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  • 特開-クランプ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121620
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/06 20060101AFI20240830BHJP
   B23Q 3/00 20060101ALI20240830BHJP
   F16B 2/16 20060101ALI20240830BHJP
   B25B 5/04 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B23Q3/06 302K
B23Q3/00 A
F16B2/16 A
B25B5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028820
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】春名 陽介
【テーマコード(参考)】
3C016
3C020
3J022
【Fターム(参考)】
3C016AA03
3C016CA07
3C016CB02
3C016CC02
3C016CE05
3C020CC07
3C020EE03
3J022DA12
3J022DA16
3J022EA02
3J022EB03
3J022EC02
3J022ED02
3J022FA01
3J022GA06
3J022GB03
3J022GB05
3J022GB23
(57)【要約】
【課題】高圧流体を駆動に必要としないクランプ装置を提供すること。
【解決手段】クランプ装置は、ハウジング(1)を構成する支持筒部材(4)に挿入される、先端部にくさび部(17)が形成された操作ロッド(14)であって、クランプロッド(9)を軸方向のうちの基端側方向へ移動させる操作ロッド(14)と、クランプロッド(9)の筒孔(12)の内部に配置され、クランプロッド(9)を軸方向のうちの先端側方向へ移動させる付勢手段(例えば、バネ21)とを備える。また、クランプ装置は、くさび面17a(くさび部17)、係合部材(例えば、ボール18)、および受け面20で構成されるくさび機構を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)のハウジング本体(3)内に軸方向へ移動可能となるように挿入されるクランプロッド(9)であって、前記軸方向に延びる筒孔(12)を有するクランプロッド(9)と、
前記クランプロッド(9)の先端部に取り付けられるクランプアーム(7)と、
前記ハウジング(1)の一部である支持筒部材(4)に挿入される、先端部にくさび部(17)が形成された操作ロッド(14)であって、前記クランプロッド(9)を前記軸方向のうちの基端側方向へ移動させる操作ロッド(14)と、
前記筒孔(12)に挿入される前記支持筒部材(4)の筒壁に周方向へ所定の間隔をあけて形成される支持孔(13c)と、
前記支持孔(13c)に挿入される係合部材(18)と、
前記係合部材(18)に対応させて前記くさび部(17)の外周に形成されるくさび面(17a)であって、先端側へ向かうにつれて前記操作ロッド(14)の軸心へ近づくように形成されるくさび面(17a)と、
前記係合部材(18)に対応させて前記筒孔(12)に形成される受け面(20)であって、前記クランプロッド(9)の基端側へ向かうにつれて前記クランプロッド(9)の軸心へ近づくように形成される受け面(20)と、
前記筒孔(12)の内部に配置され、前記クランプロッド(9)を前記軸方向のうちの先端側方向へ移動させる付勢手段(21)と、
を備え、
前記くさび面(17a)の前記軸方向に対する傾斜角度(α)が、前記受け面(20)の前記軸方向に対する傾斜角度(β)よりも小さくされている、
クランプ装置。
【請求項2】
請求項1のクランプ装置において、
前記付勢手段(21)はバネ(21)であり、
前記バネ(21)は、前記筒孔(12)の底面と、前記支持筒部材(4)の先端部との間に装着されている、
クランプ装置。
【請求項3】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記ハウジング(1)の内部に配置され、前記操作ロッド(14)を前記軸方向のうちの基端側方向へ付勢する補助バネ(15)をさらに備える、
クランプ装置。
【請求項4】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記係合部材(18)は球体(18)であり、
前記くさび面(17a)は、前記球体(18)に対応させて円弧面とされている、
クランプ装置。
【請求項5】
請求項1または2のクランプ装置において、
前記クランプロッド(9)の基端部のうちの、前記支持筒部材(4)の外周面と摺動する内周側部分が前記軸方向へ突出する環状凸部(23a)とされている、
クランプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クランプ装置として、下記の特許文献1に記載されたものがある。従来技術に係るそのクランプ装置(自動クランプ装置)は、次のように構成されている。
【0003】
クランプ装置は、ピストンおよびピストンロッドを内蔵するシリンダ、ピストンロッドを復帰させるバネ、およびピストンロッドが当該バネによって復帰する際の力をクランプアームのクランプ方向の動作に変換伝達する手段などから構成される。当該変換伝達する手段は、例えば、ピストンロッドに形成されたカム溝、およびラムで構成される。
【0004】
上記クランプ装置のアンクランプ駆動には高圧流体が用いられ、アンクランプ駆動のたびにシリンダ室に高圧流体が供給される。高圧流体は、圧油または圧縮空気である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭59-191225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のクランプ装置が多数設置されると、高圧流体の供給設備として、規模が大きな設備が必要となる。また、高圧流体を給排する配管設備は、数量が多く且つ複雑なものとなる。これらは、省エネルギーおよび環境対策の点から好ましいとは言えない。そのため、駆動源として高圧流体は不要であることが望ましい。
【0007】
本発明の目的は、高圧流体を駆動に必要としないクランプ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るクランプ装置は、例えば、図1から図4に示すように、次のように構成される。
【0009】
(1)本願で開示するクランプ装置は、ハウジング1と、前記ハウジング1のハウジング本体3内に軸方向へ移動可能となるように挿入されるクランプロッド9であって、前記軸方向に延びる筒孔12を有するクランプロッド9と、前記クランプロッド9の先端部に取り付けられるクランプアーム7と、前記ハウジング1の一部である支持筒部材4に挿入される、先端部にくさび部17が形成された操作ロッド14であって、前記クランプロッド9を前記軸方向のうちの基端側方向へ移動させる操作ロッド14と、前記筒孔12に挿入される前記支持筒部材4の筒壁に周方向へ所定の間隔をあけて形成される支持孔13cと、前記支持孔13cに挿入される係合部材18と、前記係合部材18に対応させて前記くさび部17の外周に形成されるくさび面17aであって、先端側へ向かうにつれて前記操作ロッド14の軸心へ近づくように形成されるくさび面17aと、前記係合部材18に対応させて前記筒孔12に形成される受け面20であって、前記クランプロッド9の基端側へ向かうにつれて前記クランプロッド9の軸心へ近づくように形成される受け面20と、前記筒孔12の内部に配置され、前記クランプロッド9を前記軸方向のうちの先端側方向へ移動させる付勢手段21と、を備える。また、前記くさび面17aの前記軸方向に対する傾斜角度αが、前記受け面20の前記軸方向に対する傾斜角度βよりも小さくされている。
【0010】
本願で開示するクランプ装置は次の作用効果を奏する。当該クランプ装置は、従来のクランプ装置が備えるシリンダ室というような駆動のたびに高圧流体が給排される室を備えない。当該クランプ装置では、上記の操作ロッドが手動、または外力によって動かされることで、軸方向のうちの基端側方向へクランプロッドは駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である先端側方向へは、上記の付勢手段によってクランプロッドは駆動される。したがって、当該クランプ装置は、高圧流体を駆動に必要としない。
【0011】
ここで、上記の操作ロッドは、上記の付勢手段の付勢力に抗して先端側方向とは逆方向の基端側方向へクランプロッドを駆動する。そのため、クランプロッドの先端側方向への駆動力をできるだけ大きくするために上記の付勢手段の付勢力を大きくすると、操作ロッドに作用させる手動または外力の力も大きくする必要がある。しかしながら、本願で開示するクランプ装置は、上記くさび面(くさび部)、係合部材、および受け面で構成されるくさび機構を有し、このくさび機構によって操作ロッドに作用させた力は増力される。そのため、付勢手段の付勢力を大きくしたとしても、操作ロッドに作用させる力をそれほど大きくする必要はない。結論として、クランプロッドの先端側方向への駆動力を大きくしたとしても、操作ロッドに作用させる力をそれほど大きくすることなく、先端側方向とは逆方向の基端側方向へクランプロッドを駆動することができる。
【0012】
(2)上記(1)のクランプ装置において、前記付勢手段21はバネ21であり、前記バネ21は、前記筒孔12の底面と、前記支持筒部材4の先端部との間に装着されてもよい。
【0013】
