(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121692
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】照明制御システム、照明制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/155 20200101AFI20240830BHJP
H05B 45/10 20200101ALI20240830BHJP
【FI】
H05B47/155
H05B45/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028924
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】上野 早織
(72)【発明者】
【氏名】向 健二
【テーマコード(参考)】
3K273
【Fターム(参考)】
3K273PA03
3K273QA13
3K273QA21
3K273RA04
3K273SA02
3K273SA21
3K273SA24
3K273SA38
3K273SA57
3K273SA58
3K273TA03
3K273TA04
3K273TA05
3K273TA15
3K273TA29
3K273TA79
3K273UA02
3K273UA22
3K273UA23
3K273UA25
3K273VA04
(57)【要約】
【課題】消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすくすること。
【解決手段】照明制御システム100は、所定空間4に設けられた照明負荷2を制御する照明制御部12を備える。照明負荷2は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷21と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷22と、を有している。照明制御部12は、所定空間4におけるユーザの使用領域の照度が使用領域の周辺の照度よりも高く、かつ、使用領域において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、使用領域の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間に設けられた照明負荷を制御する照明制御部を備え、
前記照明負荷は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷と、を有しており、
前記照明制御部は、
前記所定空間におけるユーザの使用領域の照度が前記使用領域の周辺の照度よりも高く、かつ、
前記使用領域において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、
前記使用領域の全体における前記照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように前記照明負荷を制御する、
照明制御システム。
【請求項2】
前記照明制御部は、前記使用領域の全体における前記照度均斉度が0.4以上0.7未満となるように前記照明負荷を制御する、
請求項1に記載の照明制御システム。
【請求項3】
前記照明制御部は、前記使用領域の照度と、前記使用領域の周辺の照度との比が2以上となるように前記照明負荷を制御する、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項4】
前記照明制御部は、前記使用領域の平均照度が300lx以上1000lx未満であり、かつ、前記使用領域の最大照度が600lx以上となるように前記照明負荷を制御する、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項5】
前記第2照明負荷は、前記使用領域に光を放射し、かつ、前記ユーザの顔面に光を放射する、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項6】
前記照明制御部は、前記ユーザの顔面照度と、前記使用領域の最大照度との比が3以上となるように前記照明負荷を制御する、
請求項5に記載の照明制御システム。
【請求項7】
前記ユーザの前記顔面照度は、前記使用領域の端部から水平方向に-100m以上400mm以下の離れた位置であって、かつ、前記使用領域の鉛直上方に300mm以上600mm以下の離れた範囲における鉛直面の最大照度である、
請求項6に記載の照明制御システム。
【請求項8】
前記ユーザの前記顔面照度は、200lx以上である、
請求項7に記載の照明制御システム。
【請求項9】
前記第2照明負荷の配光角度は、30度以上70度未満である、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項10】
前記第2照明負荷は、配光角度を調整する機能を有しており、
前記第2照明負荷の筐体には、推奨される前記配光角度を示すガイドが設けられている、
請求項1又は2に記載の照明制御システム。
【請求項11】
所定空間に設けられた照明負荷を制御し、
前記照明負荷は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷と、を有しており、
前記所定空間におけるユーザの使用領域の照度が前記使用領域の周辺の照度よりも高く、かつ、
前記使用領域において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、
前記使用領域の全体における前記照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように前記照明負荷を制御する、
照明制御方法。
【請求項12】
1以上のプロセッサに、
請求項11に記載の照明制御方法を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明制御システム、照明制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、照明制御装置が開示されている。この照明制御装置は、人体情報検知手段で検知した照明エリアの人間の動作速度に基づいて、照明エリアをあらかじめ複数に区分した各々の区分領域が人間の滞在する滞在領域か非滞在領域かを判定する。そして、照明制御手段は、判定結果に基づき、区分領域に配置された照明器具に対し照明制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい照明制御システム、照明制御方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る照明制御システムは、所定空間に設けられた照明負荷を制御する照明制御部を備える。前記照明負荷は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷と、を有している。前記照明制御部は、前記所定空間におけるユーザの使用領域の照度が前記使用領域の周辺の照度よりも高く、かつ、前記使用領域において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、前記使用領域の全体における前記照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように前記照明負荷を制御する。
