(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121744
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】灰汁抑制剤
(51)【国際特許分類】
A23L 29/00 20160101AFI20240830BHJP
A23L 5/20 20160101ALI20240830BHJP
A23L 13/40 20230101ALI20240830BHJP
A23L 13/30 20160101ALI20240830BHJP
A23L 17/20 20160101ALI20240830BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240830BHJP
【FI】
A23L29/00
A23L5/20
A23L13/40
A23L13/30
A23L17/20
A23L27/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023041393
(22)【出願日】2023-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000210067
【氏名又は名称】池田食研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】上田 隼也
(72)【発明者】
【氏名】徳屋 望美
【テーマコード(参考)】
4B035
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE03
4B035LE20
4B035LG17
4B035LG37
4B035LG42
4B035LK19
4B035LP06
4B035LP22
4B042AC03
4B042AC10
4B042AD39
4B042AE03
4B042AE05
4B042AE08
4B042AE10
4B042AG02
4B042AG03
4B042AG35
4B042AH01
4B042AK07
4B042AK11
4B042AP03
4B042AP30
4B047LB03
4B047LE06
4B047LF04
4B047LG33
4B047LG37
4B047LP01
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】 本発明は、灰汁を抑制することができる灰汁抑制剤、該灰汁抑制剤を含有させて灰汁を抑える灰汁抑制方法、並びに風味が改善された抽出エキス及びその製造方法を提供するものである。
【解決手段】 甘草根抽出物が灰汁抑制効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘草根抽出物を有効成分とする、灰汁の灰汁抑制剤。
【請求項2】
グリチルリチン酸が5.0%未満の甘草根抽出物である、請求項1に記載の灰汁抑制剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の灰汁抑制剤存在下で、食材を液体中で加熱することを特徴とする、灰汁抑制方法。
【請求項4】
食材100重量%に対して、甘草根由来の固形分として0.001~10重量%添加することを特徴とする、請求項3記載の灰汁抑制方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の灰汁抑制剤存在下で、動物性食材を液体中で加熱して得られる、抽出エキス。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の灰汁抑制剤存在下で、動物性食材を液体中で加熱して抽出エキスを抽出することを特徴とする、抽出エキスの製造方法。
【請求項7】
食材100重量%に対して、甘草根由来の固形分として0.001~10重量%添加することを特徴とする、請求項6記載の抽出エキスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灰汁抑制剤、灰汁抑制方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
肉、魚等の食材からエキスを抽出する際などに、灰汁が発生し、灰汁を除去する手間がかかったり、灰汁を除去しない場合は、抽出液の風味が悪くなってしまったりすることが知られている。灰汁は、物理的に除去する他、例えば、アラビアガム、プルラン、大豆多糖類及びウェランガムからなる群より選択される一種以上を含有する、食材の灰汁発生及び/又は成長抑制剤(特許文献1)を使用することで灰汁を抑えることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、灰汁を抑制することができる灰汁抑制剤、該灰汁抑制剤を含有させて灰汁を抑える灰汁抑制方法、並びに風味が改善された抽出エキス及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、甘草根抽出物が灰汁抑制効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]の態様に関する。
[1]甘草根抽出物を有効成分とする、灰汁抑制剤。
[2]グリチルリチン酸が5.0%未満の甘草根抽出物である、[1]記載の灰汁抑制剤。
