュール13に供給される。また、ポンプP1,P2の少なくともいずれかが駆動すると、排水FSに含まれていた水分及び駆動溶液DSからなる集水溶液CSがFO膜モジュール13から排水貯留槽12の外部に排出される。
【0018】
図2は、図1におけるFO膜モジュール13を構成するFO膜エレメント20を示す概略図であり、図2(A)はFO膜エレメントの平面図であり、図2(B)はFO膜エレメント正面図である。
【0019】
図2のFO膜エレメント20は駆動溶液DSを供給する供給部21と、複数のFO膜エレメントパーツ22と、FO膜エレメントパーツ22の各々を連結する連結部材23と、集水溶液CSを集水する集水部24とを備える。本実施の形態において、FO膜エレメント20は7つの矩形状のFO膜エレメントパーツ22、具体的に、FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g(第1の正浸透膜部材、第2の正浸透膜部材、第3の正浸透膜部材)を備え、FO膜エレメントパーツ22aは端部22a,22aを有し、FO膜エレメントパーツ22bは端部22b,22bを有し、FO膜エレメントパーツ22cは端部22c,22cを有し、FO膜エレメントパーツ22dは端部22d,22dを有し、FO膜エレメントパーツ22eは端部22e,22eを有し、FO膜エレメントパーツ22fは端部22f,22fを有し、FO膜エレメントパーツ22gは端部22g,22gを有する。
【0020】
FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gは長手方向を有し、連結部材23はFO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gを並列に接続する。このとき、FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gの長手方向は一致し、端部22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gは同一の直線上に配置され、また、端部22a,22b,22c,22d,22e,22fも同一の直線上に配置されている。
【0021】
図3は、図2におけるFO膜エレメントパーツ22を説明するために用いられる図であり、図3(A)はFO膜エレメントパーツ22に用いられる基材31の概略図であり、図3(B)は図3(A)の基材31を含むFO膜エレメントパーツ22の概略図である。
【0022】
図3(A)の基材31(第1の支持部材、第2の支持部材、第3の支持部材)は基材枠32、貫通孔33a,33b及び支持板34を備え、基材枠32は導通孔35a,35b,35c,35d(開口)及び切り欠き36(位置決め手段)を有する。支持板34は1枚の矩形状の板状部材であり、支持板34の表裏面には複数の突起37が形成されている。したがって、支持板34の表裏面は凹凸を形成している。支持板34の長手方向における両端には貫通孔33a,33bが形成されるとともに、基材枠32は貫通孔33a,33b及び支持板34を囲み、支持板34の長手方向に沿う長端部34aが基材枠32に接続されている。
【0023】
導通孔35a,35b,35c,35dは貫通孔33a,33bを介して支持板34に対向している。支持板34を正面から眺め、導通孔35a,35b(複数の開口)が基材枠32の右側面に形成され且つ導通孔35c,35d(複数の開口)が基材枠32の左側面に形成されている場合において、切り欠き36は、基材枠32の平面及び/又は底面に形成されている。切り欠き36には、切り欠き36の形状に対応する棒状部材39(嵌合手段)(図3(B))が嵌合される。基材31は、例えば、矩形状の薄い板状部材に削り出し加工を施すこと又は射出成型によって形成される。したがって、基材31の材質は加工を施しやすい樹脂製部材がよく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニルがよい。
【0024】
図3(B)のFO膜エレメントパーツ22はFO膜38(正浸透膜)を有し、FO膜38は基材枠32において露出されている導通孔35a,35b,35c,35dを除き基材31を覆っている。このとき、FO膜38は少なくとも貫通孔33a,33b及び支持板34を覆っている。FO膜38が基材31を覆った後、棒状部材39が切り欠き36に嵌合される。これにより、FO膜38は基材31に固定される。このとき、FO膜38は基材枠32との接触部分において、例えば、熱融着や接着、溶接によって固定されてもよい。これにより、FO膜38は基材31に確実に固定される。FO膜38が基材31に固定され、排水FSに含まれる水分のみが選択されてFO膜38を透過するために必要な活性層がFO膜38の表面に付与されることにより、FO膜エレメントパーツ22が形成される。
