(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121734
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】作業機及びモータユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20240830BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20240830BHJP
H02K 3/18 20060101ALI20240830BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K11/215
H02K3/18 P
B25F5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028992
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】法月 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】吉▲崎▼ 陽祐
(72)【発明者】
【氏名】軍司 悟
(72)【発明者】
【氏名】谷本 英之
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 勇人
【テーマコード(参考)】
3C064
5H603
5H611
【Fターム(参考)】
3C064AA04
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA01
3C064BA02
3C064BA06
3C064BB01
3C064BB02
3C064BB42
3C064BB43
3C064BB44
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA09
3C064CA10
3C064CA11
3C064CA24
3C064CA27
3C064CA29
3C064CA34
3C064CA35
3C064CA36
3C064CA53
3C064CA82
3C064CB07
3C064CB08
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB37
3C064CB39
3C064CB62
3C064CB71
3C064CB92
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB10
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB02
5H603CC11
5H603CD21
5H603CE01
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB06
5H611BB08
5H611RR02
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制可能な作業機及びモータユニットを提供する。
【解決手段】モータユニットは、固定子コア24の前面に第1制御基板29が対向する構成である。モータ軸の中心軸線45及びティース38を含む断面において、巻線25は、ティース38の根元側部分に巻かれた第1部分41が、ティース38の先端側部分に巻かれた第2部分42よりも、第1制御基板29の近くまで延在する。低背の第1電子部品31は、ティース38の根元側部分と対向し、巻線25の第1部分41と対向する。中背の第2電子部品32は、ティース38の先端側部分に対向し、巻線25の第2部分42と対向し、前後方向において第1部分41が存在する範囲に位置し又は延在する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースと、前記複数のティースの各々に巻かれた巻線と、を含む固定子と、前記複数のティースの先端部に対向し前記固定子に対して回転する回転子と、を有するモータと、
前記回転子の軸方向における前記固定子の一方側の端部に固定され、前記固定子と対向する第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有する基板と、
前記基板の前記第1面に設けられた電子部品と、
を備えた作業機であって、
前記軸方向における前記巻線の存在範囲と前記電子部品の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
複数のスイッチング素子を有し、前記モータを駆動する駆動回路を備え、
前記電子部品は前記複数のスイッチング素子を含む、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機であって
前記回転子の位置を検出する回転位置検出素子を備え、
