(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121733
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】電池パック及び電気機器
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20240830BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20240830BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
G06F8/65
H01M10/42 P
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028991
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】松岡 清人
【テーマコード(参考)】
5B376
5H030
【Fターム(参考)】
5B376CA64
5B376FA11
5H030AA03
5H030AA04
5H030AS06
5H030AS12
5H030AS18
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電池パックの情報更新中の異常状態の発生を抑制できる電池パック及び電気機器を提供する。
【解決手段】電気機器本体10に接続可能な電池パック50であって、二次電池セル組52と、電池側制御部58と、外部機器である情報端末90から更新用情報を無線で受信可能な無線通信部55と、を備える。電池側制御部58は、自身の記憶装置60に記憶しているファームウェアを更新するとき、放電停止信号を電気機器本体10に出力可能に構成される。ファームウェアは、二次電池セル組51の保護機能を動作させるための情報(プログラム)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器本体に接続可能な電池パックであって、
電池セルと、
制御部と、
外部機器から更新用情報を無線で受信可能な無線通信部と、
を備え、
前記制御部は、自身の記憶している情報を前記更新用情報により更新するとき、前記電池セルの充電又は放電を禁止する禁止信号を電気機器本体に出力可能に構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記更新用情報は、前記制御部のファームウェアを更新するための情報である、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項3】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記更新用情報は、前記制御部の有する保護機能であって前記電池セルを保護するための保護機能を更新するための情報である、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項4】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記制御部は、前記更新用情報による更新の完了後、前記禁止信号の出力を停止するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項5】
請求項1に記載の電池パックであって、
前記禁止信号を保持する保持回路を備え、
前記保持回路は、前記制御部から前記禁止信号を受信すると、前記制御部から解除信号を受信するまで、前記禁止信号を前記電気機器本体に出力し続けるよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項6】
請求項5に記載の電池パックであって、
前記制御部は、前記更新用情報による更新の完了後、前記解除信号を前記保持回路に出力するよう構成される、
ことを特徴とする電池パック。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の電池パックと、前記電池パックを接続した電気機器本体と、を備えることを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機器であって、前記電気機器本体が電動工具本体であることを特徴とする電気機器。
【請求項9】
請求項7に記載の電気機器であって、前記電気機器本体が充電器であることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パック及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、無線通信機能を搭載した電池パックを開示する。電池パックの情報、例えばファームウェア等のソフトウェアないしプログラムを、ユーザがスマートフォン等の外部機器から無線通信機能を介して更新できれば利便性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池パックの情報の更新中は、電池セルの電圧、放電電流、温度等を監視できないことが考えられる。このため、情報の更新中の電池パックを電気機器本体に装着して電気機器本体に放電させた場合、電池パックの過電流や過放電、高温等の異常状態が発生しても、電池パックはそれらの異常状態を検出できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、電池パックの情報更新中の異常状態の発生を抑制できる電池パック及び電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、電池パックである。この電池パックは、
