(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121709
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】被覆用シート、農作物の育成方法及び被覆用シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/00 20060101AFI20240830BHJP
A01M 21/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
A01G13/00 302Z
A01M21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028958
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 秀憲
【テーマコード(参考)】
2B024
2B121
【Fターム(参考)】
2B024DB01
2B024DB03
2B024DB07
2B024DC03
2B121AA19
2B121BB28
2B121BB31
2B121FA07
2B121FA12
(57)【要約】
【課題】礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シートを提供する。
【解決手段】本開示の被覆用シートは、フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる。前記接着層の樹脂量は、4g/m2超15g/m2以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる被覆用シートであって、
前記接着層の樹脂量が、4g/m2超15g/m2以下である、被覆用シート。
【請求項2】
前記被覆用シートの厚みに対する前記フィルムの厚みの割合が、3%~17%である、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項3】
前記スパンボンド不織布の嵩密度が、0.05g/m3~0.40g/m3である、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項4】
機械の流れ方向(MD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度が、10N/50mm超60N/50mm以下であり、かつ、
前記機械の流れ方向(MD)に直交する方向(CD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度が、10N/50mm~80N/50mmである、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項5】
前記フィルムが、有孔フィルムである、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項6】
前記有孔フィルムが、熱可塑性樹脂及びフィラーを含む通気フィルムである、請求項5に記載の被覆用シート。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂とを含む、請求項6に記載の被覆用シート。
【請求項8】
前記スパンボンド不織布が、少なくとも一層の暗色に着色したスパンボンド不織布を含む、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項9】
前記フィルム及び前記スパンボンド不織布のいずれか一方が、耐候安定剤を含有する、請求項1に記載の被覆用シート。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の被覆用シートを、農作物を育成させるための地表面上に、前記スパンボンド不織布が地表面側となるように敷設することを含む、農作物の育成方法。
【請求項11】
フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる被覆用シートであって、前記接着層の樹脂量が、4g/m2超15g/m2以下である、被覆用シートを製造する方法であって、
前記スパンボンド不織布の一方の主面上に接着剤を塗布して前記接着層を作製することと、
前記接着層上に前記フィルムを積層することと、を含む、被覆用シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムと不織布からなる被覆用シート、農作物の育成方法及び被覆用シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆用シートは、例えば農業分野においては、作物を外部環境の変動から守りその生育を助ける目的で広く使われている。被覆用シートとして、フィルムからなる被覆用シート(以下、「フィルムシート」ともいう)と、不織布からなる被覆用シート(以下、「不織布シート」ともいう)と、フィルムと不織布とからなる被覆用シート(以下、「複合シート」ともいう)と、が知られている。これらの被覆用シートは、それぞれの特徴に応じて使い分けがなされている。
【0003】
フィルムシートは、通気性が無いか低い代わりに、高いバリア性と高い遮光性を有する。フィルムシートの用途としては、例えば、厳冬期での保温(温室栽培)、果実の雨水浸透抑制、雑草の繁茂抑制、害虫の飛来防止などが挙げられる。
【0004】
不織布シートは、フィルムシートに比べてバリア性が多少劣るものの、高い通気性を有する。不織布シートは、厳冬期のみならず、温暖な気候期でも高温障害を起こしにくい。不織布シートの使用許容範囲は、広い。不織布シートは、素材の柔軟性、軽量性及び形態追従性に優れていることが知られている。
【0005】
複合シートは、光反射性、遮光性、高温障害の抑制、透水性、及び透湿性に優れることが知られている。例えば、特許文献1には、暗黒色を有するスパンボンド不織布層と透湿性を有するポリオレフィンフィルムからなるマルチシートが提案されている。特許文献1に開示のマルチシートは、園芸用の土壌を覆って使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示のマルチシートは、礫土(例えば、固く尖った土塊、砂利や岩などが混ざった土壌等)などの凹凸形状をした地表面に敷設されると、破損が発生しやすい場合がある。
【0008】
また、特許文献1に開示のマルチシートを長期間使用することによる自然劣化や、使用中の局所的な大雨や強風などからの外的負荷、使用中の地表面に生じる植物の芽や根などとの擦れなどにより、マルチシート自体に破損が発生するおそれがある。マルチシートの破損の初期段階では、不織布の熱エンボス部が解けて不織布を構成する長繊維の糸がほつれていく現象が見られ、改善が求められている。
【0009】
そのため、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、破損が従来よりも発生しにくい(すなわち、耐久性に優れる)被覆用シートが求められている。
【0010】
本開示は、上記事情に鑑みたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シート、その製造方法、及び当該被覆用シートを用いた農作物の育成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0012】
<1> フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる被覆用シートであって、
前記接着層の樹脂量が、4g/m2超15g/m2以下である、被覆用シート。
<2> 前記被覆用シートの厚みに対する前記フィルムの厚みの割合が、3%~17%である、前記<1>に記載の被覆用シート。
<3> 前記スパンボンド不織布の嵩密度が、0.05g/m3~0.40g/m3である、前記<1>又は<2>に記載の被覆用シート。
<4> 機械の流れ方向(MD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度が、10N/50mm超60N/50mm以下であり、かつ、
前記機械の流れ方向(MD)に直交する方向(CD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度が、10N/50mm~80N/50mmである、前記<1>~<3>のいずれか1つに記載の被覆用シート。
<5> 前記フィルムが、有孔フィルムである、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の被覆用シート。
<6> 前記有孔フィルムが、熱可塑性樹脂及びフィラーを含む通気フィルムである、前記<5>に記載の被覆用シート。
<7> 前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂とを含む、前記<6>に記載の被覆用シート。
<8> 前記スパンボンド不織布が、少なくとも一層の暗色に着色したスパンボンド不織布を含む、前記<1>~<7>のいずれか1つに記載の被覆用シート。
<9> 前記フィルム及び前記スパンボンド不織布のいずれか一方が、耐候安定剤を含有する、前記<1>~<8>のいずれか1つに記載の被覆用シート。
<10> 前記<1>~<9>のいずれかに記載の被覆用シートを、農作物を育成させるための地表面上に、前記スパンボンド不織布が地表面側となるように敷設することを含む、農作物の育成方法。
<11> フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる被覆用シートであって、前記接着層の樹脂量が、4g/m2超15g/m2以下である、被覆用シートを製造する方法であって、
前記スパンボンド不織布の一方の主面上に接着剤を塗布して前記接着層を作製することと、
