(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121624
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】有機EL製造装置
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20240830BHJP
H10K 50/19 20230101ALI20240830BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240830BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20240830BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240830BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K50/19
H10K50/15
H10K50/16
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028827
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100201455
【弁理士】
【氏名又は名称】横尾 宏治
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 弘晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 陽祐
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC45
3K107DD52
3K107DD72
3K107DD75
3K107DD78
3K107FF15
3K107GG04
3K107GG05
3K107GG33
3K107GG43
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べて、製造時間を短くでき、製造コストを抑制できる有機EL製造装置を提供する。
【解決手段】複数の製膜装置を有し、複数の製膜装置を用いて有機EL装置を製造するものであって、有機EL装置は、基材上に、第1導電層と発光機能層と第2導電層がこの順に積層された有機EL素子を有し、発光機能層は、第1機能層と、第1機能層と同一面積の第2機能層と、第1機能層と第2機能層の間に一又は複数の層で構成される中間機能層を有するものであり、複数の製膜装置は、第1製膜装置と第2製膜装置を含み、第1製膜装置は、第1マスク部を含み、第1製膜装置で第1マスク部を用いて第1機能層を製膜し、中間機能層の少なくとも一部を第2製膜装置で製膜し、第1製膜装置で再び第1マスク部を用いて第2機能層を製膜する構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製膜装置を有し、前記複数の製膜装置を用いて有機EL装置を製造する有機EL製造装置であって、
前記有機EL装置は、基材上に、第1導電層と発光機能層と第2導電層がこの順に積層された有機EL素子を有しており、
前記発光機能層は、第1機能層と、前記第1機能層と同一面積の第2機能層と、前記第1機能層と前記第2機能層の間に一又は複数の層で構成される中間機能層を有するものであり、
前記複数の製膜装置は、第1製膜装置と第2製膜装置を含み、
前記第1製膜装置は、第1マスク部を含み、
前記第1製膜装置で前記第1マスク部を用いて前記第1機能層を製膜し、前記中間機能層の少なくとも一部を前記第2製膜装置で製膜し、前記第1製膜装置で再び前記第1マスク部を用いて前記第2機能層を製膜する、有機EL製造装置。
【請求項2】
前記発光機能層は、前記第1導電層側から前記第2導電層側に向かって、第1発光ユニットと第2発光ユニットを含み、
前記第1発光ユニットは、第1ホール輸送層、第1有機発光層、及び第1電子輸送層を含み、
前記第2発光ユニットは、第2ホール輸送層、第2有機発光層、第2電子輸送層を含み、
前記第1機能層は、前記第1ホール輸送層、前記第1有機発光層、及び前記第1電子輸送層のいずれかであり、
前記第2機能層は、前記第2ホール輸送層、前記第2有機発光層、及び前記第2電子輸送層のいずれかである、請求項1に記載の有機EL製造装置。
【請求項3】
