(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121755
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品および電気機器
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20240830BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240830BHJP
C08K 5/3435 20060101ALI20240830BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240830BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20240830BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/22
C08K5/3435
C08K3/32
C08K5/5313
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023118368
(22)【出願日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】202310206083.9
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520070792
【氏名又は名称】金発科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】KINGFA SCI. & TECH. CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.33 Kefeng Road, Science City, Hi-Tech Industrial Development Zone, Guangzhou, Guangdong 510663, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 健
(72)【発明者】
【氏名】永井 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】間簔 雅
(72)【発明者】
【氏名】小賀 浩史
(72)【発明者】
【氏名】周 杰
(72)【発明者】
【氏名】陳 平▲オ▼
(72)【発明者】
【氏名】叶 南▲ピョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 少華
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB031
4J002BB061
4J002BB121
4J002BB151
4J002DE076
4J002DE146
4J002EU078
4J002EU188
4J002EW137
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD040
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD138
4J002FD170
4J002GG00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】良好な難燃性を有し、かつフォギングの発生を抑制できる樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の樹脂組成物は、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物と、金属水酸化物とを有する。樹脂組成物に対するホスフィン酸金属塩の割合は、1~6質量%であり、樹脂組成物に対するNOR型ヒンダードアミン化合物の割合は、0.05~5質量%であり、樹脂組成物に対する金属水酸化物の割合は、5~60質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物と、金属水酸化物と、を含む、樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物に対する前記ホスフィン酸金属塩の割合は、1~6質量%の範囲内であり、
前記樹脂組成物に対する前記NOR型ヒンダードアミン化合物の割合は、0.05~5質量%の範囲内であり、
前記樹脂組成物に対する前記金属水酸化物の割合は、5~60質量%の範囲内である、
樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレンである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物に対する前記ホスフィン酸金属塩の割合は、2~5質量%の範囲内である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物に対する前記金属水酸化物の割合は、10~30質量%の範囲内である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ホスフィン酸金属塩は、ジアルキルホスフィン酸アルミニウムである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記金属水酸化物の平均粒子径は、0.1~5.5μmの範囲内である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記金属水酸化物は、水酸化アルミニウムである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7に記載の樹脂組成物を用いて成形された、成形品。
【請求項9】
請求項8に記載の成形品を有する、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、当該樹脂組成物を用いた成形品および当該成形品を有する電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンなどのポリオレフィンは、製造時の二酸化炭素の排出が少なく、軽量で耐薬品性に優れ、安価であることから様々な用途で使用されている。一方、ポリオレフィンは燃えやすいため、ポリオレフィンを用いた成形品などには難燃性が求められることがある。ポリオレフィンを含む成形品に難燃性を付与するためには、多量の難燃剤を添加する必要があり、ポリオレフィンの特長が損なわれやすい。
