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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121735
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240830BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023028993
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】石川 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】高野 信宏
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AC02
3C064AC04
3C064BA12
3C064BA36
3C064CA11
3C064CA53
3C064CA62
3C064CA74
3C064CA75
3C064CA80
3C064CA83
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB71
3C064DA02
3C064DA22
3C064DA23
3C064DA59
(57)【要約】
【課題】作業性の良い作業機を提供する。
【解決手段】作業機1は、複数種類の電源、すなわち交流200V電源16、交流100V電源17、及び電池パック7(直流108V電源)のいずれによっても駆動可能である。作業機1において、制御部12は、複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じるモータ14のトルク対回転数の特性の差を抑えるように、モータ14のステータコイルの結線方式を制御するとともに、モータ14への印加電圧の進角を制御する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の電源のいずれによっても駆動可能な作業機であって、
複数のコイルを有するモータと、
前記複数のコイルの結線方式を変更可能に構成された結線変更部と、
前記モータ及び前記結線変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じる前記モータのトルク対回転数の特性の差を抑えるように前記結線変更部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記特性の差を抑えるように前記モータに印加する電圧の進角を制御するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項3】
複数種類の電源のいずれによっても駆動可能な作業機であって、
複数のコイルを有するモータと、
前記複数のコイルの結線方式を変更可能に構成された結線変更部と、
前記モータ及び前記結線変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じる前記モータのトルク対回転数の特性の差を抑えるように前記モータに印加する電圧の進角を制御するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の作業機であって、
前記複数種類の電源は、低電圧電源と高電圧電源とを含み、
前記制御部は、前記低電圧電源によって駆動される場合は前記結線方式を高回転用の第1結線方式とし、前記高電圧電源によって駆動される場合は前記結線方式を低回転用の第2結線方式とするよう前記結線変更部を制御するよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項5】
請求項4に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記結線方式を前記第1結線方式として前記モータを駆動している状態で前記モータにかかる負荷が結線切替条件を満たすと、前記結線方式を前記第2結線方式に切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項6】
請求項4に記載の作業機であって、
前記第1結線方式はデルタ結線であり、前記第2結線方式はスター結線である、
ことを特徴とする作業機。
【請求項7】
請求項2又は3に記載の作業機であって、
前記複数種類の電源は、低電圧電源と高電圧電源とを含み、
前記制御部は、前記低電圧電源によって駆動される場合は前記進角を第1進角とし、前記高電圧電源によって駆動される場合は前記進角を前記第1進角より小さい第2進角とするよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項8】
請求項7に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記第1進角として前記モータを駆動している状態で前記モータにかかる負荷が進角切替条件を満たすと、前記進角を前記第1進角より小さく且つ前記第2進角より大きい第3進角に切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項9】