この構成によると、付勢手段としてのバネの付勢力が、クランプロッド、クランプアームの順でクランプアームに伝達する。動力伝達における付勢手段とクランプアームとの間の介在部材がクランプロッドのみであるので、バネの付勢力のロスを最小限に抑えることができ、クランプロッドの先端側方向への駆動力をその分大きくできる。
【0014】
(3)上記(1)または(2)のクランプ装置において、クランプ装置は、前記ハウジング1の内部に配置され、前記操作ロッド14を前記軸方向のうちの基端側方向へ付勢する補助バネ15をさらに備えてもよい。
【0015】
この構成によると、クランプロッドが先端側へ移動するときの係合部材の抵抗力を無くすことができ、クランプロッドの先端側方向への駆動力をより大きくすることができる。
【0016】
(4)上記(1)から(3)のいずれかのクランプ装置において、前記係合部材18は球体18であり、前記くさび面17aは、前記球体18に対応させて円弧面とされてもよい。
【0017】
この構成によると、係合部材が球体とされることで、クランプロッドを基端側方向へスムーズに移動させることができる。また、くさび面が円弧面とされることで、くさび面による球体の保持が安定し、この点においても、基端側方向へのクランプロッドの移動がスムーズとなる。
【0018】
(5)上記(1)から(4)のいずれかのクランプ装置において、前記クランプロッド9の基端部のうちの、前記支持筒部材4の外周面と摺動する内周側部分が前記軸方向へ突出する環状凸部23aとされてもよい。
【0019】
この構成によると、クランプロッドの基端部における支持筒部材の外周面との摺動部分の軸方向長さが長くなり、クランプロッドの軸方向移動がより安定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高圧流体を駆動に必要としないクランプ装置を提供できる。また、本発明によれば、クランプロッドの先端側方向への駆動力を大きくしたとしても、操作ロッドに作用させる力をそれほど大きくすることなく、先端側方向とは逆方向の基端側方向へクランプロッドを駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の一実施形態を示し、クランプ装置のクランプ状態における平面図である。
図2図2は、図1のX-X断面図である。
図3図3は、図1のY-Y矢視図である。
図4図4は、図1から3に示すクランプ装置のアンクランプ状態における側面視の断面図であり、図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態の説明では、基台としてのクランプパレットCPに、クランプ対象物であるワークパレットWPを固定するという、クランプ装置の使用例を例示している。
【0023】
図1から図4は、本発明の一実施形態を示す。図1から図4に基づいて、この一実施形態のクランプ装置の構成を説明する。
【0024】
クランプパレットCPにクランプ装置のハウジング1が複数のボルト2(図1参照)によって横向き姿勢で固定される。ハウジング1は、ハウジング本体3と、支持筒部材4と、基端筒部材5とを備える。支持筒部材4および基端筒部材5は、この順で、ハウジング本体3の長手方向の端部に複数のボルト6(図1、3参照)によって固定される。
【0025】
ハウジング本体3の先端部に形成された収容溝3aにクランプアーム7が配置される。クランプアーム7の下端部がピン8を介して収容溝3aの先端側下部両側面に連結され、これによりクランプアーム7は揺動可能とされる。クランプアーム7の途中高さ部に形成された長孔7aおよびクランプロッド9の先端部にピン10が挿入されることで、クランプロッド9の先端部にピン10を介してクランプアーム7が取り付けられる。これにより、クランプアーム7はクランプロッド9によって押引き可能となる。クランプアーム7の上端部にクランプ部11が設けられ、このクランプ部11の内側面11aがワークパレットWPを押圧する。
【0026】
クランプロッド9は、ハウジング本体3内に軸方向へ移動可能となるように挿入される。クランプロッド9は、その軸方向に延びる筒孔12を有する。この筒孔12に上記支持筒部材4の筒部13が挿入される。筒孔12の内部であって、当該筒孔12の底面と筒部13の先端部との間に、クランプロッド9を軸方向のうちの先端側方向へ移動させる付勢手段としてのバネ21が装着される。筒部13の先端部に段差部13aが設けられており、この段差部13aがバネ受け部として機能する。バネ21は圧縮コイルバネである。なお、バネ21は、1本に限定されない。例えば、径の異なる2本以上のバネが互いに挿入された形態で筒孔12の内部に配置されてもよい。また、バネとして、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。
【0027】
クランプロッド9は、先端側の小径部22と基端側の大径部23とを有する。この大径部23の基端部における内周側部分は、軸方向の後方へ突出する環状凸部23aとされている。
【0028】
