(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121728
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】冷凍食品の製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 3/36 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028983
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】523070665
【氏名又は名称】株式会社freefreeze
(74)【代理人】
【識別番号】230118164
【弁護士】
【氏名又は名称】関 裕治朗
(72)【発明者】
【氏名】冨家 光彦
(72)【発明者】
【氏名】前野 欽哉
【テーマコード(参考)】
4B022
【Fターム(参考)】
4B022LN06
4B022LT06
(57)【要約】
【課題】ブライン液を効率よく冷却する。また,既存のブライン冷凍機を補助的に冷却する。
【解決手段】スターリング冷凍機の冷却部にインナーシリンダーシリンダー及びアウターシリンダーを設け,前記インナーシリンダー及び前記アウターシリンダーの間の空間にブライン液を導入する。このことによって,ブライン液を効率よく冷却することができ,既存のブライン冷凍機を補助的に冷却することができるうえに,ノンフロン化を達成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部を有するスターリング冷凍機と,
インナーシリンダーと,
アウターシリンダーと,
を有する冷凍装置であって,
前記冷却部は,フランジ部を有し,
前記インナーシリンダーは,ブライン液が導かれるブライン液入口及びブライン液が排出されるブライン液出口を有し,
前記インナーシリンダーは,前記冷却部を覆い,前記ブランジ部との間で閉空間を画し,
前記アウターシリンダーは,前記インナーシリンダーを覆い,前記ブランジ部との間で閉空間を画していることを特徴とする冷凍装置。
【請求項2】
冷却部を有するスターリング冷凍機と,
浸漬槽を有するブライン冷凍機と,
を有する冷凍装置であって,
前記スターリング冷凍機は,三次元的に移動可能であって,
前記冷却部は,浸漬槽のブライン液に浸けることができる冷凍装置。
【請求項3】
前記浸漬槽には,ブライン液を撹拌できるスクリューが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,冷凍食品の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍食品の製造装置としてブライン凍結機が知られている。
ブライン凍結機とは,エタノール液等のブライン液を用いた急速凍結機であって,ブライン液を冷却させ,冷却したブライン液の中に食品を漬けて凍結されるものである(例えば,特許文献1及び特許文献2)。
ブライン凍結機のメリットとして,液体は,空気に比べて熱伝導率が大きいので,空冷式のものよりも早く凍結することができるということがあげられる。
【0003】
一方で,食品を冷凍すると,食品の風味が落ちてしまうことが知られている。これは,食品内の水分が凍る際に膨張し,細胞膜を破壊してしまうことで,破壊された細胞膜から旨味や水分が流れ出し,品質が劣化することが原因といわれている。
【0004】
そこで,食品の品質を損なわずに凍結するには,0℃~-5℃という食品内の水分が凍る温度帯を短時間で通過することで,細胞膜の破壊を防ぐことが必要となる。前述したとおり,ブライン凍結機は,空冷式のものに比べて,食品を早く凍結することができるので,食品が0℃~-5℃という温度帯にある時間を短縮することによって,食品の品質を損なわずに凍結することができる。
【0005】
また,蓄冷型冷凍機としてスターリング冷凍機が知られている。
スターリング冷凍機は,蓄冷器を介して高温部(圧縮部)と低温部(膨張部)が配置され,-200℃に近い低温を実現できる(例えば,特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57-110142号公報
【特許文献2】特開2020-34226号公報
【特許文献3】特開2016-161140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし,ブライン凍結機といえども,冷却対象(食品等)をブライン液に漬けると,ブライン液の温度が上昇してしまい,さらに,漬ける冷却対象(食品等)の量が多いと,結果として,ブライン液が0℃~-5℃という温度帯にとどまる時間が長くなってしまうという問題があった。
【0008】
また,スターリング冷凍機は,これをブライン凍結機に使用したとしても,低温部を直接ブライン液に突っ込んで冷やすくらいの方法しかなく,ブライン液を効率よく冷やす手段がなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで,本発明では,ブライン凍結機でスターリング冷凍機を使用したときに,効率よくブライン液を冷却すべく,ブライン液をスターリング冷凍機の低温部に導入する機構を設けたことを主要な特徴とする。
【0010】
また,本発明は,既存のブライン凍結機をそのまま活用し,必要な時にスターリング冷凍機を補助的に使用する機構を設けたことを主要な特徴とする。
【0011】
さらに,本発明では,冷却対象(食品等)を効率よく冷却すべく,ブライン液を撹拌する撹拌機を設けたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のブライン凍結機は,スターリング冷凍機を使用し,効率よくブライン液を冷却することができるので,例えば,ブライン液を-50℃といった低温へ素早く冷却することができる。しかも,スターリング冷凍機を使用することで,ノンフロン化を実現できる。
【0013】
また,本発明では,既存のブライン凍結機をそのまま活用し,補助的にスターリング冷凍機を使用するので,例えば,冷却対象(食品等)が少なくとも0℃~-5℃という温度帯にある間といった必要な時のみスターリング冷凍機を使用することによって,大掛かりな追加の設備投資をすることなく,冷却対象(食品等)を効率よく冷却することができる。しかも,スターリング冷凍機を使用することで,ノンフロン化を実現できる。
【0014】
さらに,本発明では,ブライン液を撹拌するので,ブライン液と冷却対象(食品等)との間の熱交換の効率が高まって,冷却対象(食品等)が急速に冷却されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】
