(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121702
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1341 20060101AFI20240830BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20240830BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20240830BHJP
G02F 1/141 20060101ALN20240830BHJP
【FI】
G02F1/1341
G02F1/1339 505
G02F1/1343
G02F1/141
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028945
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】金森 裕太
【テーマコード(参考)】
2H088
2H092
2H189
【Fターム(参考)】
2H088FA03
2H088FA04
2H088GA01
2H088HA02
2H088HA14
2H088JA17
2H088MA18
2H092GA13
2H092GA21
2H092HA02
2H092JA24
2H092JB04
2H092JB05
2H092JB51
2H092NA04
2H092PA03
2H092PA09
2H092QA13
2H189DA04
2H189DA30
2H189DA53
2H189DA57
2H189DA71
2H189HA06
2H189HA15
2H189JA19
2H189LA03
2H189LA15
(57)【要約】
【課題】配向欠陥の成長を抑制することが可能な液晶表示素子を提供する。
【解決手段】第一基板2と第二基板5をシール材11で貼り合わせることで形成された隙間に液晶8が設けられ、第一基板2には、液晶8に画像を表示させる画素電極3により形成された有効画素領域12が設けられ、有効画素領域12とシール材11との間には、有効画素領域12よりも外側の領域から有効画素領域12に向かって発生する液晶8の配向欠陥の成長を抑制する配向欠陥抑制領域17が設けられ、配向欠陥抑制領域17は、液晶8に白画像を表示させる電極により形成されている、液晶表示素子1’である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板をシール材で貼り合わせることで形成された隙間に液晶が設けられた液晶表示素子であって、2枚の前記基板のうち一方の基板には、前記液晶に画像を表示させる画素電極により形成された有効画素領域が設けられ、
前記有効画素領域と前記シール材との間には、前記有効画素領域よりも外側の領域から前記有効画素領域に向かって発生する前記液晶の配向欠陥の成長を抑制する配向欠陥抑制領域が設けられ、
前記配向欠陥抑制領域は、前記液晶に白画像を表示させる電極により形成されている、
ことを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記有効画素領域の周囲には、見切りとなる黒画像を表示させる電極により形成された見切り表示領域が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記見切り表示領域に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記見切り表示領域は、前記有効画素領域の周囲に見切りとなる黒画像を表示させる画素電極により形成された見切り画素領域と、前記見切り画素領域の周囲に見切りとなる黒画像を表示させるベタ状電極により形成された見切り外周領域と、により形成され、前記配向欠陥抑制領域は、前記見切り外周領域に設けられている、ことを特徴とする請求項2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記配向欠陥抑制領域を覆うように遮光マスクが設けられている、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記シール材には、前記液晶を前記隙間に注入するための注入口が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記注入口とは反対側に位置する前記シール材の角部の周辺に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記シール材には、前記液晶を前記隙間に注入するための注入口が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記注入口の周辺に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項7】
前記配向欠陥抑制領域は、前記有効画素領域を取り囲むように設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、モバイル機器、プロジェクター、ビューファインダー、HMD、HUD等の画像表示機器の分野で広く使用されている。