前記中間機能層は、前記第2機能層よりも導電率が高い高導電機能層を含み、
前記第2製膜装置は、第2マスク部を有し、前記第2マスク部を使用して前記高導電機能層を製膜するものであり、
前記第2マスク部は、前記第1マスク部よりも開口面積が小さい、請求項1又は2に記載の有機EL製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、透光性基材上に透光性陽極層、発光機能層、及び反射陰極層が積層された有機EL素子を有した有機ELパネルが知られている(例えば、特許文献1)。
特許文献1の有機ELパネルは、発光機能層が透光性基材側から順に青色発光ユニット、接続ユニット、赤緑色発光ユニットが積層されて構成されている。
また、特許文献1の有機ELパネルは、接続ユニットが、青色発光ユニットに接する電子注入性層と、赤緑色発光ユニットに接するホール注入性層を有し、電圧印加時において青色発光ユニットに対して電子注入性層から電子を注入し、接続ユニットのホール注入性層から赤緑色発光ユニットにホールを注入することが可能となっている。
そのため、特許文献1の有機ELパネルによれば、電圧印加時に、青色発光ユニットと赤緑色発光ユニットを同時に光らすことができ、透光性基材から白色の光を取り出すことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、有機EL装置は、発光機能層として多数の有機層が積層されているため、できる限り同じ製膜装置で製膜することがコスト面では好ましいが、その一方で有機層によっては不純物の混入等の観点から全ての有機層を同一の製膜装置で行うことは困難であるので、従来は何層かごとに異なる製膜装置で製膜していた。そのため、製造時間が多くなり、製造コストが嵩むという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、従来に比べて、製造時間を短くでき、製造コストを抑制できる有機EL製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するための本発明の一つの様相は、複数の製膜装置を有し、前記複数の製膜装置を用いて有機EL装置を製造する有機EL製造装置であって、前記有機EL装置は、基材上に、第1導電層と発光機能層と第2導電層がこの順に積層された有機EL素子を有しており、前記発光機能層は、第1機能層と、前記第1機能層と同一面積の第2機能層と、前記第1機能層と前記第2機能層の間に一又は複数の層で構成される中間機能層を有するものであり、前記複数の製膜装置は、第1製膜装置と第2製膜装置を含み、前記第1製膜装置は、第1マスク部を含み、前記第1製膜装置で前記第1マスク部を用いて前記第1機能層を製膜し、前記中間機能層の少なくとも一部を前記第2製膜装置で製膜し、前記第1製膜装置で再び前記第1マスク部を用いて前記第2機能層を製膜する、有機EL製造装置である。
【0007】
本様相によれば、第1機能層と第2機能層を共通の第1マスク部で製膜できるので、従来に比べて、製造時間を短くでき、製造コストを抑制できる。
【0008】
好ましい様相は、前記発光機能層は、前記第1導電層側から前記第2導電層側に向かって、第1発光ユニットと第2発光ユニットを含み、前記第1発光ユニットは、第1ホール輸送層、第1有機発光層、及び第1電子輸送層を含み、前記第2発光ユニットは、第2ホール輸送層、第2有機発光層、第2電子輸送層を含み、前記第1機能層は、前記第1ホール輸送層、前記第1有機発光層、及び前記第1電子輸送層のいずれかであり、前記第2機能層は、前記第2ホール輸送層、前記第2有機発光層、及び前記第2電子輸送層のいずれかである。
【0009】
本様相によれば、マスク部を共有しても、有機EL装置の性能への悪影響が小さい。
【0010】
好ましい様相は、前記中間機能層は、前記第2機能層よりも導電率が高い高導電機能層を含み、前記第2製膜装置は、第2マスク部を有し、前記第2マスク部を使用して前記高導電機能層を製膜するものであり、前記第2マスク部は、前記第1マスク部よりも開口面積が小さい。
【0011】
本様相によれば、高導電機能層を第2機能層で覆うことができるので、高導電機能層に起因するリーク電流の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来に比べて、製造時間を短くでき、製造コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態の有機EL装置を模式的に示した説明図であり、(a)は有機EL装置の平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。なお、理解を容易にするために(b)ではハッチングを省略している。
