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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121655
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】ヘッドレスト装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/815 20180101AFI20240830BHJP
   B60N 2/818 20180101ALI20240830BHJP
   B60N 2/882 20180101ALI20240830BHJP
   B60N 2/897 20180101ALI20240830BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
B60N2/815
B60N2/818
B60N2/882
B60N2/897
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028871
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】迫田 享大
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 幸信
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB05
3B087DC06
(57)【要約】
【課題】ステー保持部材の頭部の厚さを薄くすることができるヘッドレスト装置を得る。
【解決手段】ヘッドレスト装置10は、ヘッドレストステー16と、ステー保持部材20と、ロック機構30とを備える。ロック機構30は、操作部材50と弾性部材60と制限部材70とを備える。制限部材70は、操作部材50のボタン部の操作方向からみて長手方向をヘッドレストステー16の軸方向と直交させて操作部材50の本体部54に装着される。操作部材50は、操作部材50のボタン部の操作方向からみて、制限部材70に対して操作部材50がステー保持部材20の頭部24下面241のシート前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有している。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドレストを支持し、外周面に1以上のノッチを有する筒状のヘッドレストステーと、
シートバックフレームのアッパフレームに固定される軸部と、該軸部のシート上下方向の上側に該軸部よりも大きい径を有し、内部に矩形状の空間を有して、外周面に前記空間と連通する開口を有し、シート上下方向下側の下面が前記軸部の軸方向に直交する平面に対してシート前後方向に傾きを有する抜け止め用の頭部と、を備え、内部に前記ヘッドレストステーが挿入されて保持する筒孔が形成されたステー保持部材と、
前記ステー保持部材から前記ヘッドレストステーが離脱することを防止するロック機構と、を備え、
前記ロック機構が、
一端側に前記頭部の前記空間に配置される板状の本体部を有し、他端側に前記開口から突出する操作用のボタン部を有して、前記本体部に前記ヘッドレストステーが挿通し、前記ボタン部の操作方向を長軸とする挿通孔が設けられた操作部材と、
前記頭部の前記空間に配置され、前記頭部の内面と前記操作部材の前記一端側との間に介在される弾性部材と、
前記ボタン部の操作方向から見て長手方向を前記ヘッドレストステーの軸方向と直交させて前記本体部に装着され、前記操作部材と共に移動し、前記ノッチに係止することにより前記ヘッドレストの上下動を制限する長尺状の制限部材と、を備え、
前記ボタン部の操作方向から見て、前記制限部材に対して前記操作部材が前記頭部の前記下面のシート前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有しているヘッドレスト装置。
【請求項2】
前記ボタン部の操作方向からみて、前記操作部材が前記頭部の前記下面に対して平行に配置されている請求項1に記載のヘッドレスト装置。
【請求項3】
前記ボタン部の操作方向からみて、前記操作部材が前記頭部の前記下面に対して傾きを有している請求項1に記載のヘッドレスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員の頭部を支えるヘッドレスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ヘッドレストをシートバックに固定する手段としては、シートバックにヘッドレストブッシュ(以下、HRブッシュと称する)を取付け、さらに、当該HRブッシュに設けられた軸方向を貫通する孔にヘッドレストが装着されたヘッドレストステーを挿入する構造が知られている。