【0003】
難燃剤として、ハロゲン系の難燃剤と、非ハロゲン系の難燃剤とが知られている。ハロゲン系の難燃剤は、少量で難燃性を付与できるため、樹脂の機械特性低下をある程度抑えることができる。しかしながら、ハロゲン系の難燃剤は、燃焼分解時にダイオキシン系の化合物を多量に発生することがあるため、環境上好ましくない。一方、成形品に難燃性を付与できる非ハロゲン系の難燃剤として、リン含有化合物が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1には、ポリプロピレンと、シリコーンオイルと、シリコーン樹脂と、非ハロゲン系難燃剤であるリン含有化合物と、を有する樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリオレフィンと、フェノール樹脂と、非ハロゲン系難燃剤であるリン含有化合物および膨張性黒鉛と、を有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64-14277号公報
【特許文献2】特開平9-111059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されているような非ハロゲン系の難燃剤は、有害なハロゲンを含まないが、ハロゲン系の難燃剤と比較して難燃性が劣るため、樹脂組成物に多量に配合する必要がある。非ハロゲン系の難燃剤が多量に添加された樹脂組成物は、ブリードアウトや樹脂の機械的特性の低下を引き起こすため、難燃性および機械的特性の向上を両立させることが困難である。
【0008】
特許文献2に記載された樹脂組成物のように、膨張性黒鉛を併用した場合には、成形時の外観が著しく低下する。特に、特許文献2において、リン含有化合物としてリン酸エステルを使用した場合には、ブリードアウトや耐熱性の低下を引き起こすことが考えられる。
【0009】
また、難燃性が求められる成形品が搭載される製品の例には、事務機器などの電気機器が含まれる。電気機器において、難燃性が求められる成形品は、電源付近や電気通電部およびその付近にあることが多く、高温に曝されやすい。また、成形品は、電気機器の使用時だけでなく、出荷輸送時に船舶の荷室などで高温環境下に曝される場合もある。成形品が高温環境に曝された場合、フォギング(成形品からの揮発成分が他の部品の表面に付着して曇らせる現象)を生じることがある。フォギングは、電気機器の外観を損なうだけでなく、その成形品が担うべき機能を損なうこともある。
【0010】
また、近年のコロナ禍において、物流が停滞し、これらの電気機器が倉庫や船舶の荷室内で従来よりも長期にわたり保管されることがあった。これに伴う温度上昇や保管期間の長期化によって、フォギングが顕在化するようになるとともに、従来の技術では、フォギングを十分に抑制できなかった。
【0011】
本発明の目的は、良好な難燃性を有し、かつフォギングの発生を抑制できる樹脂組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該樹脂組成物を有する成形品および当該成形品を有する電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る樹脂組成物は、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物と、金属水酸化物と、を含む、樹脂組成物であって、前記樹脂組成物に対する前記ホスフィン酸金属塩の割合は、1~6質量%の範囲内であり、前記樹脂組成物に対する前記NOR型ヒンダードアミン化合物の割合は、0.05~5質量%の範囲内であり、前記樹脂組成物に対する前記金属水酸化物の割合は、5~60質量%の範囲内である。
【0013】
本発明の一実施の形態に係る成形品は、本発明の樹脂組成物を用いて成形される。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る電気機器は、本発明の成形品を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な難燃性を有し、かつフォギングの発生を抑制できる樹脂組成物を提供できる。また、本発明によれば、当該樹脂組成物を有する成形品および当該成形品を有する電気機器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る樹脂組成物、成形品および電気機器について、詳細に説明する。
【0017】
(樹脂組成物の構成)
樹脂組成物は、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物と、金属水酸化物とを含む。
【0018】
ポリオレフィンは、樹脂組成物の基材となる。ポリオレフィンは、オレフィンを単量体成分の主成分として重合された単独重合体または共重合体である。ここで、「オレフィン」は、二重結合を1つ有する脂肪族鎖式不飽和炭化水素をいう。
【0019】
ポリオレフィンには、オレフィンと他のオレフィンとの共重合体、またはオレフィンとオレフィンに共重合可能な他の単量体との共重合体が含まれる。
【0020】
オレフィンは、炭素数が2~12のα-オレフィンが好ましい。α-オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、および1-デセン、1-ドデセンが含まれる。オレフィンは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
α-オレフィンに共重合可能な他の単量体の例には、シクロペンテンおよびノルボルネンなどの環状オレフィン、並びに1,4-ヘキサジエンおよび5-エチリデン-2-ノルボルネンなどのジエンが含まれる。また、他の単量体の例には、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、ビニルエーテル、無水マレイン酸、一酸化炭素、N-ビニルカルバゾールなどの単量体が含まれる。他の単量体は、ポリオレフィンの重合に際して、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方を意味する。
【0022】