請求項2に記載の作業機であって、
前記複数種類の電源は、低電圧電源と高電圧電源とを含み、
前記制御部は、前記低電圧電源によって駆動される場合は前記結線方式を高回転用の第1結線方式とし、前記高電圧電源によって駆動される場合は前記結線方式を低回転用の第2結線方式とするよう前記結線変更部を制御するよう構成され、かつ、前記低電圧電源によって駆動される場合は前記進角を第1進角とし、前記高電圧電源によって駆動される場合は前記進角を前記第1進角より小さい第2進角とするよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項10】
請求項9に記載の作業機であって、
前記制御部は、前記結線方式を前記第1結線方式として前記モータを駆動している状態で前記モータにかかる負荷が結線切替条件を満たすと、前記結線方式を前記第2結線方式に切り替えるよう構成され、かつ、前記第1進角として前記モータを駆動している状態で前記モータにかかる負荷が進角切替条件を満たすと、前記進角を前記第1進角より小さく且つ前記第2進角より大きい第3進角に切り替えるよう構成される、
ことを特徴とする作業機。
【請求項11】
請求項4に記載の作業機であって、
前記低電圧電源は、直流電源と、第1交流電源と、を含み、
前記高電圧電源は、前記第1交流電源より電圧が高い第2交流電源を含む、
ことを特徴とする作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電池パックと交流電源のいずれでも駆動可能な電動工具を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/079725号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数種類の電源のいずれによっても駆動可能な作業機の場合、いずれの電源によって駆動されるかによりモータのトルク対回転数の特性が大きく異なると、作業性が悪いという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、作業性の良い作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、作業機である。この作業機は、
複数種類の電源のいずれによっても駆動可能な作業機であって、
複数のコイルを有するモータと、
前記複数のコイルの結線方式を変更可能に構成された結線変更部と、
前記モータ及び前記結線変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じる前記モータのトルク対回転数の特性の差を抑えるように前記結線変更部を制御するよう構成される、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の別の態様は、作業機である。この作業機は、
複数種類の電源のいずれによっても駆動可能な作業機であって、
複数のコイルを有するモータと、
前記複数のコイルの結線方式を変更可能に構成された結線変更部と、
前記モータ及び前記結線変更部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じる前記モータのトルク対回転数の特性の差を抑えるように前記モータに印加する電圧の進角を制御するよう構成される、ことを特徴とする。
【0008】
本発明は「電動作業機」や「電動工具」、「電気機器」等と表現されてもよく、そのように表現されたものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業性の良い作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る作業機1の斜視図。
図2】作業機1の電源接続部4に交流入力用のアダプタ5を接続した状態の斜視図。
図3】作業機1の電源接続部4に電池パック7を接続した状態の斜視図。
図4】アダプタ5の平面図。
図5】電池パック7の平面図。
図6】(A)は、作業機1の回路ブロック図。(B)は、図6(A)の電源8の一例である交流200V電源の回路ブロック図。(C)は、図6(A)の電源8の一例である交流100V電源の回路ブロック図。(D)は、図6(A)の電源8の一例である電池パック7の回路ブロック図。
図7図6(A)に示すモータ14のステータコイルをデルタ結線とした場合の結線説明図。
図8図6(A)に示すモータ14のステータコイルをスター結線(Y結線)とした場合の結線説明図。
図9】作業機1の制御フローチャート。