前記接着層上に前記フィルムを積層することと、を含む、被覆用シートの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一実施形態によれば、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シート、その製造方法、及び当該被覆用シートを用いた農作物の育成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、礫土などの凹凸形状を有する地表面の一例を示す拡大写真である。
【
図2】
図2は、被覆用シートの表面摩擦特性に係る評価基準を説明するための写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0016】
(1)被覆用シート
本開示の被覆用シートは、フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる。接着層の樹脂量は、4g/m2超15g/m2以下である。被覆用シートは、フィルム、接着層及びスパンボンド不織布とは異なるその他の層を更に含んでもよい。
本開示の被覆用シートは、農業分野や土木分野、インフラ分野などにて礫土のような凹凸形状を有する地表面に対して好適に用いられる。
【0017】
本開示の被覆用シートは、従来の光反射性、遮光性、及び透湿性という基本性能を保持し、被覆用シートの総目付を従来品同等としつつも、礫土などの凹凸形状を有する地表面との擦れへの耐久性にも優れる被覆用シートである。特に、被覆用シートの表面摩擦特性や地表面に接する被覆用シートの突き刺し特性に優れる。例えば、礫土などの凹凸形状をした地表面に設置して、その上で作業員が被覆用シートを踏む環境に設置する場合でも、表面摩擦特性や突刺特性に優れる被覆用シートはその表面及び裏面に穴が開きにくいという優れた耐久性を有し、防草シート目的としても、農作物を生育する目的や雨水などの水害対策としても広く産業用用途に適用することができる。
【0018】
被覆用シートでは、接着層の樹脂量は、4g/m
2超15g/m
2以下である。従来、接着層の樹脂量は、接着強度の観点から4g/m
2以下を適宜調整することにより使用されてきたところ、本開示の被覆シートは、意外にも、従来よりも多くの樹脂量を接着層に使用することで、礫土などの凹凸形状を有する地表面に敷設されても、耐久性に優れることを見出した。礫土などの凹凸形状を有する地表面の一例を
図1に示す。
耐久性として、本開示の被覆用シートは従来よりも表面摩擦による表面性状の変化を小さくできる。表面摩擦による表面性状の変化は、所定サイズの鑢で被覆用シートを所定の回数をこすった時の穴、裂け目の生じる程度、及び層間剥離の程度を評価する。
接着層に従来の樹脂量を使用する場合には、フィルムとスパンボンド不織布とが剥離しやすい。加えて、フィルム及びスパンボンド不織布に穴があき、その穴を起点として被覆用シートが引き裂かれる場合がある。
他方、接着層の樹脂量が上述した範囲内であると、従来の被覆用シートと同一評価条件において、フィルムとスパンボンド不織布との剥離を抑制でき、被覆用シートの表面のフィルムに穴が開いても、被覆用シートの裏面のスパンボンド不織布にまで穴が貫通しにくくなることが分かった。これは、接着層の樹脂量を従来よりも多くすることで、スパンボンド不織布の表面性状が接着層を介してフィルムに転写されにくく、被覆用シートの表面(フィルムの表面)の摩擦係数が低減されることが1つの要因と推測される。
【0019】
耐久性のもうひとつの指標として、本開示の被覆用シートは裏面からの突き刺し特性に優れることが挙げられる。被覆用シートは、スパンボンド不織布を地表面に接するように設置する。砂利や岩、堅い土の塊、または植物の芽や根などの尖った部分(凸部)の上にスパンボンド不織布が設置され、作業者が被覆用シートの上を歩くと、スパンボンド不織布が地表面(凸部)に押し付けられることによって被覆用シートに穴があいたり破けたりする場合がある。本開示の被覆用シートは、裏面からの突き刺し時変位を従来同等以上となるように特性構成の被覆用シートとすることで、凹凸面を有する地表面への耐久性を向上するに至った。
【0020】
接着層の樹脂量は、4g/m2超15g/m2以下である。接着層の樹脂量は、好ましくは5g/m2超15g/m2以下、より好ましくは7g/m2超15g/m2以下である。接着層の樹脂量が4g/m2以下であると、耐久性に劣る。接着層の樹脂量を多くすると耐久性は向上する。被覆用シートとしての柔軟性が求められる用途においては、15g/m2以下であることが好ましい。被覆用シートが柔らかいと、地表面に沿って隙間のない形態で設置しやすくなるため、被覆用シートの上での作業性は向上する。
【0021】
本開示の被覆用シートは、被覆用シートの厚みに対する前記フィルムの厚みの割合(以下、「フィルム厚み比」ともいう。)は、3%~17%であることが好ましく、5%~17%であることがより好ましく、10%超17%以下であることが特に好ましい。フィルム厚み比が3%~17%であると、表面摩擦によってフィルムとスパンボンド不織布とが剥離しにくくなるとともに、地表面に柔軟に適合した被覆用シートを得ることができる。フィルム厚み比が5%以上である場合、表面摩擦による耐久性は、さらに向上する。フィルム及びスパンボンド不織布に局所的な穴が開く場合があるものの、穴を起点としてシートの引き裂きが起こりにくくなる。フィルム厚み比が10%以上である場合、フィルム及びスパンボンド不織布の両層に穴があきにくくなる傾向となる。作用機構は不明であるが、接着層の樹脂量が上記範囲内であると、接着層の樹脂がスパンボンド不織布の内部に浸透してスパンボンド不織布がクッションのように衝撃を吸収する機能を果たす可能性がある。そして被覆用シートのフィルム厚み比が4g/m2超15g/m2以下の範囲であると、被覆用シート裏面にあたるスパンボンド不織布がフィルムよりも厚く、フィルムの衝撃をスパンボンド不織布がクッション材として衝撃吸収することで相乗的な効果を奏するとも考えられる。
【0022】
被覆用シートの目付は、用途に応じて適宜調整可能だが、通常、30g/m2~200g/m2、好ましくは50g/m2~150g/m2、より好ましくは60g/m2~110g/m2の範囲である。単位面積あたりの重さを従来同等とし、持ち運びなどの作業性を従来並みとする。被覆用シートの目付の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0023】
被覆用シートの厚みは、用途に応じて適宜調整可能だが、通常、0.05mm~1.0mm、好ましくは0.2mm~0.8mmの範囲である。被覆用シートの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0024】
被覆用シートの光線透過率は、好ましくは10%以下、より好ましくは6%未満、さらに好ましくは2%以下である。被覆用シートの光線透過率が10%以下であると、光反射性(遮光性)はより優れ、防草性が向上する。例えば、後述する中空繊維をスパンボンド不織布に使用する場合、光線透過率は低減しやすく、かつ遮光率は向上しやすい。被覆用シートの光線透過率の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0025】
被覆用シートの透湿度は、2500g/m2/24h以上であることが好ましい。これにより、例えば、被覆用シートは農業用マルチシートとして求められる透湿性を有する。被覆用シートの透湿度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0026】
以下、機械の流れ方向(MD)における引裂強度を「MD引裂強度」ともいう。前記機械の流れ方向(MD)に直交する方向(CD)における引裂強度を「CD引裂強度」ともいう。機械の流れ方向(MD)における引張伸度を「MD引張伸度」ともいう。前記機械の流れ方向(MD)に直交する方向(CD)における引張伸度を「CD引張伸度」ともいう。
【0027】
スパンボンド不織布の流れ方向(MD)は、スパンボンド不織布の引張強度を測定することによって、スパンボンド不織布自体から決定することができる。
一般に、スパンボンド不織布の製造において、移動捕集部材の移動速度は、生産性の観点から、早目に設定される。そのため、連続繊維群は、移動捕集部材上に積層される際に流れ方向(MD)に平行な方向に配向されやすい。その結果、スパンボンド不織布の流れ方向(MD)の引張強度は、スパンボンド不織布の横方向(CD)の引張強度よりも高い。それ故に、スパンボンド不織布の引張強度を測定することによって、スパンボンド不織布自体からスパンボンド不織布の流れ方向(MD)を決定することができる。
【0028】
本開示の被覆用シートの引裂強度と引張伸度は、展張敷設時や取り外し時の作業性や使用中のさまざまな外部環境・内部環境に耐えるために、下記の範囲内であることが好ましい。被覆用シートのMD引裂強度が5N/50mm~50N/50mm、CD引裂強度が5N/50mm~50N/50mm、被覆用シートのMD引張伸度が20%以上、CD引張伸度が20%以上であることが好ましい。より好ましくは、被覆用シートのMD引裂強度が10N/50mm超50N/50mm以下、CD引裂強度が10N/50mm~50N/50mm、かつ被覆用シートのMD引張伸度が25%以上、CD引張伸度が25%以上である。特に好ましくは、被覆用シートのMD引裂強度が20N/50mm~50N/50mm、CD引裂強度が15~50N/50mm、かつ被覆用シートのMD引張伸度が30%超、CD引張伸度が30%以上である。最も好ましくは、被覆用シートのMD引裂強度が20N/50mm~50N/50mm、CD引裂強度が15~40N/50mm、かつ被覆用シートのMD引張伸度が30%以上、CD引張伸度が35%以上である。
【0029】
