(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121596
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】噴霧凍結造粒装置及びその利用
(51)【国際特許分類】
B01J 2/06 20060101AFI20240830BHJP
F26B 5/06 20060101ALI20240830BHJP
F25D 3/10 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
B01J2/06
F26B5/06
F25D3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028778
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】奥田 知将
【テーマコード(参考)】
3L044
3L113
【Fターム(参考)】
3L044AA03
3L044BA04
3L044CA18
3L044DB03
3L044FA09
3L044KA03
3L044KA04
3L113AA07
3L113AC21
3L113AC48
3L113AC67
3L113AC86
3L113BA36
3L113DA13
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で連続して噴霧凍結乾燥法を実施できる技術を提供する。
【解決手段】1又は2以上の溶質を含む試料液Mを噴霧可能な2つノズル14a、14bと、霧化された試料液Mを凍結するために冷却媒体によって冷却可能な凍結チャンバ52と、を備える。2以上のノズル14a、14bのうちノズル14aが凍結チャンバ52の内部に試料液Mを噴霧し、他ノズル14bが凍結チャンバ52の外部で待機するように構成されている。待機しているノズル14bでは、凍結チャンバ52の外部にあるため、凍結付着物の融解や促進又は抑制される。使用中のノズル14aに替えて待機中のノズル14bを用いることで、連続的な噴霧凍結造粒が可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、
霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、
前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されている、噴霧凍結造粒装置。
【請求項2】
さらに、前記他の1又は2以上のノズルが待機するとき、前記他の1又は2以上のノズルを加熱する加熱ユニットを備える、請求項1に記載の噴霧凍結造粒装置。
【請求項3】
前記1又は2以上の凍結チャンバは、前記1又は2以上のノズルが挿入及び退避可能なノズル通過部を備えている、請求項1に記載の噴霧凍結造粒装置。
【請求項4】
前記1又は2以上の凍結チャンバは、上方に開口し、前記開口部を介して前記冷却媒体が供給されるように構成されている、請求項1に記載の噴霧凍結造粒装置。
【請求項5】
前記1又は2以上の凍結チャンバ内に前記冷却媒体が供給されるように構成されている、請求項1に記載の噴霧凍結造粒装置。
【請求項6】
前記1又は2以上の凍結チャンバ内の前記冷却媒体量を取得するためのセンサを有しており、
取得した前記冷却媒体量が所定量以下になったとき、前記冷却媒体が前記1又は2以上の凍結チャンバに供給されるように構成されている、請求項5に記載の噴霧凍結造粒装置。
【請求項7】
噴霧凍結造粒モジュールと、
制御部と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されており、
前記制御部は、前記1又は2以上のノズルが前記試料液を噴霧中に凍結により閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記1又は2以上のノズルを、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替させて前記試料液を噴霧させる、噴霧凍結造粒システム。
【請求項8】
噴霧凍結造粒モジュールと、
前記噴霧凍結造粒モジュールによる凍結造粒物を乾燥する乾燥モジュールと、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されている、噴霧凍結乾燥装置。
【請求項9】
前記凍結チャンバは、前前記噴霧凍結造粒モジュールに対して着脱可能であり、
前記乾燥モジュールは、前記噴霧凍結造粒モジュールから取り外された前記凍結チャンバ内の凍結造粒物を乾燥するように構成されている、請求項9に記載の噴霧凍結乾燥装置。
【請求項10】
噴霧凍結造粒モジュールと、
前記噴霧凍結造粒モジュールによる凍結造粒物を乾燥する乾燥モジュールと、
制御部と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されており、
前記制御部は、前記1又は2以上のノズルが凍結により閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替させて前記試料液を噴霧させる、噴霧凍結乾燥システム。
【請求項11】
粒子の製造方法であって、
1又は2以上の溶質を含む試料液を1又は2以上のノズルで凍結チャンバに噴霧して、霧化された試料液を凍結して凍結造粒物を製造する噴霧凍結造粒工程と、