図10】作業機1の電源8の電圧、モータ14のステータコイルの結線方式、及びモータ14への印加電圧の進角の組合せに応じたモータ14のトルク対回転数の特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態は、作業機1に関する。図1に示すように、作業機1は、ハウジング2、トリガスイッチ3、電源接続部4を有する。ハウジング2は、図6(A)に示すモータ14及びその駆動制御に必要な回路を収容する。トリガスイッチ3は、ユーザがモータ14の駆動、停止を切り替える操作部である。図2及び図3に示すように、電源接続部4には、交流入力用のアダプタ5及び電池パック7を択一的に接続できる。
【0012】
アダプタ5は、電池パック7と同様に電源接続部4に接続可能な形状である。図2及び図4に示すように、アダプタ5からは電源コード6が延びる。アダプタ5及び電源コード6は、互いに一体であってもよいし、互いに別体であって着脱可能に構成されてもよい。電源コード6は、交流200V電源又は交流100V電源に接続される。
【0013】
交流200V電源と交流100V電源ではコンセント形状が異なるため、交流200V電源用と交流100V電源用とで電源コード6のプラグ形状も異なる(図示省略)。アダプタ5及び電源コード6が一体の場合、アダプタ5及び電源コード6は、交流200V電源用と交流100V電源用とで別々に必要となる。アダプタ5及び電源コード6が別体の場合、アダプタ5は交流200V電源用と交流100V電源用とで共通でよく、電源コード6のみ交流200V電源用と交流100V電源用とで別々にあればよい。
【0014】
図4に示すように、アダプタ5の端子は、一対の交流出力端子を含む。図5に示すように、電池パック7の端子は、充電用端子(C+端子)、正極端子(+端子)、T端子、V端子、LS端子、負極端子(-端子)、LD端子を含む。アダプタ5の一対の交流出力端子は、電池パック7の正極端子及び負極端子と対応する位置にある。
【0015】
図6(A)は、作業機1の回路ブロック図である。図6(A)の電源8は、図6(B)に示す交流200V電源16の場合と、図6(C)に示す交流100V電源17の場合と、図6(D)に示す電池パック7(直流108V電源)の場合と、がある。作業機1は、複数種類の電源、すなわち交流200V電源16、交流100V電源17、及び電池パック7(直流108V電源)のいずれによっても駆動可能である。交流200V電源16は、高電圧電源及び第2交流電源の例示である。交流100V電源17及び電池パック7(直流108V電源)は、低電圧電源の例示である。交流100V電源17は、第1交流電源の例示である。
【0016】
図6(B)に示す交流200V電源16の場合は、図1に示す作業機1の電源接続部4に図2に示すようにアダプタ5が接続され、かつアダプタ5から延びる電源コード6が交流200V電源16に接続された場合に対応する。図6(C)に示す交流100V電源17の場合は、図1に示す作業機1の電源接続部4に図2に示すようにアダプタ5が接続され、かつアダプタ5から延びる電源コード6が交流100V電源17に接続された場合に対応する。図6(D)に示す電池パック7(直流108V電源)の場合は、図1に示す作業機1の電源接続部4に図3に示すように電池パック7が接続された場合に対応する。
【0017】
図6(A),(D)に示す電源8のT、V、LS、LD端子は、交流200V電源16及び交流100V電源17には存在しないが電池パック7には存在する端子群(信号端子群)であって作業機1に接続される端子群(図5に示す電池パック7のT端子、V端子、LS端子、LD端子)を簡易的に1つにまとめて示したものである。
【0018】
図6(D)に示すように、電池パック7は、例えば3.6Vの二次電池セルを30個直列に接続したセルユニット18と、制御部としてのマイコン19と、を含む。セルユニット18の出力電圧(電池パック7の出力電圧)は、公称108Vであって残量によって変化し、満充電状態で最大126V、過放電状態となる直前で最小75Vとなる。マイコン19は、T、V、LS、LD端子を介して作業機1の制御部12と通信可能である。
【0019】
図6(A)に示すように、作業機1は、ダイオードD1~D4からなるダイオードブリッジ20(全波整流回路)、コンデンサC1、C2、ダイオードD5、電圧検出回路9(電圧検出部)、制御回路用DC/DCコンバータ10(制御系電源部)、電流検出回路11(電流検出部)、制御部12、抵抗R、インバータ13、モータ14、位置センサ15を備える。
【0020】
ダイオードブリッジ20は、作業機1の+端子、-端子間に入力される交流を直流に変換(整流)して出力する。作業機1の+端子、-端子間に直流が入力される場合、ダイオードブリッジ20は当該直流をそのまま出力する。コンデンサC2は、平滑コンデンサであって、ダイオードブリッジ20の出力端子間に設けられる。
【0021】
電圧検出回路9は、ダイオードブリッジ20の出力電圧を検出し、制御部12に送信する。制御回路用DC/DCコンバータ10は、ダイオードブリッジ20の出力電圧から制御部12等の電源電圧(例えば直流5V)及びインバータ駆動用電圧(制御部12がインバータ13を駆動するために必要な電圧であって例えば直流15V)を生成する。
【0022】