別の好ましい態様としては、被覆用シートのMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が5N/50mm~50N/50mm、かつ被覆用シートのMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が20%以上、が挙げられる。より好ましい態様は、被覆用シートのMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が10N/50mm~50N/50mm、かつ被覆用シートのMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が25%以上である。特に好ましい態様は、被覆用シートのMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が19N/50mm超50N/50mm以下、かつ被覆用シートのMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が30%以上である。最も好ましい態様は、被覆用シートのMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が19N/50mm超40N/50mm以下、かつ被覆用シートのMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が33%以上である。
【0030】
被覆用シートの引裂強度及び引張伸度は上記範囲内であると、被覆用シートに穴が開いたり破れたりし易くなることを防ぐことができる。主としてポリプロピレン系樹脂のスパンボンド不織布を用いる被覆用シートにおいて引張伸度が高く、裏面からの突き刺し変異は12mmを超える傾向があり、耐久性が特に良好である。本開示の被覆用シートは、接着層の樹脂量が従来よりも多く、また特に特定の厚み比との組合せにおいて、特に上記のように被覆用シートとして引裂強度と引張伸度に優れるシートを得ることができる。被覆用シートの引裂強度及び引張伸度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0031】
本開示の被覆用シートは、着色されていてもよい。ポリオレフィン系樹脂のフィルムは透明であることが多い。多孔性フィルムは白色であることが多い。化学繊維(例えば、ポリエステル系樹脂及びポリオレフィン系樹脂等)からなる不織布は、ほぼ白色であることが多い。被覆用シートが白色である場合、被覆用シートの反射率は高くなる。また、被覆用シートが白色の場合、昼間に走光性を有する虫が果樹から被覆シートに移動する場合があり、防虫効果をも有しうる。
反射光による放熱が増大して、被覆用シートは、温度上昇を防げなくなるおそれがある。従って、被覆用シートの用途が地表面への蓄熱を防ぐ用途である場合、スパンボンド不織布面から見た被覆用シートの色は、非白色であることが好ましい。
【0032】
フィルムの着色は、淡色であることが好ましい。淡色としては、淡い青、淡い緑、淡い黄色、淡い赤色などが挙げられる。「淡色」とは、暗色に対する概念であって、明度や反射率が暗色のそれよりも大きいことである。より具体的に言えば、白色(反射率100%)を10、黒色(反射率0%)を0とするマンセル明度を指標にした場合、淡色とは、明度が6~9、好ましくは7~9程度である場合を示す。白色を100%、黒色を0%とする反射率を指標にした場合、淡色とは、反射率が30%よりも大きく80%以下、好ましくは40%以上80%以下の色を示す。淡色は、マンセル明度及び反射率のどちらかの一方が上記基準を満たせばよい。なお、暗い緑色(JISによる色の表示方法 3属性による)は反射率12%程度であり、反射率が12%の場合の明度は4であるとされる。
【0033】
暗黒色への着色は、暗色の着色剤(例えば、黒色染顔料など)を含むことが好ましい。黒色染顔料としては、例えば、カーボンブラック、グラファイトなどの無機黒色顔料;アゾ系染顔料、アニリンブラック、硫化染料等の有機黒色染顔料などが挙げられる。これらの黒色染顔料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
スパンボンド不織布は、少なくとも一層の暗色に着色したスパンボンド不織布を含むことが好ましい。これにより、防草性を向上させることができる。被覆用シートを農業用マルチシートとして用いる場合、スパンボンド不織布は暗色であることが好ましい。「暗色」とは、マンセル明度を指標にした場合の明度が2以下である色を示し、反射率を指標とした場合の反射率が15%以下である色を示す。
【0035】
被覆用シートの着色は、少なくともスパンボンド不織布面における反射率が着色前に比べて低下するように行われる。着色は、フィルムへの着色又はスパンボンド不織布への着色への何れでもよく、両者への着色でもよい。両者を積層する際に用いられる接着剤への着色でも差し支えない。フィルム又はスパンボンド不織布の表面には、印刷が施されてもよい。
【0036】
(1.1)接着層
本開示の被覆用シートは、接着層を備える。接着層は、接着剤によって形成される。接着剤としては、ホットメルト型接着剤、溶剤系接着剤、熱融着型接着剤等が挙げられる。ホットメルト型接着剤、溶剤系接着剤の樹脂、または熱融着型接着剤としては、オレフィン系接着剤又は粘着剤、ビニル系接着剤又は粘着剤、スチレン系接着剤又は粘着剤、(メタ)アクリル系接着剤又は粘着剤、ポリエステル系接着剤又は粘着剤、ウレタン系接着剤又は粘着剤などが挙げられる。接着剤の形態としては、液状、不織布、又はフィルムなどが挙げられる。これらの接着剤は、ホットメルト型接着剤であってもよい。これらの接着剤及び粘着剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの接着剤及び粘着剤のうち、透湿耐水層及び疎水性不織布の材質と同種の接着剤及び粘着剤が好ましい。例えば、透湿耐水層及び疎水性不織布がオレフィン系樹脂で形成されている場合、ポリエチレン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体などのオレフィン系ホットメルト接着剤が好ましい。接着層の厚みは、接着剤の種類等に応じて適宜選択され、樹脂量を上記範囲内とする厚みであればよい。接着層がスパンボンド不織布に浸透する場合には、実質的な接着層の厚みがゼロとなることもある。
【0037】
(1.2)フィルム
本開示の被覆用シートはフィルムを備える。フィルムとしては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の通常一般に農業等に用いられている熱可塑性合成樹脂の単層、多層、着色、無着色のフィルムを用いることができる。フィルムとして非通気性フィルムを用いる場合、フィルムは遮水層として機能し、雨水の土中への急激な漏れを防ぐことができる。果実栽培においては、このような非通気性フィルムで地表面を被覆することで、果実の収穫前数ケ月間の水の供給を少なくし、果実の糖度を向上させることができる。
【0038】
被覆用シートでは、フィルムは、有孔フィルムであることが好ましい。有孔フィルムは、通気性を有するため、被覆用シートは、被覆した地表面の湿度や熱気を適度に逃がすことができる。有効フィルムとしては、レーザーなどの機械的手段によって穿孔したフィルム、後述する多孔性フィルム等が挙げられる。有孔フィルムの孔の平均径としては、60μm以下が好ましい。これにより、雨水の土中への急激な漏れを防ぐことができる。
【0039】
有孔フィルムは、熱可塑性樹脂及びフィラーを含む通気フィルム(以下、「多孔性フィルム」ともいう)であることが好ましい。「多孔性フィルム」とは、内部に複数の空孔を有する通気フィルムである。多孔性フィルムの内部の複数の空孔は、例えば、熱可塑性樹脂及びフィラーを含むフィルムを延伸加工して、フィラーと熱可塑性樹脂との間に空隙を発生させることで形成される。多孔性フィルムは、光反射などの光学物性を有するフィルムであり、フィラーを含有し且つ延伸された通気フィルムである。多孔性フィルムは、効率よく光を拡散反射することで果実の日焼けを防ぎ、むらの無い果実の色づきを実現することができる。フィルムが多孔性フィルムであると、被覆用シートは適度な透湿度を有する。そのため、被覆用シートは、雨水の土中への急激な漏れを防ぐとともに、土中の水蒸気を外に逃がすことから、植物の根腐れを防ぐことができる。また、土中で発生した炭酸ガスを外に逃がすこともできる。さらに、フィルムは平滑な表面を有するため、フィルムに付着した土汚れを拭取り易く、光線反射率の低下を抑制できる。そのため、多孔性フィルムを用いた被覆用シートは、特に農業用マルチシートとして適している。
【0040】
フィルムに用いられる熱可塑性樹脂の種類は、特に制限されない。フィルムに用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ポリメチルペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートや同モノマーに更に共重合可能な成分を加えて得た共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリカーボネート、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して用いることもできる。
これらの中でも、耐水性、撥水性、生産コスト等の観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、中でもポリエチレン系樹脂よりが好ましい。
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体等のエチレン系樹脂、それらの組成物を用いることができる。
熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)( MFR190:ASTM D 1238、190℃、荷重2160g)は、フィルム均一性の観点から、好ましくは0.01~20、及びより好ましくは0.1~10g/10分である。ここで、ポリエチレン系樹脂のMFRはMFR190:ASTM D 1238、190℃、荷重2160gにて測定し、プロピレン系樹脂MFRは、のMFR230:ASTM D-1238、230℃、荷重2160gにて測定する。
【0041】
フィルムが多孔性フィルムである場合、多孔性フィルムに用いられる熱可塑性樹脂は、プロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂とを含むことが好ましい。「主成分としてのポリエチレン系樹脂」とは、ポリエチレン系樹脂の含有量が、熱可塑性樹脂の総量に対して、75質量%以上であることを示す。プロピレン系樹脂の含有量は、熱可塑性樹脂の総量に対して、好ましくは25質量%以下、より好ましくは5質量%~8質量%である。熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂とを含むと、プロピレン系樹脂を配合しないフィルムに較べて、フィルムの反りを減らすことができる。結果として、被覆用シートにおいて、被覆用シートのシート端部メクレ(地表面に沿わない)を抑制することができる。特に、本開示のスパンボンド不織布が、後述するように引裂強度(MD、CD)や引張伸度(MD、CD)の比較的高いスパンボンド不織布を少なくとも1層備える場合には、通気フィルムの熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を5~8質量%の少量添加であっても被覆用シートのシート端部メクレを減らすことができる。
【0042】
フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量は、フィルムの総量に対して、好ましくは25質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~70質量%である。フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量が25質量%以上であれば、後述する熱可塑性樹脂延伸フィルムの延伸成形時に表面にキズが生じにくい傾向がある。フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量が80質量%以下であれば、光拡散反射に寄与する充分な空孔数が得られやすい傾向がある。
【0043】
本開示のフィルムに用いられ得るフィラーとしては、各種の無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。
無機フィラーとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等が挙げられる。
有機フィラーとしては、用いる熱可塑性樹脂の融点またはガラス転移点よりも高い融点またはガラス転移点(例えば、120℃~300℃)を有する有機フィラーが使用される。例えば。熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であれば、有機フィラーとして、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、環状オレフィン単独重合体、エチレン-環状オレフィン共重合体、ポリエチレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド等が挙げられる。中でも、使用する熱可塑性樹脂に非相溶性の有機フィラーを使用することが空孔形成の点で好ましい。これらフィラーは単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、無機フィラーと有機フィラーを混合して使用してもよい。
【0044】
後述するフィルムの延伸成形により、フィルム中に発生させる空孔サイズの調整のため、上記無機フィラーの平均粒径、または有機フィラーの平均分散粒径は、好ましくはそれぞれが0.05μm~2.0μmの範囲、より好ましくはそれぞれが0.1μm~1.5μmの範囲のものを用いることができる。平均粒径または平均分散粒径が0.05μm以上のフィラーを用いれば、所望の空孔がより得られやすくなる傾向がある。平均粒径または平均分散粒径が2.0μm以下のフィラーを用いれば、空孔サイズがより均一になる傾向がある。
【0045】
本開示においてフィルムの空孔率は、好ましくは25%~60%である。これにより光反射率の低下も抑えやすい。
【0046】
後述するフィルムの延伸成形により、フィルム中に発生させる空孔量の調整のため、フィルム中への上記フィラーの配合量は、好ましくは20質量%~60質量%、より好ましくは21質量%~50質量%、さらに好ましくは22質量%~40質量%である。フィラーの配合量が20質量%以上であれば、充分な空孔数が得られやすくなる傾向がある。フィラーの配合量が75質量%以下であれば、表面にキズがより生じにくくなる傾向がある。
【0047】
本開示のフィルムは、必要により、色素、蛍光増白剤、熱安定剤、耐候安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤等を含有してもよい。熱安定剤としては、立体障害フェノール系、リン系、アミン系等の安定剤が挙げられる。熱安定剤の含有量は、フィルムの総量に対して、0.001質量%~1質量%であってもよい。光安定剤としては、立体障害アミンやベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤が挙げられる。光安定剤の含有量は、フィルムの総量に対して、0.001質量%~1質量%であってもよい。分散剤としては、シランカップリング剤、高級脂肪酸(例えば、オレイン酸、ステアリン酸等)、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、それらの塩等が挙げられる。分散剤の含有量は、フィルムの総量に対して、0.01質量%~4質量%であってもよい。
【0048】
フィルムに用いる耐候安定剤が、紫外線吸収剤、紫外線安定剤及び酸化防止剤からなる場合、耐候安定剤の含有量は、フィルムの総量に対して、好ましくは0.1質量%~15質量%、より好ましくは0.5質量%~10質量%である。
【0049】
耐候安定剤は、フィルム樹脂と混錬してフィルムの内部に配したり、耐候安定剤を印刷インクに混ぜてフィルム表面に印刷することでフィルムの表面に配してもよい。耐候安定剤をフィルムの内部よりもフィルムの表面に濃く存在させることで、より耐候性を向上できる。被覆用シートが長期にわたり日光に曝される用途で用いられる場合には、耐候安定剤を混錬したフィルムと、耐候安定剤を混錬したスパンボンド不織布とを備え、さらにフィルムの上部に耐候安定剤を含む印刷インクを用いた印刷を施した被覆用シートがより好ましい。
【0050】
フィルムの目付は、特に限定されず、用途に応じて適宜調整される。フィルムの目付は、剛性と柔軟性とのバランスを保有する被覆用シートを得る観点から、好ましくは15g/m2~60g/m2、より好ましくは30g/m2~50g/m2である。フィルムの目付の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0051】
フィルムの厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜調整される。フィルムの厚みは、剛性と柔軟性とのバランスを保有する被覆用シートを得る観点から、好ましくは0.02mm~0.08mm、より好ましくは0.03mm~0.06mmである。フィルムの厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0052】
(1.3)スパンボンド不織布
本開示の被覆用シートは、スパンボンド不織布を備える。これにより、被覆用シートの引裂強度及び引張伸度が、スパンボンド不織布を備えない場合よりも向上する。スパンボンド不織布は、熱可塑性組成物から構成される。熱可塑性樹脂としては、通常、一般に農業等に用いられているポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。中でも、ポリプロピレン系樹脂やポリエステル系樹脂が好ましい。構成繊維の形態は、単一成分又は多成分繊維であってもよく、構成繊維の断面形状は、特に限定されず、丸形、扁平形、中空などが挙げられる。スパンボンド不織布には、単層、多層、着色、無着色のスパンボンド不織布を用いることができる。
【0053】
スパンボンド不織布としては、短繊維不織布、長繊維不織布など種々公知の不織布を用い得るが、中でも、柔軟性、強度、軽量性、野菜に与えるダメージの低さの観点から、スパンボンド不織布は、長繊維不織布からなることが好ましい。スパンボンド不織布を構成する繊維形態としては、複合繊維、中空繊維、異形繊維、捲縮繊維、分割繊維などを含んでもよい。
【0054】
スパンボンド不織布の嵩密度は、0.05g/cm3~0.50g/cm3であることが好ましく、0.05g/cm3~0.40g/cm3であることがより好ましく、0.10g/cm3~0.40g/cm3であることがさらに好ましい。スパンボンド不織布の嵩密度が上記範囲であると、地表面に接するスパンボンド不織布および被覆用シートの強度と柔軟性のバランスが良好となる。上記嵩密度としてスパンボンド不織布の繊維間の隙間を調整することで、植物の根がスパンボンド不織布に絡まりやすくなるのを防ぐことができる。スパンボンド不織布が複数のスパンボンド不織布の積層体である場合、最外層(地表面に接する側)のスパンボンド不織布は、嵩密度が上記範囲内であることが好ましい。スパンボンド不織布の嵩密度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。スパンボンド不織布の嵩密度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0055】