前記凍結造粒物を乾燥して乾燥粒子を取得する乾燥工程と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒工程は、前記1又は2以上のノズルで前記試料液を噴霧しつつ、前記1又は2以上のノズルと交替可能に前記試料液を噴霧可能に他の1又は2以上のノズルを前記凍結チャンバ外に待機させることを含む、方法。
【請求項12】
前記噴霧凍結造粒工程は、前記1又は2以上のノズルが閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替して前記試料液を噴霧することを含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、噴霧凍結造粒装置及びその利用等に関する。
【背景技術】
【0002】
噴霧凍結乾燥(Spray Freeze-Drying;SFD)法は、微粒子化しようとする溶質を含む試料液を、ノズルから液体窒素などの冷却媒体中に噴霧し、造粒して得られる氷滴を含む凍結造粒物を、さらに乾燥して液体を昇華させることで、乾燥した粒子を含む乾燥粉末を得る方法である。低温で微細な中空多孔質の微粒子などを得ることができるため、種々の用途の粉末材料として有望である。
【0003】
一方で、噴霧凍結造粒ステップで用いる試料液を噴霧するノズルにおいて、試料液が凍結してノズル内などに付着してノズルを閉塞させるという問題がある。ノズルが閉塞すると、試料液の噴霧及び凍結造粒を停止せざるを得ないため、連続的な造粒及び大量の造粒を阻害していた。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば、ノズルに清掃液を噴霧して凍結付着物を除去することや(特許文献1)、ノズルの吐出部近傍に凍結防止ガスを供給するガス供給部を備えるようにすることが記載されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-153560号公報
【特許文献2】国際公開第2019/175954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの手法では、ノズルの閉塞解消のために固有の手段と配管系を備えることとなり、装置全体及び噴霧機構の近傍の構造を複雑化するおそれもある。また、これらの手法では、噴霧凍結機構の噴霧部近傍においてノズルを加熱するものであって、噴霧凍結プロセスにこうした噴霧部近傍においてノズルを加熱することが影響を及ぼす場合もある。
【0007】
本明細書は、簡易な構造で連続して噴霧凍結造粒を実施できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、連続して噴霧凍結造粒を行うのにあたり、複数のノズルのうち、一部のノズルを噴霧凍結造粒に用い、残部の少なくとも一部のノズルを凍結チャンバの外部で待機させることで、一旦、試料液の凍結付着物などにより閉塞した又は閉塞しそうなノズルであっても、待機中にノズルの閉塞を解消又は回避できることがわかった。また、使用中のノズルを、ノズルの閉塞が解消等された待機中のノズルで交替することで、閉塞しない状態のノズルを用いて継続的な噴霧凍結が可能であることがわかった。こうした複数のノズルの交替利用は、簡易にかつ迅速にノズルの閉塞を解消することができ、結果として、噴霧凍結造粒による連続的な造粒及び乾燥粉末の効率的な製造に貢献するという知見を得た。本明細書によれば、これらの知見に基づき、以下の手段が提供される。
【0009】
[1]1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、
霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、
前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されている、噴霧凍結造粒装置。
[2]さらに、前記他の1又は2以上のノズルが待機するとき、前記他の1又は2以上のノズルを加熱する加熱ユニットを備える、[1]に記載の噴霧凍結造粒装置。
[3]前記1又は2以上の凍結チャンバは、前記1又は2以上のノズルが挿入及び退避可能なノズル通過部を備えている、[1]又は[2]に記載の噴霧凍結造粒装置。
[4]前記1又は2以上の凍結チャンバは、上方に開口し、前記開口部を介して前記冷却媒体が供給されるように構成されている、[1]~[3]のいずれかに記載の噴霧凍結造粒装置。
[5]前記1又は2以上の凍結チャンバ内に前記冷却媒体が供給されるように構成されている、[1]~[4]のいずれかに記載の噴霧凍結造粒装置。
[6]前記1又は2以上の凍結チャンバ内の前記冷却媒体量を取得するためのセンサを有しており、
取得した前記冷却媒体量が所定量以下になったとき、前記冷却媒体が前記1又は2以上の凍結チャンバに供給されるように構成されている、[5]に記載の噴霧凍結造粒装置。
[7]噴霧凍結造粒モジュールと、
制御部と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されており、
前記制御部は、前記1又は2以上のノズルが前記試料液を噴霧中に凍結により閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記1又は2以上のノズルを、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替させて前記試料液を噴霧させる、噴霧凍結造粒システム。
