(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121645
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】締結構造、プラズマ処理装置及び弾性部材付きボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 35/06 20060101AFI20240830BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20240830BHJP
F16B 41/00 20060101ALI20240830BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
F16B35/06 Z
F16B43/00 Z
F16B41/00 A
H05H1/46 L
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028855
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 靖之
【テーマコード(参考)】
2G084
3J034
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA05
2G084BB25
2G084CC04
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD13
2G084DD55
2G084FF39
3J034AA20
3J034BA20
3J034DA10
3J034EA05
(57)【要約】
【課題】メンテナンス等において、第1部材と第2部材との締結を解除する際に生じる不具合を、比較的簡易且つ交換容易な構成で低減可能な締結構造を提供する。
【解決手段】本発明に係る締結構造10は、第1部材20と第2部材30とを締結する締結構造であって、ボルト1と、第1部材に設けられ、ボルトが挿入される孔部2と、第2部材に設けられ、ボルトの雄ねじ部11と噛み合う雌ねじ部3と、自然長よりも上下方向に伸長又は収縮していることでボルトに上向きの力を作用させる弾性部材4と、を備える。ボルト1は、第1頭部12と、第2頭部13と、連結部14と、を具備する。弾性部材は、一端が連結部に対して上下方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が第1部材に対して取り付けられている。弾性部材は、第1部材と第2部材との締結が解除された状態において、ボルトの雄ねじ部の下端が孔部の下端2aよりも上方に位置するように、ボルトに上向きの力を作用させる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結する締結構造であって、
ボルトと、
前記第1部材に設けられ、前記ボルトが挿入される孔部と、
前記第2部材における前記孔部と前記締結方向に対向する位置に設けられ、前記ボルトの先端側に位置する雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部と、
自然長よりも前記締結方向に伸長又は収縮していることで、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる弾性部材と、を備え、
前記ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、
前記弾性部材は、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられており、
前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材側の端よりも前記第2部材と反対側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる、
締結構造。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材と反対側の端よりも前記第2部材側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる、
請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
前記連結部が挿入される孔部を有し、前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられた環状部材を備え、
前記弾性部材の前記一端が前記環状部材に取り付けられている、
請求項1又は2に記載の締結構造。
【請求項4】
前記締結方向が上下方向であり、
前記第1部材が前記第2部材よりも上方に位置し、
前記弾性部材の下端が前記連結部に対して取り付けられ、前記弾性部材の上端が前記第1部材に対して取り付けられており、
前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、自然長よりも伸長していることで、前記ボルトに上向きの力を作用させる、
請求項1又は2に記載の締結構造。
【請求項5】
前記第1部材及び前記第2部材は、プラズマ処理装置に用いられる部材である、
請求項1又は2に記載の締結構造。
【請求項6】
請求項5に記載の締結構造と、
前記締結構造によって締結される前記第1部材及び前記第2部材と、を備える、
プラズマ処理装置。
【請求項7】
ボルトと、弾性部材と、を備え、第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結するために用いられる、弾性部材付きボルトであって、
前記ボルトは、
第1頭部と、
前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、
前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、
前記弾性部材は、前記締結方向に伸長又は収縮可能であり、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられる、
弾性部材付きボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1部材と第2部材とを締結する締結構造、この締結構造を備えるプラズマ処理装置、及びこの締結構造に用いられる弾性部材付きボルトに関する。特に、本発明は、メンテナンス等において、第1部材と第2部材との締結を解除する際に生じる不具合を、比較的簡易且つ交換容易な構成で低減可能な締結構造、この締結構造を備えるプラズマ処理装置、及びこの締結構造に用いられる弾性部材付きボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、ボルトを用いた締結構造が用いられている。