スパンボンド不織布の目付は、好ましくは10g/m2~80g/m2、より好ましくは13g/m2~60g/m2である。スパンボンド不織布の繊維径(平均繊維径)は、好ましくは8μm~50μm、より好ましくは13μm~40μm、さらに好ましくは20μm超35μm以下である。スパンボンド不織布の糸ホツレ耐久回数は、好ましくは12回以上、より好ましくは14回以上である。特定の接着剤の樹脂量、特定のフィルム厚み比を備え、さらにスパンボンド不織布の嵩密度が上記数値範囲を備えることにより、表面摩擦特性や突刺特性といった耐久性を備えつつ、かつ被覆用シートの裏面スパンボンド不織布の糸ホツレ耐久性をも向上できる。スパンボンド不織布の一部に中空繊維を用いると、基本性能などを維持しつつ、スパンボンド不織布の目付を低減でき、環境負荷低減型製品を提供できる。スパンボンド不織布の目付の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0056】
スパンボンド不織布の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜選定されればよい。スパンボンド不織布の厚みは、剛性と柔軟性とのバランスを保有する被覆用シートを得る観点から、好ましくは0.03mm~1.0mm、より好ましくは0.03mm~0.8mm、さらに好ましくは0.05mm~0.6mmである。スパンボンド不織布の厚みの測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0057】
機械の流れ方向(MD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度(以下、「MD引裂強度」ともいう)は、10N/50mm超60N/50mm以下であり、かつ、前記機械の流れ方向(MD)に直交する方向(CD)における前記スパンボンド不織布の引裂強度(以下、「CD引裂強度」ともいう)は、10N/50mm~80N/50mmであることが好ましい。これにより、スパンボンド不織布および、被覆用シートに穴が開いたり破れたりし易くなることを防ぐことができる。
【0058】
スパンボンド不織布の引裂強度と引張伸度は、展張敷設時や取り外し時の作業性や使用中のさまざまな外部環境・内部環境に耐えるために、以下の範囲内であることが好ましい。スパンボンド不織布のMD引裂強度が5N/50mm以上、CD引裂強度が5N/50mm以上、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度が30%以上、CD引張伸度が30%以上であることが好ましい。より好ましくは、スパンボンド不織布のMD引裂強度が10~60N/50mm、CD引裂強度が10~80N/50mm、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度が40%以上、CD引張伸度が40%以上である。特に好ましくは、スパンボンド不織布のMD引裂強度が25~60N/50mm、CD引裂強度が25~80N/50mm、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度が50%以上、CD引張伸度が50%以上である。最も好ましくは、スパンボンド不織布のMD引裂強度が30~60N/50mm、CD引裂強度が30~80N/50mm、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度が60%以上、CD引張伸度が60%以上である。
この場合、被覆用シートの裏面スパンボンド不織布の糸ホツレ耐久性は14回以上となる。スパンボンド不織布の引裂強度及び引張伸度の測定方法は、実施例に記載の方法と同様である。
【0059】
別の好ましい態様としては、スパンボンド不織布のMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が10N/50mm~70N/50mm、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が30%以上、が挙げられる。より好ましい態様は、スパンボンド不織布のMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が30N/50mm~70N/50mm、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が45%以上である。特に好ましい態様は、スパンボンド不織布のMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が35N/50mm超70N/50mm以下、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が50%以上である。最も好ましい態様は、スパンボンド不織布のMD引裂強度とCD引裂強度との平均値が35N/50mm超70N/50mm以下、かつスパンボンド不織布のMD引張伸度とCD引張伸度との平均値が60%以上である。
【0060】
スパンボンド不織布は、エンボス加工等により熱圧着すると、得られる被覆用シート自体の強度や保温性を良好に保つことができるとともに、被覆用シートの透明性が向上し、柔軟性、通気性のバランスを保つ上でも好ましい。
熱エンボス加工により熱融着する場合、エンボス面積率は、好ましくは5%~30%、より好ましくは10%~25%、さらに好ましくは15%~20%である。
【0061】
「エンボス面積率」とは、スパンボンド不織布から10mm×10mmの大きさの試験片を採取し、試験片のエンボスロールとの接触面を、電子顕微鏡(倍率:100倍)で観察し、観察したスパンボンド不織布の面積に対する、複数のエンボス部の総面積の割合を示す。
【0062】
エンボス面積率を高めに設定することにより、スパンボンド不織布の強度を高め、凹凸形状を有する地表面からの擦れへの耐久性を向上することができる。エンボス面積率が上記数値範囲内であると、スパンボンド不織布が良好な引張伸度を備え、引裂強度と引張強度のバランスが良好となる。上記範囲内であると、被覆用シートを地表面に敷設した際に被覆用シートは地表面の凹凸形状に追従して変形しやすい。更に、複数のエンボス部は、スパンボンド不織布に等間隔で均一に形成されていることが好ましい。これにより、複数のエンボス部がスパンボンド不織布に等間隔で均一に形成されていない場合よりも、被覆用シートの表面(フィルムの表面)により均一な摩耗が発生しやすい。その結果、被覆用シートの耐久性はより優れる。刻印形状は、円、楕円、長円、正方、菱、長方、四角、キルト、格子、亀甲やそれら形状を基本とする連続した形が例示される。
【0063】
スパンボンド不織布に用いるプロピレン系樹脂(以下、「プロピレン系重合体(A)」ともいう。)としては、通常、融点(Tm)が125℃以上、好ましくは130~165℃の範囲にあるプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと極少量のエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2以上(但し炭素数3を除く)、好ましくは2~8(但し炭素数3を除く)の1種または2種以上のα-オレフィンとの共重合体が好ましい。
【0064】
プロピレン系重合体(A)は、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR230:ASTM D-1238、230℃、荷重2160g)は特に限定はされないが、スパンボンド不織布とする場合は、通常、1~500g/10分、好ましくは5~200g/10分、さらに好ましくは10~100g/10分の範囲にある。
【0065】
プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、通常、1.5~5.0である。紡糸性が良好で、かつ繊維強度が特に優れる繊維が得られる点で、比(Mw/Mn)は、1.5~4.5の範囲が好ましい。MwおよびMnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、公知の方法で測定することができる。得られるスパンボンド不織布の強度(熱エンボス部のボンディング強度など)及び、被覆用シートの強度や耐久性の観点から、上記の数値範囲を備えることが好ましい。
【0066】
スパンボンド不織布の原料となるプロピレン系重合体組成物の他の成分であるエチレン系重合体(B)は、エチレンの単独重合体、あるいはエチレンと少量のプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンおよび1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、中密度ポリエチレン(所謂MDPE)、高密度ポリエチレン(所謂HDPE)などのエチレンを主体とする重合体である。
【0067】
エチレン系重合体(B)としては、繊維の紡糸性と強度の点から、密度が0.94~0.97g/cm3、さらには0.95~0.97g/cm3の範囲にある高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0068】
エチレン系重合体(B)は、プロピレン系重合体(A)に添加して溶融紡糸し得る限りメルトフローレート(MFR190:ASTM D 1238、190℃、荷重2160g)はとくに限定はされないが、通常、0.1~100g/10分、より好ましくは0.5~50g/10分、さらに好ましくは1~30g/10分、最も好ましくは2~10g/10分の範囲にある。
【0069】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれるホモポリマーまたは繰り返し単位の一部にこれらの群の何れかが存在する共重合物あるいはブレンド物からなる樹脂を用いることができる。ポリエステル系樹脂フィルムとポリエステル系樹脂不織布とは、両層の接着性を高める観点から好ましい態様である。必要に応じてコロナ処理などを行うことにより、さらに接着性を改善することもできる。