[8]噴霧凍結造粒モジュールと、
前記噴霧凍結造粒モジュールによる凍結造粒物を乾燥する乾燥モジュールと、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されている、噴霧凍結乾燥装置。
[9]前記凍結チャンバは、前記噴霧凍結造粒モジュールに対して着脱可能であり、
前記乾燥モジュールは、前記噴霧凍結造粒モジュールから取り外された前記凍結チャンバ内の凍結造粒物を乾燥するように構成されている、[8]に記載の噴霧凍結乾燥装置。
[10]噴霧凍結造粒モジュールと、
前記噴霧凍結造粒モジュールによる凍結造粒物を乾燥する乾燥モジュールと、
制御部と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒モジュールは、1又は2以上の溶質を含む試料液を噴霧可能な2以上のノズルと、霧化された前記試料液を凍結するために冷却媒体によって冷却可能な1又は2以上の凍結チャンバと、を備え、前記2以上のノズルのうち1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの内部に前記試料液を噴霧し、他の1又は2以上のノズルが前記1又は2以上の凍結チャンバの外部で待機するように構成されており、
前記制御部は、前記1又は2以上のノズルが凍結により閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替させて前記試料液を噴霧させる、噴霧凍結乾燥システム。
[11]粒子の製造方法であって、
1又は2以上の溶質を含む試料液を1又は2以上のノズルで凍結チャンバに噴霧して、霧化された試料液を凍結して凍結造粒物を製造する噴霧凍結造粒工程と、
前記凍結造粒物を乾燥して乾燥粒子を取得する乾燥工程と、
を備え、
前記噴霧凍結造粒工程は、前記1又は2以上のノズルで前記試料液を噴霧しつつ、前記1又は2以上のノズルと交替可能に前記試料液を噴霧可能に他の1又は2以上のノズルを前記凍結チャンバの外部に待機させることを含む、方法。
[12]前記噴霧凍結造粒工程は、前記1又は2以上のノズルが閉塞するのに先だって前記試料液の噴霧を停止し、前記他の1又は2以上のノズルであって閉塞していないノズルで交替して前記試料液を噴霧することを含む、[11]に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本明細書に開示される噴霧凍結乾燥システムの一例を示す図である。
【
図2】噴霧凍結乾燥システムにおける噴霧凍結造粒プロセスのフローの一例を示す図である。
【
図3】噴霧凍結乾燥システムにおける噴霧凍結造粒プロセスのフローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に開示される噴霧凍結乾燥システム(以下、単に、本システムともいう。)について、図面を参照して説明する。
図1には、噴霧凍結乾燥システムの一例を示し、
図2及び
図3には、噴霧凍結乾燥システムにおける噴霧凍結造粒プロセスのフローの一例を示す。
【0012】
図1に示す本システム2は、例えば、医薬品原料及び賦形剤などを溶質として含有する試料液Mを噴霧凍結して造粒し、その後、この凍結造粒物の液性成分を昇華(乾燥)させて医薬品としての多孔質微粒子を含む粉末を製造するシステムである。なお、本システム2においては、試料液Mとしては、特に限定しないで、噴霧凍結乾燥法に適用可能な公知の食品、医薬品、農薬、化学薬品、金属材料、工業用材料の分野における各種原料を溶質として含むことができる。また、試料液Mの溶媒は、冷却媒体によって凍結し、減圧により昇華する溶媒であればよい。特に限定するものではないが、例えば、水、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~6程度のアルコールなどを用いることができる。
【0013】
図1に示すように、本システム2は、噴霧凍結造粒モジュール10と、乾燥モジュール80と、制御部100と、を備えている。
【0014】
<噴霧凍結造粒モジュール>
噴霧凍結造粒モジュール10は、噴霧ユニット12と、凍結ユニット50と、を備えている。
【0015】
<噴霧ユニット>
噴霧ユニット12は、2つのノズル14a、14bと、試料液Mの試料液供給部18と、キャリアガス供給部28と、ノズル駆動部38と、ノズル加熱部48を備える。
【0016】
2つのノズル14a、14bは、いずれも二流体ノズルとして構成されている。なお、ノズル14a、14bは二流体ノズルに限定するものではなく、例えば、一流体加圧ノズル、超音波ノズルなど、公知のノズル機構を適宜用いることができる。ノズル14a、14bは、下方に吐出口を開口するようにブラケット16に対して固定されている。ノズル14a、14bは、本明細書に開示される2以上のノズルの一例である。
【0017】
試料液Mを供給する試料液供給部18は、ノズル14a、14bから、試料液Mを噴霧するために、ノズル14a、14bに接続されている。試料液供給部18は、試料液Mの充填容器20と試料液Mを供給する試料液供給管22、23a、23bと、試料液供給管23a、23bに備えるバルブ24a、24bと、を備えている。バルブ24a、24bは、制御部100からの信号によって開閉等が制御されるようになっている。
