(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024121776
(43)【公開日】2024-09-06
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池のための再生グラファイト
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240830BHJP
C01B 32/215 20170101ALI20240830BHJP
【FI】
H01M10/54
C01B32/215
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023207877
(22)【出願日】2023-12-08
(31)【優先権主張番号】18/114,488
(32)【優先日】2023-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522346431
【氏名又は名称】アセンド エレメンツ,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523465160
【氏名又は名称】メキシケム フルーア インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】タン,イールン
(72)【発明者】
【氏名】グラッツ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】アシュール,ラカン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカタラマン,カーティク
【テーマコード(参考)】
4G146
5H031
【Fターム(参考)】
4G146AA02
4G146AB01
4G146AC02B
4G146AC27B
4G146CA02
4G146CA08
4G146CA16
4G146CB12
4G146CB37
4G146CB38
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】 リチウムイオン電池のための再生グラファイトを提供する。
【解決手段】 リチウムイオン電池内のアノード材料として使用するために、再生電池ストリームから精製グラファイトを生成する方法が記載される。方法は、濾過により、グラファイトを含む沈殿物を得るための浸出ステップを含み、沈殿物は、その後、精製グラファイトを形成するために、水酸化物塩基の水溶液を用いたスラリーとして繰り返し焙焼され、及びその後、洗浄される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生電池ストリームから精製グラファイトを生成する方法であって、
浸出液及びグラファイトを含む沈殿物を得るために、消耗したリチウムイオン電池のブラックマスを浸出させることと、
前記沈殿物を、
40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第1の水溶液を用いて、前記沈殿物のスラリーを調製すること、及び
焼結された沈殿物を形成するために、前記沈殿物の前記スラリーを250℃未満の温度で焙焼すること
によって焼結させることと、
前記焼結された沈殿物を、
40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第2の水溶液を用いて、前記焼結された沈殿物のスラリーを調製すること、及び
焼結グラファイトを形成するために、前記焼結された沈殿物の前記スラリーを250℃未満の温度で焙焼すること
によって焼結させることと、
精製グラファイトを形成するために、前記焼結グラファイトを洗浄することと
を含む方法。
【請求項2】
前記沈殿物の前記スラリーは、約1:1~1:4の、前記第1の水溶液に対する前記沈殿物の比率で調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結された沈殿物の前記スラリーは、約1:1~1:4の、前記第2の水溶液に対する前記焼結された沈殿物の比率で調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の水溶液の前記濃度及び前記第2の水溶液の前記濃度は、同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の水溶液の前記濃度、前記第2の水溶液の前記濃度又は両方は、10重量%~35重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の水溶液の前記濃度、前記第2の水溶液の前記濃度又は両方は、20重量%~30重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記水酸化物塩基は、NaOH又はKOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記沈殿物の前記スラリー、前記焼結された