【0070】
スパンボンド不織布に用いるプロピレン系組成物やポリエステル系樹脂組成物には、本開示の目的を損なわない範囲で、着色剤、酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料、柔軟剤、親水剤、撥水剤、助剤、撥水剤、フィラー、抗菌剤、農薬、防虫剤、薬剤等の種々公知の添加剤を加えておいてもよい。特に、屋外での使用に於いて耐久性を付与する酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤や、植物の成育活性に影響を与える色素などの添加が有効である。
【0071】
スパンボンド不織布は、耐候安定剤を含有してもよい。耐候安定剤としては、フィルムの耐候安定剤として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0072】
スパンボンド不織布は、地表面の温度や湿度のバランスを調整したり、軽量化を実現する目的で、少なくとも一層のスパンボンド不織布の他に、メルトブローン不織布や湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布等との複合化をしてもよい。特に、メルトブローン不織布とスパンボンド不織布との積層体が好ましく、さらに、メルトブローン不織布とスパンボンド不織布が部分的に熱融着により積層された不織布積層体がより好ましい。
【0073】
具体的には、メルトブローン不織布/スパンボンド不織布、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布が挙げられる。これら不織布積層体の中でも、スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布の構成が、保温性、耐水性及び耐久性を付与した被覆用シートの観点で好ましい。特に、被覆用シートがフィルム/接着層/スパンボンド不織布(上部)/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布(下部)の構成であると、メルトブローン不織布がバリア層となり、接着層の樹脂の多くがスパンボンド不織布(上部)に存在することにより、フィルムとスパンボンド不織布(上部)との接着性が向上する。結果として、被覆用シートの剥離性を改善できる。
【0074】
メルトブローン不織布を用いる場合の繊維径は、目的に応じて適宜選定でき、通常、0.1μm~10μm、好ましくは1μm~10μmである。メルトブローン不織布を用いる場合の目付は、好ましくは0.1g/m2~3g/m2である。メルトブローン不織布の繊維径及び目付が上記範囲にあると、スパンボンド不織布の引裂強度・引張伸度を維持しつつ、保温性・耐水性と耐久性のバランスに優れ、細繊維に起因する光の乱反射による透過率の低下も最低限に抑えられるので、好ましい。また、上記物性の均一性に優れる。
【0075】
本開示に用いる熱可塑性樹脂(例えば、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ポリエステル系重合体等)は、バイオマス由来の原料であってもよい。バイオマス由来の原料はカーボンニュートラルな材料であるため、スパンボンド不織布の製造における環境負荷を低減することができる。
バイオマス由来熱可塑性樹脂の原料となるモノマーは、バイオマスナフサのクラッキングやバイオマス由来エチレンから合成することで得られる。バイオマス由来熱可塑性樹脂は、このようにして合成したバイオマス由来モノマーを、従来公知の石油由来熱可塑性樹脂を用いる場合と同様の方法により重合することによって得られる。
バイオ由来モノマーを原料として合成した熱可塑性樹脂の重合体は、バイオマス由来熱可塑性重合体となる。原料モノマー中のバイオ由来熱可塑性重合体の含量は、原料モノマーの総量に対して、0質量%超であり、100質量%であってもよいし、それ以下でもよい。
なお、「バイオマス度」は、バイオマス由来の炭素の含有率を示し、放射性炭素(C14)を測定することにより算出される。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(約105.5pMC)で含まれている。そのため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物(例えばトウモロコシ)中のC14含有量も約105.5pMC程度であることが知られている。化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、重合体中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、原料中のバイオマス由来の炭素の含有率を算出することができる。
本開示の原料として用いられる熱可塑性重合体は、リサイクルによって得られた熱可塑性重合体、いわゆるリサイクルポリマーを含んでいてもよい。
「リサイクルポリマー」とは、廃ポリマー製品のリサイクルにより得られたポリマーを含むものであり、例えば、DE102019127827(A1)に記載の方法で製造することができる。リサイクルポリマーは、リサイクルにより得られたことが識別できるようなマーカーを含んでいてもよい。
【0076】
(1.4)より好ましい構成
本開示の被覆用シートでは、スパンボンド不織布がプロピレン系重合体を含み、スパンボンド不織布が暗色に着色されており、スパンボンド不織布の嵩密度が0.15g/m3以下であることが好ましい。これにより、被覆用シートの引裂強度はより優れるとともに、被覆用シートの防草性により優れる。その結果、被覆用シートは農業用マルチシートとして好適に用いられる。
【0077】
本開示の被覆用シートでは、スパンボンド不織布がプロピレン系重合体を含み、スパンボンド不織布の嵩密度が0.60g/m3以上であり、フィルムは、ポリプロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂と、フィラーとを含む通気フィルムであることが好ましい。これにより、被覆用シートの引張強度はより優れるとともに、被覆用シートは、屋外に長期に曝されても反りにくい。その結果、被覆用シートは農業用マルチシートとしてより好適に用いられる。
【0078】
本開示の被覆用シートでは、スパンボンド不織布がプロピレン系重合体を含み、スパンボンド不織布が暗色に着色されており、スパンボンド不織布の嵩密度が0.15g/m3以下であり、フィルムは、ポリプロピレン系樹脂と、主成分としてのポリエチレン系樹脂と、フィラーとを含む白色の通気フィルムであることが好ましい。これにより、被覆用シートの引裂強度はさらに優れるとともに、被覆用シートの防草性により優れる。更に、被覆用シートは、屋外に長期に曝されても反りにくい。その結果、被覆用シートは農業用マルチシートとしてより好適に用いられる。
【0079】
(1.5)用途
本開示の被覆用シートは、果実などの成育促進や、雨風などの天候からの土壌保護、防草目的、日中時日光による周囲の温度上昇を防ぐ目的として太陽光発電用シートなど、幅広い目的において使用できる。被覆用シートは、農業用マルチシートとして用いることができる。
【0080】
(2)農作物の育成方法
本開示の農作物の育成方法は、本開示の被覆用シートを、農作物を育成させるための地表面上に、前記スパンボンド不織布が地表面側となるように敷設することを含む。
【0081】
本開示の農作物の育成方法は、上記の構成を有するので、農作物を育成させるための地表面上に敷設された被覆用シートには、従来のマルチシートよりも破損が発生しにくい。その結果、本開示の農作物の育成方法は、所望の農作物を栽培しやすくすることができる。更に、本開示の農作物の育成方法は、被覆用シートの破損の発生に起因する被覆用シートの交換回数を低減することができる。
【0082】
(3)被覆用シートの製造方法
本開示の被覆用シートの製造方法は、フィルム、接着層及びスパンボンド不織布がこの順で積層されてなる被覆用シートであって、前記接着層の樹脂量が、4g/m2超15g/m2以下である、被覆用シートを製造する方法である。本開示の被覆用シートの製造方法は、前記スパンボンド不織布の一方の主面上に接着剤を塗布して前記接着層を作製すること(以下、「塗布工程」ともいう)と、前記接着層上に前記フィルムを積層すること(以下、「積層工程」ともいう)と、を含む。
【0083】
本開示の被覆用シートの製造方法は、上記の構成を有するので、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シートを製造することができる。
【0084】
(3.1)被覆用シート
本開示の被覆用シートの製造方法により製造される被覆用シートは、本開示の被覆用シートとして例示したものと同じであればよい。
【0085】
(3.2)塗布工程
本開示の被覆用シートの製造方法は、塗布工程を含む。
【0086】
塗布工程では、前記スパンボンド不織布の一方の主面上に接着剤を塗布して前記接着層を作製する。これにより、フィルムに接着剤を塗布して接着層を形成する場合よりも、フィルムの通気性が良好な被覆用シートが得られる。
【0087】
スパンボンド不織布を準備する方法は、特に限定されず、スパンボンド不織布を製造する方法等が挙げられる。スパンボンド不織布は、例えば、予め、熱可塑性樹脂を紡糸ノズルから紡糸し、紡出された長繊維フィラメントを冷却流体などにより冷却し、延伸空気によってフィラメントに張力を加えて所定の繊度とし、得られたフィラメントを移動する捕集ベルト上に集めて予備固定してとすることにより得られる。
【0088】
