(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121627
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ユーザ装置、基地局、およびそれらの制御方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 8/24 20090101AFI20240830BHJP
H04W 88/08 20090101ALI20240830BHJP
【FI】
H04W8/24
H04W88/08
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028831
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 智弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊明
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067HH22
5K067HH23
(57)【要約】
【課題】ユーザ装置(UE)の能力に関するより詳細な情報をネットワークに提供する。
【解決手段】無線通信システムにおけるユーザ装置(UE)は、UEが接続している基地局から、UEにおける能力情報の取得要求を受信する受信手段と、取得要求に応答して、UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を基地局に送信する送信手段と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムにおけるユーザ装置(UE)であって、
前記UEが接続している基地局(BS)から、前記UEにおける能力情報の取得要求を受信する受信手段と、
前記取得要求に応答して、前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を前記BSに送信する送信手段と、
を有することを特徴とするUE。
【請求項2】
前記無線通信システムは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)の無線通信規格に準拠したシステムであり、
前記取得要求は、UECapabilityEnquiryメッセージであり、
前記チップセット情報は、UECapabilityInformationメッセージ内の1つ以上の情報要素(IE)として送信される
ことを特徴とする請求項1に記載のUE。
【請求項3】
前記無線通信システムは、3GPPの無線通信規格に準拠したシステムであり、
前記取得要求は、UECapabilityEnquiryメッセージであり、
前記チップセット情報は、UECapabilityInformationメッセージ内のfeatureGroupIndicatorに含まれる1つ以上のフラグとして送信される
ことを特徴とする請求項1に記載のUE。
【請求項4】
前記UECapabilityEnquiryメッセージは、前記チップセット情報を要求するためのIEを含む
ことを特徴とする請求項2または3に記載のUE。
【請求項5】
前記チップセット情報は、前記チップセットのベンダ、前記チップセットのハードウェア、前記チップセットのソフトウェア、の少なくとも1つを特定する情報を含む
ことを特徴とする請求項1に記載のUE。
【請求項6】
前記無線通信システムは、3GPPの無線通信規格に準拠したシステムであり、
前記取得要求は、UECapabilityEnquiryメッセージであり、
前記チップセット情報は、UECapabilityInformationメッセージとは異なる第1のメッセージ内で送信される
ことを特徴とする請求項1に記載のUE。
【請求項7】
前記UECapabilityEnquiryメッセージは、前記UEが前記第1のメッセージの送信が可能であるか否かを示す対応可否情報を要求するためのIEを含み、
前記対応可否情報は、前記UECapabilityInformationメッセージ内で送信され、
前記第1のメッセージは、前記BSからの前記第1のメッセージの取得要求に応答して送信される
ことを特徴とする請求項6に記載のUE。
【請求項8】
前記チップセット情報は、前記チップセットのベンダ、前記チップセットのハードウェア、前記チップセットのソフトウェア、の全てを特定する情報を含む
ことを特徴とする請求項6または7に記載のUE。
【請求項9】
無線通信システムにおける基地局(BS)であって、
前記BSに無線通信接続しているUEに、前記UEにおける能力情報の取得要求を送信する送信手段と、
前記UEから、前記能力情報とともに前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を受信する受信手段と、
前記能力情報と前記チップセット情報とに基づいて、前記UEに対するモビリティ制御を行う制御手段と、
を有することを特徴とするBS。
【請求項10】
前記無線通信システムのコアネットワーク(CN)と前記UEとの間の非アクセス層(NAS)の制御に利用するために、前記チップセット情報を前記CN内の装置に送信する第2の送信手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項9に記載のBS。
【請求項11】
無線通信システムにおけるユーザ装置(UE)の制御方法であって、