【0003】
図4は、従来の液晶表示素子を示す(a)上面図、(b)A-A断面図である。
図4に示すように、従来の液晶表示素子1は、シリコンで形成された第一基板2と、第一基板2上に形成された画素電極3(Al等からなる金属膜)と、画素電極3上に形成された配向膜4(有機配向膜等)と、透明なガラスで形成された第二基板5と、第二基板5上に形成された対向電極6(ITO等からなる透明導電膜)と、対向電極6上に形成された配向膜7(有機配向膜等)と、第一基板2と第二基板5との間に充填された液晶8と、第一基板2と第二基板5とを貼り合わせる略枠状のシール材11と、を備えている。シール材11は、第一基板2と第二基板5との間の隙間の大きさを規定するスペーサー9と、第一基板2と第二基板5との間の隙間に液晶8を注入するための注入口10と、を備えている。注入口10は、樹脂等からなる封口材(不図示)により塞がれている。液晶8は、例えば、強誘電性液晶である。配向膜4、7の互いに対向する表面のそれぞれには、注入口10からその反対側に位置するシール材11の角部に向かって配向処理(ラビング等)が施されている。(例えば、特許文献1参照)
【0004】
画素電極3が形成された領域は、外部機器から入力された画像データに基づく画像を表示させる矩形状の有効画素領域12と、有効画素領域12の周囲に見切りとなる黒画像を表示させる枠状の見切り画素領域13と、に区画されている。見切り画素領域13の周囲には、見切り画素領域13と同様の黒画像を表示させる枠状の見切り外周領域14が設けられている。見切り外周領域14は、ベタ状電極(複数に分割されていない単一形状の電極)により形成されている。見切り画素領域13と見切り外周領域14は、全体として、有効画素領域12の周囲に黒画像を表示させる一つの見切り表示領域を形成している。第二基板5の上面には、見切り画素領域13よりも外側の領域(見切り外周領域14、シール材11)を覆う枠状の遮光マスク15が設けられている。遮光マスク15は、例えば、黒色の遮光板又は遮光膜である。有効画素領域12と見切り画素領域13は、遮光マスク15に覆われていないことから、使用者が視認可能な視認可能領域に相当する。見切り外周領域14は、遮光マスク15に覆われていることから、使用者が視認不可能な視認不可能領域に相当する。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-174574号公報
【特許文献2】特許第4972344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5は、従来の液晶表示素子に配向欠陥が発生した状態を模式的に示す上面図である。
図5に示すように、従来の液晶表示素子1には、液晶8の配向欠陥として、注入口10から有効画素領域12に向かって成長する配向欠陥16a(「ジグザグ欠陥」と呼ばれることがある)や、注入口10とは反対側に位置するシール材11の角部から有効画素領域12に向かって成長する配向欠陥16b(「ボートウェイク欠陥」と呼ばれることがある)が発生することがある。このような配向欠陥は、周囲の温度の変化や液晶8に印加される電圧の変化などにより、液晶表示素子1の動作中に一時的又は恒久的に発生することがある。なお、このような配向欠陥は、必ずしも
図5に示した位置に発生するわけではなく、その他の位置に発生することもある。
このような配向欠陥が大きく成長し、有効画素領域12や見切り画素領域13に侵入すると、画像品質が低下するという問題が生じる。
【0007】
本発明は、配向欠陥の成長を抑制することが可能な液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
2枚の基板をシール材で貼り合わせることで形成された隙間に液晶が設けられた液晶表示素子であって、2枚の前記基板のうち一方の基板には、前記液晶に画像を表示させる画素電極により形成された有効画素領域が設けられ、前記有効画素領域と前記シール材との間には、前記有効画素領域よりも外側の領域から前記有効画素領域に向かって発生する前記液晶の配向欠陥の成長を抑制する配向欠陥抑制領域が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記液晶に白画像を表示させる電極により形成されている、液晶表示素子である。
【0009】
前記有効画素領域の周囲には、見切りとなる黒画像を表示させる電極により形成された見切り表示領域が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記見切り表示領域に設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【0010】
前記見切り表示領域は、前記有効画素領域の周囲に見切りとなる黒画像を表示させる画素電極により形成された見切り画素領域と、前記見切り画素領域の周囲に見切りとなる黒画像を表示させるベタ状電極により形成された見切り外周領域と、により形成され、前記配向欠陥抑制領域は、前記見切り外周領域に設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【0011】