【0018】
キャリアガス供給部28は、試料液Mをノズル14a、14bから噴霧するためのガスを供給するために、ノズル14a、14bに接続されている。キャリアガス供給部28は、キャリアガスを貯蔵するボンベ30とキャリアガス供給管32、33a、33bと、キャリアガス供給管33a、33bに備えるバルブ34a、34bとを備えている。バルブ34a、34bは、制御部100からの信号によってキャリアガスの供給量等が制御されるようになっている。
【0019】
ノズル駆動部38は、ノズル14a、14bを水平方向に所定間隔で配置して取り付けたブラケット16を、上下左右方向に駆動して、ノズル14a、14bを同時に所定位置に移動させる。ノズル駆動部38は、ブラケット16を上下方向に移動可能に支持する支持体42と、ブラケット16を左右方向に移動可能に支持する支持体44と、を備えている。さらに、支持体42に対して支持体44を上下移動可能とし、ブラケット16を支持体44に対して左右移動可能とする図示しないモータを備えている。モータは、制御部100からの信号によりその駆動タイミング、駆動方向及び駆動距離が制御されるようになっている。
【0020】
ノズル加熱部48a、48bは、ノズル14a、14bをそれぞれ凍結チャンバ52の左右の外側で加熱するように構成されている。ノズル加熱部48a、48bは、例えば、ヒートブロックなど、ノズル14a又はノズル14bを収容できる貫通孔若しくは凹部又はノズル14a又はノズル14bに向けた発熱体を備える固相ヒータであってもよい。こうした固相ヒータは、電熱ヒータ他、公知のヒータが用いられる。
図1に示すノズル加熱部48a、48bは、それぞれ、ノズル14a、14bを指向する側に凹状となったチャネル部を有しており、このチャネル部の表面が加熱されている固相ヒータを用いている。ノズル加熱部48a、48bは、固相ヒータに限定するものではなく、この他、送風(温風)ヒータ、温水噴霧、温浴など公知の加熱手段を単独であるいは組み合わせて用いることができる。ノズル加熱部48a、48bは、本明細書に開示されるノズル加熱ユニットの一例である。
【0021】
ノズル加熱部48a、48bによるノズル14a、14bの加熱は、試料液の除去及び凍結物の融解除去などができればよく、特に限定されないが、例えば、15℃以上25℃以下の常温や、1℃以上30℃以下の室温、30℃超70℃以下などの温度域であってもよく、ノズル14a、14bが凍結チャンバ52外で待機する時間等を考慮して適宜設定される。
【0022】
また、ノズル加熱部48a、48bは、ノズル14a、14bを外部から加熱するものである。こうすることで、ノズル14a、14bに対する加熱を容易に行うことができ、噴霧ユニット12や噴霧凍結造粒モジュール10の構造を複雑化することが回避される。
【0023】
ノズル加熱部48a、48bには、それぞれ図示しないセンサが備えられている。ノズル加熱部48a、48bの温度は、制御部100にフィードバックされ、制御部100によってノズル加熱部48a、48bの温度が制御されるほか、加熱の開始及び終了が制御される。
【0024】
<凍結ユニット>
凍結ユニット50は、凍結チャンバ52と、撹拌部54と、冷却媒体供給部58と、冷却媒体量センサ66と、を備えている。
【0025】
凍結チャンバ52は、ノズル14a又は14bにより、試料液Mが噴霧されて、試料液Mを冷却媒体により冷却し凍結して氷滴を形成し造粒するように構成されている。凍結チャンバ52は、例えば、金属(SUS)などの容器として形成されており、上方が開口されている。また、凍結チャンバ52は、それ自体を、凍結ユニット50及び噴霧凍結造粒モジュール10に配置及びこれらから取り外すことが可能に構成されている。
【0026】
図1に示すように、凍結チャンバ52は、ノズル駆動部38によって、ノズル14a、14bのいずれか一方が凍結チャンバ52の開口部52aから挿入されて所定の噴霧位置で噴霧可能に配置されるようになっており、他方が所定のノズル加熱部48a又は48bによって所定の待機位置で加熱可能に配置されるようになっている。
【0027】
凍結チャンバ52内には、後述するように冷却媒体が直接供給されて、凍結チャンバ52内が冷却される。冷却媒体としては、特に限定するものではなく、公知の冷却媒体を用いることができる。本システム2においては、開放状態の凍結チャンバ52を用いるため、液体の冷却媒体を用いることが好ましい。本システム2においては、液体窒素を用いている。なお、液体の冷却媒体としては、特に限定するものではなく、液体窒素のほか、液体ヘリウム、液体アルゴンなどを用いることができる。
【0028】
凍結チャンバ52は、内部の冷却媒体及び試料液の噴霧凍結物を撹拌するための撹拌部54を備える。撹拌部54は、本システム2においては、磁力を利用して凍結チャンバ52の底部に配置した撹拌子54aを回転させるスターラ54bを用いており、スターラ54b上に凍結チャンバ52が載置されている。なお、撹拌部54は、これに限定するものではなく、他の公知の各種の撹拌手段を用いることができる。制御部100は、スターラ54bの作動開始/停止のほか、回転数を制御する。
【0029】
凍結チャンバ52の外周には、凍結チャンバ52を保冷するようにジャケット56を備えている。ジャケット56は、公知の断熱性材料及び/又は真空構造体などで構成されている。なお、ジャケット56は、凍結チャンバ52の結露、結氷を防止する目的もある。
【0030】