前記UEが接続している基地局(BS)から、前記UEにおける能力情報の取得要求を受信する受信工程と、
前記取得要求に応答して、前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を前記BSに送信する送信工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項12】
無線通信システムにおける基地局(BS)の制御方法であって、
前記BSに無線通信接続しているUEに、前記UEにおける能力情報の取得要求を送信する送信工程と、
前記UEから、前記能力情報とともに前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を受信する受信工程と、
前記能力情報と前記チップセット情報とに基づいて、前記UEに対するモビリティ制御を行う制御工程と、
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載の制御方法を、無線通信システムにおけるユーザ装置(UE)内のコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおけるユーザ装置の能力情報の通知に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の無線通信規格(4G、5Gなど)においては、ユーザ端末(UE)が有する能力情報をネットワーク(基地局(BS)、コアネットワーク(CN))に通知するために、UECapabilityInformationメッセージが規定されている(例えば非特許文献1、2)。BSは、個々のUEから受信した上述のメッセージに基づいてそれぞれのUEにおける無線アクセス能力を把握し、それぞれのUEに対するモビリティ制御などを実施する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】3GPP TS 36.331 V16.11.0, 2022年12月
【非特許文献2】3GPP TS 38.331 V16.11.0, 2022年12月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、UECapabilityInformationメッセージに示される能力(Capability)情報が同一であっても、UEに依存して、実際の能力が異なる場合がある。例えば、あるUEから通知された上述のメッセージにおいて第1の機能に対する能力を有することが示されている場合であっても、不具合などにより実際には第1の機能が利用できない場合がある。例えば、第1の機能を単独で使用することは可能であるが第2の機能と組み合わせて使用した場合に不具合が発生するなどの場合がある。さらに、通信装置を製造するベンダに依存して、3GPP標準規格内の所与の規定に対して異なる解釈が発生する場合がある。その結果、上述のメッセージで示される能力/機能の中には、具体的動作が一意に特定されないベンダ依存/実装依存の能力/機能(例えば回線品質の測定)が存在し得る。
【0005】
ただし、BSやCNは、上述のメッセージに基づいて個々のUEにおける能力を把握していることから、上述のメッセージに示される能力情報が同じ場合は、実際の能力の差異に応じた個別の制御を行うことが出来ない。そのため、無線通信システムのオペレータ(キャリア)は、予め個々のUEに関する固有の情報を収集しておき、不都合が生じないような制御(例えば、各UEの実際の能力に関する最大公約数的な制御)を行うようシステムを運用している。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、UEの能力に関するより詳細な情報をBSやCNに提供可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題点を解決するため、本発明に係る無線通信システムの基地局は以下の構成を備える。すなわち、無線通信システムにおけるユーザ装置(UE)は、
前記UEが接続している基地局(BS)から、前記UEにおける能力情報の取得要求を受信する受信手段と、
前記取得要求に応答して、前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を前記BSに送信する送信手段と、
を有する。または、無線通信システムにおける基地局(BS)は、
前記BSに無線通信接続しているUEに、前記UEにおける能力情報の取得要求を送信する送信手段と、
前記UEから、前記能力情報とともに前記UEが搭載する無線通信のチップセットに関するチップセット情報を受信する受信手段と、
前記能力情報と前記チップセット情報とに基づいて、前記UEに対するモビリティ制御を行う制御手段と、
を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、UEの能力に関するより詳細な情報をBSやCNに提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】無線通信システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
(第1実施形態)
本発明に係る無線通信システムの第1実施形態として、3GPP(登録商標)4G/5G規格に基づいて動作するシステムを例に挙げて以下に説明する。
【0012】
<概要>
