(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121694
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】繊維抽出方法、成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/12 20060101AFI20240830BHJP
D21H 11/02 20060101ALI20240830BHJP
D21J 3/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
D21H11/12
D21H11/02
D21J3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028933
(22)【出願日】2023-02-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年10月28日に愛知県庁にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000229069
【氏名又は名称】株式会社セキソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(74)【代理人】
【識別番号】100142918
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴
(72)【発明者】
【氏名】沓名 克尚
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 僚一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 耀司
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA05
4L055AC05
4L055BA18
4L055BA19
4L055BB01
4L055BF06
4L055CJ06
4L055EA03
4L055EA16
4L055EA25
4L055FA30
4L055GA24
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】環境への影響を軽減することが可能な繊維を抽出することができる繊維抽出方法を提供する。
【解決手段】繊維抽出方法は、草本類を粉砕する工程と、粉砕された草本類を乾燥する工程と、乾燥した草本類と苛性ソーダとを水に溶かして繊維含有水溶液を作成する工程と、繊維含有水溶液をろ過してセルロース繊維を抽出する工程と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
草本類を粉砕する工程と、
粉砕された前記草本類を乾燥する工程と、
乾燥した前記草本類と苛性ソーダとを水に溶かして繊維含有水溶液を作成する工程と、
前記繊維含有水溶液をろ過してセルロース繊維を抽出する工程と、を含む
繊維抽出方法。
【請求項2】
前記繊維含有水溶液のアルカリ濃度は1%以下である
請求項1に記載の繊維抽出方法。
【請求項3】
前記セルロース繊維の繊維径は1mm以下である
請求項1に記載の繊維抽出方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の繊維抽出方法により抽出されたセルロース繊維を用いて成形品を製造する
成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維抽出方法、及び成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の防錆カバーがある。特許文献1に記載の防錆カバーは、車両の組み立て時にディスクブレーキ装置とディスクホイールとの間に組み付けられる。防錆カバーは紙繊維により形成されている。防錆カバーは、ディスクロータの車外側に向いた面をディスクホイール側から覆うことにより、ディスクロータの車外側に向いた面に、水滴や、湿った空気、あるいは塩分を含んだ空気が触れ難くなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される防錆カバーは、車両が販売される際や、車両が海上輸送された後に陸揚げされた際に車両から取り外されて廃棄される。そのため、防錆カバーに用いられる繊維に関しては環境に与える影響が少ないものが望ましい。
なお、このような課題は、防錆カバーに限らず、各種の成形品に共通する課題である。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、環境への影響を軽減することが可能な繊維を抽出することができる繊維抽出方法及び成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する繊維抽出方法は、草本類を粉砕する工程と、粉砕された草本類を乾燥する工程と、乾燥した草本類と苛性ソーダとを水に溶かして繊維含有水溶液を作成する工程と、繊維含有水溶液をろ過してセルロース繊維を抽出する工程と、を含む。
上記の方法によれば、植物からセルロース繊維が抽出されるため、環境への影響を軽減することが可能な繊維を抽出することができる。
【0007】
上記課題を解決する成形品の製造方法は、上記の繊維抽出方法により抽出されたセルロース繊維を用いて成形品を製造する。
