(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012166
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】活性担体を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 51/12 20060101AFI20240118BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240118BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240118BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240118BHJP
A61K 33/244 20190101ALI20240118BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K51/12 100
A61K9/14
A61K47/34
A61K47/02
A61K47/04
A61K33/244
A61K47/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023114874
(22)【出願日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】102022000014707
(32)【優先日】2022-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】523266981
【氏名又は名称】セスター アキレ
(71)【出願人】
【識別番号】523266992
【氏名又は名称】ショーヴィ ステファン
(71)【出願人】
【識別番号】523267003
【氏名又は名称】グロッソ マウリツィオ
(71)【出願人】
【識別番号】523267014
【氏名又は名称】セスター ルクレツィア
(71)【出願人】
【識別番号】523267025
【氏名又は名称】ヴェリフィカトリ アソシアティ イタリアーニ エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】セスター アキレ
(72)【発明者】
【氏名】ショーヴィ ステファン
(72)【発明者】
【氏名】セスター ルクレツィア
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076DD27
4C076DD27A
4C076DD29
4C076DD29A
4C076DD64
4C076DD64H
4C076EE27
4C076EE27H
4C076FF01
4C076GG16
4C084AA12
4C084MA05
4C084MA43
4C084NA20
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA05
4C086HA21
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活性担体を製造する方法を提供する。
【解決手段】活性担体が、無機材料のナノスフィア、有機官能的材料、少なくとも部分的に放射性核種から成る材料から製造された活性化された粉末、ナノスフィアの表面に堆積した有機官能的材料及び活性化された粉末を含む層を有し、方法が、無機材料のナノスフィアの準備段階、活性化された粉末を得る元の母材の破砕段階、及びその後の粉砕段階、有機官能的材料の準備段階を備え、粉末を有機官能的材料に組み込むサブ段階及びコーティングを実現するために、ナノスフィアの表面に有機官能的材料を堆積させるサブ段階を有する不活性担体の合成の最初の段階、活性担体の第2の合成段階、ここで不活性担体が粉末における放射性核種の生成及びその後の粉末の活性化された粉末への変換、その結果としてコーティングの層への変換、及び不活性担体の活性担体への変換によって活性化される、第2の合成段階を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性担体を製造するための方法であって、前記活性担体が、
無機材料のナノスフィア、
有機官能的材料、
少なくとも部分的に放射性核種から成る材料から製造された活性化された粉末、
前記ナノスフィアの表面に堆積した前記有機官能的材料及び前記活性化された粉末を含む層
を有し、
前記方法が、
無機材料中での前記ナノスフィアの準備段階、
粉末を得る元の母材の破砕段階、及びその後の粉砕段階、
前記有機官能的材料の準備段階
を備え、
不活性担体の合成の最初の段階、
前記不活性担体が、
前記ナノスフィア
前記粉末、
前記ナノスフィアの前記表面に堆積した前記有機官能的材料及び前記粉末を含むコーティングを有し、
前記合成の最初の段階が
前記粉末を前記有機官能的材料に組み込むサブ段階、