ユーザ端末(UE)が有する能力情報をネットワーク(基地局(BS)、コアネットワーク(CN))に通知するために、UECapabilityInformationメッセージが用いられている。ただし、UECapabilityInformationメッセージは情報の粒度が荒く、個々のUEにおける実際の能力情報を正しく通知できない場合がある。そこで、より正確な(情報の粒度が細かい)UEの能力情報をUEからBSに通知可能とする。
【0013】
<システムの全体構成>
図1は、無線通信システムの概略構成を示す図である。無線通信システムは、基地局(BS)101、ユーザ装置(UE)111、コアネットワーク(CN)121を含んでいる。説明を簡単にするために、
図1ではBS101およびUE111はそれぞれ1台のみ示している。また、BS101とUE111の間は無線接続(破線で示す)され、BS101とコアネットワーク121の間は有線接続(実線で示す)されている場合を示している。ただし、BS101およびUE111はそれぞれ無線通信システム内に複数台存在してもよい。また、BS101とコアネットワーク121の間の一部は無線接続であってもよい(例えば無線バックホール回線など)。
【0014】
<BSおよびUEのハードウェア構成>
図2は、BS101のハードウェア構成を示す図である。上述したように、BS101は、4G/5G規格に基づく基地局である。
【0015】
UE111は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、第1通信回路205、第2通信回路206を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、後述の各処理を実行する。
【0016】
ROM202は、UE111が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。
【0017】
第1通信回路205は、UEとの間で通信を行うための通信回路である。BSとUEとの間の通信は制御プレーンおよびユーザプレーンの通信を含み、制御プレーンの通信には、非アクセス層(NAS)プロトコルおよび無線リソース制御(RRC)プロトコルの通信が含まれる。一方、第2通信回路206は、CNとの間で通信を行うための通信回路である。BSとCNとの間の通信は制御プレーンおよびユーザプレーンの通信を含み、制御プレーンの通信には、NASプロトコルの通信が含まれる。
【0018】
なお、
図2(および後述の
図4)に示すBS101は主にベースバンドユニット(BBU)に相当するものを示しているが、第1通信回路205の一部はリモートラジオヘッド(RRH)として構成され得る。
【0019】
図3は、UE111のハードウェア構成を示す図である。なお、ここでは、UE111としてスマートフォンを想定するが、他の形態のデバイス(例えばIoTデバイス)であってもよい。
【0020】
UE111は、一例において、プロセッサ301、ROM302、RAM303、記憶装置304、通信回路305、タッチスクリーン306を含んで構成される。プロセッサ301は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、後述の各処理を実行する。
【0021】
ROM302は、UE111が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM303は、プロセッサ301がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置304は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。
【0022】
通信回路305は、所定の通信規格に準拠した無線通信用の回路によって構成される。以下の説明では所定の通信規格として、4G/5G規格を例に挙げて説明するが、
図1に示すようなシステム構成に利用される任意の通信規格を適用することが可能である。
【0023】
一般に、能力情報(Capability)は、UEが搭載する通信回路305を構成するチップセット(3GPP無線通信規格の処理を担うモデム部)の実装に依存して設定される。チップセットは、無線の測定やBSとの間の情報の送受信等を担う。チップセットは、システムオンチップ(SoC)内に組み込まれていた構成、あるいはSoC外のディスクリートな構成として様々なベンダ(Qualcomm、MediaTek、Samsungなど)から様々な種類(型番)のものが提供されている。
【0024】
タッチスクリーン306は、例えばタッチパネルディスプレイであり、ユーザに情報を提供するための表示部と、ユーザからのタッチ操作による指示を受け付ける受付部と、を併せ持つ構成要素である。
【0025】
<BSおよびUEの機能構成>
図4は、BS101の機能構成を示す図である。BS101は、その機能として、例えば、第1通信制御部401、第2通信制御部402、制御部403、記憶部404を有する。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、BS101が有しうる他の各種機能については図示を省略している。
【0026】
また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、例えば第1通信回路205や第2通信回路206の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0027】