沈殿物の前記スラリー又は両方は、100℃~225℃の温度で焙焼される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記沈殿物の前記スラリー、前記焼結された沈殿物の前記スラリー又は両方は、1~20時間の時間にわたって焙焼される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記時間は、1~15時間である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記沈殿物は、セラミック不純物を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記セラミック不純物は、アルミナである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記焼結グラファイトは、洗浄水溶液で6~10のpHまで洗浄される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記洗浄水溶液は、水である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記洗浄水溶液は、0.1M以下の塩基の濃度を有するアルカリ水溶液である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記洗浄水溶液で前記焼結グラファイトを洗浄した後、酸性洗浄溶液による更なる洗浄、それに続く水による洗浄を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記酸性洗浄溶液は、HCl又は硫酸を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記沈殿物は、82%~97%の純度を有するグラファイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記精製グラファイトは、99.5%超の純度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
再生電池ストリームから精製グラファイトを生成する方法であって、
浸出液と、82%~97%の純度を有するグラファイト及びアルミナを含むセラミック不純物を含む沈殿物とを得るために、消耗したリチウムイオン電池のブラックマスを浸出させることと、
前記沈殿物を、
20重量%~30重量%の水酸化物の濃度を有するNaOH水溶液を用いて、前記沈殿物のスラリーを調製すること、及び
焼結された沈殿物を形成するために、前記沈殿物の前記スラリーを150℃~220℃の温度で焙焼すること
によって焼結させることと、
前記焼結された沈殿物を、
前記NaOH水溶液を用いて、前記焼結された沈殿物のスラリーを調製すること、及び
焼結グラファイトを形成するために、前記焼結された沈殿物の前記スラリーを150℃~220℃の温度で焙焼すること
によって焼結させることと、
99.5%超の純度を有する精製グラファイトを形成するために、洗浄水溶液で前記焼結グラファイトを洗浄することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
リチウムイオン電池は、電気モーターの迅速な加速が求められる電気自動車(EV)及び電動工具などの高放電用途における二次(充電式)電池のための好ましい化学構造である。リチウムイオン電池は、通常、銅又はアルミニウムの平坦なシートである電流コレクタ上に適用又は堆積された電荷材料、導電性粉体及び結合剤を含む。電荷材料は、通常、グラファイト又は炭素であるアノード材料と、所定の比率のリチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、アルミニウム、鉄及びリンなどの金属を含むカソード材料とを含み、これによりリチウムイオンセルのいわゆる「電池ケミストリー」を定義する。好ましい電池ケミストリーは、供給者及び用途間で変化し、リチウムイオン電池の再生の取り組みは、通常、再生された電荷材料製品における電池ケミストリーの指定されたモル比に従う。構成製品の純度は、再生されたセルの品質及び性能に非常に関連し、これは、多くの場合、99.5%の純度を意味する、いわゆる「電池グレード」材料に依存する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
概要
リチウムイオン電池でアノード材料として使用される再生グラファイトのための精製プロセスは、一連の焙焼、それに続く脱イオン化(DI)水による洗浄、任意選択によりそれに続く酸洗浄を含む。グラファイト源は、電池再生ストリームからのブラックマスの酸浸出など、適切なプロセスの結果としてもたらされる。不純物、最も顕著には酸化アルミニウムは、多くの場合、グラファイト源中に微量に存在する。焙焼プロセスは、洗浄との組合せでグラファイトを精製するために複数回にわたって反復され、非水溶性金属不純物を金属水酸化物などの水溶性金属塩に変換すると考えられる。グラファイト中の金属塩の除去は、希釈水酸化ナトリウム溶液中における浸出と、水溶性不純物の更なる除去のための精製グラファイトの洗浄とによって行われる。