また、支持筒部材4を構成する上記筒部13の筒孔13bに操作ロッド14が挿入される。操作ロッド14は、バネ21の付勢力に抗してクランプロッド9を軸方向のうちの基端側方向へ移動させるための部材である。ハウジング1の軸方向端部を形成する、操作ロッド14が挿入される基端筒部材5の内部には、操作ロッド14を基端側方向へ付勢する補助バネ15が配置される。操作ロッド14の外周面にリング状のバネ受け16が固定され、支持筒部材4の筒部13の基端側端部とバネ受け16との間に補助バネ15が装着される。補助バネ15は、操作ロッド14を基端側方向へ移動させるためだけのものであり、その付勢力は小さくてよい。補助バネ15は圧縮コイルバネである。補助バネとして、圧縮コイルバネに代えて、皿バネなどの他の種類のバネを用いることも可能である。
【0029】
クランプ装置は、操作ロッド14がハウジング1内へ押し込まれたきの力の向きを、クランプロッド9を基端側方向へ移動させる力の向きに変換するとともに、この力を増力するくさび機構を有する。くさび機構は次のように構成されている。
【0030】
操作ロッド14の先端部に先細り形状のくさび部17が設けられる。くさび部17の外周には、先端側へ向かうにつれて操作ロッド14の軸心へ近づくように形成される3つのくさび面17aが設けられる。図2および図4の各図には3つのくさび面17aのうちの1つだけを示す。
【0031】
支持筒部材4を構成する筒部13(筒壁)に、周方向へ所定の間隔をあけて3つの支持孔13cが筒部13の半径方向へ形成される。図2および図4の各図には3つの支持孔13cのうちの1つだけを示す。各支持孔13cに、係合部材としてのボール18(球体)が挿入される。上記くさび面17aは、溝形状であり、ボール18に対応させて円弧面とされている。すなわち、くさび面17aは、長手方向に対して直交する方向の断面が円弧とされている。なお、くさび面17aは、溝形状とされなくてもよい。すなわち、くさび部17の外周面の溝をなくして、当該外周面をテーパ状に形成してもよい。
【0032】
また、ボール18に対応する受け溝19がクランプロッド9の筒孔12に形成される。この受け溝19の内周面である受け面20は、クランプロッド9の基端側へ向かうにつれてクランプロッド9の軸心へ近づくように形成される。受け面20はテーパ面(傾斜面)である。なお、受け面20は曲面とされてもよい。
【0033】
くさび面17aの操作ロッド14の軸方向に対する傾斜角度αは、受け面20のクランプロッド9の軸方向に対する傾斜角度βよりも小さくされる。クランプロッド9の軸方向と操作ロッド14の軸方向とは同じ方向である。さらには、支持筒部材4の筒部13の軸方向も、クランプロッド9および操作ロッド14の軸方向と同じである。
【0034】
くさび面17a、支持孔13c、およびボール18は、3つに限定されない。
【0035】
上記構成のクランプ装置は次のように動作する。
【0036】
図4に示すアンクランプ状態では、手動または外力によって操作ロッド14がハウジング1内へ押し込まれている。これにより、操作ロッド14のくさび部17のくさび面17aによってボール18は操作ロッド14の半径方向の外方へ移動し、ボール18によってクランプロッド9は軸方向のうちの基端側方向へ移動されている。これにより、クランプロッド9がクランプアーム7を時計回り方向へ後退揺動させている。
【0037】
ワークパレットWPをクランプパレットCPにクランプするときは、操作ロッド14に作用させている手動または外力の力を解除する。具体的には、例えば操作ロッド14を指で押している手動の場合、操作ロッド14から指を離す。
【0038】
すると、補助バネ15の付勢力によって操作ロッド14は軸方向のうちの基端側方向へ移動し、操作ロッド14の端部がハウジング1(基端筒部材5)から突出した状態に移行する。操作ロッド14が基端側方向へ移動したことにより、半径方向の外方位置におけるくさび面17aによるボール18の拘束が解かれ、ボール18は支持孔13c内において半径方向の内方へ移動可能となる。これにより、クランプロッド9の軸方向の移動はボール18で拘束されなくなる。クランプロッド9の軸方向の移動が拘束されなくなると、クランプロッド9の筒孔12の底面をバネ21が押しているので、バネ21の付勢力によってクランプロッド9は先端側方向へ移動する。これにより、クランプロッド9がクランプアーム7を反時計回り方向へ揺動させる。そして、クランプアーム7のクランプ部11がワークパレットWPを上方から押圧する。クランプ装置は、図4に示すアンクランプ状態から、図2等に示すクランプ状態へ切換わる。
【0039】
クランプ装置を、図2等に示すクランプ状態から図4に示すアンクランプ状態へ切換えるときは、手動または外力によって操作ロッド14をハウジング1内へ押し込む。
【0040】