図1は、従来の締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図1(a)はプラズマ処理装置全体の概略構成を示す断面図であり、
図1(b)は第1部材と第2部材とが締結している状態での締結構造の概略構成を拡大して示す拡大断面図である。なお、
図1において、X方向及びY方向は互いに直交する水平方向であり、Z方向は上下方向を意味する。後述の
図2~
図6についても同様である。
図1に示すように、従来の締結構造10’は、ドット状のハッチングを施した第1部材20(プラズマ処理装置において、プラズマを生成するプラズマ生成空間21を形成する部材)と、第1部材20よりも下方に位置する斜線のハッチングを施した第2部材30(プラズマ処理装置において、基板Sにプラズマ処理を施すプラズマ処理空間31を形成する部材)と、を締結方向(
図1に示す例では、上下方向)に締結するために用いられる、通常の締結構造である。
【0003】
具体的には、
図1に示す例では、締結構造10’によって、第1部材20を構成する上底板25と、第2部材30を構成する下胴部32と、が締結される。締結構造10’は、ボルト1’と、第1部材20(上底板25)に設けられ、ボルト1’が挿入される孔部2と、第2部材30(下胴部32)における孔部2と上下方向(
図1に示すZ方向)に対向する位置に設けられ、ボルト1’の雄ねじ部11と噛み合う雌ねじ部3と、を備えている。ボルト1’の頭部12が第1部材20(上底板25)に接するまで、ボルト1’の雄ねじ部11が雌ねじ部3と噛み合うことで、第1部材20と第2部材30とが締結される。
なお、
図1に示すプラズマ処理装置のその他の構成については、締結構造を除き、後述の
図3に示すプラズマ処理装置と同様であるため、
図3に示すプラズマ処理装置と同様の構成要素については同じ符号を付すに留め、ここでは、具体的な説明を省略する。
【0004】
図1に示すようなプラズマ処理装置の内部にメンテナンス等を施す場合には、締結構造10’による第1部材20と第2部材30との締結を解除して、第1部材20を持ち上げて移動させる必要がある。具体的には、ボルト1’を締結時とは逆方向に回転させて、ボルト1’の雄ねじ部11と雌ねじ部3との噛み合いを解除することで、第1部材20と第2部材30との締結を解除した後、第1部材20を持ち上げて移動させる。
ここで、締結解除後に、ボルト1’を孔部2から外すと、その際にボルト1’が落下して紛失する等のおそれがある。
これを避けるために、締結解除後もボルト1’を孔部2に挿入したままで、第1部材20を持ち上げようとすると、以下に述べるように、プラズマ処理装置に損傷が生じる等のおそれがある。
【0005】
図2は、従来の締結構造の問題点を模式的に示す拡大断面図である。
図2(a)に示すように、ボルト1’を孔部2に挿入したままで、第1部材20を持ち上げると、ボルト1’の雄ねじ部11が孔部2の下端2aから下方に突出しているため、真っ直ぐに持ち上げない限り、ボルト1’の雄ねじ部11が雌ねじ部3に引っ掛かる(
図2(a)に破線で囲った部分で引っ掛かる)ことで、第1部材20を上手く持ち上げられなかったり、雄ねじ部11や雌ねじ部3に損傷が生じるおそれがある。
また、
図2(b)に示すように、第1部材20を持ち上げた後、水平方向(
図2(b)に示すX方向)に第1部材20を移動させる際、ボルト1’の雄ねじ部11が孔部2の下端2aから下方に突出しているため、ボルト1’の雄ねじ部11の下端111が第2部材30の上面(下胴部32の上面321)を擦ることで、第2部材30の上面にあるシール面に損傷が生じるおそれもある。特に、第1部材20を十分に持ち上げるだけのスペースが無い環境の場合(十分に持ち上げた後に水平方向にずらすことができない環境の場合)に、
図2(b)に示すような問題が生じ易い。
さらには、図示を省略するが、第1部材20を十分に持ち上げるだけのスペースが無い環境の場合、第1部材20を持ち上げた後に、水平方向に第1部材20を移動させる際、雄ねじ部11の孔部2の下端2aから下方に突出した部分が、他の付帯設備に干渉するおそれもある。
【0006】
上記の説明では、ボルト1’が挿入される孔部2が設けられた第1部材20と、第1部材20よりも下方に位置し、ボルト1’の雄ねじ部11と噛み合う雌ねじ部3が設けられた第2部材30と、を上下方向に締結する場合を例に挙げたが、上記のような問題は、このような場合に限るものではない。例えば上記の説明と同様に、第1部材20と第2部材30とを上下方向に締結するものの、第1部材20の方が第2部材30よりも下方に位置する(したがって、ボルト1’を下側から挿入する)場合や、第1部材20と第2部材30とを水平方向に締結する場合など、種々の形態の締結構造に共通する問題である。
また、上記の説明では、プラズマ処理装置に用いられる締結構造10’を例に挙げたが、上記のような問題は、プラズマ処理装置に用いられる締結構造に限るものではなく、第1部材20と第2部材30とを締結する締結構造に共通する問題である。
【0007】
上記のような従来の締結構造の問題を解決するため、例えば、特許文献1~4に記載の締結構造が提案されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載の締結構造を実現するには、十分な第1部材の厚み(ボルトが挿入され、第2部材と直接締結される部分の厚みであり、例えば、
図1に示す上底板25の厚み)が必要となるため、第1部材の仕様を変更しなければならなくなるおそれがある。
また、特許文献3、4に記載の締結構造は、締結構造を構成する部品の劣化が生じた場合に、交換が容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013-233630号公報
【特許文献2】特開2021-121740号公報
【特許文献3】特開平2-93112号公報
