(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121653
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ヘッドレスト支持構造
(51)【国際特許分類】
B60N 2/806 20180101AFI20240830BHJP
【FI】
B60N2/806
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028869
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 享大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸信
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087DA06
3B087DC05
3B087DC06
(57)【要約】
【課題】ステー保持部材における応力の集中を低減させることができるヘッドレスト支持構造を得る。
【解決手段】ヘッドレスト支持構造10は、シートバックフレームのアッパフレームと、ステー保持部材20とを備える。アッパフレームは上挿通孔及び下挿通孔を有する。ステー保持部材20は、内部にヘッドレストステーを挿入して保持する筒孔22が形成された軸部26を有する。ステー保持部材20は、軸部26が上挿通孔及び下挿通孔に挿入された状態で、上挿通孔の下端及び下挿通孔の下端に各々対応する位置に配置された抜け止め用の上爪部30及び下爪部32を備える。ステー保持部材20は、上爪部30及び下爪部30の周方向両側に各々配置され、上爪部30の上端から下爪部32の下端まで延在されたスリット34を備える。ステー保持部材20は、スリット34を上下に分割する架設部36を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート上下方向に所定間隔を空けて形成された上挿通孔及び下挿通孔を有するシートバックフレームのアッパフレームと、
前記上挿通孔及び前記下挿通孔に挿入される軸部を有し、該軸部が前記上挿通孔及び前記下挿通孔に挿入された状態で、前記上挿通孔の下端及び前記下挿通孔の下端に各々対応する位置に配置された抜け止め用の上爪部及び下爪部と、該上爪部及び該下爪部の周方向両側に各々配置され、前記上爪部の上端から前記下爪部の下端まで延在されたスリットと、該スリットの上下方向中間部に設けられ、周方向に延在し両側の前記スリットを架設して該スリットを上下に分割する架設部とを備え、内部にヘッドレストステーを挿入して保持する筒孔が形成されたステー保持部材と、
を備えるヘッドレスト支持構造。
【請求項2】
前記軸部は、前記上挿通孔及び前記下挿通孔に各々対応する位置に前記軸部の外周面から外方に突出するガタ防止用の凸部を有する請求項1に記載のヘッドレスト支持構造。
【請求項3】
前記上爪部及び前記下爪部は、前記軸部の外周面において軸方向に対して平行な方向に並んで配置されている請求項1に記載のヘッドレスト支持構造。
【請求項4】
前記スリットは、前記上爪部及び前記下爪部の周方向の幅よりも狭い幅で形成されている請求項1に記載のヘッドレスト支持構造。
【請求項5】
前記上挿通孔は、周縁にキー溝を有し、
前記軸部は、シート上下方向の上部に形成されたフランジを有し、該フランジの下面に前記軸部の外周面から外方に突出し、前記キー溝に嵌合する嵌合凸部を有している請求項1に記載のヘッドレスト支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の頭部を支えるヘッドレスト支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドレストをシートバックに固定する手段としては、シートバックにヘッドレストブッシュ(以下、HRブッシュと称する)を取付け、さらに、当該HRブッシュに設けられた軸方向を貫通する孔にヘッドレストが装着されたヘッドレストステーを挿入する構造が知られている。例えば特許文献1に記載された構造では、シートバックに設けられた筒状の保持部にHRブッシュの筒部を支持させるために、HRブッシュの筒部に外方に向かって円弧状に形成されたテンションバネを設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、シートバックにHRブッシュを支持させる構造として、シートバックの骨格を構成するバックフレームの上端部に上下方向に所定間隔を空けて形成された上挿通孔及び下挿通孔に、HRブッシュの軸部を挿通させる方法がある。この方法においては、HRブッシュの軸部の下部において下挿通孔からの抜け止め用の爪部が形成されている。