冷却媒体供給部58は、冷却媒体を凍結チャンバ52内部に直接供給する。冷却媒体供給部58は、冷却媒体を充填した貯蔵部であるボンベ60と、冷却媒体供給管62と、バルブ64を備えている。ボンベ60は、冷却媒体である液体窒素が充填された商業的に入手可能なボンベのほか、当業者であれば適宜準備することができる。また、冷却媒体供給部58は、冷却媒体を凍結チャンバ52に供給するために、ポンプを備えていてもよい。
【0031】
冷却媒体供給管62は、ボンベ60から凍結チャンバ52に冷却媒体を直接供給する。冷却媒体供給管62は、凍結チャンバ52の開口部52aから、凍結チャンバ52の底部に向かって所定高さ位置にまで到達し、下方に開口する供給口を備えている。
【0032】
バルブ64は、制御部100によってその開閉タイミング及び開度が制御されるようになっている。
【0033】
冷却媒体量センサ66は、凍結チャンバ52内の冷却媒体量を取得するために必要な指標を検知する。例えば、冷却媒体量センサ66は、特に限定するものではないが、凍結チャンバ52が上部開口していることなどから、冷却媒体が供給された凍結チャンバ52の質量を検出する、電子天秤などの質量センサとすることができる。なお、冷却媒体量センサ66は、特に限定するものではなく、冷却媒体の形態(液体又はガス)にもよるが、例えば、冷却媒体が液体のときには、フロート式、ディスプレーサー式、ガイドバルス式、光学式、超音波式、レーザー式などの各種レベルセンサを採用することができる。
【0034】
噴霧凍結乾燥が進んで液面が上昇して、ノズル14a等と凍結チャンバ52における冷却媒体の液面との間隔が短くなる場合がある。冷却媒体量センサ66は、試料液Mの積算噴霧量に基づいて液面上昇距離を算出して、ノズル14a等の位置を経時的に上昇させることもできる。
【0035】
冷却媒体量センサ66が検知した質量は、凍結チャンバ52及び当該チャンバ52内に存在する冷却媒体及び凍結造粒物の総質量である。冷却媒体量センサ66は、この総質量を制御部100に出力する。冷却媒体量センサ66を、質量センサとする場合、凍結チャンバ52内で凍結して逐次蓄積される凍結造粒物の質量を考慮する必要がある。制御部100は、センサ66から取得した総質量と、試料液Mの積算噴霧量などに基づいて凍結造粒物量を算出して、前記総質量からこの凍結造粒物量を差分して冷却媒体残量をモニタする。制御部100は、この冷却媒体残量に基づいて冷却媒体の補充タイミング及び補充量などを決定する。
【0036】
<乾燥モジュール>
乾燥モジュール80は、凍結チャンバ52内に凍結により生成し蓄積した凍結造粒物から水分を除去して乾燥する。乾燥モジュール80は、乾燥ユニット82と、を備えている。乾燥ユニット82は、噴霧ユニット12から取り外した凍結チャンバ52を収容して真空吸引可能な乾燥チャンバ84と、真空吸引部86と、コールドトラップ88と、を備えている。
【0037】
乾燥チャンバ84は、凍結チャンバ52を出し入れ可能な密閉容器に形成され、凍結チャンバ52の凍結造粒物の水分が昇華により除去されるように構成されている。乾燥チャンバ84は、凍結チャンバ52を収容可能であり、真空吸引部86によって内部が吸引されて減圧可能に形成されている。なお、水分の昇華を促進するために、乾燥チャンバ84は、加熱されるように構成されていてもよい。乾燥チャンバ84及びコールドトラップ88内の圧力は、制御部100に出力される。
【0038】
真空吸引部86は、例えば、常温や室温の近傍で水分を昇華可能な程度に乾燥チャンバ84内を減圧できるものであればよく、特に限定しないで公知の真空吸引装置を用いることができる。真空吸引部86は、コールドトラップ88を介して乾燥チャンバ84に接続されている。真空吸引部86とコールドトラップ88との間には図示しないレギュレータが備えられており、乾燥チャンバ84及びコールドトラップ88の内圧が調整されるようになっている。
【0039】
コールドトラップ88は、凍結造粒物から昇華した水分を再度氷の状態にする。こうすることで、気体となって膨張した水分を効果的に除去できる。コールドトラップ88には、図示しない冷凍部を備えており、例えば、ヘリウムガスなどを用いて、コールドトラップ88の外部空間を冷却するようになっている。コールドトラップ88の内部の温度を検知する温度センサ(図示せず)を備えており、温度センサによって検知された温度は、制御部100に出力される。
【0040】
<制御部>
制御部100は、少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有するいわゆるコンピュータとして構成されている。制御部100は、噴霧凍結ステップにおいて、連続的に試料液Mを噴霧凍結するために、ノズル14a、14bの位置制御、ノズル加熱部48a、48bの温度制御、試料液Mの噴霧量(噴霧速度)、噴霧時間等の制御、凍結チャンバ52内の温度制御及び冷却媒体量の制御を行う。制御部100のメモリには、これらの制御を行いつつ、連続的な噴霧凍結による造粒プロセスのためのプログラム及び各種設定値が格納されている。
【0041】
制御部100は、また、乾燥チャンバ84及びコールドトラップ88の内圧に基づいて、真空吸引部86を調節するとともに、コールドトラップ88の温度をモニタして適正温度で冷却するよう、冷凍部を制御する。制御部100のメモリには、噴霧ユニット12で得られた凍結造粒物を乾燥する乾燥プロセスのためのプログラムが格納されている。