【特許文献4】特許第2680272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、メンテナンス等において、第1部材と第2部材との締結を解除する際に生じる不具合を、比較的簡易且つ交換容易な構成で低減可能な締結構造、及びこの締結構造を備えるプラズマ処理装置、及びこの締結構造に用いられる弾性部材付きボルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結する締結構造であって、ボルトと、前記第1部材に設けられ、前記ボルトが挿入される孔部と、前記第2部材における前記孔部と前記締結方向に対向する位置に設けられ、前記ボルトの先端側に位置する雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部と、自然長よりも前記締結方向に伸長又は収縮していることで、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる弾性部材と、を備え、前記ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、前記弾性部材は、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられており、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材側の端よりも前記第2部材と反対側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる、締結構造を提供する。
【0011】
本発明において、「先端」とは、ボルトの軸方向に沿った両端のうち、第1部材と第2部材とが締結している状態において、雌ねじ部側に位置する端を意味する。
また、本発明において、「第1部材に接する第2頭部」とは、第2頭部が第1部材に直接接触する場合に限らず、締結構造に慣用される平座金やばね座金等の座金を介して接触する場合を含む概念である。換言すれば、第2頭部における第1部材に対向する面がボルトの座面になることを意味する。
また、本発明において、「一端が・・・連結部に対して・・・取り付けられ」とは、弾性部材の一端が連結部に直接的に取り付けられる場合と、弾性部材の一端が所定の部材を介して連結部に間接的に取り付けられる場合との双方を含む概念である。
本発明に係る締結構造は、ボルトが、第1頭部と、第2頭部(第1部材と第2部材とが締結している状態において第1部材に接する頭部)と、第1頭部と第2頭部とを連結する連結部と、を具備する。また、本発明に係る締結構造は、弾性部材を備え、この弾性部材の一端がボルトの連結部に対して締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が第1部材に対して取り付けられている。そして、弾性部材は、締結方向に伸長又は収縮し、第1部材と第2部材との締結が解除された状態(すなわち、ボルトの雄ねじ部と雌ねじ部とが噛み合っていない状態)において、ボルトの雄ねじ部の先端が孔部の第2部材側の端よりも第2部材と反対側に位置するように、ボルトに締結方向の力を作用させるように構成されている。
【0012】
具体的には、例えば、締結方向が上下方向であり、第1部材が第2部材よりも上方に位置する場合を考える。そして、例えば、弾性部材の他端が上端であり、この上端が第1部材に対して取り付けられている場合を考える。この場合には、第1部材と第2部材との締結が解除された時点を起点として、弾性部材が収縮することにより、連結部に対して取り付けられた弾性部材の一端(下端)が上方に移動し、これにより第1頭部を介してボルトを上方に引っ張り上げることになる。この際、弾性部材の収縮に伴うボルトの上方への移動が終了した時点(ボルト等の自重と、弾性部材によって作用する上向きの力が釣り合った時点)で、ボルトの雄ねじ部の下端(先端)が孔部の下端(第2部材側の端)よりも上方に(第2部材と反対側に)位置するように、弾性部材の弾性定数や自然長を適切な値に設定しておけばよい。
また、弾性部材の他端が下端であり、この下端が第1部材に対して取り付けられている場合には、第1部材と第2部材との締結が解除された時点を起点として、弾性部材が伸長することにより、連結部に対して取り付けられた弾性部材の一端(上端)がボルトの第1頭部を上方に押し上げることになる。この際、弾性部材の伸長に伴うボルトの上方への移動が終了した時点(ボルト等の自重と、弾性部材によって作用する上向きの力が釣り合った時点)で、ボルトの雄ねじ部の下端(先端)が孔部の下端(第2部材側の端)よりも上方に(第2部材と反対側に)位置するように、弾性部材の弾性定数や自然長を適切な値に設定しておけばよい。
なお、締結構造によって第1部材と第2部材とを締結する際には、ボルトを締結方向(上記の例では、上下方向)周りに回転させることで、ボルトの雄ねじ部と雌ねじ部とを噛み合わせるが、弾性部材の一端が、連結部に対して締結方向周りに回転可能である(換言すれば、ボルト(連結部)が締結方向周りに回転しても、これに伴って、弾性部材の一端がボルトと共に回転することがない)ため、弾性部材が捻れるおそれがない。
また、他端が第1部材に対して取り付けられた弾性部材の一端が、ボルトの連結部に対して取り付けられているため、仮に、ボルトが孔部から外れたとしても、ボルトが落下して紛失する等のおそれもない。
【0013】
上記の説明では、便宜上、締結方向が上下方向であり、第1部材が第2部材よりも上方に位置する場合を例に挙げて具体的な作用効果を説明したが、締結方向が上下方向であり、第1部材が第2部材よりも下に位置する場合や、締結方向が水平方向である場合や、その他の任意の締結方向である場合についても、同様の作用効果が得られる。すなわち、弾性部材の弾性定数や自然長を適切な値に設定しておくことで、第1部材と第2部材との締結が解除された状態において、ボルトの雄ねじ部の先端を、孔部の第2部材側の端よりも第2部材と反対側に位置させることができるし、弾性部材が捻れるおそれがないし、ボルトが孔部から外れたとしても、ボルトが落下して紛失する等のおそれがない。
【0014】
以上のように、本発明に係る締結構造は、比較的簡易且つ交換容易な構成であり、第1部材と第2部材との締結が解除された状態において、従来の締結構造のように、ボルトが落下して紛失する等のおそれがなく、また、ボルトの雄ねじ部の先端が孔部の第2部材側の端よりも第2部材と反対側に位置するため、ボルトの雄ねじ部の先端が孔部の第2部材側の端よりも第2部材側に突出することに起因した不具合を低減可能である。
【0015】
好ましくは、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材と反対側の端よりも前記第2部材側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる。
【0016】