【0025】
FO膜38が基材31に固定されるとき、FO膜38は乾燥状態であるのがよい。これにより、FO膜38が基材31に固定される際の作業性がよく、FO膜38を損傷するリスクを軽減することができ、また、FO膜38の表面に活性層を付与する作業性もよく、活性層の付与を失敗するリスクを軽減することができる。さらに、活性層が付与される前のFO膜38は乾燥状態での長期保存が容易であるが、活性層が付与された後のFO膜38は湿式状態で保存しなければならず且つ長期保存は困難である。FO膜38は活性層が付与されるまでは乾燥状態で保存され、活性層は適切なタイミングに付与されるので、活性層が付与された後にFO膜38を湿式状態で長期保存し、活性層が劣化することを抑制することができる。
【0026】
基材31のサイズについて説明する。FO膜エレメントパーツ22の長手方向(図3(A)における矢印Xの方向)における長さは500~2000mmであり、FO膜エレメントパーツ22の高さ方向(図3(A)における矢印Yの方向)における長さは50~200mmである。また、FO膜エレメントパーツ22の厚み方向(図3(A)における矢印Zの方向)において、基材枠32部分の長さは5~10mmであり、支持板34部分の長さは2~6mmである。突起37の厚み方向における支持板34からの突出長さは1~2mmである。基材枠32のフレーム幅Lは5~20mmである。
【0027】
本実施の形態において、基材31は、FO膜エレメントパーツ22の長手方向における長さが1000mmであり、FO膜エレメントパーツ22の高さ方向における長さが100mmであり、FO膜エレメントパーツ22の厚み方向において、基材枠32部分の長さは10mmであり、支持板34部分の長さは6mmである。突起37の厚み方向における支持板34からの突出長さは1~2mmである。基材枠32のフレーム幅は10~20mmである。
【0028】
次いで、本実施の形態の基材31に固定されているFO膜38のうち排水FSに含まれる水分を透過する機能を有効に発揮する場合のFO膜38の面積(以下、「有効膜面積」という。)のサイズについて説明する。支持板34の表面側のFO膜38の有効膜面積及び支持板34の裏面側のFO膜38の有効膜面積は、いずれも、FO膜エレメントパーツ22の長手方向における長さは960mmであり、FO膜エレメントパーツ22の高さ方向における長さは80mmであるため、7.68×10-2である。したがって、FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gを有するFO膜エレメント20の有効膜面積は1.08mである。
【0029】
FO膜エレメントパーツ22の一端側を吸引してFO膜エレメントパーツ22の内部を負圧にすると、駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22の内部、すなわち、支持板34の表面とFO膜38との間、及び、支持板34の裏面とFO膜38との間を通過する。また、排水FSに含まれる水分はFO膜38を透過して駆動溶液DSに混合される。これらにより、FO膜38は基材31側に撓み、損傷する場合がある。これに対応して、FO膜38を支持する突起37は、FO膜38を損傷することなく支持する必要があるので、FO膜38が損傷しない形状がよい。また、突起37は排水FSに含まれる水分がFO膜38を透過することを妨げない形状がよい。したがって、突起37は、例えば、鋭利な形状ではない形状である半球形状や錘台形状がよい。このような突起37を支持体34の表裏面に形成することにより、FO膜エレメントパーツ22の内部が負圧になった場合でも、FO膜38が損傷することなく排水FSに含まれる水分の透過を継続することができる。
【0030】
支持板34の表面側のFO膜38が透過する排水FSに含まれる水分と、支持板34の裏面側のFO膜38が透過する排水FSに含まれる水分とは同量であるのがよく、したがって、支持板34の表面とFO膜38との間を流れる駆動溶液DSの流束と、支持板34の裏面とFO膜38との間を流れる駆動溶液DSの流束とは同等であるのがよい。導通孔35a,35b,35c,35dからFO膜エレメントパーツ22の内部に供給される駆動溶液DSは貫通孔33a,33bを経由する。これにより、貫通孔33a,33bにおいて固有の流束を有する駆動溶液DSが支持板34の表面側及び支持板34の裏面側に分配されるので、支持板34の表面側を流れる駆動溶液DSの流束と、支持板34の裏面側を流れる駆動溶液DSの流束とを同等にすることができる。
【0031】
