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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121761
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】手術用立体観察装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/22 20060101AFI20240830BHJP
   G02B 21/36 20060101ALI20240830BHJP
   G02B 21/00 20060101ALI20240830BHJP
   G03B 35/10 20210101ALI20240830BHJP
【FI】
G02B21/22
G02B21/36
G02B21/00
G03B35/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023133901
(22)【出願日】2023-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2023028287
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝之
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 秀司
【テーマコード(参考)】
2H052
2H059
【Fターム(参考)】
2H052AA13
2H052AB19
2H052AB24
2H052AB27
2H052AF21
2H059AA08
2H059CA04
(57)【要約】
【課題】カメラ内の構造を複雑にせずに、ドクター用及びアシスタント用の立体映像を得ることができる手術用立体観察装置を提供する。
【解決手段】2つの変倍光学系5が第1方向Aに対して45度の斜め状態で配置され、各変倍光学系5を通過した光束を、ビームスプリッター6とプリズム7を用いて、それぞれ第1光束L1と第2光束L2に分けている。第1光束L1を第1撮像素子E1で受光してドクターS1用の第1モニターM1に表示し、第2光束L2を第2撮像素子E2で受光してアシスタントS2用の第2モニターM2に表示しているため、ドクターS1及びアシスタントS2はそれぞれの方向性で術部Gの状態を立体的に観察することができる。変倍光学系5が2つで済むため、カメラ2の構造も複雑にならず、カメラ2製造時の光学調整が容易である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドクターから術部を見る方向を第1方向とし、第1方向と相違した方向性でアシスタントが術部を見る方向を第2方向とし、
術部を撮像するカメラと、カメラで撮像した術部の立体映像を、ドクター用として第1方向から見た方向性で表示する第1モニターと、アシスタント用として第2方向から見た方向性で表示する第2モニターを備えた手術用立体観察装置であって、
前記カメラが、
術部から反射された光束を通過させる1つの対物光学系と、
対物光学系を通過した光束の範囲内で第1方向に対して斜めに設けられた2つの変倍光学系と、
変倍光学系の上方にそれぞれ設けられ、変倍光学系を通過した光束を、上方に通過する第1光束と、第2方向又は反第2方向に反射される第2光束に分離する光分離手段と、
光分離手段の上方にそれぞれ設けられ、第1光束を第1方向又は反第1方向に反射する光反射手段と、
第1光束を受光して術部の立体映像信号を第1モニターに出力する第1撮像素子と、
第2光束を受光して術部の立体映像信号を第2モニターに出力する第2撮像素子と
を備えたことを特徴とする手術用立体観察装置。
【請求項2】
変倍光学系が第1方向に対して45度の斜め状態で設けられたことを特徴とする請求項1記載の手術用立体観察装置。
【請求項3】
2組の光反射手段と第1撮像素子が、第1光束の平行状態を維持したまま、光反射手段の光軸を中心に水平方向で回転自在であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の手術用立体観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術用立体観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手術台の近くに患者の術部を撮影するカメラを設置し、そのカメラにより両眼視差を有する一対の立体映像を撮像し、その立体映像をモニターに表示して、ドクターが3D用の専用メガネを介して見ることにより、術部の状態を立体的に観察できる手術用立体観察装置が知られている。
【0003】
ドクターはモニターに表示された術部の立体映像を頭を上げた状態(ヘッドアップ状態)で観察できるため、顕微鏡で行う手術のように下向き姿勢で接眼部に目を付ける必要がなく、楽な姿勢で手術を行うことができる。
【0004】
手術はドクターだけでなくアシスタントも協力して行われる。アシスタントはドクターが術部を見る方向とは90度相違した横方向に立ち、その方向から術部に対して手術の補助を行う。そのため、カメラにはドクター用のモニターだけでなく、アシスタント用のモニターも接続される。
【0005】
ドクター用のモニターには、ドクターから見た方向での術部の立体映像が表示され、アシスタント用のモニターには、アシスタントから見た方向での術部の立体映像が表示される。アシスタントはドクターの横に位置しているため、アシスタント用のモニターには、ドクター用のモニターとは方向が90度相違した術部の立体映像が表示される。
【0006】