ポリオレフィンの例には、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのエチレンを主成分とするポリエチレン;ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン共重合体およびエチレン-プロピレン-ジエン共重合体などのプロピレンを主成分とするポリプロピレン系樹脂;ポリブテン;並びにポリペンテンが含まれる。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂の例には、さらに、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体、ポリケトン、メタロセン触媒で製造された共重合体が含まれる。また、これらの重合体を化学的に反応、変性したもの、具体的にはアイオノマー樹脂、EVAの鹸化物、押出機内で動的加硫を用いて製造されたオレフィン系エラストマーも含まれる。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂およびポリプロピレン系樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。ポリプロピレン系樹脂におけるプロピレンに由来する構造の立体規則性は、アイソタクチック、シンジオタクチックおよびアタクチックのいずれでもよい。
【0025】
市販されているポリオレフィンの例には、プライムポリマー社製のポリプロピレン系樹脂「プライムポリプロ」、「ポリファイン」、「プライムTPO」の各シリーズ(例えば、プライムポリプロJ715M)、プライムポリマー社製のポリエチレン樹脂「ハイゼックス」、「ネオゼックス」、「ウルトゼックス」、「モアテック」、「エボリュー」の各シリーズ(例えば、ハイゼックス1300J)が含まれる。
【0026】
ポリオレフィンは、成形体の強度や耐熱性を高めやすい観点から、ポリプロピレンが好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
【0027】
樹脂組成物に対するポリオレフィンの割合は、29.0~93.95質量%の範囲内であり、50~75質量%の範囲内が好ましい。樹脂組成物に対するポリオレフィンの割合が29.0質量%以上であると、ポリオレフィンの特性がさらに十分に得られやすく、93.95質量%以下であると、成形品の強度をさらに高めやすい。
【0028】
ポリオレフィンの検出方法は、特に限定されない。ポリオレフィンは、公知の方法で検出できる。例えば、ポリオレフィンは、IR(赤外分光法)、DSC(示差走査熱量測定)、NMR(核磁気共鳴分光法)などを組み合わせることで検出できる。
【0029】
ホスフィン酸金属塩は、難燃剤として機能する。ホスフィン酸金属塩は、以下の式によって表すことができる。
【0030】
【0031】
R1およびR2は、水素または炭素数が1~8のアルキル、またはR1およびR2は、いずれも炭素数が1~8のアルキルを表す。nおよびmは、いずれも1~3である。Mは、アルカリ金属、アルカリ金属またはアルミニウムである。
【0032】
ホスフィン酸金属塩は、R1およびR2がエチル基であり、Mがアルミニウムであるジエチルホスフィン酸アルミニウムであるか、R1およびR2が水素であり、Mがカルシウムであるホスフィン酸カルシウムが好ましい。
【0033】
樹脂組成物に対するホスフィン酸金属塩の割合は、1~6質量%の範囲内であり、2~5質量%の範囲内が好ましい。樹脂組成物に対するホスフィン酸金属塩の割合が1質量%未満であると、後述する燃焼ランクおよび燃焼時間が不良となる。樹脂組成物に対するホスフィン酸金属塩の割合が6質量%超であると、フォギングが生じる。
【0034】
ホスフィン酸金属塩の検出方法は、特に限定されない。ホスフィン酸金属塩は、公知の方法で検出できる。例えば、ホスフィン酸金属塩は、イオンクロマトグラフ法、キャピラリー電気泳動法、ICP-AES(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法)、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析法)、原子吸光分析法、蛍光X線分析法などを組み合わせることで検出できる。
【0035】
NOR型ヒンダードアミン化合物は、光安定化剤として機能する。NOR型ヒンダードアミン化合物は、アルコキシイミノ基を有する。アルコキシイミノ基における側鎖は、置換または非置換の飽和または不飽和の炭化水素基を表す。側鎖の例には、アルキル基、アラルキル基、アリール基が含まれる。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状または環状であってもよく、これらを組み合わせたアルキル基でもよい。
【0036】
NOR型ヒンダードアミン化合物は、アルコキシイミノ基の構造を有するものであれば特に限定されない。NOR型ヒンダードアミン化合物の例には、特表2002-507238号公報、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号などに記載されているNOR型ヒンダードアミン化合物が含まれる。
【0037】
NOR型ヒンダードアミン化合物には、以下の式によって表される化合物が含まれる。
【0038】
【0039】
式中、G1およびG2は独立して炭素数が1~4のアルキル基を表すか、またはペンタメチレン基を表す。Z1およびZ2はそれぞれメチル基を表すか、またはZ1およびZ2は架橋部分を形成している。架橋部分はさらにエステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、カルボニル基またはウレタン基を介して有機基に結合できる。Eは炭素数が1~18のアルコキシ基、炭素数が5~12のシクロアルコキシ基、炭素数が7~25のアラルコキシ基、炭素数が6~12のアリールオキシ基を表す。
【0040】
上記式で示されるNOR型ヒンダードアミン化合物は、難燃性および耐熱性の観点から、高分子タイプのものが好ましい。高分子タイプとは、一般に、オリゴマー状またはポリマー状化合物である。高分子タイプのオリゴマー状またはポリマー状化合物は、繰り返し単位数は、2~100の範囲内が好ましく、5~80の範囲内がより好ましい。
【0041】
また、NOR型ヒンダードアミン化合物には、以下の式によって表される化合物も含まれる。
【0042】
【0043】
式中、R1~R4は、それぞれ水素原子または下記式の有機基を表す。R1~R4の少なくとも1つは、下記の有機基である。
【0044】
【0045】
式中、R5は、炭素数が1~17のアルキル基、炭素数が5~10のシクロアルキル基、フェニル基または炭素数が7~15のフェニルアルキル基を表す。R6~R9は、それぞれ炭素数が1~4のアルキル基を表す。R10は、水素原子、または炭素数が1~12の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基を表す。