例えば特許文献1には、シートバックの上端の傾斜を考慮して軸部に対して頭部を傾斜して設けたHRブッシュの構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-267578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のHRブッシュの構造においては、一例として図8に示されるように、HRブッシュ520からヘッドレストステー516が離脱することを防止するロック機構530が設けられている。ロック機構530は、一例としてヘッドレストステー516に設けられたノッチ(図示省略)に係止し、ヘッドレストの上下動を制限する長尺状のピン570と、ピン570をノッチから離脱及び係止させる方向へ移動させる操作部材550とを備えている。ピン570は、ノッチに係止させ易くするために、操作部材550の移動方向すなわち車幅方向から見て長手方向がヘッドレストステー516の軸方向と直交するように配設されている。
【0005】
一方、ヘッドレスト装置において樹脂で成形される部材については、強度及び成形性の観点から樹脂成形上の最小肉厚Dが設定されている。そのため、特許文献1に記載されたような頭部が傾斜されたHRブッシュ520では、ピン570の傾きと操作部材550とを平行に配置する場合、ピン570及び操作部材550が配置されるストッパ部524の内部の空間5243もピン70及び操作部材550と平行に配置される。従って、最小肉厚D、D2との関係上、ストッパ部524の厚さを薄くするのは困難である。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、ステー保持部材の頭部の厚さを薄くすることができるヘッドレスト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様のヘッドレスト装置は、ヘッドレストを支持し、外周面に1以上のノッチを有する筒状のヘッドレストステーと、シートバックフレームのアッパフレームに固定される軸部と、該軸部のシート上下方向の上側に該軸部よりも大きい径を有し、内部に矩形状の空間を有して、外周面に前記空間と連通する開口を有し、シート上下方向下側の下面が前記軸部の軸方向に直交する平面に対してシート前後方向に傾きを有する抜け止め用の頭部と、を備え、内部に前記ヘッドレストステーが挿入されて保持する筒孔が形成されたステー保持部材と、前記ステー保持部材から前記ヘッドレストステーが離脱することを防止するロック機構と、を備え、前記ロック機構が、一端側に前記頭部の前記空間に配置される板状の本体部を有し、他端側に前記開口から突出する操作用のボタン部を有して、前記本体部に前記ヘッドレストステーが挿通し、前記ボタン部の操作方向を長軸とする挿通孔が設けられた操作部材と、前記頭部の前記空間に配置され、前記頭部の内面と前記操作部材の前記一端側との間に介在される弾性部材と、前記ボタン部の操作方向から見て長手方向を前記ヘッドレストステーの軸方向と直交させて前記本体部に装着され、前記操作部材と共に移動し、前記ノッチに係止することにより前記ヘッドレストの上下動を制限する長尺状の制限部材と、を備え、前記ボタン部の操作方向から見て、前記制限部材に対して前記操作部材が前記頭部の前記下面のシート前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有している。
【0008】
本発明の第1の態様のヘッドレスト装置において、制限部材は、ヘッドレストステーのノッチに係止させ易くするために、操作部材のボタン部の操作方向からみて長手方向がヘッドレストステーの軸方向と直交するように配設されている。一方、ヘッドレスト装置において樹脂で成形される部材については、強度及び成形性の観点から樹脂成形上の最小肉厚が設定されている。そのため、ステー保持部材の頭部の下面が軸部の軸方向に直交する平面に対してシート前後方向に傾きを有している場合、ステー保持部材内部において、制限部材の傾きと平行に操作部材を配置すると上記最小肉厚との関係上、ステー保持部材の頭部の厚さを薄くするのは困難である。
【0009】
本発明の第1の態様のヘッドレスト装置では、ボタン部の操作方向から見て、制限部材に対して操作部材が頭部の下面のシート前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有している。そのため、頭部の下面のシート前後方向の傾きに操作部材の傾きをより近づけることができる。これにより、操作部材の傾きが制限部材の傾きと平行である場合と比較して、シート下方側に位置する側の頭部の肉厚を薄くすることができるので、ステー保持部材の頭部の厚さを薄くすることができる。
【0010】
本発明の第2の態様のヘッドレスト装置は、第1の態様の構成において、前記ボタン部の操作方向からみて、前記操作部材が前記頭部の前記下面に対して平行に配置されている。
【0011】