この方法によれば、植物から抽出されたセルロース繊維が成形品に含まれているため、紙材のみから形成される成形品と比較すると、成形品を廃棄した際の環境への影響を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の繊維抽出方法によれば、環境への影響を軽減することが可能な繊維を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の車両の車輪周辺の概略構成を示す端面図。
【
図2】実施形態のディスクホイールの正面構造を示す正面図。
【
図3】実施形態の防錆カバー本体の正面構造を示す正面図。
【
図4】実施形態の植物回収工程の手順を示すフローチャート。
【
図6】実施形態の抽出工程の手順を示すフローチャート。
【
図7】実施形態の抽出工程における撹拌器の動作例を示す断面図。
【
図8】実施形態の抽出工程における撹拌器の動作例を示す断面図。
【
図9】実施形態の防錆カバー本体の製造工程の手順を示すフローチャート。
【
図10】本実施形態の抄造工程の一例を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、成形品の製造方法及び防錆カバーの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
(防錆カバーの概略構成)
はじめに、防錆カバーの概略構成について説明する。
図1に示されるように、防錆カバー10は車両の車輪20に装着される。
【0011】
車輪20は、車軸30の先端部に固定されるアクスルハブ31に組み付けられている。アクスルハブ31にはディスクブレーキ装置40が更に組み付けられている。車輪20は、ディスクホイール21と、タイヤ22とを有している。
図2に示されるように、ディスクホイール21は、ディスク部210と、リム部211とを備えている。
【0012】
ディスク部210は円盤状に形成されている。ディスク部210には、複数の通孔210aが形成されている。複数の通孔210aは、ディスクホイール21の外側の空気をディスクホイール21の内部に導入するために設けられている。複数の通孔210aを通じてディスクホイール21の内部に導入される空気によりディスクブレーキ装置40が冷却される。
図1に示されるように、ディスク部210の中心部は、ボルト50及びナット51によりディスクブレーキ装置40と共にアクスルハブ31に締結されて固定されている。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、リム部211は、円筒状に形成されており、ディスク部210の外周に一体的に固定されている。
図1に示されるように、リム部211の外周にはタイヤ22が装着されている。リム部211には溝部211aが形成されている。溝部211aは、図示しないホイールキャップを組み付けることができるように凹状に形成されている。
【0014】
図1に示されるように、防錆カバー10は、カバー本体11と、クリップ12とを備えている。
図3に示されるように、カバー本体11は、軸線m10を中心に円環状に形成されており、中心部に開口部110を有している。カバー本体11は、植物から抽出されたセルロース繊維、及び粉砕された紙材の繊維により形成されている。植物は、例えば雑草である。紙材は、例えば古新聞や古段ボール等の回収紙材である。カバー本体11の外周には係合部111が形成されている。カバー本体11において開口部110から係合部111までの途中の部分には、カバー本体11を厚さ方向に貫通する装着孔112が複数形成されている。
図1に示されるように、ディスクホイール21の溝部211aに係合部111が係合することにより、カバー本体11がディスクホイール21に装着される。各装着孔112には、
図1に示されるようにクリップ12が挿入されて装着される。
【0015】
クリップ12は例えば樹脂により形成される。クリップ12は、先端部が鈎状に形成された脚部120を有している。脚部120の先端部がディスクホイール21の通孔210aに挿入されてディスクホイール21の内壁面に係合することにより、カバー本体11がクリップ12を介してディスクホイール21に組み付けられる。
【0016】
(防錆カバーの製造方法)
次に、防錆カバー本体11の製造方法について説明する。防錆カバー本体11を製造する際には、まず、その材料の一つである植物を回収する工程が行われる。
図4は、植物を回収する工程の手順を示すフローチャートである。本実施形態では、植物として雑草が用いられる。以下、
図4を参照して、植物回収工程の手順について説明する。
【0017】
図4に示されるように、植物回収工程では、まず、所定の場所から雑草を回収する(ステップS10)。所定の場所とは、例えばゴルフ場、公園、一般家庭の庭、河川敷、竹林、及び工場周辺の空き地である。本実施形態では、雑草が草本類に相当する。なお、雑草に代えて任意の草本類を用いることも可能である。続いて、回収した雑草を、粉砕器により10mm以下の長さに粉砕した後(ステップS11)、粉砕された雑草を所定の袋に投入して圧縮することにより雑草圧縮体を成形する(ステップS12)。その後、雑草圧縮体を通気性の良い環境に保管することにより、雑草圧縮体を乾燥させる(ステップS13)。
【0018】
図4に示される工程を経て、乾燥した雑草圧縮体を作成した後、雑草圧縮体からセルロース繊維を抽出する工程を行う。抽出工程では、
図5に示される撹拌器60が用いられる。
図5に示されるように、撹拌器60は、水槽61と、撹拌体62と、動力伝達部63と、モータ装置64と、加熱装置65とを備えている。
【0019】
水槽61は、有底円筒状に形成されており、上部に開口部を有している。
撹拌体62は棒状に形成されており、先端部に回転部620を有している。回転部620の外周には鋸波状の凹凸が形成されている。撹拌体62の先端部は水槽61の内部に配置されている。
【0020】