【0006】
本発明の一態様に係る照明制御方法では、所定空間に設けられた照明負荷を制御する。前記照明負荷は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷と、を有している。前記照明制御方法では、前記所定空間におけるユーザの使用領域の照度が前記使用領域の周辺の照度よりも高く、かつ、前記使用領域において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、前記使用領域の全体における前記照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように前記照明負荷を制御する。
【0007】
本発明の一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、前記照明制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の照明制御システム、照明制御方法、及びプログラムは、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る照明制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る照明制御システムが使用される所定空間の一例を示す概要図である。
【
図4】
図4は、実験対象の空間の概要を示す平面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態に係る照明制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化される場合がある。
【0012】
また、本明細書において、同じなどの要素間の関係性を示す用語、ならびに、数値、及び、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、5%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。例えば、「水平方向」とは、完全に水平方向である場合だけでなく、製造または配置の際に生じる例えば5%などの数%程度の誤差を含むことを意味する。
【0013】
(実施の形態)
[所定空間]
まず、実施の形態に係る照明制御システム100が使用される所定空間4について説明する。
図1は、実施の形態に係る照明制御システム100の機能構成を示すブロック図である。
図2は、実施の形態に係る照明制御システム100が使用される所定空間4の一例を示す概要図である。
【0014】
実施の形態に係る照明制御システム100は、例えばオフィス等のユーザU1が作業を行う所定空間4で使用され、このような所定空間4での環境を制御するためのシステムである。実施の形態では、照明制御システム100は、例えば自身の行いたい作業に応じて自由に作業場所を選択し得るABW(Activity Based Working)型のオフィス3に使用される、と仮定する。ここで、「ABW」とは、仕事内容に合わせて働く場所又はデスク等をユーザU1(従業員等)が選択する働き方をいう。ABW型のオフィスにおいては、ユーザU1は、集中力を要する作業を行う場合には比較的静音性の高い場所を選択し、打ち合わせを行う場合にはソファ等のリラックス可能な場所を選択することが可能である。
【0015】
なお、照明制御システム100は、ABW型のオフィスに限らず、フリーアドレス型のオフィスで使用されてもよいし、ユーザU1が行いたい作業に応じて自由に作業場所を選択し得る空間であれば、他の空間で使用されてもよい。例えば、照明制御システム100は、小学校、中学校、高校、又は大学等の教育施設で使用されてもよいし、公民館、又は図書館等の公共施設で使用されてもよいし、店舗又は商業施設で使用されてもよい。その他、照明制御システム100は、例えば駅、ホテル、又はホール等のイベント会場で使用されてもよいし、戸建住宅又は集合住宅等の住宅施設で使用されてもよい。住宅施設で使用される場合、特にリビングルーム又はダイニングルーム等で使用されてもよい。
【0016】
また、照明制御システム100が使用される所定空間4は、上述のようにユーザU1が自由に作業場所を選択し得る空間に限らず、例えばユーザU1の作業場所が固定されたオフィスで使用されてもよい。さらに、照明制御システム100が使用される所定空間4は、ユーザU1が作業を行う作業空間に限らず、ユーザU1が休息をとるための空間であってもよい。
【0017】
図2に示す例では、オフィス3は、所定空間4を有している。なお、オフィス3は、所定空間4以外にも他の空間を有しているが、ここでは説明を簡単にするため、他の空間の図示を省略している。所定空間4は、1以上のユーザU1が存在し得る空間である。所定空間4には、各ユーザU1が作業を行うための複数(図示では、1つ)の什器5が設置されている。ここでは、各ユーザU1が個人で執務を行うこと、つまり什器5を使用するユーザU1が1人であることを想定している。
図2に示す例では、ユーザU1が行う作業は、例えばラップトップ型のパーソナルコンピュータ等のユーザU1が所持する情報端末6を用いた作業である。なお、情報端末6は、デスクトップ型のパーソナルコンピュータであってもよいし、スマートフォン又はタブレット端末等であってもよい。
【0018】
また、
図2に示す例では、什器5は、デスク51と、椅子52と、を含んでいる。実施の形態では、デスク51は、平面視で矩形状であって、長軸の長さが1200mm、短軸の長さが600mmの寸法を有している。なお、デスク51の寸法は、この寸法に限られない。また、デスク51の平面視での形状は、矩形状に限られない。
【0019】
図2に示す例では、オフィス3において所定空間4と隣り合う空間との間は仕切られていないが、例えば壁又は什器等によって仕切られていてもよい。一例として、オフィス3は、壁又は什器等によって仕切られた複数の部屋で構成されていてもよい。この場合、所定空間4は、複数の部屋の各々であってもよいし、複数の部屋のうちの一部であってもよい。また、
図2に示す例では、オフィス3は1つの所定空間4を有しているが、複数の所定空間4を有していてもよい。
【0020】
[照明負荷]
所定空間4には、照明負荷2が設置されている。実施の形態では、照明負荷2は、所定空間4の天井に設置されている。もちろん、照明負荷2は、所定空間4の天井のみならず、壁、床、又はデスク等の什器に設置されていてもよい。照明負荷2は、所定空間4を照明光で照らすことにより、所定空間4に照明環境を提供する。照明環境のパラメータは、一例として、照明光の照度、相関色温度(光色)、又は配光分布等を含み得る。以下では、相関色温度を単に「色温度」ともいう。
【0021】
所定空間4に設置される照明負荷2は、第1照明負荷21と、第2照明負荷22と、を有している。
図2に示す例では、所定空間4の天井に複数(ここでは、2つ)の第1照明負荷21が設置されている。また、
図2に示す例では、所定空間4の天井に複数(ここでは、2つ)の第2照明負荷22が設置されている。
【0022】
