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特開2024-121706巻線界磁ロータ、巻線界磁ロータの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121706
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】巻線界磁ロータ、巻線界磁ロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20240830BHJP
   H02K 15/09 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
H02K15/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028955
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】瀬口 正弘
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603BB09
5H603CA02
5H603CA04
5H603CB02
5H603CC11
5H603CC17
5H603CD02
5H615AA01
5H615BB07
5H615PP02
5H615PP13
5H615QQ05
(57)【要約】
【課題】界磁巻線の占積率を高めることができる巻線界磁ロータ、及び巻線界磁ロータの製造方法を提供する。
【解決手段】
ロータ60は、導線材が径方向及び周方向に並ぶように各主極部72に導線材が多重巻きされて構成された界磁巻線80を備えている。界磁巻線は、主極部72の径方向側面に沿って軸方向に延びる直線部81a,82a、及び直線部81a,82aの端部同士を繋ぐ渡り部を有している。直線部81a,82aの横断面は、径方向を長辺とする矩形状をなしている。各主極部72において周方向及び径方向に並ぶ直線部81a,82aのうち、径方向外側の直線部81aの横断面における短辺方向寸法よりも、径方向内側の直線部82aの横断面における短辺方向寸法が小さくなるように、界磁巻線80が構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線界磁式の回転電機(40)に適用される巻線界磁ロータ(60)において、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられるとともに径方向に突出する主極部(72)を有するロータコア(70)と、
導線材(90)が径方向及び周方向に並ぶように前記各主極部に前記導線材が多重巻きされて構成された界磁巻線(80)と、
を備え、
前記各主極部に巻回された前記界磁巻線は、
前記主極部の径方向側面に沿って軸方向に延びる直線部(81a,82a,101a,102a)と、
前記直線部の端部同士を繋ぐ渡り部(101b,102b)と、
を有し、
前記直線部の横断面は、径方向を長辺とする矩形状をなしており、
前記各主極部において周方向及び径方向に並ぶ前記直線部のうち、径方向外側の直線部の横断面における短辺方向寸法よりも、径方向内側の直線部の横断面における短辺方向寸法が小さくなるように、前記界磁巻線が構成されている、巻線界磁ロータ。
【請求項2】
前記界磁巻線は、前記主極部ごとに、径方向に2層に前記導線材が巻回されてなるコイル体(100)を複数個有し、
前記各コイル体は、α巻されている、請求項1に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項3】
前記コイル体を構成する2層の前記直線部のうち、径方向外側の直線部(81a)の横断面における短辺方向寸法よりも、径方向内側の直線部(82a)の横断面における短辺方向寸法が小さくなるように、前記コイル体が構成されている、請求項2に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項4】
前記コイル体のうち少なくとも前記主極部の当接部分に、電気的絶縁性を有する合成樹脂層(120)が形成されている、請求項2又は3に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項5】
径方向外側に配置される前記コイル体(81)を外側コイル体とし、径方向内側に配置される前記コイル体(82)を内側コイル体とする場合において、
前記内側コイル体を構成する前記直線部(82a)のうち径方向において最も前記外側コイル体側の直線部の周方向の並び数が、前記外側コイル体を構成する前記直線部(81a)のうち径方向において最も前記内側コイル体側の直線部の周方向の並び数と同数又はそれよりも多い、請求項2又は3に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項6】
前記界磁巻線は、前記主極部ごとに、径方向に複数層に前記導線材が巻回されてなるコイル体を複数有し、
前記各コイル体は、α巻されており、
前記各コイル体において、複数層の前記導線材が並列接続されている、請求項1に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項7】
前記界磁巻線は、前記主極部ごとに、径方向に複数層に前記導線材が巻回されてなるコイル体を複数有し、
前記各コイル体は、α巻されており、
前記各コイル体において、複数層の前記導線材が直列接続されている、請求項1に記載の巻線界磁ロータ。
【請求項8】
巻線界磁式の回転電機(40)に適用される巻線界磁ロータ(60)の製造方法において、
前記巻線界磁ロータは、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられるとともに径方向に突出する主極部(72)を有するロータコア(70)と、