支持板34は複数の連通孔(孔部)を有してもよい。連通孔(孔部)は、例えば、直径が2~10mmの孔を1枚の支持板34に10~500個、好ましくは20~100個形成するのがよい。これにより、駆動溶液DSが導通孔35a,35b,35c,35dからFO膜エレメントパーツ22の内部に供給されたとき、支持板34に設けられた連通孔を経由して支持板34の表面側を通過する駆動溶液DSと、支持板34の裏面側を通過する駆動溶液DSとは互いに往来するので、支持板34の表面側を流れる駆動溶液DSの流束と、支持板34の裏面側を流れる駆動溶液DSの流束とを確実に同等にすることができる。
【0032】
導通孔35a,35b,35c,35dのうち、支持板34を正面から眺めたとき、導通孔35a,35bが基材枠32の右側面に形成され、導通孔35c,35dが基材枠32の左側面に形成されている。すなわち、導通孔35a,35bは連通していない。また、導通孔35c,35dは連通していない。導通孔35a,35bに代えて導通孔35a,35bを連通した開口が形成され、導通孔35c,35dに代えて導通孔35c,35dを連通した開口が形成されると、これらの開口周辺における基材枠32の強度が低下し、FO膜38が基材枠32に熱融着や接着、溶接によって固定される場合、基材枠32が破損し又はFO膜38の基材枠32に対する融着強度が不足する。これに対応して、導通孔35a,35b,35c,35dのそれぞれが独立して基材枠32に配設される。このように基材枠32の右側面と左側面にそれぞれ複数の開口(導通孔)を形成することにより、基材枠32に十分な強度を付与することができ、FO膜エレメントパーツ22の製造を問題なく実施することができる。
【0033】
なお、支持板34を正面から眺めたとき、長孔である導通孔35a,35bが基材枠32の右側面に形成され、長孔である導通孔35c,35dが基材枠32の左側面に形成されているが、基材枠32の右側面及び基材枠32の左側面のそれぞれに複数の丸孔を設けてもよく、当該各丸孔の外径は基材枠32の幅を考慮した外径、具体的に、1~10mmであるのがよく、さらに、当該各丸孔の目詰まり防止及び基材枠32の強度確保を考慮した外径、具体的に、3~5mmであるのがなおよい。
【0034】
図2に戻り、FO膜エレメントパーツ22aは供給部21が接続される端部22aと、端部22aから供給された駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22aから排出される端部22aとを有する。FO膜エレメントパーツ22bは端部22aから排出された駆動溶液DSが流入する端部22bと、端部22bから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22bから排出される端部22bとを有する。FO膜エレメントパーツ22cは端部22bから排出された駆動溶液DSが流入する端部22cと、端部22cから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22cから排出される端部22cとを有する。FO膜エレメントパーツ22dは端部22cから排出された駆動溶液DSが流入する端部22dと、端部22dから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22dから排出される端部22dとを有する。
【0035】
FO膜エレメントパーツ22eは端部22dから排出された駆動溶液DSが流入する端部22eと、端部22eから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22eから排出される端部22eとを有する。FO膜エレメントパーツ22fは端部22eから排出された駆動溶液DSが流入する端部22fと、端部22fから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22fから排出される端部22fとを有する。FO膜エレメントパーツ22gは端部22fから排出された駆動溶液DSが流入する端部22gと、端部22gから流入した駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22gから排出され且つ集水部24が接続される端部22gとを有する。
【0036】
つまり、FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gは、駆動溶液DSが流入する端部22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g(第1の流入側端部、第2の流入側端部、第3の流入側端部)と、流入側端部から流入した駆動溶液DSを排出する端部22a,22b,22c,22d,22e,22f,22g(第1の排出側端部、第2の排出側端部、第3の排出側端部)を有する。
【0037】