第1照明負荷21は、対象とする空間を均一に照らすアンビエント照明としてのベースライトであって、LED(Light Emitting Diode)等の固体発光素子を有する光源を備えている。つまり、第1照明負荷21は、拡散形の配光特性を有している。なお、第1照明負荷21に用いられる固体発光素子は、LEDに限らず、有機EL(Electro-Luminescence)素子等であってもよい。また、第1照明負荷21は、固体発光素子を有する光源に限らず、蛍光ランプ等であってもよい。
【0023】
第2照明負荷22は、タスクライトとしてのスポットライトであって、LED等の固体発光素子を有する光源を備えている。つまり、第2照明負荷22は、集光形の配光特性を有している。なお、第2照明負荷22は、スポットライトに限らず、例えばスタンドライト、ダウンライト、又はユニバーサルダウンライト等であってもよい。また、第2照明負荷22に用いられる固体発光素子は、LEDに限らず、有機EL素子等であってもよい。さらに、第2照明負荷22は、固体発光素子を有する光源に限らず、蛍光ランプ等であってもよい。
【0024】
ここで、所定空間4における照明負荷2の光の照射領域について説明する。第1照明負荷21は、所定空間4全体に光を照射するように設置されている。一方、第2照明負荷22は、所定空間4の一部であるデスク51の上面に光を照射するように設置されている。ここで、デスク51の上面は、例えばユーザU1が情報端末6を用いて作業を行う領域である。言い換えれば、デスク51の上面は、ユーザU1の使用領域A1である。つまり、第2照明負荷22は、所定空間4におけるユーザU1の使用領域A1に光を照射するように、所定空間4に設けられている。なお、第2照明負荷22が光を照射する領域は、少なくとも使用領域A1の一部を含んでいればよく、使用領域A1の周囲、つまりデスク51の周囲の領域を含んでいてもよい。
【0025】
実施の形態では、第2照明負荷22は、配光角度を調整可能に構成されている。ここで、配光角度とは、直下水平面照度の半分の水平照度となる配光の開き角度をいう。具体的には、第2照明負荷22の筐体220には、配光角度を調整するためのロータ221が設けられており、ロータ221を時計回り又は反時計回りに回転させることにより、第2照明負荷22の配光角度を調整することが可能である(
図10参照)。そして、第2照明負荷22の配光角度を調整することにより、デスク51の上面(つまり、使用領域A1)における第2照明負荷22が光を照射する領域を増減させることが可能である。
【0026】
実施の形態では、第2照明負荷22の配光角度は、30度以上70度未満に調整される。このように調整することで、例えば床面から天井面までの高さが2400mm~3500mm程度の空間において、第2照明負荷22が使用領域A1に対して適切に光を放射しやすくなる。第2照明負荷22の配光角度は、ロータ221を手動で動かすことで調整されてもよいし、照明制御システム100によりロータ221を遠隔操作で動かすことで調整されてもよい。
【0027】
ところで、実施の形態では、所定空間4に設置された照明負荷2は、厳密に所定空間4の照明環境のみに影響を与えていなくてもよく、隣り合う他の空間に影響を与えることが許容されている。つまり、所定空間4においては、所定空間4に対応する照明負荷2により提供される照明環境が主たる照明環境となっていればよく、所定空間4とは異なる空間に対応する照明負荷からの影響があっても、所定空間4の照明環境に殆ど影響を与えなければよい。なぜならば、このとき所定空間4に存在するユーザU1に対して、所定空間4とは異なる空間に対応する照明負荷が及ぼす影響は限定的であると考えられるからである。
【0028】
もちろん、隣り合う空間の環境は、明確に分かれていてもよい。例えば、隣り合う空間の一方の空間の照明環境と、他方の空間の照明環境と、その境界の照明環境と、が分かれていてもよい。具体的には、隣り合う空間の一方の空間には比較的低い色温度の照明光が照射され、他方の空間には比較的高い色温度の照明光を照射されている、と仮定する。この場合、これらの空間の境界の照明環境は、両方の空間からの照明光が混合して照射された環境となるか、又はいずれの空間からも照明光が照射されない環境となることで、隣り合う空間の環境が明確に分かれ得る。
【0029】
[照明制御システム]
照明制御システム100は、
図1に示すように、通信部11と、照明制御部12と、記憶部13と、を備えている。なお、実施の形態において、照明制御システム100は、照明制御部12を少なくとも備えていればよく、通信部11及び記憶部13は備えていなくてもよい。また、照明制御システム100は、オフィス3に設置されていてもよいし、オフィス3から離れた場所に設置されていてもよい。
【0030】
通信部11は、所定空間4における1以上のユーザU1の位置情報を取得する。通信部11は、例えば所定空間4に設置された検知システムとの間で通信することにより、検知システムの検知結果を取得することで、1以上のユーザU1の位置情報を取得する。検知システムは、例えば人感センサ、カメラ、赤外線センサ、感圧センサ、着座センサ、LPS(Local Positioning System)と呼ばれる屋内位置情報システムにおけるスキャナ、又はLIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)と呼ばれるレーザーによる測距システムにおけるレーザーセンサ等である。通信部11と検知システムとの通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、通信規格も特に限定されない。
【0031】
つまり、通信部11は、所定空間4における人の存否を示す存否情報を取得する取得部に相当する(以下、「取得部11」ともいう)。なお、通信部11は、所定空間4における人の存否を示す存否情報を取得できればよく、所定空間4における人の位置を示す情報は取得しなくてもよい。
【0032】
また、通信部11は、照明制御部12に対する制御入力を取得する。通信部11は、例えばユーザU1又は照明制御システム100の管理者等、照明制御システム100による照明制御の実行に関する権限を有する者(以下、「権限者」という)が認証を経て操作することができるように構成された端末装置7からの制御入力を受け付ける。端末装置7は、例えばオフィス3に設置される照明制御システム100に専用のコントローラである。また、端末装置7は、通信部11と通信することにより、端末装置7で受け付けた制御入力を含む信号を通信部11へ送信する。この信号を受信することにより、通信部11は、制御入力を取得する。通信部11と端末装置7との通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、通信規格も特に限定されない。
【0033】
なお、端末装置7は、権限者が所持する情報端末により実現されてもよい。情報端末は、一例として、スマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュータ等を含み得る。この場合、権限者は、端末装置7としての機能を実行するためのアプリケーションを情報端末にインストールし、当該アプリケーションを情報端末にて起動することで、情報端末を端末装置7として利用することが可能である。
【0034】
照明制御部12は、所定空間4に設置された照明負荷2と通信可能であって、照明負荷2に制御信号を送信することにより、照明負荷2を制御する。照明制御部12と照明負荷2との通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよいし、通信規格も特に限定されない。