本発明の第2の態様のヘッドレスト装置では、ボタン部の操作方向からみて、操作部材が頭部の下面に対して平行に配置されているので、操作部材の傾きが制限部材の傾きと平行である場合と比較して、頭部の肉厚をシート前後方向において全体的に薄くすることができるので、ステー保持部材の頭部の厚さをより薄くすることができる。
【0012】
本発明の第3の態様のヘッドレスト装置は、第1の態様の構成において、前記ボタン部の操作方向からみて、前記操作部材が前記頭部の前記下面に対して傾きを有している。
【0013】
本発明の第3の態様のヘッドレスト装置では、ボタン部の操作方向からみて、操作部材が頭部の下面に対して傾きを有しているので、操作部材の傾きが制限部材の傾きと平行である場合と比較して、シート下方側に位置する側の頭部の肉厚を薄くすることができるので、頭部の強度を確保しつつ、ステー保持部材の頭部の厚さを薄くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明のヘッドレスト装置によれば、操作部材の傾きが制限部材の傾きと平行である場合と比較して、ステー保持部材の頭部の厚さを薄くすることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態のヘッドレスト装置を示す斜視図である。
図2】ヘッドレストステーの主要部拡大斜視図である。
図3】HRブッシュのストッパ部の拡大斜視図である。
図4】操作部材の斜視図である。
図5図3のA-A線断面をボタン部から見た断面図である。
図6】ピンと操作部材との位置関係を模式的に示す側面図である。
図7】本実施形態の図5に対応する変形例の構成を示す断面図である。
図8】従来のヘッドレスト装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図6を用いて、本発明の一実施形態のヘッドレスト装置について説明する。なお、図面に適宜示される矢印FRは車両前方を示し、矢印RHは車両右方(車幅方向一側)を示し、矢印UPは車両上方を示す。図1は本実施形態のヘッドレスト装置を示す斜視図である。
【0017】
図1に示されるように、本発明の一実施形態のヘッドレスト装置10が適用された車両用シート11は、乗員が着座するシートクッション(図示省略)と、シートクッションの後端部から立設され、シートクッションに着座した乗員の上体を支持するシートバック12を備えている。シートバック12の上端には、乗員の頭部を支持するヘッドレスト14が設けられている。なお、図1においては、シートバック12としてシートバックフレーム18が示されており、シートバックパッド等の図示は省略されている。
【0018】
ヘッドレスト14は、乗員の頭部を支えるヘッドレスト本体14Aと、シートバック12に対してヘッドレスト本体14Aを上下方向に移動可能とするヘッドレストステー16と、を備えている。
【0019】
ヘッドレスト本体14Aは、車幅方向を長手方向として延在し、車両前後方向に扁平とされた樽型形状とされている。具体的には、ヘッドレスト本体14Aは、発泡ウレタンにより形成されたクッション材が布材やレザー等により形成された表皮材に被われることにより構成されている。
【0020】
ヘッドレストステー16は、一例として鋼の筒状のパイプ材に曲げ加工が施されることにより形成されている。具体的には、図1に示されるように、ヘッドレストステー16は、車両前方から見て略逆U字形状に形成されるとともに、車幅方向左側から見て、上端側を車両前方へ位置させるように屈曲されている。また、ヘッドレストステー16の上端側は、ヘッドレスト本体14Aに固定されており、ヘッドレスト本体14Aから下方に向けて一対の支柱が延設されている。そして、ヘッドレストステー16の一対の支柱部分は、後述するステー保持部材としてのHRブッシュ20の軸方向に設けられた筒孔22(図3参照)に挿入されている。
【0021】
一方、HRブッシュ20はシートバック12の上端部に固定される。本実施形態のヘッドレスト14は、HRブッシュ20を介してシートバック12に対して車両上下方向に移動可能に支持されている。なお、以下の説明において、ヘッドレストステー16とは、支柱部分を指すこととする。
【0022】
ヘッドレストステー16はHRブッシュ20の後述するストッパ部24に設けられたロック機構30(図3参照)によってHRブッシュ20からヘッドレストステー16が離脱することが防止されている。図2はヘッドレストステー16の主要部拡大斜視図である。図2に示されるように、ヘッドレストステー16の外周面にはノッチ16Aが設けられている。本実施形態においては、一例として、ノッチ16Aは、車幅方向の左側のヘッドレストステー16の右側の外周面に軸方向に対して直交する方向に沿って延在するように配設されている。また、本実施形態においては、一例として、ノッチ16Aは、軸方向に沿って複数、具体的には例えば5つ設けられている。ロック機構30は、後述するピン70をノッチ16Aに係止させることにより、ヘッドレストステー16の車両上下方向の相対移動を制限している。なお、ロック機構30については、後で詳細に説明する。