カメラの内部には、術部で反射された光束が通過する1つの対物光学系が設けられている。そして対物光学系を通過した光束の範囲内に、ドクター用の光束を取り出すための2本の変倍光学系がドクターから見た方向性で左右に設けられ、またアシスタント用の光束を取り出すための2本の変倍光学系がアシスタントから見た方向性で左右に設けられている。
【0007】
そしてドクター用及びアシスタント用の変倍光学系から取り出された光束をそれぞれ撮像素子で撮影し、ドクター用の立体映像はドクター側のモニターに表示し、アシスタント用の立体映像はアシスタント側のモニターに表示する。
【0008】
このようにすることにより、ドクターとアシスタントはそれぞれ自分の方向性で術部の立体映像を見ることができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2017-35436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、ドクター用とアシスタント用の両方の立体映像を得るために、合計4本の変倍光学系をカメラ内に設ける必要があり、カメラ内の構造が複雑になって、カメラ製造時の光学調整が大変に困難であった。
【0011】
本発明はこのような従来の技術に着目してなされたものであり、カメラ内の構造を複雑にせずに、ドクター用及びアシスタント用の立体映像を得ることができる手術用立体観察装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の技術的側面によれば、ドクターから術部を見る方向を第1方向とし、第1方向と相違した方向性でアシスタントが術部を見る方向を第2方向とし、術部を撮像するカメラと、カメラで撮像した術部の立体映像を、ドクター用として第1方向から見た方向性で表示する第1モニターと、アシスタント用として第2方向から見た方向性で表示する第2モニターを備えた手術用立体観察装置であって、前記カメラが、術部から反射された光束を通過させる1つの対物光学系と、対物光学系を通過した光束の範囲内で第1方向に対して斜めに設けられた2つの変倍光学系と、変倍光学系の上方にそれぞれ設けられ、変倍光学系を通過した光束を、上方に通過する第1光束と、第2方向又は反第2方向に反射される第2光束に分離する光分離手段と、光分離手段の上方にそれぞれ設けられ、第1光束を第1方向又は反第1方向に反射する光反射手段と、第1光束を受光して術部の立体映像信号を第1モニターに出力する第1撮像素子と、第2光束を受光して術部の立体映像信号を第2モニターに出力する第2撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の技術的側面によれば、変倍光学系が第1方向に対して45度の斜め状態で設けられたことを特徴とする。
【0014】
本発明の第3の技術的側面によれば、2組の光反射手段と第1撮像素子が、第1光束の平行状態を維持したまま、それぞれ光反射手段の光軸を中心に水平方向で回転自在であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の技術的側面によれば、2つの変倍光学系が第1方向に対して斜めに配置され、各変倍光学系を通過した光束を、光分離手段と光反射手段を用いて、それぞれ第1方向又は反第1方向に向かう第1光束と、第2方向又は反第2方向に向かう第2光束に分けている。そして第1光束を第1撮像素子で撮像してドクター用の第1モニターに表示し、第2光束を第2撮像素子で撮像してアシスタント用の第2モニターに表示している。そのためドクター及びアシスタントはそれぞれの方向性で術部の状態を立体的に観察することができる。変倍光学系が2つで済むため、カメラの構造も複雑にならず、カメラ製造時の光学調整が容易である。
【0016】
本発明の第2の技術的側面によれば、変倍光学系が第1方向に対して45度の斜め状態で設けられているため、第1方向と第2方向は90度相違した状態となり、第1撮像素子で撮像される一対の第1光束間の間隔(ステレオベース)と、第2撮像素子で撮像される一対の第2光束間の間隔(ステレオベース)が同じになる。そのためドクターとアシスタントは同じ立体感で術部を観察することができる。
【0017】
本発明の第3の技術的側面によれば、2組の光反射手段と第1撮像素子が、第1光束の平行状態を維持したまま、それぞれ光反射手段の光軸を中心に水平方向で回転自在であるため、第1モニターを観察するドクターは術部を観察する方向を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る手術用立体観察装置を示す斜視図。
図2】カメラの内部構造を示す斜視図。
図3】カメラの内部構造とモニターを示す概略平面図。
図4】第2実施形態に係る図3相当の概略平面図。
図5】光反射手段及び第1撮像素子を別の方向へ回転させた図4相当の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図3は本発明の第1実施形態を示す図である。
【0020】
手術する術部Gの上方にはスタンド装置の支持アーム1によりカメラ2が支持されている。このカメラ2により術部Gを立体的に撮影することができる。術部Gの前方にはドクターS1が立ち、ドクターS1の右側にはアシスタントS2が立っている。アシスタントS2はドクターS1が術部Gを見る方向(以下、第1方向)Aとは90度相違した方向(以下、第2方向)Cから術部Gに対してドクターS1が行う手術の補助を行う。
【0021】
