(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121749
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】表示装置および個室構造
(51)【国際特許分類】
E05B 41/00 20060101AFI20240830BHJP
A47K 17/00 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
E05B41/00 D
A47K17/00
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023053462
(22)【出願日】2023-03-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2023028496
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 販売日:令和04年11月28日 販売先:株式会社ジャクエツ
(71)【出願人】
【識別番号】502354834
【氏名又は名称】有限会社衣川木工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】衣川 正信
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037EA00
(57)【要約】
【課題】個室の使用状況を外部から確認することができる表示装置および個室構造を提供すること。
【解決手段】使用者は、個室S内に入ると、縦姿勢とされている表示装置100を回転させ、長手方向一端側をストッパ6に載置する。内部の鉄球が長手方向一端側に移動され、表示装置100全体としての重心位置が長手方向一端側に偏心され、横姿勢に維持される。その結果、表示装置100の長手方向一端側(先端部分)が扉3の戸先3aから突出され、個室Sが使用中であることを外部から確認できる。一方、用を足し終えた使用者が外へ出るために扉3を開けると、ストッパ6による下方からの支持が無くなると共に、鉄球による重心位置の偏心により表示装置100が回転され縦姿勢に維持される。その結果、表示装置100の長手方向一端側(先端部分)が扉3の戸先3aから突出されなくなり、個室Sが不使用であることを外部から確認できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠の正面からストッパが突出され、扉が閉じた状態では前記固定枠と前記扉の戸先側との対向間に前記ストッパの高さ分の隙間が形成される個室構造に配設される表示装置であって、
長尺形状に形成され、内部に通路を有すると共に、長手方向略中央が前記扉の背面に回転可能に支持される本体と、
前記本体の通路に収納され、前記本体の通路を移動可能に形成される移動手段と、を備え、
前記通路は、前記本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて延設される一側通路と、前記本体の長手方向中央側から長手方向他端側へ向けて延設される他側通路と、を備え、
前記本体の長手方向が水平方向と略平行となる回転位置に前記本体が配置された状態では、前記一側通路が前記本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて下降傾斜され、前記他側通路が前記本体の長手方向他端側から長手方向中央側へ向けて下降傾斜されることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記移動手段の形状が球体形状とされることを特徴とする請求項1記載の表示装置。
【請求項3】
複数個の前記移動手段が前記一側通路および前記他側通路のそれぞれに収納されることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項4】
前記本体の長手方向一端側を始端とする前記一側通路の終端が前記本体の回転中心を越える位置に設定されると共に、前記本体の長手方向他端側を始端とする前記他側通路の終端が前記本体の回転中心を越える位置に設定されることを特徴とする請求項2記載の表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の表示装置を備えた個室構造であって、
出入口を有する個室を区画する固定枠と、