しかしながら、軸部の下部においてのみに爪部が形成されている場合、HRブッシュにヘッドレストステーが挿入された状態でヘッドレストステーに荷重が掛かると、爪部に応力が集中してしまう場合があり、改善が望まれている。特許文献1に記載の構造においては、テンションバネはHRブッシュの軸部の上下方向の中央よりも上方側に設けられた筒部に形成されているため、軸部の上部に応力が集中してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、HRブッシュにおける応力の集中を低減させることができるヘッドレスト支持構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のヘッドレスト支持構造は、シート上下方向に所定間隔を空けて形成された上挿通孔及び下挿通孔を有するシートバックフレームのアッパフレームと、前記上挿通孔及び前記下挿通孔に挿入される軸部を有し、該軸部が前記上挿通孔及び前記下挿通孔に挿入された状態で、前記上挿通孔の下端及び前記下挿通孔の下端に各々対応する位置に配置された抜け止め用の上爪部及び下爪部と、該上爪部及び該下爪部の周方向両側に各々配置され、前記上爪部の上端から前記下爪部の下端まで延在されたスリットと、該スリットの上下方向中間部に設けられ、周方向に延在し両側の前記スリットを架設して該スリットを上下に分割する架設部とを備え、内部にヘッドレストステーを挿入して保持する筒孔が形成されたステー保持部材と、を備える。
【0007】
本発明の第1の態様のヘッドレスト支持構造によれば、ステー保持部材の軸部には、軸部がアッパフレームの挿通孔及び下挿通孔に挿入された状態で、上挿通孔の下端及び前記下挿通孔の下端に各々対応する位置に抜け止め用の上爪部及び下爪部が配置されている。そのため、ステー保持部材にヘッドレストステーが挿入された状態でヘッドレストステーに荷重が掛かっても、下爪部だけではなく上爪部にも応力が集中するため、上爪部と下爪部とに応力を分散することができる。これにより、ステー保持部材における応力の集中を低減させることができる。
【0008】
本発明の第2の態様のヘッドレスト支持構造は、第1の態様の構成において、前記軸部は、前記上挿通孔及び前記下挿通孔に各々対応する位置に前記軸部の外周面から外方に突出するガタ防止用の凸部を有する。
【0009】
本発明の第2の態様のヘッドレスト支持構造によれば、上挿通孔及び下挿通孔に各々対応する位置にガタ防止用の凸部が設けられている。そのため、この凸部により上挿通孔と軸部の間、及び下挿通孔と軸部の間の隙間を減らすことができるので、隙間による生じるガタつき等による異音を軽減することができる。
【0010】
本発明の第3の態様のヘッドレスト支持構造は、第1の態様又は第2の態様の構成において、前記上爪部及び前記下爪部は、前記軸部の外周面において軸方向に対して平行な方向に並んで配置されている。
【0011】
本発明の第3の態様のヘッドレスト支持構造によれば、上爪部及び下爪部は、軸部の外周面において軸方向に対して平行な方向に並んで配置されている。そのため、軸部に上爪部及び下爪部を形成し易くすることができるので、コストを低減することができる。
【0012】
本発明の第4の態様のヘッドレスト支持構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1つの態様の構成において、前記スリットは、前記上爪部及び前記下爪部の周方向の幅よりも狭い幅で形成されている。
【0013】
本発明の第4の態様のヘッドレスト支持構造によれば、スリットが上爪部及び下爪部の周方向の幅よりも狭い幅で形成されている。そのため、軸部の剛性が低減するのを防止することができる。
【0014】
本発明の第5の態様のヘッドレスト支持構造は、第1の態様~第4の態様の何れか1つの態様の構成において、前記上挿通孔は、周縁にキー溝を有し、前記軸部は、シート上下方向の上部に形成されたフランジを有し、該フランジの下面に前記軸部の外周面から外方に突出し、前記キー溝に嵌合する嵌合凸部を有している。
【0015】
本発明の第5の態様のヘッドレスト支持構造によれば、軸部はフランジと、フランジの下面に、上挿通孔の周縁に設けられたキー溝に嵌合する嵌合凸部とを有している。そのため、フランジにより軸部のシート下方向の移動を規制することができる。また、嵌合凸部がキー溝に嵌合可能とされる向きでしか、軸部をアッパフレームに組み付けることができないため、組付けの際の組付け方向を規制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のヘッドレスト支持構造によれば、ステー保持部材における応力の集中を低減させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態のヘッドレスト支持構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1の矢印A方向からみたアッパフレームの斜視図である。