接着剤を準備する方法は、公知の方法であればよい。接着剤は、ホットメルト型接着剤であることが好ましい。これにより、溶剤系接着剤を用いる場合よりも、被覆用シートの通気性を向上させることができる。これは、ホットメルト型接着剤の塗布物は、溶剤系接着剤の塗布物よりも、スパンボンド不織布の内部に浸透しにくいためと推測される。
【0089】
塗布方法は、特に限定されず、接着剤の種類に応じて、適宜選択され、公知の方法であればよい。塗布方法としては、例えば、塗布、スプレー塗工、ビート塗工、スロット塗工、カーテン塗工、グラビア塗工、メイヤバー塗工、散布、溶融押出ラミネート等が挙げられる。接着層は、被覆用シートの通気性を確保するために、一部の領域に介在させるのが好ましい。中でも、むらなく接着剤をフィルムとスパンボンド不織布との界面(フィルムに接着層を塗布する面)に塗布する観点から、スプレー塗工が好ましい。例えば、グラビア塗工などを行う場合、接着層を介在させる領域の位置は、特に限定されず、例えば、被覆用シートの外周部に形成してもよく、略等間隔で複数の箇所に、例えば、ドット状、筋状、ウェブ状(線状で複数の箇所にランダムに塗布する形状)などに形成してもよい。接着剤の塗布量は、接着層の樹脂量が上述した範囲内になる量であればよい。接着剤の樹脂量が多すぎると、接着剤が被覆用シートからはみ出すおそれがあるため、樹脂量の上限値は15g/m2以下が好ましい。
【0090】
(3.3)積層工程
本開示の被覆用シートの製造方法は、積層工程を含む。
【0091】
積層工程では、接着層上に前記フィルムを積層する。これにより、被着用シートが得られる。
【0092】
フィルムを準備する方法は、特に限定されず、フィルムを成形する方法等が挙げられる
フィルムの成形方法としては、一般的な押出成形に、1軸延伸や2軸延伸を組み合わせた方法が使用できる。延伸成形の具体例としては、スクリュー型押出機を接続した単層または多層のTダイやIダイを使用して、溶融樹脂をシート状に押し出した後、ロール群の周速差を利用した縦延伸で1軸延伸する方法、さらにこの後にテンターオーブンを使用した横延伸を組み合わせた逐次2軸延伸方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時2軸延伸方法、スクリュー型押出機に接続された単層または多層のOダイを使用して溶融樹脂を筒状に押し出した後、空気を吹き込むインフレーション成形方法などが挙げられる。
延伸温度は使用する熱可塑性樹脂の融点より2℃~60℃低い温度、ガラス転移点より2℃~60℃高い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155℃~167℃)のときは95℃~165℃、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点:約70℃)のときは100℃~130℃が好ましい。延伸速度は、20m/分~350m/分であることが好ましい。
本開示の通気フィルム中に発生させる空孔の量や大きさを調整するために、通気フィルムの延伸倍率は、好ましくは3倍~8倍の範囲であればよく、これにより微細な空孔が充分に得られやすく、反射率の低下も抑えやすい。ここで延伸倍率とは、通気フィルムの縦延伸倍率をいう。
【0093】
積層方法としては、特に限定されず、公知の方法であればよく、例えば、ドライラミネート、溶融ラミネート等が挙げられる。
【0094】
(3.4)二次加工工程
本開示の被覆用シートの製造方法は、本開示の目的を損なわない範囲で、二次加工工程を含んでもよい。
【0095】
二次加工工程では、被着用シートに二次加工を施す。二次加工としては、例えば、ギア加工、印刷、塗布、ラミネート、熱処理、賦型加工、親水加工、撥水加工等が挙げられる。
【実施例0096】
以下、実施例に基づいて本開示をさらに具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
[1]測定方法
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0098】
[1.1]目付(g/m2)
被覆用シート、フィルム及びスパンボンド不織布の各々から、機械方向(MD)100mm×横方向(CD)100mmの試験片を10点採取した。試験片の目付を測定した。10点の試験片の目付の平均値を、「目付(g/m2)」とした。
【0099】
[1.2]厚み(mm)
被覆用シートから、機械方向(MD)100mm×横方向(CD)100mmの試験片を10点採取した。試験片の断面を走査型電子顕微鏡で観測して、フィルムとスパンボンド不織布との界面を特定することで、被覆用シートの厚みと、フィルムの厚みと、スパンボンド不織布の厚みと、を求めた。10点の試験片の厚みの平均値を、「厚み(mm)」とした。
【0100】
[1.3]嵩密度(g/m3)
下記式(1)に示すように、目付(g/m2)を厚み(mm)で除算して得られる値を、「スパンボンド不織布の嵩密度」とした。
式(1):嵩密度=[目付(g/m2)]/([厚み(mm)]×1000)
【0101】
[1.4]繊維径(平均繊維径)
スパンボンド不織布から、10mm×10mmの試験片を10点採取した。顕微鏡(NIKON社製の「ECLIPSE E400」)を用い、倍率20倍で、試験片の繊維の直径をμm単位で小数点第1位まで読み取った。1つの試験片毎に任意の20箇所の径を測定し、繊維の直径の平均値(以下、「直径平均値」ともいう)を求めた。10つの試験片の直径平均値の平均値を、「繊維径」とした。
【0102】
[1.5]引裂強度(N/50mm)
JIS L 1906に準拠して測定した。スパンボンド不織布、又は被覆用シートから200mm(MD)×25mm(CD)の試験片を採取した。引張試験機(島津製作所オートグラフAGS-J)を用いて、チャック間距離50mm、ヘッドスピード100mm/minで、試験片の引張強度(MD)を:5点測定した。5点の引張強度(MD)の平均値を、「MDの引裂強度(N/50mm)」とした。同様にして、試験片の引張強度(CD)を5点測定した。5点の引張強度(CD)の平均値を、「CDの引裂強度(N/50mm)」とした。
【0103】
[1.6]引張伸度(%)
JIS L 1906に準拠して測定した。スパンボンド不織布、又は被覆用シートから200mm(MD)×50mm(CD)の試験片を採取した。引張試験機(島津製作所オートグラフAGS-J)を用いてチャック間距離100mm、ヘッドスピード300mm/minで、試験片の最大点伸度(MD)を5点測定した。5つの最大点伸度(MD)の平均値を、「MDの引張伸度(%)」とした。同様にして、試験片の最大点伸度(CD)を5点測定した。5つの最大点伸度(CD)の平均値を、「CDの引張伸度(%)」とした。
【0104】
[1.7]透湿度
JIS L 1099 A-1法(塩化カルシウム法)に準拠して測定した。被覆用シートから直径約70mmのを採取した。JIS L 1099 A-1法に従い、既定のカップに吸湿材33g入れ、試料、パッキン、リングをナットで固定し、恒温・恒湿装置(熊谷理機工業株式会社の製品)を用いて、温度40 ℃±2 ℃,湿度(90±5)%RH1)の恒温・恒湿装置内の試験片上約10mm上部の風速が0.8m/sを超えない位置(測定条件)にて1時間後、2時間後の重量を測定した。上記結果から透湿度を算出し、3回の平均値をJIS Z 8401の規則B(四捨五入法)によって整数に丸め、透湿度(g/m2/24hr)とした。
【0105】
[1.8]光線透過率
財団法人日本化学繊維検査協会の透光率試験法に基づき、被覆用シートの光線透過率を測定した。具体的には、光源(サークルライン白色20W灯)の下方に、箱を配置した。箱のサイズは、縦32cm、横32cm、高さ45cmであった。箱の天井部に測定対象の被覆用シートを取付けた。光源と被覆用シートとの距離は25cmであった。箱の内側で天井の被覆用シート面から30cm下方に照度計を配置した。
暗室内で被覆用シートを箱に取付けずに、照度L1を測定した。次に、被覆用シートを箱に取付けて、照度L2を測定した。光線透過率は下記式(2)によって定まる。この測定を3回繰り返して、平均値を「光線透過率」とした。
式(2):光線透過率(%)=L2/L1×100
【0106】
[1.9]耐久性評価-1:表面摩擦による表面性状
JIS L 0849に準拠して、被覆用シートから250mm(MD)×25mm(CD)の試験片を採取した。学振型摩擦堅牢度試験機(型番:株式会社大栄科学精器製作所製RT-300)の試料ホルダーに試験片を取り付け、#180のサンドペーパーを用いて、試験片の表面(フィルム)に100回摩擦を加えた。被覆用シートにフィルムとスパンボンド不織布の剥離、穴や破れ(穴を起点とした引裂き)が発生しないかどうか耐久性を確認した。試験後の試験片を目視で観察し、下記の基準で、被覆用シートの表面摩擦による表面性状を評価した。被覆用シートの表面摩擦による表面性状の許容可能な評価結果は、「A」、「B」又は「C」である。
【0107】
A:
図2に示すように、穴なし(とくに良好)
B:穴は貫通していない(良好)
C:局所的に穴があるが、破れなし。摩擦した領域の50%以上の領域でフィルムとスパンボンド不織布との剥離なし。(概ね良好)
D:
図2に示すように、摩擦した領域の50%以上の領域でフィルムとスパンボンド不織布との剥離あり、もしくは穴を起点とした引き裂きあり(不良)
なお、試験片の表面(フィルム)に100回摩擦を加える前に、摩擦した領域の50%以上の領域でフィルムとスパンボンド不織布との剥離の発生、又は穴を起点とした引き裂きの発生(不良)(以下、「不良の発生」)が確認された場合には、不良の発生を確認した時点で、試験片の表面(フィルム)に摩擦を加えることを中止し、被覆用シートの表面摩擦による表面性状を「D」と評価した。
【0108】
[1.10]耐久性評価-2:裏面からの突き刺し変位