前記コーティングを実現するために、前記ナノスフィアの前記表面に前記有機官能的材料を堆積させるサブ段階
を有し、
前記活性担体の第2の合成段階、ここで前記不活性担体が
前記粉末における放射性核種の生成、及びその後の、前記粉末の活性化された粉末への変換、その結果として前記コーティングの前記層への変換、及び前記不活性担体の前記活性担体への変換
によって活性化される、第2の合成段階、
前記活性担体の活性のレベルを分析するその後の段階
を備える、方法。
【請求項2】
前記有機官能的材料が、ジポダールポリシロキサンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組み込むサブ段階が、前記有機官能的材料中で前記粉末の分散物を準備する段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記堆積させるサブ段階において、前記ナノスフィアが前記分散物に浸漬され、前記分散物が前記ナノスフィアの前記表面に付着して前記コーティングが製造される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ナノスフィアが、CO2及びナトリウムの痕跡のない純シリカ又はガラスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末が、ランタニド系列に属する金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末が、酸化ホルミウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕段階において、前記粉末が、イソプロパノール又はシランガスを含む分散剤中に分散される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記有機官能的材料が、少なくともエポキシシラン及び好ましくはアミノシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法によって製造される活性担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の特許請求の範囲の前提部に明示するタイプの活性担体を製造するプロセス(方法)に関する。
【0002】
本発明の目的は、放射性核種又は他の非放射性分子及び薬剤のための担体の機能を果たし、主に医療分野に応用されるがそれだけではない材料のためのプロセスである。
【背景技術】
【0003】
担体の機能を果たす材料を使用した、粉末状材料の輸送を可能にする技術が、現在知られている。特に、これらの粉末状材料は、放射性核種又は他の非放射性分子及び薬剤を含むことがある。
【0004】
放射性核種を含む材料は、ペレットの形態で輸送されることもある。
【0005】
代替的に、放射性核種を含む粉末は、適切な堆積技術を使用して担体に堆積させられてよい。
【0006】
放射性核種が堆積した担体は、通常、医療セクタにおいて診断及び治療技術に使用されるが、冶金業界においても、特に表面コーティングを介して材料の凹凸を強調しクラック及び破断の存在を検出することを目的とした分析に使用される。
【0007】
具体的な治療の例は、固形腫瘍(例えば、肝臓の原発性及び二次性の腫瘍、前立腺癌、腎臓、肺、及び脳の腫瘍など)の治療である放射線塞栓療法である。
【0008】
これらの材料の使用に関連する深刻な1つの問題は、それらが患者の身体の内側で放射性元素を効率的に輸送できなくてはならないことにある。そのため、これらの材料による治療が関与する領域に、効果的且つ迅速にこれらの材料が到達することを確保することが必要である。これが必要なのは、放射性核種を含む材料がイオン化放射線を放出し、この放射線が、使用される放射性核種の適切な選択、及びそれが崩壊した際の身体への非化学毒性により、器官又は健康な組織へのダメージを回避するように、治療すべき器官及び組織、例えば腫瘍の部位と優先的に相互作用しなくてはならないことに関連している。さらに、担体は組織との適合性を有していなくてはならない。
【0009】
放射性核種の投与を効率的にするために、担体は通常、数μm~数百μmまで様々であってよい寸法を有する。したがって、この種類の用途で使用される担体は、通常、ナノ粒子である。特に、露出される表面積を増やすための好ましい形状のうちの1つは、球形である。そのため、これらの用途に対して最も効率的な担体のタイプは、ナノスフィアであり、これらは、投与のためにも理想的である。場合により、放射性核種は、活性化される前に担体に融合する;いずれの場合も、この方法は、担体の表面への堆積を含む方法と比較して、担体効率の低下を伴う。
【0010】
診断及び治療技術の両方において、これらの材料は、注射による(例えば静脈内、動脈内、経皮的、又は局所的)投与、並びに患者にとってリスクを伴わない使用を目的とした適切な用量の投与を可能にする。
【0011】