【0003】
本明細書における構成は、電気及びハイブリッド自動車(EV及びHV)の人気の増大が、NMC(Ni、Mn、Co)カソード材料並びにグラファイト及び類似の炭素形態を含むアノード材料などの電荷材料を含む大量の使用済みリチウムイオン電池を生成するという観察に部分的に基づく。NMC電荷材料のための再生プロセスは、技術又は顧客仕様に従って電荷材料金属の所定の比率を実現するために、Ni、Mn、Co塩の対照(バージン)ストックを使用した増強を多くの場合に伴う、使用済みのNMC電荷材料の浸出を実行する。使用済みのリチウムイオン電池からグラファイトを回収することもできる。残念ながら、NMC再生に対する従来の方式には、回収されたグラファイトの粒子が、細断及び浸出プロセス後に残留物として残る、最も顕著には酸化アルミニウムである不純物を有するという欠点がある。大量の不純物が再生グラファイト製品中に留まる場合、性能及び物理的なアノード材料特性に関する顧客仕様を満たすことが問題となり得る。従って、本明細書における構成は、99.5%以上及び99.9%に近い改善された純度を有するグラファイトを含むアノード材料を生成することにより、従来の電池の再生の欠点を大幅に克服する。
【0004】
更に詳細には、電池アノード材料のための精製グラファイトを生成するための電池再生環境において、再生は、浸出液及び沈殿物を得るために、消耗したリチウムイオン電池のブラックマスを浸出させることを含む。浸出液は、カソード材料の多くを取り込み、これにより、大きい割合のグラファイト及び/又はアノード材料のために使用された他の炭素形態を含む、溶解しなかった沈殿物として残留物を残す。2フェーズの焙焼プロセスは、40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第1の水溶液を用いて、沈殿物のスラリーを調製することと、焼結された沈殿物を形成するために、沈殿物のスラリーを250℃未満の温度で焙焼することとによる沈殿物の第1の焼結を含む。次に、焼結された沈殿物の更なる焼結は、40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第2の水溶液を用いて、焼結された沈殿物のスラリーを調製することと、焼結グラファイトを形成するために、焼結された沈殿物のスラリーを250℃未満の温度で再度焙焼することとを含む。焼結グラファイトの洗浄は、再生電池内のアノード電荷材料(アノード材料)のための精製グラファイトをもたらす。
【0005】
図面の簡単な説明
上記及び他の特徴は、同様の参照符号が異なる図全体を通して同じ部分を参照する添付図面に示される、本明細書に開示される特定の実施形態に関する以下の説明から明らになるであろう。図面は、必ずしも縮尺が正確ではなく、代わりに本発明の原理の例示に重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本明細書における構成と共に使用するのに適した再生環境のコンテキスト図である。
【
図2】本明細書に開示される再生プロセスのフローチャートである。
【
図3A】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3B】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3C】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3D】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3E】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3F】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【
図3G】再生された精製グラファイトの結果の例である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
詳細な説明
以下に描かれるのは、NMC電池などの電池を再生するための例示的な方法及び方式である。本明細書における構成は、一例としてNMC電池ケミストリーを利用するが、開示の方式は、任意の適切な電池ケミストリーと共に実施することができる。リチウムイオン電池は、カソード材料を形成するために使用される金属イオンのタイプ及び比率を定義する、いわゆる電池ケミストリーを利用する。特定の比率は、再生された電荷材料の製造者又は受領者によって設定される。電荷材料及び電荷材料プレカーソルの供給者は、製造者によって指定された仕様を満たす電荷材料製品を生成する。アノード材料は、ほとんど常に炭素又はグラファイトフォーミュレーションであり、グラファイトの純度及び形態も製造者によって設定される。
【0008】
図1は、本明細書における構成と共に使用するのに適した再生環境のコンテキスト図である。