【0035】
照明制御部12は、通信部11が取得した制御入力に応じて、所定空間4に設置された照明負荷2について、少なくとも照度を制御する。また、実施の形態では、照明制御部12は、所定空間4に設置された照明負荷2について、光色、言い換えれば照明負荷2の発する光の色温度を制御する。なお、照明負荷2の光色は、照明負荷2の発光面又は発光面の近傍での測定結果(相関色温度)で表されてもよいし、照明制御部12による設定値で表されてもよい。なお、設定値は、測定結果に対する±200~300Kの誤差が許容されてもよい。
【0036】
実施の形態では、照明制御部12は、所定空間4におけるデスク51の上面の照度が、デスク51の周辺の照度よりも高くなるように、第1照明負荷21及び第2照明負荷22を制御する。言い換えれば、照明制御部12は、所定空間4におけるユーザU1の使用領域A1の照度が使用領域A1の周辺の照度よりも高くなるように照明負荷2(第1照明負荷21及び第2照明負荷22)を制御する。
【0037】
このように照明制御部12が所定空間4に設置された照明負荷2を制御することにより、所定空間4が、使用領域A1を使用するユーザU1が和らいだ雰囲気の空間であると感じやすくなる空間となることが期待できる。
【0038】
また、実施の形態では、照明制御部12は、所定空間4におけるデスク51の上面において、照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上となるように、第2照明負荷22を制御する。言い換えれば、照明制御部12は、
図3に示すように、使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲A11が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上となるように、照明負荷2(第2照明負荷22)を制御する。
図3は、使用領域A1の概要図である。さらに、照明制御部12は、所定空間4におけるデスク51の上面の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように、第2照明負荷22を制御する。言い換えれば、照明制御部12は、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2(第2照明負荷22)を制御する。
【0039】
ここで、照度均斉度とは、ある領域における最大照度に対する最小照度の比である。例えば、JIS(Japanese Industrial Standards)照度基準(JIS Z 9110:2011「照明基準総則」を参照)では、執務室で作業を行う領域は、照度均斉度が0.7以上であることが推奨されている。実施の形態では、照明制御部12は、使用領域A1において上述のJISで推奨される照度均斉度となる領域(範囲A11)を確保しつつ、使用領域A1全体としては照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御する。
【0040】
また、実施の形態では、上述の使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲A11は、一般社団法人照明学会:オフィス照明設計技術指針(JIEG-008(2017))に従って設定している。
【0041】
このように照明制御部12が所定空間4に設置された照明負荷2を制御することにより、所定空間4が、個人での執務に適した空間となることが期待できる。具体的には、照明制御部12が上記のように照明負荷2を制御することにより、使用領域A1を使用するユーザU1が、執務に没入しやすい雰囲気にあるという印象を受けやすくなること、和らいだ雰囲気にあるという印象を受けやすくなること、紙面の文字が読みやすいという印象を受けやすくなること、及び他のユーザU1の顔の見え方が明るいという印象を受けやすくなること、が期待できる。
【0042】
また、このように、所定空間4の環境を制御することにより、例えば所定空間4と他の空間とで環境を異ならせることが可能であり、いわゆるゾーニング効果が期待できる。
【0043】
ここで、ゾーニング効果とは、例えば、空間の認知上の区切れ感を意味し、外観上複数の空間が互いに異なる空間であるとユーザU1が認知しやすい効果を含み得る。また、ゾーニング効果は、ユーザU1による認知をもって、ゾーニングの意図通りにユーザU1の行動又は動線の変化を促しやすくする効果を含み得る。例えば、任意の空間について、ユーザU1が集中力を要する作業を行いやすい空間となることを意図してゾーニングをした、と仮定する。この場合、当該空間を見たユーザU1が、集中力を要する作業を行うことを主目的として当該空間を使用すれば、ゾーニング効果が発揮されたと言える。
【0044】
また、ゾーニング効果は、ユーザU1が実際にゾーニングされた空間を利用した場合に、ユーザU1の主観的な効果・実感、又は生理・心理・生体的作用がゾーニングの主旨に応じた傾向を示す効果を含み得る。例えば、任意の空間について、集中力を要する作業を行いやすい空間となることを意図してゾーニングを行い、当該空間をユーザU1が利用した、と仮定する。この場合、ユーザU1が当該空間を利用することで集中できたという実感を得たり、心理・生体的作用としてユーザU1が集中をしていたことを示唆する指標・データが得られたりすれば、ゾーニング効果が発揮されたと言える。
【0045】
上述のように所定空間4に設置された照明負荷2の制御を行うことで、什器又は家具を用いることなく所定空間4をゾーニングすることが可能である。このため、所定空間4の意匠性を高めやすく、かつ、照明負荷2の制御により瞬時にオフィス3のレイアウトを変化させるゾーニングが可能となる。すなわち、所定空間4における照明負荷2の発する光の照度又は色温度(光色)の制御パラメータの変更は、例えば数秒で完了する。この場合、結果としてオフィス3のレイアウトを数秒で変更することが可能である。ここで、什器又は家具を人力で移動させることでオフィス3のレイアウトを変更する場合であれば、60分、数時間、又は一日、場合によっては数日を要する。この点から、上記の照明負荷2の制御によるゾーニングは、極めて顕著な効果を奏し得る。
【0046】
このようなゾーニングにより、従来の什器又は家具の配置を変更することによるオフィスのレイアウトの変更と比較して、時間ごと、日ごと、又は月ごと等の短周期でオフィス3のレイアウトを変化させることが可能である。
【0047】
また、実施の形態では、照明制御部12は、以下に示す第1制御及び第2制御のうちの少なくとも一方の制御を実行する。なお、照明制御部12は、以下に示す第1制御及び第2制御の両方を実行しなくてもよい。
【0048】
第1制御では、照明制御部12は、通信部(取得部)11が所定空間4において人が存在しないことを示す存否情報を取得した場合、通信部11が所定空間4において人が存在することを示す存否情報を取得した場合と比較して、第1照明負荷21及び第2照明負荷22の少なくとも一方の光出力が大きくなるように制御する。つまり、照明制御部12は、使用領域A1にユーザU1が存在しない場合に、使用領域A1にユーザU1が存在する場合よりも大きな光出力となるように、第1照明負荷21及び第2照明負荷22の少なくとも一方を制御する。第1制御では、人が不在の使用領域A1を見た所定空間4外のユーザU1が、使用領域A1が空いていることを視覚的に認識しやすくなる、という効果が期待できる。