【0046】
R5は、炭素数が1~17のアルキル基のうち、メチル基、プロピル基またはオクチル基が好ましい。また、R5は、炭素数が5~10のシクロアルキル基のうち、シクロヘキシル基が好ましい。また、R5は、フェニル基または炭素数が7~15のフェニルアルキル基のうち、フェニル基が好ましい。R6~R9は、炭素数が1~4のアルキル基うち、メチル基が好ましい。R10は、炭素数が1~12の直鎖または分岐鎖のアルキル基のうち、n-ブチル基が好ましい。
【0047】
NOR型ヒンダードアミン化合物の具体的な例には、1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-オクタデシルアミノピペリジン;ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;ビス(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)-6-クロロ-s-トリアジン;過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物(N,N’,N’’’-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3’-エチレンジイミノジプロピルアミン);ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート;1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン;ビス(1-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネートが含まれる。
【0048】
市販されているNOR型ヒンダードアミン化合物の例には、BASF社の「Flamestab」シリーズ(例えば、NOR116FF)、「TINUVIN」シリーズ(例えば、NOR371FF)が含まれる。
【0049】
樹脂組成物に対するNOR型ヒンダードアミン化合物の割合は、0.05~5質量%の範囲内であり、0.2~2.0質量%の範囲内が好ましい。樹脂組成物に対するNOR型ヒンダードアミン化合物の割合が0.05質量%未満であると、難燃性が不十分であり、5質量%超であると、衝撃強度が不十分となる。
【0050】
NOR型ヒンダードアミン化合物の検出方法は、特に限定されない。NOR型ヒンダードアミン化合物は、公知の方法で検出できる。例えば、NOR型ヒンダードアミン化合物は、熱分解GC/MS(熱分解ガスクロマトグラフ/質量分析法)、IR(赤外分光法)などを組み合わせることで検出できる。
【0051】
金属水酸化物は、難燃剤および中和剤として機能する。金属水酸化物の種類は、上述した機能を発揮できれば特に限定されない。金属水酸化物は、金属水酸化物単体でもよいし、複合金属水酸化物でもよい。金属水酸化物単体の例には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムが含まれる。複合金属水酸化物としては、2種以上の金属元素を含むハイドロタルサイト化合物であって、少なくとも一つの金属元素がマグネシウムであり、かつ、その他の金属元素がカルシウム、アルミニウム、スズ、チタン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、または亜鉛から選ばれる金属元素であればよい。金属水酸化物は、フォギングの発生を抑制する観点から、水酸化アルミニウムが好ましい。また金属水酸化物は、樹脂組成物中での分散性向上や成形物の強度向上などの目的で、シラン系、エポキシ系、チタネート系などのカップリング剤で表面処理されていてもよい。
【0052】
樹脂組成物に対する金属水酸化物の割合は、5~60質量%の範囲内であり、10~30質量%の範囲内が好ましい。樹脂組成物に対する金属水酸化物の割合が5質量%未満の場合、燃焼ランク、燃焼時間、フォギング、衝撃強度、曲げ弾性率が低下する。一方、樹脂組成物に対する金属水酸化物の割合が60質量%超の場合、衝撃強度が低下する。
【0053】
金属水酸化物の平均粒子径(メジアン径)は、特に限定されない。金属水酸化物の平均粒子径は、0.1~5.5μmの範囲内が好ましく、0.5~2.0μmの範囲内がより好ましい。金属水酸化物の平均粒子径の測定方法は、特に限定されない。金属水酸化物の平均粒子径は、いわゆるメジアン径であり、UPA-150(マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて測定できる。
【0054】
金属水酸化物の検出方法は、特に限定されない。金属水酸化物は、公知の方法で検出できる。例えば、金属水酸化物は、XPS(X線光電子分光法)、SEM-EDS(走査電子顕微鏡法-エネルギー分散型X線分光法)、TG-DTA(熱重量示差熱分析法)、ラマン分光法などを組み合わせることで検出できる。
【0055】
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の、その他の難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、結晶核剤、酸化防止剤、耐光安定剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、顔料、染料などの他の成分を含有することができる。添加剤として公知の成分を含有することができる。
【0056】
<その他の難燃剤>
その他の難燃剤は、上述の難燃剤以外の難燃剤の例には、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、リン酸グアニジンなどのリン系難燃剤、メラミンシアヌレート、グアニジン化合物などの窒素系難燃剤やシリコーン系難燃剤などが含まれる。その他の難燃剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
<充填剤>
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填材の例には、澱粉、セルロース微粒子、セルロース繊維、木粉、おから、モミ殻、フスマなどの天然由来のポリマーやこれらの変性品などが含まれる。また、ポリアミド、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用できる。