第1通信制御部401は、第1通信回路205を介した無線通信を制御する。すなわち、UEとの間の制御プレーンおよびユーザプレーンの通信の実行を制御する。第2通信制御部402は、第2通信回路206を介した無線通信を制御する。すなわち、CNとの間の制御プレーンおよびユーザプレーンの通信を実行する。
【0028】
制御部403は、BS101全体の動作を統括して制御する。記憶部404は、第1通信制御部401、第2通信制御部402、制御部403が動作を行う際に利用される各種情報を記憶する。
【0029】
図5は、UE111の機能構成を示す図である。UE111は、その機能として、例えば、通信制御部501、情報処理部502、制御部503、記憶部504を有する。なお、
図5では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、UE111が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えばUE111がスマートフォンである場合、各種入力機能(タッチパネル、GPS受信機、カメラ、マイク)や各種出力機能(ディスプレイ、バイブレーション、スピーカーなど)など他の機能を当然に有する。
【0030】
また、
図5の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図5の各機能は、例えば、プロセッサ301がROM302や記憶装置304に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよい。また、例えば通信回路305の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。
【0031】
通信制御部501は、通信回路305を介した無線通信を制御する。具体的には、所定の通信規格に準拠した無線通信を実行する。特に、相手装置(ここでは基地局)との間で通信が確立されていない場合は、初期アクセスを実行し、基地局に接続(アタッチ)する。また、現在接続している基地局との間の無線接続の品質が低下した場合、規格に従って他の基地局へのハンドオーバーを実行する。また、詳細は後述するが、情報処理部502によって生成されたチップセット情報に基づいて、BS101にUECapabilityInformationメッセージ(および必要な場合、付随する他のメッセージ)を送信する。
【0032】
情報処理部502は、通信回路305を構成するチップセットに関する情報を収集し、チップセット情報を生成する。ここでは、通信回路305を構成するチップセットの以下の少なくとも1つを収集し、チップセット情報を生成するものとする。
・ベンダ識別情報
・ハードウェア(HW)識別情報(型番、バージョンなど)
・ソフトウェア(SW)識別情報(バージョンなど)
そして、情報処理部502は、通信制御部501からの要求に基づいて、生成したチップセット情報を通信制御部501に出力する。詳細は後述するが、例えば、通信制御部501は、BS101からUECapabilityEnquiryメッセージを受信した場合に、情報処理部502に対してチップセット情報の取得要求を行う。
【0033】
制御部503は、UE111全体の動作を統括して制御する。記憶部504は、通信制御部501、情報処理部502、制御部503が動作を行う際に利用される各種情報を記憶する。また、情報処理部502で生成されたチップセット情報を記憶する。
【0034】
<システムの動作>
図6~
図8を参照して、UEからBSに能力情報の通知する3つの形態について説明する。なお、
図6~
図8においては、1つのUEのみを示しているが、BSは、それぞれのUEに対して同様の動作を行う。
【0035】
<第1の実施例>
第1の実施例では、既存のメッセージ(すなわち、UECapabilityInformationメッセージ)にチップセット情報を付加して送信する。すなわち、UECapabilityInformationメッセージ内の情報要素(IE)として、チップセット情報に係るIE(例えば、ChipSetIE)を新たに定義して送信する形態である。
【0036】
図6は、能力情報の通知方法に係る第1の例を示すシグナリング図である。まず、BSの第1通信制御部401は、UECapabilityEnquiryメッセージをUEに送信する。ただし、このUECapabilityEnquiryメッセージには、チップセット情報を要求するIEが含まれる点が従来と異なる。チップセット情報を要求するIEを含めることにより、上述のメッセージを送信したBSがチップセット情報の取得に対応していることをUEに示すことが可能となる。
【0037】
UECapabilityEnquiryメッセージを受信したUEの情報処理部502は、自UEの通信回路305を構成するチップセットに関する情報を収集し、チップセット情報を生成する。ただし、チップセット情報を予め生成し記憶部504に保持しておいてもよい。例えば、UEにおいてチップセットファームウェアの更新が行われたタイミングでチップセット情報を生成してもよい。
【0038】
その後、UEの通信制御部501は、UECapabilityEnquiryメッセージに対する応答として、UECapabilityInformationメッセージを送信する。ただし、上述したように、このUECapabilityInformationメッセージには、ChipSetIEが付加されている。チップセット情報に対応する複数のIE(例えば、ベンダ識別IE、HW識別IE、SW識別IE)を付加するよう構成してもよい。なお、後述するようにIEとして送信可能なデータ量には限度があるため、ChipSetIEには、チップセット情報のサブセットのみ(例えば、ベンダ識別情報のみなど)を含むようにするとよい。