前記電子部品は前記回転位置検出素子を含む、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記巻線は、前記ティースの先端側部分よりも前記ティースの根元側部分に多く巻かれる、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機であって、
前記電子部品は、
前記第1面の表面から前記固定子側への突出量が第1突出量の第1電子部品と、
前記突出量が前記第1突出量よりも大きい第2突出量の第2電子部品と、を含み、
前記第1面において、前記第1電子部品は前記ティースの前記根元側部分に対向する位置にあり、前記第2電子部品は前記ティースの前記先端側部分に対向する位置にある、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項5に記載の作業機であって、
前記電子部品は、前記突出量が前記第2突出量よりも大きい第3突出量の第3電子部品を含み、
前記第1面において、前記第3電子部品は、前記回転子の周方向において隣り合う前記巻線の間の隙間に対向する位置にある、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項4に記載の作業機であって、
前記断面において、前記巻線が略三角形状ないし略台形状である、
ことを特徴とする作業機。
【請求項8】
請求項6に記載の作業機であって、
前記第1電子部品は、抵抗又はコンデンサであり、
前記第2電子部品は、前記回転子の位置を検出する回転位置検出素子であり、
前記第3電子部品は、複数のスイッチング素子である、
ことを特徴とする作業機。
【請求項9】
請求項4に記載の作業機であって、
前記基板は、前記ティースの前記根元側部分と対向する位置に前記第1面と前記第2面を貫通する貫通孔を有する、
ことを特徴とする作業機。
【請求項10】
請求項1から3のいずれか一項に記載の作業機であって、
前記巻線は、少なくとも一部が整列巻きされる、
ことを特徴とする作業機。
【請求項11】
複数のティースと、前記複数のティースの各々に巻かれた巻線と、を含む固定子と、
前記複数のティースの先端部に対向し前記固定子に対して回転する回転子と、
前記回転子の軸方向における前記固定子の一方側の端部に固定され、前記固定子と対向する第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有する基板と、
前記基板の前記第1面に設けられた電子部品と、
を備え、
前記軸方向における前記巻線の存在範囲と前記電子部品の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項12】
請求項11に記載のモータユニットであって、
前記回転子の周方向において、隣り合う前記巻線の間に隙間があり、当該隙間に前記電子部品が位置し又は延在する、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項13】
請求項11に記載のモータユニットであって、
前記回転子の中心軸及び前記ティースを含む断面において、前記巻線は、前記ティースの根元側部分に巻かれた第1部分が、前記ティースの先端側部分に巻かれた第2部分よりも、前記基板の近くまで延在する、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項14】
請求項13に記載のモータユニットであって、
前記断面において、前記軸方向における前記第1部分の存在範囲と前記電子部品の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする、
ことを特徴とするモータユニット。
【請求項15】
請求項14に記載のモータユニットであって、
前記電子部品は、
前記第1面の表面から前記固定子側への突出量が第1突出量の第1電子部品と、
前記突出量が前記第1突出量よりも大きい第2突出量の第2電子部品と、を含み、
前記第1電子部品は、前記ティースの前記根元側部分と対向し、
前記第2電子部品は、前記ティースの前記先端側部分に対向し、前記軸方向において前記第1部分が存在する範囲に位置し又は延在する、
ことを特徴とするモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機及びモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、スイッチング素子を搭載した基板を固定子の後方に配置した作業機を開示する。特許文献2は、固定子の前方に配置した基板に固定子と対向するようスイッチング素子を搭載した作業機を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-161977号公報
【特許文献2】特開2012-076179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、下記の課題1、2の少なくとも一つの解決を目的とする。
・課題1…大型化を抑制可能な作業機及びモータユニットを提供すること。