導線材(90)が径方向及び周方向に並ぶように前記各主極部に前記導線材が多重巻きされて構成された界磁巻線(80)と、
を備え、
前記各主極部に巻回された前記界磁巻線は、
前記主極部の径方向側面に沿って軸方向に延びる直線部(81a,82a,101a,102a)と、
前記直線部の端部同士を繋ぐ渡り部(101b,102b)と、
を有し、
前記直線部の横断面は、径方向を長辺とする矩形状をなしており、
前記界磁巻線は、前記主極部ごとに、径方向に複数層に前記導線材が巻回されてなるコイル体(100)を複数個有し、
横断面が円形状の導線材(90)の中間部(90a)を巻き始め部分として、前記主極部を模擬した型である基本型(200)に、前記導線材のうち前記巻き始め部分に対して一端側である第1導線部(91)を第1方向に巻き付け、前記導線材のうち前記巻き始め部分に対して他端側である第2導線部(92)を、前記第1方向とは逆の第2方向に前記基本型に巻き付けることにより、α巻された前記コイル体を製造する工程と、
前記コイル体のうち前記第1導線部で構成された第1コイル部(101)、前記コイル体のうち前記第2導線部で構成された第2コイル部(102)との間に配置された中央型(210)に前記第1コイル部及び前記第2コイル部を当接させ、かつ、前記第1コイル部のうち前記中央型側とは反対側に配置された第1側面型(221)に前記第1コイル部を当接させ、かつ、前記第2コイル部のうち前記中央型側とは反対側に配置された第2側面型(222)に前記第2コイル部を当接させた状態において、前記第1コイル部を構成する前記直線部(101a)に前記基本型の側に向かって主可動型(230)を押し当てることにより、前記第1コイル部を構成する前記直線部の横断面を矩形状に圧縮成形し、前記第2コイル部を構成する前記直線部(102a)に前記基本型の側に向かって前記主可動型を押し当てることにより、前記第2コイル部を構成する前記直線部の横断面を矩形状に圧縮成形するプレス工程と、
を備え、
前記プレス工程において、前記第1コイル部及び前記第2コイル部を構成する前記直線部は、該直線部が延びる方向及び圧縮方向それぞれと直交する方向を長辺とする横断面となるように圧縮成形され、
前記プレス工程において、径方向外側に配置される前記コイル体である外側コイル体(81)と、前記外側コイル体よりも径方向内側に配置される前記コイル体である内側コイル体(82)とは、前記外側コイル体を構成する前記直線部(81a)のアスペクト比よりも、前記内側コイル体を構成する前記直線部(82a)のアスペクト比の方が大きくなるように圧縮成形される、巻線界磁ロータの製造方法。
【請求項9】
前記プレス工程において、前記コイル体を構成する2層の前記直線部のうち、径方向外側に配置される直線部の横断面における短辺方向寸法と、径方向内側に配置される直線部の横断面における短辺方向寸法とが異なるように、前記コイル体が圧縮成形される、請求項8に記載の巻線界磁ロータの製造方法。
【請求項10】
前記プレス工程において、前記第1コイル部を構成する前記渡り部(101b)に前記基本型の側に向かって副可動型(231)を押し当てることにより、前記第1コイル部を構成する前記渡り部の横断面を矩形状に圧縮成形し、前記第2コイル部を構成する前記渡り部(102b)に前記基本型の側に向かって前記副可動型を押し当てることにより、前記第2コイル部を構成する前記渡り部の横断面を矩形状に圧縮成形し、
前記プレス工程において、前記直線部のアスペクト比と前記渡り部のアスペクト比とが異なるように圧縮成形される、請求項8又は9に記載の巻線界磁ロータの製造方法。
【請求項11】
前記プレス工程で圧縮成形された前記コイル体において、周方向に並ぶ前記各直線部は、互いの当接面に凹凸を有した状態で互いに密接している、請求項8又は9に記載の巻線界磁ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻線界磁ロータ、及び巻線界磁ロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の巻線界磁ロータとしては、周方向に並ぶ磁極ごとに設けられるとともに径方向に突出する主極部を有するロータコアと、導線材が径方向及び周方向に並ぶように各主極部に導線材が多重巻きされて構成された界磁巻線とを備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-178211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各主極部に巻回された界磁巻線は、主極部の径方向側面に沿って軸方向に延びる直線部と、直線部の端部同士を繋ぐ渡り部とを有している。
【0005】
周方向に隣り合う主極部間の距離は、径方向内側にいくほど小さくなる。このため、周方向に隣り合う主極部のうち、一方に巻回された界磁巻線の径方向内側かつ周方向最外層の直線部と、他方に巻回された界磁巻線の径方向内側かつ周方向最外層の直線部とが干渉し得る。干渉を避けるために、界磁巻線の巻数を減らすことも考えられる。しかしながら、この場合、周方向に隣り合う主極部間のデッドスペースが増加し、界磁巻線の占積率が低下する懸念がある。
【0006】
本開示は、界磁巻線の占積率を高めることができる巻線界磁ロータ、及び巻線界磁ロータの製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、巻線界磁式の回転電機に適用される巻線界磁ロータにおいて、
周方向に並ぶ磁極ごとに設けられるとともに径方向に突出する主極部を有するロータコアと、
導線材が径方向及び周方向に並ぶように前記各主極部に前記導線材が多重巻きされて構成された界磁巻線と、
を備え、
前記各主極部に巻回された前記界磁巻線は、
前記主極部の径方向側面に沿って軸方向に延びる直線部と、
前記直線部の端部同士を繋ぐ渡り部と、
を有する。
【0008】