【
図2】本発明の第1実施形態の有機EL製造装置を模式的に示した説明図であり、(a)は有機EL製造装置の平面図であり、(b)は有機EL製造装置を構成する蒸着装置を模式的に示した作動原理図である。
【
図3】
図1の有機EL装置の製造工程の説明図であり、(a)はスパッタ装置によって第1導電層を製膜した後の仕掛基材の平面図であり、(b)は第1蒸着装置によってホール注入層を製膜した後の仕掛基材の平面図である。
【
図4】
図3に続く有機EL装置の製造工程の説明図であり、(a)は第2蒸着装置によって第1ホール輸送層、青色発光層、第1電子輸送層、及び第1電子側接続層を製膜した後の仕掛基材の平面図であり、(b)は第3蒸着装置によって第2電子側接続層を製膜した後の仕掛基材の平面図である。
【
図5】
図4に続く有機EL装置の製造工程の説明図であり、(a)は第1蒸着装置によってバッファ層及びホール側接続層を製膜した後の仕掛基材の平面図であり、(b)は第2蒸着装置によって第2ホール輸送層、赤緑色発光層、第2電子輸送層、及び第2電子注入層を製膜した後の仕掛基材の平面図である。
【
図6】
図5に続く有機EL装置の製造工程の説明図であり、第4蒸着装置によって第2導電層を製膜した後の仕掛基材の平面図である。
【
図7】本発明の実施形態の有機EL装置の説明図であり、(a)は第1実施形態とは異なる他の実施形態の有機EL装置の断面図であり、(b)は(a)とは異なる他の実施形態の有機EL装置の断面図である。
【
図8】本発明の他の実施形態の有機EL装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本発明の第1実施形態の有機EL装置1は、
図1のように、基材2上に第1導電層3と、発光機能層5と、第2導電層6が重畳した有機EL素子7を有するものである。
有機EL装置1は、有機EL素子7を構成する第1導電層3と第2導電層6の間に電圧が印加することで基材2側から光が出射するボトムエミッション型の有機EL装置である。
本実施形態の有機EL装置1は、有機EL製造装置101を用いて好適に製造することが可能となっている。
【0016】
(基材2)
基材2は、有機EL素子7を支持できるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板などの透光性基板や、可撓性を有するフレキシブル基板などが使用できる。
本実施形態の基材2は、透光性及び絶縁性を有し、電圧印加時に有機EL素子7で発生した光を取り出すことができる透光性絶縁基板である。
【0017】
(第1導電層3)
第1導電層3は、透明性及び導電性を有する透明導電層であり、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)、インジウム・亜鉛酸化物(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの透明導電性酸化物で構成された透明導電性酸化物層が使用できる。
【0018】
第1導電層3は、
図3(a)のように、第1素子形成部50と、第1延伸部51a~51dと、島状部52を備えている。
第1素子形成部50は、有機EL素子7の陽極部を構成する四角形状の部位である。
第1延伸部51a~51dは、第1素子形成部50と連続して延び、第1素子形成部50に対して電力を供給する給電パッド部である。
具体的には、第1延伸部51a~51dは、第1素子形成部50の各辺55a~55dの中間部から外側に向かって張り出している。
【0019】
島状部52は、
図3(a)のように、第1素子形成部50及び第1延伸部51a~51dから独立した島状のパッド部である。
島状部52は、平面視したときに、第1素子形成部50及び第1延伸部51a~51dと基材2の面方向に離れており、第1素子形成部50との間には分離溝部56が形成されている。
分離溝部56は、第1素子形成部50及び第1延伸部51a~51dと、島状部52との間を区画する区画溝であり、基材2を底部とし、基材2の面方向における第1素子形成部50の端面と島状部52の端面を内壁とする分離溝である。