ダイオードD5は、逆流防止用であって、ダイオードブリッジ20の正側の出力端子と制御回路用DC/DCコンバータ10の入力端子との間に設けられる。コンデンサC1は、平滑用であって、制御回路用DC/DCコンバータ10の入力端子とダイオードブリッジ20の負側の出力端子との間に設けられる。
【0023】
抵抗Rは、モータ14に流れる電流(以下「モータ電流」)の経路に設けられる。電流検出回路11は、抵抗Rの両端の電圧によりモータ電流を検出し、制御部12に送信する。
【0024】
制御部12は、MCU(Micro Controller Unit)を含み、作業機1の全体の動作を制御する。制御部12は、モータ電流により、モータ14に係る負荷(以下「モータ負荷」)を検出できる。制御部12は、モータ電流が過電流閾値を超えると(モータ負荷が過負荷閾値を超えると)モータ14を停止する過電流保護機能(過負荷保護機能)を有する。
【0025】
制御部12は、モータ14への印加電圧の進角(以下「進角」)を切り替える進角切替制御を実行可能である。進角には、最高効率となる進角(以下「最高効率進角」)と、無負荷状態におけるモータ14の回転数(以下「無負荷回転数」)が最高となる進角(以下「最高回転数進角」)と、が存在する。最高効率進角から進角を高めると無負荷回転数は上がるが、電気進角を最高回転数進角まで高めた後は無負荷回転数は頭打ちとなる。制御部12は、後述のように電源8の種類に応じて進角を最高効率進角から最高回転数進角までの範囲内で切り替える。
【0026】
インバータ13は、例えば6個のFET等のスイッチング素子を三相ブリッジ接続した回路である。インバータ13を構成する各スイッチング素子は、制御部12によってオンオフが制御(PWM制御)される。すなわち、インバータ13は、制御部12の制御に従い、ダイオードブリッジ20及びコンデンサC2で整流、平滑された直流をモータ14の駆動用の交流に変換し、モータ14に印加する。モータ14は、インバータ13の出力電圧によって駆動する。位置センサ15は、例えば3個のホールIC等の磁気センサであり、モータ14の回転位置を検出し、制御部12に送信する。制御部12は、位置センサ15からの信号により、モータ14の回転数を検出できる。
【0027】
モータ14は、三相のステータコイルの結線方式(以下「結線方式」)を切り替える巻線切替機能付きモータである。図7及び図8に示すように、モータ14は、U相ステータコイルU1、U2、V相ステータコイルV1、V2、W相ステータコイルW1、W2を含む。作業機1は、結線方式を変更可能に構成された結線変更部としてのスイッチSW1~SW5を含む。スイッチSW1~SW5は、例えばリレー素子あるいは半導体スイッチング素子であり、制御部12によってオンオフが制御される。
【0028】
図7は、スイッチSW1~SW3をオン、スイッチSW4~SW5をオフとした状態であって、モータ14のステータコイルがデルタ結線(Δ結線)の状態を示す。図8は、スイッチSW1~SW3をオフ、スイッチSW4~SW5をオンとした状態であって、モータ14のステータコイルがスター結線(Y結線)の状態を示す。デルタ結線は、高回転用の第1結線方式の例示である。スター結線は、低回転用の第2結線方式の例示である。
【0029】
図9は、作業機1の制御フローチャートである。電源接続部4に交流電圧又は直流電圧が入力された状態でトリガスイッチ3がオンされると(S1)、制御回路用DC/DCコンバータ10が起動し、制御部12が起動する(S3)。
【0030】
制御部12は、電源8の接続検知(電源8の判別)を行う(S5)。具体的には、制御部12は、ダイオードブリッジ20の出力電圧を検出して電源8の電圧を検出するとともに、電源接続部4に電池パック7が接続されている場合は電池パック7との通信により電池パック7の情報を取得する。
【0031】
制御部12は、電源8が交流200V電源16の場合(S5の「AC200V」)、結線方式をスター結線(Y結線)とするようスイッチSW1~SW5を制御し(S7)、進角を小(第2進角)に設定し(S9)、モータ14を駆動する(S11)。
【0032】
制御部12は、電源8が交流100V電源17又は電池パック7の場合(S5の「AC100V or バッテリ」)、結線方式をデルタ結線とするようスイッチSW1~SW5を制御し(S17)、進角を大(第1進角)に設定し(S19)、モータ14を駆動する(S21)。
【0033】
制御部12は、結線方式をデルタ結線とし進角を大に設定してモータ14を駆動している状態でモータ電流が第1電流閾値を超えると(モータ負荷が第1負荷閾値を超えると)(S23のYes)、結線方式をスター結線(Y結線)に切り替えるようスイッチSW1~SW5を制御する(S25)とともに、進角を中(第3進角)に切り替え(S27)、モータ14を駆動する。モータ電流が第1電流閾値を超えること(モータ負荷が第1負荷閾値を超えること)は、結線切替条件を満たすこと及び進角切替条件を満たすことに対応する。
【0034】