本開示において、前記直線部の横断面は、径方向を長辺とする矩形状をなしており、
前記各主極部において周方向及び径方向に並ぶ前記直線部のうち、径方向外側の前記直線部の横断面における短辺方向寸法よりも、径方向内側の前記直線部の横断面における短辺方向寸法が小さくなるように、前記界磁巻線が構成されている。
【0009】
これにより、周方向に隣り合う主極部のうち、一方に巻回された界磁巻線の径方向内側の直線部と、他方に巻回された界磁巻線の径方向内側の直線部との干渉を回避しつつ、主極部の径方向内側における界磁巻線の巻数を増加させることができる。その結果、周方向に隣り合う主極部間のデッドスペースを減少させることができ、界磁巻線の占積率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係る回転電機の制御システムの全体構成図。
図2】インバータ及びその周辺構成を示す図。
図3】ロータの横断面図。
図4】ロータに備えられる共振回路を示す図。
図5】コイル体の構成を示す斜視図。
図6】ロータの製造工程を示すフローチャート。
図7】基本型への導線材の巻き付け態様を示す斜視図。
図8】基本型への導線材の巻き付け態様を示す斜視図。
図9】導線材の巻き付け完了状態を示す斜視図。
図10】側面型の移動態様を示す斜視図。
図11】側面型、主可動型及び副可動型の移動態様を示す斜視図。
図12】導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図13】導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図14】導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図15】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図16】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図17】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図18】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図19】その他の実施形態に係る基本型への導線材の巻き付け態様を示す斜視図。
図20】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図21】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
図22】その他の実施形態に係るコイル体の構成を示す斜視図。
図23】その他の実施形態に係るコイル体の構成を示す斜視図。
図24】その他の実施形態に係るロータの横断面図。
図25】その他の実施形態に係るロータの横断面図。
図26】その他の実施形態に係る導線材の圧縮成形態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
以下、本開示に係る巻線界磁ロータを具体化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
まず、図1を用いて、回転電機を備える制御システムについて説明する。制御システムは、直流電源10、インバータ20、制御部30及び回転電機40を備えている。回転電機40は、界磁巻線型の同期機である。本実施形態において、制御部30は、回転電機40が、電動機兼発電機であるISG(Integrated Starter Generator)やMG(Motor Generator)として機能するように、回転電機40を制御する。例えば、回転電機40、インバータ20及び制御部30を備えて機電一体型駆動装置が構成されたり、回転電機40、インバータ20及び制御部30それぞれが各コンポーネントで構成されたりしている。
【0014】
図1を用いて、回転電機40の概要について説明する。回転電機40は、ハウジング41と、ハウジング41内に収容されるステータ50及びロータ60とを備えている。本実施形態の回転電機40は、ロータ60がステータ50の径方向内側に配置されたインナロータ型のものである。
【0015】
ステータ50は、ステータコア51と、ステータコア51に巻回されたステータ巻線52とを備えている。ステータコア51は、軟磁性体からなる積層鋼板により構成されており、円環状のバックヨークと、バックヨークから径方向内側に向かって突出する複数のティースとを有している。ステータ巻線52は、例えば銅線で構成されており、電気角で互いに120°ずれた状態で配置されたU,V,W相巻線52U,52V,52Wを含む。
【0016】
ロータ60は、ロータコア70と、界磁巻線80とを備えている。ロータコア70は、軟磁性体からなり、例えば積層鋼板により構成されている。界磁巻線80は、例えば圧縮成形にて構成されている。なお、界磁巻線80は、例えば、アルミ線又は銅線で構成されていればよい。
【0017】
ロータコア70の中心孔には、回転軸32が挿通されている。回転軸32は、軸受42を介してハウジング41に回転可能に支持されている。ステータ50及びロータ60は、いずれも回転軸32と共に同軸上に配置されている。以下の記載では、回転軸32が延びる方向を軸方向とし、回転軸32の中心から放射状に延びる方向を径方向とし、回転軸32を中心として円周状に延びる方向を周方向としている。
【0018】