【0020】
(発光機能層5)
発光機能層5は、
図1(b)のように、第1導電層3側から第2導電層6側に向かって順に第1発光ユニット10と、接続ユニット11と、第2発光ユニット12で構成されている。
【0021】
(第1発光ユニット10)
第1発光ユニット10は、点灯時に青色に発光する青色発光ユニットであり、第2発光ユニット12に比べて短波長の光で発光する短波長発光ユニットである。
第1発光ユニット10は、
図1(b)のように、第1導電層3側から接続ユニット11側に向かって、第1ホール注入層20、第1ホール輸送層21(第1機能層)、第1有機発光層22(第1機能層)、第1電子輸送層23(第1機能層)をこの順に備えている。
第1ホール注入層20は、第1導電層3と厚み方向に隣接して接し、第1ホール輸送層21側に向かってホールを注入する層である。
第1ホール輸送層21は、第1ホール注入層20から注入されたホールを第1有機発光層22に向かって輸送する層である。
第1有機発光層22は、ホスト材料として電荷輸送材料を含み、ドーパント材料として青色発光材料を含む青色発光層である。
第1電子輸送層23は、接続ユニット11と厚み方向に隣接して接し、接続ユニット11から注入された電子を第1有機発光層22に向かって輸送する層である。
【0022】
(接続ユニット11)
接続ユニット11は、第1発光ユニット10側に電子を注入し、第2発光ユニット12側に正孔を注入するものである。
接続ユニット11は、
図1(b)のように、第1発光ユニット10側から第2発光ユニット12側に向かって、第1電子側接続層30(電子注入性層,第1機能層)と、第2電子側接続層31(中間層)と、バッファ層32(中間機能層)と、ホール側接続層33(ホール注入性層,中間機能層)をこの順に有している。
第1電子側接続層30は、第1発光ユニット10の第1電子輸送層23と厚み方向に隣接して接し、第2電子側接続層31とともに第1電子輸送層23に対して電子を注入する電子注入性層である。
バッファ層32は、第2電子側接続層31とホール側接続層33との間でのキャリア注入障壁を低減する層であり、絶縁性を有する絶縁層である。
ホール側接続層33は、第2発光ユニット12の第2ホール輸送層40と厚み方向に隣接して接し、第2発光ユニット12の第2ホール輸送層40に対してホールを注入するホール注入性層である。
ホール側接続層33は、後述する第2発光ユニット12の第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、及び第2電子輸送層42よりも導電率が高い高導電機能層でもある。
【0023】
(第2発光ユニット12)
第2発光ユニット12は、点灯時に赤緑色に発光する赤緑色発光ユニットであり、第1発光ユニット10に比べて長波長の光で発光する長波長発光ユニットである。
第2発光ユニット12は、
図1(b)のように、接続ユニット11側から第2導電層6側に向かって、第2ホール輸送層40(被覆層,第2機能層)、第2有機発光層41(被覆層,第2機能層)、第2電子輸送層42(被覆層,第2機能層)、第2電子注入層43をこの順に備えている。
第2ホール輸送層40は、接続ユニット11のホール側接続層33と厚み方向に隣接して接し、接続ユニット11のホール側接続層33から注入されたホールを第2有機発光層41に向かって輸送する層である。
第2ホール輸送層40は、ホール側接続層33よりも導電率が低いことが好ましい。
第2有機発光層41は、ホスト材料として電荷輸送材料を含み、ドーパント材料として赤色発光材料と緑色発光材料を含む赤緑色発光層である。
第2有機発光層41は、ホール側接続層33よりも導電率が低いことが好ましい。
第2電子輸送層42は、第2電子注入層43から注入された電子を第2有機発光層41に向かって輸送する層である。
第2電子輸送層42は、ホール側接続層33よりも導電率が低いことが好ましい。
第2電子注入層43は、第2導電層6と厚み方向に隣接して接し、第2電子輸送層42側に向かって電子を注入する層である。
【0024】
(第2導電層6)
第2導電層6は、導電性を有するものであり、例えば、銀(Ag)、アルミニウム(Al),ジルコニウム(Zr),チタン(Ti),ケイ素(Si)、リチウム(Li)等などの金属又はこれらの金属の合金、或いはこれらの金属の2種以上の積層体を含む金属層が使用できる。
【0025】
第2導電層6は、
図6のように、第2素子形成部60と、第2延伸部61を備えている。