・課題2…モータや電子部品の冷却性が高い作業機及びモータユニットを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
複数のティースと、前記複数のティースの各々に巻かれた巻線と、を含む固定子と、前記複数のティースの先端部に対向し前記固定子に対して回転する回転子と、を有するモータと、
前記回転子の軸方向における前記固定子の一方側の端部に固定され、前記固定子と対向する第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有する基板と、
前記基板の前記第1面に設けられた電子部品と、
を備えた作業機であって、
前記軸方向における前記巻線の存在範囲と前記電子部品の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする、ことを特徴とする。
【0006】
本発明の別の態様は、モータユニットである。このモータユニットは、
複数のティースと、前記複数のティースの各々に巻かれた巻線と、を含む固定子と、
前記複数のティースの先端部に対向し前記固定子に対して回転する回転子と、
前記回転子の軸方向における前記固定子の一方側の端部に固定され、前記固定子と対向する第1面と、前記第1面と反対側に位置する第2面と、を有する基板と、
前記基板の前記第1面に設けられた電子部品と、
を備え、
前記軸方向における前記巻線の存在範囲と前記電子部品の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の「作業機」は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記の課題1、2の少なくとも一つを解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】作業機1のモータ20の一部の分解斜視図であって、固定子コア24、後側インシュレータ27、前側インシュレータ28を互いに分離した状態の斜視図。
【
図4】比較例の電気機器における、固定子コア24の1つのティース38に巻線25が乱巻きされた状態の固定子コア24の斜視図。
【
図5】比較例の電気機器における、
図4と同じ状態の固定子コア24を別方向から見た斜視図。
【
図6】比較例の電気機器における、固定子コア24の各ティース38に巻線25が乱巻きされた状態の固定子コア24の断面図。
【
図7】作業機1における、固定子コア24の1つのティース38に巻線25が整列巻きされた状態の固定子コア24の斜視図。
【
図8】作業機1における、
図7と同じ状態の固定子コア24を別方向から見た斜視図。
【
図9】作業機1における、固定子コア24の各ティース38に巻線25が整列巻きされた状態の固定子コア24の断面図。
【
図10】作業機1における、各ティース38における巻線25のコイル集中部とコイル非集中部をハッチングで区別して示した模式図。
【
図11】作業機1の第1制御基板29を後方から見た図。
【
図13】
図10のA-A’断面図の第1例であって、巻線25の第1部分41に第1電子部品31が対向する例を示す断面図。
【
図14】
図10のA-A’断面図の第2例であって、巻線25の第1部分41に貫通孔44が対向する例を示す断面図。
【
図16】
図13にファン40の発生する冷却風の流れを追加した断面図。
【
図17】
図14にファン40の発生する冷却風の流れを追加した断面図。
【
図18】
図15にファン40の発生する冷却風の流れを追加した断面図。
【
図20】(A)は、比較例の電気機器における断面図であって、
図10のA-A’断面に対応する断面を示す図。(B)は、
図20(A)にファン40の発生する冷却風の流れを追加した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態は、モータ20、基板29、及び電子部品30を備えたモータユニット、並びに当該モータユニットを備えた作業機1に関する。作業機1は、作業機ないし電動工具であり、具体的にはインパクト工具(インパクトドライバ)である。
図1に示すように、作業機1における互いに直交する前後、上下方向を定義する。
【0011】
作業機1は、ハウジング10を備える。ハウジング10は、例えば左右二分割構造の樹脂成形体である。ハウジング10は、モータ収容部11、ハンドル部12、及び電池パック装着部13を含む。
【0012】
モータ収容部11は、中心軸が前後方向と略平行な筒状部である。モータ収容部11の左右両側面にそれぞれ、後述のファン40の発生する冷却風の入口となる吸気口14aと当該冷却風の出口となる排気口14bとが設けられる。
【0013】
ハンドル部12は、上端がモータ収容部11の前後方向の中間部に接続されて前記中間部から下方に延びる。電池パック装着部13は、ハンドル部12の下端に設けられ、電池パック17を着脱可能に装着できる。作業機1は、電池パック17の電力で動作する。
【0014】