これらの材料の製造のために、様々な製造技術が開発された。上述したように、いくつかの技術は、担体及び核種の融合を含み、次いでこれらが放射される。したがって、これらの技術に関して、放射は選択的ではない;そのため、活性化には担体も関与し、その結果、放射熱に起因するものも含めて、形態的及び機能的な劣化が生じる。
【0012】
これらの理由から、最も広く使用されている技術は、後に活性化されることになる核種を含む材料により担体をコーティングすることに基づいている。通常、これらの技術は、ナノスフィアに対する静電堆積よる、スパッタリングを使用した堆積による粉末の堆積、又は堆積のための機械的手段を含む他の技術を使用する。
【0013】
核種の活性化は、通常、サイクロトロン内で実行される。
【0014】
開発されてきた先行技術は、いくつかの主要な欠点を含む。
【0015】
特に、知られている技術では、輸送される粉末の、担体に対する付着不良が存在し、その結果、担体から分離して使用されない材料の損失が生る。適用に必要な活性が低下することに加えて、この欠点により、放射性核種を含む材料にはよくあるように、既に高額であるコストがさらに増大する。
【0016】
さらに、担体に対する付着不良の結果である材料の損失は、環境問題及び人の健康に対するリスクを伴う。
【0017】
最後に、担体に堆積した粉末の層は、凝集を形成する傾向があり、放射性核種を含む材料は、使用される前に活性化されることが必要なので、この凝集は活性の低減を伴う。
【発明の概要】
【0018】
この状況において、本発明の背景にある技術的タスクは、上述した欠点の少なくとも一部分を実質的に克服することが可能な、放射性核種により覆われた担体を製造するためのプロセスを考案することである。
【0019】
前記技術的目的の範囲内で、本発明の重要な1つの目的は、担体への付着不良に起因した放射性核種を含む粉末の損失を最小限に抑えることが可能な担体を得ることである。
【0020】
発明の別の目的は、サイクロトロンを使用した従来の活性化の代わりに、中性子活性化を使用して放射性核種を生成することである。
【0021】
本発明の別の重要な目的は、放射性核種を含む粉末を一定の量で輸送できるようにする担体を製造することである。
【0022】
本発明の別の目的は、放射性核種を含む材料の輸送及びより簡便な用量設定を可能にすることである。
【0023】
技術的目的及び明示した目的は、添付の請求項1において特許請求される放射性核種により覆われた活性担体を製造するためのプロセスにより実現される。
【0024】
好ましい技術的解決手段は、従属請求項において強調される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の特徴及び利点は、本発明の好ましい実施形態の詳細な説明によって、添付図面を参照しながら以下で明確にされる。
【0026】
【
図1】表面層の細部を有する本発明による活性担体の垂直断面の概略図を示す。
【
図2】上記担体を作り出すためのプロセスの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この文献では、測度、値、形状、及び、幾何的言及(垂直性及び平行性など)は、「約(about)」といった語又は「およそ(approximately)」又は「実質的に(substantially)」などの他の同様の用語とともに使用される場合には、生産誤差及び/又は製造誤差に起因する測定上の誤差又は不正確さを除くものであり、中でも、それが関連付けられた値、測度、形状、又は、幾何的言及からの軽微な逸脱を除くものであると理解されたい。例えば、値に関連付けられる場合、そのような用語は、好ましくは、その値自体からの10%より大きくない逸脱を示す。
【0028】
さらに、「第1の」、「第2の」「上部」、「下部」、「主な」、及び「二次的な」などの用語が使用されるとき、これらは必ずしも順序、関係性の優先度、又は相対的な位置を特定せず、異なる構成要素をより明確に互いに区別するために単に使用されることが可能である。
【0029】
以下の考察から明らかであるように、別段に明示されない限り、例えば「コンピュータ科学」、「判定」、「計算」、又は同様の用語は、情報システム及び/又はメモリのレジスタの電子量などの物理的なものとして表されたデータ、情報を記憶、伝送、又は表示するためのコンピュータシステム、レジスタ、又は他のデバイス内の物理量として同様に表された他のデータを、操作及び/又は変換するコンピュータのアクション及び/又はプロセス、又は同様の電子コンピューティングデバイスを指すとみなされる。
【0030】
別段の記載のない限り、この文書においてレポートされる測定値及びデータは、国際標準大気ICAO (ISO 2533:1975)において実行されたとみなされるものとする。
【0031】
図面を参照すると、全体的に参照符号1は、本発明による活性担体を示す。
【0032】
本発明の対象は、活性担体1を製造するためのプロセスを含む。活性担体1は、放射性核種を含む種の輸送に最適化されたナノメートルの寸法を有する材料である。
【0033】