上記の好ましい構成によれば、第1部材と第2部材との締結が解除された状態において、ボルトの雄ねじ部の先端が孔部の第2部材側の端よりも第2部材と反対側に位置することに加えて、孔部の第2部材と反対側の端よりも第2部材側に位置することになる。すなわち、ボルトの雄ねじ部の先端が孔部内に位置することになるため、ボルトが孔部から外れ難く、例えば、メンテナンス後に第1部材と第2部材とを再び締結する際、ボルトを孔部に挿入する手間が掛からないという利点が得られる。特に、第1部材と第2部材とを締結するための作業スペースが狭く、孔部の位置を目視で容易に確認し難いような環境では、ボルトを孔部に挿入するだけでも手間の掛かる場合があるため、このような場合に上記の好ましい構成は有効である。
【0017】
本発明に係る締結構造における、連結部に対する弾性部材の一端の好ましい取り付け態様としては、例えば、環状部材を用いて間接的に取り付ける態様が考えられる。
すなわち、本発明に係る締結構造は、前記連結部が挿入される孔部を有し、前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられた環状部材を備え、前記弾性部材の前記一端が前記環状部材に取り付けられていることが好ましい。
なお、上記の好ましい構成において、「環状部材」とは、その外形が閉曲面を構成する完全に環状の部材(完全環状部材)に限るものではなく、その外形の一部が切り欠かれた、部分的に環状の部材(例えば、E型リング等の部分的環状部材)を含む概念である。
【0018】
また、本発明に係る締結構造の好ましい一態様として、前記締結方向が上下方向であり、前記第1部材が前記第2部材よりも上方に位置し、前記弾性部材の下端が前記連結部に対して取り付けられ、前記弾性部材の上端が前記第1部材に対して取り付けられており、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、自然長よりも伸長していることで、前記ボルトに上向きの力を作用させることが挙げられる。
【0019】
また、本発明に係る締結構造は、プラズマ処理装置に好適に用いられる。
すなわち、本発明に係る締結構造において、前記第1部材及び前記第2部材は、プラズマ処理装置に用いられる部材である、ことが例示できる。
【0020】
また、前記課題を解決するため、本発明は、前記締結構造と、前記締結構造によって締結される前記第1部材及び前記第2部材と、を備える、プラズマ処理装置としても提供される。
【0021】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、ボルトと、弾性部材と、を備え、第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結するために用いられる、弾性部材付きボルトであって、前記ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、前記弾性部材は、前記締結方向に伸長又は収縮可能であり、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられる、弾性部材付きボルトとしても提供される。
【0022】
以上をまとめると、本発明は、以下の[1]~[7]の事項に関する。
[1]第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結する締結構造であって、ボルトと、前記第1部材に設けられ、前記ボルトが挿入される孔部と、前記第2部材における前記孔部と前記締結方向に対向する位置に設けられ、前記ボルトの先端側に位置する雄ねじ部と噛み合う雌ねじ部と、自然長よりも前記締結方向に伸長又は収縮していることで、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる弾性部材と、を備え、前記ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、前記弾性部材は、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられており、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材側の端よりも前記第2部材と反対側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる、締結構造。
[2]前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、前記ボルトの前記雄ねじ部の先端が前記孔部の前記第2部材と反対側の端よりも前記第2部材側に位置するように、前記ボルトに前記締結方向の力を作用させる、
[1]に記載の締結構造。
[3]前記連結部が挿入される孔部を有し、前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられた環状部材を備え、前記弾性部材の前記一端が前記環状部材に取り付けられている、[1]又は[2]に記載の締結構造。
[4]前記締結方向が上下方向であり、前記第1部材が前記第2部材よりも上方に位置し、前記弾性部材の下端が前記連結部に対して取り付けられ、前記弾性部材の上端が前記第1部材に対して取り付けられており、前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材との締結が解除された状態において、自然長よりも伸長していることで、前記ボルトに上向きの力を作用させる、[1]から[3]の何れかに記載の締結構造。
[5]前記第1部材及び前記第2部材は、プラズマ処理装置に用いられる部材である、[1]から[4]の何れかに記載の締結構造。
[6][5]に記載の締結構造と、前記締結構造によって締結される前記第1部材及び前記第2部材と、を備える、プラズマ処理装置。
[7]ボルトと、弾性部材と、を備え、第1部材と、第2部材と、を締結方向に締結するために用いられる、弾性部材付きボルトであって、前記ボルトは、第1頭部と、前記第1頭部よりも前記ボルトの先端側に位置し、前記第1部材と前記第2部材とが締結している状態において前記第1部材に接する第2頭部と、前記第1頭部と前記第2頭部とを連結して前記締結方向に延び、前記第1頭部及び前記第2頭部よりも小径である連結部と、を具備し、前記弾性部材は、前記締結方向に伸長又は収縮可能であり、一端が前記連結部に対して前記締結方向周りに回転可能に取り付けられ、他端が前記第1部材に対して取り付けられる、弾性部材付きボルト。