【0049】
第2制御では、照明制御部12は、通信部(取得部)11が所定空間4において人が存在しないことを示す存否情報を取得した場合、通信部11が所定空間4において人が存在することを示す存否情報を取得した場合と比較して、第2照明負荷22の配光角度が大きくなるように制御する。つまり、照明制御部12は、使用領域A1にユーザU1が存在しない場合に、使用領域A1にユーザU1が存在する場合よりも使用領域A1において照度均斉度が比較的高い(例えば、0.7以上)領域が大きくなるように、第2照明負荷22を制御する。第2制御でも、人が不在の使用領域A1を見た所定空間4外の人が、使用領域A1が空いていることを視覚的に認識しやすくなる、という効果が期待できる。
【0050】
記憶部13は、照明制御部12が制御を行うために必要な情報(コンピュータプログラム等)が記憶される記憶装置である。記憶部13は、例えばHDD(Hard Disk Drive)によって実現されるが、半導体メモリによって実現されてもよく、特に限定されることなく公知の電子情報記憶の手段を用いることができる。
【0051】
通信部11、照明制御部12、及び記憶部13は、いずれも同一の基板に実装されるか、又は同一の筐体に納められていてもよい。上記基板又は筐体は、オフィス3の天井、壁、床、又はデスク等の什器・家具に備え付けられていてもよい。この場合、照明制御システム100が小型化されるため好ましい。
【0052】
[実験]
ここで、本願の発明者は、上述の照明制御部12の制御による照明環境がユーザU1に及ぼす効果を検証すべく、以下に示す実験を行った。実験では、実験対象の空間(ここでは、オフィス3)の条件を変えながら、複数(ここでは、24名)の被験者に実験対象の空間を利用してもらった。複数の被験者の内訳は、性別に関しては、男性が20名、女性が4名であり、年齢に関しては、40歳以上が12名、40歳未満が12名である。そして、各被験者に対して、実験対象の空間の照明条件ごとに、実験対象の空間に対する印象についてアンケートを実施した。
【0053】
図4は、実験対象の空間の概要を示す平面図である。
図4に示すように、実験対象の空間は、1つの大部屋を構成するオフィス3(所定空間4)である。所定空間4には、2つのデスクが設置されており、各デスクの上面が使用領域A1となっている。所定空間4の全体には、所定空間4の天井に設置された複数の第1照明負荷21から光が照射されている。また、各使用領域A1には、所定空間4の天井に設置された複数の第2照明負荷22から光が照射されている。これにより、各使用領域A1においては、長軸の長さが80cmm、短軸の長さが50cmであって、照度均斉度が0.7となる矩形状の範囲A11照度均斉度が0.7以上となる範囲A11が設定されている。
【0054】
図4における2人のユーザU1は、複数の被験者のうちの2つの使用領域A1を使用している被験者である。一方のユーザU1は、椅子に座った状態で一方の使用領域A1を使用しており、他方のユーザU1は、椅子に座った状態で他方の使用領域A1を使用している。複数の被験者は、2人ずつ実験対象の空間を利用した。
【0055】
各被験者に対するアンケートでは、複数の項目の各々について、所定空間4に対する印象について回答を得た。具体的には、複数の項目の各々について、所定空間4に対する印象が、(a)かなりあてはまる、(b)あてはまる、(c)ややあてはまる、(d)どちらでもない、(e)ややあてはまらない、(f)あてはまらない、(g)全くあてはまらない、の7段階評価のうちのいずれであるか、各被験者から回答を得た。
【0056】
ここで、使用領域A1を使用しているユーザU1に対するアンケートでは、複数の項目は、所定空間4が執務に没入しやすい雰囲気であるか否かを問う第1項目と、所定空間4が和らいだ雰囲気であるか否かを問う第2項目と、所定空間4において紙面の文字が読みやすいか否かを問う第3項目と、所定空間4において人の顔の見えが明るいか否かを問う第4項目と、を含んでいる。
【0057】
そして、本願の発明者は、各被験者に対するアンケートの結果に基づいて、所定空間4の条件を定量的に評価した。具体的には、複数の項目の各々について、アンケートで得られた7段階評価を等間隔尺度として取り扱い、上記(g)、(f)、…、(a)の評価にそれぞれ「1」、「2」、…、「7」のスカラ値を割り当てた。そして、このスカラ値に基づいて、所定空間4の照明条件ごとにスコアを求めた。
【0058】
実験では、各被験者に対して、所定空間4の照明条件、具体的には使用領域A1の全体における照度均斉度を変化させながら、所定空間4に対する印象についてアンケートを実施した。
【0059】
図5は、実験の第1結果を示す図である。
図5は、所定空間4が執務に没入しやすい雰囲気であるか否かの評価を照明条件ごとに表している。
図5において、縦軸は所定空間4に対するスコアを表しており、横軸は所定空間4の照明条件を表している。
図5に示すように、照度均斉度が0.6である場合のスコアは、照度均斉度が0.9である場合のスコアに対して有意に大きくなっている。このため、
図5に示す実験の第1結果は、照度均斉度が0.6である場合、照度均斉度が0.9である場合と比較して、被験者が所定空間4に対して「執務に没入しやすい雰囲気」という印象を抱いていることを表している。
【0060】
図6は、実験の第2結果を示す図である。
図6は、所定空間4が和らいだ雰囲気であるか否かの評価を照明条件ごとに表している。
図6において、縦軸は所定空間4に対するスコアを表しており、横軸は所定空間4の照明条件を表している。
図6に示すように、照度均斉度が0.6である場合のスコアは、照度均斉度が0.9である場合のスコアに対して有意に大きくなっている。このため、
図6に示す実験の第2結果は、照度均斉度が0.6である場合、照度均斉度が0.9である場合と比較して、被験者が所定空間4に対して「和らいだ雰囲気」という印象を抱いていることを表している。
【0061】
図7は、実験の第3結果を示す図である。
図7は、所定空間4において紙面の文字が読みやすいか否かの評価を照明条件ごとに表している。
図7において、縦軸は所定空間4に対するスコアを表しており、横軸は所定空間4の照明条件を表している。
図7に示すように、照度均斉度が0.6である場合のスコアは、照度均斉度が0.2である場合のスコアに対して有意に大きくなっている。このため、
図7に示す実験の第3結果は、照度均斉度が0.6である場合、照度均斉度が0.2である場合と比較して、被験者が所定空間4において「紙面の文字が読みやすい」という印象を抱いていることを表している。
【0062】
図8は、実験の第4結果を示す図である。
図8は、所定空間4において人の顔の見えが明るいか否かの評価を照明条件ごとに表している。
図8において、縦軸は所定空間4に対するスコアを表しており、横軸は所定空間4の照明条件を表している。
図8に示すように、照度均斉度が0.6である場合のスコアは、照度均斉度が0.2である場合のスコアに対して有意に大きくなっている。このため、
図8に示す実験の第4結果は、照度均斉度が0.6である場合、照度均斉度が0.2である場合と比較して、被験者が所定空間4において「人の顔の見えが明るい」という印象を抱いていることを表している。