活性担体1は、通常、ナノスフィア3を含む(この場合、ナノとは、SIにおいてそのように呼ばれるサイズのオーダーとは無関係の、商業的に使用される用語である;実際には、マイクロスフィアという用語も使用される)。ナノスフィア3は、無機材料を含む。具体的には、ナノスフィア3は、好ましくは、不純物レベルが0.1%未満のケイ素であることを意味する純ケイ素のような材料を含む。ナノスフィア3は、CO2及びナトリウムの痕跡がないか、又は上記元素の量が5%未満であるガラスも含んでよい。
【0034】
さらに、ナノスフィア3は、好ましくは少なくとも1つの大きい内側空洞を含む。内側空洞を有するナノスフィア3を備える構成は、材料の節約、及びその結果として活性担体1の軽量化という利点を含む。
【0035】
活性担体1は、ナノスフィア3の表面に堆積した有機官能的材料4を含む。有機官能的材料4は、好ましくは、シラノールを含み、例えばアミン基(-NH2)などの官能基を付加することにより、以下で考察する選択された金属のヒドロキシ基(-OR)と反応することが可能である。
【0036】
活性担体1は、放射性核種を含む活性化された粉末6を含む。活性化された粉末6は、熱中性子リアクター内での中性子ビームに対するその露出にある活性化プロセスにかけられる粉末2から開始して得られる。
【0037】
粉末2は、好ましくは、ランタニド系列に属する金属を含む。
【0038】
特に、粉末2は、好ましくは酸化ホルミウムを含む。この材料は、医療分野での、及び特に治療目的での用途に効果的であることが知られている。
【0039】
好ましい実施形態における有機官能的材料4は、好ましくはシロキサン結合を形成するシラノールを含む。
【0040】
酸化ホルミウムを含む実施形態において、粒子の平均直径は、好ましくは0.05μm~10μm、より好ましくは0.07μm~7μm、さらにより好ましくは0.1μm~5μmの範囲内に含まれる。
【0041】
使用される粉末2のタイプに基づく有機官能的材料4の選択は、選択された有機官能的材料4に対する粉末の親和力による。
【0042】
いくつかの技術的解決手段において、有機官能的材料4は、少なくともエポキシシラン、及び好ましくはアミノシランを含む。このタイプの実施形態においては、エポキシシランが使用されているが、コーティング5が、均質な層を得るために、エポキシシラン及びアミノシランの反応を加速する触媒を使用してエポキシシランと混合されたアミノシランも含む場合に、最終的な活性担体1の有効性が増大する。
【0043】
活性担体1は層9を含む。層9は、有機官能的材料4、活性化された粉末6を含み、プロセスに記載の段階に従ってナノスフィア3の表面に堆積させられる。
【0044】
層9は、放射性核種及びナノスフィア3の間の効果的な中間結合を可能にする機能を有し、その結果、放射性核種の活性が向上する。
【0045】
活性担体1は、無機材料中でのナノスフィア3の準備段階を含むプロセスを使用して製造される。この段階においては、好ましくは10μm~200μm、より好ましくは15μm~100μm、より好ましくは20μm~60μm、より好ましくは30μm~50μm、さらにより好ましくは37μm~45μmの範囲内に含まれる直径を有するナノスフィアが選択される。ナノスフィア3は、好ましくはふるいを使用して選択される。
【0046】
プロセスは、粉末2を得る元の粗い母材を破砕し、それを粉砕するための段階を含む。粗い母材の破砕は、好ましくはミルを使用して実行される。この段階は、活性担体1の効率に関して有利である。実際、粉末2を粉砕するプロセスにより、コーティング5の構造に入りその一部になることがある凝集の形成が低減される。コーティング5における凝集の形成により、粉末2の粒子の一部は凝集の内側にあることから、粉末2の一部しか活性化された粉末6に変換されないことが確保される。そのため、それらは上の粒子から遮られ、活性化段階中に中性子ビームに露出される面積がより小さくなる。この効果は、活性担体1の活性の最終的なレベルに影響を及ぼし、この活性担体1の活性は、すべての粉末2が活性化粉末6に変換された場合に実現可能なものより低くなる。
【0047】
粉砕段階は、好ましくはイソプロパノール又はシランガスを含む分散剤8中での粉末2の分散を含む。分散剤8を付加することにより、粉末2の粒子がよりよく分離し、このことは、活性担体1の最終的な効率をさらに増大させるという効果を有する。粉砕段階の終了時に、好ましくは粉末2の分散物が得られ、この分散物が容器に注入される。
【0048】
プロセスは、有機官能的材料4を準備するための段階を含む。この段階において、選択された有機官能的材料4が、好ましくは容器に注入される。
【0049】
プロセスは、有利には不活性担体7を合成する最初の段階を含む。不活性担体7は、ナノスフィア3、ナノスフィア3の表面に堆積したコーティング5、及びコーティング5に結合した粉末2を含む。
【0050】
合成の最初の段階は、粉末2を有機官能的材料4に組み込むサブ段階を含む。組み込むサブ段階は、ポリマー材料への粉末2の結合を可能にする。