【0058】
無機充填剤としては、繊維状、粉粒状または板状の充填剤が用いられる。繊維状充填剤の例には、ガラス繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、ウォラストナイト、硫酸バリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮などの金属の繊維状物が含まれる。
【0059】
粉粒状充填剤の例には、カーボンブラック、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、酸化鉄、酸化チタン、アルミナなどの金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属の硫酸塩、その他、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末が含まれる。板状無機充填剤の例には、マイカ、ガラスフレーク、層状ケイ酸塩、各種金属箔が含まれる。充填剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
<衝撃改良剤>
衝撃改良剤は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)などのオレフィン由来の構成単位を主体とする熱可塑性 エラストマーが好ましい。また、衝撃改良剤は、熱可塑性エラストマーも使用でき、特にオレフィン由来の構成単位を含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーの例には、メチルメタアクリレート-ブタジエン-スチレン共重合体(MBS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)およびブチルアクリレート-メチルメタアクリレート共重合体が含まれる。衝撃改良剤は、樹脂組成物の相容性および難燃性や、樹脂組成物における熱可塑性エラストマーの分散性の観点から、SEBSおよびEORが好ましい。衝撃改良剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0061】
<結晶核剤>
結晶核剤は、公知のものを使用できる。結晶核剤の例には、カルボン酸の金属塩、ジベンジルソルビトール誘導体、リン酸のアルカリ金属塩が含まれる。結晶核剤の具体的な例には、安息香酸ナトリウム、アジピン酸アルミニウム、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ビス(p-メチル-ベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4-ビス(p-エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロロベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデン)ソルビトール、ナトリウムビス(4-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウムビス(4-t-メチルフェニル)ホスフェート、カリウムビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェートが含まれる。
【0062】
<酸化防止剤>
酸化防止剤の例には、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が含まれる。酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤がより好ましい。酸化防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
<耐光安定剤>
耐光安定剤の例には、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、NH型、Nメチル型のヒンダードアミン系耐光安定剤が含まれる。耐光安定剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
<帯電防止剤>
帯電防止剤の例には、脂肪酸第四級アンモニウムイオン塩、ポリアミン四級塩などのカチオン系帯電防止剤;高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールEO付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アニオン型のアルキルスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩などのアニオン系帯電防止剤;多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリコールリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルなどのノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤などの両性帯電防止剤が含まれる。帯電防止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0065】
<滑剤>
滑剤の例は、脂肪酸塩、脂肪酸アミド、シランポリマー、固体パラフィン、液体パラフィン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アミド、シリコーン粉末、メチレンビスステアリン酸アミドおよびN,N´-エチレンビスステアリン酸アミドが含まれる。滑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
<可塑剤>
可塑剤の例には、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、ミネラルオイルが含まれる。可塑剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0067】
本発明の樹脂組成物におけるその他の添加剤の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲であり、例えば、樹脂組成物の全量に対して、0.1~30質量%程度の範囲内であり、0.1~20質量%の範囲内が好ましい。
【0068】
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。樹脂組成物は、例えば各成分を混合し、溶融混練することで製造できる。