図1を参照すると、再生シナリオ100は、通常、EVからのものである、配備されたリチウムイオン電池102に伴って開始する。リチウムイオン電池102は、十分な電荷を受け入れるための電荷材料の能力が大幅に劣化する前に有限数の充電サイクルを有する。これに加えて、車両の障害、衝突のダメージ、などに起因して早期に寿命が終了した電池がある。集合的な寿命が終了したものの再生ストリームは、使用済みのセル及び電荷材料104を含む消耗した電池の豊富な供給に寄与する。電池は、放電され、細砕、細断及び粉砕を通して粒状のブラックマスになるように攪拌される。浸出プロセスは、電荷材料及び任意の付随したケーシング並びに銅及びアルミニウムの電流コレクタを含むブラックマスを受け取る。カソード材料金属塩のカソード材料と炭素及びグラファイトのアノード材料の両方を含むブラックマスは、溶解した電荷材料金属の浸出液106を形成するために使用される。
【0009】
次いで、浸出液は、更に後述する精製グラファイトを収穫するために、グラファイトが豊富な沈殿物から分離され、浸出液は、別個の再生分岐を辿る。完全を期すために、浸出液は、硫酸浸出からの硫酸塩溶液中に少なくともNi、Mn及びCoを含むが、他の電荷材料金属及び/又は浸出酸を利用することもできる。浸出液106は、到来する再生ストリームの構成組成に基づいた電荷材料金属(Ni、Mn及びCo)のモル比を有する。モル比は、目標比率に調節された溶液108をもたらすために、硫酸塩(通常、フレッシュ材料のバージン又は対照形態)などの更なる金属塩(Ni、Mn及びCo塩)によって調節される。
【0010】
調節の結果としてもたらされる望ましい比率における電荷材料金属(電荷材料)を沈殿させるために浸出液のpHを調節することにより、1つ又は複数の容器110内に共沈反応が発生する。水酸化ナトリウム又は別の強力な塩基は、NMCなどの電荷材料金属が、通常、水酸化物として濾過によって分離可能である粒状の形態で溶液から抜け出すようにする。この浸出液のpH調節から共沈された粒状の形態は、新しい再生電池のための目標の電池ケミストリーのための望ましいモル比を有するカソード材料プレカーソルである。炭酸リチウム又は他のリチウム塩を伴う炉112内における焼結は、再生されたリチウムイオン電池のための活性カソード材料を形成する。例示的な構成では、活性カソード材料であるLiNixMnyCozO2は、NixMnyCoz(OH)2及びLi2CO3を焼結させることによって合成され、ここで、x、y及びzは、Ni、Mn及びCoの個々のモル比を表す。一般的な化学構造は、Ni、Mn及びCoの等しいモル成分を表すNMC111、NMC811、NMC622及びNMC532を含むが、浸出液106~108中の比率調節及び焼結により、任意の適切なモル比を実現することができる。次いで、再生されたカソード材料をカソード材料として再生ストリーム内にマージして戻すことができる一方、以下のプロセスは、再生電池のためのアノード材料を提供する。
【0011】
残っている浸出後の沈殿物は、グラファイト源を提供することにより、カソード材料の再生を補足する。消耗したリチウムイオン電池からのグラファイトの精製は、リチウムイオン電池のためのアノード高品質グラファイト材料(>99.5%)を提供する能力を有することが見出された。グラファイト沈殿物の精製は、非水溶性金属不純物を水溶性金属水酸化物に変換すると考えられる反復的な焙焼プロセス、それに続くグラファイト中のこれらの金属水酸化物を除去すると考えられる洗浄プロセスとによって実現される。更なる精製された再生グラファイトを生成するために、任意選択の酸洗浄プロセスを使用することもできる。
【0012】
図2は、本明細書に開示されるグラファイト再生プロセスのフローチャート200である。
図1及び
図2を参照すると、ステップ106におけるブラックマスの浸出は、浸出液及び沈殿物が提供され、沈殿物は、主には電池アノードからの固体の浸出されなかったグラファイトのみならず、様々な不純物を含む。溶解したカソード材料は、ステップ202に開示されるように、浸出され、浸出液によって持ち去られる。溶解しなかった沈殿物は、微量の不純物と交じり合った状態において、再生されたアノード材料としての使用に理想的である大きい百分率のグラファイトを含み、通常、82%~97%の純度を有する。沈殿物は、グラファイトから除去するのが最も困難な不純物の1つであるアルミナなどのセラミック不純物を更に含み得る。
【0013】
再生電池ストリームから精製グラファイトを生成する開示の方法は、不純物を効率的及び効果的に除去することが見出されており、ステップ204に描かれるように沈殿物を焼結させることによって開始する。これは、ステップ206に示されるように、40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第1の水溶液を用いて、沈殿物のスラリーを調製することを含む。第1の水溶液の濃度は、好ましくは、ステップ208に描かれるように、10重量%~35重量%である。最も好ましいのは、20重量%~30重量%である水酸化物塩基の濃度である。特定の構成では、水酸化物塩基は、ステップ210に開示されるように、NaOH又はKOHである。しかし、任意の適切な水酸化物を沈殿物と混合させることができる。例えば、水酸化物塩基の第1の水溶液は、7.5MのNaOH溶液であり、これは、混合中に沈殿物と組み合わされる。この組合せは、厚いペーストを形成し、これは、混合に対してある程度の抵抗力を有し得る。しかし、好ましくは、グラファイト含有沈殿物の完全な被覆が形成される。