モータ装置64は、電力の供給に基づいて駆動することにより、動力伝達部63に動力を出力する。動力伝達部63は、減速機や変速機等を含んで構成されており、モータ装置64から出力される動力を撹拌体62に伝達して撹拌体62を回転させる。
加熱装置65は棒状の発熱体650を有している。発熱体650は、水槽61の上部から内部に延びるように配置されている。加熱装置65は、電力の供給に基づいて発熱体650から熱を発する。発熱体650から発せられる熱が水槽61の内部の液体に伝達することにより、水槽61の内部の液体の温度を上昇させることができる。加熱装置65は、図示しないクレーン装置を用いて、あるいは作業者により持ち上げられることにより、図中に示されるように水槽61の外周に取り付けられている状態から、二点鎖線で示されるように水槽61の外側まで移動させて水槽61から取り出すことが可能である。
【0021】
図6は、抽出工程の手順を示すフローチャートである。次に、抽出工程の手順について説明する。
図6に示されるように、抽出工程では、まず、水槽61内に水を入れた後(ステップS20)、加熱装置65を駆動させて水を加熱することにより水の温度を上昇させる(ステップS21)。このとき、水の温度を80度以上まで上昇させる。続いて、加熱装置65を水槽61から取り出した後(ステップS22)、
図7に示されるように雑草圧縮体M1及び苛性ソーダM2を水槽61に投入して水溶液W10を作成する(ステップS23)。これにより、乾燥した雑草を含み、且つアルカリ濃度が1%以下の水溶液W10が水槽61の内部に作成される。
【0022】
続いて、
図6に示されるように、モータ装置64を駆動させることにより水槽61内の水溶液W10を所定時間だけ撹拌する(ステップS24)。所定時間は例えば2時間である。水溶液W10が撹拌されることにより、水溶液W10内の雑草に含まれているセルロース繊維が解繊される。雑草には、セルロース繊維の他、リグニンが含まれている。リグニンは、高分子のフェノール性化合物であり、セルロース繊維同士を結合している。ステップS24の撹拌工程では、例えばセルロース繊維におけるリグニンの含有率が10wt%(重量パーセント)以上であって、且つ25wt%以下となるようにセルロース繊維からリグニンが除去される。換言すれば、セルロース繊維におけるリグニンの除去率が75%以上であって、且つ90%以下となるようにセルロース繊維からリグニンが除去される。なお、セルロース繊維におけるリグニンの含有率は10wt%未満であってもよい。
【0023】
なお、例えばパルプを製造する際には、リグニンの含有率が数wt%程度になるまでセルロース繊維からリグニンが除去される。したがって、本実施形態の撹拌工程では、パルプの製造工程と比較すると、より多くリグニンを含むセルロース繊維が抽出されることになる。
【0024】
続いて、水槽61内の水溶液W10に中和剤を投入することにより(ステップS25)、水溶液W10をアルカリ性から中性に変化させた後、水溶液W10をろ過してセルロース繊維を回収する(ステップS26)。例えば
図8に示されるように水槽61に配管70を接続した後、配管70の排出口71の下方にフィルタ容器80及び受け皿容器81を配置する。配管70の途中にはポンプ72が設けられている。フィルタ容器80の底壁部には微少な貫通孔800が複数形成されている。ステップS26の回収工程では、ポンプ72を駆動させて、水槽61の水溶液W10を排出口71からフィルタ容器80に向かって排出する。これにより、フィルタ容器80において水溶液W10がろ過されて、水溶液W10内のセルロース繊維がフィルタ容器80により回収されるとともに、残りの廃液がフィルタ容器80の貫通孔800を通じて受け皿容器81に流れて回収される。以上により、フィルタ容器80においてセルロース繊維の集合体100を取得することができる。続いて、取得したセルロース繊維の集合体100を水等で洗浄して(ステップS27)、
図6に示される抽出工程を終了する。
【0025】
このようにして製造されたセルロース繊維の集合体100と紙材とから、
図3に示される防錆カバー本体11を製造する。
図9は、防錆カバー本体11の製造工程の手順を示すフローチャートである。次に、
図9を参照して、防錆カバー本体11の製造工程の手順について説明する。なお、本実施形態の防錆カバー本体11の製造工程はWFM(Wet Fiber Mold)製法を利用したものである。
【0026】
図9に示されるように、防錆カバー本体11を製造する際には、まず、セルロース繊維の集合体100及び紙材を粗解繊する工程が行われる(ステップS30)。粗解繊の工程では、例えばセルロース繊維の集合体100及び紙材をミキサーに投入することにより、セルロース繊維の集合体100及び紙材を粗解繊する。この際、セルロース繊維の集合体100及び紙材を別々に粗解繊してもよいし、それらをまとめて粗解繊してもよい。
【0027】
続いて、防錆カバー本体11の抄造に用いられる水溶液を作成する工程が行われる(ステップS31)。水溶液作成工程では、まず、粗解繊されたセルロース繊維の集合体100及び紙材を細かく解繊する。具体的には、粗解繊されたセルロース繊維の集合体100及び紙材を水槽に投入して、セルロース繊維及び紙繊維が混合した水溶液を水槽の内部に作成する。次に、水槽内の混合水溶液に添加剤を投入する。添加剤は、製品化された防錆カバー本体11が雨水や湿気等を給水して必要以上に劣化することを防止するためのものである。添加剤としては、撥水剤やセルロース誘導体等が用いられる。セルロース誘導体は、防錆カバー本体11の疎水性を高めることが可能なものである。
【0028】
続いて、成形型を用いて防錆カバー本体11を抄造する工程が行われる(ステップS32)。成形型はセラミック等の多孔質体により形成されている。