ドクターS1とアシスタントS2の対面にはそれぞれ術部Gの状態を観察するためのドクターS1用の第1モニターM1とアシスタントS2用の第2モニターM2が設置されている。これらのモニターM1、M2にはカメラ2から送られてきた術部Gの立体映像が表示される。ドクターS1及びアシスタントS2はそれぞれ専用メガネ3を装着している。専用メガネ3には左右に偏光レンズが取付けられており、ドクターS1及びアシスタントS2はこの専用メガネ3を介してモニターM1、M2を見ることにより、術部Gを立体的に観察することができる。
【0022】
各モニターM1、M2には術部Gの立体映像が表示されるため、術部Gの奥行きも認識することができ、ドクターS1及びアシスタントS2は適切な手術を行うことができる。ドクターS1とアシスタントS2は、頭を上げた状態(ヘッドアップ状態)でモニターM1、M2を観察しながら手術を行うため、楽な姿勢で手術を行うことができる。
【0023】
しかもドクターS1とアシスタントS2はそれぞれの方向性(第1方向A・第2方向C)で術部Gを観察することができる。すなわちドクターS1が術部Gに対して右手を右側から近づけると、ドクターS1用の第1モニターM1に表示された立体映像においても、右手が右側から近づく状態が表示される。アシスタントS2にとってはドクターS1の右側は自分にとっての手前側のため、アシスタントS2用の第2モニターM2における立体映像中にはドクターS1の右手が自分側(第2方向C)から術部Gに近づく状態が表示される。
【0024】
アシスタントS2が右手を術部Gに右側から近づけると、その方向はドクターS1にとって自分とは反対側(反第1方向B)になるため、アシスタントS2の右手がドクターS1用の第1モニターM1における立体映像中には反第1方向Bから術部Gに近づく状態が表示される。
【0025】
カメラ2の内部にはモニターM1、M2にそのような立体映像を表示させるため、光学的機構と撮像機構が設けられている。カメラ2の下部には術部Gで反射された光束を通過させる1つの対物光学系4が設けられている。対物光学系4の上部には、対物光学系4を通過した光束の範囲内に2つの変倍光学系5が設けられている。この変倍光学系5はドクターS1が術部Gを見る第1方向Aに対して45度の斜め状態で設けられている。
【0026】
この2つの変倍光学系5の上方にはそれぞれ光分離手段としてのビームスプリッター6が設けられている。このビームスプリッター6は変倍光学系5を通過した光束を、上方に通過する第1光束L1と、反第2方向Dに反射される第2光束L2に分離する。ビームスプリッター6の上方には光反射手段としてのプリズム7が設けられ、ビームスプリッター6を通過した第1光束L1を第1方向Aへ反射する。
【0027】
プリズム7で第1方向Aへ反射された第1光束L1は結像レンズ8を経て第1撮像素子E1に受光される。ビームスプリッター6で反第2方向Dへ反射された第2光束L2は結像レンズ9を経て第2撮像素子E2に受光される。
【0028】
第1撮像素子E1はドクターS1が見る第1方向Aでの左右に設けられ、第2撮像素子E2はアシスタントS2が見る第2方向Cでの左右に設けられている。そのため、第1撮像素子E1及び第2撮像素子E2でそれぞれ左右両眼視差を有する立体映像を撮像することができる。
【0029】
しかもドクターS1及びアシスタントS2はそれぞれ自分の方向性の立体映像を見ることができるため、モニターM1、M2の映像における左右方向と実際の左右方向が一致し、手術が行いやすい。
【0030】
更に変倍光学系5が第1方向Aに対して45度の斜め状態で設けられているため、第1撮像素子E1で撮像される一対の第1光束L1間の間隔(ステレオベース)P1と、第2撮像素子E2で撮像される一対の第2光束L2間の間隔(ステレオベース)P2が同一となり、ドクターS1とアシスタントS2は同じ立体感で術部Gを観察することができる。
【0031】
図4及び図5は、本発明の第2実施形態を示す図である。本実施形態は、前記第1実施形態と同様の構成要素を備えている。よって、それらと同様の構成要素については共通の符号を付すとともに、重複する説明を省略する。
【0032】
この実施形態に係るカメラ10は、カメラ10内に内蔵された駆動メカニズムにより、2組のプリズム7と第1撮像素子E1が、第1光束L1の平行状態を維持したまま、プリズム7の光軸Kを中心に水平方向で回転させることができる。
【0033】
カメラ10には図示せぬスイッチが設けられており、ドクターS1はそのスイッチを操作することにより、プリズム7と第1撮像素子E1を第1方向Aから左右に回転させて、術部Gを観察方向を変更することができる。ドクターS1が第1方向Aだけでなく、別の方向から術部Gを観察したい場合に便利である。
【0034】
但し、観察方向を変更する場合、プリズム7と第1撮像素子E1を第1方向Aから右側へ変更する場合と、左側へ変更する場合とで、第1光束間L1の間隔(ステレオベース)P3、P4が変化するため、ドクターS1が第1モニターM1を観察する場合に、その立体感に若干の相違がある。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、ドクターS1とアシスタントS2がそれぞれの方向性で術部Gを立体的に観察可能でありながら、変倍光学系5は2つで済むためカメラ2の構造が複雑にならず、カメラ2、10製造時の光学調整が容易である。
【符号の説明】
【0036】
2、10 カメラ
4 対物光学系
5 変倍光学系
6 ビームスプリッター(光分離手段)
7 プリズム(光反射手段)
A 第1方向
B 反第1方向
C 第2方向
D 反第2方向
G 術部
K 光軸
S1 ドクター
S2 アシスタント
L1 第1光束
L2 第2光束
M1 第1モニター
M2 第2モニター
E1 第1撮像素子
E2 第2撮像素子
P1~P4 ステレオベース
図1
図2
図3
図4
図5