【0014】
次いで、ステップ212に描かれるように、焼結された沈殿物を形成するために、沈殿物のスラリーが250℃未満の温度で焙焼される。いくつかの反復では、ステップ214に示されるように、120℃~180℃の温度を含む100℃~225℃の温度における焙焼で十分であり得る。焙焼の持続時間は、ステップ216に描かれるように、1~15時間を含む1~20時間の時間にわたるものであり得る。焙焼時間は、焙焼温度に対して調節することが可能であり、相対的に高い温度は、相対的に短い時間を受け入れることができる一方(高速の焙焼)、相対的に低い温度は、相対的に長い時間から恩恵を受けることになる(低速の焙焼)。焙焼時、約40分などごとに焙焼スラリーを混合又は攪拌することが好ましい。
【0015】
水酸化物スラリーの混合及び焙焼は、ステップ218に描かれるように、所定の数の反復又は純度閾値が実現される時点まで反復することができる。ほとんどの場合、2回の焙焼サイクルは、少なくとも99%の純度の電池グレードグラファイトの形成で驚くほど効率的であることが見出された。例えば、第1の反復の結果として得られる焼結された沈殿物のスラリーは、40重量%以下の水酸化物の濃度を有する水酸化物塩基の第2の水溶液を用いて調製することができる。次いで、沈殿物のスラリーは、焼結グラファイトを形成するために250℃未満の温度で焙焼される。更なる反復を使用することもできる。それぞれの反復ごとに、水酸化物塩基の水溶液の濃度及び/又は塩基のタイプは、前の又は後の反復と同じであり得るか又は異なり得る。それぞれの反復で使用される焙焼時間及び温度も同じであり得るか又は互いに変化し得る。
【0016】
一般に、水酸化物塩基の水溶液の量は、存在するグラファイトの量に応じて変化し得る。2回の焙焼反復を包含する例示的な構成では、沈殿物のスラリーは、約1:1~1:4の、第1の水溶液に対する沈殿物の比率を有し(第1の反復)、焼結された沈殿物のスラリーは、約1:1~1:4の、第2の水溶液に対する焼結された沈殿物の比率によって形成される(第2の反復)。異なる比率をそれぞれの反復ごとに使用することもできる。
【0017】
焼結は、水溶性水酸化物、最も顕著には酸化アルミニウムの残留水酸化物を形成するものと考えられる。従って、好適な一実施形態では、焼結グラファイトは、ステップ220に示されるように、精製グラファイトを形成するために洗浄される。焼結グラファイトは、通常、ステップ222に描かれるように、6~8を含む6~10など、7に近づくようにpHを低減するために洗浄水溶液で洗浄される。洗浄は、焙焼のために使用される溶液よりも低い濃度を有するDI水及び水酸化ナトリウムなどの水酸化物の弱い溶液を含む適切な水溶液を含む。ストレート水又は0.1M以下である塩基の濃度を有するアルカリ水溶液も有効である。特定の一例では、焼結グラファイトに0.1MのNaOH溶液が追加され、30分間にわたって攪拌され、次いで真空濾過を使用して濾過される。結果的に得られる洗浄されたグラファイトのフィルタケーキは、温度が室温まで冷却される時点まで、攪拌を伴って、水を使用することにより、特に高温の又は沸騰する脱イオン水により更に洗浄することができる。DI水洗浄は、約7のpHが実現される時点まで複数回にわたって反復することができる。最終的な洗浄及び濾過後、乾燥シートを使用した夜通しの140℃のコンベクションオーブン内などでフィルタケーキを乾燥させることができる。
【0018】
本方法に対する改善形態は、洗浄水溶液で焼結グラファイトを洗浄した後、ステップ224に開示されるように、酸性洗浄溶液による更なる洗浄を含む。酸性洗浄溶液は、ステップ226に描かれるように、HCl又は硫酸を含み得る。HCL洗浄の一例として、500mLのガラスビーカー内の焙焼グラファイトの20gは、濃縮されたHCl(36.5%)の20mLと組み合わされ、この組合せは、均一な分散を形成するために1時間にわたって攪拌される。代わりに、9%又は18%のHCl溶液などの相対的に薄い酸の濃度を使用することもできる。酸溶液に対するグラファイトの比率は、5~7未満などの中性未満の最終的なpHを実現するために、1:1~1:2など、1:1~1:4であり得る。次いで、洗浄された分散は、真空濾過を使用して濾過される。上述の水/水酸化物洗浄と同様に、温度が室温まで冷却される時点まで攪拌を伴って沸騰した脱イオン水が追加され得るフィルタケーキ形態が結果的にもたらされる。複数回の酸性洗浄(3回が一例である)を実行することができる。最終的な洗浄及び濾過後、精製グラファイトフィルタケーキを乾燥させた。
【0019】
図3A~