【0042】
本システム2は、特に、噴霧凍結による造粒を連続的に行うことが特徴である。噴霧凍結による造粒が、噴霧凍結乾燥のボトルネックであり、かかる噴霧凍結造粒ステップを連続的に行って効率的に凍結造粒物を得ることにより、噴霧凍結乾燥の効率性に貢献する。
【0043】
本システム2が上記の構成を備えることにより、ノズル14a、14bを交替で使用して、ノズル14a、14bにおける試料液Mの凍結付着物などによる閉塞を抑制又は回避して、噴霧凍結を連続的に行うプロセスを実施できる。
【0044】
例えば、ノズル駆動部38を作動させて、ノズル14a、14bのいずれか一方を凍結チャンバ52内の所定位置に配置し、他方のノズルを凍結チャンバ52の外部の所定位置に配置する。凍結チャンバ52に配置したノズル(以下、使用ノズルという。)を用いて、試料液Mを噴霧して霧化された試料液Mを凍結して凍結造粒物を製造する一方、他方のノズル(待機ノズル)を、ノズル加熱部48で加熱することで、ノズル閉塞の原因である待機ノズルの吐出口などにおける噴霧凍結時の凍結付着物を融解除去する。使用ノズルの噴霧凍結開始時(概ね、待機ノズルの待機(又は加熱)開始時でもある)から所定時間経過後、使用ノズルにおける試料液Mの噴霧を停止し、ノズル駆動部38を作動させて、使用ノズルと待機ノズルを交替し、待機ノズルによる試料液Mの噴霧を開始する。
【0045】
凍結付着物が除去された待機ノズルを新たに使用ノズルとして用いて試料液Mの噴霧を再開することで、噴霧時間を大きく開けることなくノズルの移動時間のみで噴霧凍結を連続的に実施できる。上記所定時間は、例えば、使用ノズルが閉塞しないで噴霧が維持でき、かつ、待機ノズルの閉塞が解消する時間である。上記所定時間は、例えば、ノズル加熱部48による加熱強度の増強などにより待機ノズルの閉塞解消時間を短縮することができる。試料液Mの噴霧量やキャリアガス量などを調節することで使用ノズルの噴霧可能時間を延長することができる。
【0046】
こうして交替使用するノズル14a、14bの使用時間(待機時間)、噴霧速度及び総噴霧時間、加熱温度などは、予め、所望の溶質を含有する試料液Mについて予備実験を行い、設定しておくことができる。
【0047】
また、本システム2は、凍結チャンバ52から蒸発する冷却媒体である液体窒素を適宜補給して、凍結チャンバ52において噴霧凍結に必要な液体窒素量を確保して、噴霧凍結を連続的に行うための別のプロセスも実施できる。
【0048】
例えば、制御部100は、冷却媒体量センサ66が検知した凍結チャンバ52、冷却媒体及び凍結造粒物を含む質量及び試料液Mのその時点までの積算噴霧量に基づく凍結造粒物量から、凍結チャンバ52内の冷却媒体残量を取得する。試料液Mの噴霧凍結予備実験などに基づく、試料液Mの噴霧凍結を維持するのに有効な冷却媒体の上限量及び下限量が、制御部100のメモリに格納されている。制御部100は、取得した冷却媒体残量が下限量を下回ったとき、冷却媒体供給部58のバルブ64を制御して、冷却媒体を、冷却媒体供給管62を介して凍結チャンバ52に、上限量まで供給する。
【0049】
こうすることで、冷却媒体の減少による冷却不十分によって試料液Mの噴霧凍結の停止が回避され、噴霧凍結を連続的に実施できる。
【0050】
次に、本システム2を用いて、医薬品原料を含む試料液Mを噴霧凍結して造粒し、その後乾燥して多孔質粒子を得る一連のプロセスについて、
図2及び
図3に示すフローを用いて説明する。
図2は、ノズル14a、14bの交替使用及び加熱による試料液Mの連続的な噴霧凍結造粒プロセス(工程)のフローであり、
図3は、凍結チャンバ52における冷却媒体量の補充による試料液Mの連続的な噴霧凍結造粒プロセス(工程)のフローである。本システム2においては、試料液Mの噴霧凍結造粒に際し、これら2つのプロセスを同時に実施する。多孔質粒子は、本明細書に開示される乾燥粒子の一例である。
【0051】
なお、制御部100のメモリには、ノズル14a、14bの噴霧時及び待機時の位置、ノズル14a、14bの使用時間(待機時間)、ノズル移動時間(噴霧休止時間)、試料液Mの噴霧速度、総噴霧時間、総噴霧量、冷却媒体の下限量及び上限量、並びにノズル加熱部48a、48bの加熱温度は予め設定されており、制御部100のメモリに格納されているものとする。また、制御部100は、後述するように、試料液Mの積算噴霧時間又は積算噴霧量もモニタしているものとする。また、凍結チャンバ52には、噴霧開始に先立って冷却媒体供給部58により、冷却媒体の上限量が供給され十分に冷却されているものとする。ノズル加熱部48a、48bは、既に十分に加熱されているものとする。
【0052】
まず、
図2に示すフローについて説明する。制御部100は、ノズル駆動部38の支持体42、44を作動させて、ノズル14a、14bが固定されたブラケット16を移動させて、ノズル14aを凍結チャンバ52の所定の噴霧位置に配置し、ノズル14bを凍結チャンバ52の外部のノズル加熱部48b近傍の所定の待機位置(加熱位置)に配置する(ステップS10)。
【0053】
次いで、制御部100は、スターラ54bを作動させて撹拌子54aを回転させるとともに、試料液供給管23a上のバルブ24aを所定量開放し、キャリアガス供給管33a上のバルブ34aを所定量開放して、ノズル14aにより所定速度で試料液Mの凍結チャンバ52内への噴霧を開始する(ステップS20)。なお、待機位置に配置されたノズル14bは、ノズル加熱部48bによる加熱が開始されている。