その固定枠の出入口を開閉する扉と、
その扉を前記固定枠に支持すると共に前記扉を開けた状態から閉じた状態に復帰させるヒンジ機構と、を備え、
前記固定枠の正面からストッパが突出され、前記扉が閉じた状態では前記固定枠と前記扉の戸先側との対向間に前記ストッパの高さ分の隙間が形成され、
前記本体の長手方向が水平方向と略平行となる回転位置に前記本体が配置された状態では、前記本体の長手方向一端側または長手方向他端側が前記ストッパに載置される共に、前記本体の長手方向一端側の先端部分または長手方向他端側の先端部分が前記扉の戸先側から突出されることを特徴とする個室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、個室の使用状況を外部から確認することができる表示装置および個室構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トイレの個室の使用状況を外部へ向けて表示する構造として、例えば、施錠・解錠の動作に連動する表示部を施錠機構に設け、その表示部の表示(例えば、使用中を示す赤色の表示、不使用を示す青色の表示)により個室の使用状況を外部から確認できるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3197976号公報(例えば、段落0005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、比較的年齢の低い幼児(例えば、4歳以下)がいる保育施設などでは、解錠ができなくなった幼児が閉じ込められることを防止するために、施錠機構を設けないことが一般的である。そのため、個室の使用状況を外部から確認することができないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、個室の使用状況を外部から確認することができる表示装置および個室構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の表示装置は、固定枠の正面からストッパが突出され、前記扉が閉じた状態では前記固定枠と前記扉の戸先側との対向間に前記ストッパの高さ分の隙間が形成される個室構造に配設されるものであって、長尺形状に形成され、内部に通路を有すると共に、長手方向略中央が扉の背面に回転可能に支持される本体と、前記本体の通路に収納され、前記本体の通路を移動可能に形成される移動手段と、を備え、前記通路は、前記本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて延設される一側通路と、前記本体の長手方向中央側から長手方向他端側へ向けて延設される他側通路と、を備え、前記本体の長手方向が水平方向と略平行となる回転位置に前記本体が配置された状態では、前記一側通路が前記本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて下降傾斜され、前記他側通路が前記本体の長手方向他端側から長手方向中央側へ向けて下降傾斜される。
【0007】
また、本発明の個室構造は、請求項1から4のいずれかに記載の表示装置を備えたものであって、出入口を有する個室を区画する固定枠と、その固定枠の出入口を開閉する扉と、その扉を前記固定枠に支持すると共に前記扉を開けた状態から閉じた状態に復帰させるヒンジ機構と、を備え、前記固定枠の正面からストッパが突出され、前記扉が閉じた状態では前記固定枠と前記扉の戸先側との対向間に前記ストッパの高さ分の隙間が形成され、前記本体の長手方向が水平方向と略平行となる回転位置に前記本体が配置された状態では、前記本体の長手方向一端側または長手方向他端側が前記ストッパに載置される共に、前記本体の長手方向一端側の先端部分または長手方向他端側の先端部分が前記扉の戸先側から突出される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の表示装置または請求項5記載の個室構造によれば、長尺形状に形成され、内部に通路を有すると共に、長手方向略中央が扉の背面に回転可能に支持される本体と、本体の通路に収納され、本体の通路を移動可能に形成される移動手段と、を備え、通路は、本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて延設される一側通路と、本体の長手方向中央側から長手方向他端側へ向けて延設される他側通路と、を備え、本体の長手方向が水平方向と略平行となる回転位置に本体が配置された状態では、一側通路が本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて下降傾斜され、他側通路が本体の長手方向他端側から長手方向中央側へ向けて下降傾斜される。