電気機器本体に接続可能な電池パックであって、
電池セルと、
制御部と、
外部機器から更新用情報を無線で受信可能な無線通信部と、
を備え、
前記制御部は、自身の記憶している情報を前記更新用情報により更新するとき、前記電池セルの充電又は放電を禁止する禁止信号を電気機器本体に出力可能に構成される、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様は、前記電池パックと、前記電池パックを接続した電気機器本体と、を備える電気機器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池パックの情報更新中の異常状態の発生を抑制できる電池パック及び電気機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態1に係るシステムの回路ブロック図。
【
図3】実施形態1に係るシステムにおける電池パック50のファームウェア更新のシーケンス図。
【
図4】電池パック50の起動動作のフローチャート。
【
図5】電池パック50のメイン動作におけるファームウェア更新機能のフローチャート。
【
図6】電池パック50のファームウェア更新動作のフローチャート。
【
図7】電池パック50のファームウェア更新動作に伴う電池パック50の記憶装置60の記憶内容の遷移を示す図。
【
図8】電池パック50のアプリケーション(ファームウェア)とブートローダでそれぞれ提供される機能を簡易的にまとめた図。
【
図9】本発明の実施形態2に係るシステムの回路ブロック図。
【
図10】本発明の実施形態3に係るシステムの回路ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
図1から
図8は、本発明の実施形態1に関する。本実施形態は、電池パック50、並びに、電池パック50及びそれを接続した電気機器本体10又は充電器100を備える電気機器に関する。
【0011】
図1は、電池パック50と電気機器本体10とを互いに接続した電気機器の回路ブロック図であり、電池パック50と無線通信が可能な外部機器としての情報端末90を併せて示す回路ブロック図である。
図2は、
図1に示すシステムの概念図である。
【0012】
電池パック50は、二次電池セル組51、抵抗52、有線通信部53、放電停止信号出力部54、無線通信部55、電池残量表示スイッチ56、表示部57、制御部58(以下「電池側制御部58」とも表記)、マイコン59、記憶装置(不揮発性メモリ)60を有する。
【0013】
二次電池セル組51は、所定数の二次電池セルを直接接続したものである。各二次電池セルの電圧は電池側制御部58に送信される。また、図示しないサーミスタ等の温度検出素子が二次電池セル組51の近傍に配置され、当該温度検出素子から電池側制御部58に二次電池セル組51の温度情報が送信される。抵抗52は、二次電池セル組51の充放電電流の経路に設けられる。抵抗52の電圧は、二次電池セル組51の充放電電流を示す情報として電池側制御部58に送信される。
【0014】
有線通信部53は、電池側制御部58が電気機器本体10の制御部20(以下「本体側制御部20」とも表記)と有線通信するための回路である。放電停止信号出力部54は、電池側制御部58から電気機器本体10に禁止信号としての放電停止信号を出力するための回路である。
【0015】
無線通信部55は、情報端末90との無線通信を行う回路である。無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信である。電池残量表示スイッチ56は、ユーザが電池パック50の残量を表示するために操作するスイッチである。表示部57は、電池残量表示スイッチ56が操作されると、電池側制御部58の制御に従い、電池パック50の残量を一定時間表示する。表示部57は、異常報知やエラー報知にも用いられる。
【0016】
電池残量表示スイッチ56は、ユーザが電池側制御部58を起動するための起動スイッチとしての機能を有してもよい。あるいは、電池パック50は、電池残量表示スイッチ56とは別に起動スイッチを有してもよい(図示省略)。
【0017】
電池側制御部58は、マイコン59(マイクロコントローラ)と記憶装置60を含み、電池パック50の全体の動作を制御する。
【0018】
電池側制御部58は、二次電池セル組51の保護機能を有する。具体的には、電池側制御部58は、二次電池セル組51の過放電、過電流、高温等の異常を検出すると、放電停止信号出力部54を介して電気機器本体10に放電停止信号を送信する。放電停止信号を受信した電気機器本体10は動作を停止し、二次電池セル組51からの放電が停止される。
【0019】
電池側制御部58の記憶装置60は、不揮発性メモリであり、電池パック50の情報、例えばファームウェアを記憶している。ファームウェアに従って動作するマイコン59により、前述の保護機能が実現される。すなわち、ファームウェアは、前述の保護機能を動作させるための情報(プログラム)を含む。無線通信部55は、外部機器である情報端末90からファームウェアを更新するための更新用情報、すなわち新しいファームウェアを無線で受信可能である。更新用情報は、前述の保護機能を更新するための情報、例えば保護機能の作動の条件となる各種閾値等を更新するための情報を含む。
【0020】