駆動溶液DSがFO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gを通過するとき、排水FSに含まれていた水分がFO膜38を透過して駆動溶液DSに混ざり、集水溶液CSが形成される。集水溶液CSはFO膜エレメントパーツ22g--から排出されて集水部24において集水される。連結部材23は複数のFO膜エレメントパーツ22を連結する。
【0038】
FO膜エレメントパーツ22は、まず、FO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gが等間隔且つ並列に配置され(配置ステップ)、次いで、連結部材23によって連結されることにより(接続ステップ)、製造される(排水処理装置の製造方法)。したがって、FO膜エレメント20において、隣接するFO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gは所定の間隙を有する離間部25を備える。離間部25は、例えば、5~50mmであればよく、本実施の形態において、離間部25は20mmである。また、後述するように、離間部25に存在する排水FSがFO膜38の表面に向けて移動する水流を発生させて効率的に排水FSを濃縮するためには、離間部25はFO膜エレメントパーツ22の高さ方向(図3(A)における矢印Yの方向)における長さの1/10~1/2、好ましくは1/5~1/3に設定するのがよい。
【0039】
隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22において、駆動溶液DSを排出する一方のFO膜エレメントパーツ22の端部(以下、「排出側端部」という。)と、排出された駆動溶液DSが流入する他方のFO膜エレメントパーツ22の端部(以下、「流入側端部」という。)とは近接し、連結部材23は、隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22の排出側端部及び流入側端部を接続する流路形成部23aと、流路形成部23aによって接続された排出側端部及び流入側端部の間に形成される隙間を埋める漏水防止部23bとを備え、駆動溶液DSが流れ方向を転換するための方向転換スペース26を形成している。
【0040】
具体的に、本実施の形態では、流路形成部23aは、端部22a,22b、端部22c,22d、端部22e,22fをそれぞれ接続するとともに、端部22b,22c、端部22d,22e、端部22f,22gをそれぞれ接続している。また、流路形成部23aは、供給部21及び端部22aを接続し、端部22g及び集水部24を接続している。さらに、漏水防止部23bは端部22a,22bの間に形成される隙間、端部22c,22dの間に形成される隙間、端部22e,22fの間に形成される隙間、端部22b,22cの間に形成される隙間、端部22d,22eの間に形成される隙間、端部22f,22gの間に形成される隙間を埋めている。
【0041】
これにより、駆動溶液DSは、供給部21からFO膜エレメントパーツ22の内部に供給されたとき、端部22a,22a,22b,22b,22c,22c,22d,22d,22e,22e,22f,22f,22g,22g及び集水部24を順次経由する流路、すなわち、一本道の駆動溶液DSの流路を形成する。連結部材23の材質は加工を施しやすい樹脂製部材がよく、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニルがよい。
【0042】
図4は、図2のFO膜エレメント20を用いて実行される排水処理の手順を示すフローチャートである。
【0043】
図4の排水処理(排水処理方法)において、まず、夾雑物、溶解性有機物及び水分を含む排水FSはスクリーン11を通過し、大型の夾雑物が排水FSから除去される。大型の夾雑物が除去された排水FSは排水貯留槽12に貯留される。したがって、FO膜モジュール13は排水貯留槽12に貯留される排水FSに浸漬されている。これにより、FO膜モジュール13を構成するFO膜エレメント20も排水FSに浸漬されている。ポンプP1,P2が駆動され(S41)、駆動溶液DSは駆動溶液供給部15からFO膜モジュール13に供給される。FO膜モジュール13に供給される駆動溶液DSは、FO膜モジュール13が有するFO膜エレメント20の供給部21に供給される(S42)。供給部21には気泡を含まない駆動溶液DSが供給されるのがよく、気泡を含まない駆動溶液DSは、例えば、デガッサー(脱気手段)を用いて駆動溶液から気泡を分離除去することによって取得される。
【0044】
供給部21に供給された駆動溶液DSは、FO膜エレメントパーツ22の端部22a,22a,22b,22b,22c,22c,22d,22d,22e,22e,22f,22f,22g,22gを順次経由する(図2(B))。このとき、排水FSに含まれる水分はFO膜エレメントパーツ22の各々が有するFO膜38を透過して駆動溶液DSに混合される(S43、透過ステップ)。