【0009】
使用者は、扉を開けて中に入り、扉を閉めた後、長手方向一端側が上方となり長手方向他端側が下方となる縦姿勢とされた本体の長手方向一端側がストッパ上に向かうように本体を回転させる。これにより、一側通路に収納されている移動手段が本体の長手方向中央側から長手方向一端側へ向けて移動されると共に、他側通路に収納されている移動手段が本体の長手方向他端側から長手方向中央側へ向けて移動されることで、表示装置全体としての重心位置が本体の長手方向一端側に偏心され、本体が横姿勢(長手方向一端側がストッパに載置された状態)に維持される。その結果、本体の長手方向一端側(先端部分)が扉の戸先側から突出され、個室が使用中であることを外部から確認することができる。
【0010】
一方、用を足し終えた使用者が外へ出るために扉を開けると、ストッパによる下方からの支持が無くなると共に、表示装置全体としての重心位置が本体の長手方向一端側に偏心されていることで、本体が回転され、長手方向一端側が下方となり長手方向他端側が上方となる縦姿勢に維持される。その結果、本体全体が扉の背面に隠れることで、本体の長手方向一端側(先端部分)が扉の戸先側から突出されなくなり、個室が使用中ではない(即ち、不使用である)ことを外部から確認することができる。
【0011】
請求項2記載の表示装置によれば、請求項1記載の表示装置の奏する効果に加え、移動手段の形状が球体形状とされるので、移動手段を転動させて通路を移動させることができる。よって、重心位置の移動を確実に形成できる。その結果、表示装置の動作を安定させることができる。
【0012】
請求項3記載の表示装置によれば、請求項2記載の表示装置の奏する効果に加え、複数の移動手段が一側通路および他側通路のそれぞれに収納されるので、移動手段の直径を小さくしつつ、総重量を確保できる。よって、本体の小型化を図ることができる。
【0013】
請求項4記載の表示装置によれば、請求項2記載の表示装置の奏する効果に加え、本体の長手方向一端側を始端とする一側通路の終端が本体の回転中心を越える位置に設定されると共に、本体の長手方向他端側を始端とする他側通路の終端が本体の回転中心を越える位置に設定されるので、移動手段の移動可能量を確保できる。よって、表示装置全体としての重心位置の偏心を確実に形成でき、表示装置の動作をより安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は、本発明の一実施形態における個室構造の上面図であり、(b)は、個室構造の正面図である。
【
図4】(a)は、表示装置の断面図であり、(b)は、表示装置の正面模式図である。
【
図5】(a)は、扉が閉位置に配置された状態における個室構造の上面図であり、(b)は、
図5(a)の矢印Vb方向視における扉の部分拡大背面図である。
【
図6】(a)は、
図5(b)に示す状態から表示装置が横姿勢に回転され鉄球が転動されている状態における扉の部分拡大背面図であり、(b)は、
図6(a)に示す状態において鉄球の転動が終了した状態における扉の部分拡大背面図である。
【
図7】(a)は、扉を開け始めた状態における個室構造の上面図であり、(b)は、
図7(a)の矢印VIIb方向視における扉の部分拡大背面図である。
【
図8】(a)は、
図7(b)に示す状態から表示装置が自重により回転されている状態における扉の部分拡大背面図であり、(b)は、表示装置の自重による回転が終了した状態における扉の部分拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、表示装置100を備えた個室構造1について説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態における個室構造1の上面図であり、
図1(b)は、個室構造1の正面図である。なお、
図1では、扉3が閉じた状態(閉位置に配置された状態)とされ、表示装置100が横姿勢とされた状態が図示される。また、本実施形態では、個室構造1により区画される個室Sとして、保育施設におけるトイレの個室を例に説明する。
【0016】