JIS Z 1707に準拠して、被覆用シートから150mm(MD)×150mm(CD)の試験片を採取した。試験片の裏面(スパンボンド不織布)から直径1/4インチの棒を50mm/minの速度で突き刺した。この状況下において、試験片に破れが発生した時の変位(mm)を測定し、被覆用シートの突刺強度に係る耐久性を評価した。この測定を10回繰り返して平均値を裏面からの突き刺し変位(mm)とした。「突き刺し変位」とは、棒が試験片を貫通した際の最大荷重検出時の試験片の変位をいう。
【0109】
[1.11]シート端部のメクレ
地表面に被覆用シートを設置して1年経過したシートの端部から200mm(MD)×200mm(CD)の試験片を採取した。 シートの端部から離れた領域50mm(MD)×50mm(CD)をフィルムが上層となるように固定し、被覆用シートの撓み具合を測定する。固定部の水平面よりも被覆用シートが上部に位置づく場合(水平面より上部にカールしている場合)を「メクレ有」とし、それ以外を「メクレ無」とした。
【0110】
[2]実施例及び比較例
[2.1]実施例1
メルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)が60g/10分のプロピレン単独重合体92.7質量部、耐候安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤3.3質量部、及び、カーボンブラック質量20%とMFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)が60g/10分のポリプロピレン樹脂80質量%を混錬した黒色マスターバッチ4.0質量部を用い、当該熱可塑性樹脂組成物を直径0.6mmの紡糸金口を有するスパンボンド不織布成型機で、230℃にて溶融紡糸を行い、得られた繊維を補集面上に堆積させ、エンボス加工(エンボス面積率:10%)を行い、繊維径が22μm、目付が40g/m2の黒色スパンボンド不織布を得た。
【0111】
線形低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm3,MFR(ASTM D-1238、190℃、荷重2,160g):2g/10分)38.0質量部、分岐状低密度ポリエチレン(密度:0.92g/cm3,MFR(ASTM D-1238、190℃、荷重2,160g):4g/10分)2.0質量部、炭酸カルシウム(平均粒径1.1μm)60.0質量部、エチレンビスステアリン酸アミド3.0質量部、及び、耐候安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤3.3質量部をタンブラーミキサーにて混合した後、タンデム型混練押出機を用いて、230℃において均一に混練し、ペレット状に加工した。このペレットをTダイが装着された押出成形機を用いて、260℃において溶融製膜した。このフィルムを75℃に加熱した予熱ロールと延伸ロールとの間で、3.5倍の延伸倍率で、ライン速度80m/minで機械方向に一軸延伸し、目付33g/m2のフィルムを得た。
【0112】
スパンボンド不織布に接着層としてオレフィン系熱可塑性樹脂を5g/m2を塗布し、その上にフィルムを重ねてスプレー塗工し、その後に熱ロール処理することで(以下、「ホットメルトラミ」ともいう)、目付78g/m2の被覆用シートを作製した。
【0113】
得られた被覆用シートを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。表面摩擦による表面性状の変化は「C」であり、従来よりも凹凸形状を有する地表面での擦れに強い被覆シートを得た。実施例1の被覆用シートは、光線透過率や透湿度に優れることから、農業用マルチシートとして有用である。
【0114】
[2.2]実施例2
実施例2のスパンボンド不織布としては、メルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)が30g/10分のプロピレン単独重合体を用い、各成分の配合量をプロピレン単独重合体92.7質量部、耐候安定剤3.0質量部、黒色マスターバッチ4.0質量部とした以外は、実施例1に記載の方法にて溶融紡糸を行い、その後エンボス加工(エンボス面積率:18%)を行うことで、繊維径が28μm、目付が40g/m2の黒色スパンボンド不織布を得た。
【0115】
実施例2のフィルムとしては、上記の線形低密度ポリエチレン42.0質量部、上記の分岐状低密度ポリエチレン2.0質量部、プロピレン単独重合体(MFR(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g):4g/10分)3.0質量部、上記の炭酸カルシウム58.0質量部、エチレンビスステアリン酸アミド3.0質量部、及び、耐候安定剤としてヒンダードアミン系光安定剤2.6質量部を用いて、実施例1と同様にフィルムを作成し、目付40g/m2のフィルムを得た。
【0116】
接着層として前記オレフィン系熱可塑性樹脂を10g/m2塗布して、上記フィルムと上記スパンボンド不織布とを実施例1と同様にホットメルトラミすることにより、目付78g/m2の被覆用シートを作製した。
【0117】
得られた被覆用シートを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。表面摩擦による表面性状の変化は「A」であり、裏面からの突き刺し変位含め耐久性に優れる被覆用シートを得た。被覆用シートの反りは見られなかった。実施例2の被覆用シートは、光線透過率や透湿度に優れることから、農業用マルチシートとして有用である。
【0118】
[2.3]実施例3
実施例3では、実施例2と同一組成で目付を33g/m2に、エンボス面積率を10%に変更したフィルムと、黒色スパンボンド不織布として市販のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)不織布(東洋紡株式会社製、商品名エクーレ、繊維径12μm、目付50g/m2)とを、樹脂量5g/m2の接着層にて実施例1と同様にホットメルトラミすることにより、目付83g/m2の被覆用シートを得た。
【0119】
表面摩擦による表面性状の変化は「A」であり、良好な耐久性を備える被覆シートを得た。被覆用シートの反りは見られなかった。実施例3の被覆用シートは、光線透過率や透湿度に優れることから、農業用マルチシートとして有用である。
【0120】
[2.4]実施例4
実施例4では、実施例3と同一構成、同一目付のフィルムと、同一組成、同一目付の黒色スパンボンド不織布とを、樹脂量10g/m2を用いて実施例1と同様にホットラミすることにより、目付88g/m2の被覆用シートを得た。
【0121】
表面摩擦による表面性状の変化は「A」であり、良好な耐久性を備える被覆シートを得た。被覆用シートの反りは見られなかった。実施例4の被覆用シートは、光線透過率や透湿度に優れることから、農業用マルチシートとして有用である。
【0122】
[2.5]実施例5
実施例5では、実施例3と同一のフィルムと、白色スパンボンド不織布とを用い、樹脂量7g/m2で実施例1と同様にホットメルトラミすることにより、目付70g/m2の農業用シートを得た。
【0123】
実施例5のスパンボンド不織布としては、実施例2と同じプロピレン単独重合体を用い、各成分の配合量をプロピレン単独重合体97.0質量部、耐候安定剤3.0質量部とした以外は、実施例1に記載の方法にて溶融紡糸を行い、その後エンボス加工(エンボス面積率:18%)を行うことで、繊維径が20μm、目付が30g/m2の白色スパンボンド不織布を得た。
【0124】
得られた被覆用シートを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。表面摩擦による表面性状の変化は「A」であり、良好な耐久性を備える被覆用シートを得た。被覆用シートの反りは見られなかった。
【0125】
[2.6]実施例6
実施例6では、実施例3と同一構成・目付のフィルムと、実施例2と同一構成の黒色スパンボンド不織布であって目付のみを20g/m2に変更したスパンボンド不織布とを、樹脂量6g/m2で実施例1と同様にホットメルトラミすることにより、目付59g/m2の被覆用シートを得た。
【0126】
得られた被覆用シートを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。表面摩擦による表面性状の変化は「B」であり、良好な耐久性を備える被覆用シートを得た。被覆用シートの反りは見られなかった。
【0127】
[2.7]比較例1
比較例1では、実施例1と同じ構成で目付13g/m2のフィルムと、実施例2と同じ構成で目付10g/m2の黒スパンボンド不織布とを用い、樹脂量3g/m2で実施例1と同様にホットメルトラミすることにより、目付29g/m2の被覆用シートを得た。
【0128】
得られた被覆用シートを上記記載の方法で評価した。結果を表1に示す。接着層の樹脂量低下により、表面摩擦性による表面性状の変化は「D」であり、凹凸形状の地表面との擦れに強い被覆用シートとしての耐久性を備えていない。
【0129】
【0130】
表1中、「PE」とは、ポリエチレンを示す。「PP配合量」とは、熱可塑性樹脂の総量に対するポリプロピレンの配合割合を示す。「PP」とは、プロピレン単独重合体を示す。「PET」とは、ポリエチレンテレフタレートを示す。
【0131】
比較例1の被覆用シートでは、接着層の樹脂量は、4g/m2超15g/m2以下の範囲外であった。そのため、比較例1の表面摩擦による表面性状の評価は、「D」であった。その結果、比較例1の被覆用シートは、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シートではないことがわかった。
【0132】
実施例1~実施例6の被覆用シートでは、接着層の樹脂量は、4g/m2超15g/m2以下の範囲内であった。そのため、実施例1~実施例6の表面摩擦による表面性状の評価は、「A」、「B」又は「C」であった。その結果、実施例1~実施例6の被覆用シートは、礫土などの凹凸形状をした地表面に敷設されても、耐久性に優れる被覆用シートであることがわかった。