電気機器本体10は、ここでは電動工具本体であり、モータ11、モータ制御部12、抵抗13、有線通信部14、放電停止信号受信部15、トリガスイッチ16、本体モード切替スイッチ17、表示部18、本体側制御部20を有する。
【0021】
モータ11は、電池パック50からの供給電力で動作する。モータ11は、例えばブラシレスモータ又はブラシ付きモータである。モータ制御部12は、本体側制御部20の制御に従い、モータ11への電力供給を制御する。抵抗13は、モータ11の電流経路に設けられる。抵抗13の電圧は、モータ11の電流を示す情報として本体側制御部20に送信される。
【0022】
有線通信部14は、本体側制御部20が電池側制御部58と有線通信するための回路である。放電停止信号受信部15は、電池側制御部58からの放電停止信号を本体側制御部20が受信するための回路である。
【0023】
トリガスイッチ16は、ユーザがモータ11の駆動、停止を指示するためのスイッチである。本体モード切替スイッチ17は、ユーザが電気機器本体10の動作モードを切り替えるためのスイッチである。表示部18は、本体モード切替スイッチ17が操作されると、本体側制御部20の制御に従い、切替後の動作モードを一定時間表示する。
【0024】
本体側制御部20は、マイコン21(マイクロコントローラ)と記憶装置22を含み、電気機器本体10の全体の動作を制御する。本体側制御部20は、電池側制御部58から放電停止信号を受信すると、トリガスイッチ16がオンされていてもモータ11への通電を停止するよう制御する。
【0025】
情報端末90は、例えばスマートフォンやタブレット端末等の携帯端末(携帯機器)であり、無線通信部91、表示部92、入力部93、記憶部94、制御部95を有する。
【0026】
無線通信部91は、電池パック50との無線通信を行う回路である。無線通信は、例えばBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信である。無線通信部91は、インターネットへの接続機能を有する。
【0027】
表示部92及び入力部93は、一般的なタッチパネルであり、ユーザに情報を表示すると共にユーザによる入力(タッチ操作)を受け付ける。記憶部94は、各種情報を記憶する。記憶部94は、制御部95に含まれてもよい。記憶部94には、電池パック50を管理する管理アプリケーション(以下「管理アプリ」)がインストールされている。
【0028】
制御部95は、マイコン96(マイクロコントローラ)を含み、情報端末90の全体の動作を制御する。制御部95は、管理アプリの機能により、電池パック50の情報、例えばファームウェアを更新することができる。ファームウェアを更新するための更新用情報、すなわち新しいファームウェアは、例えばインターネットを通じて電池パック50のメーカのサーバー(図示省略)から受信して記憶部94に記憶しておき、電池パック50に送信する。
【0029】
図3は、
図1及び
図2に示すシステムにおける電池パック50のファームウェア更新のシーケンス図である。
【0030】
情報端末90と電池パック50は、無線接続を確立する(S1)。情報端末90は、電池パック50に対し、ファームウェア更新を要求する(S3)。電池パック50は、ファームウェア更新のシーケンスを開始する(S5)。電池パック50は、電気機器本体10に放電停止信号を出力する。電気機器本体10は、放電停止信号を受信して動作禁止状態となる(S9)。ファームウェア更新中は二次電池セル組51の保護機能が働かないため、ファームウェア更新の際には放電停止信号を出力して二次電池セル組51からの放電が行われないようにする。
【0031】
情報端末90は、電池パック50に更新用情報を送信する(S11)。電池パック50は、更新用情報を受信する受信応答を情報端末90に送信する(S13)。更新用情報は情報端末90から電池パック50に複数回に分けて送信され、その度に電池パック50は受信応答を情報端末90に送信する。情報端末90から電池パック50に最後の更新用情報の送信が行われ(S15)、それに対して電池パック50から情報端末90に受信応答の送信(S17)が行われると、情報端末90と電池パック50は、無線接続を解除する(S19)。
【0032】
電池パック50は、受信した更新用情報によりファームウェアを更新し(S21)、再起動し(S23)、二次電池セル組51の状態に異常がないことを確認し(S25)、電気機器本体10への放電停止信号の出力を停止する(S27)。
【0033】
図4は、電池パック50の起動動作のフローチャートである。
【0034】
電池側制御部58は、電池残量表示スイッチ56又は図示しない起動スイッチの操作により起動し(S31)、放電停止信号を出力する(S33)。電池側制御部58は、二次電池セル組51の状態を確認する(S35)。電池側制御部58は、二次電池セル組51の状態に異常(問題)がある場合(S37のYes)、エラー状態(S39)となり、メイン動作(S43)に進む。電池側制御部58は、二次電池セル組51の状態に異常(問題)がない場合(S37のNo)、放電停止信号の出力を停止し(S41)、メイン動作(S43)に進む。なお、電池側制御部58は、基本的にはスリープ状態となっており、上記した電池残量表示スイッチ56や起動スイッチの操作以外で、電気機器本体10への装着や電池パック50の充放電によって起動する構成としてもよい。
【0035】
図5は、電池パック50のメイン動作(
図4のS43)におけるファームウェア更新動作のフローチャートである。
【0036】