図1に示すように、個室構造1は、個室Sを区画するパネル2と、そのパネル2の開口部2aを閉じるためのアウトセット型の扉3と、その扉3をパネル2に対して開閉可能に支持するヒンジ4及びグレビティヒンジ5と、パネル2の正面(外面)から突出され扉3の背面(内面)に当接されるストッパ6と、扉3の正面(外面)に固着される持ち手7と、扉3の背面(内面)に配設される表示装置100とを備える。
【0017】
扉3は、開方向(
図1(a)の矢印A方向)へ操作された後、扉3から手が離されると、グレビティヒンジ5の作用により、閉方向(
図1(a)の矢印B方向)へ自動的に回転して閉位置(扉3がストッパ6に当接して閉方向への回転が規制された位置)に復帰される。非操作時には、扉3は、閉位置に維持される。
【0018】
表示装置100は、個室Sの使用状況(使用中、不使用)を外部(個室Sの外)へ向けて表示するための装置であり、個室S内の使用者により操作される。
【0019】
個室Sが使用されている場合は、扉3の戸先3aから表示装置100の長手方向一端側が突出され(
図1(a)及び
図1(b)参照)、個室Sが不使用の場合は、表示装置100全体が扉3の背面(内面)側に隠れる(
図5参照)。これにより、個室Sの使用状況を外部から確認することができる。
【0020】
図2は、表示装置100の斜視図であり、
図3は、表示装置100の分解斜視図であり、
図4(a)は、表示装置100の断面図である。なお、
図4(a)は、表示装置100の回転中心を含み表示装置100(アーム部材110)の長手方向に平行な平面により表示装置100を切断した断面図に対応する。
【0021】
図2、
図3及び
図4(a)に示すように、表示装置100は、長尺形状に形成されるアーム部材110と、そのアーム部材110の長手方向略中央における正面に配設されるつまみ部材120と、そのつまみ部材120の頂部に配設されるキャップ部材130と、アーム部材110の正面に配設される一対のカバー部材140と、通路P1,P2に収納される複数の鉄球150と、を備える。
【0022】
アーム部材110は、略平板形状のベース部111と、そのベース部111の長手方向一端側および他端側に連結される正面視略円形の表示部112とを備え、樹脂材料から一体に形成される。
【0023】
ベース部111の長手方向略中央には、断面円形の軸支孔111aが貫通形成されると共に、ベース部111の正面には、断面略U字形状の2本の凹溝111bが凹設される。凹溝111bは、直線形状に形成(直線状に延設)される。
【0024】
アーム部材110(表示装置100)は、ベース部111の軸支孔111aに挿通された円筒状のカラー及び木ねじ(いずれも図示せず)により扉3の背面(内面)に回転可能に軸支される(
図1参照)。
【0025】
なお、表示装置100(アーム部材110,つまみ部材120、キャップ部材130及びカバー部材140、)は、その回転中心(ベース部111の軸支孔111aの中心)を軸とする2回対称の形状(軸支孔111aの中心の周りを180度回転させると自らと重なる形状)とされる。
【0026】
つまみ部材120は、ベース部111の長手方向略中央における正面全体を覆う円板形状の蓋部121と、その蓋部121の正面から突設される突設部122と、を備え、樹脂材料から一体に形成される。
【0027】
突設部122は、略直方体形状に形成され、その突設部122の長手方向をアーム部材110の長手方向と略平行とした向きでつまみ部材120がベース部111に配設される。これにより、突設部122をつまみ持ちして表示装置100を回転させる動作を行いやすくできる。
【0028】
つまみ部材120の略中央には、断面円形の貫通孔123が貫通形成される。貫通孔123は、ベース部111の軸支孔111aよりも大径とされ、軸支孔111aに挿通する木ねじ(図示せず)の頭部を受け入れ可能とされる。また、ベース部111につまみ部材120が配設された状態で、木ねじ(図示せず)の締結が可能とされる。
【0029】
キャップ部材130は、貫通孔123の開口を塞ぐための円板形状の部材であり、樹脂材料から形成される。キャップ部材130には、複数の弾性爪が背面から突出して形成され、この弾性爪が貫通孔123の内周面に凹設された凹部に係合されることで、つまみ部材120の正面にキャップ部材130が着脱可能に配設される。
【0030】
カバー部材140は、表示部112とつまみ部材120との間において、ベース部111の正面全体を覆う平板形状の部材であり、樹脂材料から形成される。