すると、操作ロッド14のくさび部17のくさび面17aが、操作ロッド14の半径方向の外方へボール18を移動させ、ボール18が受け面20を介してクランプロッド9を軸方向のうちの基端側方向へ移動させていく。これにより、クランプロッド9がクランプアーム7を時計回り方向へ後退揺動させ、クランプ装置は、図4に示すアンクランプ状態に切換わる。くさび面17aの傾斜角度αが、受け面20の傾斜角度βよりも小さくされていることで、操作ロッド14に作用させられた手動または外力の力は増力される(大きくなる)。
【0041】
上記実施形態のクランプ装置は次の長所を有する。
【0042】
クランプ装置は、従来のクランプ装置が備えるシリンダ室というような駆動のたびに高圧流体が給排される室を備えない。当該クランプ装置では、操作ロッド14が手動、または外力によって動かされることで、軸方向のうちの基端側方向へクランプロッド9は駆動される。軸方向のうちのもう一方の方向である先端側方向へは、バネ21によってクランプロッド9は駆動される。したがって、当該クランプ装置は、圧油や圧縮空気などの高圧流体を駆動に必要としない。なお、「操作ロッド14が外力によって動かされる」における外力による作動は、例えば次のようなことである。操作ロッド14に物体を当てることで操作ロッド14を動かすことや、クランプ装置側を動かすことで操作ロッド14を静止している物体に当てることにより操作ロッド14を動かすことである。手動とは、人の手(指など)で操作ロッド14を動かすことである。
【0043】
アンクランプ駆動を行う操作ロッド14は、バネ21の付勢力に抗して先端側方向とは逆方向の基端側方向へクランプロッド9を駆動する。そのため、クランプロッド9の先端側方向への駆動力をできるだけ大きくするために、すなわちクランプ駆動の力をできるだけ大きくするために、バネ21の付勢力を大きくすると、アンクランプ駆動に要する操作ロッド14に作用させる手動または外力の力も大きくする必要がある。しかしながら、クランプ装置は、くさび面17a(くさび部17)、ボール18、および受け面20で構成されるくさび機構を有し、このくさび機構によって操作ロッド14に作用させた力は増力される。そのため、バネ21の付勢力を大きくしたとしても、操作ロッド14に作用させる力をそれほど大きくする必要はない。結論として、クランプ駆動の力を大きくしたとしても、操作ロッド14に作用させる力をそれほど大きくすることなく、クランプロッド9をアンクランプ駆動することができる。
【0044】
上記実施形態のクランプ装置において、バネ21は、クランプロッド9の筒孔12の底面と、支持筒部材4の筒部13の先端部との間に装着されている。これによれば、バネ21の付勢力が、クランプロッド9、クランプアーム7の順でクランプアーム7に伝達する。動力伝達におけるバネ21とクランプアーム7との間の介在部材がクランプロッド9のみであるので、バネ21の付勢力のロスを最小限に抑えることができ、クランプ駆動力をその分大きくできる。
【0045】
また、クランプ装置には、操作ロッド14を軸方向のうちの基端側方向へ付勢する補助バネ15が設けられている。これによれば、クランプロッド9が先端側へ移動するときのボール18の抵抗力を無くすことができ、クランプ駆動力をより大きくすることができる。
【0046】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記実施形態の要素を適宜組み合わせたり、上記実施形態に種々の変更を加えたりすることが可能である。
【0047】
例えば、上記の実施形態は次のように変更可能である。
【0048】
クランプ装置の設置姿勢は、横向き姿勢に限定されない。クランプ装置の設置姿勢は、縦向き姿勢や斜め姿勢であってもよい。
【0049】
係合部材として、ボール18(球体)に代えて、ローラ(円柱状体)を用いてもよい。
【0050】
上記の実施形態では、クランプロッド9を軸方向のうちの先端側方向へ移動させることでクランプ対象物をクランプし、逆の方向である基端側方向へ移動させることでアンクランプしている。これとは反対に、クランプロッド9を軸方向のうちの先端側方向へ移動させることでクランプ対象物をアンクランプし、逆の方向である基端側方向へ移動させることでクランプするようにしてもよい。
【0051】
クランプアーム7は揺動可能なものであるが、クランプロッド9の先端部に取り付けられるクランプアームは揺動可能なものに限定されない。揺動などしない例えば直方体形状のクランプアームが、クランプロッド9の先端部に取り付けられてもよい。
【0052】
クランプ装置は、テーブル、またはロボット先端部などに取り付けられてもよい。クランプ対象物は、ワーク、または金型などであってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1:ハウジング、3:ハウジング本体、4:支持筒部材、9:クランプロッド、12:筒孔、13c:支持孔、14:操作ロッド、15:補助バネ、17:くさび部、17a:くさび面、18:ボール(係合部材、球体)、20:受け面、21:バネ(付勢手段)、23a:環状凸部、α:傾斜角度、β:傾斜角度
図1
図2
図3
図4