【0051】
組み込むサブ段階は、好ましくは有機官能的材料4中での粉末2の分散物24の準備を含む。イソプロパノール分散剤8を含む、プロセスの変形形態においては、粉末2の粉砕段階において、分散物24を製造するために、分散剤8中に分散された粉末2を含む混合物に有機官能的材料4が注入される。好ましい実施形態において、分散物24を製造するために、ジポダールポリシロキサン(dipodal polysiloxane)が、酸化ホルミウム中の粉末混合物2に注入され、イソプロパノール分散剤8中で分散される。
【0052】
合成の最初の段階は、ナノスフィア3の表面に有機官能的材料4を堆積させてコーティング5を作り出すサブ段階を含む。
【0053】
プロセスの好ましい変形形態において、このように有機官能的材料4を含む分散物24が、好ましくはナノスフィア3に堆積させられる。より具体的には、堆積は、好ましくは分散物24中にナノスフィア3を浸漬し、その後分散剤8を蒸発させることにより生じる。このように、ナノスフィア3に粉末2が結合した不活性担体7が、コーティング5により得られる。
【0054】
酸化ホルミウム及びジポダールポリシロキサンを含む解決手段において、酸化ホルミウムの粒子の平均直径とナノスフィア3の直径との比は、好ましくは1:10~1:500、より好ましくは1:20~1:450、さらにより好ましくは1:20~1:150の範囲にある。
【0055】
同じく、この好ましい解決手段を参照すると、コーティング5及びナノスフィア3の質量同士のパーセンテージ比は、好ましくは0.05%~6%、より好ましくは0.1%~5%、さらにより好ましくは0.1%~4%の範囲にある。
【0056】
さらに、酸化ホルミウム及びナノスフィア3の質量同士のパーセンテージ比は、好ましくは0.1%~20%、より好ましくは0.3%~15%、さらにより好ましくは0.4%~11%の範囲にある。
【0057】
プロセスは、活性担体1を合成する第2の段階を含み、ここで粉末2において放射性核種を生成し、その結果、粉末2が活性化された粉末6に変換され、且つその結果として、不活性担体7が活性担体1に変換されることにより、不活性担体7が活性化される。
【0058】
放射性核種の生成は、不活性担体7を中性子ビームに露出して、中性子放射性捕獲の反応を生じさせることによって実行される。中性子放射性捕獲反応により、ガンマ及び/又はベータ線を放出する放射性核種の子が生成される。
【0059】
特に、活性化プロセスは、好ましくは中性子放射性捕獲反応を使用する熱中性子リアクターを使用して実行される。
【0060】
活性化プロセスにおいて使用される熱中性子リアクターは、好ましくはTRIGA(Training Research and Isotopes-production General Atomics:訓練、研究、及びアイソトープ製造、ゼネラルアトミックス)のMark IIリアクターである。
【0061】
TRIGA Mark IIリアクターは、部分的に軽水で減速される冷却タンクを含み、ウラン8%(20%に濃縮)、水素1%、及びジルコニウム91%からなる燃料を使用するリアクターである。
【0062】
TRIGA Mark IIリアクターは、静止状態における最大出力250kWで処理するように設計されている。リアクターコアは、真っ直ぐな円筒形状を有し、円形グリルの内側で5つの同心リングに配置された90個のハウジングを含んでおり、この円形グリルも、試料キャリヤの機能を果たす。ハウジングは、可燃元素、グラファイト元素、制御棒、又は放射チャネルを含む。
【0063】
リアクターの内側は、可燃元素を含むリングの中央に置かれた直径3.8cmの中央アルミニウムシリンダ、放射を受けるべき試料の導入及びリアクターからのその引き抜きを可能にする最外部のリングに置かれた空気「ラビット」システム(pneumatic "Rabbit" system)、円筒形要素を内側に挿入するためのハウジングを含む、放射状リフレクタの機能を果たすグラファイトの内部壁を有する円形ウェルの内側に位置付けられた回転ディスク、及び最後に、グラファイトリフレクタの外側のタンクに置かれた熱チャネルを含む。
【0064】
活性担体1を合成するための段階の開始時に、不活性担体7が、好ましくは試験管用のディスペンサを使用して用量設定され、ポリエチレン又は石英の容器の内側で、分析天びんを使用して秤量される。ポリエチレン又は石英を選択することにより、取り扱い及び輸送をより簡単にすることができる。
【0065】
ポリエチレン容器内の不活性担体7は、秤量されると、熱中性子リアクターに挿入されるように設計された別の容器の内側に置かれる。不活性担体7を含む容器は、回転試料キャリヤのハウジングの内側に置かれ、好ましくは1x1012n cm-2s-1の中性子流での放射を可能にするように位置付けられる。
【0066】