【0031】
ベース部111の正面につまみ部材120(蓋部121)及びカバー部材140が配設されることで、ベース部111の凹溝111bの開放部分が閉じられて、表示装置100の内部に2本の通路P1,P2が形成される。通路P1,P2は、表示装置100の回転中心に直交する平面に略平行な通路として形成される。
【0032】
鉄球150は、金属材料から球体形状に形成される部材であり、通路P1,P2にそれぞれ複数個(本実施形態では2球ずつ)が収納される。通路P1,P2の横断面の形状は、鉄球150の外形よりも大きくされ、通路P1,P2の延設方向に沿って鉄球150が転動することが可能とされる。なお、手球150を2球とすることで、直径を小さくしつつ、総重量を確保できる。その結果、。アーム部材110の厚み寸法(
図4(a)上下方向寸法)を小さくできる。
【0033】
図4(b)を参照して、通路P1,P2について説明する。
図4(b)は、表示装置100の正面模式図であり、通路P1,P2及び軸支孔111aの外形が模式的に図示される。
【0034】
なお、
図4(b)において、仮想線L1は、表示装置100(アーム部材110)の回転中心を通り、表示装置100(アーム部材110)の長手方向に平行な仮想線であり、仮想線L2は、表示装置100(アーム部材110)の回転中心を通り、仮想線L1に直交する仮想線である。
【0035】
図4(b)に示すように、通路P1,P2は、表示装置100の長手方向中央側から長手方向一端側および長手方向他端側へ向けてそれぞれ延設されると共に、仮想線L1に対して傾斜する直線形状に形成される。なお、通路P1,P2は、互いに略平行とされ、仮想線L1に対する傾斜角度が角度θとされる。
【0036】
よって、表示装置100が横姿勢(ストッパ6に載置された状態、仮想線L1が水平となる姿勢)とされると、通路P1は、表示装置100の長手方向中央側(軸支孔111a側)から長手方向一端側(
図4(b)右側)へ向けて下降傾斜され、通路P2は、表示装置100の長手方向他端側(
図4(b)左側)から長手方向中央側(軸支孔111a側)へ向けて下降傾斜される。
【0037】
表示装置100の長手方向一端側(
図4(b)右側)を始端t1とする通路P1の終端e1は、表示装置100の回転中心(即ち、仮想線L2)を越える位置に設定されると共に、表示装置100の長手方向他端側(
図4(b)左側)を始端t2とする通路P1の終端e2は、表示装置100の回転中心(即ち、仮想線L2)を越える位置に設定される。これにより、鉄球150の移動可能量を確保して、重心位置の偏心をより確実に形成できる。その結果、表示装置100の動作を安定させることができる。
【0038】
図5から
図8を参照して、表示装置100の使用方法について説明する。まず、個室Sに入室した際の使用方法について説明する。
図5及び
図6は、個室Sに入室した使用者が使用中であることを表示する際の表示装置100の状態の遷移を示した状態遷移図である。
【0039】
図5(a)は、扉3が閉位置に配置された状態における個室構造1の上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)の矢印Vb方向視における扉3の部分拡大背面図であり、
図6(a)は、
図5(b)に示す状態から表示装置100が横姿勢に回転され鉄球150が転動されている状態における扉3の部分拡大背面図であり、
図6(b)は、
図6(a)に示す状態において鉄球150の転動が終了した状態における扉3の部分拡大背面図である。
【0040】
なお、
図5(b)、
図6(a)及び
図6(b)では、ストッパ6と表示装置100との位置関係についての理解を容易とするために、ストッパ6が二点鎖線を用いて模式的に図示される。また、説明の便宜上、表示装置100において、通路P1が形成される側を長手方向一端側と、通路P2が形成される側を長手方向他端側と、それぞれ称して説明する。
【0041】
図5(a)及び
図6(b)に示すように、使用者が個室Sに入室し、扉3が閉位置に配置された状態では、表示装置100は、鉄球150の重量により全体としての重心位置が長手方向他端側に偏心され、その長手方向を上下方向に沿わせた縦姿勢に維持される。
【0042】
使用者は、表示装置100を右回転(即ち、長手方向一端側をストッパ6へ向けて傾倒)させ、表示装置100の長手方向一端側をストッパ6に載置する。これにより、