図2に示すように、インバータ20は、U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの直列接続体を備えている。U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpと、U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnとの接続点には、U,V,W相巻線52U,52V,52Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線52U,52V,52Wの第2端は、中性点で接続されている。すなわち、本実施形態において、U,V,W相巻線52U,52V,52Wは星形結線されている。なお、本実施形態において、各スイッチSUp~SWnは、IGBTである。各スイッチSUp,SVp,SWp,SUn,SVn,SWnには、フリーホイールダイオードが逆並列に接続されている。
【0019】
U,V,W相上アームスイッチSUp,SVp,SWpのコレクタには、直流電源10の正極端子が接続されている。U,V,W相下アームスイッチSUn,SVn,SWnのエミッタには、直流電源10の負極端子が接続されている。なお、直流電源10には、平滑コンデンサ11が並列接続されている。
【0020】
続いて、図3を用いて、ロータ60について説明する。
【0021】
ロータコア70は、円筒状をなすヨーク部としての円筒部71と、円筒部71ら径方向外側に向けて突出する複数の主極部72と、主極部72の先端部から径方向両側に延びる鍔部74とを有している。本実施形態において、各主極部72は、周方向において等間隔に設けられている。
【0022】
界磁巻線80は、第1巻線部81及び第2巻線部82を備えている。各主極部72において、径方向外側に第1巻線部81が巻回され、第1巻線部81よりも径方向内側に第2巻線部82が巻回されている。各主極部72において、第1巻線部81及び第2巻線部82の巻方向は互いに同じになっている。また、周方向に隣り合う主極部72のうち、一方に巻回された各巻線部81,82の巻方向と、他方に巻回された各巻線部81,82の巻方向とが逆になっている。このため、周方向に隣り合う主極部72同士で互いに磁化方向が逆になる。
【0023】
図4に、共通の主極部72に巻回された各巻線部81,82を備えるロータ60側の電気回路を示す。ロータ60には、整流素子としてのダイオード83と、コンデンサ84とが設けられている。ダイオード83のカソードには、第1巻線部81の第1端が接続され、第1巻線部81の第2端には、第2巻線部82の第1端が接続されている。第2巻線部82の第2端には、ダイオード83のアノードが接続されている。第2巻線部82には、コンデンサ84が並列接続されている。なお、ダイオード83のアノードに第1巻線部81の第1端が接続され、ダイオード83のカソードに第2巻線部82の第2端が接続されていてもよい。
【0024】
本実施形態では、第1巻線部81、コンデンサ84及びダイオード83からなる直列共振回路が構成され、第2巻線部82及びコンデンサ84からなる並列共振回路が構成されている。
【0025】
図2の説明に戻り、制御部30は、インバータ20を構成する各スイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成する。詳しくは、制御部30は、直流電源10から出力された直流電力を交流電力に変換してU,V,W相巻線52U,52V,52Wに供給すべく、各アームスイッチSUp~SWnをオンオフする駆動信号を生成し、生成した駆動信号を各アームスイッチSUp~SWnのゲートに供給する。
【0026】
制御部30は、各相巻線52U,52V,52Wに基本波電流及び高調波電流の合成電流を流すように各スイッチSUp~SWnをオンオフする。基本波電流は、回転電機40にトルクを発生させることを主とする電流である。高調波電流は、界磁巻線80を励磁して界磁巻線80に界磁電流を流すことを主とする電流である。各相巻線52U,52V,52Wに流れる相電流は、電気角で120°ずつずれている。
【0027】
なお、制御部30の各機能の一部又は全部は、例えば、1つ又は複数の集積回路等によりハードウェア的に構成されていてもよい。また、制御部30の各機能は、例えば、非遷移的実体的記録媒体に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータによって構成されていてもよい。
【0028】
続いて、図3を用いて、界磁巻線80について説明する。
【0029】
界磁巻線80を構成する導線材は、横断面が矩形状(具体的には長方形状)をなす平角線である。導線材が、径方向及び周方向に並ぶようにフラットワイズ巻きされて界磁巻線80が構成されている。導線材は、導体部と、導体部を覆う絶縁層(例えば絶縁被膜)とからなる。
【0030】
界磁巻線80は、主極部72の径方向側面を軸方向に沿って延びる直線部と、直線部の端部を繋ぐとともに周方向に延びる渡り部とを備えている。図3において、81aは第1巻線部81の直線部であり、82aは第2巻線部82の直線部である。
【0031】
図3に示す例では、第1巻線部81の直線部81aは、径方向に2列並んでいる。第1巻線部81において、径方向でステータ50に最も近い1層目の直線部81aは、周方向に6つ並び、2層目の直線部81aは周方向に5つ並んでいる。第2巻線部82の直線部82aは、径方向に2列並んでいる。第2巻線部82において、径方向でステータ50に最も近い1層目(つまり、界磁巻線80の3層目)の直線部82aは、周方向に5つ並び、2層目(つまり、界磁巻線80の4層目)の直線部82aは周方向に4つ並んでいる。
【0032】
第1,第2巻線部81,82において、直線部81a,82aの横断面における長辺方向寸法をKAとし、直線部81a,82aの横断面における短辺方向寸法をKBとし、アスペクト比をKA/KBとする。本実施形態では、各主極部72において周方向及び径方向に並ぶ直線部81a,82aにおいて、径方向外側の直線部81aのアスペクト比よりも径方向内側の直線部82aのアスペクト比が大きくなるように、第1,第2巻線部81,82が構成されている。これは、界磁巻線80の占積率を高めるための構成である。
【0033】