図示は省略するが、制御部12は、結線方式をスター結線(Y結線)とし進角を中に設定してモータ14を駆動している状態でモータ電流が第1電流閾値より小さい第2電流閾値以下になると(モータ負荷が第1負荷閾値より小さい第2負荷閾値以下になると)、結線方式をデルタ結線に切り替える(戻す)ようスイッチSW1~SW5を制御するとともに、進角を大に切り替え(戻し)、モータ14を駆動してもよい。
【0035】
制御部12は、いずれの処理の途中においても、トリガスイッチ3がオフになるとモータ14を停止する(図示省略)。
【0036】
図10は、作業機1の電源8の電圧、結線方式、及び進角の組合せに応じたモータ14のトルク対回転数の特性を示すグラフである。
【0037】
図10の特性Aは、電源8が交流200V電源16であり、全負荷範囲で結線方式をスター結線(Y結線)とし且つ進角を小(第2進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0038】
図10の特性Bは、電源8が交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)であり、低負荷範囲では結線方式をデルタ結線とし且つ進角を大(第1進角)とし、高負荷範囲では結線方式をスター結線(Y結線)とし且つ進角を中(第3進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0039】
図10の特性Cは、電源8が交流200V電源16であり、全負荷範囲で結線方式をデルタ結線とし且つ進角を大(第1進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0040】
図10の特性Dは、電源8が交流200V電源16であり、全負荷範囲で結線方式をスター結線(Y結線)とし且つ進角を大(第1進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0041】
図10の特性Eは、電源8が交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)であり、全負荷範囲で結線方式をデルタ結線とし且つ進角を小(第2進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0042】
図10の特性Fは、電源8が交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)であり、全負荷範囲で結線方式をスター結線(Y結線)とし且つ進角を小(第2進角)とした場合における、モータ14のトルク対回転数の特性である。
【0043】
図10の特性A~Fの各々において、特性の終了点は、過電流保護が作動してモータ14が停止する点であり、最大トルクを示す点である。
【0044】
特性Aと特性Dとの比較から明らかなように、結線方式が同じ場合、進角が大きくなると、モータ14のトルク対回転数の特性が全体的に上方にシフトし、最大トルクは低下する。
【0045】
特性Cと特性Dの比較、及び特性Eと特性Fとの比較から明らかなように、進角が同じであれば、結線方式がデルタ結線の場合のモータ14のトルク対回転数の特性は、結線方式がスター結線(Y結線)の場合のモータ14のトルク対回転数の特性と比較して、全体的に上方にあり、最大トルクは低い。
【0046】
前述の図9の制御は、図10に示す特性A及び特性Bを選択する制御であり、電源8が交流200V電源16である場合と、電源8が交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)である場合との間で、モータ14のトルク対回転数の特性の差が大きくならないようにする制御である。
【0047】
本実施形態は、下記の作用効果を奏する。
【0048】
(1) 制御部12は、複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じるモータ14のトルク対回転数の特性の差を抑えるように、スイッチSW1~SW5を制御(結線方式を制御)する。このため、複数種類の電源のいずれによって駆動されるかに関わらず結線方式を変えない場合と比較して、電源の種類によるモータ14のトルク対回転数の特性の差が抑制され、作業性が良い。
【0049】
(2) 制御部12は、複数種類の電源のいずれによって駆動されるかにより生じるモータ14のトルク対回転数の特性の差を抑えるように、進角を制御する。このため、複数種類の電源のいずれによって駆動されるかに関わらず進角を変えない場合と比較して、電源8の種類によるモータ14のトルク対回転数の特性の差が抑制され、作業性が良い。
【0050】
(3) 制御部12は、電源8が低電圧電源、すなわち交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)である場合は、少なくとも低負荷範囲で結線方式を高回転用であるデルタ結線とする。一方、制御部12は、電源8が高電圧電源、すなわち交流200V電源16である場合は、結線方式を低回転用であるスター結線(Y結線)とする。このため、電源8の種類によらず結線方式がデルタ結線又はスター結線(Y結線)で共通の場合と比較して、少なくとも低負荷範囲において電源8の種類によるモータ14のトルク対回転数の特性の差が抑制され、作業性が良い。具体的には、例えば、図10の特性Aと特性Fの差を、図10の特性Aと特性Eの差まで縮めることができる。