【
図6】軸部が上挿通孔に挿入された状態のHRブッシュを斜め下側からみた斜視図である。
【
図7】軸部が上挿通孔及び下挿入孔に挿入された状態のHRブッシュを後方斜め上側からみた斜視図である。
【
図8】軸部が上挿通孔及び下挿入孔に挿入された状態のHRブッシュを模式的に示す側面断面図である。
【
図9】
図8のA-A線及びB-B線の断面を模式的に示す断面図である。
【
図10】従来のHRブッシュの解析結果(A)と本実施形態のHRブッシュの解析結果(B)をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1~
図10を用いて、本発明の一実施形態のヘッドレスト支持構造について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方(車幅方向一側)を示し、矢印UPは車両上方を示す。
図1は本実施形態のヘッドレスト支持構造を示す斜視図である。
【0019】
図1に示されるように、本発明の一実施形態のヘッドレスト支持構造10が適用された車両用シート11は、乗員が着座するシートクッション(図示省略)と、シートクッションの後端部から立設され、シートクッションに着座した乗員の上体を支持するシートバック12を備えている。シートバック12の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト14が設けられている。なお、
図1においては、シートバック12としてシートバックフレーム18が示されており、シートバックパッド等の図示は省略されている。
【0020】
ヘッドレスト14は、乗員の頭部を支えるヘッドレスト本体14Aと、シートバック12に対してヘッドレスト本体14Aを上下方向に移動可能とするヘッドレストステー16と、を備えている。
【0021】
ヘッドレスト本体14Aは、車幅方向を長手方向として延在し、車両前後方向に扁平とされた樽型形状とされている。具体的には、ヘッドレスト本体14Aは、発泡ウレタンにより形成されたクッション材が布材やレザー等により形成された表皮材に被われることにより構成されている。
【0022】
ヘッドレストステー16は、一例として鋼のパイプ材に曲げ加工が施されることにより形成されている。具体的には、
図1に示されるように、ヘッドレストステー16は、車両前方から見て略逆U字形状に形成されるとともに、車幅方向左側から見て、上端側を車両前方へ位置させるように屈曲されている。また、ヘッドレストステー16の上端側は、ヘッドレスト本体14Aに固定されており、ヘッドレスト本体14Aから下方に向けて一対の支柱が延設されている。そして、ヘッドレストステー16の一対の支柱部分は、後述するステー保持部材としてのHRブッシュ20の軸方向に設けられた筒孔22に挿入されている。
【0023】
一方、HRブッシュ20はシートバック12の上端部に固定される。本実施形態のヘッドレスト14は、HRブッシュ20を介してシートバック12に対して車両上下方向に移動可能に支持されている。なお、以下の説明において、ヘッドレストステー16とは、支柱部分を指すこととする。
【0024】
ヘッドレストステー16はHRブッシュ20の後述するストッパ部24に設けられたロック機構(図示省略)によって車両上下方向への相対移動を阻止されている。そして、左右一対のHRブッシュ20の内、少なくとも一方のストッパ部24に設けられ、ロック機構を解除するボタン24Aを操作することでヘッドレスト14は車両上下方向に移動が可能となる。
【0025】
また、ヘッドレスト14が装着されるシートバック12は、正面視で中空の略矩形状に形成されたシートバックフレーム18に発泡ウレタンにより形成されたシートバックパッドが固定されている。そして、シートバックパッドの表面が布材やレザー等により形成された表皮材に被われている。
【0026】
シートバックフレーム18は、シートクッション内に設けられた図示しないシートクッションフレームに連結されている。シートバックフレーム18は、断面略U字形状に屈曲された一対のサイドフレーム18Aを備えており、サイドフレーム18Aの上方には、アッパフレーム18Bが備えられている。アッパフレーム18Bは車両後方が開放したU字形状に形成されており(
図2参照)、アッパフレーム18Bの両端部が、一対のサイドフレーム18Aにそれぞれ固定されている。
【0027】
図2は
図1の矢印A方向からみたアッパフレーム18Bの斜視図である。
図2に示されるように、アッパフレーム18Bは、断面略U字状に屈曲されており、上端側において車幅方向に延在する上板部181と、上板部181の下方に所定間隔を空けて車幅方向に延在する下板部182とを備えている。上板部181及び下板部182の前端部は、上下方向に延在する縦板部183によって接続されている。また、下板部182の後端は、下方に突出する背面板部184を有しており、背面板部184の下端は、前方に略直角に折り曲げられた折曲部185を有している。