【0054】
制御部100は、予め設定したノズル14aによる試料液Mの噴霧時間が経過したかどうかを判定する(ステップS30)。噴霧時間が経過していないときは、引き続き、噴霧時間の経過の判定を行う(ステップS30)を繰り返す。噴霧時間が経過したとき、制御部100は、バルブ24a、34aを制御して、ノズル14aからの試料液Mの噴霧を停止する(ステップS40)。
【0055】
続いて、制御部100は、ノズル駆動部38を作動させて、ブラケット16を移動させて、ノズル14aを凍結チャンバ52の外部のノズル加熱部48a近傍の所定の待機位置に配置し、ノズル14bを凍結チャンバ52の所定の噴霧位置に配置する(ステップS50)。
【0056】
次いで、制御部100は、試料液供給管23b上のバルブ24bを所定量開放し、キャリアガス供給管33b上のバルブ34bを所定量開放して、ノズル14bにより所定速度で試料液Mの凍結チャンバ52内への噴霧を開始する(ステップS60)。なお、待機位置に配置されたノズル14aは、ノズル加熱部48aによる加熱が開始されている。
【0057】
制御部100は、予め設定したノズル14bの噴霧時間が経過したかどうかを判定する(ステップS70)。噴霧時間が経過していないときは、引き続き、噴霧時間の経過を判定するステップを繰り返す。制御部100は、噴霧時間が経過したとき、バルブ24b、34bを制御して、ノズル14bからの試料液Mの噴霧を停止する(ステップS80)。さらに、制御部100は、ステップS10に戻って、ノズル14aを噴霧位置に再配置させるとともにノズル14bを待機位置に再配置させ、ステップS20~ステップS80を実行する。
【0058】
制御部100は、以上のフローのプロセスとは別に、試料液Mの積算噴霧時間又は積算噴霧量をモニタしている。試料液Mの全量の噴霧を終了していたら、ノズル14a等への試料液M及びキャリアガスの供給を停止し、ノズル加熱部48a、48bの加熱を停止し、ノズル14a、14bを初期位置に配置し、スターラ54bを停止して、噴霧凍結造粒プロセスを終了する。
【0059】
次に、
図3に示すフローについて説明する。制御部100は、冷却媒体量センサ66が検知した凍結チャンバ52、冷却媒体及び凍結造粒物を含む総質量及び試料液Mのその時点までの積算噴霧量に基づく凍結造粒物量から、凍結チャンバ52内の冷却媒体残量を取得する(ステップS110)。
【0060】
制御部100は、冷却媒体残量が予め設定した下限量を下回っているかどうかを判定する(ステップS120)。冷却媒体量が下限量以上のときには、ステップS110に戻る。下限量を下回っているときには、制御部100は、冷却媒体を冷却媒体供給管62上のバルブ64を制御して上限量で凍結チャンバ52に補充し(ステップS130)、その後、ステップS110に戻る。
【0061】
制御部100は、既述のとおり、以上のフローのプロセスとは別に、試料液Mの積算噴霧時間又は積算噴霧量をモニタしている。試料液Mの全量の噴霧を終了していたら、この冷却媒体補充プロセスを終了する。
【0062】
以上のようにして、試料液Mの全量の噴霧凍結造粒工程を終了することにより、凍結チャンバ52内に、所望の溶質の凍結造粒物が取得される。オペレータは、凍結チャンバ52を、噴霧凍結造粒モジュール10から外して、乾燥モジュール80の乾燥チャンバ84に収容する。オペレータが、適当な入力装置から、乾燥工程の実行開始命令を入力すると、制御部100は、試料液Mの凍結造粒物につき、予め設定された、乾燥チャンバ84等の内圧及びコールドトラップ88の冷却温度で乾燥し、水分を昇華させ、凍結造粒物から乾燥粉末を取得する。
【0063】
本システム2によれば、ノズル14a、14bの交替時間、すなわち、それぞれが噴霧位置及び待機位置(加熱位置)に移動する時間は、試料液Mの噴霧が停止されるが、それ以外は、連続的な試料液Mの噴霧が可能となっている。また、本システム2によれば、待機ノズルを、ノズル加熱部で加熱するため、凍結チャンバ52で凍結したあるいは凍結しようとしているノズルであっても、速やかに凍結付着物を融解して、閉塞を回避又は抑制できる。このため、噴霧凍結造粒を、少ないノズル本数、本システム2では、最低の2つのノズル14a、14bで実施することができる。
【0064】
また、本システム2によれば、ノズル14a、14bは、予め、一方が所定の噴霧位置にあるとき他方が所定の待機位置に配置されるようにブラケット16に固定されている。このため、ノズル駆動部38によるノズル14a、14bの位置制御が簡素化され結果として移動時間を短縮化できており、噴霧凍結造粒の連続的実施に大きく貢献している。
【0065】
また、本システム2によれば、凍結チャンバ52内でノズルを加熱したり、送風したり、送液することがないため、凍結チャンバ52内における試料液Mの噴霧凍結造粒に影響を及ぼすことがない。また、送液や送風のための配管系などを凍結チャンバ52まで到達させる必要がなく、噴霧凍結造粒モジュールの構造を複雑化することが回避されている。
【0066】
また、本システム2によれば、凍結チャンバ52は上方が開口する容器であり、凍結チャンバ52自体の構造も簡素化することができる。なお、このために冷却媒体として液体の冷却媒体を用い、蒸発量も多いが、冷却媒体の補充が、噴霧凍結造粒の連続的実施に貢献している。
【0067】