図6(a)に示すように、表示装置100が横姿勢とされ、長手方向他端側から長手方向一端側へ向けて通路P1,P2がそれぞれ下降傾斜された状態となる。これにより、鉄球150が長手方向一端側へ向けて転動される。
【0043】
鉄球150の転動が終了されると、
図6(b)に示すように、表示装置100全体としての重心位置が長手方向一端側に偏心され、表示装置100が横姿勢に維持される。その結果、表示装置100の長手方向一端側における先端部分(表示部112)が扉3の戸先3aから突出され、個室Sが使用中であることを外部から確認することができる。
【0044】
次いで、個室Sから退室する際の使用方法について説明する。
図7及び
図8は、個室Sから使用者が退室する際の表示装置100の状態の遷移を示した状態遷移図である。
【0045】
図7(a)は、扉3を開け始めた状態における個室構造1の上面図であり、
図7(b)は、
図7(a)の矢印VIIb方向視における扉3の部分拡大背面図であり、
図8(a)は、
図7(b)に示す状態から表示装置100が自重により回転されている状態における扉3の部分拡大背面図であり、
図8(b)は、表示装置100の自重による回転が終了した状態における扉3の部分拡大背面図である。
【0046】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、用を足し終えた使用者が個室Sから外部へ出るために扉3を開けると、扉3と共に移動された表示装置100は、ストッパ6による下方からの支持が無くなる。これにより、
図8(a)に示すように、表示装置100が右回転される(即ち、長手方向一端側(鉄球150により重心位置が偏心されている側)が下方へ向け傾倒され、長手方向他端側が上方へ向けて起立される)。
【0047】
表示装置100の回転が終了されると、
図8(b)に示すように、表示装置100全体としての重心位置が長手方向一端側に偏心され、表示装置100が縦姿勢に維持される。その結果、表示装置100全体が扉3の背面に隠れる。即ち、表示装置100の長手方向一端側における先端部分(表示部112)が扉3の戸先3aから突出されなくなり、個室Sが使用中ではない(不使用である)ことを外部から確認することができる。
【0048】
次の使用者が個室Sを使用する場合の表示装置100の使用方法の説明は、表示装置100の長手方向一端側と長手方向他端側との配置が反対となる以外は上記説明と同様であるので、その説明は省略する。
【0049】
以上のように、表示装置100によれば、扉3の戸先3aから表示部112が突出されているか否に基づいて、個室Sの使用状況を外部から確認することができる。
【0050】
この場合、個室Sから使用者が退室する際には、退室の際に必ず行われる扉3を開けるという動作のみにより表示装置100を「不使用」位置に自動的に配置できる。よって、表示装置100を使用者が別途操作して戻す必要がない。その結果、個室Sが「不使用」であるにも関わらず、表示装置100が「使用中」のままとなることを回避できる。
【0051】
このように、表示装置100は、一方向へ回転させる簡易な操作のみで「使用中」を表示できると共に、その表示の戻し忘れを防止できる構成であり、この構成は、比較的年齢の低い幼児や機械操作に障害を有する者(一の方向への操作は行うことが可能であるが、一の方向への操作(例えば、レバーを右回転させて施錠する操作)と他の方向への操作(レバーを左回転させて解錠する操作)とを状況に応じて区別して行うことが困難な者)が使用する場合において特に有効となる。
【0052】
表示装置100の重心位置の移動は、鉄球150が通路P1,P2を転動することで行われるので、扉3が開けられて、ストッパ6の支持が無くなった際に、表示装置100が急に回転することはなく、比較的ゆっくりとした速度で回転させることができる。よって、安全に使用することができる。
【0053】
パネル2の正面(外面)と扉3の背面(内面)との対向間に指挟み防止のための隙間が形成されるタイプの個室構造1であれば、表示装置100を扉3の背面(内面)に取り付けるだけで、その他の追加の工事を行うことなく、表示装置100を容易に設置できる。また、この場合には、既存のストッパ6を利用でき、表示装置100を支持するための部材を別途設けることを不要とできる。
【0054】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0055】