【0028】
上板部181は、車幅方向の両端部にHRブッシュ20が挿通される上挿通孔186を各々有している。また、下板部182は、車幅方向の両端部であって上挿通孔186に対応する位置に、HRブッシュ20が挿通される下挿通孔188を各々有している。
【0029】
図3は
図2の上挿通孔186の拡大図である。
図3に示されるように、上挿通孔186は、主要孔である略円形状の支持孔186Aを有しており、支持孔186Aには、略等間隔に4つの半円形状の半円孔186Bが形成されている。支持孔186Aの周縁には、前後方向に各々下方に折り曲げられて形成される支持孔フランジ186Cが設けられている。また、車幅方向の右側(車両内側)には、後述するHRブッシュ20の嵌合凸部29が嵌合する矩形状のキー溝186Dが設けられている。
【0030】
図4は
図2の下挿通孔188の拡大図である。
図4に示されるように、下挿通孔188は、上挿通孔186と同様に、主要孔である略円形状の支持孔188Aを有しており、支持孔188Aには、略等間隔に4つの半円形状の半円孔188Bが形成されている。支持孔188Aの周縁には、前後方向に各々下方に折り曲げられて形成される支持孔フランジ188Cが設けられている。
【0031】
図1及び
図2に示されるように、アッパフレーム18Bの上挿通孔186及び下挿通孔188には、樹脂により成形された略円筒状のHRブッシュ20が挿入される。
図5は本実施形態のHRブッシュ20の斜視図である。
図5に示されるように、HRブッシュ20には、上端から下端に向けてヘッドレストステー16が挿入される筒孔22が設けられている。また、HRブッシュ20は、その上部に、水平面に対して車両前方に傾斜された(
図8参照)略円形板状のストッパ部24が設けられている。また、ストッパ部24の下方には、略円筒状の軸部26が設けられている。
【0032】
軸部26は、上下方向の上部に外方に向けて突出する略円形板状のフランジ28を有している。フランジ28の上面には、軸部26の周面に沿って上方向にストッパ部24の下面まで延在するリブ28Aが、一例として周方向に略等間隔に4つ設けられている。さらに、フランジ28の下面の車幅方向右側には、軸部26の外周面26Aから右側外方に突出し、上述した上挿通孔186のキー溝186Dに嵌合する嵌合凸部29が設けられている。
【0033】
嵌合凸部29は、一例として、右側が開放した略矩形筒状に形成されており、下面は円弧状に形成されている。また、円弧状の下面には、軸部26の外周面26Aに沿って下方に延在し下側を頂点とする略直角三角形状のリブ29Aが設けられている。
【0034】
図5に示されるように、HRブッシュ20のフランジ28よりも下方の位置する軸部26の車両前側の外周面26Aには、上下方向に所定間隔を空けて各々上爪部30と下爪部32とが設けられている。上爪部30と下爪部32とは、HRブッシュをアッパフレーム18Bに係止するためのものであって、矩形状に形成され、上端が軸部26の外周面26Aから外側に突出し、下方に向かうにつれ車両後方側に傾斜した傾斜面を有している。上爪部30と下爪部32は、上爪部30と下爪部32とは、軸部26の外周面において、軸方向に対して平行な方向に並んで配置されている。具体的には、上爪部30と下爪部32は、上挿通孔186の下端と下挿通孔188の下端と各々対応する位置に設けられており、軸部26が上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入された際の抜け止め用の爪部として機能する。
【0035】
また、軸部26は、上爪部30及び下爪部32の周方向両側に各々配置され、上爪部30の上端から下爪部32の下端まで上下方向に延在されたスリット34を備えている。スリット34は、軸部26の外周面26Aを構成する外壁26Bに設けられており、外周面26Aから内面26Cに向かって幅狭となるように形成されている(
図9参照)。スリット34は、上爪部30及び下爪部32の周方向の幅よりも狭い幅で形成されている。
【0036】
また、軸部26は、スリット34の上下方向中間部に、周方向に延在し両側のスリット34を架設する帯状の架設部36を備えている。上爪部30の下方に位置する上爪下側面37A及び上爪部30の上方に位置する上爪上側面37Bと、下爪部32の上方に位置する下爪上側面37Cとを、外周面26Aよりも内側に配設することにより、架設部36を外周面26Aと同一周面上に位置させている。
【0037】
そして、上爪部30と下爪部32とは、両側のスリット34により上端側が後方向に撓むことが可能とされており、HRブッシュ20が上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入される際、HRブッシュ20の軸部26の外周面26Aよりも内側に収容される。