以上の実施形態では、ノズル14a、14bを用いることとしたが、これに限定するものではなく、3又は4以上のノズル、さらに多数のノズルを準備して、1又は2以上のノズルを1つの凍結チャンバ52に適用してもよい。多数の待機ノズルを準備することで、ノズル加熱部を要しなくても、凍結チャンバ52の外部で室温近傍で待機するだけで、凍結付着物を融解又は生成を抑制できる場合もある。
【0068】
また、以上の実施形態では、ノズル14a、14bを加熱するノズル加熱部48a、48bを、凍結チャンバ52の外部に備えるようにしたが、これに限定するものではない。例えば、ノズル14a、14bの先端部などの近傍においてノズル加熱部48a、48bを備えるものとし、凍結チャンバ52の外部においてノズル加熱部48a、48bを作動させて、ノズル14a、14bを加熱するようにしてもよい。
【0069】
また、以上の実施形態では、単一の凍結チャンバ52を用いることとしたがこれに限定するものではなく、2以上の凍結チャンバに同時に又は連続してノズルを適用して同時又は連続的に噴霧凍結造粒を実施するようにしてもよい。また、凍結チャンバ52は、それ自体、乾燥粉末の容器であってもよい。
【0070】
3以上のノズルを用いる場合及び/又は複数の凍結チャンバを用いる場合、ノズルを保持するブラケットの形状やノズル駆動部の動作範囲や形態も、移動距離等を抑制するように適宜変更される。
【0071】
以上の実施形態では、ノズル駆動部38を設けてノズル14a、14bを凍結チャンバ52に対して移動させるものとしたがこれに限定するものではない。例えば、凍結チャンバ52を含む凍結ユニット50をノズルに対して移動させるように構成されていてもよい。
【0072】
以上の実施形態では、凍結チャンバ52は、開口容器としたがこれに限定するものではく、密閉容器としてもよい。この場合、ノズル14a、14b等の出し入れの際に、チャンバ52の上部にノズルが通過する開口部であるノズル通過部を備えるようにしてもよい。ノズル通過部は、ノズルの出し入れに際して開口し、ノズルが完全退避したとき及びノズルが挿入されたときは、完全にシールされるように、構成される。凍結チャンバ52を密閉容器とすることで、液体窒素を蒸発させた窒素ガス、液体アルゴンを蒸発させたアルゴンガス、ドライアイス、二酸化炭素ガス、直膨式又はチラー式により大気を冷却した冷却ガスなどのガス状の冷却媒体を利用するのに都合がよい場合や冷却状態の維持の観点から都合が良い場合がある。
【0073】
以上の実施形態では、凍結チャンバ52は、その内部に冷却媒体を供給するものとしたが、これに限定するものではない。例えば、凍結チャンバ52を、周囲に設けたジャケット56を冷却媒体で冷却することにより間接的に冷却することを併用したり、あるいは間接冷却のみを用いることが有利な場合もある。
【0074】
以上の実施形態では、ノズル14a、14bの待機位置でノズル14a、14bを加熱するものとしたが、これに限定するものではない。例えば、ノズル14a、14bを、適宜洗浄する洗浄液(例えば、試料液Mの溶媒など)や凍結物融解液による除去、振動、エアジェットなどによる除去を単独であるいは適宜組み合わせて、ノズル14a、14bの凍結付着物を除去するようにしてもよい。
【0075】
以上の実施形態では、凍結チャンバ52を、別途、乾燥モジュール80にオペレータが移動させるものとしたがこれに限定するものではなく、例えば、自動搬送装置等により凍結チャンバ52を乾燥モジュール80に搬送するものであってもよい。また、凍結チャンバ52が密閉可能な場合には、凍結チャンバ52自体を引き続き乾燥チャンバ84として用いうるような装置形態も可能であり、当業者であれば、こうした形態に適宜変更することができる。
【0076】
以上の実施形態では、制御部100は、予め予備実験によりノズル14a、14bが閉塞しない噴霧時間をメモリに格納するものとし、これにより、噴霧凍結造粒プロセスを制御するものとしたが、これに限定するものではなく、ノズル14a、14bの閉塞の予兆を、噴霧圧力や噴霧量などにより検出するセンサを設けるなどして検知して、ノズル14a、14bの使用ノズルと待機ノズルとの交替時期を判定しつつ噴霧凍結造粒プロセスを実施するものとしてもよい。
【0077】
以上の実施形態では、噴霧凍結乾燥システム2を例示して説明したが、本システム2は、噴霧凍結乾燥装置としても実施できる。また、本システム2の噴霧凍結造粒モジュール10は、噴霧凍結造粒装置としても実施できる。さらに、本システム2が実施する噴霧凍結乾燥プロセス及びその一部である噴霧凍結造粒プロセスは、それぞれ噴霧凍結乾燥による粒子の製造方法及び凍結造粒物の製造方法としても実施できる。
【符号の説明】
【0078】
2 噴霧凍結乾燥システム、10 噴霧凍結造粒モジュール、12 噴霧ユニット、14a、14b ノズル、16 ブラケット、18 試料液供給部、20 充填容器、22、23a、23b 試料液供給管、24a、24b バルブ、28 キャリアガス供給部、30 キャリアガスボンベ、32、33a、33b キャリアガス供給管、34a、34b バルブ、38 ノズル駆動部、42、44 支持体、48a、48b ノズル加熱部、50 凍結ユニット、52 凍結チャンバ、54 撹拌部、54a 撹拌子、54b スターラ、56 ジャケット、58 冷却媒体供給部、60 ボンベ、冷却媒体供給管62、64バルブ、66 冷却媒体量センサ、80 乾燥モジュール、82 乾燥ユニット、84 乾燥チャンバ、86 真空吸引部、88 コールドトラップ、100 制御部