【0069】
本実施の形態における溶融混練は、バンバリーミキサー、ロール、プラストグラフ、押出機(単軸押出機、多軸押出機(例えば、二軸押出機)など)、およびニーダーなどの混練装置を用いて行われる。溶融混練は、生産効率の観点から、押出機を用いることが好ましい。さらに、溶融混練は、高いせん断性を付与できる観点から、多軸押出機を用いることがより好ましく、二軸押出機を用いることが特に好ましい。ここで、押出機の用語は、押出混練機を含む範疇で用いられる。
【0070】
溶融混練の際の温度(溶融混練温度)は、ポリオレフィン系樹脂の溶融温度以上である。溶融混練温度は、150~250℃が好ましく、使用するポリオレフィン系樹脂に応じて適宜選択される。ポリオレフィン系樹脂として、ポリプロピレン系樹脂を用いる場合、溶融混練温度は、160~220℃が好ましい。溶融混練に押出機を用いる場合、混練溶融温度はシリンダ温度に相当する。
【0071】
なお、溶融混練を行う前に、各成分をタンブラーやヘンシェルミキサーとして知られた高速ミキサーなどの各種混合機を用いて予め混合(ドライブレンド)しておいてもよい。
【0072】
本実施の形態の製造方法においては、溶融混練物をストランド状に押し出した後、ストランド状に押し出した混練物をペレット状やフレーク状などの形態に加工できる。
【0073】
なお、本発明の樹脂組成物は、粉末状、顆粒状、タブレット(錠剤)状、ペレット状、フレーク状などの各種形態をとることができる。
【0074】
実施の形態における樹脂組成物は、任意の形状に成形されて、成形品とされる。成形品の成形方法の例には、射出成形、押出成形、ブロー成形、真空成形、異形押出成形、圧縮成形、ガスアシスト成形が含まれる。
【0075】
本実施の形態における樹脂組成物を用いて、射出成形品を製造する際には、従来公知の射出成形機が使用できる。射出成形品は、シリンダ内で樹脂組成物を溶融させ、溶融させた樹脂組成物を金型に射出し、冷却固化させることで製造できる。射出速度および圧力は適宜調整する。射出成形の条件は、例えば、シリンダ温度(溶融温度)が170~230℃、金型温度が40~80℃であるのが好ましい。
【0076】
成形品の形状や寸法は、特に制限されず、成形品の用途に応じて任意に設定されうる。
【0077】
成形品は、家電、OAおよびメディア関連機器、光学用機器および通信機器などの電気機器の内装または外装部品、自動車、機械部品、住宅・建築用部材に使用できる。成形品は、優れた強度や良好な難燃性を有し、環境への負荷が小さい観点から、複写機、プリンター、パーソナルコンピューター、テレビなどの電気機器の外装部品(特に筐体)として好適に使用できる。
【0078】
樹脂組成物が効果を発揮できるメカニズムは、以下のように推測される。
従来、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物とを有する樹脂組成物は、難燃性を示すことが知られている。従来の樹脂組成物は、難燃性を示すことは知られていたが、その他にどのような効果を有するかについては知られていなかった。
本発明者らは、従来の難燃性を有する樹脂組成物を用いて製造された成形品が、成形品単体、成形品を用いた組立品の保管時、搬送時、使用時などに高温環境下では、フォギングが生じてしまうことを見出した。
本実施の形態では、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物とに加え、金属水酸化物を添加することにより、ホスフィン酸金属塩の含有量を低くしても難燃性を維持することができ、かつフォギングの発生を抑制できた。フォギングの発生の原因は、溶融混練時にホスフィン酸金属塩から発生する酸成分がポリオレフィンを分解することにより生じる低分子化合物が成形品中に残存し、成形品が高温環境下で揮発して、他の部品に付着することによると考えられる。
金属水酸化物は、燃焼時に吸熱反応によって燃焼性を発揮できることから、ホスフィン酸金属塩の添加量を減少させても難燃性を維持できる。また、金属水酸化物は、溶融混練時に発生する酸成分を中和できるため低分子量化合物の生成を抑制することでフォギングを著しく抑制できると考えられる。
【実施例0079】
<実施例1>
ポリオレフィンであるポリプロピレンを73.5質量%と、ホスフィン酸金属塩であるジエチルホスフィン酸アルミニウムを1.0質量%と、金属水酸化物である水酸化アルミニウム(平均粒子径0.7μm)を25質量%と、NOR型ヒンダードアミン化合物であるNOR-1を0.5質量%とを溶融混練した。溶融混練は二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30α」)を用い、シリンダ温度180℃、スクリュー回転数150rpmで溶融混錬を行った。押出機より吐出されたストランドをペレタイザーにより切断し、直径2mm×長さ3mmのペレットに加工して、樹脂組成物とした。
【0080】
<実施例2>
ポリプロピレンを72.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを2.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0081】
<実施例3>
ポリプロピレンを71.95質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、NOR-1を0.05質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0082】
<実施例4>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0083】
<実施例5>
ポリプロピレンを67.0質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、NOR-1を5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0084】
<実施例6>
ポリプロピレンを91.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、水酸化アルミニウムを5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0085】
<実施例7>
ポリプロピレンを86.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、水酸化アルミニウムを10質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0086】