【0038】
また、上爪部30と上爪上側面37Bとの間には、上爪部30の上端よりも内側に位置し、上爪上側面37Bよりは外側に位置する上爪段面38Aが設けられている。上爪段面38Aには、外方(前方)に向かって矩形状に突出する凸部39が周方向に間隔を空けて2つ設けられている。同様に下爪部32と下爪上側面37Cとの間には、下爪部32の上端よりも内側に位置し、下爪上側面37Cよりは外側に位置する下爪段面38Bが設けられている。下爪段面38Bにも、外方(前方)に向かって矩形状に突出する凸部39が周方向に間隔を空けて2つ設けられている。これらの凸部39は、それぞれ前方側の支持孔フランジ186C及び前方側の支持孔フランジ188Cに対応する位置に配設されている。
【0039】
図6は軸部26が上挿通孔186に挿入された状態のHRブッシュ20を斜め下側からみた斜視図である。
図6に示されるように、軸部26は、車両後方側の外周面26Aの後方側の支持孔フランジ186Cに対応する位置に、外方(後方)に向かって矩形状に突出する凸部39を周方向に間隔を空けて2つ備えている。また、図示は省略するが、軸部26は、車両後方側の外周面26Aの後方側の支持孔フランジ188Cに対応する位置にも、外方(後方)に向かって矩形状に突出する凸部39を周方向に間隔を空けて2つ備えている。
【0040】
以上のように本実施形態のヘッドレスト支持構造10は構成されている。なお、本実施形態のヘッドレスト支持構造10では、上述の構成のうち、アッパフレーム18Bと、ヘッドレストステー16と、HRブッシュ20と、を主要な構成要素としている。
【0041】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
図7は軸部26が上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入された状態のHRブッシュ20を後方斜め上側からみた斜視図である。
図7に示されるように、HRブッシュ20をアッパフレーム18Bに装着する場合は、HRブッシュ20を、上挿通孔186の上端側から挿入することにより行う。
図7において図示は省略されているが、HRブッシュ20の挿入に際し、上爪部30及び下爪部32の傾斜面が上挿通孔186及び下挿通孔188の上端縁部に接触することで、上爪部30及び下爪部32は後方側に撓みながら外周面26Aよりも内側に収容されて上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入される。
【0043】
図8は軸部26が上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入された状態のHRブッシュ20を模式的に示す側面断面図である。挿入によりフランジ28が上板部181に当接されると、上挿通孔186の下端側から上爪部30が前方外側に突出し、かつ下挿通孔188の下端側から下爪部32が前方側に突出する。そして、上爪部30の上端に形成された壁面が支持孔フランジ186Cの下端面に係止され、下爪部32の上端に形成された壁面が支持孔フランジ188Cの下端面に係止される。これにより、HRブッシュ20はアッパフレーム18B内において、上下方向が拘束された状態で保持される。
【0044】
本実施形態においては、上爪部30と下爪部32とが、軸部26の外周面26Aにおいて軸方向に対して平行な方向に並んで配置されている。そのため、軸部26に上爪部30及び下爪部32を形成し易くすることができるので、コストを軽減することができる。また、スリット34は、上爪部30及び下爪部32の周方向の幅よりも狭い幅で形成されているので、軸部26の剛性が低減するのを防止することができる。また、HRブッシュ20においては、上爪部30と下爪部32とが各々アッパフレーム18Bに係止され、スリット34の上下方向の中間部には、架設部36が設けられている。
【0045】
図10は比較例としての従来のHRブッシュ120の解析結果(A)と本実施形態のHRブッシュ20の解析結果(B)をそれぞれ模式的に示す斜視図である。
図10(A)に示される従来のHRブッシュ120は、上爪部を有しておらず、下爪部132のみを有している。
図10(B)に示される本実施形態のHRブッシュ20は、上爪部30及び下爪部32、並びに架設部36を有している。解析は、一例としてHRブッシュ20、120にヘッドレストステー16、116が各々挿入された状態で、ヘッドレストステー16、116の軸方向上方から負荷を掛けることにより行った。
【0046】
図10(A)に示されるように、上爪部がない従来のHRブッシュ120においては、一点鎖線Eで示される円内、すなわち下爪部132付近、特に下爪部132の上側に応力が集中した。一方、