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メンテナンス等において、第1部材と第2部材との締結を解除する際に生じる不具合を、比較的簡易且つ交換容易な構成で低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来の締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】従来の締結構造の問題点を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る締結構造の概略構成を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る締結構造の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る締結構造の概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の実施形態(第1実施形態及び第2実施形態)に係る締結構造(第1部材と第2部材とを締結方向に締結する締結構造)について、プラズマ処理装置に適用する場合を例に挙げて説明する。また、締結方向が上下方向であり、第1部材が第2部材よりも上方に位置する場合を例に挙げて説明する。なお、各図に表された構成要素の寸法、縮尺及び形状は、実際のものとは異なっている場合があることに留意されたい。
【0026】
<プラズマ処理装置の概要>
最初に、本実施形態に係る締結構造を備えるプラズマ処理装置の概要について説明する。
図3は、本実施形態に係る締結構造を備えるプラズマ処理装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、本実施形態に係るプラズマ処理装置は、ドット状のハッチングを施した第1部材20(プラズマ処理装置において、プラズマを生成するプラズマ生成空間21を形成する部材)と、第1部材20よりも下方に位置する斜線のハッチングを施した第2部材30(プラズマ処理装置において、基板Sにプラズマ処理を施すプラズマ処理空間31を形成する部材)と、を備え、平面視で略円形の装置である。第1部材20と第2部材30とは、締結構造10によって締結されている。
図3では、便宜上、2つの締結構造10が図示されているが、第1部材20と第2部材30との締結を確実に行うには、2つより多くの締結構造10を用いることが好ましい。
【0027】
第1部材20は、上胴部22と、芯部材23と、天板24と、上底板25と、コイル26と、カバー27と、を具備する。上胴部22の下面には上底板25が取り付けられ、上胴部22の上面には天板24が取り付けられている。天板24の中心部には、芯部材23が取り付けられている。これら上胴部22、芯部材23、天板24及び上底板25によって区画される空間がプラズマ生成空間21である。コイル26は、プラズマ生成空間21を囲うように、上胴部22の外方に配置されている。カバー27は、コイル26を電磁シールドするために、コイル26の外方に配置されている。
【0028】
第2部材30は、下胴部32と、載置台33と、支持台34と、下底板35と、を具備する。下胴部32の下面には下底板35が取り付けられ、下胴部32の上面には締結構造10によって第1部材20の上底板25が締結されている。下底板35には支持台34が取り付けられ、支持台34には、基板Sを載置するための載置台33が取り付けられている。これら下胴部32、載置台33、支持台34及び下底板35によって区画される空間がプラズマ処理空間31である。
【0029】
また、本実施形態に係るプラズマ処理装置は、高周波電源40、50と、マッチングユニット(インピーダンス整合器)60、70と、ガス供給源80と、排気装置90と、を備える。高周波電源40は、マッチングユニット60を介してコイル26に高周波電力を印加する。高周波電源50は、マッチングユニット70を介して載置台33に高周波電力を印加する。ガス供給源80は、プラズマを生成するためのガスをプラズマ生成空間21に供給する。排気装置90は、プラズマ生成空間21及びプラズマ処理空間31のガスを外部に排気する。
【0030】
以上に説明した構成を有するプラズマ処理装置において、基板Sを載置台33に載置し、排気装置90によってプラズマ生成空間21及びプラズマ処理空間31を減圧状態にした後、高周波電源40、50からコイル26及び載置台33にそれぞれ高周波電力を印加すると共に、ガス供給源80からプラズマ生成空間21に対してプラズマ生成用ガスを供給する。コイル26に高周波電力が印加されることでプラズマ生成空間21に誘導電界が生じ、この誘導電界によって、プラズマ生成用ガスがプラズマ化する。一方、載置台33に高周波電力が印加されることで載置台33とプラズマとの間に電位差が生じ、プラズマ中のイオンがこの電位差によって載置台33に向けて移動する。プラズマ中のイオンが基板Sに衝突することや、プラズマ中のラジカルが基板Sと反応することで、基板Sに対してプラズマエッチングやプラズマ成膜等のプラズマ処理が施される。
【0031】
<締結構造10>
以下、本実施形態に係る締結構造10について説明する。
[第1実施形態]
最初に、第1実施形態に係る締結構造10について説明する。
図4は、第1実施形態に係る締結構造10の概略構成を模式的に示す図である。
図4(a)は、前述の第1部材20と第2部材30とが締結している状態における締結構造10を示す拡大断面図である。
図4(b)は、締結構造10を構成するボルト1の近傍を示す拡大平面図である。
図4(c)は、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態(ボルト1の上方への移動が終了した状態)における締結構造10を示す拡大断面図である。
図4に示すように、第1実施形態に係る締結構造10は、ボルト1と、孔部2と、雌ねじ部3と、弾性部材4と、を備え、第1部材20(本実施形態では、上底板25)と第2部材30(本実施形態では、下胴部32)とを締結するものである。また、
図4に示す例では、締結構造10は、環状部材5を備えている。
図4に示す環状部材5は、その外形が閉曲面を構成する完全環状部材である。
【0032】
ボルト1は、雄ねじ部11と、第1頭部12と、第2頭部13と、連結部14と、を具備する。
雄ねじ部11は、一般的なボルトと同様に、ボルト1の下端部に設けられている。
第1頭部12は、一般的なボルトと同様に、ボルト1の上端部に設けられている。第1頭部12は、必ずしもこれに限られるものではないが、一般的な六角穴付きボルトと同様に、六角穴121を有する。このため、六角穴121に六角レンチを挿入して回転させることで、第1頭部12、ひいてはボルト1を回転させることができる。
第2頭部13は、第1頭部12よりも下方に位置し、第1部材20と第2部材30とが締結している状態(
図4(a)に示す状態)において第1部材20(上底板25)に接する。第2頭部13は、必ずしもこれに限られるものではないが、第1頭部12と同一の外径を有する。