<実施例8>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0087】
<実施例9>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、金属水酸化物である水酸化アルミニウム(平均粒子径0.1μm)を25質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0088】
<実施例10>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、金属水酸化物である水酸化アルミニウム(平均粒子径5.5μm)を25質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0089】
<実施例11>
ポリプロピレンを66.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、水酸化アルミニウムを30質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0090】
<実施例12>
ポリプロピレンを36.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、金属水酸化物である水酸化アルミニウムを60質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0091】
<実施例13>
ポリプロピレンを69.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0092】
<実施例14>
ポリオレフィンであるポリエチレンを69.5質量%と、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0093】
<実施例15>
ポリプロピレンを69.5質量%とし、ホスフィン酸金属塩としてホスフィン酸カルシウムを5.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0094】
<実施例16>
ポリプロピレンを69.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを5.0質量%とし、金属水酸化物として水酸化マグネシウムを25質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0095】
<実施例17>
ポリプロピレンを69.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを5.0質量%とし、NOR型ヒンダードアミン化合物であるNOR-2を0.5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0096】
<実施例18>
ポリプロピレンを68.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを6.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0097】
<実施例19>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、金属水酸化物である水酸化アルミニウム(平均粒子径0.05μm)を25質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0098】
<実施例20>
ポリプロピレンを71.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、金属水酸化物である水酸化アルミニウム(平均粒子径10.5μm)を25質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0099】
<比較例1>
ポリプロピレンを74.0質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを0.5質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0100】
<比較例2>
ポリプロピレンを31.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、水酸化アルミニウムを65質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0101】
<比較例3>
ポリプロピレンを67.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを7.0質量%としこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0102】
<比較例4>
ポリプロピレンを93.5質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、水酸化アルミニウムを3質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0103】
<比較例5>
ポリプロピレンを71.97質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、NOR-1を0.03質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0104】
<比較例6>
ポリプロピレンを66.0質量%とし、ジエチルホスフィン酸アルミニウムを3.0質量%とし、NOR-1を6.0質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂組成物を作製した。
【0105】
なお、ポリオレフィンとして、ポリプロピレンはプライムポリプロJ715M(株式会社プライムポリマー)を使用し、ポリエチレンはHJ560(日本ポリエチレン株式会社)を使用した。ホスフィン酸金属塩として、ジエチルホスフィン酸アルミニウムはOP930(クラリアント社)を使用し、ホスフィン酸カルシウムは純度98%の試薬(富士フイルム和光純薬株式会社)を使用した。金属水酸化物として、平均粒子径0.7μmの水酸化アルミニウムはKH-108(KC社)を使用し、平均粒子径0.1μmの水酸化アルミニウムはNP-ALO-15(イーエムジャパン株式会社)、平均粒子径0.05μmの水酸化アルミニウムはNP-ALO-14(イーエムジャパン株式会社)、平均粒子径10.5μmの水酸化アルミニウムはB-308(アルモリックス株式会社)、水酸化マグネシウムはマグシーズX(神島化学工業株式会社)を使用した。NOR型ヒンダードアミン化合物として、NOR-1はFlamestab NOR116FF(BASF社)を使用し、NOR-2はTINUVIN NOR371FF(BASF社)を使用した。