図10(B)に示されるように、上爪部30と下爪部32とを有する本実施液体のHRブッシュ20においては、一点鎖線E1、E2でそれぞれ示される円内、すなわち上爪部30付近と下爪部32付近に分散して応力が集中した。また、一点鎖線E3で示される円内、すなわちストッパ部24付近にも一点鎖線E1、E2で示されない領域と比較して高い応力が発生した。なお、HRブッシュ20において、架設部36を設けずに解析を行うと、応力が均等に分散されないという結果が得られた。
【0047】
これらの解析結果からも分かるように、HRブッシュ20にヘッドレストステー16が挿入された状態でヘッドレストステー16に荷重が掛かっても、下爪部32だけではなく上爪部30にも応力が集中するため、上爪部30と下爪部32とに応力を分散することができる。これにより、HRブッシュ20における応力の集中を低減させることができる。また、架設部36を設けることにより、応力を均等に分散させることができる。
【0048】
なお、HRブッシュ20の向きを誤って上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入すると、嵌合凸部29が上板部181の上端に当接するため、フランジ28の下面が上板部181の上端面に当接されるまで挿入することはできない。すなわち、嵌合凸部29がキー溝186Dに挿通可能とされる向きでしか、HRブッシュ20をアッパフレーム18Bに組み付けることができないため、組付けの際の組付け方向を規制することができる。
【0049】
図9は
図8のA-A線及びB-B線の断面を模式的に示す断面図である。なお、
図9においては便宜上、以下の説明に不要な箇所については図示していない場合がある。
図9に示されるように、軸部26が上挿通孔186及び下挿通孔188に挿入されると、軸部26は軸心に対して対向する一対の支持孔フランジ186C、188Cの間に圧入される。そして、上爪部30が支持孔フランジ186Cに係止され、下爪部32が支持孔フランジ188Cに係止された状態で、凸部39が支持孔フランジ186C、188Cを押圧することにより、軸部26は支持孔フランジ186C、188Cに固定される。
【0050】
すなわち、上挿通孔186の支持孔フランジ186Cと軸部26との間、及び下挿通孔188の支持孔フランジ188Cと軸部26との間の隙間を凸部39により減らすことができる。これにより、隙間により生じるガタつき等による異音を軽減することができる。
【0051】
(その他の態様)
なお、本実施形態の支持孔フランジ186C及び支持孔フランジ188Cは、車両前後方向に設けられているが、本発明はこれに限られない。例えば車幅方向に設けられていてもよい。この場合、支持孔フランジ186C及び支持孔フランジ188Cの位置に合わせて、上爪部30及び下爪部32、並びに凸部39も車幅方向に設ければよい。
【0052】
また、本実施形態の凸部39は矩形状に突出しているが、本発明はこれに限られない。例えば球状に突出していてもよいし、支持孔フランジ186C、188Cと軸部26との隙間を低減することができれば、何れの形状であってもよい。
【0053】
また、本実施形態の上爪部30及び下爪部32は、上述の形状としたが、本発明はこれに限られない。例えば、上挿通孔186及び下挿通孔188が各々、支持孔フランジ186C、188Cを有していない場合、支持孔186A、188Aの下端に、上爪部30及び下爪部32の上端に形成された壁面がそれぞれ当接すればよい。また、凸部39も、支持孔186A、188Aの内壁に当接する位置に設ければよい。
【0054】
また、本実施形態のHRブッシュ20は、右側のみに嵌合凸部29を有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、上挿通孔186の周縁において、軸心に対向する位置に2つキー溝186Dが設けられている場合には、軸部26の軸心に対向する位置であって、2つのキー溝186Dに各々対応する位置に嵌合凸部29を設ければよい。この場合、2つのキー溝186Dは互いに異なる形状とし、2つの嵌合凸部29は2つのキー溝186Dに対応させて互いに異なる形状とする。これにより、HRブッシュ20をアッパフレーム18Bに組み付ける際に、HRブッシュ20の組付け方向の間違いをなくすことができる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 ヘッドレスト支持構造
18 シートバックフレーム
18B アッパフレーム
186 上挿通孔
186D キー溝
188 下挿通孔
26 軸部
26A 外周面
16 ヘッドレストステー
20 HRブッシュ(ヘッドレストブッシュ;ステー保持部材)
22 筒孔
28 フランジ
29 嵌合凸部
30 上爪部
32 下爪部
34 スリット
36 架設部
39 凸部