【0023】
また、ヘッドレスト14が装着されるシートバック12は、正面視で中空の略矩形状に形成されたシートバックフレーム18に発泡ウレタンにより形成されたシートバックパッドが固定されている。そして、シートバックパッドの表面が布材やレザー等により形成されたシート表皮40に被われている。
【0024】
シートバックフレーム18は、シートクッション内に設けられた図示しないシートクッションフレームに連結されている。シートバックフレーム18は、断面略U字形状に屈曲された一対のサイドフレーム18Aを備えており、サイドフレーム18Aの上方には、アッパフレーム18Bが備えられている。アッパフレーム18Bは車両後方が開放したU字形状に形成されており、アッパフレーム18Bの両端部が、一対のサイドフレーム18Aにそれぞれ固定されている。
【0025】
本実施形態においては、一例として、このアッパフレーム18Bに左右一対のHRブッシュ20が固定され、アッパフレーム18Bに固定された左右一対のHRブッシュ20の筒孔22に左右のヘッドレストステー16が挿通される。
【0026】
図3は、HRブッシュ20のストッパ部24の拡大斜視図である。HRブッシュ20は、樹脂により形成されており、図1及び図3に示されるように、略円筒状の軸部26と、抜け止め用の頭部であるストッパ部24とを備え、上端から下端に向けてヘッドレストステー16が挿入される筒孔22が設けられている。
【0027】
ストッパ部24は、HRブッシュ20の上部すなわち軸部26の上方に、軸部26の軸方向に直交する平面Pに対して車両前方に傾斜して設けられている(図5参照)。本実施形態においては具体的に、ストッパ部24の下面241が軸部26の軸方向に直交する平面Pに対してシート前後方向に傾きを有して配設されている。
【0028】
ストッパ部24は、軸部26よりも大きい径を有し、かつシート表皮40の取付孔42及びアッパフレーム18Bに設けられた挿通孔(図示省略)よりも径の大きい略円形板状に形成されている。また、ストッパ部24は、上端において、車幅方向の左端から内側方向(右方向)に向かって略矩形状に切り欠かれ、後述する操作部材50のボタン部52が装着される装着部242を有している。ストッパ部24は、内部にロック機構30が配置される略矩形状の空間243を有している。ストッパ部24は、さらに外周面24A、具体的には、装着部242の右側面242Aに、空間243と連通する開口244を有している。
【0029】
次にロック機構30について説明する。本実施形態においてロック機構30は、ヘッドレストステー16の車両上下方向への相対移動を制限している。そして、ロック機構30は、左右一対のHRブッシュ20の内、少なくとも一方のストッパ部24に設けられており、具体的には、車幅方向の左側のHRブッシュ20のストッパ部24に設けられている。図4はロック機構30の主要部斜視図である。
【0030】
図3及び図4に示されるように、ロック機構30は、操作部材50、弾性部材60、及びピン70を備えており、ストッパ部24においてシート左右方向の左側から右方に向かって進退自在に取り付けられている。
【0031】
操作部材50は、一端側(車幅方向左側)にストッパ部24の空間243に配置される板状の本体部54を有し、他端側(車幅方向右側)にストッパ部24の開口244から突出し、乗員が押圧操作をする部位である操作用のボタン部52を有している。本体部54は、ボタン部52から右方向に延在し、内部に上下方向に貫通してヘッドレストステー16が挿通する挿通孔54Aを有している。挿通孔54Aは、一例としてボタン部52の操作方向を長軸とする長孔とされている。
【0032】
また、本体部54は、右端部に前後方向に貫通し、ピン70が挿通されるピン孔54Bを有している。本体部54は、前後の端面に各々ストッパ部24と係合する係合部としての爪部54Cを有している。
【0033】
弾性部材60は、図3に示されるように、ばねにより構成されており、本体部54の右側端面に突設された円柱(図示省略)の外周に装着される。弾性部材60は、ストッパ部24の空間243に配置され、ストッパ部24の内面と操作部材50の一端側(車幅方向左側)との間に介在される。
【0034】
図3に示されるように、ピン70は、長尺状の直方体で形成されており、左右方向の両端面に本体部54と係合する係合部としての溝部(図示省略)が形成されている。ピン70は、本体部54のピン孔54Bに挿通され、上記溝部が本体部54に係合されることにより本体部54に固定される。また、ピン70は、ボタン部52の操作による本体部54の操作方向すなわちシート左右方向への移動によって、ヘッドレストステー16に形成されたノッチ16Aに係止されたり、ノッチ16Aから離脱したりする。
【0035】