図10に示されるように、成形型310はワーク320に一体的に組み付けられている。ワーク320には、モータ331等を含んで構成される回転ユニット330が設けられている。また、ワーク320にはホース341を介してバキュームポンプ340が接続されている。ホース341は、ワーク320内に形成された貫通孔321を通じて成形型310に繋がっている。抄造工程では、回転ユニット330によりワーク320を回転させながら、水槽の混合水溶液W11内に成形型310を浸漬させる。続いて、バキュームポンプ340を駆動させて成形型310を介して水槽内の混合水溶液W11を吸引する。これにより、成形型310の表面に、防錆カバーの形状に対応した繊維層の成形品が形成される。
【0029】
続いて、成形品に含まれる水成分を除去すべく、成形品を乾燥する工程が行われる(ステップS33)。乾燥工程では、まず、バキュームポンプを逆回転させる等して成形品を加圧することにより、成形型から成形品を取り外す。取り外された成形品は、ベルトコンベア上に落下した後、ベルトコンベアにより乾燥炉に搬送されて乾燥される。
【0030】
続いて、乾燥した成形品に対して金型を押し付けるプレス工程が行われる(ステップS34)。プレス工程は、成形品の形状の精度を高めるために行われる。
図9に示されるステップS30~S34の工程を経ることにより、植物から抽出されたセルロース繊維、及び紙材の繊維を含む防錆カバー本体11の完成品が製造される。本実施形態では、防錆カバー本体11が成形品に相当する。
【0031】
(本実施形態の防錆カバー及びその製造方法の作用及び効果)
本実施形態の本実施形態の防錆カバー及びその製造方法によれば、例えば以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0032】
本実施形態の防錆カバー本体11の製造方法は、
図6に示される抽出工程と、
図9に示されるステップS31の水溶液作成工程と、
図9に示されるステップS32の抄造工程とを含む。
図6に示される抽出工程では、雑草からセルロース繊維を抽出する。
図9に示されるステップS31の水溶液作成工程では、雑草から抽出されたセルロース繊維と、紙材とを水に溶かして成形用水溶液W11を作成する。
図9に示されるステップS32の抄造工程では、成形用水溶液W11の中に多孔質の成形型を浸漬し、成形型の内部から所定の吸引力で成形用水溶液W11を吸引することにより成形型の表面に、防錆カバー本体11の成形品を構成する繊維層を形成する。
この方法によれば、雑草から抽出した繊維が防錆カバー本体11に含まれているため、紙材のみで形成される防錆カバー本体と比較すると、防錆カバー本体を廃棄した際の環境への影響を軽減することができる。
【0033】
本実施形態の防錆カバー本体11の製造方法は、
図4に示されるステップS11の粉砕工程と、ステップS13の乾燥工程とを更に備える。
図4に示されるステップS11の粉砕工程では、雑草を粉砕する。乾燥工程では、粉砕された雑草を乾燥する。
図6に示される抽出工程は、乾燥した雑草からセルロース繊維を抽出する工程である。この抽出工程は、ステップS23の水溶液作成工程と、ステップS26のろ過工程とを備える。ステップS23の水溶液作成工程では、乾燥した雑草と苛性ソーダとを水槽61内の水に溶かして繊維含有水溶液W10を作成する。ステップS26のろ過工程では、繊維含有水溶液W10をろ過してセルロース繊維を抽出する。
この方法によれば、環境への影響を軽減することが可能な繊維を抽出することができる。また、このような工程を通じて抽出されるセルロース繊維は、その繊維径が1mm以下であるため、各種のパルプのモールド成形に用いることができる。セルロース繊維の繊維径が1mm以下であれば、それを用いて形成される製品の強度の低下を防止することが可能である。
【0034】
ステップS23の水溶液作成工程では、繊維含有水溶液W10のアルカリ濃度を1%以下に設定する。
この方法によれば、雑草から抽出されたセルロース繊維におけるリグニンの含有率を10wt%以上であって、且つ25wt%以下に設定することができるため、パルプ等と比較すると、より多くのリグニンがセルロース繊維に含まれている。このように、本実施形態の防錆カバー本体11の製造方法では、より多くのリグニンを含むセルロース繊維を敢えて生成している。これにより、例えば苛性ソーダの使用量を減らすことが可能となったり、撹拌に必要な時間を短くしたりすることが可能であるため、環境への影響を更に軽減することができる。
【0035】
防錆カバー10は、カバー本体11と、クリップ12とを備える。カバー本体11は、植物から抽出された繊維及び紙材を含む。クリップ12は、樹脂により形成されて、カバー本体11に脱着可能に取り付けられる。クリップ12は、車両のディスクホイール21に組み付けられることにより、カバー本体11をディスクホイール21に保持する。
この構成によれば、樹脂により形成されるクリップ12をカバー本体11から取り外した後、カバー本体11のみを廃棄することができるため、環境への影響を更に軽減することができる。
【0036】
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0037】
例えば、上記実施形態の製造方法は、防錆カバー10に限らず、他の成形品の製造にも利用することが可能である。
本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0038】
W10:繊維含有水溶液、W11:成形用水溶液、10:防錆カバー、11:カバー本体、12:クリップ、21:ディスクホイール、310:成形型。