【0063】
そして、本願の発明者は、
図5及び
図6にそれぞれ示す第1結果及び第2結果から、所定空間4における使用領域A1の全体における照度均斉度を高くしすぎない、具体的には照度均斉度を0.6程度となるように照明負荷2を制御することで、ユーザU1にとって所定空間4が執務に没入しやすい雰囲気となりやすく、かつ、和らいだ雰囲気となりやすい、という知見を得た。
【0064】
また、本願の発明者は、
図7及び
図8にそれぞれ示す第3結果及び第4結果から、所定空間4における使用領域A1の全体における照度均斉度を低くしすぎない、具体的には照度均斉度を0.6程度となるように照明負荷2を制御することで、ユーザU1にとって所定空間4において紙面の文字が見えやすくなり、かつ、人の顔の見えが明るくなりやすい、という知見を得た。
【0065】
したがって、本願の発明者は、上記第1結果~第4結果を踏まえると、所定空間4の使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御することで、以下の4つの効果を奏しやすい、という知見を得た。すなわち、本願の発明者は、上述のように照明負荷2を制御することで、(1)ユーザU1にとって所定空間4が執務に没入しやすい雰囲気となりやすい、(2)ユーザU1にとって所定空間4が和らいだ雰囲気となりやすい、(3)ユーザU1にとって所定空間4において紙面の文字が見えやすい、(4)ユーザU1にとって所定空間4において人の顔の見えが明るくなりやすい、という4つの効果を奏しやすい、という知見を得た。
【0066】
[動作]
以下、実施の形態に係る照明制御システム100の動作の一例について
図9を用いて説明する。
図9は、実施の形態に係る照明制御システム100の動作例を示すフローチャートである。以下では、照明制御部12は、通信部11が制御入力を受け付ける以前においては、所定空間4に設置された照明負荷2を制御していないこととして説明する。
【0067】
まず、通信部11は、制御入力を受け付けるまで待機する(S1:No)。そして、通信部11が制御入力を受け付けると(S1:Yes)、照明制御部12は、通信部11が受け付けた制御入力に従って、所定空間4に設置された照明負荷2を制御する(S2)。これにより、所定空間4の照明環境が、制御入力に基づいて制御される。制御入力は、例えば任意の日における就業時刻から終業時刻までのスケジュールである。この場合、所定空間4の照明環境が、スケジュールに従って制御される。
【0068】
その後、照明制御部12は、通信部11が受け付けた制御入力に変化がない場合(S3:No)、上記制御を維持する(S4)。一方、照明制御部12は、通信部11が受け付けた制御入力に変化がある場合(S3:Yes)、変化後の制御入力に基づいて所定空間4の照明環境を変更するように制御する(S5)。これにより、所定空間4の照明環境が更新される。制御入力の変化は、例えば権限者が、所定空間4の照明環境を調整する場合に生じ得る。以下、上記の一連の処理をスケジュールが終了するまで(S6:Yes)、繰り返す。
【0069】
なお、照明制御部12が上述の第1制御及び第2制御のうちの少なくとも一方の制御を実行する場合、照明制御部12は、上記の一連の処理に加えて、通信部(取得部)11が取得した存否情報に基づいて、当該制御を実行する。
【0070】
[利点]
以下、実施の形態に係る照明制御システム100の利点について説明する。まず、本願の発明者の着眼点について説明する。近年では、ユーザのワークスタイルが多様化しつつあり、例えばABW型のオフィス等が台頭している。「ABW」とは、既に述べたように、仕事内容に合わせて働く場所又はデスク等をユーザU1が選択する働き方である。具体的には、「ABW」は、一人で集中して作業をするソロワーク、又は複数人でアイディアを出し合うグループワーク等、ユーザU1の活動内容に応じて、それらに適した空間又は環境を複数個所用意することで、ユーザU1の生産性を向上させることを狙うワークスタイルである。
【0071】
ところで、このようなオフィスに用意される空間においてユーザU1が個人で執務を行う場合、ユーザU1が執務を行う上での視認性及び作業性を十分に確保しつつ、ユーザU1が個人で執務を行いやすいことだけでなく、複数のユーザU1で協力して執務を行いやすいことも求められる。
【0072】
また、近年では、脱炭素及び省エネルギーに対する意識が高まっており、上記のようなオフィスにおいても消費電力を低減することが求められている。
【0073】
そこで、本願の発明者は、ユーザU1の作業性を重視するだけでなく、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい照明制御システムを検討した。
【0074】
上記の「実験」の結果を踏まえて、実施の形態に係る照明制御システム100では、照明制御部12は、所定空間4におけるユーザU1の使用領域A1の照度が使用領域A1の周辺の照度よりも高く、かつ、使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲A11が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上となるように、照明負荷2を制御する。さらに、照明制御部12は、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御する。
【0075】
これにより、実施の形態に係る照明制御システム100では、(1)ユーザU1にとって所定空間4が執務に没入しやすい雰囲気となりやすい、(2)ユーザU1にとって所定空間4が和らいだ雰囲気となりやすい、(3)ユーザU1にとって所定空間4において紙面の文字が見えやすい、(4)ユーザU1にとって所定空間4において人の顔の見えが明るくなりやすい、という効果が期待できる。
【0076】
つまり、実施の形態に係る照明制御システム100では、ユーザU1が執務を行う上での視認性及び作業性を十分に確保するための空間の要件、ユーザU1が個人で執務を行いやすくするための空間の要件、及び複数のユーザU1で協力して執務を行いやすくするための空間の要件をいずれも満たしやすい空間を提供することが可能である。さらに、実施の形態に係る照明制御システム100では、使用領域A1の全体に対して均一に光を照射する場合と比較して、光の照射範囲が狭くて済むので、照明負荷2の消費電力を低減することができる。
【0077】
このように、実施の形態に係る照明制御システム100では、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい、という利点がある。
【0078】
(変形例)
以上、実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。以下、実施の形態の変形例について列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせてもよい。
【0079】
例えば、上記実施の形態において、照明制御部12は、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.4以上0.7未満となるように照明負荷2を制御してもよい。このように使用領域A1の全体における照度均斉度をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0080】