作業機1は、モータ収容部11の前部に接続されたハンマケース18を有する。ハンマケース18は、例えば金属製であり、モータ収容部11に保持されてモータ収容部11から前方に延びる。
【0015】
作業機1は、ハンドル部12の上端部に、ユーザがモータ20の駆動、停止を切り替えるためのトリガスイッチ15を有する。作業機1は、モータ収容部11とハンドル部12との境界部付近に、ユーザがモータ20の正転、逆転を切り替えるための正逆切替スイッチ16を有する。
【0016】
図2に示すように、作業機1は、電池パック装着部13内に第2制御基板50を有する。第2制御基板50は、
図21に示す演算部70等を搭載する。作業機1は、電池パック装着部13の前部上面に操作パネル19を有する。操作パネル19は、
図21に示す動作モードスイッチ60等を有する。
【0017】
作業機1は、モータ収容部11及びハンマケース18の内側に、モータ20、ファン40、減速機構48、回転打撃機構49を有する。
【0018】
モータ20は、インナーロータ型のブラシレスモータである。モータ20は、モータ軸21、回転子コア22、回転子マグネット23、固定子コア24、巻線25、後側インシュレータ27、前側インシュレータ28を有する。
【0019】
モータ軸21は、前後方向と平行な回転軸である。モータ軸21の後部は後側軸受35に支持される。モータ軸21の前部は前側軸受36に支持される。後側軸受35及び前側軸受36は、ハウジング10に保持される。
【0020】
回転子コア22は、モータ軸21の周囲に設けられ、モータ軸21と一体に回転する。回転子マグネット23は、回転子コア22に挿入保持される。回転子マグネット23は、回転子の周方向に例えば90度間隔で4個設けられる。回転子コア22及び回転子マグネット23は、モータ20の回転子を構成し、固定子コア24に対して回転する。
【0021】
回転子の中心軸は、モータ軸21の中心軸と同軸であり、以下「中心軸」と表記する。中心軸方向は、前後方向と平行である。回転子の周方向は、モータ軸21の周方向と同方向であり、以下「周方向」と表記する。回転子の径方向は、モータ軸21を中心とする放射方向であり、以下「径方向」と表記する。
【0022】
固定子コア24、巻線25、後側インシュレータ27、前側インシュレータ28は、モータ20の固定子を構成する。固定子コア24は、モータ収容部11に保持され、回転子コア22の径方向外側に位置する。巻線25は、固定子コイルであり、固定子コア24に設けられる。巻線25にはワニス処理が行われる。
【0023】
後側インシュレータ27は、固定子コア24の後部に設けられる。前側インシュレータ28は、固定子コア24の前部に設けられる。後側インシュレータ27及び前側インシュレータ28は、例えば樹脂成形体であり、固定子コア24と巻線25との間を絶縁する。前側インシュレータ28の前部、すなわち固定子の一方側の端部に、基板としての第1制御基板29が取り付けられ又は固定される。第1制御基板29は、前側軸受36よりも後方に位置する。モータ収容部11のうち第1制御基板29の側方となる部分ないし当該部分より前方に、
図1に示す吸気口14aが位置する。
【0024】
ファン40は、回転子コア22及び固定子コア24の後方かつ後側軸受35の前方においてモータ軸21に取り付けられ、モータ軸21と一体に回転し、モータ20(回転子、固定子)、第1制御基板29、及び電子部品30等を冷却する冷却風を発生する。ファン40は、遠心方向の気流を発生させる遠心ファンである。モータ収容部11のうちファン40の側方となる部分に
図1に示す排気口14bが位置する。ファン40、モータ20、第1制御基板29は、中心軸に沿って並び、中心軸方向から見て重なる配置である。
【0025】
モータ20の回転は、減速機構48により減速され、回転打撃機構49に伝達される。減速機構48及び回転打撃機構49の構成は周知なのでここでは説明を省略する。
【0026】
図3は、固定子コア24、後側インシュレータ27、前側インシュレータ28を互いに分離した状態の斜視図である。前側インシュレータ28は、第1制御基板29をネジ止めするためのネジボス部47を有する。固定子コア24は、円筒状のヨーク37(環状部)と、ティース38(突極部)と、を有する。
【0027】
ティース38は、ここでは一例として6個である。6個のティース38は、ヨーク37の周方向に等角度間隔で設けられ、それぞれヨーク37から径方向内側に突出する。ティース38の先端であるティーストップ39は、周方向に広がっている。各ティース38の先端面が回転子コア22の外周面と対向する。各ティース38は巻線スロットを成す。
【0028】
図4~
図6は、比較例における巻線25の巻き方を示す。
図4及び
図5では見やすさの観点から一つのティース38のみに巻線25を設けられた状態を示すが、実際には各ティース38に巻線25が設けられる。
【0029】
比較例では巻線25がティース38に乱巻きされる。比較例における巻線25の巻き方には、以下の問題点がある。
【0030】