第2素子形成部60は、有機EL素子7の陰極部を構成する四角形状の部位である。
第2延伸部61は、第2素子形成部60と連続し、第2素子形成部60から第1導電層3の島状部52に向かって張り出した張出部である。
第2延伸部61は、分離溝部56を横切って第1導電層3の島状部52と接しており、第1導電層3の島状部52と電気的に接続されている。
【0026】
(有機EL素子7)
有機EL素子7は、基材2を平面視したときに、第1導電層3の第1素子形成部50(陽極部)と、発光機能層5と、第2導電層6の第2素子形成部60(陰極部)とが重畳した部分である。
有機EL素子7は、第1素子形成部50と第2素子形成部60との間で電圧を印加することで第1素子形成部50と第2素子形成部60の間の発光機能層5が発光し、基材2を平面視したときに、面状に広がりをもった発光領域を構成することが可能となっている。
【0027】
(有機EL製造装置101)
有機EL製造装置101(以下、単に製造装置101ともいう)は、有機EL装置1を製造する製造装置であり、クラスター方式の製造装置である。
製造装置101は、
図2(a)のように、主に複数の蒸着装置102(102a~102d)と、スパッタ装置103と、搬入部104と、搬出部105と、搬送部106を備えており、搬送部106の周りに蒸着装置102a~102dとスパッタ装置103と搬入部104と搬出部105が環状に並んでいる。
【0028】
蒸着装置102(102a~102d)は、
図2(b)のように、製膜部110と、一又は複数の製膜ガス供給部111a~111cと、製膜部110と各製膜ガス供給部111a~111cを接続するガス供給流路112a~112cを備えた真空蒸着装置である。
蒸着装置102は、製膜ガス供給部111a~111cからガス供給流路112a~112cを介して製膜ガスが供給され、製膜部110で製膜対象となる被製膜基材202に吹き付けることで、被製膜基材202上に有機EL装置1を構成する薄膜層を製膜することが可能となっている。
【0029】
(製膜部110)
製膜部110は、
図2(b)のように、製膜室120と、基材保持部121と、マスク部122と、製膜ガス放出部123と、排気系統部125を備えており、製膜室120内に配された被製膜基材202(基材2又は後述する仕掛基材)に対して製膜ガスを噴霧して被製膜基材202上に薄膜を製膜するものである。
基材保持部121は、被製膜基材202の被製膜面を製膜ガス放出部123と対向するように被製膜基材202を保持する部位である。
マスク部122は、被製膜基材202への製膜部分を制限する部位であり、開口を有し、開口によって被製膜基材202上に製膜される薄膜層をパターニングする部位である。
製膜ガス放出部123は、被製膜基材202に対して製膜ガスを放出する部位であり、一又は複数のガス放出口を有し、ガス放出口が基材保持部121に保持された被製膜基材202と対面し、ガス放出口から製膜ガスを被製膜基材202に吹き付ける部位である。
排気系統部125は、製膜室120内のガスを外部に排気し、製膜室120内を実質的に真空状態に維持する部位である。
【0030】
(製膜ガス供給部111a~111c)
製膜ガス供給部111a~111cは、薄膜材料を気化した薄膜材料ガスを含む製膜ガスを製膜部110の製膜ガス放出部123に供給する部位である。
製膜ガス供給部111a~111cは、所定の温度で所定の流量の製膜ガスを製膜ガス放出部123に供給可能となっている。
【0031】
(ガス供給流路112a~112c)
ガス供給流路112a~112cは、各製膜ガス供給部111から製膜部110に製膜ガスを送り出す送り出し流路である。
【0032】
(スパッタ装置103)
スパッタ装置103は、公知のスパッタ装置であり、ターゲットに対して電荷を帯びた不活性ガスを衝突させることでターゲット原子又はターゲット分子を被製膜基材202に付着させて製膜するものである。
【0033】
(搬入部104)
搬入部104は、外部から基材2(被製膜基材202)を搬入する部位である。
【0034】
(搬出部105)
搬出部105は、各装置102a~102d,103によって製膜された基材2を外部に搬出する部位である。
【0035】
(搬送部106)
搬送部106は、基材2又は後述する仕掛基材を各装置102a~102d,103、搬入部104、及び搬出部105間で基材2又は後述する仕掛基材を行き来させる部位である。
【0036】