酸化ホルミウムを含むプロセスの変形形態では、放射により、酸化ホルミウムに含まれた165Hoアイソトープが、少なくとも部分的に166Hoアイソトープに変換される。中性子放射性捕獲反応は、このように165Ho(n,?)166Hoである。ホルミウムアイソトープ165Hoは、166Hoアイソトープの製造に関して、相対存在度100%、及び衝突断面64バーン(64×10-10平方ナノメートル)を有する。製造される166Hoの量は、中性子放射の露出時間に依存する。
【0067】
特に、同様の反応は、酸化ナトリウムのように、通常ガラスナノスフィア3に含まれるナトリウムにも生じることがあり、反応は23Na(n,?)24Naである。ガラスナノスフィア中の酸化ナトリウムの含量は、通常、12~14%である。
【0068】
不活性担体7が受ける中性子流が、1x1012n cm-2s-1よりも大きい場合、放射時間は、好ましくは短縮されなくてはならない。さらに、大きい中性子流は、使用可能な放射性核種の範囲を拡大する傾向にある。
【0069】
放射性核種生成段階の終了時に、粉末2は、活性化された粉末6に変換され、その結果としてコーティング5が層9に変換される。したがって、不活性担体7は、活性担体1に変換される。
【0070】
プロセスは最終的に、活性担体1の活性のレベルを分析するその後の段階を含む。
【0071】
分析段階は、好ましくは、ガンマ分光法を使用して実行される。特に、酸化ホルミウムを含む活性化された粉末6の場合、活性担体1の166Hoアイソトープの活性のレベルが測定される。
【0072】
活性は、活性を計算する目的で又は一部分の測定により測定されなくてはならない放射の後の、待機時間の後に測定される。活性担体が製造及び分析されると、この手順は、活性担体1の品質管理段階のために有用である。
【0073】
測定に使用される検出器は、好ましくは高純度ゲルマニウム(HPGe)検出器である。
【0074】
ガンマ分光法のための機器は、好ましくは、スペクトルピーク面積を補足することが可能な多チャネル分析器を含む。エネルギー及び効率のキャリブレーションは、好ましくは標準線源を使用して実行される。活性担体1及び検出器の間の距離は、好ましくは、各タイプの放射性核種の予想される活性及び半減期に基づき確立される。
【0075】
活性は、好ましくは、分離したピーク面積及び不確定性が30%未満の正味面積を有するガンマピークを選択することにより測定される。
【0076】
プロセスの終了時に、活性担体1が得られる。
【0077】
本発明による活性担体1は、重要な利点を実現する。
【0078】
実際、この新規の実施形態は、放射性核種を含む材料を一定の量で輸送可能にするという利点を有する。この利点は、知られている解決手段と比較して、放射性核種を含む粉末がナノスフィアの表面に最良に付着していること、並びに活性担体1の球形状に起因している。
【0079】
この新規解決手段の別の利点は、医療用途における活性担体1の管理及び用量設定がはるかに簡単になることである。この利点は、ガラスナノスフィア3の自由な束特性に起因する。
【0080】
さらに、この解決手段は、活性化された粉末6をナノスフィアに付着させるために添加剤を必要としないという利点を有する。
【0081】
別の重要な利点は、活性化された粉末6がナノスフィア3の表面に最良に付着することにより、プロセスの開始時に使用される粉末2と同じ量で、活性担体1のより高レベルな活性に到達することから、活性化された粉末6の使用量が低減されることである。材料のこの節約は、ナノスフィア3の表面から分離する粉末2の低減に起因する。
【0082】
放射性核種を生成するために通常選択される材料には高いコストがかかるので、使用される材料の節約は、この技術的解決手段の選択において経済的な利点も伴う。
【0083】
活性化された粉末6がナノスフィア3の表面に、より良好に付着することによっても、環境内での粉末の分散、及び患者内での不適切なその分離が低減されるという重要な利点が生じる。
【0084】
活性化された粉末6の、ナノスフィア3の表面への付着が増大したことに関連するこれらの利点は、放射中に内側で粒子が中性子ビームへの露出から遮られる凝集の形成を回避するために、粉末2を粉砕するステージに由来する。
【0085】
別の利点は、不純物レベルが0.1%未満のケイ素を含むナノスフィアの使用に関連している。実際、以下の表において証明されているように、普通ガラスから製造されたナノスフィアの使用は、ガラス中に不純物として存在する元素の活性化も伴うことを、出願人は以前実証している。不純物の活性化は、その後、患者内で望ましくない崩壊プロセスを伴い、したがって、回避されなくてはならない。以下の表は、普通ガラスから製造されたナノスフィアを含む担体試料に存在する元素の活性値を示す。
【表1】
AV=平均値(Bq/g)
SD=標準偏差
本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内に含まれる変更形態が可能である。
【0086】
すべての詳細事項は、等価の要素によって置き換えられてよく、本発明の範囲は、すべての他の材料、形状、及び寸法を含む。
【外国語明細書】