・問題点1…巻線25が3次元的に交差するため、デッドスペースが多く、巻線25による空間占有率が低い。このため、巻線25が大型化し、モータ20の小型化を妨げる。
【0031】
・問題点2…巻線25が交差する場所は制御できないため、巻線25が周方向や中心軸方向にランダムに突出する。例えば
図6に示すように、巻線25を施すための図示しない巻線機の巻線ヘッドが通るスペース(
図6中の巻線ヘッドスペース)に巻線25が突出すると、巻線ヘッドが巻線25に干渉する形で巻線作業が行われることになり、品質が低下する。また、第1制御基板29は、巻線25が中心軸方向に突出することを加味して固定子コア24に対して中心軸方向に余裕を持って離間配置する必要があり、モータユニットとしての全長が長くなる。
【0032】
図7~
図9は、本実施形態における巻線25の巻き方を示す。
図7及び
図8では見やすさの観点から一つのティース38のみに巻線25を設けられた状態を示すが、実際には各ティース38に巻線25が設けられる。
【0033】
本実施形態では巻線25はティース38に整列巻きされる。具体的には、
図9に示すように、巻線25は、ティース38の外周面に対して俵状に積み上がるように整列巻きされる。
【0034】
図8に示すように巻線25は、ティース38の根元側部分に巻かれた第1部分41と、ティース38の先端側部分に巻かれた第2部分42と、を含む。巻線25は、第1部分41が第2部分42よりも中心軸方向に突出するように(出っ張るように)巻かれる。すなわち、後述の
図13に示すように、第1部分41は、第2部分42よりも、第1制御基板29の近くまで延在する。
【0035】
第1部分41は、第2部分42と比較して、ティース38の外周面に対する積層数が多い。巻線25は、ティース38の先端側から根元側に行くにつれて(第2部分42から第1部分41にかけて)、中心軸方向に漸次盛り上がるように、すなわちティース38の外周面に対する積層数(巻数)が多くなるように巻かれる。その結果、後述の
図13に示す断面において、巻線25は略三角形状ないし略台形状となる。巻線25は、第1部分41のうちティース38の根元側の端部は、中心軸方向に低くなるように巻かれる。
【0036】
本実施形態における巻線25の巻き方によれば、整列巻きのため巻線25が3次元的に交差することが抑制され、デッドスペースが少なく、巻線25による空間占有率が高い。このため、巻線25を小型化しやすく、モータ20の小型化に有利である。すなわち、比較例における上記問題点1を解決できる。
【0037】
また、巻線25が整列巻きされるため、巻線25が周方向や中心軸方向にランダムに突出することが抑制される。このため、
図9に示すように、巻線25を施すための図示しない巻線機の巻線ヘッドが通るスペース(
図9中の巻線ヘッドスペース)に巻線25が突出することが抑制され、巻線ヘッドが巻線25に干渉する形で巻線作業が行われるリスクが抑制され、巻線25の品質低下が抑制される。また、第1制御基板29を固定子コア24に寄せて配置でき、モータユニットとしての全長を短くできる。すなわち、比較例における上記問題点2を解決できる。
【0038】
図10は、各ティース38における巻線25のコイル集中部とコイル非集中部をハッチングで区別して示した模式図である。コイル集中部は、コイル非集中部と比較して巻線25が盛り上がった部分である。
図10に示すように、周方向において隣り合う巻線25の間には隙間26がある。
【0039】
図11は、第1制御基板29を後方から見た図であって、第1制御基板29の背面、すなわち固定子コア24と対向する第1面を示す図である。
図12は、第1制御基板29を前方から見た図であって、第1制御基板29の前面、すなわち第1面とは反対側に位置する第2面を示す図である。
図11において、巻線25を後方から第1制御基板29に投影した範囲をハッチングで併せて示している(
図11中の巻線存在範囲)。第1制御基板29の中央部にはモータ軸21を通すための貫通孔43が設けられる。
【0040】
図11に示すように、第1制御基板29の背面には、電子部品30が搭載され(設けられ)、また第2制御基板50との間の配線接続用のコネクタ34が設けられる。電子部品30は、第1電子部品31、第2電子部品32、第3電子部品33を含む。
【0041】
第1電子部品31は、第1制御基板29の背面のうち、
図10に示すコイル集中部を後方から投影した範囲、すなわちティース38の根元側部分に対向する位置に設けられる。第1電子部品31は、小型素子(低背素子)であり、例えば
図21に示す検出抵抗65(シャント抵抗)やコンデンサ68である。
【0042】
第1制御基板29のうち、
図11において第1電子部品31の範囲として示した部分の少なくとも一部を、
図14に示すように貫通孔44としてもよい。第1制御基板29のうち、
図11において第1電子部品31の範囲として示した部分において、第1電子部品31と貫通孔44が並んで存在してもよい。すなわち、第1制御基板29のうちティース38の根元側部分に対向する位置に貫通孔44を設けてもよい。