また、例えば、上記実施の形態において、照明制御部12は、使用領域A1の照度と、使用領域A1の周辺の照度との比が2以上となるように照明負荷2を制御してもよい。このように使用領域A1の照度と使用領域A1の周辺の照度との相対的な関係をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0081】
また、例えば、上記実施の形態において、照明制御部12は、使用領域A1の平均照度が300lx以上1000lx未満であり、かつ、使用領域A1の最大照度が600lx以上となるように照明負荷2を制御してもよい。このように使用領域A1の照度をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0082】
また、例えば、上記実施の形態において、第2照明負荷22は、使用領域A1に光を放射し、かつ、ユーザU1の画面に光を放射するように構成又は設置されていてもよい。この場合、第2照明負荷22が使用領域A1のみに光を放射する場合と比較して、人に気軽に話しやすいという印象、及び人の顔の見えが適度に明るいという印象等をユーザU1に与えやすくなり、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。また、この場合、例えばユーザU1がWeb会議を行う際に、当該Web会議の参加者にとってユーザU1の顔の見えが良くなる、という効果も期待できる。
【0083】
さらに、照明制御部12は、ユーザU1の顔面照度と、使用領域A1の最大照度との比が3以上となるように照明負荷2を制御してもよい。ここで、ユーザU1の顔面照度は、ユーザU1の顔面で直接的に測定された照度であってもよいし、ユーザU1の顔面が位置すると想定される場所で測定された照度であってもよい。このように、ユーザU1の顔面照度と使用領域A1の照度との相対的な関係をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0084】
さらに、ユーザU1の顔面照度は、使用領域A1の端部から水平方向に-100m以上400mm以下の離れた位置であって、かつ、使用領域A1の鉛直上方に300mm以上600mm以下の離れた範囲における鉛直面の最大照度であってもよい。このように、ユーザU1の顔面照度をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0085】
さらに、ユーザU1の顔面照度は、200lx以上であってもよい。このように、ユーザU1の顔面照度をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0086】
図10は、第2照明負荷22の調整機能の説明図である。既に述べたように、第2照明負荷22は、
図10に示すように、配光角度を調整する機能(ロータ221)を有している。ここで、第2照明負荷22の筐体220には、推奨される配光角度を示すガイド222が設けられていてもよい。この態様では、ユーザU1が、ガイド222を参照することにより、第2照明負荷22に適した配光角度を設定しやすくなる、という利点がある。なお、
図10に示す例では、ガイド222は、三角形状の頂部が推奨される配光角度を指し示す態様であるが、この態様に限らず、推奨される配光角度を示す態様であればよい。
【0087】
実施の形態では、オフィス3が有する1つの所定空間4に設置された照明負荷2を照明制御システム100が制御する例について説明したが、これに限られない。例えば、オフィス3が複数の所定空間4を有している場合、照明制御システム100は、所定空間4ごとに独立して照明負荷2を制御してもよい。また、複数の照明制御システム100がそれぞれ複数の所定空間4に設置された照明負荷2を制御してもよい。
【0088】
また、実施の形態では、照明制御システム100は、1つのオフィス3を対象としているが、これに限らない。例えば、照明制御システム100は、複数のオフィス3を対象とし、オフィス3ごとに所定空間4の照明負荷2を制御してもよい。
【0089】
実施の形態において、照明制御システム100は、通信部(取得部)11を備えているが、これに限られない。例えば、存否情報に応じて照明負荷2の制御を変更する必要が無い場合、照明制御システム100は、通信部11を備えていなくてもよい。また、例えば、制御入力に応じて照明負荷2の制御を変更する必要が無い場合、照明制御システム100は、通信部11を備えていなくてもよい。
【0090】
実施の形態において、所定空間4には、照明負荷2として1つの第1照明負荷21と、1つの第2照明負荷22とが設置されていてもよい。つまり、所定空間4において、第1照明負荷21及び第2照明負荷22は、いずれも複数設置されていなくてもよい。
【0091】
実施の形態では、照明負荷2は照明制御システム100の構成要素に含まれていないが、照明負荷2が照明制御システム100の構成要素に含まれていてもよい。
【0092】
また、例えば、上記実施の形態では、照明制御システム100は、単一の装置によって実現されたが、複数の装置として実現されてもよい。照明制御システム100が複数の装置によって実現される場合、照明制御システム100が備える構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、上記実施の形態では、照明制御システム100は、サーバ装置に備えられていてもよいし、閉空間に設置された情報端末に備えられてもよい。つまり、本発明は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよいし、エッジコンピューティングによって実現されてもよい。
【0093】
例えば、上記実施の形態における装置間の通信方法については特に限定されるものではない。また、装置間の通信においては、図示されない中継装置が介在してもよい。
【0094】
また、上記実施の形態において、各構成要素は、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU又はプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0095】
また、各構成要素は、ハードウェアによって実現されてもよい。例えば、各構成要素は、回路(又は集積回路)でもよい。これらの回路は、全体として1つの回路を構成してもよいし、それぞれ別々の回路でもよい。また、これらの回路は、それぞれ、汎用的な回路でもよいし、専用の回路でもよい。
【0096】
また、本発明の全般的又は具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよい。また、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0097】
例えば、本発明は、照明制御システム100等のコンピュータが実行する照明制御方法として実現されてもよいし、このような照明制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよいし、このようなプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体として実現されてもよい。
【0098】