上記実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。同様に、各構成の配設数は任意である。例えば、1の通路P1,P2に収納される鉄球150の数が2球とされる場合を説明したが、1球でも良く、3球以上でも良い。
【0056】
上記実施形態では、扉3が右開きとされる場合を説明したが、扉3が左開きとされても良い。この場合には、上記実施形態に対し、通路P1,P2の傾斜方向が逆向きとなる。
【0057】
上記実施形態では、球体形状の鉄球150を使用する場合を説明したが、他の形状を採用しても良い。例えば、円柱形状の部材を使用しても良い。この場合は、円柱形状の軸が表示装置100の回転軸と平行となる向きで、円柱形状の部材を通路P1,P2に収納する。これにより、円柱形状の部材を通路P1,P2の傾斜に沿って移動(転動)させやすくできる。また、例えば、立方体や直方体などの多面体形状の部材を使用しても良い。このような形状であっても、通路P1,P2の傾斜を摺動させることで、重心位置を偏心させることができる。
【0058】
上記実施形態では、正面視における通路P1,P2の形状が直線形状とされる場合を説明したが(
図4(b)参照)、直線形状の部分と曲線状に湾曲する湾曲形状の部分とが組み合わされた形状であっても良く、全部が曲線形状であっても良い。角度θが異なる直線形状の部分が組み合わされた形状や、曲率が異なる曲線形状の部分が組み合わされた形状であっても良い。
【0059】
上記実施形態では、通路P1,P2の終端e1,e2が表示装置100の回転中心(即ち、仮想線L2)を越える位置とされる場合を説明したが(
図4(B)参照)、通路P1,P2の終端e1,e2は、回転中心(仮想線L2)と重なる位置であっても良く、回転中心(仮想線L2)を越えない位置であっても良い。
【0060】
上記実施形態では、通路P1,P2の始端t1,t2がベース部111に位置する場合を説明したが、通路P1,P2の始端t1,t2は表示部112に位置しても良い。
【0061】
上記実施形態では説明を省略したが、表示部112の正面や背面には、塗料による着色が施されていても良く、シールや別部品が貼付されていても良い。アーム部材110を二色成形により成形し、表示部112の一部または全部を他の部分と異なる色(材質)としても良い。また、表示部112に貫通孔部や凹部が形成され、その貫通孔や凹部に異なる色や材質の別部品が嵌め込まれるものであっても良い。これらにより、表示部112を視認しやすくできる。
【0062】
上記実施形態では、表示装置100が2回対称の形状とされる場合を説明したが、表示装置100が非対称形状であっても良い。樹脂材料から形成されるアーム部材110やカバー部材140等に対して、鉄球150が金属材料から形成され、その重量を十分に確保できるので、非対称形状であっても表示装置100を上述したように動作させることができる。
【0063】
上記実施形態では、個室構造1により区画される個室Sとして、保育施設におけるトイレの個室を例に説明したが、他の施設であっても良く、また、他の用途の個室であっても良い。他の施設としては、例えば、養護施設、介護施設、病院、図書館などが例示される。他の用途としては、例えば、仮眠室、休憩室、診察室、自習室などが例示される。
【0064】
上記実施形態では、ストッパ6に載置されて表示装置100が横姿勢とされると、表示装置100の長手方向(仮想線L1)が水平方向と略平行となる場合を説明したが、ストッパ6に載置されて横姿勢となった表示装置100の長手方向(仮想線L1)が水平方向に対して傾斜されていても良い。即ち、ストッパ6に対する表示装置100の取り付け位置(高さ位置)のばらつきは、鉄球150が通路P1,P2を転動できる範囲であれば許容される。
【0065】
上記実施形態では、表示装置100につまみ部材120が形成される場合を説明したが、つまみ部材120を省略しても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 個室構造
2 パネル(固定枠)
2a 開口部(出入口)
3 扉
3a 戸先
5 グレビティヒンジ(ヒンジ機構)
6 ストッパ
S 個室
100 表示装置
110 アーム部材(本体)
120 つまみ部材(本体)
130 キャップ部材(本体)
140 カバー部材(本体)
150 鉄球(移動手段)
P1 通路(一側通路、他側通路)
t1 始端
e1 終端
P2 通路(他側通路、一側通路)
t2 始端
e2 終端