前記配向欠陥抑制領域を覆うように遮光マスクが設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【0012】
前記シール材には、前記液晶を前記隙間に注入するための注入口が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記注入口とは反対側に位置する前記シール材の角部の周辺に設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【0013】
前記シール材には、前記液晶を前記隙間に注入するための注入口が設けられ、前記配向欠陥抑制領域は、前記注入口の周辺に設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【0014】
前記配向欠陥抑制領域は、前記有効画素領域を取り囲むように設けられている、液晶表示素子であっても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配向欠陥の成長を抑制することが可能な液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例における液晶表示素子を示す(a)上面図、(b)A-A断面図。
【
図2】本発明の実施例における液晶表示素子の回路構成の一部を模式的に示す上面図。
【
図3】本発明の実施例における液晶表示素子において配向欠陥の成長が抑制された状態を模式的に示す一部拡大上面図。
【
図4】従来の液晶表示素子を示す(a)上面図、(b)A-A断面図。
【
図5】従来の液晶表示素子に配向欠陥が発生した状態を模式的に示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の実施例における液晶表示素子の(a)上面図、(b)A-A断面図である。
図1に示すように、本発明の実施例における液晶表示素子1’は、第一基板2と、画素電極3と、配向膜4と、第二基板5と、対向電極6と、配向膜7と、液晶8と、スペーサー9と、注入口10と、シール材11と、注入口10を塞ぐ封口材(不図示)と、を備えている。画素電極3が形成された領域は、有効画素領域12と、見切り画素領域13と、に区画されている。見切り画素領域13の周囲には、見切り外周領域14が設けられている。第二基板5の上面には、遮光マスク15が設けられている。以上の各構成は、
図4に示した従来の液晶表示素子1と同じであり、互いに同じ符号の構成は、互いに同じ構成に相当する。ここでは、それらの詳しい説明を省略する。
【0018】
本発明の実施例における液晶表示素子1’は、従来の液晶表示素子1とは異なる構成として、見切り外周領域14の範囲内に配向欠陥抑制領域17を備えている。配向欠陥抑制領域17は、注入口10とは反対側に位置するシール材11の角部からシール材の二辺に沿って延在するような略L字状に形成されている。配向欠陥抑制領域17は、見切り外周領域14の電極から分離された、Al等からなるベタ状電極又は画素電極3のようなマトリクス状電極により形成されている。
【0019】
配向欠陥抑制領域17は、その上に配置された液晶8に「ライン抜け」と呼ばれる表示不良と同様の白画像を表示させることができるように構成されている。この表示不良は、一般的に、画像の一部に線状の白画像(白線)が意図せずに発生するものとして知られている。その主な発生原因の一つは、液晶駆動回路の短絡や断線による故障である。配向欠陥抑制領域17は、この表示不良を特定の位置に意図的に発生させるものである。具体的には、以下の通りである。
【0020】
図2は、本発明の実施例における液晶表示素子の回路構成の一部を模式的に示す上面図である。
図2に示すように、液晶表示素子1’の第一基板2には、信号線駆動回路21と、複数の信号線21aと、走査線駆動回路22と、複数の走査線22aと、が形成されている。複数の信号線21aと複数の走査線22aは、互いにマトリクス状に交差するように配置されており、その交差部の近傍には、有効画素領域12及び見切り画素領域13の画素電極3を動作させるTFT等からなる画素回路(不図示)が形成されている。また、見切り外周領域14に相当する部分には、見切り外周領域14の電極を動作させるTFT等からなる所定の回路(不図示)が形成されている。また、配向欠陥抑制領域17に相当する部分には、配向欠陥抑制領域17の電極を動作させるTFT等からなる所定の回路(不図示)が形成されている。
【0021】
配向欠陥抑制領域17の電極を動作させる回路は、例えば、画素電極3を動作させる画素回路と同様の回路であるが、その配線の一部は、設計及び製造の段階で、予め意図的に短絡又は断線させられている。これにより、その回路は、故障したような状態となり、配向欠陥抑制領域17に「ライン抜け」と同様の白画像を表示させることができる。なお、どの配線を短絡又は断線させるかは、回路の設計に応じて適宜選択される。
【0022】