図1のA-A断面図(図面に平行な平面で切断した断面図)
【
図3】ブライン冷凍機及びスターリング冷凍機の位置関係
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は,スターリング冷凍機1の概要を示したものである。スターリング冷凍機1は,従来から知られているスターリング冷凍機であって,冷却部11がある一方で,図示しないが,スターリング冷凍機1から発生する熱を外部に排出する機構がある(なお,特許文献1)。
【0017】
図2は,
図1のA-A断面図であって,スターリング冷凍機1の冷却部11の周囲を拡大した図である(ただし,断面が示されているのは,インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14のみである。)。冷却シリンダー12は,冷却部11を囲むように設けられ,冷却部11に近い方からインナーシリンダー13及びアウターシリンダー14の順にシリンダーが設けられている。比ゆ的にいえば,インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14は,一端が閉じた円筒状であって,他端がそれぞれ開口している。そして,円筒状のインナーシリンダー13及びアウターシリンダー14は,同心円状に配置され,それぞれ冷却部11及びインナーシリンダー13にかぶさるように配置されている。そして,インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14の他端は,冷却部11に一体的に設けられたフランジ部111によって密閉される(必要に応じて,シール部材が使用される。)。
【0018】
冷却部11(フランジ部111を含む。)及びインナーシリンダー13で密閉された(閉)空間15には,図示しないが,ブライン冷凍機に接続されたポンプによってブライン冷凍機からブライン液が排出されるのを受けて,ブライン冷凍機から排出されたブライン液がインナーシリンダー13に設けられたブライン液入口131から空間15へ導入され,導入されたブライン液が冷却部11に接触することで冷却されつつ,ブライン液出口132から排出されて,ブライン冷凍機へ戻っていくというように循環する。
【0019】
インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14の間,すなわち,インナーシリンダー13の外側であって,アウターシリンダー14の内側の(閉)空間16は,真空引きすることによって真空に形成されている。これ(真空にされた空間16)は,断熱を目的としたものであって,インナーシリンダー13が霜付き(凍結)となることを防ぐものである。アウターシリンダー14には,インナーシリンダー13に設けられたブライン液入口131及びブライン液出口132を外部に導くための孔が設けられているが,空間16の真空状態を維持する必要があるので,ブライン液入口131及びブライン液出口132と孔とを溶接したり,ブライン液入口131及びブライン液出口132と孔とが接触する部分にシール材を配置したり,少なくともブライン液入口131及びブライン液出口132と孔とを一体成型することが必要である。
【0020】
図2の例では,フランジ部111は,冷却部11に一体的に設けられていたが,別部材として作製し,冷却部11に溶接等で一体化させ,インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14の他端を密封するように設けられてもよい(必要に応じて,シール部材が使用される。)。
【0021】
図2の例では,インナーシリンダー13及びアウターシリンダー14を設けたことによって,空間15及び空間16という2つの空間を設けたが,前述した霜付き(凍結)のデメリットを甘受するのであれば,アウターシリンダー14を省略してもよい。
【0022】
【0023】
(既存の)ブライン冷凍機2には,浸漬槽21が設けられ,ブライン液が満たされている。また,ブライン冷凍機2には,冷却対象(食品等)をブライン液に漬ける際に使用する図示しないラック等が使用される。
【0024】
スターリング冷凍機1は,冷却部11が鉛直下向きになるように配置され,図示しない機構によって,三次元的に移動可能に設けられている。例えば,二次元で移動可能な移動式のキャスターが設けられたフレームに,鉛直方向に移動可能に吊り下げられてもよいし,周知の移動機構を採用し,三次元的に移動可能に設けられてもよい。
【0025】
そして,三次元的に移動可能に設けられたスターリング冷凍機1は,冷却部11がブライン冷凍機2の浸漬槽21に設けられたブライン液に浸かるように移動され,冷却部11がブライン液を冷却する。
【0026】
前述したとおり,ブライン冷凍機2の浸漬槽21のブライン液に冷却対象(食品等)を漬けると,ブライン液の温度が上がってしまい,中々冷却されなくなってしまう。そこで,ブライン液に冷却対象(食品等)を漬ける時をはじめとして,ブライン液の温度を下げる必要があるときには,スターリング冷凍機1を三次元的に移動させ,冷却部11をブライン液に浸けて,ブライン液の温度を下げることができる。そして,いったんブライン液の温度が下がりさえすれば,その状態を維持することは,(既存の)ブライン冷凍機2であっても難しいことではないので,もはや,スターリング冷凍機1をその場にとどめて使用し続ける必要はない。
【0027】
浸漬槽21が複数存在するときであっても,ブライン液の温度を下げる必要があるときにだけスターリング冷凍機1を使用すればよいので,浸漬槽21の数よりも少ないスターリング冷凍機1を用意すれば事足りることになる。
【0028】
スターリング冷凍機1を使用することによって,ブライン液が通常よりも低温になるが,そうすると,ブライン液の粘度が上昇し,ブライン液をまんべんなく撹拌することが難しくなる。そこで,浸漬槽21に対し,図示しないスクリューを設け,ブライン液を強力に撹拌することが肝要である。また,ブライン液の温度に応じて,スクリューの回転数を制御(インバーター制御)することもできる。
これらのスクリュー及びインバーター制御といった技術は,いうまでもないが,
図2の例にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
ブライン冷凍機にスターリング冷凍機を使用することで,ブライン液の温度を低い状態に維持することが簡単にできる。
【符号の説明】
【0030】
1 スターリング冷凍機
11 冷却部
111 フランジ部
13 インナーシリンダー
14 アウターシリンダー
141 ブライン液入口
142 ブライン液出口
15 空間
2 ブライン冷凍機
21 浸漬槽21