【0043】
第2電子部品32は、第1制御基板29の背面のうち、
図10に示すコイル非集中部を後方から投影した範囲、かつ第1電子部品31よりも径方向内側の範囲、すなわちティース38の先端側部分に対向する位置に設けられる。第2電子部品32は、中型素子(中背素子)であり、例えば
図21に示すホールIC63である。
【0044】
第3電子部品33は、第1制御基板29の背面のうち、
図10に示す隙間26を後方から投影した範囲(すなわち隙間26と対向する位置)、及び当該範囲を中心軸に向けて延長した範囲に跨がって設けられる。第3電子部品33は、大型素子(高背素子)であり、例えば
図21に示すインバータ回路64の各スイッチング素子である。
【0045】
図12に示すように、第1制御基板29の前面には、電子部品は搭載されず、コネクタも設けられない。
【0046】
【0047】
図13に示すように、第1制御基板29の表面から固定子コア24側への第2電子部品32の突出量(第2突出量)は、第1制御基板29の表面から固定子コア24側への第1電子部品31の突出量(第1突出量)よりも大きい。第1電子部品31は、ティース38の根元側部分と対向し、巻線25の第1部分41と対向する。第2電子部品32は、ティース38の先端側部分に対向し、巻線25の第2部分42と対向し、中心軸方向において第1部分41が存在する範囲に位置し又は延在する。
【0048】
図14は、
図10のA-A’断面図の第2例であって、巻線25の第1部分41に貫通孔44が対向する例を示す断面図である。貫通孔44は、ファン40の発生する冷却風の通路(通風孔)として機能する。
【0049】
図15は、
図10のB-B’断面図である。
図13と
図15との対比から明らかなように、第1制御基板29の表面から固定子コア24側への第3電子部品33の突出量(第3突出量)は、第1制御基板29の表面から固定子コア24側への第2電子部品32の突出量(第2突出量)よりも大きい。
【0050】
第3電子部品33は、第1制御基板29の背面において、周方向において隣り合う巻線25の間の隙間26(
図10)に対向する位置にある。第3電子部品33は、隙間26に位置し又は延在する。中心軸方向における巻線25の存在範囲(
図15中の巻線存在範囲)と第3電子部品33の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする。
【0051】
図16~
図18は、それぞれ
図13~
図15にファン40の発生する冷却風(以下「冷却風」)の流れを追加した断面図である。冷却風は、第1制御基板29の前方から貫通孔43を通過してモータユニットの内部に入り込む。
【0052】
図16の例では、冷却風が巻線25の後部表面と第2電子部品32の径方向内側部分を冷却する。
図17の例では、貫通孔44が通風孔として機能するため、冷却風が巻線25の前部表面や第2電子部品32の径方向外側部分も冷却する。第1制御基板29のうち
図11において第1電子部品31の範囲として示した部分に第1電子部品31と貫通孔44が並んで存在する場合、貫通孔44を通る冷却風により第1電子部品31の冷却効果も得られる。
【0053】
図18に示す断面には巻線25が存在しないため、第3電子部品33は大風量の冷却風で効果的に冷却される。
図17に示すように貫通孔44が存在する場合、貫通孔44を通る冷却風は第3電子部品33も冷却する。
【0054】
図19は、作業機1における要部寸法説明図である。
図19において、Z0は、固定子コア24の前面と第1制御基板29の背面との間の距離である。Z1は、ティース38の前面からの前方への巻線25の最大長である。Z2は、ティース38の前面から前方への巻線25の最小長である。
【0055】
前述のZ0、Z1、Z2を用いると、第1電子部品31の高さ(第1制御基板29の表面からの突出長)は、Z0-Z1より短い。また、第2電子部品32の高さ(第1制御基板29の表面からの突出長)は、Z0-Z1より長く、Z0-Z2より短い。また、第3電子部品33の高さ(第1制御基板29の表面からの突出長)は、Z0-Z2より長い。
【0056】
図20(A)は、比較例の電気機器における断面図であって、
図10のA-A’断面に対応する断面を示す図である。
図20(B)は、
図20(A)にファン40の発生する冷却風の流れを追加した断面図である。
【0057】
図20(A)に示すように、比較例では巻線25がティース38に乱巻きされるため、巻線25が中心軸方向にランダムに突出していても第1制御基板29やそれに設けられた電子部品46に接触しないように、第1制御基板29が固定子コア24に対して中心軸方向に余裕を持って離間配置される。このため、比較例におけるモータユニットの全長H2は、
図13~
図18に示す実施形態のモータユニットの全長H1よりも長くなる。
【0058】