連結部14は、第1頭部12と第2頭部13とを連結して上下方向(Z方向)に延び、第1頭部12及び第2頭部13よりも小径である。
【0033】
孔部2は、第1部材20(上底板25)に設けられ、ボルト1が挿入される。孔部2の内径は、雄ねじ部11の外径よりも大きく、第2頭部13の外径よりも小さければよい。
雌ねじ部3は、第2部材30(下胴部32)における孔部2と上下方向に対向する位置に設けられ、ボルト1の雄ねじ部11と噛み合う。
【0034】
弾性部材4は、ボルト1に上向き(Z方向上向き)の力を作用させる機能を有する。弾性部材4としては、必ずしもこれに限るものではないが、本実施形態では、ばねが用いられている。ばねとしては、金属ばねに限るものではなく、樹脂ばねを用いてもよい。弾性部材4は、一端(第1実施形態では、下端)が連結部14に対して取り付けられており、他端(第1実施形態では、上端)が第1部材20(
図4に示す例では、カバー27)に対して取り付けられている。
図4に示す例では、弾性部材4の下端は、環状部材5を介して、連結部14に対して取り付けられている。環状部材5は、連結部14が挿入される孔部51を有し、環状部材5の孔部51の内径は、連結部14の外径よりも大きい。また、環状部材5の孔部51の内径は、第1頭部12の外径及び第2頭部13の外径よりも小さい。これにより、環状部材5は、連結部14に対して上下方向周りに回転可能に取り付けられている。また、環状部材5は、連結部14に対して上下方向に移動可能である。そして、弾性部材4の下端が、環状部材5に取り付けられている。
図4に示す例では、環状部材5に取付孔52が設けられ、弾性部材4の下端が取付孔52に係止されることで、環状部材5に取り付けられているが、必ずしもこれに限るものではない。以上の構成により、弾性部材4の下端は、環状部材5を介して、連結部14に対して上下方向周りに回転可能に取り付けられている。
また、
図4に示す例では、弾性部材4の上端は、カバー27に取り付けられたL型ブラケット271を介して、カバー27に対して取り付けられている。L型ブラケット271は、例えば、ねじ止めや溶接によってカバー27に取り付けられる。また、弾性部材4の上端は、環状部材5と同様に、例えば、L型ブラケット271に取付孔が設けられ、この取付孔に係止されることで、L型ブラケット271に取り付けられる。以上の構成により、弾性部材4の上端は、L型ブラケット271を介して、カバー27に取り付けられている。
【0035】
第1実施形態の弾性部材4は、第1部材20(上底板25)と第2部材30(下胴部32)との締結が解除された状態(すなわち、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3とが噛み合っていない状態)において、自然長よりも上下方向に伸長していることで、ボルト1に上向きの力を作用させるように構成されている。
具体的には、
図4(a)に示す締結状態から、ボルト1の第1頭部12を締め付け方向と逆方向に回転させることで、ボルト1は雌ねじ部3に対して上方に移動し、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3との噛み合いが解除される。この時点で、弾性部材4は、自然長よりも伸長しているため、弾性部材4は収縮し、連結部14に対して取り付けられた弾性部材4の下端が上方に移動する。これにより、弾性部材4の下端が取り付けられた環状部材5も上方に移動し、第1頭部12を介してボルト1が上方に引っ張り上げられることになる。ボルト1は、ボルト1及び環状部材5の自重と、弾性部材4によって作用する上向きの力が釣り合うまで、引っ張り上げられる。
【0036】
この際、弾性部材4の弾性定数(本実施形態では、ばね定数)や自然長が、
図4(c)に示すように、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態において(ボルト1の上方への移動が終了した状態において)、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置するように、また、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の上端2bよりも下方に位置するように、適切な値に設定されている。
【0037】
以上に説明した構成を有するボルト1及び環状部材5は、例えば、3Dプリンターを用いて、その全体を一体成型して製造することが可能である。また、3Dプリンターによるボルト1の製造を途中で中断し(例えば、雄ねじ部11、第2頭部13及び連結部14を製造した時点で中断し)、別途用意した環状部材5を連結部14に嵌め込んだ後に、3Dプリンターによるボルト1の製造を再開(例えば、第1頭部12を製造)して製造することも可能である。
【0038】
以上に説明したように、第1実施形態に係る締結構造10は、比較的簡易且つ交換容易な構成であり、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態において、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置するため、
図2を参照して説明した従来の締結構造10’のような不具合を低減可能である。また、上端が第1部材20に対して取り付けられた弾性部材4の下端が、ボルト1の連結部14に対して取り付けられているため、仮に、ボルト1が孔部2から外れたとしても、ボルト1が落下して紛失する等のおそれもない。
特に、
図4に示す例では、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置し、なお且つ、上端2bよりも下方に位置する(すなわち、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2内に位置する)ため、ボルト1が孔部2から外れ難く、例えば、メンテナンス後に第1部材20と第2部材30とを再び締結する際、ボルト1を孔部2に挿入する手間が掛からないという利点が得られる。
また、締結構造10によって第1部材20と第2部材30とを締結する際には、ボルト1を上下方向周りに回転させることで、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3とを噛み合わせるが、弾性部材4の下端が、連結部14に対して上下方向周りに回転可能である(換言すれば、ボルト1(連結部14)が上下方向周りに回転しても、これに伴って、弾性部材4の下端がボルト1と共に回転することがない)ため、弾性部材4が捻れるおそれがない。
【0039】