【0106】
実施例1~実施例20および比較例1~比較例6に含まれる各成分を表1に示す。
【0107】
【0108】
[評価方法]
(燃焼性の評価)
各実施例および各比較例の樹脂組成物のペレットを80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(J140AD-110H、株式会社日本製鋼所製)によって、シリンダ温度185~200℃、金型温度80℃の条件で、燃焼性評価用試験片(全長125mm、厚さ1.6mm、幅13mm)を成形した。得られた試験片を用いて、UL94V(20mm垂直燃焼試験)規格に準拠して燃焼性を評価した。以下の評価基準が「〇」である場合を合格とし、「×」である場合を不合格とした。
評価基準
○ : V-2
× : 不適合
【0109】
(燃焼時間の評価)
上述の燃焼性の評価において、n=5での各試験片の燃焼時間について比較を行った。以下の評価基準が「〇」または「△」である場合を合格とし、「×」である場合を不合格とした。
評価基準
○ : n=5での各試験片の燃焼時間がいずれも20秒以下であった。
△ : n=5での各試験片の燃焼時間が20秒を超えるものもあったが、いずれも30秒以下であった。
× : n=5での各試験片の燃焼時間が30秒を超えるものがあった。
【0110】
(フォギングの評価)
上述の燃焼性評価用試験片から、13mm×13mm×1.6mmのサイズに試験片を切り出し、フォギング評価用の試験片とした。実施例および比較例の樹脂組成物から得られたフォギング評価用の試験片を容積50ml、直径34mm、高さ80mm、開口径20mmのガラス製サンプル瓶にそれぞれ入れ、各サンプル瓶の上部の開口部をガラス板で覆った。試験片がそれぞれ入ったサンプル瓶をホットプレートでサンプル瓶の下部から80℃で14日間加熱した。分光光度計V-670(日本分光株式会社)を用いて、サンプル瓶の上部の開口部を覆ったガラス板の曇り度合い(波長589nmでの光線透過率)を測定し、試験前のガラス板の光線透過率との差を求めた。曇り度合いが高い場合、すなわち透過率の低下幅が大きい場合をフォギングが生じたと評価した。以下の評価基準が「〇」または「△」である場合を合格とし、「×」である場合を不合格とした。
評価基準
○ : 透過率低下が0.5%未満であった
△ : 透過率低下が0.5%以上、2%未満であった
× : 透過率低下が2%以上であった
【0111】
(衝撃強度の評価)
各実施例および各比較例の樹脂組成物のペレットを80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(J140AD-110H、株式会社日本製鋼所製)によって、シリンダ温度185~200℃、金型温度80℃の条件で、シャルピー衝撃強度評価用試験片(全長80mm、厚さ4mm、幅10mm、ノッチ部の幅8mm)を成形した。得られた試験片を用いて、シャルピー衝撃強度をISO179に準拠して測定した。10個の試験片についてシャルピー衝撃強度を測定し、その数平均値を算出した。以下の評価基準が「〇」または「△」である場合を合格とし、「×」である場合を不合格とした。
評価基準
○ : 10kJ/m2以上
△ : 6kJ/m2以上10kJ/m2未満
× : 6kJ/m2未満
【0112】
(曲げ弾性率の評価)
各実施例および各比較例の樹脂組成物のペレットを80℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(J140AD-110H、株式会社日本製鋼所製)によって、シリンダ温度185~200℃、金型温度80℃の条件で、曲げ評価用試験片(全長80mm、厚さ4mm、幅10mm)を成形した。得られた試験片を用いて、曲げ弾性率をISO178に準拠して測定した。5個の試験片について曲げ弾性率を測定し、その数平均値を算出した。以下の評価基準が「〇」または「△」である場合を合格とし、「×」である場合を不合格とした。
評価基準
○ : 1500MPa以上
△ : 1200MPa以上1500MPa未満
× : 1200MPa未満
【0113】
実施例1~実施例20および比較例1~比較例6について、各評価結果を表2に示す。
【0114】
【0115】
表1および表2に示されるように、実施例1と、比較例1との比較から、ジアルキルホスフィン酸アルミニウムが1質量%未満では、燃焼ランクおよび燃焼時間が良好でなかった。実施例18と、比較例3との比較から、ジアルキルホスフィン酸アルミニウムが6質量%超では、フォギングが良好でなかった。実施例12と、比較例2との比較から、金属水酸化物が60質量%超では、衝撃強度が良好ではなかった。実施例4と、比較例4との比較から、金属水酸化物が60質量%超では、衝撃強度が良好ではなかった。
【0116】
表1および表2に示されるように、実施例13と、実施例14との比較から、ポリオレフィンとしてポリエチレンよりもポリプロピレンを使用した方が、燃焼時間が良好であった。実施例1および実施例2と、実施例13および実施例18との比較から、ホスフィン酸金属塩が2~5質量%の範囲内であれば、燃焼時間、フォギング、衝撃強度が良好であった。実施例5および実施例6と、実施例11および実施例12との比較から、金属水酸化物が10~30質量%の範囲内であれば、燃焼時間、曲げ弾性率、衝撃強度が良好であった。実施例13と、実施例15との比較から、ホスフィン酸カルシウムよりもジアルキルホスフィン酸アルミニウムを使用した方が、燃焼時間が良好であった。実施例8~実施例10との比較から、金属水酸化物の平均粒子径が0.1~5.5μmの範囲内であれば、フォギングおよび曲げ弾性率がより良好であった。実施例16~実施例17との比較から、水酸化マグネシウムよりも水酸化アルミニウムの方がよりフォギングが良好であった。
【0117】
本実施の形態によれば、樹脂組成物(成形品)は、ポリオレフィンと、ホスフィン酸金属塩と、NOR型ヒンダードアミン化合物と、金属水酸化物とが所定の割合で含有されているため、燃焼性、燃焼時間、フォギング、衝撃強度および曲げ弾性率が良好であった。