[3][1]又は[2]記載の灰汁抑制剤存在下で、食材を液体中で加熱することを特徴とする、灰汁抑制方法。
[4]食材100重量%に対して、甘草根由来の固形分として0.001~10重量%添加することを特徴とする、[3]記載の灰汁抑制方法。
[5][1]又は[2]記載の灰汁抑制剤存在下で、動物性食材を液体中で加熱して得られる、抽出エキス。
[6][1]又は[2]記載の灰汁抑制剤存在下で、動物性食材を液体中で加熱して抽出エキスを抽出することを特徴とする、抽出エキスの製造方法。
[7]食材100重量%に対して、甘草根由来の固形分として0.001~10重量%添加することを特徴とする、[6]記載の抽出エキスの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、灰汁を抑制することができる灰汁抑制剤を提供することができるようになり、該灰汁抑制剤を含有させることで、灰汁を抑制できるようになった。また、灰汁を抑制することで風味が改善された抽出エキスの提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1において、甘草根抽出物を牛肉に対して0~0.5重量%添加して牛肉をボイルし、牛肉を除去した後の液部をビーカーに移し、上から撮影した写真を示す。
【
図2】実施例2において、甘草根抽出物を豚肉に対して0又は0.5重量%添加して豚肉をボイルし、ボイル後の鍋を上から撮影した写真を示す。
【
図3】実施例3において、甘草根抽出物を牛スジ肉に対して0又は0.5重量%添加して牛スジ肉をボイルしている際に鍋を上から撮影した写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の灰汁抑制剤は、甘草根抽出物を有効成分として含有する。本発明で使用する甘草根抽出物は、甘草根から得られる抽出物であって、灰汁抑制効果を有する抽出物であればよいが、グリチルリチン酸が5.0%未満の甘草根抽出物であるのが好ましく、抽出法としては、二酸化炭素等による超臨界抽出法、水蒸気蒸留法、水、アルコール、それらの混液等による溶媒抽出法等が例示でき、不織布、メッシュ等を用いたろ過、遠心分離等により、固液分離して液部を回収できる。さらに濃縮及び/又は乾燥した、濃縮品や乾燥品が好ましく、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等により乾燥して、粉末化でき、デキストリン、でん粉等の一般的な賦形剤を使用して粉末化してもよい。市販の甘草根抽出物が使用でき、リコスパイスB又はリコスパイスT(何れも商品名、池田糖化工業株式会社製)が例示できる。
【0010】
本発明の灰汁抑制剤は、甘草根抽出物と分散剤との混合物、又は乳化剤との乳化物としてもよく、該混合物又は乳化物は、例えば分散剤又は乳化剤を水に溶解した分散剤又は乳化剤溶解液に甘草根抽出物を分散又は乳化させて得られ、減圧濃縮、膜濃縮、ドラムドライ、エアードライ、噴霧乾燥、真空乾燥若しくは凍結乾燥、又はそれらの組み合わせ等により、濃縮品や乾燥品としてもよい。
【0011】
分散又は乳化処理は、水溶性高分子等を含有させて、一般的な方法で行うことができ、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、超音波乳化機、ホモミキサー、ホモディスパー等の装置を使用した処理を例示でき、二種類以上の装置を組み合わせてもよい。また、加熱するのが好ましく、例えば40~200℃、50~150℃等の加熱が例示でき、好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは95℃以下である。
【0012】
本発明の灰汁抑制剤存在下で、灰汁の原因となる食材を液体中で加熱することで、灰汁を抑制することができ、例えば、魚、貝、エビ、タコ、イカ等の魚介類、牛肉、豚肉、鶏肉等の獣肉類、牛骨、豚骨、鶏ガラ等の畜骨等の動物性食材、大豆等の豆類等、灰汁の原因となるタンパク質性の食材を液中で加熱する際や豆乳製造時に使用することで、発生する灰汁を抑制できる。例えば、動物性食材からエキスを抽出する際に添加することで、灰汁を抑え、悪影響を及ぼしていた灰汁の風味を抑制できることで、主に動物性食材から抽出した抽出エキスの風味を改善することができ、風味が改善された抽出エキスを得ることができる。抽出エキスは、加熱後に固液分離することで得ることができる。また、出汁液、鍋用調味料等の調味液に添加することで、動物性食材を煮る際や動物性食材を含む鍋料理喫食時に灰汁の発生を抑え、灰汁を除去する手間を減らし、また、鍋喫食時の見栄えを改善することができ、さらに、スープ側の風味を改善することもできる。灰汁抑制剤の添加により灰汁が抑制されれば特に限定されないが、灰汁の原因となる食材100重量%に対して、甘草根由来の固形分として0.001~10重量%添加するのが好ましく、0.005~5重量%添加するのがより好ましく、0.01~2重量%添加するのがさらに好ましく、0.02~1重量%添加するのが特に好ましい。また、灰汁の原因となる食材の液体中での加熱時の液体容量は特に限定されないが、例えば該食材1重量部に対して、1~100重量部、2~50重量部が例示できる。
【実施例0013】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。