電池側制御部58は、情報端末90からファームウェア更新の要求を受信しない場合(S51のNo)、メイン動作を終了する(S53)。電池側制御部58は、情報端末90からファームウェア更新の要求を受信すると(S51のYes)、記憶装置60の空き容量を確認する(S55)。
【0037】
電池側制御部58は、記憶装置60の空き容量がファームウェア更新に必要な量に対して十分でない場合(S55のNo)、表示部57にエラー表示を行い(S57)、メイン動作を終了する(S59)。電池側制御部58は、記憶装置60の空き容量がファームウェア更新に必要な量に対して十分ある場合(S55のYes)、放電停止信号を出力し(S61)、ファームウェア更新動作を行い(S63)、再起動する(S65)。
【0038】
図6は、電池パック50のファームウェア更新動作(
図5のS63)のフローチャートである。
【0039】
電池側制御部58は、更新用情報を受信し(S71)、記憶装置60の空き領域に書き込む(S73)。電池側制御部58は、更新用情報を全て受信するまでS71、S73の処理を繰り返す(S75のNo)。電池側制御部58は、更新用情報を全て受信すると(S75のYes)、更新用情報を検証する(S77)。電池側制御部58は、更新用情報に問題がある場合(S79のNo)、表示部57にエラー表示を行う(S81)。電池側制御部58は、更新用情報に問題がない場合(S79のYes)、現在のファームウェアを更新用情報に従って書き替え(新しいファームウェアで上書きし)(S83)、ファームウェア更新動作を終了する(S85)。
【0040】
図7は、電池パック50のファームウェア更新動作に伴う記憶装置60の記憶内容の遷移を示す図である。
【0041】
図7において、アプリケーションデータ領域は、アプリケーションが参照するデータを記憶した領域である。アプリケーション領域は、ファームウェアを記憶した領域である。ブートローダ領域は、ブートローダを記憶した領域である。ファームウェア更新の際には、まず空き領域に新しいファームウェア(新アプリケーション)を書き込む。その後、書き込まれた新しいファームウェア(新アプリケーション)で、アプリケーション領域に記憶されている現在のファームウェア(現在のアプリケーション)を上書きする。
【0042】
図8は、電池パック50のアプリケーション(ファームウェア)とブートローダでそれぞれ提供される機能を簡易的にまとめた図である。
【0043】
アプリケーション(ファームウェア)は、電池側制御部58に所望の動作をさせるためのプログラム(ソフトウェア)であり、本実施形態での更新対象である。具体的には、アプリケーション(ファームウェア)は、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信機能により情報端末90の管理アプリや電気機器本体10と連動する図示しない集塵機と通信する機能、電気機器本体10と有線通信する機能、二次電池セル組51の保護機能、残量表示機能、使用履歴等のログデータ記録機能を有する。
【0044】
ブートローダは、電池側制御部58の起動直後に動作するプログラム(ソフトウェア)であり、ファームウェア更新フラグが立っていればファームウェア更新動作を行い、ファームウェア更新フラグが立っていなければアプリケーションを起動する。情報端末90からファームウェア更新の要求を受信するとファームウェア更新フラグが立つ。ブートローダは、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信機能により情報端末90から更新用情報(新しいファームウェア)を受信する機能、ファームウェアを更新する機能、放電停止信号(LD信号)の出力を制御する機能、ファームウェア更新中であることをユーザに報知(表示)する機能を有する。
【0045】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0046】
(1) 電池側制御部58は、自身の記憶装置60に記憶しているファームウェアを更新するとき、放電停止信号を電気機器本体10に出力可能に構成される。よって、ファームウェア更新中で二次電池セル組51の保護機能が働かないときに電気機器本体10のトリガスイッチ16が操作されても、放電停止信号を受信した本体側制御部20がモータ11への通電を行わないため、二次電池セル組51からの放電が抑制される。このため、二次電池セル組51の保護機能が働かない間に二次電池セル組51に過放電、過電流、高温等の異常が発生することを抑制できる。
【0047】
(2) 記憶装置60においてファームウェアとは別の領域に記憶されたブートローダが放電停止信号の出力を制御する機能を有することで、ファームウェア更新中にも放電停止信号を継続して出力できる。
【0048】
(3) 電池側制御部58は、ファームウェアの更新完了後、放電停止信号の出力を停止するよう構成される。よって、ファームウェアの更新完了後は、二次電池セル組51の保護機能により適切に放電停止信号の出力を制御することができる。
【0049】
(実施形態2)
図9は、本発明の実施形態2に係るシステムの回路ブロック図であり、電池パック50を充電器100に接続したシステムの回路ブロック図である。充電器100は、電気機器本体の例示である。以下、実施形態1との相違点、及び実施形態1では説明を省略した点を中心に説明する。
【0050】