【0045】
排水FSに含まれる水分は、排水FSの濃度及び駆動溶液DSの濃度の差によってFO膜38に生じる浸透圧に基づいてFO膜38を透過する。FO膜エレメント20を構成する複数のFO膜エレメントパーツ22のうち、隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22は離間部25を有する。したがって、FO膜エレメントパーツ22の各々は排水FSに浸かり、各FO膜エレメントパーツ22が有するFO膜38が排水FSに含まれる水分を透過するとき、FO膜38周辺に負圧が発生するので、各FO膜エレメントパーツ22を囲む排水FSにおいて、離間部25に存在する排水FSがFO膜38の表面に向けて移動する水流が発生する(S44、移動ステップ)。これにより、溶質濃度の低い排水FSがFO膜38の表面に常に存在するため、排水FSの溶質濃度及び駆動溶液DSの溶質濃度の濃度差は縮小せず、FO膜38に生じる浸透圧は低下しない。
【0046】
その後、排水FSに含まれていた水分であってFO膜38を透過した水分と、駆動溶液DSとが混合された集水溶液CSが集水部24から集水されるとともに(S45)、排水FSは濃縮される。集水溶液CSは集水部24から集水されると、FO膜モジュール13から排水貯留槽12の外部に排出され、本処理は終了する。
【0047】
排水貯留槽12において、濃縮された排水FSは、例えば、メタン発酵設備に送られ、発電に用いられるバイオガスの生成に活用される。また、本実施の形態において、排水貯留槽12の外部に排出される集水溶液CSは、例えば、海洋放出されるが、駆動溶液供給部15及びFO膜エレメント20の間に駆動溶液DSを貯留する駆動溶液貯留槽が設けられている場合、駆動溶液貯留槽に戻る構成にしてもよい。したがって、この場合、集水溶液CSは駆動溶液貯留槽に戻り、駆動溶液貯留槽に貯留されている駆動溶液DSと混合されるとともに、駆動溶液DSとしてFO膜エレメント20に供給され、集水溶液CSとして駆動溶液貯留槽に戻る。すなわち、集水溶液CSは駆動溶液貯留槽、FO膜エレメント20及び駆動溶液貯留槽を順次循環する。
【0048】
集水溶液CSが駆動溶液貯留槽、FO膜エレメント20及び駆動溶液貯留槽を循環することにより、駆動溶液貯留槽からFO膜エレメント20に供給される駆動溶液DSの溶質濃度は低下するので、駆動溶液貯留槽における駆動溶液DSの溶質濃度が予め設定された溶質濃度に達したとき、駆動溶液貯留槽に貯留されている駆動溶液DSは海洋放出される。本実施の形態では駆動溶液の溶質濃度が排水の溶質濃度よりも高いことを前提とするが、集水溶液CSが駆動溶液貯留槽とFO膜エレメント20の間を循環する構成とし、駆動溶液供給部15から駆動溶液貯留槽に新たに供給する駆動溶液量と駆動溶液貯留槽から放出する駆動溶液量を調節することにより、駆動溶液貯留槽内の溶質濃度(塩分濃度)を効率的に制御することができる。
【0049】
図4の排水処理によれば、FO膜エレメント20を構成する複数のFO膜エレメントパーツ22のうち、隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22は所定の間隙を有する離間部25を備える。これにより、各FO膜エレメントパーツ22が有するFO膜38が排水FSに含まれる水分を透過するとき、各FO膜エレメントパーツ22を囲む排水FSにおいて、離間部25からFO膜38への水流が発生するので、溶質濃度の低い排水FSがFO膜38に接触する。したがって、排水FSの溶質濃度及び駆動溶液DSの溶質濃度の濃度差は縮小せず、FO膜38に生じる浸透圧は低下しないので、効率的に排水FSを濃縮することができる。
【0050】
また、隣接する2つのFO膜エレメントパーツ22が離間部25を有することにより、散気装置14が気泡を排水FSに供給するとき、一部の気泡は離間部25に流入し、離間部25における排水FSの流動性が高まる。その結果、排水貯留槽12に貯留されている排水FS全体の流動性も高まる。したがって、排水貯留槽12に貯留されている排水FSは確実且つ十分に混合されるので、FO膜38に接触する排水FSを更新することができ、もって、効率的に排水FSを濃縮することができる。さらに、排水貯留槽12に貯留されている排水FSが確実且つ十分に混合されると、FO膜38の表面にファウリング物質が付着しにくく、FO膜38が目詰まりしにくいので、FO膜38を長期間使用することができる。
【0051】