なお、
図4には、弾性部材4の下端が、環状部材5を介して、連結部14に対して取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限るものではない。
図5は、第1実施形態に係る締結構造10の変形例の概略構成を模式的に示す図である。
図5(a)は、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態(ボルト1の上方への移動が終了した状態)における第1変形例の締結構造10Aを示す拡大断面図である。
図5(b)は、締結構造10Aを構成するボルト1の近傍を示す拡大平面図である。
図5(c)は、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態(ボルト1の上方への移動が終了した状態)における第2変形例の締結構造10Bを示す拡大断面図である。
図5(d)は、締結構造10Bを構成するボルト1の近傍を示す拡大平面図である。
【0040】
図5(a)及び
図5(b)に示すように、第1変形例の締結構造10Aでは、弾性部材4の下端部41が、連結部14に対して巻かれることで連結部14に対して直接的に取り付けられている点が、前述の締結構造10と異なり、その他の構成は締結構造10と同様である。弾性部材4の下端部41の内径は、連結部14の外径よりも大きい。また、弾性部材4の下端部41の内径は、第1頭部12の外径及び第2頭部13の外径よりも小さい。
また、
図5(c)及び
図5(d)に示すように、第2変形例の締結構造10Bでは、弾性部材4の下端が、部分的環状部材であるE型リング6を介して、連結部14に対して取り付けられている点が、前述の締結構造10と異なり、その他の構成は締結構造10と同様である。第2変形例の締結構造10Bに用いるE型リング6は、連結部14に対して上下方向周りに回転可能となるように、その呼び径(内径)が連結部14の外径よりも若干大きくなっている。具体的には、呼び径(内径)が連結部14の外径よりも若干大きな既存のE型リング6を選択して用いたり、既存のE型リング6の内側を削って、呼び径(内径)を連結部14の外径よりも若干大きくするといった態様が考えられる。また、E型リング6の呼び径(内径)は、第1頭部12の外径及び第2頭部13の外径よりも小さい。なお、E型リング6は、連結部14に対して上下方向周りに回転可能であると共に、連結部14に対して取り付けられた後には、連結部14から容易に外れないものである限り、その形状に制約はない。弾性部材4の下端のE型リング6への取り付け方法としては、例えば、締結構造10と同様に、E型リング6に取付孔(図示せず)を設けて、この取付孔に弾性部材4の下端を係止することで取り付けることが考えられるが、必ずしもこれに限るものではない。
【0041】
第1変形例の締結構造10A及び第2変形例の締結構造10Bについても、締結構造10と同様に、比較的簡易且つ交換容易な構成であり、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態において、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置し、雄ねじ部11の下端が孔部2の上端2bよりも下方に位置するため、
図2を参照して説明した従来の締結構造10’のような不具合を低減可能である。また、上端が第1部材20に対して取り付けられた弾性部材4の下端が、ボルト1の連結部14に対して取り付けられているため、仮に、ボルト1が孔部2から外れたとしても、ボルト1が落下して紛失する等のおそれもない。
【0042】
なお、連結部14に対する弾性部材4の下端の取付方法は、締結構造10、10A、10Bの態様に限るものではなく、弾性部材4の下端が連結部14に対して上下方向周りに回転可能に取り付けられる限りにおいて、その他の種々の態様を採用することも可能である。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る締結構造10Cについて説明する。
図6は、第2実施形態に係る締結構造10Cの概略構成を模式的に示す図である。
図6(a)は、前述の第1部材20と第2部材30とが締結している状態における締結構造10Cを示す拡大断面図である。
図6(b)は、締結構造10Cを構成するボルト1の近傍を示す拡大平面図である。
図6(c)は、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態(ボルト1の上方への移動が終了した状態)における締結構造10Cを示す拡大断面図である。
図6に示すように、第2実施形態に係る締結構造10Cは、ボルト1と、孔部2と、雌ねじ部3と、弾性部材4と、を備え、第1部材20(上底板25)と第2部材30(下胴部32)とを締結するものである。また、
図6に示す例では、締結構造10Cは、環状部材5を備えている。以上の点では、第2実施形態に係る締結構造10Cは、第1実施形態に係る締結構造10と同様の構成である。
以下、第2実施形態に係る締結構造10Cの具体的な内容について、第1実施形態に係る締結構造10と同様の構成要素については、同じ符号を付すに留めて適宜説明を省略し、主として第1実施形態に係る締結構造10と異なる点について説明する。
【0044】
第2実施形態に係る締結構造10Cの弾性部材(ばね)4は、第1頭部12と第1部材20(上底板25)との間において、ボルト1の第2頭部13及び連結部14を囲うように配置されている。換言すれば、弾性部材4の内径は、第2頭部13及び連結部14の外径よりも大きくなっている。弾性部材4は、一端(第2実施形態では、上端)が環状部材5を介して連結部14に対して取り付けられており、他端(第2実施形態では、下端)が第1部材20(
図6に示す例では、上底板25)に対して取り付けられている。
弾性部材4の上端の環状部材5への取り付け方法は、第1実施形態に係る締結構造10における弾性部材4の下端の環状部材5への取り付け方法と同様である。
図6に示す例では、弾性部材4の下端は、上底板25に取り付けられたY方向に延びる一対の係止部材7を介して、上底板25に対して取り付けられている。一対の係止部材7は、例えば、ねじ止めによって上底板25に取り付けられる。一対の係止部材7は、弾性部材4の外径(ばね径)に応じた距離だけX方向に離隔しており、弾性部材4の下端近傍をY方向から一対の係止部材7の間に挿入し、一対の係止部材7の間で弾性部材4の下端近傍を挟むことで、弾性部材4の下端が上底板25に対して取り付けられている。なお、