【0039】
これにより、BSの第1通信制御部401は、UEのチップセット情報を取得することが出来る。さらに、BSは、第2通信制御部402を介して、UEのチップセット情報をCNに通知してもよい。この場合、例えば、BSの第2通信制御部402は、既存のメッセージ(例えば、UERadioCapabilityInfoIndicationメッセージ)にチップセット情報を付加して送信する。この際、上述のUECapabilityInformationメッセージの場合と同様に、UERadioCapabilityInfoIndicationメッセージ内のIEとして、チップセット情報に係るIE(例えば、ChipSetIE)を新たに定義して送信するとよい。
【0040】
<第2の実施例>
第2の実施例では、既存のメッセージ(すなわち、UECapabilityInformationメッセージ)にチップセット情報を付加して送信する。ただし、第1の実施例とは異なり、UECapabilityInformationメッセージ内のfeatureGroupIndicatorにおいてフラグを設定することでチップセット情報を送信する点が異なる。featureGroupIndicatorは32ビット長であるが、下位16ビットは未使用領域(Undefined)であるため、この領域をチップセット情報に割り当てる。
【0041】
図7は、能力情報の通知方法に係る第2の例を示すシグナリング図である。まず、BSの第1通信制御部401は、UECapabilityEnquiryメッセージをUEに送信する。これは第1の実施例と同様であるため詳細な説明は省略する。
【0042】
UECapabilityEnquiryメッセージを受信したUEの情報処理部502は、第1の実施例と同様にチップセット情報を生成する。
【0043】
その後、UEの通信制御部501は、UECapabilityEnquiryメッセージに対する応答として、UECapabilityInformationメッセージを送信する。ただし、このUECapabilityInformationメッセージ内のfeatureGroupIndicatorにはチップセット情報が示されている。なお、送信可能なデータ量に制限がある(例えば16ビット)ため、チップセット情報のサブセットのみ(例えば、ベンダ識別情報のみなど)を含むようにするとよい。その際、例えば、featureGroupIndicatorの17ビット目(下位16ビットの最上位ビット)をベンダA、18ビット目をベンダB、19ビット目をベンダC、というようにしてもよい。
【0044】
これにより、BSの第1通信制御部401は、UEのチップセット情報を取得することが出来る。さらに、BSは、第2通信制御部402を介して、UEのチップセット情報をCNに通知してもよい。この場合、例えば、BSの第2通信制御部402は、既存のメッセージ(例えば、UERadioCapabilityInfoIndicationメッセージ)にチップセット情報を付加して送信する。この際、上述のUECapabilityInformationメッセージの場合と同様に、UERadioCapabilityInfoIndicationメッセージ内の未使用領域にチップセット情報を割り当てて送信するとよい。
【0045】
<第3の実施例>
第3の実施例では、チップセット情報送信用の新規のメッセージ(例えば、ChipSetCapabilityメッセージ)を定義してチップセット情報を送信する。具体的には、UEは、既存のメッセージ(すなわち、UECapabilityInformationメッセージ)において、上述の新規のメッセージに対応しているか否かを示す情報を送信する。そして、BSは、UEが新規のメッセージの送信に対応している場合、UEに対して新規のメッセージを送信するように制御する。
【0046】
図8は、能力情報の通知方法に係る第3の例を示すシグナリング図である。まず、BSの第1通信制御部401は、UECapabilityEnquiryメッセージをUEに送信する。ただし、このUECapabilityEnquiryメッセージには、ChipSetCapabilityメッセージの対応可否情報を要求するIEが含まれる点が上述の第1および第2の実施例と異なる。このIEを含めることにより、上述のメッセージを送信したBSがChipSetCapabilityメッセージの受信に対応していることをUEに示すことが可能となる。
【0047】
UECapabilityEnquiryメッセージを受信したUEの通信制御部501は、UECapabilityEnquiryメッセージに対する応答として、UECapabilityInformationメッセージを送信する。ただし、このUECapabilityInformationメッセージには、ChipSetCapabilityメッセージの対応可否情報(自UEがChipSetCapabilityメッセージを送信可能か否かを示す情報)がIEとして付加されている。なお、featureGroupIndicatorにおいてフラグを設定することで対応可否情報を示すよう構成してもよい。
【0048】