【0051】
(4) 制御部12は、結線方式をデルタ結線としてモータ14を駆動している状態でモータ負荷が第1負荷閾値を超えると(結線切替条件を満たすと)、結線方式をスター結線(Y結線)に切り替える。このため、モータ負荷が第1負荷閾値を超えた高負荷範囲でも結線方式をデルタ結線に維持する場合と比較して、最大トルクを高めてねばりを出すことができ、作業性が良い。
【0052】
(5) 制御部12は、電源8が低電圧電源、すなわち交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)である場合は、少なくとも低負荷範囲で進角を大(第1進角)とする。一方、制御部12は、電源8が高電圧電源、すなわち交流200V電源16である場合は、進角を小(第2進角)とする。このため、電源8の種類によらず進角が大(第1進角)又は小(第2進角)で共通の場合と比較して、少なくとも低負荷範囲において電源8の種類によるモータ14のトルク対回転数の特性の差が抑制され、作業性が良い。具体的には、例えば、低負荷範囲において、図10の特性Aと特性Eの差を、図10の特性Aと特性Bの差まで縮めることができる。
【0053】
(6) 制御部12は、進角を大(第1進角)としてモータ14を駆動している状態でモータ負荷が第1負荷閾値を超えると(進角切替条件を満たすと)、進角を中(第3進角)に切り替える。このため、モータ負荷が第1負荷閾値を超えた高負荷範囲でも進角を大(第1進角)に維持する場合と比較して、最大トルクを高めてねばりを出すことができ、作業性が良い。また、モータ負荷が第1負荷閾値を超えた高負荷範囲で進角を小(第2進角)にする場合と比較して、モータ14のトルク対回転数の特性が上方に来るため、電源8が高電圧電源の場合のモータ14のトルク対回転数の特性との差が抑制され、作業性が良い。
【0054】
(7) 作業機1は、制御部12の制御により結線方式を切り替える構成である。このため、電源8の種類により結線方式が機械的に切り替わる構成と比較して、電源接続部4やアダプタ5の端子数を削減でき、小型化に有利である。また、作業途中での結線方式を切り替えられるため、柔軟な制御が可能である。
【0055】
(8) 作業機1は、結線方式や進角の切替により、電源8の種類(電圧差)によるモータ14のトルク対回転数特性の差を抑制する構成である。このため、インダクタ等の大型部品が必要な電圧調整回路による電圧のレベル変換でモータ14のトルク対回転数特性の差を抑制する構成と比較して、小型化と軽量化に有利である。また、電源8の種類ごとに巻線を用意する構成と比較して、巻線の重量とスペースの増大を抑制でき、小型化と軽量化に有利である。
【0056】
以上、実施形態を例に本発明を説明したが、本発明は実施形態に限定されない。実施形態で具体的に説明した各事項には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能である。
【0057】
電源8が低電圧電源、すなわち交流100V電源17又は電池パック7(直流108V電源)である場合における、結線方式を切り替える条件(結線切替条件)と、進角を切り替える条件(進角切替条件)は、互いに共通でなくてもよい。例えば、モータ負荷の上昇に応じて、まず結線方式と進角の一方を切り替え、更にモータ負荷が上昇すると結線方式と進角の他方を切り替えてもよい。また、進角は、モータ負荷の上昇に応じて3段階以上に分けて切り替えてもよい。
【0058】
電源8が高電圧電源、すなわち交流200V電源16である場合にも、モータ負荷に応じて進角を切り替え、電源8の種類によるモータ14のトルク対回転数特性の差を抑えるようにしてもよい。また、インバータ13のPWM制御のデューティを切り替えることにより、電源8の種類によるモータ14のトルク対回転数特性の差を抑えるようにしてもよい。
【0059】
電源接続部4に接続可能な電源8の種類は、3種類に限定されず、2種類又は4種類以上であってもよい。実施形態で具体的な数値として例示した各種電圧等は、発明の範囲を何ら限定するものではなく、要求される仕様に合わせて任意に変更できる。
【符号の説明】
【0060】
1…作業機、2…ハウジング、3…トリガスイッチ(操作部)、4…電源接続部、5…アダプタ、6…電源コード、7…電池パック(低電圧電源)、8…電源、9…電圧検出回路(電圧検出部)、10…制御回路用DC/DCコンバータ(制御系電源部)、11…電流検出回路(電流検出部)、12…制御部(MCU)、13…インバータ、14…モータ、15…位置センサ、16…交流200V電源(高電圧電源)、17…交流100V電源(低電圧電源)、18…セルユニット、19…マイコン(制御部)、20…ダイオードブリッジ(全波整流回路)。
図1
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図10