図3Cは、粒子サイズ分布、タップ密度(TD、gr/mLを単位として計測される)及び純度パーセントを含む、開示の方法から結果的に得られる例示的な精製グラファイトの例示的な特性である。粒子サイズ分布は、一般に、分布曲線の形状を記述する複数の値によって表される。図では、D10、D50及びD90値が記録される。D90は、粒子の90%が相対的に小さい粒子サイズを有し、10%が相対的に大きい粒子サイズを有する粒子サイズを記述する。同様に、D10は、粒子の10%が相対的に小さく、90%が相対的に大きいサイズである。D50は、分布内における50番目の百分順位粒子サイズである。
【0020】
図3A~
図3Cを参照すると、
図3Aは、第1の焙焼、それに続く水洗浄後に結果的に得られた精製グラファイトの分析を示す。精製グラファイトは、98.63%の純度と、市販のグラファイトに類似した粒子サイズ分布(15~25ミクロンのD50)とを有することが見出された。
図3Bは、類似の粒子サイズ分布と、99.17%の大幅に改善された純度とを結果的にもたらす二重焙焼(焼結、それに続く水洗浄の2回の反復)後の結果を描く。特許請求される方式によれば、2回の焙焼ステップは、相対的に高い純度のグラファイトを生成することが見出された。
【0021】
最後に、
図3Cは、開示の方法の異なる好ましい態様から結果的に得られた精製グラファイト製品に対応する3つの試行を示す。これらの図では、列1に観察され得るように、ブラックマスの浸出及びその後のDI水による洗浄後に回収された沈殿物である対照グループは、約97%の純度をもたらす。第2の列では、それぞれの焙焼ステップごとに7.5MのNaOH溶液を使用した
図2におけると同様の2回の焙焼サイクル及びその後の二重焙焼後に結果的に得られる精製グラファイトのDI水による洗浄は、98.92%の純度を有する精製グラファイト製品を生成し、これは、対照洗浄済みグラファイトに対する大幅な改善である。更に、第3の列に示されるように、37%のHCl溶液(1:1)による更なる洗浄、それに続く最終的な水洗浄を含むことにより、精製グラファイト製品中で99.90%の例示的な純度が示される。
【0022】
図3D及び
図3Eは、本開示の精製グラファイト製品の更なる例の特性を示す。
図3Dに示されるように、それぞれの焙焼ステップごとの7.5MのNaOH溶液による二重焙焼プロセス並びにそれに続く9~10のpHへの希釈塩基水溶液(0.1MのNaOH溶液)及びDI水による洗浄を使用することにより、精製グラファイトの2つの例を調製した。サンプル1は、4時間及び8時間にわたる150℃の温度における焙焼によって調製した一方、サンプル2は、8時間及び10時間にわたる120℃の温度における焙焼によって調製した。洗浄後、サンプル1は、99.29%の高い純度値を有することが見出され、サンプル2は、99.61%の相対的に高い純度を有した。加えて、HCl/水洗浄の包含は、それぞれ99.76%及び99.81%の更に改善された純度値を提供した。これは、格段に高い純度値を有する精製グラファイト製品を生成するために、わずかに相対的に長い時間にわたる相対的に低い焙焼温度が使用され得ることを実証している。
図3Eは、受け入れ可能なタップ密度値と共にサンプル2の粒子サイズ分布を示し、これは、
図3A~
図3Cに示されるものと一貫性を有する。
【0023】
加えて、
図3F及び
図3Gは、本開示の精製グラファイト製品の更なる例の特性を示す。
図3Fに示されるように、それぞれの焙焼ステップごとの7.5MのNaOHによる二重焙焼プロセス、それに続く8未満のpHへの希釈塩基水溶液(0.1MのNaOH溶液)及びDI水による洗浄を使用することにより、精製グラファイトの2つのサンプルを調製した。サンプル3は、4時間にわたる200℃の温度における2回の焙焼によって調製し、サンプル4は、8時間にわたる150℃の温度における2回の焙焼によって調製した。洗浄後、サンプル3及びサンプル4は、それぞれ99.24%及び99.23%の純度値を有することが見出された。加えて、HCl/水洗浄の包含は、それぞれ99.99%及び99.90%の更に改善された純度を提供した。
図3Gは、受け入れ可能なタップ密度値と共にサンプル3及び4の粒子サイズ分布を示し、これは、
図3A~
図3C及び
図3Eに示されるものと一貫性を有する。
【0024】
上記では、その実施形態を参照して、本明細書に定義されるシステム及び方法について具体的に図示及び記載したが、当業者は、添付の請求項によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、これらの形態及び詳細における様々な変更形態がなされ得ることを理解するであろう。
【符号の説明】
【0025】
100 再生シナリオ
102 リチウムイオン電池
104 使用済みのセル及び電荷材料
106 浸出液
108 浸出液
110 容器
112 炉
200 フローチャート
202 ステップ
204 ステップ
206 ステップ
208 ステップ
210 ステップ
212 ステップ
214 ステップ
216 ステップ
218 ステップ
220 ステップ
222 ステップ
224 ステップ
226 ステップ
【外国語明細書】