UECapabilityInformationメッセージを受信したBSの第1通信制御部401は、UEがChipSetCapabilityメッセージに対応している場合、当該UEに対してChipSetCapabilityEnquiryメッセージを送信する。
【0049】
ChipSetCapabilityEnquiryメッセージを受信したUEの通信制御部501は、第1の実施例と同様にチップセット情報を生成する。
【0050】
その後、UEの通信制御部501は、ChipSetCapabilityEnquiryメッセージに対する応答として、ChipSetCapabilityInformationメッセージを送信する。ChipSetCapabilityInformationメッセージには、チップセット情報に関するIE(例えば、ベンダ識別IE、HW識別IE、SW識別IE)が含まれている。
【0051】
これにより、BSの第1通信制御部401は、UEのチップセット情報を取得することが出来る。さらに、BSは、第2通信制御部402を介して、UEのチップセット情報をCNに通知してもよい。
【0052】
上述の第1の実施例および第2の実施例では、既存のメッセージを流用し、メッセージ内のIEのみ新規に定義しているのみであるため、実装が容易である点に利点がある。一方で、IEとして送信可能なデータ量には限度があるため、チップセットに関するすべての情報を送信できない場合も考えられる。
【0053】
一方で、第3の実施例では、新規のメッセージを定義しているため、第1の実施例および第2の実施例に比較すると実装が困難となり得る。ただし、新規のメッセージであるため、送信可能なデータ量に対する制限が少なく、より多様なチップセット情報を送信することが可能となり得る。
【0054】
<効果>
以上説明したように、第1実施形態によれば、BSは、UEのチップセット情報を取得することが出来る。すなわち、より正確な(情報の粒度が細かい)個々のUEの能力情報を知ることが可能となる。そのため、本発明においては、BSの第1通信制御部401は、チップセット情報を用いることにより、従来に比較してより細かなモビリティ制御などを実施することが可能となる。
【0055】
例えば、従来は同一の内容を示すUECapabilityInformationメッセージを送信した複数のUEに対しては、同様のモビリティ制御をしていたが、本発明においては、個々のUEのチップセット情報を参照することにより、個々のUEに対して異なる制御を行うことが可能となる。
【0056】
すなわち、従来は、同一の内容を示すUECapabilityInformationメッセージを示す複数のチップセットの1つにおいて不具合などにより実際には第1の機能が利用できない場合、動作に不都合が生じないような制御(例えば、各UEの実際の能力に関する最大公約数的な制御)を行っていた。そのため、第1の機能が利用可能なチップセットを搭載するUEに対しては、効果的な制御となっていない場合があった。一方、本発明によれば、上述のチップセット情報を参照することにより、第1の機能が利用できないチップセットを搭載するUEと第1の機能が利用可能なチップセットを搭載するUEとで異なるモビリティ制御を行うことが可能となり、より効果的な制御を行うことが可能となる。
【0057】
さらに、UECapabilityInformationメッセージに示される能力/機能の中には具体的動作が一意に特定されないベンダ依存/実装依存の機能が存在し得る。例えば、下り回線の無線回線品質や信号対干渉雑音電力比(SINR)の測定などは、チップセットを製造するベンダ依存の能力であり得る(規格に記載された規定に対してベンダにより異なる解釈がなされた結果、測定方法など仕様が異なる場合がある)。
【0058】
測定方法などの仕様が異なると出力値に誤差が生じるため、異なるチップセットを有する複数のUEそれぞれにおける出力値に対して同じ取り扱い(例えば計算式)に基づく制御をすると、一部のUEに対して適切な制御とならない場合があった。一方、本発明によれば、個々のUEのチップセット情報を参照することにより、個々のUEにおける出力値に対して異なる取り扱い(例えば計算式)に基づく制御をすることが可能となり、より効果的な制御を行うことが可能となる。
【0059】
また、上述の動作により、CNも、UEのチップセット情報を取得することが出来る。そのため、CNは、チップセット情報を用いることにより、UEに対する非アクセス層(NAS)におけるネットワーク制御を、従来に比較してより適切に実施することが可能となる。
【0060】
また、CN内の装置において、上述のUEのチップセット情報を記憶/管理するデータベース(DB)を配置するよう構成してもよい。例えば、UEの国際移動体装置識別番号(IMEI)とチップセット情報とを対応付けた情報を管理するよう構成してもよい。これにより、例えば、BSやCNは、UEのIMEIに基づき、UEのチップセット情報を当該DBから取得できるようになる。
【0061】
なお、本発明により、例えば、より効率的な通信制御が可能になることから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0062】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
101 基地局(BS); 111 ユーザ端末(UE); 121 コアネットワーク(CN); 401 第1通信制御部; 402 第2通信制御部; 501 通信制御部; 502 情報処理部