図6に示す例では、弾性部材4の下端近傍がY方向にずれて一対の係止部材7の間から外れることを防止するため、弾性部材4の下端近傍をY方向から一対の係止部材7の間に挿入した後、一対の係止部材7のY方向両端部の間にX方向に延びる一対のストッパ(図示せず)を取り付けることが好ましい。
なお、
図6では、弾性部材4の下端近傍を、一対の係止部材7を介して、上底板25に対して直接取り付ける場合を例示したが、これに限られるものではない。例えば、弾性部材4の下端に、図示を省略する環状部材(完全環状部材、部分的環状部材)を溶接等によって取り付け、この環状部材を一対の係止部材7の間で挟むことで、弾性部材4の下端を上底板25に対して間接的に取り付けることも可能である。また、
図6では、Y方向に延びる一対の係止部材7を用いる場合を例示したが、これに限られるものではなく、弾性部材4の下端を第1部材20(上底板25)に取り付けることができる限りにおいて、種々の態様を採用することが可能である。
【0045】
第2実施形態の弾性部材4も、ボルト1に上向きの力を作用させる点においては、第1実施形態の弾性部材4と同様である。しかしながら、第2実施形態の弾性部材4は、第1実施形態の弾性部材4と異なり、第1部材20(上底板25)と第2部材30(下胴部32)との締結が解除された状態(すなわち、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3とが噛み合っていない状態)において、自然長よりも上下方向に収縮していることで、ボルト1に上向きの力を作用させるように構成されている。
具体的には、
図6(a)に示す締結状態から、ボルト1の第1頭部12を締め付け方向と逆方向に回転させることで、ボルト1は雌ねじ部3に対して上方に移動し、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3との噛み合いが解除される。この時点で、弾性部材4は、自然長よりも収縮しているため、弾性部材4は伸長し、連結部14に対して取り付けられた弾性部材4の上端が上方に移動する。これにより、弾性部材4の上端が取り付けられた環状部材5も上方に移動し、第1頭部12を介してボルト1を上方に押し上げることになる。ボルト1は、ボルト1及び環状部材5の自重と、弾性部材4によって作用する上向きの力が釣り合うまで、押し上げられる。
【0046】
この際、弾性部材4の弾性定数(本実施形態では、ばね定数)や自然長が、
図6(c)に示すように、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態において(ボルト1の上方への移動が終了した状態において)、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置するように、また、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の上端2bよりも下方に位置するように、適切な値に設定されている。
【0047】
以上に説明したように、第2実施形態に係る締結構造10Cも、比較的簡易且つ交換容易な構成であり、第1部材20と第2部材30との締結が解除された状態において、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置するため、
図2を参照して説明した従来の締結構造10’のような不具合を低減可能である。また、下端が第1部材20に対して取り付けられた弾性部材4の上端が、ボルト1の連結部14に対して取り付けられているため、仮に、ボルト1が孔部2から外れたとしても、ボルト1が落下して紛失する等のおそれもない。
特に、
図6に示す例では、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2の下端2aよりも上方に位置し、なお且つ、上端2bよりも下方に位置する(すなわち、ボルト1の雄ねじ部11の下端が孔部2内に位置する)ため、ボルト1が孔部2から外れ難く、例えば、メンテナンス後に第1部材20と第2部材30とを再び締結する際、ボルト1を孔部2に挿入する手間が掛からないという利点が得られる。
また、締結構造10Cによって第1部材20と第2部材30とを締結する際には、ボルト1を上下方向周りに回転させることで、ボルト1の雄ねじ部11と雌ねじ部3とを噛み合わせるが、弾性部材4の上端が、連結部14に対して上下方向周りに回転可能である(換言すれば、ボルト1(連結部14)が上下方向周りに回転しても、これに伴って、弾性部材4の上端がボルト1と共に回転することがない)ため、弾性部材4が捻れるおそれがない。
【0048】
なお、
図6には、弾性部材4の上端が、環状部材5を介して、連結部14に対して取り付けられている例を示したが、本発明はこれに限るものではない。
図示を省略するが、第1実施形態に係る締結構造10と同様に、弾性部材4の上端部が連結部14に対して巻かれることで連結部14に対して直接的に取り付けられた態様や、弾性部材4の上端がE型リングを介して連結部14に対して取り付けられた態様など、弾性部材4の上端が連結部14に対して上下方向周りに回転可能に取り付けられる限りにおいて、種々の態様を採用することが可能である。
【0049】
本実施形態では、締結構造10~10Cの締結方向が上下方向であり、第1部材20が第2部材30よりも上方に位置する場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る締結構造は、これに限るものではなく、締結方向が上下方向であり、第1部材20が第2部材30よりも下に位置する場合や、締結方向が水平方向である場合や、その他の任意の締結方向である場合についても、同様に適用可能である。
【0050】
また、本実施形態では、コイル26を備えた誘導結合プラズマ(ICP)方式のプラズマ処理装置に適用する締結構造10~10Cを例に挙げて説明したが、本発明に係る締結構造は、これに限るものでなく、平行平板を備えた容量結合プラズマ(CCP)方式のプラズマ処理装置など、種々の方式のプラズマ処理装置に適用可能である。
【0051】
さらに、本実施形態では、プラズマ処理装置に適用する締結構造10~10Cを例に挙げて説明したが、本発明に係る締結構造は、これに限るものでなく、第1部材と第2部材とを締結する限りにおいて、種々の対象に適用可能である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・ボルト
2・・・孔部
2a・・・孔部の下端(孔部の第2部材側の端)
3・・・雌ねじ部
4・・・弾性部材
5・・・環状部材
10、10A、10B、10C・・・締結構造
11・・・雄ねじ部
12・・・第1頭部
13・・・第2頭部
14・・・連結部
20・・・第1部材
30・・・第2部材