配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させる方法は、上述のように配線を短絡又は断線させることに限らず、その他の方法として、例えば、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させる電圧を制御することが可能な回路を設けることが考えられる。この回路は、例えば、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させる電圧の大きさを変えたり、電圧の供給と停止を切り替えたりすることができるように構成されている。この構成によれば、例えば、液晶8に配向欠陥16bが発生し易い状況になった時(液晶8を高温及び高電圧で長時間駆動した時等)にだけ、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させることも可能である。このように、必要な時にだけ配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させるようにすれば、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させることによるデメリット(見切り外周領域14からの光漏れ等)を低減することができる。但し、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させることによるデメリットを特に考慮する必要が無い場合には、配向欠陥抑制領域17には常に白画像が表示されているのが好ましい。
【0023】
液晶表示素子1’は、回路基板(不図示)上に実装され、その回路基板を介して外部機器から液晶表示素子1’へ画像データ等が入力される。液晶表示素子1’は、例えば、フィールドシーケンシャル駆動により、有効画素領域12にカラー画像を表示させ、見切り画素領域13と見切り外周領域14に黒画像を表示させ、配向欠陥抑制領域17に白画像を表示させる。なお、配向欠陥抑制領域17は、遮光マスク15により覆われているため、使用者は、配向欠陥抑制領域17に表示された白画像を視認することができない。
【0024】
図3は、本発明の実施例における液晶表示素子において配向欠陥の成長が抑制された状態を模式的に示す一部拡大上面図である。
図3に示すように、本発明の実施例における液晶表示素子1’では、シール材11の角部から発生した配向欠陥16bは、配向欠陥抑制領域17において成長し難くなり、場合によっては、その進行が完全に停止する。そのメカニズムは明らかではないが、一つの仮説として、配向欠陥抑制領域17では、液晶分子の向きが、その周囲の領域(見切り外周領域14)における液晶分子の向きとは異なる方向へ保持されているため、そのことが配向欠陥の連鎖的な成長プロセスを阻害するのだと考えられる。なお、この効果は、注入口10から発生する配向欠陥16aやその他の配向欠陥に対しても有効であると考えられる。
【0025】
本発明は、以上の実施例に限定されず、例えば、以下のような変形が可能である。
【0026】
配向欠陥抑制領域17の形状は、
図1に示したような略L字状に限らず、例えば、配向欠陥16a、16bの成長方向と交差する直線状又は円弧状、見切り画素領域13を取り囲む四角形又は円形の枠状などであっても良い。
【0027】
配向欠陥抑制領域17の位置は、見切り画素領域13とシール材11との間の領域内であれば、どこでも良い。但し、見切り画素領域13が設けられていない場合には、有効画素領域12とシール材11との間の領域内であれば、どこでも良い。注入口10から発生した配向欠陥16aの成長を抑制する場合には、配向欠陥抑制領域17は、注入口10の周辺に設けられているのが有効である。配向欠陥16a、16bが発生する領域は、ある程度、予測することができるが、予測することが難しい場合には、配向欠陥抑制領域17は、見切り画素領域13を取り囲むように設けられているのが有効である。
【0028】
配向欠陥抑制領域17の幅は、1画素の幅以上であるのが好ましいが、これには限定されない。
【0029】
見切り画素領域13、見切り外周領域14、遮光マスク15は、必須ではなく、必要に応じて省略されていても良い。但し、画像品質をできるだけ高める意味では、これらの全部が設けられているのが好ましい。特に、遮光マスク15は、配向欠陥抑制領域17に表示された白画像を遮蔽する意味では、設けられているのが好ましい。遮光マスク15は、第二基板5の上面ではなく、例えば、第二基板5の下面(液晶8に接する側の面)に遮光膜として設けられていても良い。
【0030】
本発明は、強誘電性液晶を用いた液晶表示素子に特に有効であるが、その他の液晶を用いた液晶表示素子にも有効である。
【0031】
本発明は、液晶表示素子1’のような反射型の液晶表示素子に限らず、2枚の基板がガラス等で構成された透過型の液晶表示素子に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 液晶表示素子
1’ 液晶表示素子
2 第一基板
3 画素電極
4 配向膜
5 第二基板
6 対向電極
7 配向膜
8 液晶
9 スペーサー
10 注入口
11 シール材
12 有効画素領域
13 見切り画素領域
14 見切り外周領域
15 遮光マスク
16a 配向欠陥
16b 配向欠陥
17 配向欠陥抑制領域
21 信号線駆動回路
21a 信号線
22 走査線駆動回路
22a 走査線