従来のFO膜エレメント61,62において、FO膜63,64,65,66の膜面積は、例えば、1mであり、1mの膜面積を有するFO膜63,64,65,66が厚みのない板状の筐体であるFO膜エレメント61,62に取り付けられるとき、FO膜エレメント61,62の外郭であるフレームが簡単に歪み、FO膜エレメント61,62を容易に作製することができないという問題がある。これに対応して、FO膜エレメント20は、複数のFO膜エレメントパーツ22を備えるとともに、各FO膜エレメントパーツ22が有するFO膜38の面積は0.25m~0.4mであり、FO膜エレメント20は簡単に歪まない。したがって、FO膜エレメント20を容易に作製することができる。
【0052】
FO膜エレメント20はFO膜モジュール13に格納されて排水貯留槽12の底部に設置される。このとき、供給部21が排水貯留槽12の底部側に位置するとともに、集水部24が排水貯留槽12に貯留されている排水FSの水面側に位置するのがよい。これにより、FO膜エレメントパーツ22内部に混入した気泡は排出されやすいので、駆動溶液DS及び排水FSが確実にFO膜38に接触することができ、もって、FO膜38は無駄なく排水FSに含まれる水分を透過することができる。
【0053】
本実施の形態では、排水FSが貯留されている排水貯留槽12にFO膜エレメント20を格納するFO膜モジュール13を浸漬し、FO膜エレメント20を構成するFO膜エレメントパーツ22の内部に駆動溶液DSを供給することによって駆動溶液DS及び排水FSがFO膜38に接触しているが、排水貯留槽12に代えて駆動溶液DSが貯留されている駆動溶液貯留槽にFO膜エレメント20を格納するFO膜モジュール13を浸漬し、FO膜エレメント20を構成するFO膜エレメントパーツ22の内部に排水FSを供給することによって駆動溶液DS及び排水FSがFO膜38に接触してもよい。
【0054】
また、本実施の形態において、連結部材23がFO膜エレメントパーツ22a,22b,22c,22d,22e,22f,22gを等間隔且つ並列に連結するFO膜エレメント20を説明したが、FO膜エレメントパーツ22の数は排水貯留槽12のサイズ及び排水FSの量に基づいて決定すればよい。さらに、各FO膜エレメントパーツ22が連結部材23に脱着可能に構成されてもよい。これにより、損傷し又は汚れたFO膜エレメントパーツ22のみが新たなFO膜エレメントパーツに交換されるので、FO膜エレメント20の全部を新しいFO膜エレメント20に交換する大掛かりな作業を無くすことができる。
【0055】
ファウリング物質がFO膜38に付着して蓄積したとき、排水FSに含まれる水分がFO膜38を透過する透過速度は低下するため、FO膜エレメント20を洗浄する必要がある。具体的に、各FO膜エレメントパーツ22の内部に水道水や洗浄液が駆動溶液DSに代えて供給される。洗浄液は、例えば、硝酸水溶液、リン酸水溶液、酢酸水溶液、クエン酸水溶液、若しくはシュウ酸水溶液等の酸性水溶液、水酸化ナトリウム水溶液若しくは次亜塩素酸ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液、又は、ラウリル硫酸ナトリウム水溶液等の界面活性剤である。
【0056】
FO膜モジュール13は、複数のFO膜エレメント20からなる一体型FO膜エレメント50(図5)を有してもよい。一体型FO膜エレメント50は供給部連結材51、集水部連結材52、駆動溶液導入部53、及び集水溶液合流部54を備え、FO膜エレメント20が有する供給部21は供給部連結材51に嵌合されることによって連結し、各FO膜エレメント20が有する集水部24は集水部連結材52に嵌合されることによって連結する。駆動溶液導入部53には駆動溶液供給部15から供給される駆動溶液DSが導入される。駆動溶液導入部53に導入された駆動溶液DSは分岐して供給部連結材51に連結された各FO膜エレメント20が有する供給部21からFO膜エレメント20に供給され、その後、各FO膜エレメント20に形成されている駆動溶液DSの流路及び各集水部24を経由し、集水溶液CSとして集水溶液合流部54で合流する。集水溶液合流部54で合流した集水溶液CSは一体型FO膜エレメント50の外部に排出される。
【0057】
図5の一体型FO膜エレメント50によれば、複数のFO膜エレメント20を連結するので、処理される排水FSの量に応じて排水FSの処理に必要なFO膜38の面積を簡単に拡充することができる。
【0058】
以上、本発明について、上述の実施の形態を用いて説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0059】
FS 排水(供給溶液)
DS 駆動溶液
10 排水処理システム
13 FO膜モジュール
20 FO膜エレメント
22 FO膜エレメントパーツ
23 連結部材
25 離間部
38 FO膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6