電池パック50は、充電停止信号出力部62を有する。充電停止信号出力部62は、電池側制御部58から充電器100に禁止信号としての充電停止信号を出力するための回路である。充電停止信号出力部62として、前述の放電停止信号出力部54を兼用してもよい。すなわち、充電停止信号は、放電停止信号と同じ経路で出力される同じレベルの信号であってもよい。あるいは、放電停止信号出力部54とは別に充電停止信号出力部62を設けてもよい。電池側制御部58は、ファームウェアの更新の際、放電停止信号を出力するのと同じタイミングで充電停止信号を出力する。
【0051】
電池パック50は、放電用の正極端子とは別に充電用の正極端子を有し、充電用の正極端子はヒューズ63を介して二次電池セル組51の正極に接続される。
【0052】
充電器100は、ダイオードブリッジ101、充電回路102、有線通信部103、充電停止信号受信部104、表示部105、制御部106(以下「充電器側制御部106」とも表記)、マイコン107、記憶装置108、抵抗109を有する。
【0053】
ダイオードブリッジ101は、全波整流回路であり、外部の交流電源150から入力される交流を直流に変換する。充電回路102は、ダイオードブリッジ101の出力電圧を電池パック50の充電用の電圧に変換し、電池パック50に出力する。充電回路102の出力電圧は、充電器側制御部106に送信される。
【0054】
抵抗109は、電池パック50に供給される充電電流の経路に設けられる。抵抗109の電圧は、充電電流を示す情報として充電器側制御部106に送信される。
【0055】
有線通信部103は、充電器側制御部106が電池側制御部58と有線通信するための回路である。充電停止信号受信部104は、電池側制御部58からの充電停止信号を充電器側制御部106が受信するための回路である。表示部105は、充電の進行状況をユーザに報知する。
【0056】
充電器側制御部106は、マイコン107(マイクロコントローラ)及び記憶装置108を有し、充電器100の全体の動作を制御する。制御部106は、充電回路102の出力電圧、二次電池セル組51の温度、充電電流等を監視しながら、充電回路102を制御する。充電器側制御部106は、電池側制御部58から充電停止信号を受信すると、電池パック50への充電電流の供給を停止するよう制御する。
【0057】
本実施の形態のその他の点は、実施形態1と同様である。本実施形態によれば、電池側制御部58は、自身の記憶装置60に記憶しているファームウェアを更新するとき、充電停止信号を充電器100に出力可能に構成される。よって、ファームウェア更新中で二次電池セル組51の保護機能が働かないときに電池パック50が充電器100に接続されても、充電停止信号を受信した充電器側制御部106が電池パック50への充電を行わないため、二次電池セル組51への充電が抑制される。このため、二次電池セル組51の保護機能が働かない間に二次電池セル組51に過充電、高温等の異常が発生することを抑制できる。
【0058】
(実施形態3)
図10は、本発明の実施形態3に係るシステムの回路ブロック図である。
図10に示す電池パック50Aは、前述の電池パック50において、電池側制御部58と放電停止信号出力部54との間に、保持回路としてのラッチ部61を追加したものである。ラッチ部61は、電池側制御部58から放電停止信号を受信すると、電池側制御部58から解除信号を受信するまで、放電停止信号出力部54を介して放電停止信号を電気機器本体10に出力し続けるよう構成される。電池側制御部58は、ファームウェアの更新完了後、解除信号をラッチ部61に出力することで、電気機器本体10への放電停止信号の出力を停止できる。
【0059】
本実施形態によれば、ファームウェア更新中に電池側制御部58が放電停止信号を継続して出力できない場合でも、電池側制御部58から事前に放電停止信号を出力しておくことで、ラッチ部61の保持機能によりファームウェア更新中に放電停止信号を電気機器本体10に出力し続けることができる。また、電池側制御部58の不具合やファームウェア更新の失敗により電池側制御部58が放電停止信号を出力できなくなる事態にも好適に対応できる。
【0060】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0061】
実施形態では、電池パック50(又は50A)の情報としてファームウェアを例示したが、更新対象となる情報は、ファームウェアと表現されるものでなくてもよく、例えば電池パック50(又は50A)の機能アップデート等として更新される情報であってもよいし、ブートローダであってもよい。情報更新中に二次電池セル組51の保護機能が働かなくなるケース全般において、情報更新中に放電停止信号あるいは充電停止信号を出力する技術は有効である。
【符号の説明】
【0062】
10…電気機器本体、11…モータ、12…モータ制御部、13…抵抗、14…有線通信部、15…放電停止信号受信部、16…トリガスイッチ、17…本体モード切替スイッチ、18…表示部、20…制御部、21…マイコン、22…記憶装置、50、50A…電池パック、51…二次電池セル組、52…抵抗、53…有線通信部、54…放電停止信号出力部、55…無線通信部、56…電池残量表示スイッチ、57…表示部、58…制御部、59…マイコン、60…記憶装置(不揮発性メモリ)、61…ラッチ部、62…充電停止信号出力部、63…ヒューズ、90…情報端末、91…無線通信部、92…表示部、93…入力部、94…記憶部、95…制御部、96…マイコン、100…充電器、101…ダイオードブリッジ(整流回路)、102…充電回路、103…有線通信部、104…充電停止信号受信部、105…表示部、106…制御部、107…マイコン、108…記憶装置、109…抵抗、150…交流電源。