なお、第1巻線部81を構成する直線部81aのアスペクト比は、例えば、1.8~10、1.8~8、1.9~6、又は2~5であればよい。また、第2巻線部82を構成する直線部82aのアスペクト比は、例えば、第1巻線部81を構成する直線部81aのアスペクト比の1.3~5倍、1.5~5倍、1.8~4倍、又は2~3倍であればよい。
【0034】
ロータ60の回転軸32の回転中心軸線Oを通るとともに径方向に延びる主極部72の中心軸線を第1軸線B1とする。また、周方向に隣り合う第1軸線B1の周方向における中央位置と回転中心軸線Oとを通るとともに、径方向に延びる軸線を第2軸線B2とする。第1軸線B1はd軸に相当し、第2軸線B2はq軸に相当する。本実施形態の巻線態様によれば、界磁巻線80の周方向最外層の直線部を第2軸線B2に近づけることができる。これにより、周方向に隣り合う主極部72の間のスペースのうち界磁巻線80が占めるスペースの割合を高めることができ、ロータ60における界磁巻線80の占積率を高めることができる。横断面積の大きい平角線を用いて界磁巻線80の抵抗値を減少でき、界磁巻線80における損失を低減し、界磁巻線80の励磁性を高めることができる。
【0035】
なお、図3に示す例では、周方向に隣り合う界磁巻線80間に隙間がある。ただし、隙間がある構成に限らず、例えば、第2軸線B2に沿って設けられたシート状の絶縁部材(例えば絶縁紙)に、周方向に隣り合う界磁巻線80それぞれの外側端部が当接する構成であってもよい。
【0036】
界磁巻線80は、磁極ごと(主極部72ごと)に平角線が径方向に多層に巻回されてなる複数のコイル体100を有し、それら各磁極のコイル体100が周方向に直列に接続されることで構成されている。図3に示す構成において、各主極部72の第1巻線部81が1つのコイル体100で構成され、各主極部72の第2巻線部82が1つのコイル体100で構成されている。
【0037】
図5(a)は、コイル体100の基本構成を示す斜視図である。図5(a)では、A方向が径方向であり、B方向が軸方向であり、C方向が周方向である。なお、図5(a)の構成では、径方向内外の各層の巻き線数を同一としているが、図3に示したように、径方向内外で巻き線数が異なっていてもよい。
【0038】
コイル体100は、α巻コイルとして構成された空芯コイルであり、径方向に並ぶ2層分の巻線が一体形成されるものとなっている。つまり、コイル体100は、主極部72への装着状態でそれぞれ径方向内側(内層側)、径方向外側(外層側)となる内側コイル部101と外側コイル部102とを有しており、各コイル部101,102では、コイル内周側で導線材90が互いに繋がっている。コイル体100は、径方向の2層を1つの単位とする単位コイルであるとも言える。また、内側コイル部101は、周回部分から軸方向に延びるコイル端部103を有し、外側コイル部102は、周回部分から軸方向に延びるコイル端部104を有している。コイル体100は、中空部に主極部72を挿通させることにより、主極部72に装着されるものとなっている。コイル体100は、上述したように、直線部及び渡り部を有している。詳しくは、内側コイル部101は、直線部101a及び渡り部101bを有し、外側コイル部102は、直線部102a及び渡ぶ102bを有している。
【0039】
界磁巻線80において、周方向に隣り合う各磁極のコイル体100は、各コイル体100のコイル端部103,104同士が互いに接合されることで直列に接続されるようになっており、その構成の一例を図5(b),(c)を用いて説明する。図5(b)には、コイル端部103,104の形態が相違する2種類のコイル体100が示されている。なお、以下の説明では、2種類のコイル体100のうち一方を「第1コイル体100A」、他方を「第2コイル体100B」とも記載する。また、第1コイル体100Aにおけるコイル端部103,104を「コイル端部103a,104a」とし、第2コイル体100Bにおけるコイル端部103,104を「コイル端部103b,104b」とする。
【0040】
図5(b)に示すように、第1コイル体100Aでは、内側コイル部101及び外側コイル部102の各コイル端部103a,104aのうち、外側コイル部102のコイル端部104aの形態が、図5(a)に示すコイル端部104とは異なっている。具体的には、外側コイル部102のコイル端部104aが、図5(a)に示す端部位置からそのまま軸方向に延びるのではなく、第1コイル体100Aの周回部分の上面に沿って周方向に延伸され、1磁極ピッチ分だけ周方向にずれた位置、すなわち内側コイル部101のコイル端部103aと略横並びとなる位置で軸方向に屈曲されている。
【0041】
また、第2コイル体100Bでは、内側コイル部101及び外側コイル部102の各コイル端部103b,104bのうち、内側コイル部101のコイル端部103bの形態が、図5(a)に示すコイル端部103とは異なっている。具体的には、内側コイル部101のコイル端部103bが、図5(a)に示す端部位置からそのまま軸方向に延びるのではなく、第2コイル体100Bの周回部分とは逆側に周方向に延伸され、1磁極ピッチ分だけ周方向にずれた位置で軸方向に屈曲されている。
【0042】
要するに、第1コイル体100A及び第2コイル体100Bは、1種類のコイル体100(図5(a)に示すコイル体100)を基本としつつ、そのコイル端部103,104の形態が異なる2種類のコイル体100となっている。
【0043】
図5(c)は、周方向に並ぶコイル体100A,100Bを直列に接続した状態を示す図である。なお、図5(c)では、便宜上、各コイル体100A,100Bを、円弧状でなく直線状に並べた状態が示されている。この場合、径方向内外のうち径方向内側では、各コイル体100A,100Bのコイル端部103a,103bが互いに接合されるとともに、径方向外側では、各コイル体100A,100Bのコイル端部104a,104bが互いに接合されている。各コイル端部103,104は、例えば溶接により接合される。