図20(B)に示すように、比較例において冷却風は、巻線25の表面の一部と電子部品46の一部にのみ当たり、冷却効率は低い。また、巻線25内に空気が溜まり、巻線25の内周部の熱が表面に伝わりにくく、巻線25内に熱がこもりやすい。また、巻線25内に点在する空隙部は、ワニス処理により空気を内包したカプセルとなり断熱効果を有する。このため、巻線25の通電により発生するジュール熱(銅損)が、冷却風の当たる巻線25の外周部に速やかに伝熱できず、巻線25内に熱がこもりやすい。
【0059】
【0060】
電池パック17の出力端子間にコンデンサ68及びインバータ回路64が並列に設けられる。インバータ回路64は、三相ブリッジ接続された6つのスイッチング素子からなり、モータ20を駆動する駆動部(駆動回路)である。インバータ回路64を構成する各スイッチング素子は、第3電子部品33の一例である。検出抵抗65は、巻線25に流れる電流(以下「モータ電流」)の経路に設けられる。検出抵抗65及びコンデンサ68は、第1電子部品31の一例である。
【0061】
制御電源回路51は、電池パック17の出力電圧を演算部70等の電源電圧に変換し、演算部70等に供給する。電流検出回路52は、検出抵抗65の電圧によりモータ電流を検出し、演算部70に送信する。スイッチ操作検出回路53は、トリガスイッチ15の操作を検出し、演算部70に送信する。電圧検出回路55は、電池パック17の出力電圧を検出し、演算部70に送信する。図示は省略するが、電圧検出回路55等の各ブロックにもシャント抵抗が含まれ、当該シャント抵抗は第1電子部品31の一例である。
【0062】
温度検出回路67は、インバータ回路64の近傍に設けられたサーミスタ等の温度センサ66の出力信号によりインバータ回路64の温度を検出し、演算部70に送信する。温度センサ66は、第1電子部品31の一例である。
【0063】
制御信号回路56は、演算部70の制御に従い、インバータ回路64の各スイッチング素子のオンオフを制御する制御信号を出力する。回転位置検出回路57は、第1制御基板29に設けられた例えば3つのホールIC63(磁気センサ)の出力信号によりモータ20の回転位置(回転子の回転位置)を検出し、演算部70に送信する。ホールIC63は、回転位置検出素子であり、第2電子部品32の一例である。
【0064】
回転数検出回路58は、回転位置検出回路57の出力信号によりモータ20の回転数(以下「モータ回転数」)を検出し、演算部70に送信する。動作モード検出回路59は、ユーザによる動作モードスイッチ60の操作を検出し、演算部70に送信する。照明LED駆動回路61は、演算部70の制御に従い、照明LED62を駆動する。
【0065】
演算部70は、マイクロコントローラ等を含み、作業機1の全体の動作を制御する制御部である。演算部70は、第2制御基板50に搭載される。演算部70は、トリガスイッチ15がオンになると、インバータ回路64の制御を通じてモータ20を駆動する。演算部70は、動作モードスイッチ60の操作に応じた運転モード(動作モード)でモータ20を駆動する。
【0066】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0067】
(1)
図13に示すように、中心軸方向における巻線25の存在範囲と第2電子部品32の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする(重複する)。このため、中心軸方向における巻線25の存在範囲と第2電子部品32の存在範囲とがオーバーラップしない構成と比較して、モータユニットとしての全長を短くできる。よって、モータユニット及び作業機1の大型化を抑制できる。
【0068】
(2)
図13に示すように、中心軸及びティース38を含む断面において、巻線25は、ティース38の根元側部分に巻かれた第1部分41が、ティース38の先端側部分に巻かれた第2部分42よりも、第1制御基板29の近くまで延在する。すなわち、巻線25は、ティース38の先端側部分よりもティース38の根元側部分に多く巻かれる。そして、低背の第1電子部品31は、ティース38の根元側部分と対向し、巻線25の第1部分41と対向する。中背の第2電子部品32は、ティース38の先端側部分に対向し、巻線25の第2部分42と対向し、中心軸方向において第1部分41が存在する範囲に位置し又は延在する。このため、モータユニット内におけるデッドスペースが削減され効率的なレイアウトとなり、モータユニット及び作業機1の大型化を抑制できる。
【0069】
(3)
図15に示すように、中心軸方向における巻線25の存在範囲と第3電子部品33の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする(重複する)。このため、中心軸方向における巻線25の存在範囲と第3電子部品33の存在範囲とがオーバーラップしない構成と比較して、モータユニットとしての全長を短くできる。よって、モータユニット及び作業機1の大型化を抑制できる。
【0070】
(4) 周方向において隣り合う巻線25の間に存在する