続いて、本実施形態の有機EL製造装置101を用いた有機EL装置1の製造方法について説明する。なお、各蒸着装置102a~102dにおいて、対応するマスク部122にa~dを付して示す。
【0037】
まず、有機EL製造装置101の搬入部104から基材2を入れ、搬入部104に搬入された基材2を搬送部106によってスパッタ装置103に導入し、スパッタ装置103によって、基材2上に
図3(a)のような所定のパターンで第1導電層3を形成する。
【0038】
続いて、搬送部106によってスパッタ装置103から第1導電層3が形成された基材2(以下、基材2と基材2上に形成された層をまとめて仕掛基材ともいう)を取り出し、当該仕掛基材を第1蒸着装置102aに導入し、第1蒸着装置102aにおいてマスク部122aを用いて
図3(b)のような所定のパターンで第1ホール注入層20を形成する。
【0039】
ここで、第1蒸着装置102aのマスク部122aは、開口面積が第1導電層3の第1素子形成部50よりも大きいため、第1ホール注入層20は、第1導電層3の第1素子形成部50よりも面積が大きく、基材2を平面視したときに第1導電層3の第1素子形成部50の縁を超えて形成されている。すなわち、第1ホール注入層20は、断面視したときに、
図1(b)のように第1導電層3上から基材2に跨って設けられ、第1素子形成部50の側面を覆っており、第1素子形成部50の外側で基材2と接している。
【0040】
続いて、搬送部106によって第1蒸着装置102aから第1ホール注入層20が形成された仕掛基材を取り出し、当該仕掛基材を第2蒸着装置102bに導入し、第2蒸着装置102b(第1製膜装置)においてマスク部122b(第1マスク部)を用いて
図4(a)のような所定のパターンで第1ホール輸送層21、第1有機発光層22、第1電子輸送層23、及び第1電子側接続層30をそれぞれ形成する。
【0041】
ここで、第2蒸着装置102bのマスク部122bは、第1蒸着装置102aのマスク部122aに比べて開口面積が大きい。そのため、第1ホール注入層20に接する第1ホール輸送層21は、第1ホール注入層20よりも面積が大きく、基材2を平面視したときに第1ホール注入層20の縁を超えて形成されている。すなわち、第1ホール輸送層21は、断面視したときに、
図1(b)のように第1ホール注入層20上から基材2に跨って設けられ、第1ホール注入層20の側面を覆っており、第1ホール注入層20の外側で基材2と接している。
また、第1ホール輸送層21、第1有機発光層22、第1電子輸送層23、及び第1電子側接続層30は、いずれも共通のマスク部122bを用いて製膜されているので、平面視したときに、いずれも同一位置で同一面積となっている。
【0042】
続いて、搬送部106によって第2蒸着装置102bから第1電子側接続層30が形成された仕掛基材を取り出し、当該仕掛基材を第3蒸着装置102cに導入し、第3蒸着装置102cにおいてマスク部122cを用いて
図4(b)のような所定のパターンで第2電子側接続層31を形成する。
【0043】
ここで、第3蒸着装置102cのマスク部122cは、第2蒸着装置102bのマスク部122bに比べて開口面積が同じか小さい。そのため、第2電子側接続層31は、隣接する第1電子側接続層30と同じか小さい面積であり、基材2を平面視したときに第1電子側接続層30の縁と一致するか縁の内側に位置している。
本実施形態の第3蒸着装置102cのマスク部122cは、第2蒸着装置102bのマスク部122bに比べて開口面積が同一面積となっている。
【0044】
続いて、搬送部106によって第3蒸着装置102cから第2電子側接続層31が形成された仕掛基材を取り出し、仕掛基材を再び第1蒸着装置102aに導入し、第1蒸着装置102a(第2製膜装置)において再びマスク部122a(第2マスク部)を用いて
図5(a)のような所定のパターンで接続ユニット11のバッファ層32及びホール側接続層33を形成する。
【0045】
ここで、第1蒸着装置102aのマスク部122aは、第3蒸着装置102cのマスク部122cに比べて開口面積が小さい。そのため、バッファ層32及びホール側接続層33は、第2電子側接続層31よりも面積が小さく、基材2を平面視したときに第2電子側接続層31の縁の内側に位置している。すなわち、バッファ層32及びホール側接続層33は、断面視したときに、
図1(b)のように第2電子側接続層31上に留まっており、第2電子側接続層31上からはみ出していない。