ヘッドレストステー16は、ストッパ部24に挿入されて、本体部54の挿通孔54Aを挿通する。なお、挿通孔54Aは長孔とされているため、ヘッドレストステー16が本体部54を挿通している部分において、ヘッドレストステー16と本体部54との間に操作部材50が移動(進退)できる間隙が存在しており、操作部材50は弾性部材60の付勢力によりヘッドレストステー16に押圧当接されている。操作部材50がヘッドレストステー16に押圧当接されることにより、ピン70がノッチ16A側に付勢されてピン70によりヘッドレストステー16がロックされる。
【0036】
操作部材50の本体部54、弾性部材60、及びピン70は、ストッパ部24の空間243に収容され、操作部材50のボタン部52だけが突出しており、このボタン部52を押すことによってロック解除ができるようになっている。すなわち、ボタン部52が押圧されることにより、本体部54が右側に移動して弾性部材60を弾性部材60の付勢方向とは反対側つまり右側に押圧して、ピン70がノッチ16Aから外れることにより、ヘッドレストステー16のロックが解除される。
【0037】
なお、図示は省略するが、ヘッドレストステー16には、上下方向に所定の間隔で複数のノッチ16Aが設けられており、所望する高さにおいてヘッドレストステー16をロックすることが可能となっている。なお、本実施形態において、ノッチ16Aは、溝で構成されており、軸方向に直交する方向に延在されている。
【0038】
図5図3のA-A線断面をボタン部から見た断面図である。なお、図5では説明を分かり易くするために、ボタン部52及び空間243の形状は簡略化して示してある。図5に示されるように、本実施形態のピン70は、ボタン部52側の操作方向から見て長手方向をヘッドレストステー16の軸方向と直交させて本体部54に装着されて、ボタン部52の操作に伴って本体部54すなわち操作部材50と共に移動する。
【0039】
また、本体部54すなわち操作部材50は、ピン70に対してストッパ部24の下面241前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有している。具体的には、一例として、操作部材50はピン70に対して2°傾いている。なお、言い換えると、ピン70は本体部54に対して傾きを有している。すなわち、図4に示されるように、本実施形態においては、ピン孔54Bがシート前後方向において傾いて設けられており、この傾いたピン孔54Bにピン70を挿入することにより、ピン70と本体部54とは傾きを有することができる。つまり、ピン70は、本体部54のシート上下方向の厚さの範囲内で傾けられる。
【0040】
また、本体部54すなわち操作部材50は、ストッパ部24の下面241に対して傾きを有している。具体的には、一例として、操作部材50は、ストッパ部24の下面241に対して3°傾いている。
【0041】
以上のように本実施形態のヘッドレスト装置10は構成されている。なお、本実施形態のヘッドレスト装置10では、上述の構成のうち、ヘッドレストステー16と、HRブッシュ20と、ロック機構30と、を主要な構成要素としている。
【0042】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
本実施形態のヘッドレスト装置10において、ピン70は、ヘッドレストステー16のノッチ16Aに係止させ易くするために、操作部材50のボタン部52の操作方向からみて長手方向がヘッドレストステー16の軸方向と直交するように配設されている。一方、ヘッドレスト装置10において樹脂で成形される部材、一例として、操作部材50及びHRブッシュ20については、強度及び成形性の観点から樹脂成形上の最小肉厚が設定されている。
【0044】
具体的には、図5に示されるように、ストッパ部24の上端から空間243までの肉厚には一例として最小肉厚Dが設定されている。図6はピン70と操作部材50との位置関係を模式的に示す側面図である。また、図6に二点鎖線で示されるように、本体部54には、ピン70が挿通するピン孔54Bが設けられている。そのため、ピン70と本体部54(操作部材50)と間には樹脂成形上の最小肉厚D2が設定されている。
【0045】
他方、ヘッドレスト装置10が適用された車両用シート11のシートバック12の形状によって予めストッパ部24の下面241の軸部26に対する傾斜角度は決まっている。図8は従来のヘッドレスト装置の構成を示す断面図である。図8に示されるように、HRブッシュ520のストッパ部524の下面5241が軸部526の軸方向に直交する平面Pに対してシート前後方向に傾きを有している場合、HRブッシュ520の内部の空間5243において、ピン570の傾きと平行に操作部材550を配置すると最小肉厚D、D2との関係上、HRブッシュ520のストッパ部524の厚さを薄くするのは困難である。
【0046】