その他、各実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態、又は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【0099】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る照明制御システム100は、所定空間4に設けられた照明負荷2を制御する照明制御部12を備える。照明負荷2は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷21と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷22と、を有している。照明制御部12は、所定空間4におけるユーザU1の使用領域A1の照度が使用領域A1の周辺の照度よりも高く、かつ、使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲A11が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御する。
【0100】
このような照明制御システム100によれば、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい、という利点がある。
【0101】
また、第2の態様に係る照明制御システム100では、第1の態様において、照明制御部12は、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.4以上0.7未満となるように照明負荷2を制御する。
【0102】
このような照明制御システム100によれば、使用領域A1の全体における照度均斉度をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0103】
また、第3の態様に係る照明制御システム100では、第1又は第2の態様において、照明制御部12は、使用領域A1の照度と、使用領域A1の周辺の照度との比が2以上となるように照明負荷2を制御する。
【0104】
このような照明制御システム100によれば、使用領域A1の照度と使用領域A1の周辺の照度との相対的な関係をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0105】
また、第4の態様に係る照明制御システム100では、第1~第3のいずれか1つの態様において、照明制御部12は、使用領域A1の平均照度が300lx以上1000lx未満であり、かつ、使用領域A1の最大照度が600lx以上となるように照明負荷2を制御する。
【0106】
このような照明制御システム100によれば、使用領域A1の照度をより細かく設定することで、個人での執務及び複数人での執務の両方に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0107】
また、第5の態様に係る照明制御システム100では、第1~4のいずれか1つの態様において、第2照明負荷22は、使用領域A1に光を放射し、かつ、ユーザU1の画面に光を放射する。
【0108】
このような照明制御システム100によれば、第2照明負荷22が使用領域A1のみに光を放射する場合と比較して、人に気軽に話しやすいという印象、及び人の顔の見えが適度に明るいという印象等をユーザU1に与えやすくなり、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0109】
また、第6の態様に係る照明制御システム100では、第5の態様において、照明制御部12は、ユーザU1の顔面照度と、使用領域A1の最大照度との比が3以上となるように照明負荷2を制御する。
【0110】
このような照明制御システム100によれば、ユーザU1の顔面照度と使用領域A1の照度との相対的な関係をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0111】
また、第7の態様に係る照明制御システム100は、第5又は第6の態様において、ユーザU1の顔面照度は、使用領域A1の端部から水平方向に-100m以上400mm以下の離れた位置であって、かつ、使用領域A1の鉛直上方に300mm以上600mm以下の離れた範囲における鉛直面の最大照度である。
【0112】
このような照明制御システム100によれば、ユーザU1の顔面照度をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0113】
また、第8の態様に係る照明制御システム100は、第5~第7のいずれか1つの態様において、ユーザU1の顔面照度は、200lx以上である。
【0114】
このような照明制御システム100によれば、ユーザU1の顔面照度をより細かく設定することで、複数人での執務に更に適した空間を提供しやすくなる、という効果が期待できる。
【0115】
また、第9の態様に係る照明制御システム100では、第1~第8のいずれか1つの態様において、第2照明負荷22の配光角度は、30度以上70度未満である。
【0116】
このような照明制御システム100によれば、例えば床面から天井面までの高さが2400mm~3500mm程度の空間において、第2照明負荷22が使用領域A1に対して適切に光を放射しやすくなる、という利点がある。
【0117】
また、第10の態様に係る照明制御システム100では、第1~第9のいずれか1つの態様において、第2照明負荷22は、配光角度を調整する機能(ロータ221)を有している。第2照明負荷22の筐体220には、推奨される配光角度を示すガイド222が設けられている。
【0118】
このような照明制御システム100によれば、ユーザU1が、ガイド222を参照することにより、第2照明負荷22に適した配光角度を設定しやすくなる、という利点がある。
【0119】
また、第11の態様に係る照明制御方法では、所定空間4に設けられた照明負荷2を制御する。照明負荷2は、拡散形の配光特性を有する第1照明負荷21と、集光形の配光特性を有する第2照明負荷22と、を有している。照明制御方法では、所定空間4におけるユーザU1の使用領域A1の照度が使用領域A1の周辺の照度よりも高く、かつ、使用領域A1において照度均斉度が0.7以上となる範囲A11が、長軸の長さが80cm以上及び短軸の長さが50cm以上であって、かつ、使用領域A1の全体における照度均斉度が0.3以上0.9未満となるように照明負荷2を制御する。
【0120】
このような照明制御方法によれば、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい、という利点がある。
【0121】
また、第12の態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに、第11の態様に係る照明制御方法を実行させる。
【0122】
このようなプログラムによれば、消費電力を低減しつつ、個人での執務及び複数人での執務の両方に適した空間を提供しやすい、という利点がある。
【符号の説明】
【0123】
100 照明制御システム
11 通信部(取得部)
12 照明制御部
13 記憶部
2 照明負荷
21 第1照明負荷
22 第2照明負荷
220 筐体
222 ガイド
4 所定空間
A1 使用領域
U1 ユーザ