また、バッファ層32及びホール側接続層33は、いずれも共通のマスク部122aを用いて製膜されているので、同一位置で同一面積となっており、さらに第1ホール注入層20とも同一面積となっている。
【0046】
続いて、搬送部106によって第1蒸着装置102aからホール側接続層33が形成された仕掛基材を取り出し、仕掛基材を再び第2蒸着装置102bに導入し、第2蒸着装置102bにおいて再びマスク部122bを用いて
図5(b)のような所定のパターンで第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、第2電子輸送層42、及び第2電子注入層43をそれぞれこの順に形成する。
【0047】
ここで、第2蒸着装置102bのマスク部122bは、第1蒸着装置102aのマスク部122aに比べて開口面積が大きいので、第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、第2電子輸送層42、及び第2電子注入層43は、ホール側接続層33よりも面積が大きく、基材2を平面視したときにホール側接続層33の縁を超えて形成されている。すなわち、ホール側接続層33に接する第2ホール輸送層40は、断面視したときに、
図1(b)のように、ホール側接続層33上から第2電子側接続層31に跨って設けられ、バッファ層32及びホール側接続層33の側面を覆っており、バッファ層32及びホール側接続層33の外側で第2電子側接続層31と接している。
また、第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、第2電子輸送層42、及び第2電子注入層43は、いずれも共通のマスク部122bを用いて製膜されているので、同一位置で同一面積となっており、第1ホール輸送層21、第1有機発光層22、第1電子輸送層23、及び第1電子側接続層30とも同一面積となっている。
【0048】
続いて、搬送部106によって第2蒸着装置102bから第2電子注入層43が形成された仕掛基材を取り出し、仕掛基材を第4蒸着装置102dに導入し、第4蒸着装置102dにおいてマスク部122dを用いて
図6のような所定のパターンで第2導電層6を形成する。
【0049】
このとき、第2導電層6は、第2素子形成部60が第2電子注入層43よりも面積が小さく、基材2を平面視したときに第2電子注入層43の縁の内側に位置している。すなわち、第2導電層6の第2素子形成部60は、第2電子注入層43上に留まっており、第2電子注入層43上からはみ出していない。
また、第2導電層6は、断面視したときに、
図1(b)のように第2延伸部61が第2電子注入層43上から分離溝部56を超えて島状部52上に跨っており、島状部52と接している。
【0050】
続いて、搬送部106によって第4蒸着装置102dから搬出部105に搬送され、搬出部105から外部に搬出されて、必要に応じてCVD装置等によって封止層等が形成されることで有機EL装置1が形成される。
【0051】
本実施形態の有機EL装置1によれば、ホール側接続層33の側面をホール側接続層33よりも導電率が低い第2ホール輸送層40で覆うため、ホール側接続層33が第2導電層6と接触することを防止でき、従来に比べて、接続ユニット11のホール側接続層33に起因するリーク電流の発生を抑制できる。また、第2発光ユニット12の発光に寄与する第2ホール輸送層40によってリーク電流の発生を抑制できるので、製造が容易である。
【0052】
本実施形態の有機EL装置1によれば、第2導電層6は、基材2を平面視したときに、第2延伸部61の一部が第2ホール輸送層40の外側で島状部52と接続されているので、第1素子形成部50から直接第2導電層6に流れるリーク電流を抑制できる。
【0053】
本実施形態の有機EL装置1によれば、ホール側接続層33よりも導電率が低い第2ホール輸送層40がホール側接続層33の外側でホール側接続層33よりも導電率が低い第2電子側接続層31と直接接しているので、ホール側接続層33が第2導電層6と接触することを防止でき、従来に比べて、接続ユニット11のホール側接続層33に起因するリーク電流の発生を抑制できる。
【0054】
本実施形態の有機EL装置1によれば、第2ホール輸送層40の面積が第2電子側接続層31の面積と同じか大きいので、ホール側接続層33の外側を第2ホール輸送層40でオーバーラップでき、よりリーク電流の発生を抑制できる。