【0044】
なお、実際の構成として各コイル体100A,100Bが円弧状に並べられた状態では、各コイル体100A,100Bは平面視において一直線上に並ぶのではなく、互いに交差した状態で並ぶ。そのため、互いに接合されるコイル端部103a,103bの少なくともいずれかは、延伸方向に対して斜めに交差する線上で軸方向に立ち上げられているとよい。これにより、コイル端部103どうしを好適に面接合させることができる。例えば、コイル端部103同士の面接合の向きを、ロータ60の回転中心点から延びる直線に沿う向きとするとよい。コイル端部104a,104bについても同様である。
【0045】
続いて、図6を用いて、界磁巻線80の製造方法について説明する。以下では、界磁巻線80を構成する第1,第2巻線部81,82のうち、第1巻線部81を主にして説明する。
【0046】
ステップS10では、横断面が円形状の導線材90(具体的には、丸線)の中間部90aを巻き始め部分として、基本型200に、導線材90のうち巻き始め部分に対して一端側である第1導線部91を第1方向に巻き付ける。一方、導線材90のうち巻き始め部分に対して他端側である第2導線部92を、第1方向とは逆の第2方向に基本型200に巻き付ける(図7及び図8参照)。基本型200は、プレス装置を構成し、主極部72を模擬した型である。各導線部91,92の基本型200への巻き付けは、巻線装置により実施される。
【0047】
ステップS11では、第1導線部91と第2導線部92との間にプレス装置を構成する中央型210が配置されるように、中央型210を移動させる(図9参照)。本実施形態の中央型210は、上下方向に2分割されており、第1中央型211及び第2中央型212からなる。
【0048】
ステップS12では、中央型210が配置された状態で、第1導線部91及び第2導線部92を基本型200に巻線装置により更に巻き付ける。これにより、図9に示すように、α巻されたコイル体100が製造される。コイル体100のうち第1導線部91で構成された部分が内側コイル部101(「第1コイル部」に相当)であり、コイル体100のうち第2導線部92で構成された部分が外側コイル部102(「第2コイル部」に相当)である。中央型210の一方の面に内側コイル部101が当接し、中央型210の他方の面に外側コイル部102が当接する。
【0049】
ステップS13では、第1側面型221を中央型210に向かって移動させることにより(図10参照)、内側コイル部101のうち中央型210側との当接部とは反対側に第1側面型221を当接させる。また、第2側面型222を中央型210に向かって移動させることにより、外側コイル部102のうち中央型210側との当接部とは反対側に第2側面型222を当接させる。
【0050】
ステップS14(「プレス工程」に相当)では、中央型210及び第1側面型221で内側コイル部101を挟み込んだ状態で、図11に示すように、内側コイル部101を構成する直線部101aに、基本型200の側に向かって上下方向から主可動型230を押し当てることにより、内側コイル部101を構成する直線部101aの横断面を矩形状に圧縮成形する。ここでは、図12図14に示すように、横断面が円形状の直線部101aが段階的に圧縮成形される。圧縮成形に伴い、直線部101aの圧縮方向と直交する方向に直線部101aが延びるため、図13に示すように、第1側面型221の移動が許容されてもよい。
【0051】
また、ステップS14において、中央型210及び第2側面型222で外側コイル部102を挟み込んだ状態で、外側コイル部102を構成する直線部102aに、基本型200の側に向かって上下方向から主可動型230を押し当てることにより、内側コイル部101と同様に、外側コイル部102を構成する直線部102aの横断面を矩形状に圧縮成形する。圧縮成形に伴い、直線部102aの圧縮方向と直交する方向に直線部102aが延びるため、第2側面型222の移動が許容されてもよい。
【0052】
主可動型230によるプレス工程により、内側コイル部101を構成する直線部101a及び外側コイル部102を構成する直線部102aの横断面は、図3に示したように、長方形状となる。内側コイル部101を構成する直線部101aは、図3に示す第1巻線部81のうち周方向に5つ並ぶ直線部81aに相当する。外側コイル部102を構成する直線部102aは、図3に示す第1巻線部81のうち周方向に6つ並ぶ直線部81aに相当する。
【0053】
ステップS14では、中央型210及び第1側面型221で内側コイル部101を挟み込んだ状態で、図11に示すように、内側コイル部101を構成する渡り部101bに、基本型200の側に向かって左右方向から副可動型231を押し当てることにより、内側コイル部101を構成する渡り部101bの横断面を矩形状に圧縮成形する。ここでは、直線部101aと同様に、横断面が円形状の渡り部101bが段階的に圧縮成形される。圧縮成形に伴い、渡り部101bの圧縮方向と直交する方向に渡り部101bが延びるため、第1側面型221の移動が許容されてもよい。
【0054】
また、ステップS14において、中央型210及び第2側面型222で外側コイル部102を挟み込んだ状態で、外側コイル部102を構成する渡り部102bに、基本型200の側に向かって左右方向から副可動型231を押し当てることにより、内側コイル部101と同様に、外側コイル部102を構成する渡り部102bの横断面を矩形状に圧縮成形する。圧縮成形に伴い、渡り部102bの圧縮方向と直交する方向に渡り部102bが延びるため、第2側面型222の移動が許容されてもよい。
【0055】
副可動型231によるプレス工程により、内側コイル部101を構成する渡り部101b及び外側コイル部102を構成する渡り部102bの横断面は、長方形状となる。
【0056】