図10に示す隙間26に第3電子部品33が位置し又は延在する。このため、巻線25との干渉を避けながら高背の第3電子部品33を第1制御基板29の背面(固定子コア24との対向面)に配置できる。よって、モータユニット内におけるデッドスペースが削減され効率的なレイアウトとなり、モータユニットの小型化に有利である。また、第1制御基板29の前面に第3電子部品33を配置する場合と比較してモータユニットの全長を短くでき、モータユニット及び作業機1の大型化を抑制できる。
【0071】
(5)
図14及び
図17に示すように、第1制御基板29のうちティース38の根元側部分に対向する位置に貫通孔44を設けてもよく、この場合、貫通孔44が通風孔として機能することで、第1電子部品31、第2電子部品32、第3電子部品33、巻線25に当たり冷却風の量を増やすことができ、冷却性が高められる。
【0072】
(6) 巻線25が整列巻きされるため、巻線25が3次元的に交差することが抑制される。よって、モータユニット内のデッドスペースが少なく、巻線25による空間占有率が高い。このため、巻線25を小型化しやすく、モータユニット及び作業機1の小型化に有利である。また、巻線25の内部に空気溜りができることが抑制され、巻線25の内部の熱が巻線25の表面に伝わりやすい。巻線25の表面には冷却風が当たるため、巻線25の冷却性が良い。
【0073】
(7) 巻線25が整列巻きされるため、巻線25が周方向や中心軸方向にランダムに突出することが抑制される。このため、
図9に示すように、巻線25を施すための図示しない巻線機の巻線ヘッドが通るスペース(
図9中の巻線ヘッドスペース)に巻線25が突出することが抑制され、巻線ヘッドが巻線25に干渉する形で巻線作業が行われるリスクが抑制され、巻線25の品質低下が抑制される。また、巻線25の前端位置(第1制御基板29側の端部の位置)が制御されるため、第1制御基板29を固定子コア24に寄せて配置でき、モータユニットとしての全長を短くできる。よって、モータユニット及び作業機1の大型化を抑制できる。
【0074】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0075】
モータ20における回転子の極数と固定子のスロット数の組合せは、実施形態の例(4極6スロット)に限定されず任意であり、例えば2極3スロットや4極3スロットでもよい。
【0076】
第1制御基板29の背面のレイアウトは、
図11に例示したような幾何学模様に限定されず、非幾何学模様であってもよい。第1制御基板29の背面に設けられる電子部品30の高さ(第1制御基板29の表面からの突出長)は、3種類に限定されず、1種類でも2種類でも4種類以上でもよい。
【0077】
電子部品30の一部は第1制御基板29の前面に設けられてもよい。この場合、低背の電子部品を第1制御基板29の前面に設けることで、モータユニットの全長が長くなることを抑制できる。
【0078】
第1制御基板29の背面と前面とを貫通する貫通孔44は、ティース38の根元側部分に対向する位置以外の任意の位置に設けられてもよい。
【0079】
固定子コア24に対する第1制御基板29とファン40の前後関係は逆にしてもよい。また、固定子コア24に対して前後方向の同じ側に第1制御基板29とファン40を設けてもよい。あるいは、ファン40は省略してもよい。
【0080】
巻線25は、整列巻きに限定されず、またティース38の先端側部分よりもティース38の根元側部分に多く巻かれることに限定されない。この場合でも、隙間26に第3電子部品33が位置し又は延在するという構成(中心軸方向における巻線25の存在範囲と第3電子部品33の存在範囲とが少なくとも部分的にオーバーラップする構成)による小型化のメリットは得られる。
【符号の説明】
【0081】
1…作業機、10…ハウジング、11…モータ収容部、12…ハンドル部、13…電池パック装着部、14a…吸気口、14b…排気口、15…トリガスイッチ、16…正逆切替スイッチ、17…電池パック、18…ハンマケース、19…操作パネル、20…モータ、21…モータ軸、22…回転子コア、23…回転子マグネット、24…固定子コア、25…巻線、26…隙間、27…後側インシュレータ、28…前側インシュレータ、29…第1制御基板、30…電子部品、31…第1電子部品、32…第2電子部品、33…第3電子部品、34…コネクタ、35…後側軸受、36…前側軸受、37…ヨーク(環状部)、38…ティース(突極部)、39…ティーストップ、40…ファン、41…第1部分、42…第2部分、43、44…貫通孔、45…中心軸線、46…電子部品、47…ネジボス部、48…減速機構、49…回転打撃機構、50…第2制御基板、51…制御電源回路、52…電流検出回路、53…スイッチ操作検出回路、55…電圧検出回路、56…制御信号回路、57…回転位置検出回路、58…回転数検出回路、59…動作モード検出回路、60…動作モードスイッチ、61…照明LED駆動回路、62…照明LED、63…ホールIC(磁気センサ)、64…インバータ回路、65…検出抵抗、66…温度センサ、67…温度検出回路、68…コンデンサ、70…演算部(制御部)。