【0055】
本実施形態の有機EL製造装置101によれば、第1ホール輸送層21、第1有機発光層22、第1電子輸送層23、及び第1電子側接続層30と、第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、第2電子輸送層42、及び第2電子注入層43とを共通のマスク部122bで製膜できるので、従来に比べて、製造時間を短くでき、製造コストを抑制できる。
【0056】
本実施形態の有機EL製造装置101によれば、第1ホール輸送層21、第1有機発光層22、第1電子輸送層23、及び第1電子側接続層30と、第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、第2電子輸送層42、及び第2電子注入層43とを共通のマスク部122bで製膜するので、有機EL装置1の性能への悪影響が小さい。
【0057】
本実施形態の有機EL製造装置101によれば、導電率が高いホール側接続層33の端面を導電率が低い第2ホール輸送層40で覆うことができるので、ホール側接続層33に起因するリーク電流の発生を抑制できる。
【0058】
上記した実施形態では、バッファ層32及びホール側接続層33の側面を第2ホール輸送層40が覆っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。
図7(a)のようにバッファ層32及びホール側接続層33の側面を第2有機発光層41が覆っていてもよいし、
図7(b)のようにバッファ層32及びホール側接続層33の側面を第2電子輸送層42が覆っていてもよい。
【0059】
上記した実施形態では、バッファ層32及びホール側接続層33の面積を第2ホール輸送層40の面積よりも小さくすることでバッファ層32及びホール側接続層33の側面を第2ホール輸送層40が覆っていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第2ホール輸送層40、第2有機発光層41、及び第2電子輸送層42のいずれかの面積をバッファ層32及びホール側接続層33の面積よりも大きくすることでバッファ層32及びホール側接続層33の側面を覆ってもよい。例えば、
図8のように、第2有機発光層41の面積をバッファ層32、ホール側接続層33、及び第2ホール輸送層40の面積よりも大きくすることで第2有機発光層41によってバッファ層32及びホール側接続層33の側面を覆ってもよい。
【0060】
上記した実施形態では、2つの発光ユニット10,12が接続ユニット11で直列接続されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。3つ以上の発光ユニットが接続ユニットで直列接続されていてもよい。すなわち、隣接する発光ユニット間に接続ユニット11を介在させて3つ以上の発光ユニットを直列接続してもよい。
【0061】
上記した実施形態では、長波長発光ユニットたる第2発光ユニット12に対して短波長発光ユニットたる第1発光ユニット10を基材2側に設けていたが、本発明はこれに限定されるものではない。第1発光ユニット10に対して第2発光ユニット12を基材2側に設けてもよい。
【0062】
上記した実施形態では、製造装置101は、搬送部106の周囲を蒸着装置102a~102dやスパッタ装置103などで囲んだクラスター方式の製造装置であったが、本発明はこれに限定されるものではない。製造装置101は、蒸着装置102a~102dやスパッタ装置103などが搬送路上に並んだインライン方式の製造装置であってもよい。
【0063】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0064】
1 有機EL装置
2 基材
3 第1導電層
5 発光機能層
6 第2導電層
7 有機EL素子
21 第1ホール輸送層(第1機能層)
22 第1有機発光層(第1機能層)
23 第1電子輸送層(第1機能層)
30 第1電子側接続層(第1機能層)
32 バッファ層(中間機能層)
33 ホール側接続層(中間機能層、高導電機能層)
40 第2ホール輸送層(第2機能層)
41 第2有機発光層(第2機能層)
42 第2電子輸送層(第2機能層)
101 有機EL製造装置
102a 第1蒸着装置(第2製膜装置)
102b 第2蒸着装置(第1製膜装置)
122a マスク部(第2マスク部)
122b マスク部(第1マスク部)