ステップS14の後、ステップS15において、圧縮成形されたコイル体100が基本型200から取り出される。
【0057】
以上説明したステップS10~S15の工程により、第1巻線部81を構成するコイル体100を製造する。同様に、ステップS10~S15の工程により、第2巻線部82を構成するコイル体100を製造する。この場合において、ステップS14では、主極部72の径方向外側に配置される第1巻線部81を構成するコイル体100(「外側コイル体」に相当)のアスペクト比よりも、主極部72の径方向内側に配置される第2巻線部82を構成するコイル体100(「内側コイル体」に相当)のアスペクト比の方が大きくなるように、内側コイル部101及び外側コイル部102が圧縮成形される(図3参照)。
【0058】
続くステップS16では、第1巻線部81を構成するコイル体100と、第2巻線部82を構成するコイル体100とを主極部72に挿入する。
【0059】
なお、図6で説明したプレス成型装置を構成する中央型210、第1側面型221、第2側面型222、主可動型230、副可動型231及び巻線装置等、図6の製造工程で必要な各装置は、コントローラにより制御される。
【0060】
以上説明した本実施形態では、各巻線部81,82を構成する直線部81a,82aの横断面は、径方向を長辺とする矩形状をなしている。第1巻線部81を構成する直線部81aのアスペクト比よりも、第2巻線部82を構成する直線部82aのアスペクト比の方が大きい。これにより、各主極部72において周方向及び径方向に並ぶ直線部のうち、第1巻線部81の直線部81aの横断面における短辺方向寸法よりも、第2巻線部82の直線部82aの横断面における短辺方向寸法が小さくなる。その結果、周方向に隣り合う主極部72のうち、一方に巻回された第2巻線部82の周方向最外層の直線部82aと、他方に巻回された第2巻線部82の周方向最外層の直線部82aとの干渉を回避しつつ、主極部72の径方向内側における界磁巻線80の巻数を増加させることができる。その結果、周方向に隣り合う主極部72間のデッドスペースを減少させることができ、界磁巻線80の占積率を高めることができる。これにより、界磁巻線80の抵抗値を減少させ、界磁巻線80の励磁性を高めることができる。
【0061】
また、上述したアスペクト比の設定により、図3に示したように、第2巻線部82を構成する直線部82aのうち径方向において最も第1巻線部81側の直線部の周方向の並び数(5個)を、第1巻線部81を構成する直線部81aのうち径方向において最も第2巻線部82側の直線部の周方向の並び数(5個)と同数にできる。なお、第2巻線部82を構成する直線部82aのうち径方向において最も第1巻線部81側の直線部の周方向の並び数が、第1巻線部81を構成する直線部81aのうち径方向において最も第2巻線部82側の直線部の周方向の並び数よりも多くてもよい。
【0062】
<その他の実施形態>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0063】
図6のステップS14のプレス工程において、副可動型231により渡り部101b,102bが圧縮成形されなくてもよい。この場合、渡り部101b,102bの横断面は円形状となる。
【0064】
図15及び図16に示すように、内側コイル部101の直線部101a及び外側コイル部102の直線部102aを主可動型230により同時に圧縮成形してもよい。図15及び図16には、便宜上、各コイル部101,102が5つである例を示す。また、同時成形する直線部は、3層以上であってもよい。
【0065】
また、図17に示すように、第2導線部92を更に巻き付けることにより、直線部102aの上側に追加の直線部102cを配置し、図18に示すように、傾斜面232aが形成された可動型232で圧縮成形してもよい。これにより、傾斜部が形成された直線部102dが形成される。傾斜部を有する直線部は、図3に示す第2軸線B2に隣り合う直線部である。傾斜部を有する直線部を備える界磁巻線80によれば、周方向に隣り合う界磁巻線80間の距離を小さくでき、界磁巻線80の占積率をいっそう高めることができる。
【0066】
図6のステップS10の巻き付け工程において、1つの導線材90ではなく、図19に示すように、径方向に並べた状態の2つの導線材90をまとめて基本型200に巻き付けてもよい。この場合、第1,第2導線部91,92で構成された空芯コイルが2つ製造されることとなる。2つの空芯コイルが製造された後、図6のステップS14のプレス工程では、各空芯コイルの第1導線部91で構成された部分(内側コイル部101)及び第2導線部92で構成された部分(外側コイル部102)それぞれについて、主可動型230により圧縮成形される。図20及び図21には、各空芯コイルの第1導線部91で構成された部分(内側コイル部101)の直線部101aが圧縮成形される例を示す。2つの空芯コイルである内側コイル部101及び外側コイル部102の模式図を図22に示す。その後、内側コイル部101において2つの第1導線部91の先端部91a同士を溶接装置の溶接等により接合するとともに、外側コイル部102において2つの第2導線部92の先端部92a同士を溶接装置の溶接等により接合することにより、第1,第2導線部91,92で構成された2つの空芯コイル(内側コイル部101及び外側コイル部102)の並列接続体が製造される。
【0067】
アスペクト比を大きくしようとすると、主可動型230から導線材90への圧力を大きくする必要があり、この場合、導線材90の表面の絶縁被膜へのダメージが懸念される。そこで、図19に示すように、径方向に並べた状態の2つの導線材90を用いる。圧縮成形された2つの導線材90のアスペクト比を、圧縮成形された1つの導線材90(図14等参照)のアスペクト比と同等にする場合、主可動型230の移動方向における2つの導線材90の圧縮量を、1つの導線材90の圧縮量よりも小さくできる。その結果、圧縮成形に要する圧力を低減でき、より大きなアスペクト比の成形巻線が必要な場合であっても、絶縁被膜へのダメージを低減することができる。また、図19図21に示した態様によれば、2つの導線材90(例えば直線部)の間に絶縁被膜を介在させることができ、1つの導線材90が用いられる場合と比較して、渦電流の低減効果を得ることができる。