本実施形態のヘッドレスト装置10では、図5に示されるように、ボタン部52の操作方向から見て、ピン70に対して本体部54(操作部材50)がストッパ部24の下面241のシート前後方向の傾きと同じ方向に傾きを有している。具体的には、操作部材50はピン70に対して、図5における反時計回りに2°傾けられている。なお、ここで傾き角度は、図6に示されるように、最小肉厚D2を保持可能な角度が設定される。このように、操作部材50が傾きを有することにより、操作部材50の傾きをストッパ部24の下面241のシート前後方向の傾きにより近づけることができる。
【0047】
また、本実施形態においては、操作部材50の傾きに合わせて、ストッパ部24の空間243も傾けられる。ここで、図5のHRブッシュ20において、点線は、操作部材50が傾けられる前のHRブッシュ20の形状を示している。図5に示されるように、空間243を操作部材50と同じ角度傾けることにより、空間243のシート前方の上面が下方に下がる。そのため、ストッパ部24の上端から空間243までの最小肉厚Dを保持した状態で、ストッパ部24の厚さを薄くすることができる。このように、本実施形態においては、操作部材50の傾きがピン70の傾きと平行である場合と比較して、ストッパ部24の厚さを薄くすることができる。
【0048】
また、本実施形態のヘッドレスト装置10は、ボタン部52の操作方向からみて、操作部材50がストッパ部24の下面241に対して傾きを有している。具体的には、操作部材50はストッパ部24の下面241に対して、図5における反時計回りに3°傾けられている。このように、操作部材50をストッパ部24の下面241に対して傾かせることにより、ピン70と本体部54(操作部材50)と間の最小肉厚D2を保持することが可能となるので、ストッパ部24の強度を確保しつつ、ストッパ部24の厚さを薄くすることができる。
【0049】
なお、上記実施形態のヘッドレスト装置10は、ボタン部52の操作方向からみて、操作部材50がストッパ部24の下面241に対して傾きを有しているが本発明はこれに限られない。ここで、上記実施形態のヘッドレスト装置10の変形例について説明する。図7は本実施形態の図5に対応する変形例の構成を示す断面図である。なお、図7において、上記実施形態のヘッドレスト装置10と同様の構成については同符号で示して説明は省略し、異なる箇所についてのみ説明する。
【0050】
図7に示されるように、変形例においては、ボタン部52の操作方向からみて、操作部材50がストッパ部24の下面241に対して平行に配置されている。このように、操作部材50をストッパ部24の下面241に対して平行に配置した場合であっても、本体部54が、ピン70と本体部54(操作部材50)と間の最小肉厚D2を確保することができる形状である場合、一例として本体部54の厚さが上記実施形態よりも厚い場合等には、操作部材50をストッパ部24の下面241に対して平行に配置することが好ましい。
【0051】
このように、操作部材50をストッパ部24の下面241に対して平行に配置して、空間243を操作部材50と同様にストッパ部24の下面241に対して平行にすることにより、空間243のシート前方の上面が下方に下がる。そのため、ストッパ部24の上端から空間243までの最小肉厚Dを保持した状態で、ストッパ部24の厚さを薄くすることができる。この際に、ストッパ部24のシート後方側の厚さも前方側と同じ厚さにすることができるので、ストッパ部24の厚さをシート前後方向において全体的に薄くすることができる。
【0052】
(その他の態様)
なお、上記実施形態においては、車両用シート11の車幅方向左側のヘッドレストステー16と、左側のヘッドレストステー16が挿入されるHRブッシュ20と、左側のHRブッシュ20に設けられるロック機構30について説明したが、車幅方向右側にこの構成を適用してもよいし、左右両側にこの構成を適用してもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、ヘッドレストステー16に複数のノッチ16Aが設けられているが、本発明はこれに限られず、ノッチ16Aは1つであってもよい。
【0054】
また、本発明においては、ヘッドレストステー16の軸方向に対してピン70が直交して配設されているが、例えばヘッドレストステー16に形成されたノッチ16Aが傾きを有している場合には、この傾きに合わせてピン70も傾斜させる。すなわち、ノッチ16Aの延在方向とピン70を一致させる。
【0055】
以上、本発明の一実施形態及びその変形例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
10 ヘッドレスト装置
16 ヘッドレストステー
16A ノッチ
18 シートバックフレーム
18B アッパフレーム
20 HRブッシュ(ヘッドレストブッシュ;ステー保持部材)
22 筒孔
24 ストッパ部(頭部)
241 下面
243 空間
244 開口
26 軸部
30 ロック機構
50 操作部材
52 ボタン部
54 本体部
60 弾性部材
70 ピン(制限部材)
D 最小肉厚
D2 最小肉厚
P 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8