【0068】
また、上述した方法で2つの空芯コイルである内側コイル部101及び外側コイル部102を製造した後、図23に示すように、内側コイル部101における2つの第1導線部91の先端部91aのうち外側コイル部102側に位置する先端部91aと、外側コイル部102における2つの第2導線部92の先端部92aのうち内側コイル部101側に位置する先端部92aとを溶接装置の溶接等により接合することにより、内側コイル部101及び外側コイル部102の直列接続体が製造されてもよい。
【0069】
ちなみに、2つの導線材90に限らず、径方向に並べた状態のN個(Nは3以上の整数)の導線材90をまとめて基本型200に巻き付けてもよい。この場合、N個の第1導線部91の先端部同士を溶接装置の溶接等により接合するとともに、N個の第2導線部92の先端部同士を溶接装置の溶接等により接合することにより、第1,第2導線部91,92からなるN個の空芯コイルの並列接続体が製造される。N個の場合、さらに大きなアスペクト比の成形巻線を製造することができる。
【0070】
図24に示すように、第1巻線部81の各層において、直線部81aのアスペクト比が異なるように主可動型230でプレス成型されてもよい。また、第2巻線部82の各層において直線部82aのアスペクト比が異なるように主可動型230でプレス成型されてもよい。図24に示す例では、各巻線部81,82において、径方向外側から順に、7個、6個、6個、5個の直線部が形成される例を示す。α巻の構成を採用することにより、2層単位での集中巻線が可能となり、各巻線部81,82において層の途中でアスペクト比を変更するができる。
【0071】
図25に示すように、各巻線部81,82(コイル体)のうち少なくとも主極部72の当接部分に、電気的絶縁性を有するモールド樹脂である合成樹脂層120が形成されていてもよい。図25に示す例では、各巻線部81,82の全周域にわたって合成樹脂層120が形成されている。合成樹脂層120の厚さ寸法は、例えば、第2巻線部82を構成する直線部82aの短辺寸法と同等の寸法又はそれよりも小さい寸法であればよい。なお、合成樹脂層120を形成する工程は、例えば、図6のステップS15とS16との間に設けられればよい。
【0072】
一般的に、丸線の場合、主極部72と丸線との当接面積が小さく、丸線の絶縁層(絶縁被膜)に加わる圧力が大きくなる。この場合、界磁巻線80が巻き回されるボビンが必要となる。これに対し、図25に示す直線部81a,82aは、平角線であり、主極部72との当接面積が大きい。このため、直線部81a,82aの絶縁層に加わる圧力が小さくなり、ボビンが不要となる。その結果、界磁巻線80の占積率を高めることができる。
【0073】
図6のステップS14のプレス工程で丸線が圧縮成形される。この場合、各直線部101a,102aは、図26に示すように、互いの当接面に凹凸を有するものとなり得る。この場合であっても、圧縮成形されていることにより、各直線部101a,102aは、互いの当接面に凹凸を有した状態で互いに密接することができ、界磁巻線80の占積率を高めることができる。ちなみに、この場合、各直線部101a,102aの凹凸の高さ寸法は、例えば0.1~0.2mmである。また、各直線部101a,102aの四隅の円弧部(角R)は、例えば0.2mm以下である。
【0074】
・各主極部72において、径方向に2層に導線材が巻回されてなるコイル体が3つ以上設けられていてもよい。
【0075】
・共振回路を構成するコンデンサ84は、第2巻線部82ではなく第1巻線部81に並列接続されていてもよい。また、ダイオード83の向きはカソードとアノードとが逆向きであってもよい。詳しくは、図4を参照して、ダイオード83のアノードが第1巻線部81の一端に接続され、ダイオード83のカソードが第2巻線部82の一端に接続されていてもよい。
【0076】
・回転電機としては、インナロータ型の回転電機に限らず、アウタロータ型の回転電機であってもよい。この場合、主極部は、ロータコアから径方向内側に突出している。
【0077】
・回転電機としては、星形結線された回転電機に限らず、Δ結線された回転電機であってもよい。
【0078】
・ステータコアとしては、ティースが設けられていないステータコアであってもよい。
【0079】
・界磁巻線に界磁電流を流すための構成としては、図4に示した回路に限らず、例えば、界磁巻線に電気的に接続されたブラシと、ブラシに電気的に接続された電源とを備える構成であってもよい。この場合、ステータ巻線に、界磁電流を誘起させるための高調波電圧を印加する必要はない。
【0080】
・回転電機としては、車載主機として用いられる回転電機に限らず、例えば、電動機兼発電機であるISG(Integrated Starter Generator)として用いられる回転電機であってもよい。
【0081】
・制御システムが搭載される移動体としては、車両に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。また、制御システムは、移動体に搭載されるシステムに限らず、定置式のシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0082】
40…回転電機、60…ロータ、70…ロータコア、72…主極部、80…界磁巻線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
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図26